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深海への熱入力による湧昇
および海域肥沃化効果の検討
指導教員 多部田茂 東京大学大学院新領域創成科学研究科
環境システム学専攻 修士2年 佐藤慎一
肥沃化
湧昇
NO3
NH4
SiOH4
栄養塩
プランクトン
発電効率UP背景と目的 食糧問題
有光層に届く?
温度低下、希釈の影響は?
効率は下がらない?
温排水の無い新冷却システム
復水器 水
発電所蒸気
熱交換器
循環冷却水
排熱
・熱入力による湧昇流生成実験 ・物理場モデルによる湧昇シミュレーション ・無次元数による環境条件と湧昇高さの整理
1.湧昇 -‐熱入力で水は持ち上がるのか?-‐
・深層水添加によるプランクトン増殖実験 ・物理-‐生態系統合モデルによる肥沃化シミュレーション
3.肥沃化 –深層水でプランクトンは増えるのか?-‐
研究の手順
以上の3点から、新冷却システムの有用性を検討する。
・排熱モデルによる効率低下シミュレーション
2.冷却効率–深層水で発電効率は向上するのか?-‐
熱入力による湧昇流生成実験
アルミ5mm角棒
アルミ10mm角管熱電対
データロガー
ビーカー
チューブ
水中ヒーター
インク
おもり(文鎮)電圧 調整器
チューブ ジョイント
コック
メジャー
インクの湧昇
流れ
1.2 m
4.4m
温度成層と一様な流れを設定した水槽で、熱によるインクの湧昇を観測した。
温度勾配
5℃-10℃ or 5℃-15℃
実験結果 -熱変化による応答-
ヒーター 表面温度 38℃ 湧昇高さ 40cm
ヒーター なし 湧昇高さ 18cm
ヒーター電圧[[VV]]
温度勾配
流速[[mm //ss]]
観測値[[mm ]]
110000 55℃--1100℃ 00..0011 00..445555 55℃--1100℃ 00..0011 00..33110000 55℃--1100℃ 00..0022 00..2288110000 55℃--1155℃ 00..0011 00..33
熱を強める、 流れを遅くする、
勾配を弱くすると、 湧昇が高くなる。
湧昇シミュレーションで使用する物理モデル( MEC OCEAN MODEL)
(連続の式)0=∇u
) s1 2 方程式( StokeNavierupKDtuD
−∇+∇−=
ν
ρ
(輸送方程式) SaDtDSQtTa
DtDT 22 ∇=+∇= 熱交換器の効果
塩分温度
拡散係数粘性係数
圧力密度 重力
流速ベクトル
:::
:::::
:
QtST
apK
u
ν
ρ
支配方程式
直交格子 & Staggered配置
3次元マルチレベルモデル(Z座標)
モデルの特徴
静水圧近似計算 or 非静水圧計算
-淡水の密度計算(実験室規模計算用)-)02T0.9999(5 + 05T-3.74E + 06T--6.23E= 2 ≤≤ρ
-海水の密度計算(実海域規模計算用)-)amaev( 35.0)-0.002T)(S-(0.802+0.00469T-0.0735T-1028.14= 2 の式mρ
ZONE1:18cm×7格子
平⾯面図
側⾯面図
ZONE2:6cm×9格子
ZONE1:18cm×10格子
ZONE2: 6cm×15格子
100cm
(水面上 2格子10cm×4格子5cm×11格子2.5cm×2格子)
流流れ
流流れ
⽔水中ヒーター
シミュレーション計算領域
グリッドサイズ:12m×12m 条件:静水圧近似計算
グリッドサイズ:36m×36m 条件:非静水圧計算
ZONE2の上流の1つの計算格子の値を常に「1」として、値の広がりを計算した。
インクの再現
値:「1」
実験結果と計算結果の比較
計算結果 実験結果
ヒーター 表面温度 38℃
温度勾配 5℃-‐10℃
ヒーター電圧[V]
温度度勾配[K/m)]
流流速[m/s]
計算値[m]
計算値の⽐比
観測値[m]
観測値の⽐比
100 5 0.01 0.25 1 0.4 155 5 0.01 0.2 0.8 0.3 0.75100 5 0.02 0.2 0.8 0.28 0.7100 10 0.01 0.2 0.8 0.3 0.75
計算値の比と観測値の比がほとんど等しくなった。
実海域規模の計算結果
流速[cm/s] 温度勾配 [K/m]
発電出力[万Kw]
実験と同様に、 熱入力を強める、 流速を遅くする、
温度勾配を弱くすると 湧昇が高くなる。
2.5 5 10
1.5 200
3.1 200
6.2 200
10 20 30
無次元数による環境条件と湧昇高さの整理
212* Re)(
USUNHRi
UGQW
HhH
T
t ν====
Buckinghamのπ定理より、以下の無次元数を導いた。
y = 0.3965x -‐ 1.7517 R² = 0.8577
-‐2.5
-‐2
-‐1.5
-‐1
-‐0.5
0
0.5
0 2 4 6
ln無
次元
湧昇
高さH*
lnW数 熱源面積
水の動粘性係数
温度勾配の高さ
温度勾配
水平流速
伝温速度
:][
:]/[
:][振動Vaisala-Brunt:][/
:]/[:]/[:]/[
2
2
mS
sm
mHsNmKGsmUsKQ
T
t
ν
W数の対数と無次元湧昇高さH*の対数 に強い相関があることが分かった。
<実海域規模計算+実験> <変数について>
0843.0429.0* 211.0 −⋅= RiWH
<実海域規模計算+実験> <実験のみ>
212* Re)(
USUNHRi
UGQW
HhH
T
t ν====
Buckinghamのπ定理より、以下の無次元数を導いた。
y = 0.2363x R² = 0.12608
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45
0 0.5 1 1.5 2 無
次元
湧昇
高さH*
湧昇関数
0843.0429.0* 236.0 −⋅= RiWH
計算結果はW数とRi数で説明できるが、実験結果は不十分である。
無次元数による環境条件と湧昇高さの整理
y = 0.2113x R² = 0.9612
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
1.2 1.4 1.6
0 2 4 6 8
無次
元湧
昇高
さH*
湧昇関数
計算
実験
761.00843.0429.0* Re237 −−⋅= RiWH
y = 237.21x R² = 0.81416
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0 0.001 0.002 無次元湧昇高さ
H*
湧昇関数
<実験のみ>
Re数も加えると、実験結果もW数とRi数で計算と同様に説明できる。
212* Re)(
USUNHRi
UGQW
HhH
T
t ν====
Buckinghamのπ定理より、以下の無次元数を導いた。
無次元数による環境条件と湧昇高さの整理
0843.0429.0* 211.0 −⋅= RiWH
<実海域規模計算+実験>
y = 0.2113x R² = 0.9612
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
1.2 1.4 1.6
0 2 4 6 8
無次
元湧
昇高
さH*
湧昇関数
計算
実験
T2
T1
T2
T1
ν[m3/s]
)12(][]/[]/[ 3
3TT
RmVsmvsKQt −××
=
TTT Δ+= 21
1)1(2 TFTwFT ×+×−=
+ΔT
Tw
+Qt
海水温Twの変動により、冷却後温度T2が変動し、冷却効率が下がる可能性がある。
海水温
F:熱交換器の性能
発電出力:10万kw冷却水流量
V×R
熱を与える 水の体積
排熱モデルによる効率低下シミュレーション
Qt:排熱による海水の温度上昇
冷却水温度
ΔT:蒸気による冷却水の温度上昇
計算結果
本計算の条件の範囲では、湧昇と冷却効率はトレードオフではなく、 両立する条件が存在することが分かった。
0
30
60
90
120
150
32.5 32.6 32.7 32.8 32.9 33
湧昇
高さ[m
]
タービン出口蒸気温度[℃]
2.5cm/s 5cm/s 10cm/s
新システム 海水影響あり
0
30
60
90
120
150
28 29 30 31 32 33 34 35
湧昇
高さ[m
]
タービン出口蒸気温度[℃]
2.5cm/s 5cm/s 10cm/s
新システム 海水影響あり
新システム 海水影響なし 従来システム
湧昇が熱を上方に逃がしている可能性がある。
深層水添加によるプランクトン増殖実験
20 cm
32 cm
表層水 100%
温度・光が十分な環境で、深層水添加後にChl-‐aや無機栄養塩を異なる時間で測定した。
人工光照射
Chillerで25℃を維持
表層水75% 深層水25%
1 2
3 4
1
2
3
4
1
2
3
4
ー
ー
A
A
A
A
B
B
B
B
表層水 100%
表層水50% 深層水50%
深層水添加によるプランクトン増殖実験
20 cm
32 cm
温度・光が十分な環境で、深層水添加後にChl-‐aや無機栄養塩を異なる時間で測定した。
人工光照射
0 50 100 150
Chillerで25℃を維持
ー
ー
A
A
A
A
B
B
B
B
時間
測定
測定
測定
測定
測定
測定
測定
測定
深層水添加によるプランクトン増殖実験結果
混合水のChl-‐aは、はじめ希釈化により、表層水と深層水の値の間の値を取る。 その後、栄養塩を使って増加するが、栄養塩が枯渇すると、減少する。
0
0.3
0.6
0.9
1.2
1.5
1.8
0 50 100 150
測定濃度度[μg/L]
経過時間[hr]
Chl-‐a表層⽔水A
深層⽔水A
混合⽔水A(25%)
表層⽔水B
深層⽔水B
混合⽔水B(50%)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
0 50 100 150測定濃度度[μmol/L]
経過時間[hr]
NO3-‐N
0
0.3
0.6
0.9
1.2
1.5
1.8
0 50 100 150
測定濃度度[μg/L]
経過時間[hr]
Chl-‐a
生態系モデル(NEMURO,2007 & 中田,1993)
QbBaDtDB
+∇= 2
PL NO3
NH4
ZL
ZS
DON PON
ZP
QNL
PS QNS
Mortality
Grazing
Preda]onUptakingPhotosynthesis
Nitrifica]on
Respira]on
Excre]on
Decomposi]on Eges]onExtracellular Excre]on
QSiL SiOH4
Opal ケイ素 循環 (破線)
窒素 循環 (実線)
)(::
、有機物など栄養塩、プランクトン
生物プロセス ト 生態系コンパートメン QbB
物理-‐生態系統合モデル 計算結果
深層水による栄養塩増加・温度低下が緩和される区域がある。
物理-‐生態系統合モデル 計算結果
深層水による栄養塩増加・温度低下が緩和される区域がある。
緩和区域でプランクトンが増殖する。
物理-‐生態系統合モデル カイアシ類(ZL)の計算結果
日周鉛直移動をするZLは、他のプランクトンと比べて、桁違いに大きく変化する。 動物プランクトンの移動のパラメータは、肥沃化の鍵となる可能性がある。
-‐50%
0%
50%
100%
150%
1 2 3 4
物理理場定常計算経過⽇日数
ZLZPPLZSPS 0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
2.0%
2.5%
1 2 3 4物理理場定常計算経過⽇日数
ZPPLZSPS
結論
新冷却システムによる湧昇・肥沃化効果を検討するための 数値モデルを構築した。
実験と計算により、流れのある成層海域における湧昇高さは、熱入力(Q)が大きく、成層の温度勾配(GT)が小さく、流れ(U)が小さいほど大きくなり、U・GT/Qとリチャードソン数に依存することを明らかにした。
湧昇による水温変化がプランクトンの空間分布に強く影響する。 特に、鉛直移動する大型動物プランクトンは大きく増殖する可能性がある。
この湧昇の条件は、特定の条件範囲では 冷却効率の点でもプラスに働く。