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G 型星と M 型星を周回する地球型惑星の 考究 Kepler-11 系の 5 惑星と惑星 GJ1214b の比較 明星大学理工学部物理学科 天文学研究室 08S1-043 堂ヶ崎知誠

G 型星と M 型星を周回する地球型惑星の 考究数は2011 年現在で700 個を超えている.2011 年2 月には,Kepler-11 で5 個の地球サイ ズに近い惑星が発見され,注目を浴びている.

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G 型星と M 型星を周回する地球型惑星の

考究

Kepler-11 系の 5 惑星と惑星 GJ1214b の比較

明星大学理工学部物理学科 天文学研究室

08S1-043 堂ヶ崎知誠

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概要

天文学の中でも特に最近地球人が最も注目を集めている太陽系外惑星について考察する.

太陽系外惑星の発見から現在に至るまで 700 個以上の惑星が検出されたが,その大半が地

球のような系外惑星ではなく木星のような巨大ガス惑星である.

人類が太陽系外に強い興味を抱き太陽系外惑星探し(Planet Hunting)が本格的に天文学

で盛んになったのは 1995 年 10 月 6 日,スイスの天文学者が発見したペガサス座 51 番星

を周回する太陽系外惑星検出が皮切りである.最初は,天文学者の間ではその存在を信じ

る者はほとんどいなかった.ところが追試などを世界各国の研究者が幾度と無く重ね,よ

うやく系外惑星の存在が認められるようになった.後に,プラネット・ハンティングへの

研究が世界各地で進められるようになり,そのほとんどが,恒星の光に当たりながら短周

期で周回する「ホット・ジュピター」で,中には彗星のように軌道を変化させて周回する

「エキセントリック・プラネット」などである.

これに対して,上記のような太陽系とは相異なった姿の惑星系だけでなく逆に太陽系に

似た惑星系を持つ太陽系外惑星系も発見されるようになった.

51Peg b などを検出する際に頻繁に用いられてきた波長のずれによる「ドップラー法(視

線速度法)」や 2007 年以降、恒星の前を惑星が横切ることによる星の減光現象を利用した

トランジット法が急速に発展し、今では視線速度法とトランジット法の併用が系外惑星探

査の必要不可欠な観測手法となっている.

現在までに 700 個以上の太陽系外惑星がいくつかの観測手法によって検出されてきたが,

我々が目指す「生命が存在する地球型惑星」の発見には至っていない.ただ,地球型惑星

候補天体の例として,惑星 GJ1214b やごく最近では,2011 年 2 月,Kepler-11 にて 6 個

の中の 5 個の地球型惑星候補天体が発見され世界中から注目を集めている.これらの星系

の惑星は水を保有していると推定されている.最新の研究では M 型星の惑星探査が行われ

ている.

本研究では, M 型星と G 型星の持つそれぞれの惑星がどのような化学組成の大気を持

ち,どういう環境の惑星であるかを推定し比較することにより生命に適した条件を満たす

惑星には何が必要なのかを考察する為,M 型星を周回する GJ1214 b と 6 個中 5 個の地球

型惑星候補天体を持つ G 型黄色矮星 Kepler-11 について取り上げ,自作のソフトウェア

「Planet Hunter9」を用いて解析を行った.

現時点で M 型星の周囲に地球型惑星の存在を発見するに至ってないが,最も有力な候補

ははくちょう座にある G 型黄色矮星の Kepler-11 の 5 個の惑星である.もしかしたら,地

球型惑星が M 型星のような軽い星の周囲に存在しているかもしれないと多くの研究者が

その観測に挑戦している.観測手法の改善や装置の大幅な開発・発展を求められることに

なり,今後の残された課題の一つである.

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太陽系以外の他の惑星系を観測・研究し理解することで,「太陽系がどのように形成され

たのか」など惑星系形成プロセスを把握する必要がある.また,地球型惑星(第 2 の地球)

をこれだけ広大な宇宙の中で生きる我々人類が探すことには大きな意味がある.地球外生

命を発見することも我々生物の立場として,自身を知るためには非常に重要な研究になる

だろう.

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目次

1. はじめに .................................................... 5

1.1 研究の背景 .................................................. 5

1.2 研究目的 .................................................... 5

1.3 本論文の構成 ................................................ 6

2. 理論・コンピュータ解析の準備 ................................. 6

2.1 理論 ........................................................ 6

2.1.1 系外惑星とは .............................................. 6

2.1.2 系外惑星観測の現状 ........................................ 7

2.1.3 系外惑星の種類 ............................................ 7

2.1.3 太陽系との比較 ............................................ 9

2.1.4 観測手法 .................................................. 9

A. 間接法 ....................................................... 9

2.1.4.1 ドップラー法 (視線速度法) ................................ 9

2.1.4.2 アストロメトリ法 ........................................ 10

2.1.4.3 トランジット法 ......................................... 10

2.1.4.4 ドップラー法とトランジット法の併用...................... 12

2.1.4.5 重力レンズ法 ........................................... 12

2.1.4.6 パルサー・タイミング法 ................................. 12

B. 直接法 ...................................................... 13

2.1.4.7 直接撮像(Direct Imaging) ................................. 13

2.1.5 系外惑星の性質........................................... 13

a. 太陽型恒星の 5%が惑星を持つ ................................................................................. 13

b. 中心星の付近を周回する巨大惑星(ホットジュピター)の相次ぐ発見 ....................... 14

c. 離心率が高い楕円軌道を描く惑星の出現 .................................................................. 15

2.1.5 生物天文学,生命天文学,宇宙生物学 ....................... 15

2.1.6 ハビタブルゾーン(生存圏) ................................. 15

2.1.7 太陽系内のハビタブルゾーン ............................... 16

2.1.8 星の分類と星の周りのハビタブルゾーン ..................... 16

2.1.9 惑星の質量と大気の消失 ................................... 18

2.1.10 大気の保持条件 .......................................... 18

2.1.11 星の寿命とハビタブルゾーン .............................. 19

2.1.12 潮汐効果 ................................................ 19

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2.2 観測・実験の準備 ........................................... 20

2.2.1 M 型星 GJ1214 ........................................... 20

2.2.2 G 型星の Kepler-11 ........................................ 20

2.2.3 コンピュータ解析の準備 ................................... 20

3.結果 ........................................................ 23

4.考察 ........................................................ 36

4.1 本研究を通じて分かったこと ................................. 36

4.2 今後の課題 ................................................. 42

5.まとめ ...................................................... 42

6. 付録 ......................................................... 42

付録 A ドップラー法 ............................................ 42

付録 B トランジット法 .......................................... 44

付録 C トランジット観測から得られる惑星の物理量(密度・重力・表面温度) 45

付録 D 潮汐力 .................................................. 47

付録 E 惑星の質量と半径・ハビタブルゾーン ..................... 47

E1 惑星の質量と半径の関係 ..................................... 47

E2 ハビタブルゾーン(Habitable Zone) ............................ 49

付録 F .......................................................... 49

F1 プランクの式 ............................................... 49

F2 ステファン・ボルツマンの法則(Stefan Boltzmann’s law) ......... 49

F3 星の光度 ................................................... 49

F4 ウィーンの変位法則(Wien’s law) .............................. 50

F5 星の色と表面温度 ........................................... 51

付録 G 最新の系外惑星科学事情.................................. 51

付録 H HD209458 (V0376Peg)のトランジット測光観測 ............ 54

付録 I 本研究で用いた天体の物理定数 ............................ 55

付録 J ケプラーの第 3 法則の導出 ................................ 55

7. 謝辞 ......................................................... 56

8. 参考 ......................................................... 57

文献目録 ....................................................... 57

参考 Webサイト ................................................. 57

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1. はじめに

1.1 研究の背景

太陽系以外の惑星(系外惑星)研究は,1940 年代から盛んに行われるようになった.1940

~1960 年代にはアストロメトリ法によって惑星発見の報告がされた.ところがその後の追

観測によってその存在が否定され,2006 年現在でもこの方法による惑星発見には至ってい

ない.

1980 年代に突入し,光のドップラー効果を応用した視線速度法(RV 法)による系外惑星

探査が本格的にスタートした.その後十数年間,惑星発見の報告がされず悲観的になって

いた矢先の 1995 年 10 月 6 日に,スイスの天文学者がわずか 4.2 日でペガサス座 51 番星

(51Peg )の周囲を公転する「系外惑星」を発見した.その直後追試を行うことでようやく

系外惑星の存在が認められるようになった.それ以来,世界各国のプラネット・ハンター

(Planet Hunter)と呼ばれる天文学者が本格的に系外惑星探査に乗り出し,系外惑星の発見

数は 2011 年現在で 700 個を超えている.2011 年 2 月には,Kepler-11 で 5 個の地球サイ

ズに近い惑星が発見され,注目を浴びている.

1.2 研究目的

1980 年代に始まり,1995 年のペガサス座 51 番星にある系外惑星検出から始まった系

外惑星探査を通じて,知的生命体が存在する「第二の地球」は宇宙に実在するか, 我々

の太陽系はどのようにして形成されたか,またどのような形成過程なら地球のような系

外惑星が出来上がるか,さらには太陽系と比較してどのように違うのかを調べることに

より,生命が存在する惑星になりうる条件が推定できる.

惑星系形成プロセスを理解し,知的生命体が存在しうる条件を確立することで人間を理

解することに繋がる.

本研究では,コンピュータ解析を通じて M 型星のグリーゼ 1214(GJ1214)にある惑星と

G 型星の Kepler-11 を周回する 6 個中 5 個の地球型惑星 b~f の性質を比較する.これに

より,各惑星の半径,質量,密度,重力,脱出速度などの諸物理量だけでなく,ハビタブ

ルゾーンなど地球型惑星形成に必要なデータを得ることで,2 つの惑星系にどのような相

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違点があるか比較する.また,惑星が大気を保持するにはどのような条件を満たす必要が

あるか,さらには生命が存在する惑星を発見するにはどのような条件を満たす必要がある

か考える.

1.3 本論文の構成

本論文の構成は,第 2 章では,理論,観測・準備に

ついて述べる.系外惑星の概念や性質,種類,観測方

法,惑星・中心星と生命について述べる,第 3 章では,

GJ1214, Kepler-11 について自作のソフトウェア

「Planet Hunter9」で実験・シミュレーションした結

果を基に検証する.第 4 章では,実験を通じた考察を

し,最後に第 5 章では本研究のまとめ,考察する.

2. 理論・コンピュータ解析の準備

2.1 理論

2.1.1 系外惑星とは

系外惑星 (exoplanet) とは読んで字のごとく,「太陽系以外に存在する惑星(以下、惑星

と呼ぶ)」を表す.特に質量が太陽の 1.3%(木星の 13 倍)以下で,いかなる熱核融合反応も

起こさず周囲の中心星(恒星,白色矮星,パルサー,褐色矮星などの天体)を周回する天体

を示す.英語では「Exoplanet」や「Extra-solar planet」などと表記される.1995 年にペ

ガサス座 51 番星で惑星が発見されて以来,2012 年現在で 700 個を超える発見数を誇り,

並行して観測技術も急速に向上している.

惑星はその惑星系の中で,発見された順に「b」から「z」まで

割り振られる.現在のところ多い系で「g」辺りまで割り振られ

ている.「惑星 b」などと呼ぶ.この「b~z」が必ずしも惑星系

図 1 51Peg b 公転運動の様子

(青:惑星、黄色:中心星)

図 2 系外惑星の様子

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の軌道の内側から割り振られているわけでは無いことに注意が必要である.「a」:惑星

系の母星,即ち中心星=恒星を示す.

2.1.2 系外惑星観測の現状

1995 年の系外惑星発見以来,観測技術の向上と共に系外惑星発見数が増えてきた.実は

1989 年に 1 個,系外惑星が既に発見されていた.1992 年のパルサー惑星は,惑星と定義

すべきかどうか議論が続けられている.

図 3 年々増加傾向にある惑星の発見数(パリ天文台の「系外惑星カタログ」より)

一般に 1995 年から系外惑星発見の歴史が本格的に始まったと考えて問題がない.1996

年には 6 個もの系外惑星が発見されたが,スイスチームのデータを再確認したアメリカの

マーシーとバトラーのチームが 7 年前から研究をしていたため豊富な観測データを持って

いたが,太陽系と同じような惑星だろうと考えていたため,系外惑星の存在に気付かなか

った.1995 年の発見を受けて,急いでデータを見直し,1996 年に発表した経緯がある.

2000 年代前半にはほぼ同じ発見数を維持し,2007 年以降トランジット法の成果で急速に系

外惑星発見数が伸びた.

2012 年以降,2009 年に打ち上げたケプラー宇宙望遠鏡によるトランジット法での成果が

期待されている.

2.1.3 系外惑星の種類

系外惑星の種類は,大きく分けて以下の 6 つに分けられる.

A. 軌道による区別:

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a. エキセントリック・プラネット:軌道離心率が大きい惑星.

b. 逆行惑星:中心星の自転と逆方向に公転している惑星.

c. ゴルゴディロックス惑星:地球のようにハビタブルゾーン内に存在し,かつ生

命の存在だけでなく進化も起こる地球型惑星.

B. 中心星の状態

a. 周連星惑星:連星を周回する惑星.連星の共通重心を周回する惑星,連星を構

成する恒星を周回するものに分別される.

b. パルサー惑星:パルサーを中心として,その周りを公転する惑星.

C. 軌道と大きさ

a. ホットジュピター:木星と同等かそれ以上の大きさで,恒星の至近距離

(≤ 0.1AU)を周回する巨大ガス惑星.

b. ホットネプチューン:至近距離を周回する地球質量の 20倍程度の海王星クラス

の巨大ガス惑星.

D. 質量と半径

a. 地球型系外惑星(Earth-like planet):質量・半径共に地球と同じか 2倍以下の

惑星.

b. スーパーアース(Super Earth):地球質量の 3~10 倍の惑星.

E. 大きさ・密度:

a. スーパーアース(Super Earth):地球質量の 3~10 倍の惑星.

b. パフィープラネット(puffy planet):ホットジュピターの一種で,密度が極めて

小さい惑星.

F. 地表の状態:

a. 海洋惑星(Ocean Planet):氷と岩石で構成されている惑星の氷が恒星の熱によ

り溶け出し,深さ数 100km に及ぶ液体の層ができていると推定されるもの.

b. スーパーイオ(Super Io):木星の衛星であるイオと同様に,恒星の重力を受け

潮汐加熱していると考えられる軌道上にある惑星.

また,地球型惑星とは相反してこれまでに検出された惑星は木星型の巨大ガス惑星が非

常に多く,むしろ地球型惑星が発見されたという報告は今のところ無い.ただ,2011 年 2

月にケプラー計画により 6 個の地球型候補天体が発表されたがいずれも地球と同じ組成の

惑星はいない.しかし将来的な地球型惑星探査において,これらの惑星が重要な手掛かり

になることは間違いないだろう.

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2.1.3 太陽系との比較

太陽系内の惑星は,大きく 3 つのタイプに分けられる。岩石を持つ地球型惑星(水星,金星,

地球,火星),中間領域に水素(H),ヘリウム(He)が大部分を占める巨大ガス惑星(木星,土星),

氷が主成分の巨大氷惑星(天王星、海王星)で構成されている.太陽から遠ざかるほど,

0.4-1.5AU に地球型惑星,巨大ガス惑星,巨大氷惑星は地球質量の 0.1 倍-1 倍,100-300 倍,

10-20 倍と 1 桁ずつ異なる.惑星全体の質量は約1.3 × 10−3で,大部分を木星と土星が担う.

固体部分だけで10−4𝑀◉~2 × 10−4𝑀◉ になる.軽い水星を除き,惑星軌道はほぼ平面内の円

軌道で軌道間隔は外側ほど広い.

2.1.4 観測手法

系外惑星の観測手法は大きく 2 つに大別される.ここでは,系外惑星観測の検出方法に

ついて述べる.

A. 間接法

2.1.4.1 ドップラー法 (視線速度法)

惑星による恒星のふらつきで偏移するスペクトルを利用した初の系外惑星の発見とな

った 1995 年以来主要になっている観測手法である.観測から,公転周期,準振幅,惑星

-中心星間の距離,離心率を調べ,質量関数から惑星の質量下限値𝑀sin 𝑖を算出する.

図 4 惑星と中心星の公転運動とスペクトルの変化(左),図 5 視線速度曲線(RV,右)

惑星の質量を𝑀𝑃,恒星の質量を𝑀∗とすると,

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𝑀𝑃 ≪ 𝑀∗のとき,惑星の質量下限値*1は

𝑀𝑃 = 𝑚sin 𝑖 ≈ 𝐾 (𝑃𝑀∗

2

2𝜋𝐺)

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となる.

2.1.4.2 アストロメトリ法

惑星の引力の影響による恒星の固有運動のふらつきとして惑星を検出する方法である.中

心星から遠く離れた重い惑星ほど検出しやすい。

ドップラー法で惑星の引力の影響を受けた中心星の速度変化を調べると同時に,天球上で

の位置の変動を精密に捉えることで惑星の存在を表す方法である.

バンデカンプなどによりかつて試された観測手法だが,系外惑星検出に必要不可欠な位

置測定精度が大気の揺らぎに対し非常に小さいことが問題になっている.

この方法は元々惑星ではなく,質量比が小さい天体の観測に用いられていた.

大気の揺らぎの大きさが 1 秒角であるため,地上からの観測が極めて困難で,一例も成

功していない.

観測精度は,大気揺らぎが影響しない場所を選ぶことにより改善が見込まれている.

2.1.4.3 トランジット法

惑星と中心星の系をほぼ真横から観測しているとき,惑星は中心星の前面を通過する.

このときの中心星の減光現象を捉える観測手段の一つである.惑星の大きさの分だけ中心

星の光の中に影として現れるため,見かけ上中心星の減光現象を検出する.以下のような

光度曲線を取得することで惑星の存在を確認することができる.また惑星に対するトラン

ジットの観測の有無は,軌道面傾斜角𝑖に大きく反映される.

ドップラーシフト法に比べて,直接的に惑星を検出し,遠くの暗い中心星にある惑星で

も発見が可能になる.1999 年に HD209458 b が太陽系外惑星では初めてこの方法で発見さ

れた.

*1 ドップラー法による惑星の質量は,下限値であり確定値ではない.導出過程は付録 A を

参照.

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図 6 惑星のトランジットと光度曲線:惑星がプロセス 1→プロセス 2 と進むと,中心星の

光度が落ちる.プロセス 1 とプロセス 3 の高さが下記の減光率を表す.惑星が恒星の全面

を通過する際に,惑星の大気組成を調べることによって内部を推定することができる.

上図から,惑星がトランジットをする前の恒星の光度を 1 とすると,

求める惑星の半径*2は

𝑅𝑝 = 𝑅∗√1 − 𝐿𝑚𝑖𝑑𝑑𝑙𝑒

である.

惑星検出可能性を見積もるには,減光率の他に

惑星がトランジットする確率 𝑝~𝑅∗

𝑎

惑星のトランジット継続時間 𝑇𝑐~13√𝑎 [hr]

を調べればよい.

*2 導出過程は付録 B を参照.

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2.1.4.4 ドップラー法とトランジット法の併用

図 7 トランジットとドップラー偏移の対応関係

上記に挙げた 2 つの観測手法を用いることによって,惑星に関する情報が増え観測対象

の惑星はどのような惑星であるか把握することができる.

これらの 2 つの方法を用いることによって惑星の存在の確証が得られる.ドップラー法

に問題があるという疑いは晴れたのである.トランジット法の星の光度変化を調べるとい

うシンプルさが急速に成果を上げている.ドップラー法よりも 5 年遅く採用されたが,最

近になってトランジット法によってより多くの惑星候補が見つかっている.

2.1.4.5 重力レンズ法

遠方にある天体からの光が途中にある恒星の重力によって屈折する現象を利用した観測

方法.銀河系外惑星(自由浮遊惑星)がこの方法で観測された.

重力レンズは横切る恒星の明るさに無関係の為,存在確率が高いほど検出確率も高い.

視線速度法が不適の暗い M 型星は,2006 年に 4 個の惑星をこの方法で発見した.

2.1.4.6 パルサー・タイミング法

パルサー観測によって,パルスに起こる周期的なずれから惑星の存在を検出する方法の

ことである.しかし,この方法で発見された惑星は数少ない.

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B. 直接法

2.1.4.7 直接撮像(Direct Imaging)

惑星自身の光を中心星から分離して検出する方法.中心星との光度差が大きく,中心星の

光の微小なもれがあるだけで惑星を検出するには困難であるというデメリットがある.

直接撮像がこれまで行われていなかったのは,技術的に大きな基準があったためである.

数十光年離れた場所にある惑星を直接撮像しようとすると非常に暗くて見えない。このため

場所に依らず惑星を観測できるよう,どこまで観測装置の感度を上げることができるかとい

う課題が残されている.

また,遠く離れた惑星を観測しようとすると恒星と惑星の見かけの距離が小さくなる為解

像度の問題が生じる.解像度が不足していると像がぼやけ,恒星と惑星の間隔が無くなり,

はっきりと恒星と惑星を識別できない為である.打開策として,望遠鏡の解像度を上げる必

要がある.

さらに観測機器のコントラストの問題として,恒星と惑星を比較すると,恒星の方が明る

すぎて惑星の発する光が恒星からの光に干渉される為観測できなくなってしまう.

系外惑星を直接撮像し確実に捉えるには,観測装置や望遠鏡が上記の 3 点を同時に満たす

必要がある.観測技術の向上によって徐々に改善されつつあり,系外惑星の直接観測実現に

着実に近づいている.

2.1.5 系外惑星の性質

a. 太陽型恒星の 5%が惑星を持つ

太陽型恒星(スペクトル型が F,G,K 型)が最も標準的な天体であり存在率が高い.その

上で太陽型恒星の特徴から,表面温度が数千度で寿命が長く,ハビタブルな惑星上で生命進

化に必要不可欠な適度なエネルギーを供給すると考えられる.

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図 8 検出された系外惑星の質量分布

上の統計では,質量分布の傾向について着目すると,質量が小さくなるほど検出された惑

星が減少する傾向にあるが,観測精度も考慮され質量が小さいほど検出しにくい.

実際は小さい質量の惑星が今後増加していくと予想され,地球のような小型の惑星を持つ

恒星を含めると惑星を持つ恒星の割合はかなり多いと推測できる.

b. 中心星の付近を周回する巨大惑星(ホットジュピター)の相次ぐ発見

図 9 軌道長半径と惑星の数

系外惑星の最初の発見が,中心星の至近距離をわずか 4.2 日で周回する高温で木星質量の

約半分ほどの巨大ガス惑星(ホットジュピター)だったが,これ以降続々と中心星付近を高速

で周回する惑星が見つかっている.

中心星付近を岩石惑星が周回し,さらにその外側をガス惑星や氷惑星が周回するという

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太陽系の常識を大きく逸脱していたのである.

c. 離心率が高い楕円軌道を描く惑星の出現

図 10 離心率と惑星の数

太陽系の惑星のように同心円状の軌道を周回するイメージは太陽系外ではやはり,通じ

なかった.

実は 3 分の 2 がエキセントリックプラネットで,これは太陽系外の世界では「普通」で

ある.加えて,巨大ガス惑星が楕円軌道を周回する為,その力学的影響は大きい.

2.1.5 生物天文学,生命天文学,宇宙生物学

系外惑星科学を考える上で,最も密接な関係がある学問として宇宙生物学(または生命天文

学,生物天文学)という分野がある.

地球に限定せず,宇宙規模での生命体について考察し,生物生存の実態や生物現象のしく

み,生命の起源を解明することを目的とする学問.

宇宙生物学の今後の課題として,

1. 生命の起源と進化

2. 地球外生命探査,地球外文明との交信

3. 地球生物の地球外移住

を考え取り組む.

2.1.6 ハビタブルゾーン(生存圏)

惑星の表面で液体の水が凍らず蒸発しない,液状の水が存在し,かつ地表面で生命の活動

の維持が可能な領域のことである.

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16

ハビタブルゾーンは,

1. 中心がどれだけ明るいか

2. 中心星からどれだけの距離に惑星が在るか

によって決まる.

地球に現存しているものと類似した生命を前提として,

1. 水は生命に必要不可欠

2. 生命探査は水が存在する場所からするのが妥当

という考え方が一般的である.

2.1.7 太陽系内のハビタブルゾーン

太陽系のハビタブルゾーンは,地球が領域内,火星が領域の一部に入る程度である.内惑

星(水星,金星)は 0.72AU 以内で太陽に近く,水が蒸発して地表から消える.対して外惑星

の場合,1.52AU で少し遠過ぎるがハビタブルゾーンに一部が入っているため,現在表面に

水が無くても過去に存在していた可能性が指摘されている.

実際,火星探査機による探査で,水が流れていた痕跡が多く見つかっている.外惑星(木星)

の場合,完全にハビタブルゾーンの外側にある.

2.1.8 星の分類と星の周りのハビタブルゾーン

惑星が中心星(特に恒星)を周回する場合,恒星からの距離や光度(明るさ)などにより,惑

星の環境や大気組成が変わってくる.

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図 11 星のスペクトル型と色と表面温度*3

太陽型(G 型)星はハビタブルゾーンが 1AU 前後で,F 型星のような質量が大きくエネル

ギー放射が強い星は 1AU よりもずっと遠い場所にハビタブルゾーンが存在している.

M 型星のような質量が軽く,暗い星のハビタブルゾーンは,中心星に近い領域に存在す

る.中心星のスペクトル型によって光度や表面温度が決まる為,ハビタブルゾーンの規模

もこれに応じて変化する.

ハビタブルゾーンの両端の距離は,下表のスペクトル係数を用いて

𝑑 = √𝐿∗𝑆𝑒𝑓𝑓

[AU]

と表される.

スペクトル型 F G K M

上限 0.46 0.36 0.27 0.27

下限 1.90 1.41 1.05 1.05

表 1 スペクトル型とハビタブルゾーンの上限,下限を決める係数

星のスペクトル型とハビタブルゾーンの上限,下限値を決めるスペクトル係数を表に示

した.

ハビタブルゾーンの上限・下限の星からの距離を把握することで惑星がハビタブルであ

るか否かが推測できる.

*3 詳細は,付録 F5 を参照.

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2.1.9 惑星の質量と大気の消失

太陽系の地球を基準に生命の起源を考えると,生命を持つ惑星は大気を持つはずである.

その惑星が水や大気(水素,酸素,オゾン,ヘリウムなど)を保持するには一定の質量をもつ

ことが必要である.

惑星の質量が地球質量の 0.1 倍以下の場合,その惑星の大気保持は困難であるだろうと考

えられている.

むしろ惑星が大きくても条件が悪く,惑星形成時に円盤ガスで地球質量の 5~10 倍のスー

パーアース以上に達すると巨大ガス惑星になる.

したがって,惑星の質量に関する適量の大気の保持条件は,厳密な定義ではないが,目安

として地球質量の 0.3 倍~3 倍と考えられている.

2.1.10 大気の保持条件

気体分子のレベルで考えると,温度や質量に依存する為熱速度を考える必要が出てくる.

熱速度は,気体が 1mol の場合

エネルギー保存則より,

𝑚

2𝑣𝑡ℎ2 =

3

2𝑘𝐵𝑇

となる.

したがって,熱速度は

𝑣𝑡ℎ = √3𝑘𝐵𝑇

𝑀

と表され,マクスウェルの速度分布に従う.個々の分子はそれぞれ異なった速度で運動す

るのは,分子が衝突を繰り返すことである粒子は速度を増し,他方の分子は減速する為と

考えられている.

何故,大気を維持するために惑星の質量が重要であるか?大きさに無関係な粒子が惑星

の重力に逆らって脱出するにはある一定の速度以上の速度を持つ必要がある.

惑星が大気を保持するためには,

大気分子のエネルギー保存則

𝑚

2𝑣𝑡ℎ2 − G

𝑀𝑚

𝑟≤ 0

を満たす必要がある.

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惑星の脱出速度が大気分子の速度以上,

つまり,

𝑣𝑡ℎ ≤ √2𝑔𝑃𝑅𝑃 = 𝑣𝑒𝑠𝑐

であれば惑星が大気分子を逃がすことなく保持することができる.

これまでに発見された地球型惑星候補天体は半径が,木星・天王星・海王星サイズのも

のが大部分を占めている.

生命の存在に必要不可欠な水や大気を保持していくためにはそれ相応の惑星のサイズが

必要である.地球を基準として,サイズが小さすぎても大きすぎても不適切である.

2.1.11 星の寿命とハビタブルゾーン

星の寿命(生存時間)とは,恒星が安定して輝き続け適度なエネルギーを惑星に注ぎ続ける

時間を表す.

恒星の放出するエネルギーの総量は核反応に関与する質量に比例し,それは恒星質量の

10%程度となることが判っている.

恒星の寿命は,その質量の 3 乗に反比例している.質量光度関係 L ∝ 𝑚4 よりt ∝1

𝑚3

である.

主系列星の寿命は質量が大きく明るいほど短く,質量が小さく暗い星ほど長い.

2.1.12 潮汐効果

中心星が持つ惑星が生命を持つが衛星を持たない場合,思考実験して惑星を中心星に近づ

けてみると,

*4潮汐力

T = 2G𝑀∗𝑚

𝑎3Δr

が増大する.

地球-月の場合,月と地球が面する側と反対側で潮汐力が残り,地球の海や大陸を中心と

対して引っ張る結果潮汐ブレーキで自転速度が小さくなる.

またさらに惑星を中心星へ近づけてみると,潮汐ロック半径に対し潮汐ブレーキ効果で自

転周期と公転周期が一致(ロック)する.

*4 導出過程は付録 E を参照.

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さらに近づくと,ロッシュ限界に達しその惑星が木端微塵に砕ける.

2.2 観測・実験の準備

2.2.1 M 型星 GJ1214

GJ1214 の惑星はトランジット法で発見された。GJ1214 はへびつかい座に属する M 型

の赤色矮星であり,それを周回する惑星 b は地球に組成が類似しており, 3/4 が水,1/4 が

岩石で出来ていると考えられている.ただ,惑星 GJ1214 b は中心星の赤色矮星から

0.014AU しか離れておらず至近距離に軌道が在る為,水は水蒸気に形を変え非常に高い気

圧ではないかと予想されている.

2.2.2 G 型星の Kepler-11

Kepler-11は視線速度法及びTransit法で発見されたはくちょう座に属するG型黄色矮星

(G dwarf star)であり,どちらの星も太陽によく似た性質を持っている.表面温度は

5680K(5407℃)であり,光度は太陽の 1.12 倍と推定されている.6 個の惑星を持ち,内惑

星 5 個はスーパーアース前後の質量を持ちながら地球の数倍のサイズしかないという太陽

系の地球型惑星と異なった姿をしている.

2.2.3 コンピュータ解析の準備

ここでは,自作のソフトウェア「Planet Hunter9 (以下 PH9)」を用いたシミュレーショ

ン・解析実験を行った.この 2 つの星系について実験結果と共に検証する.

【目的】 ソフトウェア「Planet Hunter9」及び関数電卓を用いて,惑星の質量,半径,

密度,重力,脱出速度,熱速度,表面温度を求める.

【手順】ソフトウェア「Planet Hunter9」を用いて,GJ1214 b,Kepler-11 b- f について

以下のデータを入力する.但し,中心星 Kepler-11 と個々の惑星との間のデータを取る.詳

細の観測データは,フランス・パリ天文台 http://exoplanet.eu/より入手した.

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【Kepler-11】

表 2 Kepler-11 の入力データ

Name b c d e f

公転周期

(day)

10.30375

13.2502

22.68719

31.9959

46.68876

準振幅

(m/s)

1.3078 3.7779 1.4258 1.7512 0.4227

軌道面傾斜

角𝑖( )

88.5 89 89.3 88.8 89.4

離心率 0 0 0 0 0

*5近星点離

角ω(deg)

/ / / / /

軌道長半径

*6(AU)

0.091

(0.091)

0.107736947

(0.106)

0.15419496

(0.159)

0.193915532

(0.194)

0.2494736

04

(0.25)

トランジッ

ト前の光度

1.000 1.000 1.000 1.000 1.000

トランジッ

ト中の光度

L

0.99973

0.9993

0.9992

0.9986

0.9996

表 3 Kepler-11 系の 5 惑星の入力データ

*5 具体的な数値が掲載されていなかったので,「0」として取り扱った.

*6 𝑀∗ ≫ 𝑀𝑃とすると,ケプラーの法則 𝑃2

𝑎3 ≅4𝜋2

𝐺𝑀∗ より,

𝑎 = (𝐺

4𝜋2)

13(𝑃2𝑀∗)

13 = 1.191278106 × 10−4 × (𝑃2𝑀∗)

13

から導き出した.

質量𝑀∗ (𝑀◉) 0.92

半径𝑅∗ (𝑅◉) 1.15

光度𝐿∗ (𝐿◉) 0.8966128557

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表 4 中心星 GJ1214 の入力データ

表 5 GJ1214 b の入力データ

*7離心率の値は,0.27 とした.

*8 *5 に同じ.

質量𝑀∗ (𝑀◉) 0.95

半径𝑅∗ (𝑅◉) 1.1

光度𝐿∗ (𝐿◉) 1.129974292

名前 GJ1214b

公転周期 ( s) 0.73654

準振幅 ( s) 12.66433254

離心率 e <0.27*7

近星点離角ω( ) -

距離𝑎(AU) *8 0.014

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3.結果

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図 12 GJ1214 b のデータ解析結果

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【Kepler-11b】

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図 13 Kepler-11b のデータ解析結果

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【Kepler-11c】

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図 14 Kepler-11c のデータ解析結果

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図 15 Kepler-11d のデータ解析結果

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【Kepler-11e】

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図 16 Kepler-11e のデータ解析結果

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【Kepler-11f】

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図 17 Kepler-11f のデータ解析結果*9

*9 図の「kind of the planet」の表示の有無は,質量クラスで区分される惑星の種類を表し

ている.

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公転軌道の様子,惑星の質量,半径,密度,重力,表面温度,脱出速度,熱速度,中心

星の光度,表面温度,最大の波長など計算結果,また視線速度曲線(RV 曲線),光度曲線(LC)

を導き出した.以下には,したデータを基に計算した結果を表にまとめた.

Name GJ1214b

𝑀 sin 𝑖 [𝑀 ]

(𝑀 )

6.352

半径

(𝑅 )

(PH9)

2.755

重力[𝑔]

(PH9)

0.86

密度

[g/ 3]

1.751

分子量[g] 1

熱速度 3.706

脱出速度

[km/s]

16.97

表面温度

[K]

551

Habitable Zone

Max

[AU]

0.105

Habitable Zone

Minimum

[AU]

0.053

表 6 惑星 GJ1214 b のデータ解析結果

Kepler-11 系の 5 惑星の解析結果を以下に示す.

Name b c d e f

𝑀 sin 𝑖 [𝑀 ] 4.299

(4.3)

13.507

(13.5)

6.099

(6.1)

8.399

(8.4)

2.300

(2.3)

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半径*10

[𝑅 ]

1.98

(1.97)

3.18

(3.15)

3.41

(3.43)

4.51

(4.52)

2.41

(2.61)

重力 [𝑔]

1.10 𝑔

(1.10 𝑔)

1.36 𝑔

(1.32 𝑔)

0.51 𝑔

(0.52 𝑔)

0.41 𝑔

(0.41 𝑔)

0.34 𝑔

(0.40 𝑔)

平均重力 0.744 𝑔*11

密度*12

[g/ 3]

3.07

(3.1)

2.31

(2.3)

0.856

(0.9)

0.5

(0.5)

0.913

(0.7)

分子量[g] 23*13 23 1 1 1

脱出速度

[km/s]

16.4 23 14.9 15.2 10.9

熱速度

[km/s]

1.06 1.02 0.92 4.03 3.78

表面温度

[K]

951.91

(952.46)

875.36

(882.508)

731.70

(720.5648)

652.47

(652.3351)

575.25

(574.6476)

トランジッ

ト時間*14

[hr]

4.02

4.02

5.58

9.60

6.54

減光率*15

[%]

0.0293 0.0772 0.0966 0.135 0.0521

ハビタブルゾーン

Max[AU]

1.578

ハビタブルゾーン

Minimum

[AU]

0.797

表 7 Kepler-11 系の 5 惑星のデータ解析結果

*10 上段はソフトウェアで計算した結果.下段の括弧内の数値は,観測から得られた実際の

データ

*11 Kepler-11g は地球型惑星候補天体ではないので,平均重力の計算から除外した.

*12 *7 に同じ.

*13 Kepler-11b, c は水素(分子量 1),ヘリウム(4)の大気と水(H2O, 18 = 1 × 2 + 16)がある.

3 個の惑星 Kepler-11d-f, GJ1214 b の大気は水素(分子量 1)として計算した.

*14 Kepler-11b の詳細は,http://kepler.nasa.gov/Mission/discoveries/kepler11b/ を参照.

惑星 c~f の詳細は,リンク先から移動可能.

*15 *10 に同じ.

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4.考察

4.1 本研究を通じて分かったこと

1. サイズは地球より大きくかつ地球半径の 2~5 倍の小型であるが,その割に質量が地球

質量の 4(スーパーアース)~13.5 倍と幅広い.

図 18 地球及び Kepler 宇宙望遠鏡の観測による Kepler-11 の 5 惑星 b~f と GJ1214b の

質量と半径の関係 (http://kepler.nasa.gov/images/Kepler-11PlanetCompositions-full.jpg

より引用)

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図 19 地球及びコンピュータ解析による Kepler-11 の 5 惑星 b~f と GJ1214b の質量と半

径の関係

図 18,図 19 との比較から,各惑星のグラフ上のプロットの位置が合致していることが

判る.このように質量・半径の関係から惑星の内部組成が推定できる.GJ1214b は質量・

半径共に,Kepler-11d に近いことが分かる.

2.地球型惑星のサイズが1R の場合,質量が0.1M 以上でかつ惑星の脱出速度が大気分子

の熱速度よりも大きければ大気分子が消失しにくいため大気を保持できる.

Kepler-11b

1.98

Kepler-11c

3.18 Kepler-11d

3.41

Kepler-11e

4.51

Kepler-11b

2.41 GJ1214b

2.720553

Earth, 1

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

4.5

5

0 5 10 15

半径

[地球半径]

質量

[地球質量]

質量-半径の関係

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図 20 脱出速度と熱速度の比較

各惑星が大気を保持できるかどうかを調べるため,上図に脱出速度と熱速度の比較をグ

ラフにまとめた.上表より,地球サイズの地球よりもやや質量が大きい惑星 Kepler-11b 及

びスーパーアース以上の質量をもつ惑星 Kepler-11c の重力は地球にほぼ等しく,

Kepler-11d,Kepler-11e は,重力が下回るがいずれも脱出速度が地球より大きいので,大

気の化学組成に依らず何らかの大気を保持していることが分かる.またさらに詳しく惑星

のトランジットの際に分光した結果から判るように Kepler-11b, c は水素,ヘリウムガスや

水を,Kepler-11d, e, f は水素を十分保持できる環境であると推測できる.特に Kepler-11c

は大気分子の熱速度に対して脱出速度が非常に大きいことが分かる.一方惑星 Kepler-11f

は質量,サイズ共にもっとも地球に近いとされている惑星の一つである.惑星系 Kepler-11

の平均重力を下回り,半径が地球の 2~4 倍で地球よりも若干脱出速度が 10.1[km/s]と小さ

いが,熱速度が小さいため大気を保持していることが分かる.

またいずれも,5 個の惑星のトランジットの際に検出した大気の組成などから水素,ヘリ

ウム,特に水が存在することが判っているためハビタブル・ゾーンに入っているが地球よ

り高温である為生命は住みにくいだろうと予想できる.

対して M 型星赤色矮星の持つ惑星 GJ1214 b は,半径が地球の 2 倍ほどであるに対して

地球,

11.15945963

Kepler-11 b, 11.64547226

Kepler-11 c, 22.86355143

Kepler-11d, 14.86011008

Kepler-11 e, 15.17481358

Kepler-11 f, 10.95674823

GJ1214 b, 17.31695015

地球,

0.501164924

Kepler-11 b, 1.063637677

Kepler-11 c, 1.023829387

Kepler-11d, 4.239497994

Kepler-11 e, 4.033790011

Kepler-11 f, 0.006588357

GJ1214 b, 3.706820637

0

5

10

15

20

25

脱出速度・熱速

脱出速度と熱速度の比較

脱出速度[km/s]

熱速度[km/s]

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脱出速度が大きい.どの惑星も大気分子の熱速度が脱出速度を上回るということはないの

で何らかの気体分子を含んだ大気を保持できていることが分かる.

3.中心星のスペクトルとハビタブル・ゾーンの位置・規模

G 型星黄色矮星の Kepler-11 の 5 個の惑星の軌道は,中心星と少し距離があるのに対し

GJ1214 b は M 型赤色矮星の中心星と至近距離の軌道を周回していることが分かった.

G 型黄色矮星 Kepler-11 のハビタブルゾーンが 0.8~1.6AU にあるが,実際 Kepler-11b-f

の 5 個の惑星の軌道が太陽系の金星軌道以内に収まっており理論計算と大きくかけ離れて

いる.また G 型黄色矮星であるにも関わらず質量が太陽の 95%と若干軽いためハビタブル

ゾーンがその分中心星に近いところに位置していることが分かる.

図 21 惑星系 Kepler-11 と太陽系の内惑星の軌道の比較

M 型赤色矮星 GJ1214 では 0.05~0.11AU とやはり至近距離にシフトしていることが分

かった.

Kepler-11 は太陽よりわずかに軽いが性質としてそれほど大差はない.また GJ1214 は太

陽よりも表面温度が低く,なおかつ質量が太陽の 10%ほどしかなく軽い為,ハビタブル・

ゾーンが至近距離にシフトしていると考えられる.

理論上,Kepler-11 のハビタブルゾーンは 0.8~1.6AU にあるとされるがこれを大きく覆

し,太陽系の内惑星軌道ぐらいの近い位置にある軌道を周回し,Kepler-11g 以外残りの 5

個の惑星がハビタブルゾーンに入っていることが分かる.これは,惑星のトランジットの

際の分光観測から大気の成分が特定でき,惑星 b, c には水素,ヘリウム,水があり,惑星

d, e, f には水素の大気があると考えられているためである.

また,GJ1214 はハビタブルゾーンよりも内側にあって,かつ中心星に近い軌道を周回し

ている.分光観測から,水素の大気があると考えられている.

M 型星が持つ惑星のハビタブルゾーンのほうが,G 型星が持つ惑星のハビタブルゾーン

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40

よりも中心星寄りの範囲に位置していることが分かる.これは,M 型星のほうが放出する

エネルギーが小さく表面温度が G 型星よりも低いためであると考えられる.

4. 中心星の金属量は「0」に近いほど,太陽に性質が近い

Kepler-11 はスペクトル型が太陽と同じ「G 型」であるが,共通点はこれだけではなく金

属量が太陽と同じ「0」であることが挙げられる.実際に,6 個中 5 個の惑星は地球型惑星

であり太陽系の水星,金星,地球,火星に似ている部分があると考えられている.

これに対して,GJ1214 は Kepler-11 よりも質量が小さく,また暗い M 型の赤色矮星で

あり,金属量が 0.39 とわずかに大きいが水素の大気に覆われた地球型惑星を持っている.

図 22 中心星の金属量と惑星発見数の関係

2011 年 11 月 8 日現在 http://exoplanet.eu/

中心星の金属量を決定づけるのは,惑星系形成時にまで遡ることになる.原始惑星系円

盤の初期条件によって,金属量,惑星のタイプや大気組成が決まる.金属量が+0.2 よりも

大きい場合,下図からも分かるとおり惑星の数が一気に増えるが,むしろ地球型惑星が減

り木星型惑星の増加を意味しているのかもしれない.

つまり,金属量が+0.2 以上の中心星が地球型惑星を持っている可能性は低い.むしろ中

心星の金属量が太陽の「0」に近いほど,水素,ヘリウム,水など生命にとって必要不可欠

な元素を保持する惑星が付近に存在する可能性があると考えられる.

スペクトル型が太陽型(F,G,K)以外の場合でも惑星を持つ M 型の恒星の金属量が 0 に

近ければ,太陽と酷似した性質を持つことになる為その惑星が生命を持つ可能性が高くな

る.

5. スペクトル型が太陽型以外の中心星の温度が低いと,惑星が至近距離にあっても表面

温度が低い.

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図 23 Kepler-11 系 5 惑星と惑星 GJ1214b の表面温度の比較

上のグラフは各惑星の表面温度を,計算値と実際の観測値(Web サイトに掲載されている

データ)を比較しプロットを重ねたものである.

惑星 表面温度[K]

(理論値)

表面温度[K]

(観測値)

GJ1214b 546.9140287 550.8677136

Kepler-11b 951.9152922 952.4691086

Kepler-11c 875.365172 882.5080236

Kepler-11d 731.7058129 720.5647839

Kepler-11e 652.4771359 652.3350747

Kepler-11f 575.2535331 574.6475917

表 8 表面温度の理論値と観測値の比較

0

200

400

600

800

1000

1200

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

表面温度[

K]

中心星からの平均距離[AU]

惑星の表面温度の比較

表面温度[K](計算値)

表面温度[K](観測値) 惑星GJ1214b

惑星Kepler-11b

惑星Kepler-11c

惑星Kepler-

11d 惑星Kepler-11e

惑星Kepler-11f

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42

上のグラフのように,G 型星の Kepler-11 は 5 惑星とも距離が地球以内(1AU 以内)にあ

っても表面温度が高いが惑星 GJ1214b は中心星の温度が低いため,至近距離にあるにも関

わらず惑星の表面温度が低いことが判る.これは中心星のスペクトル型による性質の違い

であると考えられる.

4.2 今後の課題

自作ソフトウェアの視線速度曲線の完成度がそれほど高くない為,明確に一部の惑星の

ぶれの様子を明確に表示することができなかった.今後時間をかけて大幅に改良する必要

がある.

5.まとめ

今回のコンピュータ解析を通じて行った内容は以下のとおりである。

1. G 型黄色矮星 Kepler-11 系の 5 惑星と,M 型赤色矮星 GJ1214 を周回する GJ1214b の

諸物理量を算出

2. 1 を前提とした上記の 2 つの惑星系の惑星,中心星の比較,推測

上記の 2 つの惑星系を比較することにより,G 型星及び M 型星の持つ惑星の組成や性質

を推定することができる.この推定によって,ハビタブルプラネット(生命居住可能惑星)

がどのような条件が満たされれば存在し得るか予想できる.

また,ハビタブルか否かは別問題として,大気組成などから太陽系の地球に類似した惑

星は太陽系外にも,我々の想像を超えるほど多く存在していることが判った.

6. 付録

付録 A ドップラー法

惑星による恒星のふらつきで偏移するスペクトルを利用した初の系外惑星の発見となっ

た 1995 年以来主要になっている観測手法である.観測から,公転周期,準振幅,惑星-中

心星間の距離,離心率を調べ,質量関数から惑星の質量下限値を算出する.

図 4 のように惑星が恒星の周りを公転運動している.このときの中心星のスペクトルを

とり,図 5 のような視線速度曲線が取得した場合を考える.

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惑星,中心星の質量をそれぞれ𝑀𝑝 ,𝑀∗ ,惑星-中心星間の距離を𝑎,中心星の軌道半径

をR ,公転速度(視線速度曲線の準振幅)を K とおくと,

(𝑎 − 𝑅):𝑅 = 𝑀∗:𝑀𝑝

R𝑀∗ = (𝑎 − 𝑅)𝑀𝑝

R =𝑀𝑝

𝑀∗ +𝑀𝑝𝑎 ⋯①

角速度ωとして,

運動方程式

{恒星:𝑀∗𝑅𝜔

2 = 𝐺𝑀∗𝑀𝑝

𝑎2

惑星:𝑀𝑝(𝑎 − 𝑅)𝜔2 = 𝐺𝑀∗𝑀𝑝

𝑎2

{恒星:𝑅𝜔2 =

𝐺𝑀𝑝

𝑎2 ⋯②

惑星:(𝑎 − 𝑅)𝜔2 =𝐺𝑀∗

𝑎2 ⋯③

②+③

𝜔2 =𝐺(𝑀∗ +𝑀𝑝)

𝑎3

ω =2𝜋

𝑃 だから,

(2𝜋

𝑃)2

=𝐺(𝑀∗ +𝑀𝑝)

𝑎3

ケプラーの第 3 法則

𝑃2

𝑎3=

4𝜋2

𝐺(𝑀∗ +𝑀𝑝) ⋯⑤

また,

= Rω =𝑀𝑝

𝑀∗+𝑀𝑝𝑎

2𝜋

𝑃 より,

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𝑎 =𝑃(𝑀∗ +𝑀𝑝)

2𝜋𝑀𝑝𝐾 ⋯⑥

⑥を⑤に代入し,𝑎を消去して

2𝜋𝑀𝑝3

𝑃(𝑀∗ +𝑀𝑝)𝐾3=

1

𝐺

円軌道の場合の質量関数は,

𝑓(𝑀) =𝑀𝑝

3

(𝑀∗ +𝑀𝑝)2 =

𝑃2𝐾3

2𝜋𝐺

と表され,右端は観測量から成る.

したがって,𝑀𝑝 ≪ 𝑀∗のとき,惑星の質量下限値は

∴ 𝑀𝑝 = 𝑚 sin 𝑖 ≈ 𝐾 (𝑃𝑀∗

2

2𝜋𝐺)

13

となる.

付録 B トランジット法

2.1.4.3 節の図 6 より,惑星が恒星の前面を通過する際に,下表のように光度が減少する

現象が起こった時の星の断面積と光度を調べた.

断面積 𝑅∗2 (𝑅∗

2 − 𝑅𝑝2)

中心星の光度 1.000 𝐿𝑚𝑖𝑑𝑑𝑙𝑒

上表のように惑星のトランジット前の中心星の光度を 1 とした場合,

(トランジット前の光度の比)=(トランジット中の光度の比)

だから,

𝑅∗2: (𝑅∗

2 −𝑅𝑝2) = 1.000:𝐿𝑚𝑖𝑑𝑑𝑙𝑒

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𝑅∗2𝐿𝑚𝑖𝑑𝑑𝑙𝑒 = 𝑅∗

2 − 𝑅𝑝2

減光率は,

𝑅𝑝2

𝑅∗2 = 1 − 𝐿𝑚𝑖𝑑𝑑𝑙𝑒

と表され,これは光度曲線の窪みの深さを示している.

したがって,求める惑星の半径は

𝑅𝑝 = 𝑅∗√1 − 𝐿𝑚𝑖𝑑𝑑𝑙𝑒

である.

惑星検出可能性を見積もるには,減光率の他に

惑星がトランジットする確率 𝑝~𝑅∗

𝑎

惑星のトランジット継続時間 𝑇𝑐~13√𝑎 [hr]

を調べればよい.

惑星の半径が判ると,質量の確定値が得られる.それによってさらに,密度や重力など

詳細の物理量が得られる.

但しこの方法にも問題があり,必ずしも惑星のトランジットのみで影ができるとは限ら

ない.このため,高い信憑性を得るためにもドップラー法などの他の方法で測ることで,

惑星の存在の確証を得ることが必要になってくる.

付録 C トランジット観測から得られる惑星の物理量(密度・重

力・表面温度)

惑星の半径の値から,密度と断面積が得られる.

密度は,質量を体積で割って

ρ =𝑀(𝑟)

43𝜋𝑟

3=

3𝑀(𝑟)

4𝜋𝑟3[ ∙ −3] ・・・(C − 1)

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から計算できる.下図では,これを地球密度で割った比を 1000 倍しk 3を単位とした.

重力は,惑星に対する物体の質量を𝑚 として,

𝑚𝑔 = G𝑀𝑚

𝑅2

𝑚𝑔𝑃 = G𝑀𝑚

𝑅 2

と表される.この 2 式を割ると,

𝑔𝑃 =𝑀𝑃

𝑀 (𝑅

𝑅𝑃)2

𝑔 ・・・(C − 2)

となる.

(中心星の表面積)×(単位面積当たりの輻射エネルギー)=4 𝑅∗2 × 𝜎𝑇∗

4

受ける単位面積当たりのエネルギーは、

4 𝑅∗2 × 𝜎𝑇∗

4

4𝜋(1𝐴𝑈)2

これを惑星の断面積で受けるから,その総量は,

𝑅𝑃2 × 4𝜋𝑅∗

2 × 𝜎𝑇∗4

4𝜋(1𝐴𝑈)2

4 𝑅∗2 × 𝜎𝑇∗

4

4𝜋(1𝐴𝑈)2=

𝑅𝑃2 × 4𝜋𝑅∗

2 × 𝜎𝑇∗4

4𝜋(1𝐴𝑈)2

これより,アルベド(反射率)を考慮しない場合の求める惑星の表面温度は,

𝑇𝑃 = 𝑇∗√𝑅∗

2𝑎 [ ]・・・(C − 3)

と表される.

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付録 D 潮汐力

T = G𝑀∗𝑚

𝑎2− G

𝑀∗𝑚

(𝑎 + Δ𝑟)2= G

𝑀∗𝑚

𝑎2{1 −

𝑎2

(𝑎 + Δ𝑟)2} = G

𝑀∗𝑚

𝑎2

2𝑎Δ𝑟 + (Δ𝑟)2

(𝑎 + Δ𝑟)2

ここで, + Δr ≈ , Δr → 0 と近似すると,

∗= 2G𝑀∗𝑚

𝑎2Δ𝑟 =

𝑑𝐹

𝑑𝑎Δ𝑟 ・・・(D − 1)

となる.

付録 E 惑星の質量と半径・ハビタブルゾーン

E1 惑星の質量と半径の関係

惑星の密度と質量と密度の関係は一般的に,

{

𝜌(𝑟) =

𝑀(𝑟)

43𝜋𝑟

3=

3𝑀(𝑟)

4𝜋𝑟3 ・・・③

𝑑𝑀(𝑟)

𝑑𝑟= 𝜌(𝑟)・4𝜋𝑟2 ・・・④

と表され,*16微分方程式である④を解くことによって,惑星の質量𝑀(𝑟)と半径𝑅𝑝の関係が

得られる.

③を④に代入し,

𝑑𝑀𝑃(𝑟)

𝑑𝑟=

3𝑀𝑃(𝑟)

𝑟

②を r で積分し,①を代入すると

𝑑𝑀𝑃(𝑟)

𝑀𝑃(𝑟)= 3

𝑑𝑟

𝑟

変数分離法より,

lo 𝑀𝑃(𝑟) = 3 lo 𝑟 + 𝐶

lo 𝑀𝑃(𝑟)

𝑟3= 𝐶

*16 ③を④に代入し,微分方程式を解くことで⑤が得られる.

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𝑀𝑃(𝑟)

𝑟3= 𝑒𝐶 = 𝐶´

M(𝑟) = 𝐶´𝑟3 ・・・⑤

但し,初期条件は r = 𝑅𝑝 のとき,

M(𝑅𝑝) = 𝐶´𝑅𝑝3

となる.𝐶´は r = 𝑅𝑝 を満たす積分定数である.観測から得た惑星の質量は,半径の 3 乗

に比例する.

即ち,

M(𝑟) ∝ 𝑟3

である.

また太陽系の惑星において*17木星を基準にすると,木星の質量と半径の関係は,

𝑀 = 𝐶´𝑅 3

となるから,系外惑星の場合はM(𝑟) = 𝑀𝑃sin𝑖として

𝑀𝑃sin𝑖 = 𝐶´𝑅𝑝3 (E − 1)

と表される.

したがって,この 2 式の辺々を割ると,一般的に惑星の半径は木星を基準として

(𝑅𝑃

𝑅 )

3

=

{

𝑀𝑃sin𝑖

𝑀 (𝑀𝑃sin𝑖 < 𝑀 )

1~2.35 (𝑀 < 𝑀𝑝 sin 𝑖 < 13𝑀 )

と表される。

*17 1995 年の系外惑星発見以来,木星型ガス惑星が多く発見された.

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E2 ハビタブルゾーン(Habitable Zone)

生命生存可能領域のことを示す.中心星の表面温度から,ハビタブルゾーンの範囲や中

心が計算できる.

生命生存の可能性は,ハビタブルゾーンの内外,中心星の温度や光度に大きく影響する.

ハビタブルゾーンの中心までの半径は、

逆二乗の法則より

𝑎𝐻𝑍 = √𝐿∗𝐿◉

=𝑅∗

𝑅◉

(𝑇∗𝑇◉

)

2

=𝑎𝑚𝑖𝑛 + 𝑎𝑚𝑎𝑥

2

と与えられる.

付録 F

F1 プランクの式

d

kThc

hTB

1/exp

122

3

(1)

F2 ステファン・ボルツマンの法則(Stefan Boltzmann’s law)

天体から受ける放射エネルギーフラックス(Energy Flux)は、絶対温度 T の4乗に比

例する。即ち、全振動数で積分することで得られる。

4

0TdTBF

ここで、比例定数σは、ステファン・ボルツマン定数(Stefan Boltzmann’s constant)

と呼ばれ、

σ = 5.671 × 10−8 𝑊 2

となる。

F3 星の光度

星の光度は,半径をR とすると、星の表面積24 R にエネルギーフラックス(流束)を乗

じて得られ,(1)を用いて

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TRFRL 22 44 (2)

と表わされる.

実際は,太陽に対する相対的な光度を算出することで,星の光度を計算している.

太陽の光度は,

𝐿◉ = 4𝜋𝑅◉2𝜎𝑇

◉2 (3)

と表される.

したがって,星の太陽に対する光度は、(2)、(3)を用いると

𝐿

𝐿◉

= (𝑅

𝑅◉

)

2

(𝑇

𝑇◉

)

4

(4)

となる.

F4 ウィーンの変位法則(Wien’s law)

c の関係を用いて(1)を変形すると,

d

kTh

hcdTB

1/exp

125

2

これを波長で偏微分すると,

6

m 10896.2 T

を得る.

図 24 黒体放射のエネルギー分布

星からの光を分光器で分光しエネルギー分布を調べると、ピークの波長𝜆 [nm]は、絶

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51

対温度T(K)に反比例することを示している.

F5 星の色と表面温度

スペクトル型 有効温度

𝑇𝑒𝑓𝑓[K]

色 該当する星の例 スペクトルの特

O 数万度 Pale 電離ヘリウムの

B 25000-11000 Pale リゲル,スピカ 水素と中性ヘリ

ウムの線

A 11000-7500 White シリウス,織女

水素のバルマー

F 6000-7500 Light Yellow カノープス 水素のバルマー

G 6000-5000 Yellow 太陽,カペラ 及び金属元素の

K 5000-3600 Orange アルデバラン 金属の吸収線が

非常に強い

M

3600K 以下

Red

アンターレス,

ペデルギウス

金属の吸収線

TiO などの分子

の吸収線

表 9 スペクトル型と星の性質

星の色から,表面温度を推定できるためより厳密に測定する必要がある.そこで異なっ

た色フィルターを付けて星の明るさ(等級)を測定することで星の色を決定する方法がある.

付録 G 最新の系外惑星科学事情

2011 年 12 月 5 日,NASA(米国航空宇宙局)によって Kepler-22b という表面温度が摂氏

22℃の地球型惑星とされるハビタブルゾーン内に入っている惑星が発見されたと発表が

あった.この惑星は中心星から 0.849AU 離れた軌道を 289.8623 日で周回している.まだ

詳しい組成が判っていないが,分かっているデータを用いて自身で解析したところ

Kepler-22 が太陽系に最も類似していて,表面温度や中心星と惑星の距離などから

Kepler-22b が地球型惑星であることが判っている.

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図 25 表面温度が摂氏 22℃で,ハビタブルゾーンに入っている地球型惑星の

Kepler-22b(想像図/NASA)

NASA の発表によると,惑星の重力は地球の 2.4 倍~最大で 6.1 倍とされているが最大

値よりも小さい可能性が高い.Kepler-22 系が太陽系に酷似していることは,付録 C の惑

星の表面温度の式(C-3)から証明された.

図 26 太陽系と Kepler-22 系

0.85[AU]の距離にあるKepler-22bを火星,木星の距離まで動かす思考実験をしてみると,

0.849 [AU],

285.7893982

[K]

1.0 [AU],

263.3297695

[K] 1.52026 [AU],

213.5703821

[K]

5.2026 [AU],

115.4488844

[K]

1.0 [AU],

278.6791354

[K] 1.52026 [AU],

226.0192972[

K]

122.1783445

[K]

0

50

100

150

200

250

300

350

0 0.8 1.6 2.4 3.2 4 4.8 5.6

表面温度[

K]

中心星からの距離[AU]

太陽系とKepler-22系の表面温度の

比較

Kepler-22b

地球

火星

木星

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表面温度がそれぞれこれらに近いことが判る.したがって,Kepler-22b がハビタブルゾー

ン内に在り地球に似た環境である可能性は高いだろう.

0.85 [AU]にある Kepler-22b の平衡温度は,思考実験で 1.0 [AU]にある Kepler-22b の表

面温度 263[K]に非常に近い 262[K]とされているため,Kepler-22 系が太陽系に類似してい

ることは確かだろう.

現在,Kepler-22b のドップラー測定の計画が進められている.同じようにソフトウェア

を用いてシミュレーションしているが,視線速度の振幅の大きさによって最終的に惑星の

質量の確定値と重力の大きさが決まる.例えば,Kepler-22b の質量を予測する場合,準振

幅 K を 1.4 ぐらいにすると,おおよそ地球質量の 14 倍ほどの質量が算出されることが判っ

ている.

したがって,距離と惑星の表面温度を考えた場合,Kepler-22 系が太陽系に類似している

のではないかと推定できる.一方,質量が未確定であるが惑星の重力比及び付録 E の理論

を用いると,半径の 3 乗に比例する.

理論上では Kepler-22b の質量は地球質量の 13.8 倍ではないかと推定される.これは

Kepler-11c と質量がほぼ等しく,式(C-2)及び式(E-1)から導かれることが判る.

図 27 Kepler-11 系の 5 惑星と Kepler-22b,太陽系の惑星(地球,火星,木星)との表面温

度の比較

式(C-3)によって,Kepler-22b が地球と表面温度がほぼ同じであることが判る.また,同

Kepler-22b,

0.849 [AU],

285.7893982

[K]

Kepler-

11b,0.091[AU]

,952.4691086[

K] Kepler-11c,

0.106[AU],882

.5080236 [K]

Kepler-11d,

0.106 [AU],

720.5647839

[K] Kepler-11e,

0.194 [AU],

652.3350747

[K]

Kepler-11f,

0.25 [AU],

574.6475917

[K] Mars, 1.5026

[AU],

226.0192972

[K]

Jupiter,

5.2026 [AU],

122.1783445

[K] 0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

1100

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 5.5

中心星からの距離 [AU]

惑星の表面温度

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54

じはくちょう座にあり,スペクトルが G 型の星であるにも関わらず Kepler-11 も Kepler-22

も,全体的に Kepler-11 の 5 惑星の表面温度が高いのは,中心星からの距離が近い上ハビ

タブルゾーンを外れているためと考えられる.一方,ハビタブルゾーン内に在る Kepler-22b

は,Kepler-11 の 5 惑星よりも太陽系の惑星に近い性質を持つことが分かった.

付録 H HD209458 (V0376Peg)のトランジット測光観測

地球型惑星の比較の他に,HD209458(V0376 Peg)のトランジット測光観測にも取り組ん

だ.口径 8~10cm の小型望遠鏡でトランジット観測できることを知り,せっかくの機会な

ので明星大学天文台の 40cm 大型望遠鏡を用いてトランジットによる減光観測を試みてき

た.

観測的研究自体は中途段階で終わらざるを得なかったが,観測機器の扱い方,ステラナ

ビゲータ―9 による星図の理解,ステライメージ 5 を用いた測光の方法など習得したものは

多い.以下に観測によって得たデータの解析をした一部を示す.

図 28 HD209458 の減光観測

この測光観測は 2011年 10月 26日に撮像した観測データの解析結果である.縦軸は等級,

横軸はステライメージ 5 による測光の回数を示している.

0

2

4

6

8

10

0 50 100 150 200

等級

測光回数

HD209458の等級

2.5*log(C1/V0376Peg

)+Cmag

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55

付録 I 本研究で用いた天体の物理定数

天体/物理量 質量[kg] 半径[km] 表面温度[K]

太陽 1.989 × 103 696,000 5778

木星 1.899 × 102 71,492 115

地球 5.974 × 1024 6378 289

1[day] =( 1 時間を秒換算したもの) ×24[hour]=3600×24=86400[sec]

天文単位 1[AU]=1.4959787×1011 [m]

重力加速度 𝑔 = 9.80665 [ s2⁄ ]

万有引力定数 G = 6.6742 × 10−11 [N ∙ 2 k 2]

ボルツマン定数 𝑘𝐵 = 1.381 × 10−23 [J ]

付録 J ケプラーの第 3 法則の導出

図のように質量𝑀∗,角速度ωで回転する恒星から𝑎だけ離れた軌道を周期 P,質量𝑀𝑃の惑

星が周回しているとすると,

角速度をω =2𝜋

𝑃 (式 F-1)

とすると,

𝑚

質量 𝑀∗

質量

Page 57: G 型星と M 型星を周回する地球型惑星の 考究数は2011 年現在で700 個を超えている.2011 年2 月には,Kepler-11 で5 個の地球サイ ズに近い惑星が発見され,注目を浴びている.

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運動方程式

{𝑀𝑃𝑟𝜔

2 = 𝐺𝑀∗𝑀𝑃

𝑎2 (式 F − 2)

𝑀∗(𝑎 − 𝑟)𝜔2 = 𝐺𝑀∗𝑀𝑃

𝑎2 (式 F − 3)

(F-2)+(F-3)より,

𝜔2 =𝐺𝑀∗

𝑎3

4𝜋2

𝑃2=

𝐺𝑀∗

𝑎3

変形して,

∴𝑃2

𝑎3=

4𝜋2

𝐺(𝑀∗ +𝑀𝑃)

したがって,ケプラーの第 3 法則は

𝑀∗ ≫ 𝑀𝑃のとき,

∴𝑃2

𝑎3≅

4𝜋2

𝐺𝑀∗

と表される.

即ちこれは,公転周期の 2 乗が軌道長半径の 3 乗に比例していることを表す.

∴ 𝑃2 ∝ 𝑎3

観測から軌道長半径が分かれば,惑星の周期が分かる.

7. 謝辞

卒業研究のご指導をいただいた祖父江義明教授,日比野由美先生,及び大学院生の先輩

方,そして学部生の皆さん,理工事務室の方々,大変お世話になりました.1 年間本当にあ

りがとうございました.

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8. 参考

文献目録

P.ウルムシュナイダー. (2008). 宇宙生物学入門. シュプリンガージャパン.

井田茂. (2007). 系外惑星. 東京大学出版会.

佐藤勝彦. (2008). 宇宙に知的生命体は存在するのか. 株式会社ウェッジ.

祖父江義明. (2007). 宇宙生命へのアプローチ. 誠文堂新光社.

田村元秀. (2011). 地球外生命体を探せ.

渡部潤一. (2007). 宇宙のしくみ. 新星出版社.

渡部潤一・井田茂・佐々木晶. (2006). 太陽系と惑星. 日本評論社.

尾崎洋二. (2009). 宇宙科学入門 第 2 版. 東京大学出版会.

参考 Web サイト

The Extra-solar Planets Encyclopaedia http://exoplanet.eu/

使用したソフトウェア・機材

ソフトウェア「Planet Hunter9」(自作) 堂ヶ崎知誠

画像解析用ソフト ステライメージ 5

ステラナビゲータ 9

関数電卓