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CONTENTS 2017 12/23 本誌の記事は「日経テレコン」 「G-Search」 「ELNET」 「FACTIVA」等のデータベースに収録されており、フリーキーワードで検索、購入できます。 94 パナを担ぎ出す トヨタ の焦り 94 ニュース 深 掘り 96 上場の先に佐川が描く青写真 97 リニアでも懲りないゼネコン 98 エルサレムを首都認定 トランプ大統領の真意 95 イオン、周回遅れのEC戦略 ※今号は「グローバルアイ」を休載します。 100 平成経済の証言 堺屋太一 84 ブックス&トレンズ 『隠れ疲労』梶本修身 66 トップに直撃 住友ゴム工業社長 池田育嗣 11 Hot Issue 根本 敬 9 る眼 金融緩和長期化の副作用早川英男 11 Hot Issue ロヒンギャ問題は対岸の火事ではない/根本 敬 66 トッ 池田育嗣 住友ゴム工業社長 67 ベトナム経済好調の裏に中国・韓国との関係強化 68 海外勢が18年は「円」に注目/佐々木 融 70 US Affairs ロシア疑惑のカギを握る大統領の税務書類/立岩陽一郎 72 北京郊外立ち退き騒動に見え隠れする南北格差/孫 田夫 74 フォーカス政治 "ちぐはぐ"人づくり革命 今こそ根拠ある政策を/山口二郎 76 知の技法 出世の作法 川喜田二郎の発想法で表現法を学ぶ①/佐藤 優 78 人が集まる街 逃げる街 変貌する"サラリーマンの聖地新橋/牧野知弘 79 日本の選挙・党派の底が浅い理由岡本隆司 80 非常時の組織論 通勤ラッシュに存在している暗黙のルール/伊藤祐靖 81 サラリーマン弾丸紀行 4泊5日・9万円の世界一周旅行/橋賀秀紀 84 ブックス &トレンズ 『 隠れ疲労』 を書いた梶本修身氏に聞く ほか 100 平成経済の証言 危機のただ中、経企庁長官に/堺屋太一 102 Readers & Editors 編集部から、読者の手紙 全国で相次ぐ 住民投票 民意を阻む分厚い壁 62 深層 リポート 64 日本初の住民投票 原発を断念させた町 65 INTERVIEW 武田真一郎 成蹊大学教授 住民投票を求める動きが全国に広がっている。しかし、 実施のハードルは高く民意反映に課題は多い。 62 58 産業 リポート 「脱百貨店経営」を掲げ、独 自路線を突き進む。傘下の 大丸と松坂屋の店舗で財務 の新機軸を打ち出し、構造 転換を加速する。 ネット 広告 CONTENTS 2017 12/23 インターネットは巨大 な空間。広告がどう 表示され、誰かが見 たかどうか、確認す るのは難しい。 Getty Images 表紙から18 1 特集 52 2 特集 富士ゼロックスの海外での 不正会計発覚を受け、親会 社の富士フイルムHDは関 与を強め出直しを図る。 本気になった富士フイルム 不正会計を機に大手術 J. フロント の財務革命 店舗B バランスシート S の威力 61 INTERVIEW 山本良一 J. フロント リテイリング社長 人に愛されてこそ広告 鹿毛康司 エステー 執行役 エグゼクティブ・ クリエイティブ・ディレクター 44 38 三谷壮平 電通デジタル 広告主へ説明責任果たす 葉村真樹 LINE 『嫌われ者』の自覚を 有馬 誠 楽天データマーケティング 『いいかげんさ』を廃する 「MITテクノロジーレビュー」新編集長 優良メディアは 運用型を選ばない ギデオン・リッチフィールド 48 Nephi Niven 20 25 26 29 30 34 36 38 42 44 46 48 49 50 成長市場で露呈する歪み これは広告詐欺だウーバー電通子会社を訴えた 広告主に渦巻く3つの不信 企業経営者・幹部 P&Gはネット広告の何に怒ったのか 御社の広告、機械が見てます 蔓延する広告詐欺、偽りの 成果その広告、割に合っていますか? 広告でむしろイメージが損なわれる ブランド毀損リスク アップル付きまとい広告に鉄鎚 インターネット広告めぐる企業の本音 業界キープレーヤーの反省と戦略 電通デジタル/ヤフー/ LINE/楽天データマーケティング アルゴリズムが「見たい広告」を選ぶ 中国のユニコーン・今日頭条はここまでやる INTERVIEW 鹿毛康司 エステー執行役 ZARAはなぜ広告なしで強いのか INTERVIEW ギデオン・リッチフィールド 「MITテクノロジーレビュー」新編集長 アドブロックは日本にも広がるか ネット広告用語集 21 本誌緊急独自調査 必読 アドフラウド ビューアビリティ ブランドセーフティ 41 40 56 INTERVIEW 古森重隆 富士フイルムホールディングス 会長兼CEO

Getty Images ネット広告 - 東洋経済STOREGetty Images ネット広告 の 闇 ˜˚˛˝˙ ˆ˛ˇ˘ ˘ ˛ ˙ ˚˛ ˙ ˘ ˛˚ ˘ ˝ ˜ ˙ ˘˚ ˚˛ ˝ 特集/ネット広告の闇

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  • CONTENTS 2017 12/23

    本誌の記事は「日経テレコン」「G-Search」「ELNET」「FACTIVA」等のデータベースに収録されており、フリーキーワードで検索、購入できます。

    94

    パナを担ぎ出すトヨタの焦り94ニュース深掘り

    96 上場の先に佐川が描く青写真97 リニアでも懲りないゼネコン98 エルサレムを首都認定

    トランプ大統領の真意

    95 イオン、周回遅れのEC戦略

    ※今号は「グローバルアイ」を休載します。

    100

    平成経済の証言堺屋太一

    84

    ブックス&トレンズ『隠れ疲労』 梶本修身

    66

    トップに直撃住友ゴム工業社長 池田育嗣

    11

    Hot Issue根本 敬

    9 経 済 を 見 る 眼 金融緩和長期化の副作用/早川英男11 H o t I s s u e ロヒンギャ問題は対岸の火事ではない/根本 敬66 ト ッ プ に 直 撃 池田育嗣 ● 住友ゴム工業社長67 少 数 異 見 ベトナム経済好調の裏に中国・韓国との関係強化68 マ ネ ー 潮 流 海外勢が18年は「円」に注目/佐々木 融70 U S A f f a i r s ロシア疑惑のカギを握る大統領の税務書類/立岩陽一郎72 中 国 動 態 北京郊外立ち退き騒動に見え隠れする南北格差/孫 田夫74 フ ォ ー カ ス 政 治 "ちぐはぐ"人づくり革命 今こそ根拠ある政策を/山口二郎76 知の技法 出世の作法 川喜田二郎の発想法で表現法を学ぶ①/佐藤 優78 人が集まる街 逃げる街 変貌する"サラリーマンの聖地"|新橋/牧野知弘79 歴 史 の 論 理 日本の選挙・党派の底が浅い理由/岡本隆司80 非 常 時 の 組 織 論 通勤ラッシュに存在している暗黙のルール/伊藤祐靖81 サラリーマン弾丸紀行 4泊5日・9万円の世界一周旅行/橋賀秀紀84 ブックス &トレンズ 『隠れ疲労』を書いた梶本修身氏に聞く ほか

    100 平 成 経 済 の 証 言 危機のただ中、経企庁長官に/堺屋太一102 Readers & Editors 編集部から、読者の手紙

    全国で相次ぐ住民投票民意を阻む分厚い壁

    62深層リポート

    64 日本初の住民投票 原発を断念させた町65 INTERVIEW│武田真一郎 成蹊大学教授

    住民投票を求める動きが全国に広がっている。しかし、実施のハードルは高く民意反映に課題は多い。

    62

    58産業リポート

    「脱百貨店経営」を掲げ、独自路線を突き進む。傘下の大丸と松坂屋の店舗で財務の新機軸を打ち出し、構造転換を加速する。

    ネット広告の闇CONTENTS 2017 12/23 インターネットは巨大な空間。広告がどう表示され、誰かが見

    たかどうか、確認するのは難しい。

    Getty Images

    【表紙から】

    18第1特集

    52第 2特集

    富士ゼロックスの海外での不正会計発覚を受け、親会社の富士フイルムHDは関与を強め出直しを図る。

    本気になった富士フイルム不正会計を機に大手術

    J. フロントの財務革命「店舗B

    バランスシート

    S」の威力

    61 INTERVIEW│山本良一 J. フロント リテイリング社長

    人に愛されてこそ広告

    鹿毛康司エステー 執行役 エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター

    44

    38

    三谷壮平電通デジタル

    広告主へ説明責任果たす

    葉村真樹LINE

    『嫌われ者』の自覚を

    有馬 誠楽天データマーケティング

    『いいかげんさ』を廃する

    「MITテクノロジーレビュー」新編集長

    優良メディアは運用型を選ばない

    ギデオン・リッチフィールド

    48Nephi Niven

    20

    25

    26

    2930

    3436

    38

    42

    444648

    4950

    成長市場で露呈する歪み

    「これは広告詐欺だ」米ウーバーが電通子会社を訴えた広告主に渦巻く3つの不信

    企業経営者・幹部P&Gはネット広告の何に怒ったのか御社の広告、機械が見てます蔓延する広告詐欺、偽りの「成果」その広告、割に合っていますか?広告でむしろイメージが損なわれるブランド毀損リスクアップルが「付きまとい広告」に鉄鎚

    インターネット広告めぐる企業の本音業界キープレーヤーの反省と戦略電通デジタル/ヤフー/ LINE/楽天データマーケティングアルゴリズムが「見たい広告」を選ぶ中国のユニコーン・今日頭条はここまでやるINTERVIEW│鹿毛康司 ● エステー執行役ZARAはなぜ広告なしで強いのかINTERVIEW│ギデオン・リッチフィールド     ● 「MITテクノロジーレビュー」新編集長アドブロックは日本にも広がるかネット広告用語集21

    本誌緊急独自調査

    必読

    アドフラウド ビューアビリティ ブランドセーフティ

    41

    40

    56 INTERVIEW│古森重隆富士フイルムホールディングス会長兼CEO

  • Getty Images

    ネット広告

    の闇

    BrandSafety

    Viewability

    AdFraud

    Retargeting

    Bot

    Ad Clutter

    Tracking

    特集/ネット広告の闇

    19 週刊東洋経済 2017.12.23 18週刊東洋経済2017.12.23

    近年急拡大したインターネット広告に疑いの目が向けられている。広告は本当に見られているのか、効果を出しているのか──。ネット広告をめぐる問題を追った。本誌:杉本りうこ、緒方欽一、渡辺清治デザイン:新藤真実 進行管理:下村 恵

  • 富士フイルム 不正会計を機に大手術

    53 週刊東洋経済 週刊東洋経済2017.12.23 2017.12.23 52

    ンチをチャンスに変える。

    富士ゼロックスに富士フ

    イルムの血を入れて、もっと積極

    的に関与していく」と語るのは、

    富士フイルムホールディングス

    (HD)の古森重隆会長だ。

     

    今年4月、株式市場に衝撃が走

    った。富士フイルムHDが「子会

    社富士ゼロックスが利益を過大計

    上していた可能性があり、決算発

    表を延期する」と公表したのだ。

    翌日の同社の株価は一時前日比5

    %安の3966円へ急落し、出来

    高は前日の約8倍に膨らんだ(12

    月13日終値は4668円)。

     

    6月10日に公表された第三者委

    員会の調査報告書はもっと衝撃的

    だった。「架空の売り上げ計上」

    「不正会計の隠蔽指示」「売り上げ

    至上主義のあまり従業員に過度の

    プレッシャー」「倫理観や誠実性

    の欠如」……186ページに及ん

    だ報告書には厳しい言葉が並んだ。

     

    12月11日には東京証券取引所に

    求められて「改善報告書」を提出

    した。事件後の改善措置について

    説明が必要だったのだ。

     

    不正会計の舞台はニュージーラ

    ンドとオーストラリアだ。200

    4年から富士ゼロックス・ニュー

    ジーランドの社長だったニール・

    ウィッタカー氏は、売上高の目標

    達成率が高く、年間最優秀マネー

    ジング・ディレクター賞を3度受

    賞。15年4月には、より規模の大

    きな富士ゼロックス・オーストラ

    リアの社長に就いていた。

     

    しかし、ウィッタカー氏が両社

    で伸ばした売上高の一部は不正に

    積み上げられたもので、後に退職

    を勧告された。富士ゼロックスで

    は、機器の売り上げを計上するに

    は、販売後に一定以上のコピー枚

    数が見込めるなど、規定の条件を

    クリアする必要があった。しかし、

    ウィッタカー氏は、予想されるコ

    ピー枚数を過大に見積もり、不正

    に売上高を計上していた。このほ

    か消耗品在庫など多岐にわたる不

    正会計を実行。富士フイルムHD

    の10〜15年度の純利益は累計で2

    81億円過大に計上されていた。

     

    不正会計の責任を取り、富士ゼ

    ロックスは山本忠人会長はじめ3

    人の取締役と1人の常務執行役員、

    1人の常勤監査役が退任した。事

    件当時に富士ゼロックスの取締役

    でもあった古森氏は3カ月間、富

    士フイルムHD会長としての報酬

    の10%を返上する一方、富士ゼロ

    ックスの会長に就任した。富士フ

    イルムHDからは計7人の役員が

    派遣され、富士ゼロックスの取締

    役は半数が富士フイルムHD出身

    者となった。

     

    富士ゼロックスは、1962年

    に富士写真フイルム(現・富士フ

    イルム)と英国ランク・ゼロック

    スが50%ずつ出資して設立された

    合弁会社だ。米ゼロックスが開発

    した複写機の日本での販売を担っ

    た。複写機ビジネスは、一度納入

    すれば、その後のコピー利用量に

    応じて安定的に収益がもたらされ

    る。70年代に特許切れとなるまで

    市場を独占し、高収益を謳歌した。

    だが、特許切れ後は「雨後のタケ

    ノコのように競合が参入し、熾烈

    な競争」(富士ゼロックスの栗原

    博社長)状態に突入した。

     

    市場を海外に求め、90年にオー

    ストラリア、ニュージーランドな

    どの営業権をゼロックスから手に

    入れた。そのオーストラリアとニ

    ュージーランドで不正が行われた。

    この2社は英国のゼロックスが経

    営していた会社。「富士ゼロック

    スは西洋人の扱いに慣れていなか

    った」(古森氏)。富士ゼロックス

    のOBの一人も、「オーストラリ

    アとニュージーランドの現地法人

    の人たちは、日本の本社が出した

    方針に従わず、好き勝手にやるこ

    とが多かった」と明かす。

     

    富士ゼロックスに対する出資比

    率は01年に当初の50%から75%へ

    軽視された富士フイルム

    報告は必要最小限でいい

    第2特集

    「ピ

    12/23号_富士フイルムP2_図表1

    富士ゼロックスは屋台骨─富士フイルムホールディングスの 2017年3月期売上高内訳─

    (出所)富士フイルムホールディングス決算資料を基に本誌作成

    写真・電子映像3418億円

    全社売上高2兆3222億円

    富士ゼロックスを主力とするオフィス機器類 1兆0809億円

    ヘルスケア・高機能材料8995億円

    6月10日の第三者委員会報告を受け謝罪する富士フイルムHDの助野健児社長(中央)

    撮影:風間仁一郎

    富士ゼロックスの複写機。一度納入すると継続的に収益を得られる

    本気になった富士フイルム不正会計を機に大手術

    本誌:遠山綾乃

    富士ゼロックスの海外での不正会計発覚後、親会社の富士フイルムHDは関与を強め出直しを図る。

    ■富士ゼロックスでの不正会計の実態と背景影響額 281億円(2010~15年度の富士フイルムホールディングスの当期純利益に及ぼした累計額)

    内容富士ゼロックス・ニュージーランドと同オーストラリアでの売り上げ過大計上(機器販売で売り上げを計上するには、一定以上のコピー枚数が見込めるなど規定の条件をクリアする必要があったが、条件を満たさない案件でも売り上げを計上していた)

    背景❶�現地法人の社長や従業員のインセンティブが売上高の目標達成を重視して算出される仕組みであったことが、売り上げを不適切に早期に計上する誘因となった

    ❷富士ゼロックス・ニュージーランド社長に権限が一極集中していた❸富士ゼロックス、富士フイルムホールディングスの子会社管理体制の不備

    (出所)富士フイルムホールディングス「統合報告書」2017年版を基に本誌作成

    ■不正会計発覚をめぐる経緯年月 出来事

    2004年 ニール・ウィッタカー氏が富士ゼロックス・ニュージーランド社長に就任15年4月 ウィッタカー氏が富士ゼロックス・オーストラリア社長に転じる

    7月 富士ゼロックスの吉田晴彦副社長(当時)と米ゼロックス幹部に、ニュージーランドでの不正会計を告発するメールが届く

    8月 調査の結果、決算修正は必要だが、メールにあるような不正会計、売り上げ過大計上はなかったとの報告を富士ゼロックスの栗原博社長に行う

    16年5月 同様の事象が発生しないよう栗原社長が監査を指示ウィッタカー氏に退職を勧告9月 ニュージーランド現地紙が不正会計について報道

    10月 吉田副社長が富士フイルムホールディングスの助野健児社長に「不正会計はない」と報告11月 会計事務所が監査した結果、不正会計の懸念があると指摘

    12月 富士フイルムホールディングス監査部が追加監査の回答を求めるが、富士ゼロックス経営監査部は回答せず17年2月 富士ゼロックスが21億円としたリスク試算額について、会計事務所が最大133億円と指摘

    4月 第三者委員会設置と17年3月期決算発表延期を発表6月 第三者委員会の報告を受け不正会計の実態と17年3月期決算を発表

    (出所)富士フイルムホールディングス第三者委員会調査報告書(2017年6月10日)を基に本誌作成

  • 12/23号_JフロントP2_図表1

    ROEを分解して各指標を改善

    (出所)取材を基に本誌作成

    当期純利益自己資本

    賃借型店舗(大丸東京店など)→商品回転率の向上

    自社保有店舗(松坂屋名古屋店など)→投資計画の選別、月坪売上高の引き上げ

    外商重点型店舗(松坂屋名古屋店など)→売掛金回収率の向上

    新規顧客の増加営業費効率の徹底商品ごとの差益管理

    ROE

    当期純利益営業利益

    マージン

    営業利益総資産

    ROA総資産回転率

    総資産自己資本

    財務レバレッジ 営業利益率

    全社目標 店長

    目標 売上高総資産

    BS視点

    PL視点 営業利益

    売上高

    撮影:梅谷秀司

    12/23号_JフロントP2_図表2

    松坂屋名古屋店のBSイメージ図

    (出所)取材を基に本誌作成

    商品在庫売掛金・・・

    有形固定資産・・・

    短期借入金・・

    長期借入金・・

    減少

    減少 ・・・・・・

    流動資産

    非流動資産

    非流動負債

    流動負債

    資本J. フロント リテイリング 取締役執行役常務

    若林勇人

    J. フロントの財務革命

    59 週刊東洋経済 週刊東洋経済2017.12.23 2017.12.23 58

    財務戦略の重要性が今後増すこと

    を見据え、この財務のプロを「ヘ

    ッドハンティングした」という。

     J.フロントは百貨店の大丸と

    松坂屋が07年に経営統合して誕生

    した持ち株会社だ。BS経営を実

    現するには、大丸や松坂屋の各店

    舗に、どのくらいの資産や負債が

    あるかを把握しなければならない。

    そこで若林氏は、百貨店業界で初

    貨店大手・J.フロント

    テイリングの財務担当取締

    役・若林勇人氏は、経営会議の席

    で、ある違和感を抱いていた。2

    015年5月、電機大手・パナソ

    ニックから転じてすぐのことだ。

     J.フロントは、利益を示すP

    L(損益計算書)については深く細

    かく、徹底して検証している。と

    ころが、「BS(バランスシート、

    貸借対照表)については、ほとん

    ど議論していない」。

     

    メーカーと違い、百貨店は現金

    での収入が多く、売上債権の回収

    期間が短い。現金の不足を心配す

    ることが少ないため、BSについ

    ての議論は浅くなりがちだ。だが

    J.フロントは、「脱百貨店経営」

    を掲げ、資産効率を高めるビジネ

    スモデルを追求している。ROE

    (自己資本利益率)を21年度に8

    %以上へ引き上げることが中期目

    標だ(16年度は7・6%)。

     「ROEの引き上げを目標にす

    るのであればBSの検証なしでは

    ありえない」。若林氏は決意した。

    「社員の意識改革を促すために財

    務で革命を起こそう」││。

     

    若林氏が松下電器産業(現・パ

    ナソニック)に入社したのは19

    85年。「財務を担当できるなら」

    と、部署を指定しての入社だった。

    事業部ごとの徹底した財務管理で

    知られるパナソニックで、財務畑

    一筋。キャッシュフロー・マネジ

    メント・システムなど複数の新制

    度をパナソニックに導入した。

    J.フロントの山本良一社長は、

    となる「店舗BS」の導入を決め

    た。16年度の1年間を準備に費や

    し、17年4月から本格的に始動し

    た。

     

    BSは決算期末など、ある時点

    の財務状況を示すもの。中段図の

    ように、左側の「資産」の合計と、

    右側の「負債」「資本」の合計が

    同じ数値でバランスする。J.フ

    ロントはこのBSを大丸東京店や

    松坂屋名古屋店など主要9店舗で

    算出し、精緻に資産や負債を管理

    する。

     

    だが、導入プロセスは難航を極

    めた。

     

    特に問題になったのが、本社が

    計上している資産や費用を各店舗

    にどう案分するかだ。各店のエレ

    ベーターやトイレといった共用ス

    ペースは、本社が一括して資産に

    計上していた。店舗外で商品を売

    る外商の売掛金や、各種引当金、

    カード決済システム費用も本社が

    計上していた。本社の人員が店舗

    に派遣されるケースもあるが、彼

    らの年金費用はどう認識するか。

    若林氏は実態を伴った店舗BSと

    するために、それぞれを精査し、

    各店舗に案分していった。

     

    店舗BS管理を実践する各店長

    も、導入前に戸惑いを見せた。説

    明を受けた松坂屋名古屋店の近藤

    保彦店長は当初、「確かに重要な

    制度だ」と理解しながらも「現場

    で具体的にどう運用していくの

    か」、理解するのは容易ではなか

    ったという。

     

    店舗で取り組みやすくするため、

    若林氏はROEの分解図(上図)

    を用いた。ROEは「マージン」

    「ROA(総資産利益率)」「財務

    レバレッジ」の三つに分解できる。

    マージンと財務レバレッジは本社

    が意識する指標なので、店舗はR

    OAの改善に注力する。

     

    ROAはさらに「総資産回転

    率」と「営業利益率」に分解でき

    る。営業利益率の向上は、従来どお

    り、採算のよい商品の販売拡大や

    営業費用の削減などを追求すれば

    よい。だが、「財務革命」後は総資

    産回転率を高めなければならない。

     

    そのために若林氏は店舗の状況

    に応じた施策を各店長に提示した。

    店舗が自社保有物件の場合・貸借

    ビルの場合、面積が広い場合・狭

    い場合、外商の売上高が大きい場

    合・小さい場合など、それぞれの

    実情や地域性を考慮した施策だ。

     

    たとえば、賃借ビルに入居して

    いる大丸東京店は、商品回転率

    (売上高÷商品在庫高)の向上を

    重点課題とした。自社保有物件で

    J. フロントの財務革命「店舗B

    バランスシート

    S」の威力本誌:梅咲恵司

    準備に1年かけるが

    新制度の導入は難航

    「脱百貨店経営」を掲げ、独自路線を突き進む。傘下の大丸と松坂屋の店舗で財務の新機軸を打ち出し、構造転換を加速する。

    基幹店舗の松坂屋名古屋店。店舗BS導入のモデル店となった

    ROEの分解図で説明

    店長はROAで評価

    撮影:尾形文繁

    BSの検証がなくては

    資産効率を向上できない

    産業リポート

    2U-LVXF@0172U-LVXF@018-0192U-LVXF@052-0552U-LVXF@058-060