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高速酸素透過膜による純酸素燃焼イノベーション 課題番号: GR011 助成額:164 百万円 平成23年2月10日 ~平成26年3月31日 専門分野 エネルギー変換 デバイス キーワード 材料工学/構造・機能材料/機能性セラミックス/燃料電池 材料/熱・エネルギー材料/酸素分離膜/純酸素製造 WEB ページ hp://ceram.material.tohoku.ac.jp/ takamuraken/ グリーン ・ イノベーション 理工系 高村 仁 Hitoshi Takamura 東北大学大学院工学研究科 教授 高濃度酸素や純酸素の利用は、ガスタービンや ごみ焼却施設等において効率向上や燃料原単 位削減など様々なメリットをもたらす。一段で濃度 100% の純酸素が得られる酸素透過膜法は、現 行の深冷分離法や圧力スイング吸着法より電力 原単位を削減可能と期待されているが、実用に は透過量の向上と作動温度の低減が課題であ る。 新規酸素透過膜の開発 本研究では空気からの純酸素製造を目指している ため、小さい酸素分圧勾配と600℃程度での作 動が望まれる。そこでBiやCoを含有するペロブス カイト型酸化物、その層状酸化物において探索を 行った。Bi-Sr-Fe 系酸化物では酸素透過係数か ら算 出される酸 化 物イオン伝 導 度が 0.17 S/ cm@800℃となり、高酸素分圧低温領域におい て酸素透過膜として機能することが確認された。 表面交換反応の促進と薄膜化 高い酸素透過速度を得るためには表面交換反応 の促進が重要である。 本研究では、図 1 の多孔 体修飾をBa-Sr-Co-Fe系酸化物(BSCF)に適用 すると低温領域で表面交換反応が促進されること を見出した。 図2に示すように、多孔質層を空気 供給・透過側の両面に付加すると725℃において 約8倍、酸素透過速度が向上した。この向上には 多孔質層の2μm 程度の厚さが寄与すると推定さ れた。また、 多孔質支持 体 上 にスピ ンコーティン グ 法 に より 10μm厚の 緻密な酸素 透 過 薄 膜を 作製する手 法を確 立し た。 現在 800 〜 1000℃で稼働する酸素透過膜の 作動温度の低減とより高い酸素透過量の発現 を目指し、酸化物中のイオン・電子欠陥制御に より高い酸化物イオン・電子混合導電性を有す る膜材料を開発する。また、多孔質基材への薄 膜形成など作動温度を低温化する指針を探索 し、純酸素燃焼の産業用途拡大を図る。 代表論文: Solid State Ionics, 253, 211-216, (2013), J.Membr.Sci., 462,147-152, (2014), APL Mater., 2, 056109, (2014) 特許出願: 特願 2013-068233「酸素透過膜、酸素分離 方法及び燃料電池システム」(2013年3月) 特願2012-128021「燃料電池システム」(2012年6月) 現在費用対効果の観点から酸素富化や純 酸素燃焼が利用できない中小規模の焼却炉 や溶融炉などへの応用が可能となる。また、 小型・高効率酸素分離技術は製鉄プロセス や医療・食品分野への適用も期待される。さ らに、多孔質支持体上への緻密酸化物薄膜 作製技術は次世代蓄電池への応用も期待さ れる。 多孔質層による表面修飾 表面修飾 BSCFの酸素透過速度

GR011 高速酸素透過膜による純酸素燃焼イノベーション ...056109, (2014) 特許出願:特願2013-068233「酸素透過膜、酸素分離 方法及び燃料電池システム」(2013年3月)

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Page 1: GR011 高速酸素透過膜による純酸素燃焼イノベーション ...056109, (2014) 特許出願:特願2013-068233「酸素透過膜、酸素分離 方法及び燃料電池システム」(2013年3月)

2030年の

  応用展開

20

研究背景

研究成果

研究目的

研究の特色

研研

実績

高速酸素透過膜による純酸素燃焼イノベーション課題番号:GR011助成額:164百万円

平成23年2月10日~平成26年3月31日

専門分野エネルギー変換デバイス

キーワード材料工学/構造・機能材料/機能性セラミックス/燃料電池材料/熱・エネルギー材料/酸素分離膜/純酸素製造

WEBページhttp://ceram.material.tohoku.ac.jp/takamuraken/

グリーン・イノベーション

理工系高村 仁

Hitoshi Takamura

 東北大学大学院工学研究科 教授

高濃度酸素や純酸素の利用は、ガスタービンやごみ焼却施設等において効率向上や燃料原単位削減など様々なメリットをもたらす。一段で濃度100%の純酸素が得られる酸素透過膜法は、現行の深冷分離法や圧力スイング吸着法より電力原単位を削減可能と期待されているが、実用には透過量の向上と作動温度の低減が課題である。

新規酸素透過膜の開発本研究では空気からの純酸素製造を目指しているため、小さい酸素分圧勾配と600℃程度での作動が望まれる。そこでBiやCoを含有するペロブスカイト型酸化物、その層状酸化物において探索を行った。Bi-Sr-Fe系酸化物では酸素透過係数から算出される酸化物イオン伝導度が 0.17 S/cm@800℃となり、高酸素分圧低温領域において酸素透過膜として機能することが確認された。

表面交換反応の促進と薄膜化高い酸素透過速度を得るためには表面交換反応の促進が重要である。本研究では、図1の多孔体修飾をBa-Sr-Co-Fe系酸化物(BSCF)に適用すると低温領域で表面交換反応が促進されることを見出した。図2に示すように、多孔質層を空気供給・透過側の両面に付加すると725℃において約8倍、酸素透過速度が向上した。この向上には多孔質層の2μm程度の厚さが寄与すると推定された。また、多孔質支持体上にスピンコーティング法 により10 μm厚の緻密な酸素透過薄膜を作製する手法を確 立した。

現在 800 〜 1000℃で稼働する酸素透過膜の作動温度の低減とより高い酸素透過量の発現を目指し、酸化物中のイオン・電子欠陥制御により高い酸化物イオン・電子混合導電性を有する膜材料を開発する。また、多孔質基材への薄膜形成など作動温度を低温化する指針を探索し、純酸素燃焼の産業用途拡大を図る。

代表論文:Solid State Ionics, 253, 211-216, (2013), J.Membr.Sci., 462,147-152, (2014), APL Mater., 2, 056109, (2014)特許出願:特願2013-068233「酸素透過膜、酸素分離方法及び燃料電池システム」(2013年3月)特願2012-128021「燃料電池システム」(2012年6月) 現在費用対効果の観点から酸素富化や純

酸素燃焼が利用できない中小規模の焼却炉や溶融炉などへの応用が可能となる。また、小型・高効率酸素分離技術は製鉄プロセス

や医療・食品分野への適用も期待される。さらに、多孔質支持体上への緻密酸化物薄膜作製技術は次世代蓄電池への応用も期待される。

多孔質層による表面修飾

表面修飾BSCFの酸素透過速度