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ハイライト 心肺蘇生と救急心血管治療のための AHA ガイドラインの重点的アップデート 2019 2019 Focused Updates to the American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular CareAmerican Heart Association は,本文書の作成に貢献 してくださった以下の方々に感謝する: Ashish R. Panchal , MD, PhD; Jonathan P. Duff, MD, MEd; Marilyn B. Escobedo, MD; Jeffrey L. Pellegrino, PhD, MPH; Nathan Charlton, MD; Mary Fran Hazinski, RN, MSN; AHA 成人, 小児,および新生児ガイドラインの重点的アップデートの 執筆グループ;および American Heart Association および American Red Cross 救急ガイドラインの重点的アップデー ト執筆グループ; AHA ガイドラインの重点的アップデート ハイライトプロジェクトチーム。

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ハイライト心肺蘇生と救急心血管治療のための AHAガイドラインの重点的アップデート 2019(2019 Focused Updates to the American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care)

American Heart Associationは,本文書の作成に貢献してくださった以下の方々に感謝する: Ashish R. Panchal, MD, PhD; Jonathan P. Duf f, MD, MEd; Marilyn B.Escobedo, MD; Jeffrey L. Pellegrino, PhD, MPH; Nathan Charlton, MD; Mary Fran Hazinski, RN, MSN; AHA 成人,小児,および新生児ガイドラインの重点的アップデートの執筆グループ;および American Heart Association および American Red Cross救急ガイドラインの重点的アップデート執筆グループ; AHA ガイドラインの重点的アップデートハイライトプロジェクトチーム。

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本文書『ハイライト』は『American Heart Association(AHA)心肺蘇生( Cardiopulmonary Resuscitation,CPR)と救急心血管治療( Emergency Cardiovascular Care,ECC)のためのガイドラインの重点的アップデート 2019』に記載されている主要項目をまとめたものである。本文書は,蘇生を行うプロバイダーおよび AHA インストラクターのために考案され,国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation,ILCOR)による最新のエビデンス評価方法に基づき再検討されたエビデンスおよびガイドラインの勧告に重点を置いている。さらに本文書は,このような勧告の論理的な根拠を提供する。

ガイドラインの重点的アップデート作成プロセスの概要『AHA CPR と ECC のためのガイドラインの重点的アップデート 2019』は, ILCOR の国際的な継続的エビデンス評価プロセスに基づくものであり,数百名に及ぶ国際的な蘇生科学者および蘇生専門家によって,数千件にのぼる査読文献に対する評価,検討,討論が重ねられている。このプロセスで, ILCOR タスクフォースは, AHA を含む蘇生協議会からの情報をもとに,レビューする項目の優先順位を決定した。項目が評価対象として承認されると, ILCOR の項目に関する専門家からの情報を参考に,Knowledge Synthesis Unit(KSU)またはシステマティックレビュー担当者にシステマティックレビューが委託され,実施された。システマティックレビュー終了後, ILCOR タスクフォースはエビデンスをレビューし,「Consensus on Science With Treatment Recommendations(CoSTR)」草稿を作成する。この草稿はパブリックコメントを受け付けるためにオンラインで公開される(すべての CoSTRs 草稿については,ILCOR の Web サイトを参照)。2018 年 11 月 12 日~ 2019 年 3 月 20 日までに,6 つの ILCOR タスクフォースが次の 12 項目に関する CoSTR 草稿を投稿した。

一次救命処置タスクフォース Emergency Care: Dispatcher Instruction in CPR https://costr.ilcor.org/document/emergency-care-dispatcher-instruction-in-cpr

二次救命処置タスクフォース Advanced Airway Management During Adult Cardiac Arrest https://costr.ilcor.org/document/advanced-airway-management-during-adult-cardiac-arrest

Vasopressors in Adult Cardiac Arrest https://costr.ilcor.org/document/vasopressors-in-adult-cardiac-arrest

Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation for Cardiac Arrest̶Adults https://costr.ilcor.org/document/extracorporeal-cardiopulmonary-resuscitation-ecpr-for-cardiac-arrest-adults

小児タスクフォース Dispatcher Instruction in CPR̶Pediatrics https://costr.ilcor.org/document/dispatcher-instruction-in-cpr-pediatrics

Advanced Airway Interventions in Pediatric Cardiac Arrest https://costr.ilcor.org/document/advanced-airway-interventions-in-pediatric-cardiac-arrest

Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation for Cardiac Arrest̶Pediatrics https://costr.ilcor.org/document/extracorporeal-cardiopulmonary-resuscitation-ecpr-for-cardiac-arrest-pediatrics

Pediatric Targeted Temperature Management Post–Cardiac Arrest https://costr.ilcor.org/document/pediatric-targeted-temperature-management-post-cardiac-arrest

新生児救命処置タスクフォース Initial Oxygen Concentration for Preterm Neonatal Resuscitation https://costr.ilcor.org/document/initial-oxygen-concentration-for-preterm-neonatal-resuscitation

Initial Oxygen Concentration for Term Neonatal Resuscitation https://costr.ilcor.org/document/initial-oxygen-concentration-for-term-neonatal-resuscitation

教育,実践,チームおよび一次救命処置タスクフォース Cardiac Arrest Centers vs Noncardiac Arrest Centers̶Adults https://costr.ilcor.org/document/cardiac-arrest-centers-versus-non-cardiac-arrest-centers-adults

ファーストエイドタスクフォース First Aid Interventions for Presyncope https://costr.ilcor.org/document/first-aid-interventions-for-presyncope

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CoSTR の草稿は閲覧回数が 23,000 件を超え,数百件のコメントが寄せられた。こうしたパブリック フィードバックは CoSTR 最終版の作成に寄与し, ILCOR タスクフォースはこの最終版を含めて『 2019 International Consensus on CPR and ECC Science With Treatment Recommendations』のまとめとした。このまとめは,Circulation 誌および Resuscitation 誌で同時発表された(本書の末尾に記載されている推奨文献リストを参照)。

AHAガイドライン作成グループは, Circulation誌(2019年 11月)に発表された『重点的アップデート 2019』の作成において, ILCOR のシステマティックレビューによって特定されたすべてのエビデンスを再検討し, ILCOR の CoSTR を慎重に検討した。 ILCORおよび AHAの文書作成の順序とそれぞれの記載項目の概要を図 1 に示す。

図 1. ILCOR システマティックレビューおよび ILCOR タスクフォースの CoSTR を使用した,『AHA CPR および ECC のためのガイドラインの重点的アップデート』作成の順序およびプロセス。

Knowledge Synthesis Unit(KSU)またはシステマティックレビュー担当者(ILCOR の項目に関する専門家も参加)がシステマティックレビューを実施し,専門誌での発表に向けて原稿を作成する。このレビューには以下が含まれる。 • GRADE バイアス評価の表と用語

• フォレストプロット

• 治療に関する勧告はしない

ILCOR タスクフォースは,エビデンスを議論および討議し,オンライン版 CosTR 草稿を作成して ILCOR の Web サイトに投稿する。この草稿の内容は以下のとおり。

• GRADE 表またはフォレストプロットは含まれない(システマティックレビューを参照)

• セクション

- エビデンス評価プロセスの要約を含む序論

- 患者(傷病者),介入,比較対照,アウトカム,研究デザイン,および検索期間

- 科学的根拠と治療勧告コンセンサス

- 介入および推奨の強さ(強または弱)に関するエビデンスの確実性を表す GRADE の表現

- 患者にとっての価値と ILCOR の見解

- エビデンスから決定へのプロセスを示す表

- 今後の課題

ILCOR タスクフォース執筆グループは,C irculation 誌および Resuscitation 誌に同時発表するために CoSTR のまとめを作成する。最終的な文言は, ILCOR 会員であるすべての蘇生協議会により承認されている。この文書の内容は以下のとおり。 • GRADE 表,フォレストプロット,エビデンスから決定にいたるまでの表は含ま ない

• 科学的コンセンサスの最終的な文言

• 治療に関する最終的な勧告

• 患者にとっての価値と ILCOR の見解に対するタスクフォースの洞察に関する詳細

AHA などの蘇生協議会は, ILCOR の CoSTR に基づきながら協議会のリソース,トレーニング,および医療制度に適した協議会独自のガイドラインおよびトレーニング資料を作成する。

略語: AHA:American Heart Association,CoSTR:Consensus on Science With Treatment Recommendations, GRADE:Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation,ILCOR:国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation)。

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これらの AHA の重点的アップデートは,『ガイドライン 2010(2010 Guidelines)』,『ガイドラインアップデート 2015(2015 Guidelines Update)』,および 2017 年と 2018 年の重点的アップデートの特定の部分を改訂するためのものである。ガイドライン統合版はオンラインで入手可能であり,『AHA CPR および ECC のためのガイドライン』の包括的改訂は 2020 年の予定である。以前と同様,『重点的アップデート 2019』では AHA/American College of Cardiology の推奨システムおよび,勧告のクラスとエビデンスレベルの分類を使用している(表 1)。本ハイライトはまとめとして考案されたものであり,裏付けとなる公表文献(研究)を引用せず,関連のある勧告のクラス分類やエビデンスレベルも列挙していない。読者には, CPR および ECC ガイドラインの Web サイトにアクセスして『重点的アップデート 2019』を閲覧し,詳細については ILCOR CoSTR の Web サイトにアクセスするよう強く奨励する。

表 1. 患者ケアにおける臨床上の戦略,介入,治療,または診断検査への勧告のクラスとエビデンスレベルの適用(2015 年 8 月更新)*

勧告のクラス(強さ)

クラス I(強い) 利益>>>リスク

勧告文に適した表現例: • 推奨される • 適応/有用/有効/有益である • 実施/投与(など)すべきである • 比較に基づく有効性の表現例†:

– 治療 B よりも治療/治療戦略 A が推奨される/適応である

– 治療 B よりも治療 A を選択すべきである

クラス IIa(中等度) 利益>>リスク

勧告文に適した表現例: • 妥当である • 有用/有効/有益でありうる • 比較に基づく有効性の表現例†:

– 治療 B よりも治療/治療戦略 A がおそらく推奨される/適応である

– 治療 B よりも治療 A を選択することが妥当である

クラス IIb(弱い) 利益≧リスク

勧告文に適した表現例: • 妥当としてよい/よいだろう • 考慮してもよい/よいだろう • 有用性/有効性は不明/不明確/不確実である,あるいは十分に確立されていない

クラス III:利益なし(中等度) 利益=リスク(一般に LOE A または B の使用に限る)

勧告文に適した表現例: • 推奨しない • 適応/有用/有効/有益ではない • 実施/投与(など)すべきでない

クラス III:有害(強い) リスク>利益

勧告文に適した表現例: • 有害な可能性がある • 有害となる • 合併症発生率/死亡率の上昇を伴う • 実施/投与(など)すべきでない

エビデンスレベル(質)‡

レベル A

• 複数の RCT から得られた質の高いエビデンス‡ • 質の高い RCT のメタアナリシス • 質の高い症例登録試験によって裏付けられた 1 件以上の

RCT

レベル B-R (ランダム化)

• 1 件以上の RCT から得られた質が中等度のエビデンス‡ • 質が中等度の RCT のメタアナリシス

レベル B-NR (非ランダム化)

• 1 件以上の綿密にデザインされ,適切に実施された非ランダム化試験,観察研究,または症例登録試験から得られた質が中等度のエビデンス‡

• そのような試験のメタアナリシス

レベル C-LD (限定的なデータ)

• デザインまたは実施に限界があるランダム化または非ランダム化観察研究または症例登録試験

• そのような試験のメタアナリシス • ヒトを対象にした生理学的試験または反応機構研究

レベル C-EO (専門家の見解)

• 臨床経験に基づく専門家のコンセンサス

COR および LOE は個別に決定する( COR と LOE のあらゆる組み合わせが可能)。

LOE C の勧告は,その勧告が弱いことを意味するわけではない。ガイドラインが扱っている重要な医療上の問題の多くは,臨床試験の対象となっていない。 RCT が行われていなくても,特定の検査あるいは治療法の有用性/有効性について,臨床上非常に明確なコンセンサスが得られている場合がある。

* 介入の成果または結果を記述すべきである(臨床的予後の改善,または診断精度の向上,または予後情報の増加)。

†比較に基づく有効性の勧告( COR I および IIa,LOE A および B のみ)に関してその勧告の裏付けとなる試験は,評価する治療または治療戦略を直接比較しているものでなければならない。

‡標準化され,広く用いられていて,望ましくは検証されている複数のエビデンス評価ツールを活用する,システマティックレビューについてはエビデンスレビュー委員会を設けるなど,質を評価する方法は進化している。

COR:勧告のクラス( Class of Recommendation),EO:専門家の見解( expert opinion),LD:限定的なデータ( limited data),LOE:エビデンスレベル(Level of Evidence),NR:非ランダム化( nonrandomized),R:ランダム化(randomized),RCT:ランダム化比較試験( randomized controlled trial)

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AHA CPR と ECC のためのガイドラインの重点的アップデート 2019 ハイライト『AHA CPR および ECC のためのガイドラインの重点的アップデート 2019』は,『ガイドラインアップデート 2015』の以下の項目についての改訂を含む。

第 4 章:治療システムと継続的な質向上:通信指令員による口頭指導による成人に対する CPR(DA-CPR)および心停止センター( CAC)の潜在的な役割

第 7 章:成人の二次救命処置:蘇生時の高度な気道確保,血管収縮薬,および体外循環補助を用いた CPR(ECPR)の使用。 ECPR については,第 6 章「CPR の代替手技と補助的器具」の同名のセクションが更新される

第 11 章:小児の一次救命処置と心肺蘇生の質:乳幼児における DA-CPR

第 12 章:小児の二次救命処置:小児の心停止における高度な気道確保,院内心停止( IHCA)に対する ECPR,心停止後の目標体温管理( TTM)

第 13 章:新生児の蘇生:正期産児および後期早産児(在胎 35 週以上)の初期吸入酸素濃度,および早産児(在胎 35 週未満)の初期吸入酸素濃度

『AHA および American Red Cross の ファーストエイドガイドラインの重 点的アップデート 2019』は,以下の新しい介入を含む。

第 15 章:ファーストエイ ド:AHA および American Red Cross のファーストエイドガイドラインアップデート 2015:失神性めまい

第 4 章:治療システムと継続的な質向上AHA 成人執筆グループは,2019 年に以下の項目に関するエビデンスと勧 告のレビューを行った。

通信指令員の口頭指導による CPR:DA-CPR は,全国の多くの救急医療サービス( EMS)システムに統合されており,バイスタンダーのコミュニティと EMS ケアをつなぐ重要なものと見なされている。このアップデートで,執筆グループは, DA-CPR の提供が成人の院外での心停止( OHCA)の転帰を改善するかどうかを検討した。

心停止センター: CAC は,現代的かつ包括的なエビデンスに基づいた蘇生と心拍再開後の治療を提供する専門的な施設である。このレビューは,指定されていない施設での治療と比較し, OHCA 患者が CAC へ輸送された場合の転帰が改善するかどうかを検討した。

通信指令員の口頭指導による CPR

通信指令員が OHCA の場面に居合わせた人(バイスタンダー)にリアルタイムで CPR の指導を提供する過程を表す用語は統一されていない。このレビューでは,このような指導を説明するために「通信指令員の口頭指導による CPR」という用語に統一する。ただし,「テレコミュニケーターによる CPR」や「電話による CPR」など,他の用語に置き換えることもできる。

DA-CPR の提供により, OHCA 患者に対するバイスタンダーによる CPR実施率が増加し,結果的に転帰が改善すると考えられている。 2015 年以降,多くの公表文献(研究)において成人 OHCA に対する DA-CPR の使用が評価されている。このレビューでは,多角的な観点から DA-CPR の有効性を検討し, OHCA の転帰との関連性を評価した。

2019(更新):消防指令センターがCPR の指導を提供し,通信指令員が心停止中の成人患者のためにそのような指導を提供できるようにすることを推奨する。

2019(更新):通信指令員は,院外心停止が疑われる成人に対し CPR を開始するよう通報者に指示すべきである。

2017(旧):通信指令員の指示が必要な場合,通信指令員は通報者に対し, OHCA が疑われる成人に胸骨圧迫のみの CPR を実施するよう指示することを推奨する。

2015(旧):心停止が疑われる場合,通信指令員は通報者に CPR を実施するよう指示すべきである。通信指令員は通報者に対し, OHCA が疑われる成人に胸骨圧迫のみの CPR を実施するよう指示すべきである。

理由:レビューされたすべての研究で DA-CPR による明らかな転帰の利点は示されなかったが, AHA ガイドラインのこの変更は,多くの国の何万人もの患者が関与している既存のエビデンスの優位性を反映している。これらの結果は, OHCA において DA-CPR が臨床転帰の改善と関連することを示した。さらに, DA-CPR はバイスタンダーによる CPR の実施の可能性を 5 倍以上にするため, DA-CPR の実施を推奨するべきであると結論付けた。このレビューでは,通信指令員による CPR 指示の種類による効果を評価していない。その結果,通信指令員は通報者に対し, OHCA を疑う成人に胸部圧迫のみの CPR を実施するよう指示すべきという 2015 年の勧告を変更していない。

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心停止センター

CAC は,心拍再開後の治療に,(少なくとも)緊急の心臓カテーテル法,

TTM,および集学的な予後予測を含む専門施設である。これらの施設を定義する用語はさまざまであるが(例:「心停止患者受け入れセンター」,「総合心臓センター」,「心臓蘇生センター」),本ガイドラインでは統一して心停止センターという用語を使用する。治療システムの地域化モデルの利点は,包括的な管理がどの施設でも可能とはいえない他の緊急を要する疾患(例:外傷,ST 上昇型心筋梗塞,脳卒中)の転帰を改善していることである。

OHCA 患者について CAC の使用により同様の利益が得られるかどうかを検討するために,この項目のレビューを優先した。

2019(更新):専門の心停止センターへの蘇生患者の直接搬送を含む,心拍再開後の治療に対する地域化アプローチは,地域の施設で心拍再開後の包括的治療ができない場合に妥当である。

2015(旧):心臓蘇生センターの利用を含む OHCA 蘇生の地域化アプローチを考慮してもよい。

理由:緊急心臓カテーテル法, TTM,血行動態サポート,神経内科医を含む,エビデンスに基づいた包括的な心拍再開後の治療は,心停止状態から蘇生した患者にとって非常に重要である。これらの介入は,蘇生の成功(すなわち,自己心拍再開[ ROSC])と最終的な生存状態の間の論理的な臨床的リンクを表しているともいえる。心拍再開後の適切なサービスが地域にない場合,そのような支援を提供する地域のセンターに蘇生患者を直接搬送することは有益であり,それが実現可能でタイムリーに達成できる場合は,継続的なケアを実現する合理的なアプローチといえる。

第 7 章:成人二次救命処置 AHA 成人執筆グループは,『ガイドラインの重点的アップデート 2019』において,成人の二次救命処置(Advanced Cardiovascular Life Support,ACLS)について主要な問題と大きな変更点を検討した。

CPR 中の高度な気道確保:プロバイダーは,十分な換気をサポートし,逆流した胃液による肺誤嚥のリスクを減らすために, CPR 中に高度な気道確保器具を留置することがよくある。このアップデートでは,蘇生中に可能な 3 つの気道確保法として,バッグ・バルブ・マスク( BVM)換気,声門上気道確保,および気管挿管を検討した。

血管収縮薬の使用:心停止に対する薬物療法の目標は,循環を生み出す自発的なリズムの回復と維持を促進することにある。この『重点的アップデート

2019』では,血管収縮薬のアドレナリンとバソプレシンの心停止中の使用について検討する。

CPR における体外循環式膜型人工肺(ECMO)の役割: ECMO は,CPR 中の救命処置としての使用されることがあるため,体外循環補助を用いた CPR と呼ばれる。執筆グループは, IHCA における ECPR の転帰を報告した研究を検討した。

CPR 中の高度な気道確保器具の使用

高度な気道確保器具を効果的に使用するには,ヘルスケアプロバイダーは,頻繁に練習を実施して知識および技術を維持する必要がある。心停止中の気道確保は通常, BVM 換気などの基本的な手技から始まり,高度な気道確保法(声門上気道確保または気管挿管など)へと進む。 2015 年以降,多数

のランダム化比較試験( RCT)によって,OHCA の蘇生中の気道確保方法の使用と選択に関する新しい情報がもたらされている。これらには, BVM 換気と気管挿管の比較,および声門上気道確保と気管内留置方法の比較が含まれる。次の 6 つの改訂された勧告の概略図については,図 2 を参照されたい。

2019(更新):成人の心停止の場合,どのような状況でも, CPR 中に BVM換気または高度な気道確保のいずれかを考慮してもよい。

2019(更新):高度な気道確保を行う場合,声門上気道確保は,気管挿管の成功率が低い場合または気管内チューブ留置の訓練の機会が少ない場合において,院外心停止の成人に使用してもよい。

2019(更新):高度な気道確保を行う場合,声門上気道確保または気管内チューブは,気管挿管の成功率が高い場合または気管チューブ留置の最適な訓練の機会がある場合において,院外心停止の成人に使用してもよい。

2019(更新):これらの手順の訓練を受けた専門医が病院内で高度な気道確保を行う場合は,声門上気道確保または気管チューブを使用してもよい。

2019(更新):気管挿管を実施するプロバイダーには,頻繁な経験または頻繁な再訓練を推奨する。

2019(更新):病院前挿管を行う救急医療サービスシステムは,合併症を最小限に抑え,声門上気道確保および気管チューブ留置の成功率を追跡できるように,継続的に質を向上できるプログラムを提供すべきである。

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図 2. CPR 中に高度な気道確保器具を使用するための ACLS 推奨事項の概略図

略語: ACLS:二次救命処置( advanced cardiovascular life support),CPR:心肺蘇生( cardiopulmonary resuscitation), EMS:救急医療サービス(emergency medical services) *気管挿管を実施するプロバイダーには,頻繁な経験または頻繁な再訓練を推奨する。

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2010 および 2015(旧):IHCA および

OHCA の両方の状況において, CPR 中の酸素投与と換気のために BVMまたは高度な気道確保のいずれかを実施してもよい。使用訓練を受けたヘルスケアプロバイダーは,声門上気道確保器具または気管内チューブのいずれかを CPR中の最初の高度な気道確保デバイスとして使用してもよい。気管挿管を実施するプロバイダーには,頻繁な経験または頻繁な再訓練を推奨する。病院前挿管を行う EMS システムは合併症を最小限に抑えるために,継続的に質を向上できるプログラムを提供すべきである。

理由:心停止中の高度な気道確保器具の留置のための勧告は,プロバイダーが胸骨圧迫の中断を最小限に抑えながら気道確保器具を挿入し適切な位置を確認できるように初期トレーニングを受け,スキルを備え,継続して経験を積んでいることを前提とする。 BVM 換気と高度な気道確保器具挿入のいずれを選択するかは,プロバイダーのスキルと経験,および患者のニーズにより決まる。頻繁な経験とトレーニングは,気道確保の全体的な成功率を高く維持するために重要であり,継続的な質向上の一部とすべきである。そのため, OHCA の気道確保の選択に関し,詳細な情報に基づく決定をするためには,気道確保の成功率を追跡記録する必要がある。これらのデータから, OHCA 患者の気道確保の選択に関し,詳細な情報に基づき決定を行うことができる。

CPR 中の血管収縮薬の使用

執筆グループは,標準的なアドレナリン投与量の使用,標準量と高用量アドレナリンの比較,バソプレシンとアドレナリンの比較,アドレナリン単独とバソプレシンとアドレナリンの併用の比較,およびアドレナリン投与のタイミングに関して公表されたエビデンスについてレビューを行った。執筆グループは,心停止における血管収縮薬の使用のみに焦点をあてたため,心停止の前後の血管収縮薬の使用についてはレビューを行わなかった。

標準用量アドレナリン

執筆グループは,2 件の RCT で報告されたアドレナリンの標準用量( 1 mg)の有効性に関する公表されたエビデンスと,初期リズム毎の転帰のサブグループ統合分析のレビューを行った。長期転帰を検討した RCT は 1 つのみであり,その研究の生存者が少数であるため,結果に基づく結論の確実性には限界がある。

2019(更新):心停止の患者にアドレナリンの投与を推奨する。臨床試験で使用されたプロトコルに基づき, 3~

5 分ごとに 1 mg を投与することが妥当である。

2015(旧):心停止の患者には,標準用量のアドレナリン( 3~ 5 分ごとに 1 mg)投与が妥当と思われる。

理由:ランダム化比較試験では,アドレナリン投与が 30 日生存率と生存退院,短期転帰である ROSC と生存入院率と関連していることが実証された。またこれらの結果は,特に初期にショック不適応のリズムを呈する患者にとって,良好な神経学的転帰が得られる可能性を示唆した。アドレナリンは,神経学的に良好な転帰において生存率を高めることは示されておらず, 1 つの評価では神経学的転帰が不良な短期生存者の増加が示された。しかし, ROSC,短期および長期の生存率の有意な改善,および良好な神経学的転帰の見込み(特に初期にショック不適応のリズムを呈する患者)は,神経学的転帰全体では不確実性が残るが,アドレナリンを強く推奨することを裏付けるものである。

標準用量アドレナリンと高用量アドレナリン

ス III:利益なし)。 2015 年以降,高用量アドレナリンの新しい研究は特定されなかったが,心停止治療のための血管収縮薬使用の包括的なレビューの一環として,『重点的アアップデート 2019』のために標準用量と高用量のアドレナリンの効果に関するエビデンスが再分析された。

2019(変更なし):心停止に対する高用量アドレナリンのルーチン使用は推奨しない。

2015(旧):心停止に対する高用量アドレナリンのルーチン使用は推奨しない。

理由: 2015 年以降,系統的検索によって新しい研究は特定されなかったため,2015 年の推奨は変更されないままである。

バソプレシンとアドレナリン

3 件の RCT の結果はメタアナリシスで評価され,執筆グループは心停止の転帰に対する初回バソプレシンと初回アドレナリンの効果を評価した追加研究を検討した。検討されたすべての研究は確実性が低く,いずれも症例数が少なかった。

2019(更新):バソプレシンは心停止の際に考慮してもよいが,心停止においてアドレナリンに代わる利点はない。

2015(旧):バソプレシンは,心停止においてアドレナリンに代わる利点はない。

理由:初回バソプレシンと初回アドレナリンを比較した RCTでは,バソプレシンの使用はアドレナリンと比較して利点は示されなかった。さらに,アドレナリンはプラセボと比較して生存率を改善することが示されているが,バソプレシンによる同様のプラセボ対照試験はない。バソプレシンがアドレナリンよりも優れているというエビデンスもないため,執筆グループは,心停止治療アルゴリズムおよび必要な薬剤の簡潔さを保つために,心停止においてアドレナリンのみの使用が適切であるとの意見で一致した。

ACLSガイドライン 2010では, β遮断薬の過剰投与,またはモニターされたパラメータに合わせて調整する場合などの特別な状況を除き,高用量アドレナリンは推奨されなかった。 2015 年では,高用量アドレナリンの使用は有益だと考えられなかったため推奨されなかった(クラ

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バイスタンダーによる迅速な CPRは心停止からの生存率を改善するが,小児 OHCA 患者がバイスタンダーから CPRを実施されることはほとんどない ... DA-CPR が通報者に提供された場合,バイスタンダーによる CPRの実施可能性はほぼ 3 倍になった。

バソプレシンとアドレナリンの併用とアドレナリン単独執筆グループは,蘇生時の初回投与にアドレナリンとバソプレシンを併用した場合と,アドレナリン単独投与の場合を比較した 3 件の小規模な RCT の結果を分析した。

2019(更新):アドレナリンとバソプレシンの併用投与は,心停止において考慮してもよいが,アドレナリン単独に代わる利点はない。

2015(旧):心停止において,アドレナリンと併用して投与するバソプレシンには,標準用量のアドレナリンに代わる利点はない。

理由:バソプレシンとアドレナリンの併用をアドレナリン単独と比較した RCT では,バソプレシンをアドレナリンに追加しても有益な効果を示さなかった。 RCT の対象患者は少数だが,執筆グループは,心停止における血管収縮薬としてのアドレナリンの単独投与は,心停止治療アルゴリズムの簡潔さを維持し,心停止治療に必要な薬物の種類を最小限に抑えられるということで意見が一致した。

アドレナリン投与のタイミング執筆グループは,アドレナリンの早期投与と遅い投与を比較した 10 件を含む,16 件の観察研究のデータを分析した。有意差のある研究があったためメタアナリシスが困難になった。また,複数の変数が研究結果に影響を与えた可能性があった。

2019(更新):投与のタイミングに関しては,ショック不適応リズムを呈する心停止の場合,できるだけ速やかにアドレナリンを投与することが妥当である。

2019(更新):タイミングに関しては,ショック適応リズムでの心停止の場合,初回の除細動が不成功後にアドレナリンを投与することは妥当としてよい。

2015(旧):初期のショック非適応リズムによる心停止後,できるだけ速やかにアドレナリンを投与することは妥当としてよい。

理由:心停止の転帰に関して,アドレナリン投与のタイミングの影響を直接調査した RCT はない。16 件の観察研究で得られたデータで使用されている初期アドレナリン投与の定義はさまざまであった。しかしすべての研究で,アドレナリンの早期投与と ROSC 率の高さとに関連が認められた。ショック不適応のリズムを呈する心停止に対する他の有益な介入の欠如,ならびにこれらの心停止へのアドレナリン使用による ROSC および生存率の上昇は,ショック不適応のリズムを呈する心停止に対しできるだけ速やかなアドレナリン投与を推奨する根拠となった。ショック適応リズムを伴う心停止には,質の高い CPR と除細動によってただちに治療することを優先すべきであり,ショック抵抗性心室細動/無脈性心室頻拍に対しては,アドレナリンと抗不整脈薬を使用する(ボックス)。

体外循環補助を用いた CPR

ECPR は,心停止患者の蘇生中に体外循環補助を開始することを指す。これは,治療可能と考えられる疾患に対処しながら,終末臓器への灌流をサポートすることを目的としている。 ECPR は,高度に訓練されたチーム,専門器材,ヘルスケアシステムでの専門的なサポートを必要とする複雑な介入である(図 3)。

執筆グループは,研究デザイン,転帰の定義,および患者選択が異なる 15件の観察研究のデータを分析した。

2019(新):心停止患者に対する ECPR のルーチン使用を推奨するには,エビデンスが不十分である。

2019(更新):ECPR は,従来の CPRの取り組みが,熟練したプロバイダーによる迅速な実施およびサポートのある状況下でも不成功となった場合,一部の患者について救命措置として考慮してもよい。

2015(旧):心停止患者に対する ECPR のルーチン使用を推奨するには,エビデンスが不十分である。迅速に実施できる状況下において,機械的心肺補助が使える限られた時間内に心停止の原因として疑われる疾患が治療可能と考えられる一部の患者に対して ECPRを検討してもよい。

理由:現在のところ, OHCA または IHCA に対する ECPR の使用を評価する RCT は公表されていない。ただし,いくつかの観察研究では, ECPR の使用は一部の患者集団において良好な神経学的予後を伴う生存率の改善を示唆している。現在,患者の選択基準に関する明確なエビデンスはないが,システマティックレビューで分析された研究のほとんどに併存疾患の少ない比較的若年の患者が含まれていた。患者選択の課題に対処し,この治療の費用対効果,リソース割り当ての帰結,および蘇生治療としての ECPR 使用をめぐる倫理的問題を評価するにはさらなるデータが必要である。

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ボックス.心停止における薬物投与のタイミングと順序 -既知のことと未知のこと。

心停止中のアドレナリンと抗不整脈薬の最適な投与のタイミングを特定するためのエビデンスは不十分である。そのため,「AHA ACLS 成人の心停止アルゴリズム」およびガイドラインに示されている薬物投与を含む蘇生の推奨手順は,専門家のコンセンサスにより決定した。以下は,コンセンサスを経て勧告に至る過程で考慮された事項を含む。

ショック不適応のリズムを伴う心停止に対するアドレナリン(PEA/心静止)ショック不適応のリズムの場合, AHA は質の高い CPR を実施し,迅速なアドレナリン投与を推奨する。その論理的な根拠は CPP を最適化する必要性にある。これは,冠動脈(心筋)灌流が改善しない限り,自発的なリズムのない虚血性心室がその状態のままになる可能性が高いためである。アドレナリンの α アドレナリン(血管収縮)作用は, CPP の改善に役立つ。現時点では,質の高い CPR,アドレナリン投与,および治療可能な原因の検索と治療の提供以外にショック不適応のリズムに対して実施できることほとんどない。

ショック適応のリズムを伴う心停止に対するアドレナリン(VF または無脈性 VT)ショック適応リズムの場合,初期の優先事項は,質の高い CPR に加え,迅速な電気的除細動の実施である。これにより,薬物が投与される前であっても VF が消失し,規則的なリズムを経て自己循環を伴うリズムの再開をもたらす可能性がある。アドレナリンは,「ACLS 成人の心停止アルゴリズム」における VF/無脈性 VT 治療パスにおいて, 2 回目のショック後に投与するよう示されている。この時点で,アドレナリンの投与は CPP を十分に改善し心筋エネルギーを向上させ,その後の( 3 回目の)ショックが必要な場合は,このショックにおいて VF/無脈性 VT からの脱却を可能にする。(世界中の)すべての蘇生協議会は,アドレナリン投与前に少なくとも 1 回のショック(ほとんどは複数回のショック)を推奨している。

CPR とショックだけで, VF/無脈性 VT から脱却し,規則的なリズムを経て自己循環を伴うリズムが再開する可能性があるため,AHA は初回ショック前のアドレナリン投与を推奨しない。プロバイダーは VF/無脈性 VT からの脱却を判断できないため, AHA は初回ショック直後(つまり,初回ショック後の 2 分間の CPR 中)のアドレナリン投与を推奨しない。初回ショックが成功した場合(つまり,VF/無脈性 VT から脱却した場合),アドレナリンのボーラス投与は VF/無脈性 VT(または他の不整脈)の再発を誘発し,自発的なリズムが再開し始めたときの酸素必要量を増やす可能性がある。一方,次のリズムチェック(つまり,最初のショックと 2 分間の質の高い CPR を実施後)で VF/無脈性 VT が持続する場合,AHA は CPR の速やかな再開とアドレナリン投与と共に 2 回目のショック実施を推奨する。この時点で心筋は虚血状態である可能性が高いため, 2 回目のショックで VF/無脈性 VT から脱却した場合でも ,アドレナリンと質の高い CPR により CPP と心筋灌流が改善されて心臓の働きが再開し,自己循環を伴うリズムを維持できる可能性があるという理論的根拠がある。一方, 2 回目のショック後も VF/無脈性 VT が持続する場合,アドレナリンと質の高い CPR により CPP が改善し, 3 回目のショックが成功する可能性を高めることができる。

ショック適応のリズム(VF または無脈性 VT)を伴う心停止に対する抗不整脈薬およびアドレナリン投与抗不整脈薬の投与はアドレナリンの前または後のどちらが最適かを判断するエビデンスはなく,抗不整脈薬を投与すべき場合でも,そのような決定は切迫した状況によって左右される可能性がある。経験豊富なプロバイダーは,個々の患者のニーズに合わせて薬物投与の順序を調整する場合がある。たとえば, VF のエピソードを繰り返す患者には,アドレナリンよりもアミオダロンやリドカインなどの抗不整脈薬のリズムを安定化させる効果の方が,より大きな利益をもたらす場合がある(アドレナリンはこのような状況では催不整脈性にもなりうる)。逆に,持続性 VF では冠動脈を介して他の薬物が心臓に適切に送達される前に CPP を改善する必要がある場合がある。つまり,アドレナリンと質の高い CPR により,冠動脈および心筋灌流が改善され,アミオダロンまたはリドカインが投与された場合のリズム転換の成功の可能性が高くなる。心停止における薬物投与の最適なタイミングを特定するために,前向きランダム化研究による,さらに多くのエビデンスが必要である。

略 語: ACLS:二 次 救 命処置( advanced cardiovascular life support),AHA:アメリカ心 臓 協会( American Heart Association),CPP:冠動脈灌流圧( coronary perfusion pressure),CPR:心肺蘇生( cardiopulmonary resuscitation), PEA:無脈性電気活動( pulseless electrical activity),無脈性 VT:無脈性心室頻拍( pulseless ventricular tachycardia), VF:心室細動( ventricular fibrillation)

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図 3. ECPR に使用される ECMO 回路の構成部品の概略図。構成部品には,静脈カニューレ,ポンプ,人工肺,および動脈カニューレが含まれる。

略語: ECMO:体外式膜型人工心肺( extracorporeal membrane oxygenation),ECPR:体外循環補助を用いた CPR(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)

第 11 章:小児の一次救命処置と心肺蘇生法の質2019 年,AHA 小児執筆グループは,小児 OHCA における DA-CPR の使用に関連する転帰のレビューを行った。小児 DA-CPR のエビデンスと勧告は, DA-CPR および OHCA の成人患者に対する勧告とは多少異なる。ただし成人集団と同様に, DA-CPR はバイスタンダーによる CPR 率の上昇と, OHCA の乳幼児および小児の転帰改善に関連する。

小児 OHCA の DA-CPR

バイスタンダーによる迅速な CPR は心停止からの生存率を改善するが,OHCA 患者がバイスタンダーから CPR を実施されることはほとんどない。執筆グループは,韓国と日本の EMS システムの登録データに基づいて,小児 OHCA の DA-CPR に関連する転帰のエビデンスのレビューを行った。レビューには,バイスタンダーによる CPR をサポート

するために通信指令員が使用する特定のプロトコルまたは用語の評価を含まない。

2019(新):消防指令センターでは,小児心停止が疑われる場合に通信指令員の指示による CPR を推奨する。

2019(新):バイスタンダーによるCPR が実施されていない場合,通信指令員が 小児の心停止に対する CPR の指示を行うことを推奨する。

2019(新):バイスタンダーによるCPR がすでに開始されている場合に小児の心停止に対する通信指令員による CPR の指示を推奨または反対するには,エビデンスが不十分である。

以前:このトピックに関する過去の勧告はない。

理由: DA-CPR は,OHCA の小児の生存率改善に関連している。 DA-CPR が通報者に提供された場合,バイスタンダーによる CPR の実施可能性はほぼ 3 倍になり,30 日間生存率も向上した。

バイスタンダーによる CPR は,指令員の指導の有無にかかわらず, 1 ヵ月間の良好な神経学的転帰を伴う生存の改善と関連していた。

第 12 章:PALS(小児二次救命処置)AHA 小児執筆グループは,乳幼児や小児の心停止から蘇生後の CPR,ECMO による蘇生(すなわち, ECPR),および TTM 中の高度な気道確保の実施に関する新しいエビデンスを特定および分析した。このエビデンス分析により,これらの治療に関する既存の勧告が改善された。

高度な気道確保:ほとんどの小児の心停止は,呼吸機能の低下によって引き起こされる。BVM 換気は,高度な気道確保(気管挿管や声門上気道確保など)に代わる妥当な選択肢となる。

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ECPR:CPR(ECPR)実施中または間欠的 ROSC 患者に対する静脈脱血 -動脈送血( VA)ECMO の迅速な展開は, ECMO 経験のあるプロバイダーがいる状況において,心疾患と診断された IHCA の小児患者に対して考慮してもよい。

TTM:IHCA の小児の低体温療法について実施した大規模なランダム化試験では,一定期間にわたり中等度の低体温療法(32 ℃~ 34 ℃)を実施した場合と,正常体温を厳格に管理した場合(36 ℃~ 37.5 ℃)では,転帰に違いは示されなかった。

小児蘇生における高度な気道確保小児の心停止における高度な気道確保の有効性を ILCOR と AHA の小児専門家が最後にレビューしたのは 2010 年である。この 2019 年のレビューでは, BVM 換気,気管挿管,および声門上気道確保に関するエビデンスを分析した。最新のエビデンスは,大部分が OHCA のみに関する観察研究(すなわち,登録データ)から得たものである。

2019(更新):院外で心停止を起こした小児の管理において, BVM 換気の使用は,高度な気道確保(気管挿管または声門上気道確保)と比較して妥当である。

2019(新):院内における心停止管理のための高度な気道確保実施については,推奨も反対もできない。さらに,院外心停止または院内心停止のいずれにおいても,どの気道確保方法が優れているかについての勧告を示すことはできない。

2010(旧):病院前の状況では,特に搬送時間が短い場合, BVM 装置を使用して乳幼児および小児に換気と酸素供給を行うことは妥当である。

理由:高度な気道確保にはより具体的なトレーニングと器具が必要となる可能性があるため, BVM 換気の実施は,実施者に適切な経験とトレーニングがある場合,高度な気道確保(気管内挿

管または声門上気道確保デバイスの使用を含む)の代替手段として妥当である。ただし,最適条件下であるにもかかわらず BVM 換気が効果的でない場合は,高度な気道確保の実施を考慮すべきである。

体外循環補助を用いた CPR

ECMO は,従来の CPR が失敗したときの救命措置として使用される場合に,体外循環補助を用いた CPR(または ECPR)と呼ばれる。執筆グループは,ECPR の転帰に関する院内登録データのレビューを行った。このデータは,主に先天性心疾患の手術後に心停止を発症した乳幼児および小児から得たものである。

2019(更新):体外循環補助を用いた CPR の治療プロトコールや専門知識,器材が揃っている環境では,心疾患診断を受け,院内心停止を発症した小児患者については ECPR を検討してもよい。

2019(更新):院外心停止を発症した小児患者,または従来の CPR に抵抗性の院内心停止を発症した非心疾患の小児患者に対して体外循環補助を用いた CPR を使用することを推奨または反対するには,エビデンスが不十分である。

2015(旧):適切なプロトコールと経験を有し,器材が使用可能な場合は, IHCA を呈した基礎に心疾患を有する小児に対し ECPR の使用を考慮してもよい。

理由:大規模な多施設共同症例登録試験および後ろ向き傾向スコア分析のデータから, ECPR が難治性心停止に使用された場合に生存率が向上する可能性が示唆された。ただしほとんどのデータは,心疾患と診断され IHCA を発症した乳児から得たものである。そのため,勧告ではこの患者集団を対象とし, ECPR は適切なプロトコル,専門知識,および機器を必要とするリソース集約型の集学的治療であるという但し書きを引き続き含む。

目標体温管理

TTM は,狭い規定範囲内で継続的に患者の体温を維持することを指す。この小児レビューは, IHCA 後に昏睡状態のままであった小児に対する TTM 32 ℃~ 34 ℃と TTM 36 ℃~ 37.5 ℃を比較した RCT である THAPCA-IH 試験(病院内小児心停止後の低体温療法)の結果の公表をきっかけに行われた。執筆グループは,IHCA と OHCA の両方に対する TTM の有効性のエビデンスを再評価した。

2019(更新):TTM 中の深部体温の連続測定を推奨する。

2019(更新):院外または院内心停止後に昏睡状態にある生後 24 時間から 18 歳までの乳幼児および小児には, 32 ℃~ 34 ℃の TTM または 36 ℃~ 37.5 ℃の TTM を実施することが合理的である。

2019(新):治療期間に関する勧告を裏付けるためのエビデンスは不十分である。THAPCA 試験(小児心停止後の低体温療法)では, 32 ℃~ 34 ℃の TTM を 2 日間実施後,36 ℃~ 37.5 ℃の TTM を 3 日間,または 5 日間実施した。

2015(旧):心停止後( IHCA または OHCA)数日間にわたり昏睡状態にある小児に対しては,体温の持続的モニタリングを行い, ROSC 後の発熱(38 ℃以上)に対しては積極的な治療を行うべきである。

2015(旧): OHCA から蘇生し昏睡状態にある乳幼児や小児に対しては, 5 日間にわたり正常体温( 36 ℃~ 37.5 ℃)を維持するか,開始後 2 日間は低体温(32℃~ 34 ℃)を維持し,その後 3 日間は正常体温を維持する方法が妥当である。

IHCA後に昏睡状態が続く乳幼児および小児に対して正常体温より冷却を推奨するには,エビデンスが不十分である。

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理由: IHCA 後に昏睡状態にある小児を対象とした TTM の大規模な多施設 RCT に関する研究の公表が,小児の心停止後 TTM に関する 2019 年のエビデンス評価と勧告につながった。この院内版の研究では,以前に発表された OHCA 後の小児に関する研究と同じ研究チームが同じ治療プロトコルを使用し,心停止後の TTM 32 ℃~ 34 ℃と TTM 36 ℃~ 37.5 ℃を比較した。これらの試験は共に現在のガイドラインの勧告の基礎となっている。発熱は,心停止などの低酸素虚血イベント後によく見られ,登録データは心停止後の発熱と不良な予後との関連を示している。2019 年の勧告では,心停止後に中等度の低体温を維持する TTM または正常体温を厳密に維持する TTM のいずれかを施行してもよいとする。どちらにおいても,深部体温の監視と発熱の回避が最重要である。

第 13 章:新生児の蘇生新生児の心停止は大半が呼吸原性であるため,今回のガイドライン改訂でも換気の開始を初期蘇生の中心におく。エビデンス評価および『ガイドラインアップデート 2019』における新生児の蘇生に関する主要トピックは以下のとおりである。

• 出生時に呼吸補助を受ける正期産児および後期早産児(在胎 35 週以上)に 21 %の初期吸入酸素濃度を使用することは,依然として妥当である。 100 %濃度の酸素使用が有害である可能性があることを示した研究により,初期吸入酸素濃度として使用しないよう推奨することが促された。この問題が ILCOR により最後にレビューされたのは 2010 年である。

• 出生時に呼吸補助を受ける早産児(在胎 35 週未満)に使用する初期吸入酸素濃度は 21 %~30 %のままであり,その後は酸素飽和度目標に基づき酸素を調節する。

正期産児または後期早産児(在胎 35 週以上)の換気補助開始時の酸素投与低酸素と虚血が臓器損傷を引き起こす可能性があることはよく知られているが,最近では新生児の高酸素への暴露は短時間であっても有害であると考えられている。そのため,低酸素血症と高酸素症の両方を避けるために,新生児の呼吸補助開始時の最適な初期吸入酸素濃度を特定することは重要である。

2019(更新):出生時に呼吸補助を受ける正期産児および後期早産児(在胎 35 週以上)では, 21 %の初期吸入酸素濃度の使用が妥当である。

2019(更新):死亡率の上昇と関連があるため,蘇生開始時に 100 %の酸素を投与をしないこと。

2015(旧):初期蘇生は,空気(海抜 0 メートルでは酸素 21%)で開始することが妥当である。酸素投与を行い,投与量を調節して動脈管前酸素飽和度が経腟分娩の健常正期産児の酸素飽和度(海抜 0 メートルでの)の四分位範囲に到達するようにしてもよい。

理由: 10 件の元となる研究と 2 件のフォローアップ研究による ILCOR システマティックレビューとメタアナリシスから,出生時に呼吸補助を受けている正期児および後期早産児に対して,酸素 100 %と比較して 21 %の酸素投与は,短期および長期の神経学的転帰に統計的に有意な差はなかったが,短期死亡率という極めて重要な転帰を有意に減少することが確認された。出生時の呼吸補助が 100 %の酸素ではなく 21 %の酸素で開始された場合,死亡する乳児は 46/1000 人少ないと推定された。酸素 100 %で投与を開始した場合の死亡率が高いというこのエビデンスから,クラス III:有害に分類され,正期産または後期早産新生児の呼吸補助を開始する際に 100 %酸素を使用しないことが推奨される。酸素飽和度目標を達成するための最適な酸素調節方法についてはエビデン

スが不足しているが,低酸素血症と高酸素血症の両方を避けるために,経腟分娩の健常正期産児の酸素飽和度(海抜 0 メートルでの)の四分位範囲に近い,動脈管前酸素飽和度を目標とすることが重要である。新生児の多くの部分母集団は,出生時の呼吸補助に異なる初期酸素濃度が必要かを判断するための適切な研究がなされていない。先天性心疾患およびその他の先天性異常を有する新生児は,低酸素血症または高酸素血症のいずれかによって害を受ける可能性があり,これらの新生児を対象とした研究が必要である。

早産新生児の換気補助開始時の酸素投与(在胎35 週未満)早産新生児は,正期産の新生児よりも過剰な酸素暴露の合併症(例:気管支肺異形成症,未熟児網膜症)に陥りやすい可能性がある。そのため,最初の呼吸補助に使用する最適な酸素濃度を決定することは重要であり,測定した動脈管前酸素飽和度に基づいた調節が必要である。

2019(改訂):出生時に呼吸補助を受ける早産新生児(在胎 35 週未満)では,酸素投与を 21 %~ 30 %の濃度から始め,その後はパルスオキシメータに基づいて吸入酸素濃度を調節することを妥当としてよい。

2015(旧):在胎 35 週未満の早産新生児の蘇生においては,吸入酸素は低濃度(21 %~ 30 %)で開始し,動脈管前酸素飽和度が経腟分娩の健常正期産児の酸素飽和度(海抜 0 メートルでの)の四分位範囲に到達するよう,濃度を調節すべきである。早産新生児の蘇生において,吸入酸素を高濃度(65 %以上)で開始することは推奨されない。重要な転帰項目に対する有益性を示すデータがない状態では,早産新生児に対する高濃度酸素への曝露の回避を優先することとし,上記のとおり推奨した。

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理由: 2015 年以降に, 16 件の研究(10件のランダム化試験, 2 件のフォローアップ研究, 4 件の観察研究)を含む新しいデータが発表されたため, ILCORは,出生直後に低濃度の吸入酸素から開始した呼吸補助を受けた早産児(在胎 35 週未満)と,より高い濃度の吸入酸素で開始した呼吸補助を受けた早産児の転帰を比較したシステマティックレビューを実施した。システマティックレビューでは,短期死亡率または予め定められた二次転帰のいずれにおいても 2 群間に統計的な有意差は示されなかった。 8 件のランダム化試験で共介入として使用された酸素飽和度目標により,初期吸入酸素濃度

21 %群のほぼすべての新生児が酸素投与を受けることとなった。多くの研究は,バイアスのリスク,不精確さ,非直接性,および対象患者数の少なさのためダウングレードなった。多くの部分母集団と転帰は十分に評価されていない。これらの弱点とエビデンスの不確実性にもかかわらず,酸素濃度を 21%~30 %から始め,その後酸素投与の調整をするという勧告は,重大または重要な転帰の利益についてエビデンスはないが,この脆弱な集団への追加の酸素暴露を避けることの重要性に基づいている。

第 15章:ファーストエイド『AHA と American Red Cross のファーストエイドガイドライン重点的アップデート 2019』は,苦痛を和らげ,さらなる病気や怪我を予防し,回復を促進することにより,罹患率と死亡率を低減するという目標を再確認している。ファーストエイドは誰でも開始でき,救命の連鎖をサポートする。

ファーストエイドタスクフォースが取り組む 2019 年のトピックは,失神性めまいの応急処置である。

失神性めまいの治療

意識喪失に先立つ認識可能な自他覚症状を伴う失神性めまいは,血管迷走神経反射性失神および起立性失神の発症前に数秒間続くことがある。関連する自他覚症状には,蒼白,発汗,立ちくらみ,視覚変化,および脱力が含まれる(表 2)。失神性めまいは,迅速なファーストエイド介入により症状の改善または失神発生の予防ができる時間である。

失神回避法には,上半身または下半身(またはその両方)の筋肉収縮があり,血圧を上昇させ,失神性めまいの症状を緩和する。こうした失神回避法には,筋肉の緊張を伴う足の交差,スクワット,腕の緊張,等尺性ハンドグリップ,および首の屈曲などがある。ファーストエイドタスクフォースは,血管迷走神経反射性または起立性失神の失神性めまいに対するこれらの失神回避法の有効性に関して,公表されているエビデンスを調査した。

2019(新):血管迷走神経反射性または起立性失神による失神性めまいの自他覚症状(蒼白,発汗,立ちくらみ,視覚の変化,脱力感を含む)を経験した場合の優先事項は,座位または臥床などの安全な姿勢を維持すること,またはそのような姿勢を取ることである。安全な姿勢を取った上で,失神を避けるために失神回避法を実施することは有益でありうる。

2019(新):ファーストエイドプロバイダーが別の個人の血管迷走神経反射性失神または起立性失神の可能性がある失神性めまいを認識した場合,症状が解消されるか失神が発生するまで失神回避法を行うように促すことを妥当としてよい。

1~ 2 分以内に改善が見られない場合,または症状が悪化または再発する場合,プロバイダーは救助の応援を求めるべきである。

2019(新):酌量すべき状況がなければ,上半身および腹部の失神回避法よりも下半身の失神回避法が好ましい。

2019(新):失神性めまいが心臓発作や脳卒中の症状を伴う場合,失神回避法の実施は推奨されない。

以前:失神性めまいの治療に対する勧告は過去にない。

理由:失神回避法は,失神とそれにより生じるイベント(転倒,昏倒など)を減らすことができる簡潔な方法である。他のファーストエイドと同様に,当人とファーストエイドプロバイダーの行動は安全性を最優先した上で決まる。エビデンスは上半身よりも下半身の失神回避法が有益であることを示しているが,多くの方法およびそれらの組み合わせも有益でありうる。エビデンスは,血管迷走神経反射性または起立性失神を起こしやすい人々が失神回避法を学び使用することで,生活の質を改善できることを示唆している。

表 2. 失神性めまいの典型的な自他覚症状

失神性めまいの典型的な症状 脱力,めまい,吐き気,温かい/暑いまたは寒い,腹痛,視覚障害(黒い斑点,かすみ目)

失神性めまいの典型的な兆候 蒼白,発汗,嘔吐,震え,ため息,姿勢を保てない,混乱

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まとめ『AHA CPR と ECC のためのガイドラインの重点的アップデート 2019』には,成人 OHCA 後の DA-CPR および CAC から,高度な気道確保,血管収縮薬,および ACLS における ECPR,小児 OHCA の DA-CPR,小児の心停止のための高度な気道確保と ECPR,および小児の心拍再開後の治療のための TTM,正期産児または後期早産児および早産児の呼吸補助のための初回吸入酸素濃度まで,多岐にわたる 11 件のトピックに関するエビデンスレビューの要約および勧告の改訂を含む。『AHA および American Red Cross のファーストエイドガイドラインの重点的アップデート 2019』には,エビデンスの要約と失神性めまいに対する介入の新しい勧告が含まれている。これらの重点的アップデートは,CPR と ECC のための過去の AHA ガイドラインと,ファーストエイドのための AHA と American Red Cross のガイドラインの特定の部分を改訂するものである。読者には,重点的アップデート 2019 完全版,オンラインで公開されている統合版『 AHA CPR と ECC のためのガイドライン』,公開された CoSTR サマリー 2019,および 2018~ 2019 年の CoSTR オンライン草稿原稿で,公表されているエビデンスの概要と,ILCOR および AHA 執筆グループの専門家による詳細な洞察と分析をレビューすることを推奨する。

推奨文献 Aickin RP, de Caen AR, Atkins DL, et al; for the International Liaison Committee on Resuscitation Pediatric Life Support Task Force. Pediatric targeted temperature management post cardiac arrest: consensus on science with treatment recommendations. International Liaison Committee on Resuscitation website. costr.ilcor.org. Accessed July 8, 2019.

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