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No.07-5 日本機械学会熱工学コンファレンス 2007 講演論文集〔2007.11.23-24, 京都〕 Copyright©2007 社団法人 日本機械学会 分子シミュレーションは熱工学の役に立つか? How Can Molecular Simulations Contribute to Thermal Engineering? 正 松本 充弘(京大) Mitsuhiro Matsumoto, Kyoto University, Yoshida-honmachi, Sakyo-ku, Kyoto Key Words: Molecular Simulation, Microbubble, Nanofluidics, Thermophysical Properties, Thermal Conductivity 1.はじめに 「分子シミュレーション」という言葉や手法は,熱工学 の分野でも多くの方々の知るところとなったかと思われる. 最近の本コンファレンスでも,このような手法に基づく研 究が数々発表されている.今回,キーノート講演の機会を 与えていただいたのを幸いとして,分子シミュレーション がどのように熱工学研究に貢献し得るのかを,改めて考え てみたい. 分子シミュレーションの「宣伝」をしようとすれば,本 手法を用いて行われた世界中のさまざまな熱工学研究につ いてレビューする,というのもひとつのやり方であり,あ るいは本キーノート講演の趣旨にもかなうことかとも思わ れるが,演者の手に余る.ここでは,演者が最近手がけて いる2つのトピックスに絞って, ・熱工学現象を分子スケールで考えることの意味 ・その中で分子シミュレーションが果たす役割 の例を紹介することにする. 2.分子シミュレーションとは まずは,分子シミュレーション手法について,その概略 をごく簡単にまとめる.最近は,和書も数多く出版されて いる (1-7) ので,詳細はそれらを参照いただきたい. 2.1 誕生 歴史的には,諸現象を「原子・分子」のレベルで扱おう とする場合の道具として分子シミュレーションが誕生した. 物質が原子・分子から構成されているというのは,a-tom という言葉が生まれた古代ギリシャまで遡るが,原子・分 子を1つ1つ追跡してその集団的性質を調べるという発想 は,もちろん電子計算機が大きく発達した 1900 年代半ば以 降のものである.最初は,パチンコ玉のような剛体球が数 十個集まった系を計算するのが限界であったが,やがて, 水や生体高分子などの実在分子系の計算や,量子力学を取 り込んだ第一原理計算などへと大きく発展してきたことは ご存知の通りである.奇しくも,今年 2007 年は剛体球のシ ミュレーションにより固液相転移(Alder 転移)が見出さ れてからちょうど 50 年目にあたり,日本でも記念シンポジ ウム (8) が行われる. 2.2 分類 分子シミュレーションは,2つの見方で分類することが できる.1つは,基礎とする力学体系の違いによるもので, ・古典力学のみに基づくシミュレーション ・量子力学を出発点としたシミュレーション の2つに大きく分類できる.第一原理 MD 法などが後者の 例であるが, Schrödinger 方程式など量子力学をきちんと扱 うのは現在でも計算コストが高く,ある程度の近似を行っ ても扱える対象サイズは限られる.このため,特に必要が なければ古典力学を出発点にするシミュレーションがよく 用いられる.本稿で扱うのもすべて古典力学による計算で ある.もう1つの分類は手法の詳細によるもので, ・静的統計量のみを扱う:モンテカルロ法 ・ダイナミクスを扱う: 1) 粒子1つ1つを追跡する:分子動力学法,ブラウン 動力学法,散逸粒動力学法など 2) 粒子分布を対象とする:DSMC 法など のように大きく分けることができる.狭義の「分子シミュ レーション」は,これまで主としてモンテカルロ法や分子 動力学法を意味することが多かったが,よりスケールが大 きくまた複雑な系を対象とするために,不必要な自由度を 粗視化することによってブラウン動力学法などが生まれて いる.また,メッシュレス計算力学法の1つとして注目さ れている粒子シミュレーション法 (9) も,流体要素を1つの 粒子と見立てて運動方程式を解くものであり,手法として は分子シミュレーションとの共通点が多い.一方,DSMC 法は,少数の代表粒子のダイナミクス(衝突)によって速 度分布の時間変化を追跡するものであり,すべての粒子を 追跡する分子シミュレーションとは発想の原点が異なるが, やはり粒子レベルの相互作用を扱う点で共通するところは 多い. 2.3 分子動力学法 本稿で紹介する研究例で主に使っているのは分子動力学 (Molecular Dynamics, MD) 法である.これは,粒子(原子 あるいは分子)間に適当な相互作用ポテンシャルを仮定し て,その運動方程式を数値積分することにより粒子の運動 を追跡するという素朴な方法である.(発想は素朴だが, There are problems in thermal engineering which require consideration in nano-scale or at molecular level. Nanofluidics is an example. Heat conduction in electronic device is another. In this paper, several examples are given from our recent works, which molecular simulations have made large contributions to. The first one concerns “nano bubbles”; molecular simulation reveals that surface tension and vapor pressure of a nano bubble hardly depend on its size and that the classical Young-Laplace equation is applicable even to a bubble as small as several nano meters. The second example is heat conduction in solid thin film. As the film thickness decreases to “phonon mean free path,” the apparent thermal conductivity becomes smaller than the bulk value, the mechanism of which molecular simulation can explain.

How Can Molecular Simulations Contribute to …...Key Words: Molecular Simulation, Microbubble, Nanofluidics, Thermophysical Properties, Thermal Conductivity 1.はじめに 「分子シミュレーション」という言葉や手法は,熱工学

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Page 1: How Can Molecular Simulations Contribute to …...Key Words: Molecular Simulation, Microbubble, Nanofluidics, Thermophysical Properties, Thermal Conductivity 1.はじめに 「分子シミュレーション」という言葉や手法は,熱工学

No.07-5 日本機械学会熱工学コンファレンス 2007 講演論文集〔2007.11.23-24, 京都〕

Copyright©2007 社団法人 日本機械学会

分子シミュレーションは熱工学の役に立つか?

How Can Molecular Simulations Contribute to Thermal Engineering?

正 松本 充弘(京大) Mitsuhiro Matsumoto, Kyoto University, Yoshida-honmachi, Sakyo-ku, Kyoto

Key Words: Molecular Simulation, Microbubble, Nanofluidics, Thermophysical Properties, Thermal Conductivity

1.はじめに

「分子シミュレーション」という言葉や手法は,熱工学

の分野でも多くの方々の知るところとなったかと思われる.

最近の本コンファレンスでも,このような手法に基づく研

究が数々発表されている.今回,キーノート講演の機会を

与えていただいたのを幸いとして,分子シミュレーション

がどのように熱工学研究に貢献し得るのかを,改めて考え

てみたい. 分子シミュレーションの「宣伝」をしようとすれば,本

手法を用いて行われた世界中のさまざまな熱工学研究につ

いてレビューする,というのもひとつのやり方であり,あ

るいは本キーノート講演の趣旨にもかなうことかとも思わ

れるが,演者の手に余る.ここでは,演者が最近手がけて

いる2つのトピックスに絞って, ・熱工学現象を分子スケールで考えることの意味 ・その中で分子シミュレーションが果たす役割 の例を紹介することにする.

2.分子シミュレーションとは まずは,分子シミュレーション手法について,その概略

をごく簡単にまとめる.最近は,和書も数多く出版されて

いる(1-7)ので,詳細はそれらを参照いただきたい. 2.1 誕生

歴史的には,諸現象を「原子・分子」のレベルで扱おう

とする場合の道具として分子シミュレーションが誕生した. 物質が原子・分子から構成されているというのは,a-tomという言葉が生まれた古代ギリシャまで遡るが,原子・分

子を1つ1つ追跡してその集団的性質を調べるという発想

は,もちろん電子計算機が大きく発達した 1900 年代半ば以

降のものである.最初は,パチンコ玉のような剛体球が数

十個集まった系を計算するのが限界であったが,やがて,

水や生体高分子などの実在分子系の計算や,量子力学を取

り込んだ第一原理計算などへと大きく発展してきたことは

ご存知の通りである.奇しくも,今年 2007 年は剛体球のシ

ミュレーションにより固液相転移(Alder 転移)が見出さ

れてからちょうど 50 年目にあたり,日本でも記念シンポジ

ウム(8)が行われる.

2.2 分類 分子シミュレーションは,2つの見方で分類することが

できる.1つは,基礎とする力学体系の違いによるもので, ・古典力学のみに基づくシミュレーション ・量子力学を出発点としたシミュレーション の2つに大きく分類できる.第一原理 MD 法などが後者の

例であるが,Schrödinger 方程式など量子力学をきちんと扱

うのは現在でも計算コストが高く,ある程度の近似を行っ

ても扱える対象サイズは限られる.このため,特に必要が

なければ古典力学を出発点にするシミュレーションがよく

用いられる.本稿で扱うのもすべて古典力学による計算で

ある.もう1つの分類は手法の詳細によるもので, ・静的統計量のみを扱う:モンテカルロ法 ・ダイナミクスを扱う:

1) 粒子1つ1つを追跡する:分子動力学法,ブラウン

動力学法,散逸粒動力学法など 2) 粒子分布を対象とする:DSMC 法など

のように大きく分けることができる.狭義の「分子シミュ

レーション」は,これまで主としてモンテカルロ法や分子

動力学法を意味することが多かったが,よりスケールが大

きくまた複雑な系を対象とするために,不必要な自由度を

粗視化することによってブラウン動力学法などが生まれて

いる.また,メッシュレス計算力学法の1つとして注目さ

れている粒子シミュレーション法(9)も,流体要素を1つの

粒子と見立てて運動方程式を解くものであり,手法として

は分子シミュレーションとの共通点が多い.一方,DSMC法は,少数の代表粒子のダイナミクス(衝突)によって速

度分布の時間変化を追跡するものであり,すべての粒子を

追跡する分子シミュレーションとは発想の原点が異なるが,

やはり粒子レベルの相互作用を扱う点で共通するところは

多い. 2.3 分子動力学法 本稿で紹介する研究例で主に使っているのは分子動力学

(Molecular Dynamics, MD) 法である.これは,粒子(原子

あるいは分子)間に適当な相互作用ポテンシャルを仮定し

て,その運動方程式を数値積分することにより粒子の運動

を追跡するという素朴な方法である.(発想は素朴だが,

There are problems in thermal engineering which require consideration in nano-scale or at molecular level. Nanofluidics is an example. Heat conduction in electronic device is another. In this paper,several examples are given from our recent works, which molecular simulations have made large contributions to. The first one concerns “nano bubbles”; molecular simulation reveals that surface tension and vapor pressure of a nano bubble hardly depend on its size and that the classicalYoung-Laplace equation is applicable even to a bubble as small as several nano meters. The second example is heat conduction in solid thin film. As the film thickness decreases to “phonon mean free path,” the apparent thermal conductivity becomes smaller than the bulk value, the mechanism of which molecular simulation can explain.

Page 2: How Can Molecular Simulations Contribute to …...Key Words: Molecular Simulation, Microbubble, Nanofluidics, Thermophysical Properties, Thermal Conductivity 1.はじめに 「分子シミュレーション」という言葉や手法は,熱工学

精度が高く数値安定性を確保するためにさまざまなアルゴ

リズムが開発されていることは付記しておかねばならな

い.) 孤立系であれば,十分な時間をかければ(すなわち,長

時間,粒子の運動を追跡すれば),平衡状態に到達するこ

とを我々は経験的に知っている.初期の MD シミュレーシ

ョンはほとんどがこの平衡状態を対象にして行われ,流体

の状態方程式を決定したり,種々の相図を作成したりする

ことに利用された.一方,系を不均質な外場中に置くなど

によって非平衡状態の計算を行うことも可能であり,熱伝

導や流体粘性など動的物性の評価に利用されている.この

場合,定常状態になるのを待って時間平均をとることが多

い.さらに,最近では,初期状態から平衡状態(あるいは

定常状態)に移る遷移過程自体が研究対象であることも増

えているが,原理的に時間平均をとることができないため,

定量的な解析はより難しくなる. 3.2つの例から分子シミュレーションの用途を考える

本稿では,狭義の分子シミュレーション,すなわち「分

子スケールの粒子集団」を扱った例を述べて,分子シミュ

レーションが熱工学研究にいかに貢献できるかを考えたい.

当然ながらこれは,熱工学現象を分子スケールで考えるこ

との意義と密接に関係しているので,分子スケールの現象

をなぜ考える必要があるのか,という問いから出発するこ

とにする. ここでは,演者がこれまでに扱ってきた2つの例(流体

と固体)を取り上げる. 4.流体の例:マイクロ気泡

「泡 bubble, foam」がさまざまな分野で活躍しているこ

とはよくご存知であろう.大まかには,内外が異なる相で

あるものを bubble,同じ(あるいは類似の)相であるもの

を foam と分類しているが,ここでは液体中に気体が存在

する「気泡」を考える.気泡のうち,内部が周囲液体の蒸

気のみであるのが vapor bubble,他の気体が混ざっている

ものが gas bubble である.

4.1 教科書レベルの話

「気泡」に関しては,もちろん膨大な研究が蓄積されて

いる.ここでは,気泡力学(10)の出発点としてよく取り上げ

られる,静止した1つの球形気泡の力学的つりあいを,仮

想仕事の原理に基づいて考える. 大きな箱の中に,半径 R の球形気泡が閉じ込められてい

るとする.気泡内部の圧力をvapP ,周囲液体の圧力を

liqP ,

表面張力(気液界面張力)を γ として,つりあい状態から

の仮想変位 Rδ による仮想仕事 Wδ は,体積変化による仕事

と表面積の変化による仕事の和で表される:

( )

( ) [ ]

( )

( ) RR

PPR

RRRRPP

RRPP

AVPPW

vapliq

vapliq

vapliq

vapliq

δγπ

δπγδπ

πγδπδ

γδδδ

⎥⎦⎤

⎢⎣⎡ ++−=

++−=

+⎥⎦⎤

⎢⎣⎡+−=

++−=

24

84

43

4

2

2

23 (1)

力 学 的 つ り あ い は 0=Wδ で 表 さ れ る か ら , 次 の

Young-Laplace 方程式(以下,Y-L式と省略する)が得ら

れる:

R

PP liqvapγ2

+= (2)

この式は,「表面張力のために,気泡の内部圧力は周囲の

液体より Rγ2 だけ高い」と解釈することができる.

4.2 分子スケールの問題

気泡サイズ R がミリメートルのオーダーであれば,この

Y-L 式は何の困難も引き起こさない.問題は, 0→R の極

限での発散挙動である. 最近,マイクロバブルあるいはナノバブルがさまざまな

分野で話題になっている.水中においてマイクロメートル

程度の気泡が比較的容易に生成できるようになり,その物

性が議論されている(11).十ナノメートルのオーダーの気泡

が水中で安定に存在する可能性も示されている.

Y-L 式に基づいて,気泡内外の圧力差 liqvap PPP −≡Δ が

どのように R に依存するかを,室温での水の場合

( 071.0≈γ N/m)について予想してみると,Table 1 のよう

になる.この予想が正しければ,大気圧下において「ナノ

バブル」の内部は 10~1000 気圧もの圧力になっていること

になる.本当だろうか? Y-L 式をめぐって,2つの解釈が可能である: 1) Y-L 式はマクロスケールにおいてのみ成り立つ法則であ

って,分子スケールでは成り立たない. 2) Y-L 式自体は分子スケールでも成り立つが,そこに現れ

る物性,特に表面張力 γ ,がマクロな物性値とは異なり,

サイズ依存性をもつ. このどちらが正しいのか,あるいは別の解釈が必要なのか,

は,実際に調べてみるしかない.微小気泡の内圧を測定す

る実験は困難であるので,分子シミュレーションの出番で

ある.

4.3 シミュレーションを行う

4.3.1 計算の概略 我々は,MD法による微小気泡のシミ

ュレーションを行うことにした(12).平衡状態での圧力計算

という比較的単純な問題なので,分子シミュレーションの

方法には特に問題はない.ただ,いろいろなサイズの気泡

を計算機の中に作り出すためには比較的多くの分子を必要

とする.ここでは,25,000 あるいは 125,000 粒子の系を用

Table 1 Pressure difference of a spherical bubble in water at room temperature, estimated with the Young-Laplace equation.

R RP γ2=Δ

1 mm 0.00014 MPa

1 μm 0.14 MPa

100 nm 1.4 MPa

10 nm 14 MPa

1 nm 140 MPa

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いた. 水のような実在液体を取り扱うのは計算時間がかかるた

め,次のような単純な粒子間相互作用(Lennard-Jones ポテン

シャル)をもつ単原子分子で流体をモデル化した:

⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛=

612

4)(rr

rLJσσεφ (3)

これは,気体・液体・固体の相図がよく調べられているモ

デル系であり,気液臨界温度と三重点温度が,無次元表示

でそれぞれ 32.1/* ≈≡ εTkT Bc , 67.0/* ≈≡ εTkT Bt と求めら

れている.我々は,三重点温度に近い 7.0* =T および少し

高温の 0.1* =T において計算を行った. 計算系( 7.0* =T )の例を Fig. 1 に示す.系は3次元で

あるが,見やすいように気泡を含む断面を2次元的に示し

てある.粒子直径σ を典型的な分子のサイズ,約 0.3 nm, と考えると,これは 5≈R nm 程度の気泡に相当する.計算

系の体積を変えるとサイズの異なる気泡を作成することが

できる.いずれにしても,低温であるため蒸気圧が低く,

気泡内部には数個の「蒸気分子」が飛んでいるだけで,と

ても 1000 気圧もの高圧になっているとは思えない. 4.3.2 圧力を測る 気泡界面の領域を除いて,計算系を液

体部分と気体部分に分割する.液体部分の圧力liqP は次の

ビリアル式より求めることができる:

∑ ∂∂⋅−=

jiB r

rV

TkVNP

,61

rr φ (4)

ここで,右辺第1項は理想気体の圧力,第2項は粒子間相

互作用の寄与である.求めたliqP を気泡半径 R に対してプ

ロットしたのが Fig. 2 である.全体として負圧になってい

るのが目につくが,これは気泡の存在によって周囲の液体

が「引っ張り状態 stretched state」にあることを意味する.

そのことは,Fig. 3 に示す液体部分の密度(数密度)から

もわかる.気泡が小さくなるにつれて,液体はより強く引

っ張られ,密度が低下する. 気体部分は,蒸気密度が極めて小さく,ビリアル式を用

いると統計精度が悪い.このため,バルク気体のMD計算

を別途行って状態方程式を作成しておき,蒸気密度から間

接的に気体圧力vapP を求めることにした.結果を Fig. 4 に

示すが,ナノスケールの気泡であってもその蒸気圧がサイ

ズに依存せず,バルクな飽和蒸気圧(図中の∞のデータ)

に一致するのは予想外のことであった. 4.3.3 表面張力を求める 平板状の界面の張力を分子シミ

ュレーションで求めることは容易であるが,気泡や液滴な

ど曲面の表面張力は求めにくい.原理的にはビリアル式(4)に類似した応力テンソル式を局所的に求めて空間積分する

のであるが,分子スケールでは一般に局所応力の揺らぎが

大きく,精度のよい平均が得にくいのである.我々の目的

は Y-L 式(2)の検証にあるので,逆に,(2)を仮定して求め

た表面張力 γ がどのような R 依存性を示すか,と考えてみ

Fig. 1 Sectional view of the bubble for simulation.

Fig. 2 Pressure of surrounding liquid.

Fig. 3 Number density of surrounding liquid

.

Fig. 4 Pressure inside the bubble.

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た.結果が Fig. 5 である.驚くべきことに,表面張力は気

泡サイズにほとんど依存せず,バルクの値(図中の∞)と

一致する. 4.3.4 ナノバブル再考 以上の分子シミュレーション結果

から得られた我々の結論は 1) ナノバブルにおいても Y-L 式を適用してよい,あるいは

適用しても矛盾は生じない 2) Y-L 式に現れる表面張力や飽和蒸気圧について,その気

泡サイズ依存性はない,あるいは極めて小さい(13) というものである.特に,2)については分子シミュレーシ

ョンをすることによってはじめてわかることである.なお,

Lennard-Jones 相互作用[式(3)]という短距離力ではなく,

Coulomb 相互作用のような長距離力が働く場合にも,基本

的にはこの結論が妥当であることを我々は確かめつつある. ところで,以上の結論を認めるとすると,4.2 で提起し

た 0→R での発散問題はどうなるのだろうか? 我々は,

ナノバブルの安定性について次のように考えている: 1) 観測されるナノバブルは,平衡状態にはない.例えば,

≈≈ vapliq PP 大気圧 というような場合,力学的つりあい

が成り立っていないため,バブルは次第に小さくなり,

やがて消滅する. あるいは, 2) 平衡状態にあると思われる場合には,非凝縮性ガスを気

泡内部に含んでいる,もしくは界面活性のある不純物

が気泡表面に吸着して表面張力が大きく低下してい

る. のいずれか(もしくは両方)であろう.

実際,2)に関しては,たとえば,旋回流方式で生成する

水中のマイクロバブルの表面が帯電しているという報告が

あり(14),我々も同種の実験で確認している(Fig. 6).この帯

電は不純物によるものではなく,水分子が解離してできた

水酸化物イオン OH-によるものと考えられる.このような

電荷は気泡の表面張力を大きく変える可能性があり,マイ

クロバブルの安定性を議論する重要なポイントとなるであ

ろう.

4.4 その先にあるもの:気泡の体積変化

Y-L 式が使えるとなると,基本的には連続体力学に従っ

て気泡ダイナミクスを調べてもよいことになる.実際,MD計算による振動気泡の半径変化が,Rayleigh-Plesset 方程式

でよく表現できるという報告もなされている(15). しかし,ソノルミネセンスや衝撃波によるマイクロ気泡

Fig. 5 Surface tension of the bubble.

Fig. 6 Trajectory of microbubbles in water under

alternate electric field: 2 Hz, 3346 V/m.

→ →

→ →

→ →

Fig. 7 Hybrid simulation of spherical bubble oscillation.

Fig. 8 Hybrid simulation of non-spherical bubble collapse.

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の崩壊など,平衡状態から大きくずれる系の動的挙動につ

いては,連続体の基礎式に基づく解析のみで十分かどうか

は明らかではない.一方,計算資源の制約上,MD計算で

扱える気泡サイズには限界があり,高々10 nm 程度が精一

杯である. 我々は,変化の小さい液相側(気泡から十分遠方の領域)

を連続体(CFD 計算)として取扱い,激しく変化する気泡

周辺のみをMD法で計算するハイブリッドシミュレーショ

ンに取り組んでいる.その一例として,球形気泡に圧力を

かけた場合の崩壊過程の様子を Fig. 7 に示した(16).完全に

崩壊した後,キャビテーションにより核生成的に新たに気

泡が発生することがわかる.また,崩壊時の気泡の内部温

度の上昇なども解析することができる.この方法は,気泡

の表面張力などの物性値を予め仮定することなく気泡ダイ

ナミクスを追跡できることが利点である. なおこの計算では CFD 領域の球対称性を仮定している

が,現在は,CFD 領域も3次元的に取り扱うことで,衝撃

波通過に伴う気泡の非球形崩壊のハイブリッド計算を試み

ている(17).そのスナップショットの例を Fig. 8 に示す.

5.固体の例:熱伝導

続いて,固体において分子シミュレーションが活躍する

例を紹介する.固体の分子シミュレーションと言えば,材

料強度など材料学の分野やバンド計算による物性評価など

固体物理学の分野などにおける貢献が華々しいが,熱工学

分野では,電子デバイスなどにおける固体熱伝導評価が1

つの中心であろう. 5.1 教科書レベルの話 固体中のエネルギー輸送の担い手は,格子振動と電子の

2つに大別される.絶縁体では前者のみ,金属材料では後

者の寄与が非常に大きい.半導体では両方を考えなければ

ならず,熱伝導評価は一般に複雑になる.ここでは,古典

力学に基づく分子シミュレーションによって格子振動によ

る熱エネルギー輸送を評価する例を紹介する. 固体物理学の教科書(18)では,格子振動を量子化した「フ

ォノン」が固体中を飛び交ってエネルギーを輸送するとい

う描像が多く記述される.輸送される熱流束 qrが試料内部

の温度勾配に比例する,というのがよく知られた Fourier則であり,その∝係数として熱伝導率λ が定義される:

Tq ∇−=vr λ (5)

気体分子運動論とのアナロジーから,λ は

τλ 2

31

31 CvCvl == (6)

と表される(18).ここで,C は単位体積あたりのフォノン熱

容量, v はフォノン速度(音速), l はフォノンの平均自

由行程,τ はフォノンの緩和時間である. ここで,対象系のサイズ L と平均自由行程 l との関係が

問題になる.キッテルの教科書(18)ではこのように記述され

ている: 「もしかりに,エネルギーが,直接試料を通り抜け,曲

げられることなく伝播するとするならば,熱流の表式は

温度勾配に比例するのではなく,試料の長さには関係な

く,単に試料の両端における温度差 TΔ に関係すること

になるであろう.」 この問題は極低温の単結晶など l が巨視的な長さになる場

合について古く Casimir によって指摘されていた(19)が,最

近は,薄膜材料など Lがサブマイクロメートルのスケール

になる場合について再浮上した. 5.2 分子スケールの問題 固体薄膜の膜法線(垂直)方向の熱伝導率は,同じ材料

のバルク熱伝導率よりも小さい,とよく言われる.実際,

最近の熱測定技術(たとえば 3ω法)では,100nm 以下の

膜厚の試料の熱伝導率を測定することが可能だそうであり,

確かに SiO2 膜の熱伝導率は膜厚数百 nm 以下の場合に大き

く低下するという結果(20)が報告されている. そのメカニズムとしては, lL ≤ となる場合にフォノン輸

送が「拡散的 diffusive [すなわち式(5)に従う]」から「弾

道的 ballistic」に変わるためである,というのがよく行わ

れる説明である. しかし不思議に思わないだろうか? 試料のサイズが小

さくなってフォノン同士が十分に衝突・散乱しないうちに

試料を通り抜けるとしたら,熱伝導はむしろよくなるだろ

うというのが直感的な予想であろう. Majumdar らは,希薄気体力学でよく使われる Boltzmann輸送方程式をフォノン輸送に応用した解析を行い(21),熱浴

界面での温度ジャンプが熱伝導率低下の原因であるという

結論を得ている.その模式図が Fig. 9 である.フォノン輸

送が弾道的になると試料両端の熱浴との間に温度ジャンプ

が生じて温度勾配が小さくなる,と説明している. どの程度の温度ジャンプが生じるかは計算してみなけれ

ばわからず,また輸送方程式を解く際の境界条件に依存す

る可能性もある. ここで分子シミュレーションの出番,となるわけだが,

もう少し「紙と鉛筆」で考えてみよう.試料両端の温度差

(熱浴の温度差)を TΔ ,試料の厚さを d とする.Fourier則が成り立つと仮定した場合の熱流束の大きさは,

dTq Δ

= λ (7)

である.ここで, TΔ を固定したまま(つまり両熱浴の温

度を一定にして)厚さを小さくするという思考実験を行う.

このとき Fourier 則は,熱流束が膜厚に反比例するという結

Fig. 9 Schematic temperature profile in steady state(21).

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果を予測する.さて, 0→d に近づけたときにどうなるだ

ろうか? もちろん q が無限大に発散することは現実には

あり得なくて, TΔ (あるいは個々の熱浴の温度)によっ

て決まるある有限の値に収束するはずである.これが

Casimir 極限に対応すると考えられる.これを模式的に示し

たのが Fig. 10 である.「見かけの」熱伝導率は,式(7)から

Tdq

Δ⋅

=λ (8)

となるから,結局,Fig. 11 となることが予想される.すな

わち,界面での温度ジャンプ(界面熱抵抗)を考えなくて

も薄膜の熱伝導率の低下は理解できるのである.別の見方

をすると,熱流束は Fourier 則に従ってどこまでも温度勾配

(ここでは dTΔ )に比例するのではなく,ある上限があ

るとも言えるが,これは当然のことである.巨視的な試料

で温度勾配を大きくすると両端の温度が極端に異なること

になり物性の温度依存性が別に問題となり得る.しかし,

薄膜の場合は温度そのものが大きく変わることなく温度勾

配が大きくなる点が,巨視的な系とは異なる. もちろん,このような系において界面熱抵抗は必ず存在

するものであり,膜厚の減少とともにその重要性が増すこ

とを否定するものではない. 5.3 シミュレーションを行う 以上は頭の中で考えたことであるが,「実際に」何が起

きているかをMD法で調べてみる.

Figure 12 に示すような固体系を用いる.細長い結晶のよ

うに見えるが,上下・前後方向は周期境界条件を用いるた

め,薄膜の一部と考えることができる.左右両端の数層を

別々に温度制御することで,2つの熱浴に接している系を

実現している.熱浴の温度を 20300 ± K とした場合に定常

状態での温度分布の例を Fig. 13 に示す.確かに両端で温度

勾配の大きい部分,すなわち温度ジャンプが見られる.他

方,薄膜内部にはかなり大きな温度勾配が存在することか

ら,この厚さでは Casimir 極限には達していないとも考え

られる. これまで我々は,MD計算から「フォノン」の輸送や散

乱を直接に可視化する試みを行ってきた(22)が,残念ながら

あまり成功しているとは言えない.そこでもう一度,実際

には各原子がエネルギーを輸送しているという描像に戻っ

て,原子のもつ運動量分布を調べてみたのが Fig. 14 である.

これは,薄膜の特定の層の原子のみについて,温度勾配方

向( z )の運動量成分 zp の分布を調べたもので,大まかには

きれいな Maxwell 分布をしていることがわかる.しかし詳

細に調べると,わずかに左右が非対称である.この差が z−方向へのエネルギー輸送を担っていることになる.二乗平

均から,「 z 方向の温度」を見積もってみると

KmpT

KmpT

z

z

p

z

p

z

1.299

0.297

0

2

0

2

≈≡

≈≡

<

>

+

(9)

と,確かに z− への運動量のほうが大きい.このことは,

統計力学における「温度」の定義に関わる問題である.運

動量分布が(わずかではあるが)Maxwell 分布からずれて

いる場合に「温度」は定義できるのだろうか? ここでは,

Fig. 10 Thickness dependence of heat flux under constant

heat bath temperature: a conjecture.

Fig. 11 Thickness dependence of apparent thermal

conductivity: a conjecture.

Fig. 12 Snapshot of a model silicon crystal for MD

simulation.

Fig. 13 Temperature profile of silicon “film” with

thickness 38 nm.

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温度の異なる2枚の平板間のふく射伝熱の問題に類似して

いることを指摘するにとどめておく.ただし,電磁波の間

には相互作用がないのに対して,フォノン輸送の場合には

フォノン間の衝突や粒子間の相互作用があるため,「局所

平衡」の概念の適用限界をよく見定める必要がある. シリコンよりもさらに熱伝導性にすぐれたシリコンカー

バイド(SiC)の場合,さらに奇妙なことが観測された.

Figure 15 に示すように,熱浴との界面での温度ジャンプが

ほとんど見られないのである.従来の弾道的フォノン輸送

の描像(Fig. 9)とどのように整合するのか我々にはまだわ

からない.現在, 0→d での熱流束評価のために,引き続

きMD計算を行っているところである. 5.4 その先は 薄膜系,特に実用上重要性の高い半導体薄膜,の熱輸送

を定量的に評価し,モデル化するためには,次のステップ

が不可欠である:

1) 薄膜中の熱輸送評価:上述の通り,メカニズムに関して

ある程度の理解がされつつある段階である.少し異なる

角度からのアプローチとして,MD 計算により振動状態

密度を調べ,フォノンの Boltzmann 輸送方程式に現れる

緩和時間などを見積もる試み(23), (24)がなされている. 2) 界面熱抵抗の評価:格子不整合モデルなどいくつかのモ

デルが提案され,分子シミュレーションによる解析(25),

(26)が行われている. 3) メゾスケールのフォノン輸送評価:Boltzmann 輸送方程

式による計算(27)-(29)が進められている.このスケールまで

くると分子シミュレーションの出番はない. 4) デバイスシミュレーション:最終的には電子‐フォノン

相互作用までをすべて考慮して,半導体素子の局所発熱

と熱輸送を丸ごと評価することになり,さまざまな試み

が行われているが本稿の主題から離れるため割愛する. 5.4 その他の例:準結晶 計算機の中では,現実には合成が困難な新奇物質を容易

に作成することができる.その例として準結晶 quasi-crystal を紹介する. 準結晶は,局所的に5回対称性や 10 回対称性などの原子

配置をもつ物質である.この対称性は並進対称性とは相容

れないため,準結晶は局所的には結晶に似た規則構造をも

つにもかかわらず,結晶のような長周期の並進対称がない.

準結晶は 1980 年代に相次いで合金として存在が確認され,

現在ではさまざまな化合物が報告されている(30)が,大きな

「単結晶」が得にくく,物性の測定は進んでいない. 我々は,Lennard-Jones ポテンシャル(3)式を少し修正する

ことで,安定な2次元2元準結晶のモデルを作成し,MD

法により熱伝導を調べ,結晶やアモルファス材料との比較

を行った(31). 作成した準結晶を Fig. 16 に示す.局所的な5回対称性が

見られる.その振動状態密度(Fig. 17)は結晶の場合に類

似した構造性をもっており,アモルファスとは大きく異な

る.しかし,熱伝導率については,準結晶・アモルファス

ともに結晶の 1/4 程度と小さいことがわかった.準結晶や

アモルファスは並進対称性がないためにフォノンが伝播し

にくいと説明できる.このように,分子シミュレーション

を道具として,原子の振動あるいはフォノンのレベルから

固体熱伝導を考えることができる.

6.おわりに

「分子シミュレーションは熱工学の役に立つか?」とい

う大胆な表題を掲げて,microfluidics の分野から「ナノバ

ブル」の例を,MEMS の分野から「ナノスケール固体熱伝

導」の例を紹介した.羊頭狗肉の感がないでもないが,マ

イクロスケール・ナノスケールは熱工学におけるフロンテ

ィアの1つであると我々は信じており,分子シミュレーシ

ョンは少なくともこうした領域において「役に立つ」,と

断言したい.

謝辞

本稿で取り上げた研究を遂行してくれた学生(田中康太

郎,高松晋也,木野内惣一,池本尚史,藤原和久,河内星

子ほか)に感謝します.また,これらの研究は,日本学術

振興会科学研究費補助金および文部科学省 21 世紀 COE プ

ログラム「動的機能機械システムの数理モデルと設計論」

(京都大学)の助成を得て行われました.

Fig. 14 Distribution of atomic momentum component

along z direction.

Fig. 15 Temperature profile in silicon carbide thin “film”.

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Fig. 16 Snapshot of a quasi crystal model.

Fig. 17 Density of vibrational states.