2
琶霊友 B Q 281 FSW (摩擦撹枠接合, FrictionStir 一一J elding )の接合スピードは,遅いよ うですが,限界はどのくらいですか? 1000 m m /min で接合することは可能ですか? A 281 摩擦撹持接合(以下 FSW という)の 一一___,I 接合速度は,次に列挙するような接合 時の主な条件によって変わってきます。 ・母材の種類やその板厚 ・接合ツールの材質,形状や寸法 ・継手形状の種類 ・接合時のツール回転速度,ツールへ付加する 荷重,及びツールの母材への挿入深さ Fig.1 は, ADC12 (アルミニウム合金ダイカ スト 12 種)板厚 4mm を接合荷重一定に制御しな がら接合した場合の適正接合条件範囲を示した例 です。荷重が大きくなるにつれて,適正条件範囲 が広くなり接合速度を高めることが可能です。し かしある程度荷重が大きくなると不完全部の発 生が起こりにくくなります。荷重依存性は小さく なるので最高接合速度を上げることが難しくなっ ていきます。接合速度が高すぎる場合は入熱不足 や塑性流動異常となり不完全部が発生し接合はで きません。また,接合速度が極端に低くツール回 転速度が高い場合は入熱過剰な状態になり不完全 部が発生しやすくなります。したがって,この母 材に対して Fig.1 の接合条件の例では接合速度 800 mm/min が可能です。 Fig.2 は代表的なアルミニウム合金である 2024 -T6,5083-0,6061-T6,7075-T5 でいずれも板厚 4mm ,ツールのショルダ径 15mm を使用して母 材へのツール挿入深さを制御しながら接合した場 合の,ツールの回転速度と接合速度の適正接合条 件範囲を示した例で、す。母材によって適正条件範 囲が異なります。 2024-T6,5083-0,7075-T5 金は6061-T6 合金に比べではるかに接合速度範囲 が狭いことが分かります。これらの合金は高温で 施工法委員会 /寸 2000 ∞切∞印 RU9 hwh U A 2 A E 4 田島』 )迦制剤師#国 500 250 250 500 1000 0 1500 接合速度(m m/min) Fig.1 荷重一定制御の場合の適正接合条件範囲 3500 3000 500 1000 1500 2000 接合迷度(mm/min) 2500 Fig.2 アルミニウム合金の適正接合条件範囲 の塑性流動性が悪いため,低接合速度でないと健 全な継手は得られません。したがって, 6061 など 6000 系合金は板厚 4mm で接合速度を2000mm /min まで高めても不完全部の発生なく平板突合 せ継手の接合が可能です。 Fig.3 は,プローブにらせん状の溝が切つであ る特別な形状ツールで,高速の接合に適している 形状とされています。このツールを用いると,板 1.2mm の場合,通常のネジ溝を設けた円柱状 軽金属溶接 Vol.47(2009)No.12

施工法委員会/寸軽金属溶接 Vol. 47 (2009) No. 12 Table 1 特別形状ツールを用いた限界接合速度 板厚(mm) 材質 限界接合速度(mm/min) 202 ← T

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 施工法委員会/寸軽金属溶接 Vol. 47 (2009) No. 12 Table 1 特別形状ツールを用いた限界接合速度 板厚(mm) 材質 限界接合速度(mm/min) 202 ← T

琶霊友BQ・281FSW (摩擦撹枠接合, FrictionStir

一一J elding)の接合スピードは,遅いよ

うですが,限界はどのくらいですか? 1000 mm

/minで接合することは可能ですか?

A・281摩擦撹持接合(以下 FSWという)の

一一___,I 接合速度は,次に列挙するような接合

時の主な条件によって変わってきます。

・母材の種類やその板厚

・接合ツールの材質,形状や寸法

・継手形状の種類

・接合時のツール回転速度,ツールへ付加する

荷重,及びツールの母材への挿入深さ

Fig. 1は, ADC12 (アルミニウム合金ダイカ

スト 12種)板厚4mmを接合荷重一定に制御しな

がら接合した場合の適正接合条件範囲を示した例

です。荷重が大きくなるにつれて,適正条件範囲

が広くなり接合速度を高めることが可能です。し

かしある程度荷重が大きくなると不完全部の発

生が起こりにくくなります。荷重依存性は小さく

なるので最高接合速度を上げることが難しくなっ

ていきます。接合速度が高すぎる場合は入熱不足

や塑性流動異常となり不完全部が発生し接合はで

きません。また,接合速度が極端に低くツール回

転速度が高い場合は入熱過剰な状態になり不完全

部が発生しやすくなります。したがって,この母

材に対して Fig.1の接合条件の例では接合速度

800 mm/minが可能です。

Fig. 2は代表的なアルミニウム合金である2024

-T6, 5083-0, 6061-T6, 7075-T5でいずれも板厚

4mm,ツールのショルダ径15mmを使用して母

材へのツール挿入深さを制御しながら接合した場

合の,ツールの回転速度と接合速度の適正接合条

件範囲を示した例で、す。母材によって適正条件範

囲が異なります。 2024-T6,5083-0, 7075-T5合

金は6061-T6合金に比べではるかに接合速度範囲

が狭いことが分かります。これらの合金は高温で

施工法委員会/寸

2000

R

U

9

h

w

hU

ワ’

--A

・2A

・E4

(田島』)迦制剤師#国

500

250

九 250 500 叩 1000 凶 0 1500

接合速度(mm/min)

Fig. 1 荷重一定制御の場合の適正接合条件範囲

3500

3000

500 1000 1500 2000

接合迷度(mm/min)

2500

Fig. 2 アルミニウム合金の適正接合条件範囲

の塑性流動性が悪いため,低接合速度でないと健

全な継手は得られません。したがって, 6061など

の6000系合金は板厚 4mmで接合速度を2000mm

/minまで高めても不完全部の発生なく平板突合

せ継手の接合が可能です。

Fig. 3は,プローブにらせん状の溝が切つであ

る特別な形状ツールで,高速の接合に適している

形状とされています。このツールを用いると,板

厚1.2mmの場合,通常のネジ溝を設けた円柱状

軽金属溶接 Vol.47 (2009) No. 12

Page 2: 施工法委員会/寸軽金属溶接 Vol. 47 (2009) No. 12 Table 1 特別形状ツールを用いた限界接合速度 板厚(mm) 材質 限界接合速度(mm/min) 202 ← T

Fig. 3 特別形状ツール

プロープの約175%の高速化を図ることができ,

各々の材質において Table1に示した速度で接合

が可能になります。

また,最近では高融点材料である炭素鋼, IF

鋼,ステンレス鋼およびモリブデン鋼などの

FSWも可能となり,それらの接合速度も 1000

mm/minを超える研究報告がされています。

参考文献

「摩擦揖非接合-FSWのすべて一」社団法人溶接学会

編産報出版

軽金属溶接 Vol.47 (2009) No. 12

Table 1 特別形状ツールを用いた限界接合速度

板厚(mm) 材質 限界接合速度(mm/min)

202←T 960

1.2 6013-T4 6000

7075-T6 720

202←T3 480

5083-Hllt 570 6.0

6082-T6 2100

707トT7 470