123
0 平成27年度新興国市場開拓事業 平成27年度新興国市場開拓事業 平成27年度新興国市場開拓事業 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国におけるスマートシティ開発から (中国におけるスマートシティ開発から (中国におけるスマートシティ開発から (中国におけるスマートシティ開発から 営に係る制度整備に係る調査))報告書 営に係る制度整備に係る調査))報告書 営に係る制度整備に係る調査))報告書 営に係る制度整備に係る調査))報告書 2016 2016 2016 2016 年 2 月 一般財団法人 一般財団法人 一般財団法人 一般財団法人 日中経済協会 日中経済協会 日中経済協会 日中経済協会

(相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

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0

平成27年度新興国市場開拓事業平成27年度新興国市場開拓事業平成27年度新興国市場開拓事業平成27年度新興国市場開拓事業

(相手国の産業政策・制度構築の支援事業(相手国の産業政策・制度構築の支援事業(相手国の産業政策・制度構築の支援事業(相手国の産業政策・制度構築の支援事業

(中国におけるスマートシティ開発から運(中国におけるスマートシティ開発から運(中国におけるスマートシティ開発から運(中国におけるスマートシティ開発から運

営に係る制度整備に係る調査))報告書営に係る制度整備に係る調査))報告書営に係る制度整備に係る調査))報告書営に係る制度整備に係る調査))報告書

2016201620162016 年年年年 2222 月月月月

一般財団法人一般財団法人一般財団法人一般財団法人 日中経済協会日中経済協会日中経済協会日中経済協会

Page 2: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

1

目目目目 次次次次

Ⅰ.政策・制度の現状及び課題・障害等に関する調査・分析Ⅰ.政策・制度の現状及び課題・障害等に関する調査・分析Ⅰ.政策・制度の現状及び課題・障害等に関する調査・分析Ⅰ.政策・制度の現状及び課題・障害等に関する調査・分析 .............. 3

1111....スマートシティ開発・運営に関する中央政府の推進組織と政策・制度の推スマートシティ開発・運営に関する中央政府の推進組織と政策・制度の推スマートシティ開発・運営に関する中央政府の推進組織と政策・制度の推スマートシティ開発・運営に関する中央政府の推進組織と政策・制度の推

移移移移 ................................................................ 3

(1)中央政府の取組み概要(1)中央政府の取組み概要(1)中央政府の取組み概要(1)中央政府の取組み概要 ...................................... 3

(2)国務院の推進政策(2)国務院の推進政策(2)国務院の推進政策(2)国務院の推進政策 .......................................... 6

(3)国家発展改革委員会の推進政策(3)国家発展改革委員会の推進政策(3)国家発展改革委員会の推進政策(3)国家発展改革委員会の推進政策 .............................. 6

(4)住宅都市農村建設部の推進政策(4)住宅都市農村建設部の推進政策(4)住宅都市農村建設部の推進政策(4)住宅都市農村建設部の推進政策 .............................. 8

2.2.2.2.13131313・・・・5555 計画期のスマ計画期のスマ計画期のスマ計画期のスマートシティに関る課題ートシティに関る課題ートシティに関る課題ートシティに関る課題 ........................ 16

(1)(1)(1)(1)13131313・・・・5555 計画建議から読み取り得るポイント計画建議から読み取り得るポイント計画建議から読み取り得るポイント計画建議から読み取り得るポイント .................... 16

(2)新型都市化建設の深化推進に関する国務院の意見((2)新型都市化建設の深化推進に関する国務院の意見((2)新型都市化建設の深化推進に関する国務院の意見((2)新型都市化建設の深化推進に関する国務院の意見(34343434 項目)項目)項目)項目) ... 19

Ⅱ.モデルプロジェクト基礎調査Ⅱ.モデルプロジェクト基礎調査Ⅱ.モデルプロジェクト基礎調査Ⅱ.モデルプロジェクト基礎調査 ..................................... 24

1.深圳・坪山新区益田共1.深圳・坪山新区益田共1.深圳・坪山新区益田共1.深圳・坪山新区益田共和城邦プロジェクト和城邦プロジェクト和城邦プロジェクト和城邦プロジェクト ....................... 24

(1)政策的な経緯と背景(1)政策的な経緯と背景(1)政策的な経緯と背景(1)政策的な経緯と背景 ....................................... 24

(2)益田集団による坪山スマートコミュニティプロジェクト構想(2)益田集団による坪山スマートコミュニティプロジェクト構想(2)益田集団による坪山スマートコミュニティプロジェクト構想(2)益田集団による坪山スマートコミュニティプロジェクト構想 ... 28

(3)日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題(3)日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題(3)日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題(3)日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題 31

2.2.2.2.北京北京北京北京(通州)(通州)(通州)(通州)、天津、河北(香河)、天津、河北(香河)、天津、河北(香河)、天津、河北(香河) .............................. 38

(1)2つのモデルプロジェクト候補地概要(1)2つのモデルプロジェクト候補地概要(1)2つのモデルプロジェクト候補地概要(1)2つのモデルプロジェクト候補地概要 ....................... 38

(2-1)北京市通州区のスマートシティモデル都市としての可能性(2-1)北京市通州区のスマートシティモデル都市としての可能性(2-1)北京市通州区のスマートシティモデル都市としての可能性(2-1)北京市通州区のスマートシティモデル都市としての可能性 . 39

(2-2)河北省香河県のスマートシティモデル都市としての可能性(2-2)河北省香河県のスマートシティモデル都市としての可能性(2-2)河北省香河県のスマートシティモデル都市としての可能性(2-2)河北省香河県のスマートシティモデル都市としての可能性 . 41

3.鄭州3.鄭州3.鄭州3.鄭州 ......................................................... 44

(1)鄭州市の概要(1)鄭州市の概要(1)鄭州市の概要(1)鄭州市の概要 ............................................. 44

(2)鄭州市におけるスマートシティ建(2)鄭州市におけるスマートシティ建(2)鄭州市におけるスマートシティ建(2)鄭州市におけるスマートシティ建設の現状設の現状設の現状設の現状 ................... 52

(3)鄭州市モデルプロジェクトの推進体制と対象エリア概要、プロジェ(3)鄭州市モデルプロジェクトの推進体制と対象エリア概要、プロジェ(3)鄭州市モデルプロジェクトの推進体制と対象エリア概要、プロジェ(3)鄭州市モデルプロジェクトの推進体制と対象エリア概要、プロジェ

クトにより解決すべき課題クトにより解決すべき課題クトにより解決すべき課題クトにより解決すべき課題 ....................................... 56

(4)鄭州市における日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的(4)鄭州市における日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的(4)鄭州市における日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的(4)鄭州市における日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的

可能性と課題、障害可能性と課題、障害可能性と課題、障害可能性と課題、障害 ............................................. 61

Ⅲ.政策提言Ⅲ.政策提言Ⅲ.政策提言Ⅲ.政策提言 ....................................................... 63

1.提言検討に向けた試論(総論)1.提言検討に向けた試論(総論)1.提言検討に向けた試論(総論)1.提言検討に向けた試論(総論) ................................. 63

2.提言に向けた前提:スマートシティ開発への日本企業参入の現状2.提言に向けた前提:スマートシティ開発への日本企業参入の現状2.提言に向けた前提:スマートシティ開発への日本企業参入の現状2.提言に向けた前提:スマートシティ開発への日本企業参入の現状 ... 65

3.スマートシティ開発・運営への日本企業のビジネス参入の課題3.スマートシティ開発・運営への日本企業のビジネス参入の課題3.スマートシティ開発・運営への日本企業のビジネス参入の課題3.スマートシティ開発・運営への日本企業のビジネス参入の課題 ..... 66

(1)これまでの経験を踏まえた今後の課題(1)これまでの経験を踏まえた今後の課題(1)これまでの経験を踏まえた今後の課題(1)これまでの経験を踏まえた今後の課題 ....................... 66

Page 3: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

2

(2)想定される日本企業のビジネスアプローチ(2)想定される日本企業のビジネスアプローチ(2)想定される日本企業のビジネスアプローチ(2)想定される日本企業のビジネスアプローチ ................... 70

(3)外資のビジネス参入に関する政策(3)外資のビジネス参入に関する政策(3)外資のビジネス参入に関する政策(3)外資のビジネス参入に関する政策・制度面の問題点・制度面の問題点・制度面の問題点・制度面の問題点 ........... 71

4.中国スマートシティ開発・運営ビジネス参入に対する政策的支援の提言4.中国スマートシティ開発・運営ビジネス参入に対する政策的支援の提言4.中国スマートシティ開発・運営ビジネス参入に対する政策的支援の提言4.中国スマートシティ開発・運営ビジネス参入に対する政策的支援の提言

................................................................. 73

(1)スマートシティ・コンセプトの摺り合わせとロードマップ作成の必(1)スマートシティ・コンセプトの摺り合わせとロードマップ作成の必(1)スマートシティ・コンセプトの摺り合わせとロードマップ作成の必(1)スマートシティ・コンセプトの摺り合わせとロードマップ作成の必

要性要性要性要性 ........................................................... 73

(2)データ共有の重要性(2)データ共有の重要性(2)データ共有の重要性(2)データ共有の重要性 ....................................... 74

(3)官民協力による新ビジネスモデル創出とファイナンスを巡る政府の(3)官民協力による新ビジネスモデル創出とファイナンスを巡る政府の(3)官民協力による新ビジネスモデル創出とファイナンスを巡る政府の(3)官民協力による新ビジネスモデル創出とファイナンスを巡る政府の

役割役割役割役割 ........................................................... 74

(4)外資参入規制緩和に向けた政策対話との連動(4)外資参入規制緩和に向けた政策対話との連動(4)外資参入規制緩和に向けた政策対話との連動(4)外資参入規制緩和に向けた政策対話との連動 ................. 76

(5)深圳等の一線都市での日系企業使用地転換による(5)深圳等の一線都市での日系企業使用地転換による(5)深圳等の一線都市での日系企業使用地転換による(5)深圳等の一線都市での日系企業使用地転換による日中スマートシテ日中スマートシテ日中スマートシテ日中スマートシテ

ィ再開発協力の可能性ィ再開発協力の可能性ィ再開発協力の可能性ィ再開発協力の可能性 ........................................... 76

Ⅳ.資料(調査活動記録)Ⅳ.資料(調査活動記録)Ⅳ.資料(調査活動記録)Ⅳ.資料(調査活動記録) ........................................... 77

1111....専門家派遣専門家派遣専門家派遣専門家派遣 .................................................... 77

(1)(1)(1)(1)「「「「2015201520152015 中国スマートシティ国際博覧会」参加及び鄭州訪問等の訪中団中国スマートシティ国際博覧会」参加及び鄭州訪問等の訪中団中国スマートシティ国際博覧会」参加及び鄭州訪問等の訪中団中国スマートシティ国際博覧会」参加及び鄭州訪問等の訪中団

............................................................... 77

(2)(2)(2)(2)第第第第 1111 回日中スマートシティ研究会開催と関係機関訪問の訪中回日中スマートシティ研究会開催と関係機関訪問の訪中回日中スマートシティ研究会開催と関係機関訪問の訪中回日中スマートシティ研究会開催と関係機関訪問の訪中 ...... 88

(3)(3)(3)(3)モデルプロジェクトエリア視察訪中モデルプロジェクトエリア視察訪中モデルプロジェクトエリア視察訪中モデルプロジェクトエリア視察訪中 ............................ 93

(4)(4)(4)(4)深圳スマートシティ可能性・追加調査出張訪中深圳スマートシティ可能性・追加調査出張訪中深圳スマートシティ可能性・追加調査出張訪中深圳スマートシティ可能性・追加調査出張訪中 .................. 97

(5)(5)(5)(5)深圳「益田共和城邦」スマートシティ・セミナー出張訪中深圳「益田共和城邦」スマートシティ・セミナー出張訪中深圳「益田共和城邦」スマートシティ・セミナー出張訪中深圳「益田共和城邦」スマートシティ・セミナー出張訪中 ........ 98

2222....訪日調査団受入訪日調査団受入訪日調査団受入訪日調査団受入 ............................................... 104

(1)(1)(1)(1)中国城市・小城鎮改革発展中心中国城市・小城鎮改革発展中心中国城市・小城鎮改革発展中心中国城市・小城鎮改革発展中心 喬潤令副主任一行訪日団喬潤令副主任一行訪日団喬潤令副主任一行訪日団喬潤令副主任一行訪日団 ........ 104

3.調査報告に向けた意見交換レポート3.調査報告に向けた意見交換レポート3.調査報告に向けた意見交換レポート3.調査報告に向けた意見交換レポート ............................ 110

(1)スマートシ(1)スマートシ(1)スマートシ(1)スマートシティ建設関与に向けた障害とデータアクセスの重要性ティ建設関与に向けた障害とデータアクセスの重要性ティ建設関与に向けた障害とデータアクセスの重要性ティ建設関与に向けた障害とデータアクセスの重要性

.............................................................. 110

(2)スマートシティ建設に取り組む地方政府の財政問題と金融セクター(2)スマートシティ建設に取り組む地方政府の財政問題と金融セクター(2)スマートシティ建設に取り組む地方政府の財政問題と金融セクター(2)スマートシティ建設に取り組む地方政府の財政問題と金融セクター

の支援のあり方の支援のあり方の支援のあり方の支援のあり方 ................................................ 114

Page 4: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

3

Ⅰ.政策・制度の現状及び課題・障害等に関する調査・分析Ⅰ.政策・制度の現状及び課題・障害等に関する調査・分析Ⅰ.政策・制度の現状及び課題・障害等に関する調査・分析Ⅰ.政策・制度の現状及び課題・障害等に関する調査・分析

1111....スマートシティ開発・運営に関する中央政府の推進組織スマートシティ開発・運営に関する中央政府の推進組織スマートシティ開発・運営に関する中央政府の推進組織スマートシティ開発・運営に関する中央政府の推進組織とととと政策・制度の推移政策・制度の推移政策・制度の推移政策・制度の推移

((((1111)中央政府の取組み概要)中央政府の取組み概要)中央政府の取組み概要)中央政府の取組み概要

中国では、第 11 次五カ年計画期間中(2006 年~2010 年)から、多くの都市において

情報化の観点からの多様な取組み―例えば、都市の情報化、無線都市、デジタル都市、

「智慧地球(スマートプラネット)」ビジョン

1

から派生した「スマートシティ」、が展開

されてきた。

2

この流れを受け、中国政府は第 12 次五カ年計画(以下「12・5」)期間中(2011 年~

2015 年)からスマートシティを本格的に重視し始め

3

、関連推進政策を相次いで打ち出

してきた(図 1「中国におけるスマートシティ関連の主要政策、法令動向」)。

中央政府レベルでは、25 部門がそれぞれの所管分野についてスマートシティと関わ

っているとされるが

4

、次のように多様な取組みが展開されている。これらの機関をま

とめ横断的な連携をとるため、2014 年 8 月、国家発展改革委員会が 8 部門合同で「ス

マートシティの健全な発展促進のための指導意見」

5

を通達した。

<各部門の取組事例>

6

� 国家発展改革委員会、工業信息化部をはじめ 12 部門が協同で「スマート情報恵民

プロジェクト」を推進。政府のサービス強化、事務処理効率化により市民の利便化

を促進。

� 工業信息化部は、住宅都市農村建設部とともに、情報化インフラ建設を加速。

� 国家発展改革委員会は、スマートグリッド方面のプロジェクトを指導。

� 住宅都市農村建設部と科学技術部は、共同でスマートシティの一連の標準づくりや

技術開発を推進。

� 交通部は、都市の公共交通スマート化のモデルシステム構築のため、太原や石家庄

1

IBM が 2008 年 11 月に提唱したビジョン。IBM Web サイト「Smarter Planet」

http://www-03.ibm.com/ibm/history/ibm100/jp/ja/icons/smarterplanet/

2

住宅都市農村建設部 仇保興副部長「智慧地进行城镇建设 积极促进我国城镇可持续发展」

「中国城市科学研究会数字城市専業委員会工作簡報(特刊)」2012 年第 10 期、2012 年 8

月 10 日

3

中国社会科学院城市発展・環境研究所单菁菁城市規劃研究室主任、王業強土地経済不動産

研究室主任へのインタビューから(2015 年 10 月 29 日)

4

中城智慧城市建設研究会 李建平秘書長へのインタビューから(2015 年 10 月 26 日)

5

国家発展改革委員会、工業信息化部等「关于促进智慧城市健康发展的指导意见」2014 年

8 月 27 日

6

注 3 に同じ

Page 5: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

4

等の 26 都市で応用モデルを実証中。

<スマート化推進が必要な分野>

7

①交通:動態交通(路上)と静態交通(駐車場)を結合させたスマート化が課題。

②政務:スマートシティのネットワーク化、情報化管理を行うプラットフォームの建設

及び「スマート情報恵民プロジェクト」(関連分野は、医療、教育、高齢者対応、就

業、公共安全、食品薬品の安全等)の推進。

③エネルギーマネジメント:a)グリーン建築の省エネ。b)地域管理、CBD 管理、ある

いはスマートコミュニティ(社区)。c)スマートグリッド(電網)の建設。ピークシ

フト、都市全体の節電夜間照明システム、社区住民の電気代節約等の取組み。

④安全管理:a)社会的側面。国際的なテロ活動対策や新疆独立運動への対応。社会的

な安全を脅かす事件、突発事件に対して、政府がいかに即時に対応して市民を守るか。

b)自然的側面。火災、地震、豪雨等の危険への対応。

⑤コミュニティ:高齢化社会の進展に伴う高齢者対応及び健康管理(高齢者、大都市の

ホワイトカラー層等)。

⑥地下共同溝:ネットワーク建設とマネジメント。中関村で試験を実施したが、全国展

開はこれから。一つの管理システムで複数の共同溝を管理するのは技術的に非常に難

しく、先進的な技術の導入が必要。

⑦商圏:中央政府の指示ではなく、地方政府が独自で分散していた大小の小売業者を統

合してネットワークを形成し、ビジネス機能向上と効率化を図る。例えば、重慶市の

解放碑 CBD エリア、上海の南京路、北京の王府井や CBD 等。

⑧各種パークの建設:工業開発区、工業園区、高新技術産業園区、サービス業園区等。

地方政府としては、物流、貯蔵、生産プロセスのスマート化が狙い。

7

注 3 に同じ

Page 6: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

5

国家発展改革委員会

弁公庁

○ ○

教育部 ○弁公庁 ○

科学技術部

弁公庁

工業信息化部

弁公庁

○ ○

公安部 ○ ○

民政部 ○

財政部 ○ ○

人力資源社会保障部 ○

国土資源部 ○

住房城郷建設部 ○

交通運輸部 ○

商務部

国家衛生計画生育

委員会

国家測絵地理信息局

(注)1)法令の正式名称では「中華人民共和国」であるところ、本文中では「中国」と略称

   2)矢印(実線)は法令が更新されたことを示し、旧法令は廃止。矢印(点線)は法令が修正され継続していることを示す

出所:『智慧城市100問』8頁~12頁、2015年6月、電子工業出版社、から編集。一部の政策、法令および年月日は筆者補足

行政各部門行政各部門行政各部門行政各部門

中国におけるスマートシティ関連の主要政策、法令動向

国務院国務院国務院国務院

全国人民代表大会全国人民代表大会全国人民代表大会全国人民代表大会

常務委員会常務委員会常務委員会常務委員会

1984年1月5日施行「中国城市规划条例」

1990年4月1日施行「中国城市规划法」

2008年1月1日施行「中国中国中国中国城乡城乡城乡城乡规划法规划法规划法规划法」

1987年1月1日施行「中国土地管理法」

1988年12月29日施行

「中国土地管理法」第1次修正

1999年1月1日施行「中国土地管理法」改正

2004年8月28日施行

「中国土地管理法中国土地管理法中国土地管理法中国土地管理法」第2次修正

1999年1月1日施行

「中国中国中国中国土地管理法实施条例土地管理法实施条例土地管理法实施条例土地管理法实施条例」

(1998年12月27日国务院令第256号发布)

1991年2月1日施行「中国土地管理法实施条例」

(1991年1月4日国务院发布)

1995年1月1日施行「中国城市房地产管理法」

2007年8月30日施行

「中国中国中国中国城市房地产城市房地产城市房地产城市房地产管理法管理法管理法管理法」改正

2010年12月21日発表

「全国主体功能区规划全国主体功能区规划全国主体功能区规划全国主体功能区规划」

2014年3月16日発表

「国家新型城镇化规划(国家新型城镇化规划(国家新型城镇化规划(国家新型城镇化规划(2014201420142014----2020202020202020年)年)年)年)」

(中共中央、国務院連名)

2012年11月22日発出「住房城乡建设部办公厅关于开展国家智慧城市试点工作的通知住房城乡建设部办公厅关于开展国家智慧城市试点工作的通知住房城乡建设部办公厅关于开展国家智慧城市试点工作的通知住房城乡建设部办公厅关于开展国家智慧城市试点工作的通知」

--附件1「国家智慧城市试点暂行管理办法国家智慧城市试点暂行管理办法国家智慧城市试点暂行管理办法国家智慧城市试点暂行管理办法」

附件2「国家智慧城市国家智慧城市国家智慧城市国家智慧城市((((区区区区、、、、镇镇镇镇))))试点指标体系试点指标体系试点指标体系试点指标体系((((试行试行试行试行))))」

2012年8月22日発表「导航与位置服务科技发展“十

二五”专项规划」

2012年9月3日発表「国家宽带网络科技发展“十二

五”专项规划」、「中国云科技发展“十二五”专项

规划」

2014年8月27日通達「关于印发促进智慧城市健康发展的指导意见关于印发促进智慧城市健康发展的指导意见关于印发促进智慧城市健康发展的指导意见关于印发促进智慧城市健康发展的指导意见」(下記8機関連名)

2012年1月4日発表

「“十二五”商务发展主要任务和重点工作」

2012年6月21日通達「关于推进现代物流技术应用和

共同配送工作的指导意见」

2012年8月7日発表(当時は衛生部)

「健康中国2020战略研究报告」

2011年4月13日発表

「交通运输“十二五”发展规划」

2012年7月31日発表「交通运输行业智能交通发展战

略(2012-2020年)」

2012年1月19日発表

「国土资源信息化“十二五”规划」

2012年2月13日発出

「关于加快数字城市建设推广应用工作的通知」

2011年11月28日発表

「物联网“十二五”发展规划」

2010年5月12日発出「关于当前推进高技术服务业发

展有关工作的通知」

2012年4月20日通達「基层医疗卫生机构管理信息系

统建设项目指导意见」

2010年10月10日通達「国务院关于加快培育和发展

战略性新兴产业的决定」

2012年6月28日通達「国务院关于大力推进信息化发

展和切实保障信息安全的若干意见」

2012年7月9日発表「“十二五”国家战略性新兴产

业发展规划」

2013年8月1日発出

「“宽带中国”战略及实施方案」

中国科学院弁公庁

中国工程院弁公庁

国家自然科学基金会弁公室

2012年3月27日通達「下一代互联网“十二五”发展建设的意见下一代互联网“十二五”发展建设的意见下一代互联网“十二五”发展建设的意见下一代互联网“十二五”发展建设的意见」(下記7機関連名)

2014年1月9日発出「关于加快实施信息惠民工程有关工作的通知关于加快实施信息惠民工程有关工作的通知关于加快实施信息惠民工程有关工作的通知关于加快实施信息惠民工程有关工作的通知」(下記12機関連名)

中央編弁 審計署

食品薬品監管総局 国家標準委

2013年8月8日通達「国务院关于促进信息消费扩大

内需的若干意见」

図表 1 中国におけるスマートシティ関連の主要政策、法令動向

Page 7: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

6

((((2222)国務院の推進政策)国務院の推進政策)国務院の推進政策)国務院の推進政策

国家発展改革委員会等による「スマートシティの健全な発展促進のための指導意見」

のなかで、同意見は、2013 年 8 月に国務院が通達した「情報消費促進と内需拡大に関

する若干の意見」(以下「国務院意見」)

8

の貫徹が一つの目的であると強調している。

この国務院意見は、世界的に IT の発展により新しい消費・サービス・業態が次々と

現れ、消費が喚起されており、中国でも市民の消費レベル向上及び情報化、工業化、都

市化、農業現代化の融合発展の時期を迎えており、情報消費の発展のために必要な基礎

と巨大な潜在力が備わっているとしながらも、一方で、インフラ整備や製品・サービス

イノベーションの不足、市場参入の困難さ、関連政策の不備、業界の障壁、メカニズム

の不適応等を解決すべき課題として挙げた。そして、情報インフラのレベルアップ、情

報関連製品の供給能力向上、情報ニーズの育成、公共サービス情報化のレベルアップ等

を目標に掲げている。

特に、スマートシティ建設を加速するために提示された下記奨励事項が注目される。

①条件を備えた都市においてスマートシティ試点・モデル建設を実施し、そこで投融

資の市場化、情報システムサービスのアウトソーシング、情報リソースの社会化開

発利用等に関する奨励政策を策定。

②公共施設のスマート化改造により、スマートグリッド、スマート交通、スマート水

管理、スマート国土、スマート物流等のプロジェクトをサポート。

③各種の市場主体が、共同でスマートシティ建設に参画することを奨励。

④国務院が発行を認可した地方政府債券の中から、各省・自治区・直轄市の政府が一

部資金をスマートシティ建設に使用。

⑤条件に合致した企業が、募集した資金をスマートシティ建設に使用する企業債を発

行することを奨励。

((((3333)国家発展改革委員会の推進政策)国家発展改革委員会の推進政策)国家発展改革委員会の推進政策)国家発展改革委員会の推進政策

「スマートシティの健全な発展促進のための指導意見」では、指導思想としてスマー

トで、グリーンな、低炭素の、新型都市化の道を歩むべきという総合的要求に基づいて

施策を進めることとしている。これに先立ち、国家発展改革委員会は、2014 年 3 月に

「低炭素コミュニティ(社区)の試点事業展開に関する通知」(以下「社区通知」)を発

出している

9

。その中で、国として試点社区に対する奨励政策や補助金を制定していく

8

国務院「国务院关于促进信息消费扩大内需的若干意见」2013 年 8 月 8 日

9

国家発展改革委員会「国家发展改革委关于开展低碳社区试点工作的通知」2014 年 3 月 21

Page 8: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

7

ことを明言するとともに、外資、社会資本の参加も歓迎すると表明している。これは、

第 13 次五カ年計画における発展理念の柱である「グリーン(緑色)」を具体化する重要

な舞台としてコミュニティを重視していることを意味する。

社区通知では、試点事業を強化するために二つの重要文献を作成するとしていたが、

その一つである「低炭素コミュニティ(社区)の試点建設指南」

10

が、2015 年 2 月に発

表された。

この指南に基づいて低炭素コミュニティの試点建設を実施する主体は、政府系統とし

ては、①国家発展改革委員会→②省レベル発展改革委員会→③市・県レベル発展改革部

門→④新区管理委員会、街道弁事処、郷鎮政府、となっている。事業の実施機関は、新

区の開発投資主体、社区住民委員会、村民委員会となる。これにデベロッパー、村・鎮

集団企業、不動産管理公司、業主委員会、計画・コンサルティング機関、金融機関、科

学研究機関、CO2コンサルティング・管理機関、非政府組織、仲介サービス機関、等が

関わっていくことになる。

試点は申請方式であり、上記③(市・県レベル発展改革部門)が窓口となる。コミュ

ニティは都市新設社区、都市既存社区、農村社区、の三タイプに大別され、②(省レベ

ル発展改革委員会)が評価・審査を行い、低炭素コミュニティ試点リストを確定し、①

(国家発展改革委員会)に報告する。リスト入りした社区については、所管の④(新区

管理委員会、街道弁事処、郷鎮政府)が建設案をまとめ、③に上げ、最終的に②の認可

を受ける。現在、各地での申請の動きは報道されているが、まだ試点リストは発表され

ていない。

試点の建設周期は一般的には約 3 年である。期間終了前には、②の検収を受け、合格

すれば「低炭素モデルコミュニティ」、成果優秀であれば「国家低炭素モデルコミュニ

ティ」の称号が与えられる。

申請にあたっては、図 2のようにタイプ別にクリアしなければならない指標が定めら

れており、これらに対応できるシステム、技術を如何にコミュニティに認識、普及させ

ていくかが企業側の課題だと言える。

注目すべきは、都市新設社区の計画策定にあたり、次のようなコンセプトを推奨して

いることであり、日本企業のコンセプトとの親和性が高まっていくことが期待される。

①産業と都市の融合、②コンパクトな空間配置、③公共交通を指向するTOD型開発モ

デル、④島状商業地区の建設、⑤地下空間の開発利用、⑥15 分生活圏、等。

また、都市既存社区の特徴は、建築、エネルギー、交通、水資源、固体廃棄物、生態

10

国家発展改革委員会弁公庁「国家发展改革委办公厅 关于印发低碳社区试点建设指南的

通知」2015 年 2 月 12 日

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8

環境等各分野の調査分析を経て、不足や問題がある場合に、住民の理解を得ながら、関

係者のニーズを踏まえて改造に取り組むことである。コミュニティが抱える課題を如何

に解決するかにおいて、日本企業の参入余地があるものと期待される。

図表 2 各コミュニティ試点の建設指標

1 級指標(類) 2 級指標(種)※数値目標あり

都市新設

社区

10(CO2排出量、空間配置、緑色建築、交通シ

ステム、エネルギーシステム、水資源利用、

固体廃棄物処理、環境緑化・美化、運営管理、

低炭素生活)

46(CO2排出量下降率、建築用地総合容積率、

保障性住宅緑色建築一つ星級標準達成率、道

路網密度、再生可能エネルギー代替率、節水

器具普及率、生活ゴミ分類収集率、緑地率、

CO2排出管理システム有無、等)

都市既存

社区

9(CO2排出量、省エネ・緑色建築、交通シス

テム、エネルギーシステム、水資源利用、固

体廃棄物処理、環境美化、運営管理、低炭素

生活)

32(CO2排出量下降率、新築物件の緑色標準

達成率、公共交通分担率、再生可能エネルギ

ー代替率、節水器具普及率、生活ゴミ分類収

集率、緑化カバー率、CO2排出管理システム有

無、等)

農村社区 10(CO2排出量、計画、緑色住宅、交通システ

ム、エネルギーシステム、固体廃棄物、水シ

ステム、環境総合対策、低炭素管理、低炭素

生活)

28(CO2排出量下降率、新築住宅省エネ標準

達成率、道路網密度、再生可能エネルギー代

替率、生活ゴミ集中収集率、飲用水標準達成

率、CO2排出管理システム、等)

また、社区通知が作成予定としたもう一つの文献である「低炭素社区試点評価指標体

系」は、現時点では確認できないが、北京市東城区崇文門外街道弁事処のように、「低

炭素社区評価技術導則」

11

という詳細な評価指標を定める政府機関も出てきている。

((((4444)住宅都市農村建設部の推進政策)住宅都市農村建設部の推進政策)住宅都市農村建設部の推進政策)住宅都市農村建設部の推進政策

スマートシティ建設に積極的な部門の一つとして住宅都市農村建設部(以下「住建部」)

がある。住建部の考え方は、2012 年に仇保興副部長(当時)が「スマートシティのイノ

ベーション原則と基本的ステップ」と題して明確に語っている

12

大規模な投資による伝統的な「鉄道、道路、飛行場」といったプロジェクトの限界効

11

北京市東城区崇文門外街道弁事処「低碳社区评价技术导则」2015 年 8 月 31 日

12

住宅都市農村建設部 仇保興副部長「智慧城市的创新原则与基本步骤」「中国城市科学研

究会数字城市専業委員会工作簡報(特刊)」2012 年第 15 期、2012 年 11 月 30 日

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9

用が急激に低下しているため、新たな投資・消費分野の開拓が必須となり、そこで浮上

してきたのがスマートシティという位置づけである。そして、スマートシティのイノベ

ーションのため、次の 4 原則を提示している。

①情報を多用し、人力とエネルギーの使用を少なくする。IT により事務や交通のス

マート化が進み、省エネが進展した。一方で、スマートグリッド化が不十分なため

再生可能エネルギーの多くが無駄になっている。

②情報を多用し、強制的なコントロールを少なくする。ビルの節水をするのであれば、

自動でリアルタイムに使用量を公開掲示して呼びかけた方が、強制的な措置を採る

よりも効果的であり、コストも低く済む。

③情報を多用し、被災を少なくする。災害による被害の大部分は、情報不足に起因す

る。日本では、地震のセンサーを整備しており、地震が起きれば住民にネットやテ

レビで知らせて被災を最小限に抑えている。中国の大多数の都市は人口密度が高く、

災害が拡大しやすい。都市の防災は、都市管理者にとって極めて大きな課題である。

④情報を多用し、大衆の利益を多くする。スマートシティは、医療、食事、住宅、行

動、医療、観光、買物等の各分野で IT を活用し、便利な生活のために優良なサー

ビスを提供するべきもの。

こうした原則をもとに、具体的方策としてスマート化の程度によってスマートシティ

を分類し、評価する方法の確立を提案している。例えば、初級を 1A 級とし、都市の課

題解決能力によって 2A 級、3A 級と引き上げる仕組みである。こうして、都市の情報シ

ステムの質を高めれば、都市の投資環境を改善し、政府の信用力向上と経済発展が可能

となるばかりか、資源の調整、人材の招致にもつながり、都市のイメージと競争力を引

き上げることができるとしている。

住建部としては、この時期までに 10 数カ所のエコシティモデル都市、20 数カ所の再

生エネルギーモデル都市等を建設してきたほか、毎年 300 人余りの市長を対象に建設部

で研修を実施してきた。

さらに、資金面にも言及しており、スマートシティに関して銀行から借り入れた場合

の返済原資として、①企業が直接行う情報サービスに対する適切な課金、②システム運

営企業の広告収入、③都市のサービス水準向上に伴う税収増から来る財政収入、の 3点

を挙げている。

Page 11: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

10

<国家スマートシティ試点暫定管理弁法

13

以上のような考えをベースとして、住建部は 2012 年 11 月に「国家スマートシティ試

点暫定管理弁法」(以下「管理弁法」)と「国家スマート都市(区、鎮)試点指標体系(試

行)」(以下「指標体系」)を発出した。

管理弁法によれば、試点の決定方式は、①都市(区、鎮)政府が申請書類を作成→②

所在地の省レベル住建部部門が審査→③住建部に報告という手順である。直轄市及び計

画単列都市の場合は、住建部に直接報告する。申請書類には、F/S 結果及び指標体系に

沿った合理的で実行可能な目標、建設の内容・期限・計画等が含まれる。

申請には 4 つの条件がある。①スマートシティ建設が、同地の第 12 次 5 カ年計画、

あるいは関連計画に含まれていること、②スマートシティ発展計画要綱の編成が完了し

ていること、③建設資金の調達案と保障方法が確定しており、政府財政予算に含まれて

いること、④申請及び組織管理にあたる責任者がいること。

建設が終了した後、住建部スマートシティ創建工作指導小組による検収の後、評定が

行われ、一星、二星、三星という等級が決定される(三星が最も高いレベル)。

以上のような一連の手続きを経て、2013 年 1 月に第 1 期(2012 年度分)90 試点、13

年 8 月に第 2 期(2013 年度分)103 試点、15 年 4 月に第 3 期(2014 年度分)84 試点の

リストが公表された。3 期の合計で、試点数は 277 となった。(図表 3)

この試点事業について理解を深めるため、住建部、科学技術部から委託を受けて実務

を請け負っている中城智慧城市建設研究会へのインタビューをもとに、事業の経緯と課

題を以下にまとめた。

14

1)経緯

都市はまだまだ発展していかなければならないため、スマートシティのコンセプトを

導入することで、産業構造を変えていく。それに伴って行政効率を上げ、住民の生活の

質も向上させるのが目的。

2 期の選定を終えたところで、スマートシティという構想と規模があまりにも大きす

ぎ、実行が難しい部分が見えてきた。これを受け、3期目は具体的なプロジェクトにブ

レイクダウンして実施することにした。例えば、それぞれスマートコミュニティやセキ

ュアシティのコンセプト、スマート教育、スマート医療、スマート交通等のプロジェク

トを実施の単位とした。こうすることで、その都市の喫緊の課題が解決されていくし、

13

住宅都市農村建設部弁公庁「住房城乡建设部办公厅关于开展国家智慧城市试点工作的通

知(附件 1「国家智慧城市试点暂行管理办法」、附件 2「国家智慧城市(区、镇)试点指标

体系(试行)」)」2012 年 11 月 22 日

14

注 4に同じ

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11

ファイナンスもやり易いことが分かった。277 試点においては、予定プロジェクトが

2,000 以上に達しているが、多くは新規建設というわけではなく、ある程度の基礎があ

る。マーケット規模は、推計で 1兆 8,000 億元になる。

スマートシティという枠組みに対して、中央政府や北京、上海、広州のような大都市

ではなかなか調整が難しいが、地方の県あるいは中規模の地級市レベルであれば、トッ

プに統率力があればどんどん進むのでやり易い。ニーズがあり、モチベーションが全然

違う。これまで参加していない都市からは、4 期目の対象として認めてほしいとの要請

が来ているが、次回の予定は立っていない。

277 という数字は、全国 3,000 県・市の行政単位の 10%に当たる。試点での成功事例

から共通点を取りまとめ、各地域の発展に適した技術基準やビジネスモデルを確立し、

徐々に全国的に普及、応用していきたい。

また、社会科学院によれば

15

、住建部のスマートシティ試点は、地方政府と協力して

大型投資が行われるが、国と地方政府が一部を出資し、その他大部分は各種民間機関、

つまり企業を含む社会資本が出資することを目指している。国の出資部分は、国家開発

銀行が参画して支出される。試点のうち、省政府所在地、副省級都市は、国外企業ある

いは大企業の参入を期待している。

2)スマートシティ建設の課題

①地域によって体制、制度が違う。

②ビジネスモデルが確立されていない。

③企業の所有技術・資金をどのように地域に適した形で使用するか。

④スマートシティ建設は非常に大掛かりでシステマティックなプロジェクトである

ため、標準の作成、情報プラットフォームの構築等が必要であり、複数機関の協力

が欠かせない。

⑤都市は住民のために整備されなければならないし、都市自身の発展メカニズムがあ

るため、単純に道路を作り、多くの建物を建設するだけでは不十分であり、発生す

る都市病を解決しなければならない。

⑥中国には、スマートシティのグランドデザインを作成できる企業はまだ現れていな

い。地方政府もスマートシティの基本的理念の理解が十分でなく、スキームも想定

できていない状況。今まで建設重視でプランニング軽視だったのを改める段階であ

る。プランニングができていれば、都市病(交通渋滞、教育が受けられない、医者

にかかれない等)の発生を防止できる。

⑦知識の問題。地方政府指導者は、都市計画を専門に学んだわけではないため、従来

15

注 3に同じ

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12

の伝統的な投資誘致による産業化という発想パターンに傾きがち。スマートシティ

は、新型都市化を基礎としたうえで、180 度の発想の転換が必要。GDP 一辺倒から、

都市病を解決できるような都市を目指さなければならない。

⑧省エネルギー・環境の問題。各都市が自身の強みを認識したうえで、グリーンで環

境にやさしい都市を目指すことが求められている。また、機械を変えるだけでうま

くいくと思い込んでいる人がいるが、そうではなく、生産プロセスの最適化によっ

て相当の省エネが達成できることを知ってもらう必要がある。

⑨就業の問題。ロボット導入によって人力の代替が進み、効率が上がり、農業産業化

によって農民も土地に束縛されず農民工として都市に流入してくる。彼らを都市住

民に変えるには、就業機会を与える必要がある。

⑩資金の問題。地方政府は、インフラに集中投資してきたため、負債率が高止まりの

状況にある。スマートシティの建設資金を如何にして調達するか。

⑪情報が「孤島」になっている問題。スマートシティには、中央では 25 の行政機関

が関わっており、各地方も 10 以上の機関が関係している。そうすると情報が交錯

し、行政効率がかなり低下する。こうした情報を統一し、行政サイドの効率を高め

れば、社会コストが低下するはず。

<スマート社区建設指南>

住建部も国家発展改革委員会同様にコミュニティ(社区)の建設を重視している。コ

ミュニティは社会の基本となる細胞であり、都市住民の生存と発展の母体であり、その

スマート化は、都市全体のスマート化水準に影響を及ぼすものだと認識している。社区

とは、広義には工業園区、産業園区、居住・商業混合社区、大型都市総合体及び大型居

住社区等が含まれる。

16

住建部は、2014 年 5 月に「スマートコミュニティ建設指南(試行)」を公開した

17

その中で、中長期目標として 2020 年までに、スマートコミュニティの標準化を 50%以

上のコミュニティで達成することを掲げている。そのための評価指標体系を基準数値と

ともに規定しているほか、情報サービスプラットフォーム、インフラと建築、ガバナン

ス、住民サービス、建設運営モデル等の在り方を明示している。

日本企業にとって、本指南の内容に沿ったビジネス展開が有効だと考えられる。

16

「建设部推动社区建设“智慧”转型」「智慧城市试点工作简报」2014 年第 4期

17

「智慧社区建设指南(试行)」「智慧城市试点工作简报」2014 年第 4期

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13

第1期

(2012年度)

第2期

(2013年度)

12年度分の

範囲拡大

第3期

(2014年度)

12、13年度分の

範囲拡大

発表時期

2013年

1月29日

2013年

8月1日

2013年

8月1日

2015年

4月7日

2015年

4月7日

北京市 北京東城区

北京経済技術開発

門頭溝区

北京市朝陽区 房山区長陽鎮 大興区寵各庄鎮

北京未来科技城

新首鋼高端産業綜

合服務区

北京市麗澤商務区

房山区良郷高教園

西城区牛街街道

天津市 天津津南新区 武清区

天津濱海高新技術

開発区京津合作示

範区

天津市生態城 河西区 静海県

河北省 石家庄市 唐山市曹妃甸区 唐山市 石家庄市正定県

秦皇島市 唐山市滦南県

廊坊市 保定市博野県 廊坊市固安県

邯鄲市 邯鄲市叢台区

遷安市

北戴河新区

山西省 太原市 陽泉市 大同市

長治市 大同市城区 忻州市

朔州市平魯区 晋城市 呂梁市離石区

朔州市懐仁県

烏海市 ホロンベル市 フフホト市

オルドス市

包頭市石拐区

遼寧省 瀋陽市渾南新区 営口市 瀋陽市瀋河区 瀋陽市和平区

大連生態科技新城 庄河市 瀋陽市鉄西区 新民市

大連市普湾新区 瀋陽市瀋北新区

吉林省 遼源市 四平市 通化市 遼源市東豊県

盤石市 楡樹市 白山市江源区

長春高新技術産業

開発区

臨江市

白山市撫松県 吉林市高新区

吉林市船営区捜登

站鎮

長春浄月高新技術

産業開発区

黒龍江省 肇東市 チチハル市 ジャムス市

肇源県 牡丹江市 尚志市

樺南県 安達市 ハルビン市香坊区

上海市 上海市浦東新区

江蘇省 無錫市 南通市

徐州市(新沂市を含

む)

常州市 丹陽市 常州市新北区 東台市

鎮江市 蘇州呉中太湖新城 常熟市

泰州市 宿遷市洋河新城 淮安市洪澤県

泰州市泰州経済技

術開発区

南京河西新城 昆山市 南京市高淳区

蘇州工業園区 徐州市豊県

南京市麒麟科技創

新園(生態科技城)

塩城市城南新区 連雲港市東海県

昆山市花橋経済技

術開発区

昆山市張浦鎮

浙江省 温州市 杭州市拱墅区 温嶺市 温州市蒼南県

金華市 杭州市蕭山区 富陽市常安鎮

内モンゴル

自治区

国家スマートシティ試点リスト図表 3 国家スマートシティ試点リスト

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14

浙江省 諸曁市

寧波市(海曙区、梅

山保税港区、鄞州

区咸祥鎮を含む)

寧波大榭開発区

杭州市上城区 寧波市寧海県

寧波市鎮海区 臨安市昌化鎮

安徽省 蕪湖市 阜陽市 宿州市 阜陽市太和県

銅陵市 黄山市 亳州市

蚌埠市 淮北市 六安市金寨県

淮南市

合肥高新技術産業

開発区

滁州市(定遠県を含

む)

寧国港口生態工業

園区

六安市霍山県

福建省 南平市 莆田市 長楽市

平潭市 泉州台商投資区

泉州市(徳化県、安

渓県蓬莱鎮を含む)

福州市蒼山区

漳州招商局経済技

術開発区

江西省 萍郷市 新余市 鷹潭市

南昌市紅谷灘新区 樟樹市 吉安市

共青城市 撫州市南豊県

上饒市婺源県 南昌市東湖区

南昌市高新区

山東省 東営市 煙台市 莱蕪市

威海市 曲阜市 章丘市 威海市乳山市

徳州市 済寧市任城区 諸城市

新泰市 青島市崂山区 棗庄市薜城区

寿光市

青島高新技術産業

開発区

日照市莒県

昌邑市 青島中徳生態園 濰坊市臨朐県

肥城市 濰坊市昌楽県 済寧市嘉祥県

済南西区 平度市明村鎮

青島西海岸新区

【黄島区)

莱西市

河南省 鄭州市 許昌市 開封市

鶴壁市 舞鋼市 南陽市

漯河市 霊宝市

済源市

新鄭市

洛陽新区

湖北省 武漢市 黄岡市 武漢市蔡甸区

荆州市(洪湖市を含

む)

武漢市江夏区

武漢市江岸区 咸寧市 仙桃市 黄岡市麻城市

宜昌市

襄陽市 襄陽市老河口市

湖南省 株洲市 岳陽市岳陽楼区 永州市祁陽県

韶山市 長沙市長沙県 湘潭経済開発区

株洲市雲龍示範区 郴州市永興県

常徳市(津市市、澧

県、漢寿県を含む)

瀏陽市柏加鎮 郴州市嘉禾県 沅江市

長沙市梅渓湖国際

服務区

常徳市桃源県漳江

長沙大河西先導区

(洋湖生態新城・濱

江商務新城)

郴州市安仁県

郴州市宜章県

広東省 珠海市 肇慶市端州区 河源市江東新区

広州市番禺区 東莞市東城区

広州市萝崗区 中山翠亨新区

深圳市坪山新区

佛山市順徳区 佛山市南海区

佛山市楽従鎮

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15

南寧市 欽州市

柳州市(魚峰区含

む)

玉林市 柳州市鹿寨県

桂林市

貴港市

海南省 万寧市

重慶市 重慶市南岸区 氷川区 渝中区

重慶市両江新区 江北区

四川省 雅安市 綿陽市

アバ・チベット族チャ

ン族自治州汶川県

綿陽市江油市

成都市温江区 遂寧市 宜賓市興文県

郫県 崇州市 広安市

瀘州市

楽山市(峨眉山市を

含む)

貴州省 銅仁市 貴陽市 安順市西秀区

六盘水市

遵義市(仁懐市、湄

潭県を含む)

貴陽市烏当区 畢節市

凱里市

六盘水盘県

雲南省 昆明市五華区

紅河ハニ族イ族自

治州蒙自市

大理市

紅河ハニ族イ族自

治州弥勒市

文山市

玉渓市

チベット自治

ラサ市 林芝地区

陝西省 咸陽市 宝鶏市 漢中市

楊凌示範区 渭南市

延安市

甘粛省 蘭州市 張掖市

金昌市 天水市

白銀市

隴南市

敦煌市

青海省 格爾木市

海南州貴徳県

海南州共和県

呉忠市 銀川市 中衛市

石嘴山市(大武口

区を含む)

銀川市永寧県

庫爾勒市 ウルムチ市 昌吉市

奎屯市 カラマイ市 アルタイ地区富蘊県

伊寧市 石河子市

五家渠市

試点数 90 103 9 84 13

(出所)住宅城郷建設部発表の各年度リストから作成。

(注) 拡大分は当初試点内に含めてカウントするため、1期~3期合計は277である。

寧夏回族自

治区

広西チワン

族自治区

新疆ウイグ

ル自治区

Page 17: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

16

2.2.2.2.13131313・・・・5555 計画期の計画期の計画期の計画期のスマートシティに関るスマートシティに関るスマートシティに関るスマートシティに関る課題課題課題課題

2016 年から 20 年までの第 13 次 5 ヵ年計画期において、中国のスマートシティ政策

は更に具体化されることが「第 13 次国民経済・社会発展 5 ヵ年計画(13・5 計画)策定

に関する中国共産党中央の建議(15 年 10 月 中国共産党第 18 期 5 中全会で決定)」、

更にこれを受けて 15 年末に開催された「中央都市工作会議」の講話、16 年 2 月発表の

「国務院の新型都市化建設を深く推進することについての若干の意見」から読み取るこ

とができる。

今次調査の対象となったスマートシティプロジェクト候補(Ⅱ章参照)の各現場でも

それらの政策方針が反映され始めており、今後の事業参入に向けては、そのポイントを

理解しておく必要がある。

(1)(1)(1)(1)13131313・・・・5555 計画建議から読み取り得るポイント計画建議から読み取り得るポイント計画建議から読み取り得るポイント計画建議から読み取り得るポイント

13・5 計画建議において、新型都市化、特にスマートシティを通して解決すべき課題

とその解決の方向性について読み取る得るポイントは、今次 5ヵ年計画に向けて新しく

示された「緑色発展」という理念を目指すべき方向として打ち出したことにあり、その

背景には深刻かつ喫緊の課題である「都市病」がある。13・5 計画建議では、「緑色発展」

の目指す方向性の一環で、「空間の開発・保護」の重要性を提起し、特に「北京・天津・

河北」、「長江デルタ」、「珠江デルタ」等の「都市病」防止を提起している。

《《《《13131313・・・・5555 計画建議における新型都市化・スマートシティに関る要素計画建議における新型都市化・スマートシティに関る要素計画建議における新型都市化・スマートシティに関る要素計画建議における新型都市化・スマートシティに関る要素(例示)(例示)(例示)(例示)》》》》

1)現在直面している関係課題:発展の不均衡、不調和、持続不可能問題

①粗放な発展方式、イノベーション能力の脆弱さ、一部業種の深刻な生産能力過剰、

頻発する大事故。

②都市・農村間及び地域間の発展の不均衡。

③資源制約の深刻化、生態環境の悪化。

④基礎公共サービスの供給不足、所得格差、高齢化の加速。

2)13・5計画期の主要目標:小康社会の全面的完成

①均衡・包容性・持続可能性を基礎とした中高速の経済成長。

・工業化と情報化の融合発展のレベルアップ、サービス業の更なる拡大。

・戸籍人口の都市化率(城鎮を含む)向上加速、農業近代化進展。

・イノベーション型国家、人材強国へ。

②国民の生活レベルと質の向上。

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17

・就業、教育、文化、社会保険、医療、住宅等の公共サービス体系の更なる充実、

基礎公共サービスの均等化。

③国民の資質と社会の(生態文明を含む)文明化程度の顕著な向上。

・科学・文化・健康の資質の顕著な向上。

・公共文化サービス体系整備、支柱産業としての文化産業の発展。

・生態環境全体の改善。

・生産・生活方式のグリーン化、低炭素レベル向上。

・エネルギー・資源の開発利用効率の大幅向上、エネルギー・水資源・建設用地・

二酸化炭素排出総量の効果的抑制、主要汚染物質排出総量の大幅な減少。

3)五大発展理念:創新、調和、緑色、開放、共有(「共享」)

①創新:理論革新、制度革新、科学技術革新、文化革新等。

②調和:重点は都市・農村間、地域間の調和的発展、新型工業化・情報化・都市

化・農業近代化の並行発展等。

➣都市計画・建設・管理のレベル向上

➣戸籍制度改革深化、農村移転人口の都市定住

➣居住証制度による基本公共サービスの網羅

➣都市定住農民の土地請負権・宅地使用権・集団収益分配権の保護

➣住宅制度改革

③緑色:資源節約型・環境配慮型社会構築を加速等。

➣資源環境受容力により都市の規模を調節、地形により都市形態・機

能を最適化、グリーンな計画・設計・施工基準を実行。

➣空間開発・保護(主体機能区整備加速):

・「北京・天津・河北」、「長江デルタ」、「珠江デルタ」等最適化開発地

域の産業構造ハイエンド化、高効率化推進、「都市病」防止。

・重点生態機能区での業界参入ネガティブリスト制度実施等。

・市・県レベルの行政区での空間計画、用途管理、指導幹部自然資源

資産審査、差別化業績査定等による空間ガバナンスシステム構築。

➣低炭素循環型発展の推進:

・建築省エネ基準の向上、グリーン建築・建材の普及。

・最適開発地域での先駆的 CO2排出ピーク目標実現支援、CO

2ゼロエミ

ッション近似モデルプログラム実施。

➣資源の全面的節約と高効率利用:

・拘束的指標による管理強化(エネルギー・水資源消費、建設用地等

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18

総量及び強度の抑制)。

・エネルギー利用効率、水効率のトップランナー行動の展開。

・厳格な水資源管理(都市化についての水に基づく意思決定等)。

➣環境対策強化:

・政府、企業、公衆が共同で取組む環境対策制度構築。

・環境対策制度改革(全固定汚染源を網羅した排出許可制導入導入、

全国統一リアルタイム・オンライン環境モニタリングシステム構築、

環境情報公開制度整備)。

④開放:資金導入、技術・智力導入の堅持、グローバル経済ガバナンスに積極参

加等。

➣対外開放の戦略的配置:

・開放分野拡大、参入制限緩和、海外資金・先進技術の積極的・効果的

導入。

➣新しい対外開放体制形成:

・法治化、国際化、円滑化されたビジネス環境充実。

・参入前内国民待遇+ネガティブリスト管理制度の全面的実行(内外企

業無差別、公平な競争促進、サービス業の秩序立った対外開放拡大等)。

⑤共有:人のための人に依拠した発展等。

➣公共サービスの供給増加:

・公共サービスの提供方法の革新(民間委託、政府・社会資本共同等)。

➣教育の質の向上:

・学齢前教育の発展、産業と教育の融合、大学と企業の協力推進、継続

教育・生涯学習チャネル充実、遠隔教育発展、民営教育発展支援・規範

化、民間資本による多様な教育サービス提供奨励等。

➣就業・起業促進:

・生涯職業技能訓練制度推進等。

➣持続可能な社会保障制度確立

➣健康中国の建設推進:

・都市・農村をカバーする基本医療衛生制度、現代病院管理制度構築。

・公立病院総合改革の全面的推進。

・民間の検討サービス業奨励、非営利民営病院と公立病院の同等待遇化。

・大病、慢性病の医療費抑制。

・健康な生活スタイルの提唱、心の健康サービス強化。

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19

・食品安全戦略実施、厳密で高効率かつ社会共同の食品安全ガバナンス

システム構築。

4)その他の重要な要素

◎新たな原動力の育成:スマート、グリーン、健康、安全への消費の転換、サ

ービス消費の拡大による消費構造の高度化牽引等。

◎新たな空間の開拓:

・都市群の波及・牽引機能を発揮させ、三大都市群(「北京・

天津・河北」、「長江デルタ」、「珠江デルタ」)の最適発展、東北地区、

中原地区、長江中流、成都・重慶地区、関中平原等の都市群形成。

・グリーン都市、スマート都市、森林都市の整備、都市間のインフラ相

互接続を支援。

・省エネ・環境、バイオ技術、情報技術、スマート製造、ハイエンド装置、

新エネルギー等進行産業発展を支援。

・都市公共交通、洪水調整・冠水防止等の施設整備を強化。

・都市地下配管網の改造工程を実施。

・電力、通信、交通、石油、天然ガス、都市公共事業等自然独占業種の競

争的業務の開放を加速。

・IoT 技術と応用の発展。

・国家ビッグデータ戦略実施、データ資源の開放・共有の推進等々。

(2)(2)(2)(2)新型都市化建設の新型都市化建設の新型都市化建設の新型都市化建設の深化深化深化深化推進に関する国務院の意見推進に関する国務院の意見推進に関する国務院の意見推進に関する国務院の意見((((34343434 項目)項目)項目)項目)

15 年末には、13・5 計画期を目前に控えて 37 年ぶりの開催とされる「中央都市工作

会議」が開催された。そして、その約1ヵ月後、国務院から「新型都市化建設の深化推

進に関する若干の意見」(国発〔2016〕8 月)が発表された。その背景は、「国家新型都

市化計画(2014-2020 年)」の発表実施以来、新型都市化の各事業は積極的な展開を見た

が、農業からの流入人口の市民化の進捗は緩慢であり、都市化の質が向上しておらず、

内需拡大の原動力機能が十分に発揮されていない等の問題がなお存在していることに

対し、各地区の有効な経験を総括・普及し、新型都市化建設を深化推進するためとされ

ている。

同意見書が特に重視しているのは「都市病」問題であり、提起されている 34 項目中

の多くは「都市病」に対する都市機能の向上についての具体的措置を提起している。

意見全文発表前に行われた胡祖才国家発展改革委員会副主任の記者への説明でも、都

市化の進行過程の問題点として、農業人口の市民化の進捗が遅いという問題とともに、

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20

既存の大都市では「都市病」が表面化していることを指摘している。具体的には、交通

渋滞、環境汚染、公共サービスの不足や地下施設の不十分さ(地下配管網が未整備のた

め、大雨が降ると街が水浸しになる)といった問題が挙げられている。

《国務院の新型都市化建設の深化推進に関する若干の意見(国発〔《国務院の新型都市化建設の深化推進に関する若干の意見(国発〔《国務院の新型都市化建設の深化推進に関する若干の意見(国発〔《国務院の新型都市化建設の深化推進に関する若干の意見(国発〔2016201620162016〕〕〕〕8888 号)》号)》号)》号)》抜粋抜粋抜粋抜粋

■農業流入人口の市民化の積極的な推進

(一)戸籍制度の改革政策の速やかな実施。

(二)居住証制度の全面的な実施。

(三)都市部の基本的公共サービスの常住人口への完全カバーの推進。

(四)農業流入人口の市民化奨励システムの速やかな構築。

■都市機能の全面的な向上

(五)都市のバラック地区、都市の中の農村部、危険家屋の改造の加速化。

(六)都市総合交通網建設の加速化

➣大都市では公共バス、市電、地下鉄等を計画的に発展させ、都市の軌道交通システ

ムと自転車等の緩行交通システムの建設を推進する。

➣条件の許す地区では市の郊外鉄道を計画建設し、道路の利便性を向上させる。都市

に出入りする交通道を整備し、乗換地点や駐車場などの施設を建設する。

➣充電ステーション、充電ポスト等新エネルギー自動車の充電施設の建設を推進し、

それを旧市街区改造と新市街区建設計画と同期的に実施する。

(七)都市の地下配管網改造事業。

➣都市の地上地下のインフラ建設計画を統合し、都市の地下インフラの建設と改造を

強化する。電力、通信、放送、上下水、熱、ガス等の地下配管網を合理的に配置し、

既存の地上電力網と通信網の架線の地下化を推進する。

➣都市の氾濫発生地点の改造を急ぎ、雨水汚水分流配管網への改造と、洪水防止の排

水施設の建設を推進する。上水道網の改造を強化し、上水管の水漏れ率を低減させる。

(八)海綿都市の建設の推進。

(九)新型都市建設の推進。

➣経済、エコロジー、美観の方針を堅持し、計画レベルを向上させ、都市計画の科学

性と権威性を強化し、都市建設に関わる様々な計画を統合して総合的な都市設計を展

開し、エコシティ、スマートシティ、ヒューマンシティ(「人文城市」)等の新型都市

の建設を加速化し、都市の内包する質を大きく向上させる。

➣「ブロードバンド中国」戦略と「インターネット+」都市計画を実施し、光回線の

加入を促進し、ブロードバンドのスピードアップと料金引下げを促進し、インテリジ

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21

ェント型の交通・電力網・水管理・配管網・専門区を発展させる。

➣分散式の太陽エネルギー、風力、バイオマス、地熱等の多元化した一定規模の応用

と工業余熱による熱供給を推進する。

➣既存の建築物の熱カロリー計量と省エネ改造を推進し、大型公共建築と政府の投資

する各種の建築はエコロジー建築基準と認証を全面的に実行し、エコロジー新型建

材、プレハブ式建築、鉄骨構造建築を積極的に採用する。

➣ゴミ処理施設の建設を強化し、建築ゴミ、食堂廃棄物、園芸森林廃棄物等の回収再

生利用システムを基本的に構築し、循環型都市を建設する。

➣都市の空気の質の目標達成のタイムテーブルを作成し、良好日数比率の向上に努力

し、重汚染日数を大幅に減らす。

➣最も厳格な水資源管理制度を実行し、節水の新技術と新プロセスを普及させ、中水

の回収再利用を積極的に推進し、節水型都市を建設する。

(十)都市公共サービスの水準の向上。

➣医療衛生機構、文化施設、体育健康施設、公園緑地等の公共施設及びコミュニティ

サービスの総合的な情報プラットフォームの計画建設を強化する。

➣コミュニティの生活施設の配置を改善し、物流配送、スーパーマーケット、銀行支

店網、小売り薬局、家庭サービスセンター等を含む生活サービス圏を構築する。

➣住居を基礎とし、コミュニティを根拠とし、機構を補完とする多層的な養老介護シ

ステムを構築し、生活の世話、介護リハビリ、精神的安定、緊急援助等の総合サービ

スを推進する。住宅、公共建築の高齢者向け改造を加速化する。

➣都市公共施設の使用上の安全管理を強化し、都市の防震、洪水防止、氾濫排水、消

防、地質災害に対する緊急指揮システムを整備し、安全通路システムを整備し、防災

避難場所の建設を進め、自然災害、突発事件への対応と危機管理能力を強化する。

■中小都市と特色のある小都市の育成

(十一)県庁都市と重点的な町のインフラレベルの向上。

(十二)特に大きな町の機能の拡大。

(十三)特色のある町の発展の加速化。

(十四)一連の中小都市の育成発展。

(十五)都市群の建設の加速化。

➣都市群インフラ施設の一体化建設を推進し、核心都市の 1時間通勤圏を構築し、都

市群間の高速高効率の交通網を整備する。高速鉄道、インターシティ鉄道、高速道路

を主幹とする都市群間交通網を建設し、高速通信で便宜の良い情報ネットワークを統

一的に計画し、重要なエネルギーインフラ施設とエネルギー市場の一体化建設を統一

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22

的に推進し、安全な水利と上水道システムを共同で建設する。

■新農村の建設のリード

(十六)インフラ施設と公共サービスの農村部への延伸の推進。

(十七)農村での第一次、第二次、第三次産業の融合的な発展。

(十八)農村での e-コマースの発展。

(十九)貧困対策の転地と新型都市化の結合。

■土地利用システムの整備

(二十)都市と農村の建設用地の増減のリンク。

(二十一)都市部の低効率用地の再開発奨励システムの構築。

(二十二)現地の状況に合わせて低い丘陵地帯の開発。

(二十三)土地経営権と宅地使用権の流通システムの整備。

■投融資システムのイノベーション

(二十四)政府と社会資本の協力の強化。

(二十五)政府の財政投入の強化。

➣政府の投資構造を改善し、専用資金を用意し、農業からの流入人口の市民化に対応

する関連施設の建設を重点的にサポートする。公開透明な政府資金の資産対照表を作

成し、条件が許す地区では地方政府債の発行等多様な方式で都市建設の資金ルートを

拡大する。省レベルの政府の起債の使用の方向性は、新型都市化に傾斜して行う。

(二十六)金融サポートの強化。

➣地方が財政資金と社会資金を利用し都市化発展基金を設立し、地方政府の投資プラ

ットフォームを統合し都市化投資プラットフォームを設立することを奨励する。

都市政府がインフラ施設と賃貸住宅資産の証券化を遂行することを支持し、都市のイ

ンフラ事業の直接融資の比率を高める。

■都市の住宅制度の整備

(二十七)購入と賃貸を並立させる都市型住宅制度の構築。

(二十八)都市住居保障システムの整備。

(二十九)専業化住宅賃貸市場の発展。

(三十)不動産市場調整システムの健全化。

■新型都市化の総合試行地区の推進

(三十一)試行の内容の深化。

(三十二)試行範囲の拡大。

(三十三)サポートの強化。

➣国務院関係部門と省レベルの人民政府は試行地区への指導とサポートを強化し、関

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23

連する改革措置を試行地区で先行して行い、随時その試行経験を総括普及させる。

各試行地区は年度進捗計画を作成して年間の任務を明確にし、健全な試行成果の考査

評価システムを構築する。

■新型都市化作業の推進システムの整備

(三十四)政策協調の強化。

➣国家発展改革委員会は新型都市化作業推進部間合同会議制度を通じて、政策協調を

強化し、関連政策の速やかな作成と実施を推進し、地方に対して新型都市化作業の指

導を強化する。

(三十五)監督検査の強化。

(三十六)宣伝とリードの強化。

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Ⅱ.Ⅱ.Ⅱ.Ⅱ.モデルプロジェクト基礎調査モデルプロジェクト基礎調査モデルプロジェクト基礎調査モデルプロジェクト基礎調査

調査過程で、中国側調査グループ(CCUD)からは三つのモデルプロジェクト候補エリ

アが示された。時系列の提示順に挙げれば、北京周辺(15 年 7 月時点では「西城区」、

その後「北京通州・河北香河」)、鄭州(15 年 7 月)、深圳(15 年 11 月時点では「光明

新区」、その後「坪山新区」)である。

本基礎調査では、それぞれのモデルプロジェクト候補エリアの概要、プロジェクトに

より解決すべき課題、更には 13・5 計画期に解決すべき「都市病」は何かを把握し、こ

れらにおける日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性について検討し

た。

1.深圳・坪山新区益田共和城邦プロジェクト1.深圳・坪山新区益田共和城邦プロジェクト1.深圳・坪山新区益田共和城邦プロジェクト1.深圳・坪山新区益田共和城邦プロジェクト

(1)政策的な経緯と背景(1)政策的な経緯と背景(1)政策的な経緯と背景(1)政策的な経緯と背景

深圳は、1980 年の経済特区設置以来、中国改革・開放政策の先兵であるとともに、

全国に先駆けた実験地であり続けている。スマートシティ展開についても同様であり、

2012 年からの住宅都市農村建設部の第一次「国家スマートシティ試点

18

」の一つに深

圳市坪山新区が指定され、同区が深圳市内で唯一の「国家スマートシティ試点」とな

った。

一方、坪山新区には特殊な事情がある。同区はこれまで深圳経済特区の外におかれ

ていた。09 年 6 月に新区管理委員会が設立され、10 年 7 月に深圳経済特区の範囲を

深圳市全体に拡大するという決定がなされるに伴い、宝安(光明、龍華)、龍崗(坪山、

大鵬)が新たな六つの区として経済特区のなかに組み込まれた。但し、上海の「浦東

新区」のような国家級新区の位置付けは 16 年 2 月段階では得られていないが、その

方向での検討もなされている模様である。

深圳市政府は、10 年の経済特区拡大の決定に伴い、経済特区内の「一体化改革」に

着手した。市内(=経済特区内)の発展の格差、空間配置の矛盾を是正することによ

り新たな飛躍的発展を生み出すという方針である。これは、2013 年の 18 期 3 中全会

の決定における「農村と都市の一体化改革深化」の先駆的な役割を担っているとも看

做すことが可能である。「新型都市化」政策と軌を一にする改革方針である。

このような政策的なバックグランドのもとで、坪山新区でのスマートシティ試点と

18

国家スマートシティ試点:原文は「国家智慧城市試点」。第一次(2012 年指定)90 試点

(37 地級市、50 区・県、3鎮)。第二次(2013 年指定)103 試点(83 市・区、20 県・

鎮)。住宅都市農村建設部(所管:建築節能科技司)が「国家智慧城市試点暫定管理弁

法」及び「国家智慧城市(区、鎮)試点指標体系(試行)」に基づき指定。

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しての取り組みが実行された。その取組みの先駆性については、住宅都市農村建設部

のみならず、工業信息化部及び国家標準化管理委員会からも評価され、14 年 7 月に工

業信息化部、国家標準化管理委員会のもとで開催された「第2回スマートシティ標準・

応用セミナー」において「2014 年度スマートシティ優秀事例(10 例)」に選ばれてい

る。評価の重点は、「区民のためのインターネット組織化事業(原文「織網工程」)の

改革・創新」にあり、この「織網工程」を通した「スマート・エコ(智慧・生態)坪

山」建設推進は市内でもトップクラスであるとされている。以下に概要をまとめる。

≪坪山新区スマートシティの重点≫≪坪山新区スマートシティの重点≫≪坪山新区スマートシティの重点≫≪坪山新区スマートシティの重点≫ ((((15151515 年段階の評価資料による年段階の評価資料による年段階の評価資料による年段階の評価資料による))))

「織網工程」を通して、関係部門間の業務処理の協調をオープンかつ集中して行うこ

とができるプラットフォームを構築すること、同時に、政府が管理するビッグデータの

活用をサポートし、企業、社会、区民へのサービスを指向するプラットフォームとする

ことを重点としている。これらにより以下を実現するとしている。

①市民サービスを中心対象とする網羅的(「全媒体」)及び個性的モデルの実現

②企業サービスを中心対象とする網羅的({全媒体})及び個性的モデルの実現

③科学的政策決定・管理と政策な未来予測の実現

④利用者、大衆、開放、協同等の全面的イノベーションを実現

≪スマート化実施のための段階的アプローチ≫≪スマート化実施のための段階的アプローチ≫≪スマート化実施のための段階的アプローチ≫≪スマート化実施のための段階的アプローチ≫

(1)「スマート坪山」のインフラ:(1)「スマート坪山」のインフラ:(1)「スマート坪山」のインフラ:(1)「スマート坪山」のインフラ:

①政務光ファイバー幹線通信ネットワークの敷設

②統一したIPネットワークプラットフォームの構築

③クラウドコンピューティングをベースとするプラットフォーム構築(区全体の統一

したサーバー、データ蓄積ハードサポート)

④新区ネットワーク・セキュリティ・システムアレンジ

(2)重点プロジェクトによる各分野の管理サービス効率向上:(2)重点プロジェクトによる各分野の管理サービス効率向上:(2)重点プロジェクトによる各分野の管理サービス効率向上:(2)重点プロジェクトによる各分野の管理サービス効率向上:

①スマート政務:政府内の業務効率向上、公共サービスの質の向上

②センサー普及:ビデオ、画像情報の統一的整備

③環境管理オンライン整備:環境モニタリングの可視化実現による法的監督・執行力

向上

④スマート教育:オンライン学習環境整備により、区民への教育サービス能力向上

⑤スマート医療:医療衛生情報システム構築により、地域医療衛生改革を促進

⑥スマートサービス:全面的でスピーディーかつ主体的「大規模サービスネットワー

ク(「大服務網」)」建設による企業へのサービス能力向上

⑦「織網工程」情報化:「統一のデータバンク、二系統のネットワーク及びシステム」

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整備による社会サービスモデルの革新

⑧都市計画・管理のデジタル化:詳細で迅速、高効率、随時、全方位の網羅的都市管

理モデルの構築

≪「織網工程」の区民サービスネットワーク化≫≪「織網工程」の区民サービスネットワーク化≫≪「織網工程」の区民サービスネットワーク化≫≪「織網工程」の区民サービスネットワーク化≫

特に評価されている点は、「織網工程」をトップ事業(「一号工程」)に位置付け、こ

れを通して新区の改革・イノベーションに取り組んでいることである。その対象は、政

府のスマート化に留まらず、安全生産、土地問題、応急事件等を含む末端の住民の声を

「ネットワーク員」制度、モバイルネットワーク等を通して収集し、関連の行政部門間

で「織網工程」を通して随時に共有することにより、異なる部門での同時進行での迅速

な検討・対応を可能としている。また以下の体系によりその効果を保証している。

①組織体系:坪山新区政府に横断的な「スマート坪山」推進弁公室を設置。

②専門家グループによる「坪山新区スマートシティ推進政策研究」を実施。

③「スマート坪山5カ年建設計画(「智慧坪山五年建設規劃」)」により青写真を提示。

④「スマート・エコ坪山評価システム」によりPDCA(「規、建、督、評」)を実現。

⑤情報収集と多様な業務管理との融合を図るための「首席情報官(CIO)」制度の検

討。

坪山新区政府の「スマート坪山」推進弁公室主任の説明によれば、16 年 2 月の段階

で、政務システムにおいては、既に有線及びワイヤレスのインターネットインフラは

整備され、コンピューター情報の共有環境、政府を主とした都市エリアのデータ融合

の基礎も整っている。今後は、これらデータを応用しイノベーションに取り組む段階

であり、領域を超えて、横断的にデータを活用してイノベーションを生むことをスマ

ートシティのターゲットとしたいとの考えである。

具体的には「都市病の解決」、人々の関心の所在である環境問題と交通問題等の解決

が必要であり、これらの分野は、単一部門での解決は難しく、様々な部門が連動して

問題発生源となるデータの処理と応用に取り組む必要がある。今後の推進方向は以下

の五つであるとの説明であった。

(1)都市病解決に向けて、多様な部門が分野を越えて連動してデータ処理・応用を

進める。

(2)各分野において、特にスマートホーム(家庭)、スマート社区の構築・発展のサ

ポートに努力する。それを進めるに当たって、他の領域のデータを横断的に活用でき

るようにすると同時に、政府部門からのサポートサービス提供が得られるようにする。

政府部門の分野横断的なニーズに応えること以外に、ビジネス上の応用へのサポート

も含まれる。

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(3)スマートシティを拠りどころとして、政府のガバナンスの改革に取り組む必要

がある。3 中全会の決定に基づき、これまでサービス型の政府を構築することに注力

してきたが、情報化によるガバナンスの現代化改革が求められている。

(4)制御性と透明性を前提として、社会にデータを開放し、条件を提供しつつ、社

会のパワー、民間業者をサービス、民生サービス分野のイノベーションに取りででい

きたい。

このように、12 年以降、スマートシティ建設とICT活用による区民本位の制度改

革を推進してきた坪山新区ではあるが、新型都市化政策の重点である人の都市化、要

すれば都市戸籍への転換は思いのほか進んでいないようである。

14 年末の坪山新区の非戸籍人口の割合は 86.6%に上り、深圳市全体(非戸籍人口比

率 69.2%)よりも 17.5 ポイントも高い。加えて、他の地域の非戸籍人口が減少する

なかで、前年比 3%の伸びを見せている。

図表 4 深圳市各区の人口

2014 年末 常住人口

(万人)

非戸籍人口 非戸籍人口

比率

非戸籍人口

前年同期比

(%)

深圳市 1,077.89 745.68 69.2% ▲0.9

福田区 135.71 52.36 38.6% ▲5.9

羅湖区 95.37 39.46 41.4% ▲2.1

塩田区 21.65 15.78 72.9% ▲0.7

南山区 113.59 42.56 37.5% ▲4.9

新宝安区 273.65 231.52 84.6% ▲0.4

光明新区 50.42 44.25 87.8% 1.3

龍華新区 143.45 126.95 88.5% ▲0.4

新龍崗区 197.52 155.03 78.5% ▲0.2

坪山新区坪山新区坪山新区坪山新区 33.1633.1633.1633.16 28.7228.7228.7228.72 86.6%86.6%86.6%86.6% 3.03.03.03.0

大鵬新区 13.37 9.06 67.8% ▲0.3

坪山新区では、これまでの経緯がそうであったように、13・5 計画期においても、本

問題を含む重点課題の解決をスマート化(智慧都市建設)に融合させて改革とイノベー

ションを推進しようとしている。深圳市が 15 年に発表した東部開発(「東進」))戦略の

重要な地域でもある。

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(2)益田集団による坪山スマートコミュニティプロジェクト構想(2)益田集団による坪山スマートコミュニティプロジェクト構想(2)益田集団による坪山スマートコミュニティプロジェクト構想(2)益田集団による坪山スマートコミュニティプロジェクト構想

15 年 12 月 22 日に深圳において、日本とのビジネス協力に積極的な意向を有する開

発事業者の一つ・益田集団が CCUD から推薦された

19

。その際紹介されたのが本プロジ

ェクト(現在の通称「益田共和城邦」)である。

図表 5 坪山新区「益田共和城邦」の位置付け(益田集団提供資料)

19

調査では、15 年 12 月の来日ワークショップ結果を受け、同年 12 月 21-22 日に光明新区

スマートシティ関連設計者、開発事業者へのインタビューと現地視察を実施する予定であ

ったが、現地入りした当日(12 月 20 日)に発生した山間部大規模崩落事故のために、市

及び区政府関係者(特に光明新区の都市計画・建設従事者)ほぼ全てが事故対応を必須と

する状況となり、本調査のインタビュー対応は不可能となったことから、事故対応と無関

係で、かつ日本とのSC協力に積極的と考えられる開発事業者の一つ・益田集団が新たな

インタビュー先(SC事業候補)としてCCUDから推薦された。

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29

図表 6 坪山新区「益田共和城邦」位置図(益田集団提供資料)

≪坪山新区「益田共和城邦」概要≫≪坪山新区「益田共和城邦」概要≫≪坪山新区「益田共和城邦」概要≫≪坪山新区「益田共和城邦」概要≫

当プロジェクトサイトは「燕子嶺片区」に位置する。坪山新区のコアエリアの重要

な組成部分であり、その機能は、広域的なハイエンド生産性サービス業のコアエリア

かつ質の高い居住区とされている。 図表 7 対象7区画(益田集団提供資料)

プロジェクト用地面積は 28 万㎡

であるが、開発後に政府に返還する

面積が 11 万㎡あり、「益田共和城邦」

の敷地面積は 17 万㎡、総建築面積は

101 万㎡、7区画からなる。

➢用途別の計画面積

住宅:47 万㎡

商業:10.5 万㎡

オフィス:10.5 万㎡

マンション:8.6 万㎡

「燕子嶺片区」は元来「城中村」であり工場が立地していたが、目下、土地総合改

造(再開発)の実施段階にある。当プロジェクト計画では、「国際化・生態・人文城邦」

モデルとして、旗艦オフィス、レジャー・商業、教育、ヘルスケア、エコパーク、イ

ンキュベーター、展示、ハイエンド住宅等をトータルに備えるスマートコミュニティ

を目指している。

15 年には高速鉄道(1 日 12 往復)が完成して深圳北駅と 20 分でつながった。ま

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30

た、地下鉄 13 号線と 16 号線の延伸も計画されており、これが実現すれば、同新区

は、深圳中心部(福田区)及び香港を含め、30 分移動圏内に位置することになる。

≪プロジェクト実施体制≫≪プロジェクト実施体制≫≪プロジェクト実施体制≫≪プロジェクト実施体制≫

デベロッパーである益田集団は、15 年 9 月に入札により集団所有制の土地を都市化

する合意書を「社区(元農村の「集体」)居民委員会」との間で締結しプロジェクト用

地(7 区画)を獲得した(約 7,000 元/㎡)。当該用地は集団所有地(元来、農民約 500

人の「集体」所有地であり、現在は社区を構成しており、「社区居民委員会」管理)で

あり、約2年間をかけて「社区居民委員会」による移転・撤去等同意の取り付け(従

来と同面積の商業スペース或いは住宅提供等を条件とする)が行われる見通しである。

その後、土地使用権譲渡契約が締結されることになる。

坪山新区政府は、本プロジェクトを全国初の「村の自主改造(原文「整村統筹」)」

プロジェクトとして、以下のような役割分担を想定している。

➢政府:計画誘導と資金支援提供を通して最適な都市空間を整備(全て国有化された

土地の一部は、政府により行政サービス施設の最適配置を実現)。

➢社区居民委員会:プロジェクト開発事業の株主となって統合・移転の意向取り纏め

を行い、開発後は株主配当を得る。留用地は社区が自主的に開発する。

≪益田集団の概要≫≪益田集団の概要≫≪益田集団の概要≫≪益田集団の概要≫

・1996 年 2 月設立、02 年株式制に転換。

・住宅、商業施設開発をコア事業とし、高速道路、不動産管理、生物製薬等も展開す

る不動産総合開発企業。

・総資産:300 億元。

・従業員総数:1,594 人(平均年齢 31 歳)。

・拠点:深圳(本社)、上海、北京、長春。

・戦略展開地域:華南、華東、華北、東北。

・2015 年の戦略分野:①商業、②不動産業、③文化産業。

・商業・不動産事例:

※08 年 深圳益田ホリデイプラザ 15.5 万m

商業、オフィス

※09 年 +ウエスティンホテル開業 10 万m

※長春益田世界 12 万m

(建設中)

※深セン羅湖益田世界 53.6 万m

中、商業施設 12 万m

、住宅等(準備中)

※上海益田ホリデイプラザ 40 万m

、商業施設、ホテル等(計画中)

※商業施設での情報化(オフライン2オンライン導入

※00 年「益田共和世家(深圳)」が建設部「全国城市住宅優秀試点小区」称号授与

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31

・文化産業事例:11 年「朗朗音楽世界」(ピアニスト養成学校+コンサートホール)

・14 年深圳で病院設立 等

≪デベロッパーの開発理念≫≪デベロッパーの開発理念≫≪デベロッパーの開発理念≫≪デベロッパーの開発理念≫

16 年 1 月中旬に概要が説明された本プロジェクトにおける益田集団の考え方は、人

を基本として社会のニーズから出発するスマートコミュニティ開発を通して「環境共生、

健康長寿、新産業創造」という「(日本の)柏の葉スマートシティ」のコンセプトに学

び、それをモデルとした価値観を実現したいというものであった。

グリーンで低炭素かつ居住快適性の高い都市へのイノベーションに取り組み、そうし

た開発と運営モデルを以てブランドを構築し、坪山新区、深圳市ひいては全国の都市の

発展に貢献し,益田集団自体も「質の高い生活(QOL)の牽引者」という戦略目標を

実現したいとしている。

(3)日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題(3)日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題(3)日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題(3)日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題

日中共同調査グループは、上記デベロッパーの開発理念の説明を受けて、本調査の最

終段階である 16 年 2 月下旬に、坪山新区において日本企業参加によるクローズドセミ

ナーを実施した。その過程で日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性

を検討したプロセスと 2 月末段階の結果の要点は以下である。

(3-1)(3-1)(3-1)(3-1)坪山「益田共和城邦」スマートコミュニティ坪山「益田共和城邦」スマートコミュニティ坪山「益田共和城邦」スマートコミュニティ坪山「益田共和城邦」スマートコミュニティのののの導入導入導入導入システムシステムシステムシステム(構想)(構想)(構想)(構想)

益田集団は、坪山新区を含め、絶えざる発展に伴い深刻する「都市病」問題を解決し

て都市の持続可能な発展を実現するために、スマートコミュニティ建設が都市の発展の

不可逆的な潮流であると捉えている。

坪山新区管理委員会によれば、坪山新区の 13・5 計画期に解決されるべき「都市病」

は、①交通問題、②環境問題、③公共サービス(医療、教育)の不備、である。

そこで、坪山新区「益田共和城邦」では如何なるスマートコミュニティ建設によって、

如何なる「都市病」問題のソリューションを準備していくのか、という問いかけに対し、

内外からの勉強中としつつ益田集団は、当初以下の四つのシステム導入構想を示した。

その基本的な考え方は「ICT+公共サービス(住居セキュリティや駐車場の自動シ

ステム等を含む)等」の「社区のスマート化」によって住民の利便性向上を実現し、そ

れによって社区の付加価値を高めることが今後の発展方向というものである。これは、

日本のスマートシティ先進事例である「柏の葉」の目指すところと符合するのではない

か、また、その実現のためには地方政府及び通信・電力会社等からのサポートや参画も

必要と考えているとの説明であった。

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①①①①情報サービスシステム情報サービスシステム情報サービスシステム情報サービスシステム::::

例1:「ホーム・スマートオンライシステム」

家庭用 CATV ネットワークを利用して社区内のテレビ電話や家族会議等の機

能を提供しオンラインネットワーク・コミュニティーを基礎的に構築。住民、

管理者、商用ユーザーにサービス満足度投票や最新のイベント、テレビショッ

プ、文化芸術等の画像を提供。

例2:「公共エリア・ワイヤレス AP システム」

社区内の如何なる場所、如何なる時にも、公共サービス情報取得・処理によ

り、早朝に子供を幼稚園に送る途中で、コミュニティバスの時間表と実際の運

行時間を確認し、オフィスにいながらして新規開店したレストランの予約と支

払いを済ませ、食後に湿地河畔を散歩しながら明日の出張日程を処理し、子供

と公園で野営しながら臨時断水用生活水の準備を可能とする。

例3:「デジタル社区総合オンライン・システム」

設備ネットワークと公共エリアディスプレイを通し,時間毎の家庭内の人数

と生活状態(老人・子供在宅モデル、賓客訪問モデル、深夜読書・作業モデル、

無人家庭モデル等)によって室内照明と家電運用モデルを自動調節。社区電光

掲示板広告の種類を時間帯と人的構成に応じて(祝祭日は観光類、早朝トレー

ニング時は健康類、通勤ピークは生活サービス類、昼食時は飲食類等に)更新

し、営利能力を増強。

②②②②安全防護システム安全防護システム安全防護システム安全防護システム::::

例1:児童の安全な登下校送迎を実現、公園湿地の観光バスや人の流れの住居への

影響を軽減、夜間の公園湿地の歩行の安全等を確保。

例2:「社区安全防護制御」

スマート自動画像分析で疑わしい人物や事象(禁止区域への乱入や逆行、

滞留等)の発生をリアルタイムで報告し、提起された事件情報と画像データ

の一体的記録提供でリアルタイムの警備と事後的検索を可能とする。

③③③③生活サービスシステム生活サービスシステム生活サービスシステム生活サービスシステム::::

例1:「スマート運行及び来客管理システム」

公共電動環状線で湿地や公園と社区内の公共交通ステーション、学校、商

業地等を繋ぎ定時送迎を実現。駐車場への進入車両には運行ルートから駐車

場所へ誘導する駐車誘導・車両探索システムを提供。

例2:「オンライン医療システム」

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公園周辺に健康検査ステーション設置、社区と病院や健康検査機構とのイ

ンターネット・データバンクを構築、診察予約や海外専門医の受診、手術・

病床手配、リアルタイム看護等、迅速に最良の医療資源獲得を可能とする。

例3:「社区マイカードサービス」

マイカード1枚で日常の支払い、銀行対応、SNS、ネット購入、住宅費

用・水道・電力・交通・電話等料金納付等全てがオンライン、オフラインで

可能となり、高齢者の位置確認による失踪予防、社区内各種スマート機能利

用、銀行個人業務の遠隔連携、インターネット金融プラットフォーム導入で

のユーザー獲得等を通してマイカード必携を促進。

④省エネ環境システム④省エネ環境システム④省エネ環境システム④省エネ環境システム::::

例1:「オフィスビル自動制御システム」

公園や湿地の自然景観にも融合させつつ、壁面・窓の一体的データ制御、

封鎖式会議空間とオフィスの休憩時間との景観モデルのスクリーン切り替

え制御、スマートメーターによる照明制御、企業のゲートボードや戸外電子

広告版をニーズに応じてリアルタイムに更新して企業の成長段階に応じた

多国籍企業としてのP.R.効果も発現。

例2:「雨水収集灌漑システム」

ビル屋上や緑化園林で収集された雨水を地下タンクで貯蔵後、灌漑システ

ムを通じて園林等へ供給、滴水管埋設備(非スプリンクラー)で灌漑プロセ

スでの蒸発水の浪費を有効に減少、節水促進。

(3-2)(3-2)(3-2)(3-2)日中共同の日中共同の日中共同の日中共同のクローズドセミナー開催クローズドセミナー開催クローズドセミナー開催クローズドセミナー開催に際しての検討に際しての検討に際しての検討に際しての検討

上記の構想をベースとして行われた日中共同のクローズドセミナーに際して、中国側

からは、改めて日本のスマートシティの先進事例としての「柏の葉」の経験説明が強く

要請された。

これに対して、日本側は以下の検討を経て、プランナーとシステムインテグレーター

の立場から、「柏の葉」のコンセプトの成立ち、エリアエネルギーマネジメントシステ

ムの重要性、持続・継続的に行われる仕組みを中心に説明を行い、加えて、交通渋滞問

題解決の重要な部分である駐車場システムの紹介を行った。

≪≪≪≪日本側の日本側の日本側の日本側の検討プロセス検討プロセス検討プロセス検討プロセス≫≫≫≫

(1)本プロジェクトは、CCUD から示された三つのモデルプロジェクト候補エリアの

うちでは、短期間で日本企業のソリューション・システム提案を実現する可能性が最も

高いと考えられる。

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(2)しかしながら、今次調査期間内で、益田集団の初歩的とされるシステム導入の構

想のなかに日本企業のソリューション・システム提案を組み込み、初歩的なりとも日中

共同プロジェクト計画として提起することは時機尚早と考えられる。

(3)従って今次調査期間内では、共同プロジェクトに向かうための「共通理解を確保」

して、次のプロセスへの筋道をつけることを具体的なターゲットとした。

その背景には以下のような問題認識が挙げられる。これらは、クローズドセミナーで

の問題提起に反映させた。

① 構想されている四大システムの重要性は、理想像としては理解できるものの、最

適なソリューション・システム構築に向けては、13・5 計画期の切実な都市病問

題解決の緊急性及び必要性との関係を充分に分析し得る詳細「データ」の摺り合

わせ、それに裏付けられた具体的な「コンセプト」設定が重要と考えられる。

②上記と相まって、政府であれ民間であれ、資金を有効活用するためには、都市病解

決の緊急度及び必要度により、解決すべき都市病の優先順位を決め、期限を示した

「ロードマップ」を作成し参加関係者間で共有する必要がある。

③新「ロードマップ」作成を効率的に行う方法としては、2010 年当初にIBMが作成

したとされる「坪山新区スマートシティ 5 カ年計画」を含め、これまでの計画と実

績に対する評価を行い、その結果を参加関係者間で共有して新「ロードマップ」作

成に反映することが有効と考えられ、これは坪山新区スマートシティ「織網工程」

の目指すものでもある 。

④加えて、環境問題が重要な都市病に挙げられていると同時に、全国に先駆けて電力

価格改革や低炭素化制度構築を試行している深圳のプロジェクトであるからには、

「省エネ」行動のトップランナー・コミュニティとして、4大システムのなかの「省

エネ」システム導入をより重視することを通して「モデル化」するプロセスも重要

である。その一例として、昼夜電力料金格差を有効活用したより効率的な蓄電シス

テムの普及・拡充が挙げられる。

⑤また、坪山新区既に集積されている統計やビッグデータの共有・活用が内外問わず

可能になれば、情報サービスや生活サービスなどに関わる新たなビジネスモデルの

検討を経て、バリューアップに繋がる可能性が高まる。

≪≪≪≪中国側の反応(中国側の反応(中国側の反応(中国側の反応(要点要点要点要点))))≫≫≫≫

上記の認識に対し、中国側・坪山新区政府と益田集団は、クローズドセミナーにおい

て、CCUD に加え、そのもとで設立された「中国スマートシティ発展アライアンス」参加

企業である「HUAWEI」や「軟通動力」の助言も得て、積極的な反応を示した。その要点

は以下である。

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<坪山新区政府>

① 戦略目標とニーズに基づく優先順位の確定が重要である。

② ニーズに基づく技術やシステムの導入には、効率と価格を基準にすることになる

が、市場の価値は価格に全て反映されるとは限らず、効率を考慮する必要がある。

③ 費用がかさむことが問題視されているが、実際の資金回収の方法は様々ある。不

動産価格からの回収も一つであるが、運営プロセスは更に重要であり、スマート

社区の価値は必ずしも不動産取引時に現れるものではなく、むしろその後、長期

間かけて居住快適性に現れ、不動産管理にも体現されるものであり、この過程で

回収することが可能である。

④ インターネットを中心として、情報化との融合・共有が非常に重要である。例え

ば住民サービスを行う際には、住民のニーズを知る必要があるが、民間のインタ

ーネット運営事業者と連携し、データの共有を図ることも重要である。

<益田集団>

① 通信情報インフラを基礎として、インターネットで資源・情報を共有しつつ、生

活の質の向上の牽引者として、政府のサポートのもとでスマートシティのモデル

建設に取り組んでいく。

② コンセプト、ニーズ収集、グランドデザイン、ビジネスモデルのイノベーション

等の重要性を認識した。

③ 特に、住民のニーズを充分に重視する必要があるが、安全、健康、交通、生活の

質、環境、省エネ、娯楽等のニーズを如何に設計、プランニング、開発、運営に

組み込んでいくかが課題であり、今後も日中双方の関係企業の皆さんと具体的に

議論し協力を得たい。

④ イニシャルコストよりも、運営・管理段階の持続可能性を重視する必要を認識し

た。

⑤ 「柏の葉スマートシティ」の経験からは、住民の生活のなかでの省エネ・環境等

の「可視化」が非常に重要な要素であると受け止めた。

≪≪≪≪結論と結論と結論と結論と今後の今後の今後の今後の展開展開展開展開≫≫≫≫

今回の調査最終段階でのクローズドセミナーの結論としては、今後、上記議論を受け

て、住民のニーズをコンセプト、設計、プランニング、開発、運営に組み込む段階での

日本企業からのビジネス提案を行う筋道がついたという判断が可能である。

また、上記の議論のプロセスでも効果的な助言を行った、「HUAWEI」や「軟通動力」

等の有力中国企業は、日本企業のビジネスアプローチにも習熟していることから、日本

企業のビジネス提案に際して、これら企業から日本企業への助言を適宜求めつつ行うこ

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とも有効と考えられる。

なお、益田集団は、従来の不動産開発、商業施設開発等においても、日本企業の建築

設計、設備・機器の品質を重視して採用してきたとしているが、今回の調査最終段階で

行ったように、日本のスマートシティの経験を基に、そこに採用されている開発コンセ

プト、デザイン、システム・設備・機器を体系的にP.R.しつつ、共通理解に向けた

議論を行うことは、日系現地法人ベースでの機器・設備納入の成約のみならず、一旦納

入された後の運営・管理・維持サービスを含むトータル・ライフサイクルビジネスを包

摂的に拡充する可能性を予感させるものであった。

上述したビッグデータの活用が自由化されれば、日中企業の連携による新たなビジネ

ス創出の可能性は更に高まることも期待される。

図表 8 「益田・共和城邦」スマートコミュニティプロジェクトへの

日中企業連携ビジネス提案イメージ

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深圳・坪山新区深圳・坪山新区深圳・坪山新区深圳・坪山新区「「「「益田共和城邦益田共和城邦益田共和城邦益田共和城邦」」」」プロジェクトプロジェクトプロジェクトプロジェクト関連写真関連写真関連写真関連写真

1 益田集団本社での意見交換

2 坪山新区「益田共和城邦」プロジェクト

サイト(南布社区周辺)

3 深圳市規劃国土資源委員会坪山管理局

の坪山新区・都市計画展示場

4 ESCOを導入している益田プラザ内

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2222....北京北京北京北京(通州)(通州)(通州)(通州)、天津、河北(香河)、天津、河北(香河)、天津、河北(香河)、天津、河北(香河)

(1)2つのモデルプロジェクト候補地概要(1)2つのモデルプロジェクト候補地概要(1)2つのモデルプロジェクト候補地概要(1)2つのモデルプロジェクト候補地概要

CCUDからモデルプロジェクトの候補地として示された4カ所のうち、2カ所が

「京津冀」と呼ばれる北京、天津、河北に位置している。その一つが北京市通州区、も

う一つが河北省香河県である。

北京市通州区は、北京市東南部に位置しており、西側は北京市朝暘区と大興区、北側

は順義区で、東側は河北省三河市、大廠回族自治県、香河県に、南側は天津市武清区、

河北省廊坊市と接している。通州区の面積は906平方キロメートル、人口は 135万 6,000

人(2014 年末)で、北京市中心部から約 20 キロメートルとそれほど遠くないことから、

現在では北京市中心部に通勤する人たちのベッドタウンとなっている。北京市郊外であ

ることから、京杭大運河の北端に位置するなど都心に比べ自然環境はよく、つい最近ま

では住宅価格も比較的安価であったこともあり、都心から移転する人々が増えている。

一方、河北省香河県は同省廊坊市(地級市:2 市轄区、2県級市、5県、1 自治県)の

北東部、北京市と天津市に囲まれた飛び地に位置し、西側は北京市、東側と南側は天津

市、北側は廊坊市の三河市と大廠回族自治県に接している。香河県の面積は 458 平方キ

ロメートル(9鎮、3街道弁事処)、人口は 34 万人で、県内には3カ所の省級工業園区

と1カ所の省級農業ハイテク園区が設置されてい

る。北京市中心部から約 45 キロメートル、天津市

廊 坊 市 行 政 区

香河県

大廠回族自治県

覇州市

永清県

固安県

三河市

安次区

広陽区

大城県

文安県

北 京 市 行 政 区

懐柔区

延慶区

通州区

密雲区

平谷区

順義区

昌平区

朝暘区

海淀区門頭溝区

房山区

豊台区

石景山区

西城区

東城区

大興区

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中心部からも約 70 キロメートル離れており、自然環境に恵まれていることから、現在、

週末に都心部から余暇を過ごす人たちが訪れている。

((((2222-1)北京市通州区のスマートシティモデル都市としての可能性-1)北京市通州区のスマートシティモデル都市としての可能性-1)北京市通州区のスマートシティモデル都市としての可能性-1)北京市通州区のスマートシティモデル都市としての可能性

2015 年 7 月 11 日、中国共産党北京市委員会第 11 期第7回全体会議で「京津冀協同

発展計画要綱」が採択され、これを受け同月 14 日に北京市計画委員会は行政副都心通

州建設計画の詳細を説明し、通州区に北京市行政副都心を建設することが正式に決まっ

たと発表した。それによると、北京市は中心部6区の常住人口を、2014 年末を基準とし

て毎年2~3%低下させ、2020 年までに 15%前後まで減少させるという。

ここ 10 年来、北京市が急速

な経済的発展を遂げるなかで、

人口、資源、環境等社会面での

矛盾が日増しに強まり、複合的

な大都市病に悩まされている。

2014 年末時点での北京市の常

住人口は 2,151 万 6,000 人に

達し、そのうち中心部6区では

1,276万3,000人となっている

20

。人口の急速な集中化は、水

資源不足、大気汚染、交通渋滞、

住宅不足とそれに伴う住宅価

格の高騰など、数々の社会的問

題が生み出される。

こうした問題解決の一環と

して、北京市は都市機能の一部

移転を計画し、同年 11 月 30 日

に北京市計画委員会は行政副

都心計画のなかで、北京市の行政事業部門の通州区への移転が基本的に確定したことを

公表した。李士祥北京市常務副市長によれば、これにより、2017 年末には北京市党委員

会、北京市人民政府、北京市人民代表大会、北京市政治協商会議の 4 大機構がすべて通

州区に移転することになるという

21

20 北京新華網“http://www.bj.xinhuanet.com/jzzg/2015-07/14/c_1115923709_2.htm” 21

新華網“http://www.huaxia.com/xw/dlxw/2015/12/4654618.html”

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現在、北京市中心部と通州区とを結ぶ道路網や軌道交通網の整備が進められている。

道路網では、京津高速、京滬高速、京哈高速、通燕高速等主要都市間を結ぶ高速道路の

ほか、通順線、壁富線、第六環状線(六環路)等の域内を結ぶ3本の高速道路が完成し

ている。また、軌道交通網では、北京市内の東西を結ぶ地下鉄6号線が近い将来、行政

副都心となる「通州現代化国際新城(以下「通州新城」)」まで伸びる計画となっている。

通州新城構想については、北京世界都市建設戦略の下、早くも 2009 年末の北京市委

員会第 10 期七中全会で首都の発展に見合った現代的・国際的新都市をできるだけ早く

通州に形成することが決定され、それを受け 2012 年6月の北京市第 11 期党大会では都

市副都心機能を備えた通州先端ビジネスサービス区建設を加速するための議題が提出

された。

副都心としての通州新城の位置付けは、機能が完備された「北京都市副都心」で、仕

事が快適で住みやすい総合的新都市を目指している。2015 年現在、通州新城の用地管

理範囲は 155 平方キロメートルで、このうち早期建設用地は 85 平方キロメートル以内

に抑制される。通州新城中心部は約 48 平方キロメートルで、運河中枢区、協同発展区、

生活施設区及び発展予備区の4大機能区が含まれ、うち運河中枢区は 16 平方キロメー

トルである。

この運河中枢区は、第 12 次五カ年計画期間中に重点的に開発するとされた「一核五

区」の「一核」で、現代サービス重点機能区としての初歩的な基盤が形成されつつある。

これに続き、2020 年までに「五区」を含む通州新城中心部がより効率的な都市機能を有

する都市とし

て基本的な建

設が完成する

予定である。

「五区」とは、

文化観光区、

宋庄文化創意

産業集積区、

国際医療サー

ビス区、環渤

海先端本部基

地、国際組織

集積区で、そ

れぞれの区が協調しながら新城を機能的に形成していくとされる。そして 2050 年まで

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41

に、通州新城を持続的発展が可能な現代的国際モデル都市とすることを目標として掲げ

ている。

今回、CCUD より日中スマートシティ協力のモデル都市の候補地の一つとして、この

通州新城が提案された。北京市行政事業部門の通州への移転を機会に、通州新城建設に

際し日本のスマートシティのコンセプトを盛り込むことで、日中スマートシティ協力の

モデル都市としたいというものだが、CCUD による通州新城側への接触は始まったばか

りで、現段階で具体的なプロジェクトにつながる可能性は大きくないのが実情である。

また、今年度の調査事業の過程においても、通州新城との協議や視察が実現しておらず、

プロジェクト全体の進捗状況の実態が把握できていない状況である。このため、通州新

城での具体的なプロジェクト実現には、さらなる詳細な調査及び協議が必要である。

((((2222-2)河北省香河県のスマートシティモデル都市としての可能性-2)河北省香河県のスマートシティモデル都市としての可能性-2)河北省香河県のスマートシティモデル都市としての可能性-2)河北省香河県のスマートシティモデル都市としての可能性

河北省香河県において、CCUD がスマートシティを前提として開発を進めようと提案

しているのが、運河生態城プロジェクトである。2008 年 10 月、盛達置地投資有限公司

は香河県政府との間で契約を交わし、

総面積9.7平方キロメートルの土地に

おいて、企業を開発主体とする土地一

級開発及び二級開発に対する投資誘

致活動を行っている。

盛達置地投資有限公司は 2008 年 12

月に河北省廊坊市香河県に設立登記

された総合的都市開発運営企業で、登

録資本は2億人民元である。このう

ち、万通投資HD株式有限公司が

27%、嘉華東方HD(集団)有限公司

が 27%、香河盛達房地産開発有限公司

が 36%、北京嘉華筑業実業有限公司

100%子会社の平安投資有限公司が

10%をそれぞれ出資している。同社は

主に新たな都市の土地一級開発、市政

府インフラ建設及び管理、公共サービ

ス施設建設及び管理、環境管理、ビジ

ネスサービス、不動産等の業務を行っている。

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香河土地利用計画及びその総合利用計画(2010~2020 年)によれば、地理的優位性を

活かし、周辺の大都市との機能的役割を調整し、香河県の産業としての位置付けは主に

商業及びサービスなど第三次産業を発展させることにあるとしている。運河生態城の減

河以南は居住区、以北は産業発展用地としており、中心都市の機能移転の受け皿として

の居住型産業新都市建設を目指している。

しかし、一方で盛達置地投資有限公司は住宅建設を優先して開発しているのが実情で、

現在のところ別荘型の住宅を購入しているのはほとんどが北京在住の富裕層だという。

そうした人々は週末に香河で余暇を過ごして居住地に帰ることになるため、現地での雇

用機会の創出は後回しになっている。現段階での北京または天津までの公共交通機関の

整備も遅れており、北京中心部までは公共バスと地下鉄を乗り継ぎ、通勤には 2 時間以

上を要するという。2016 年 1 月に我々が車を使って北京中心部から高速道路を利用し

運河生態城に赴いた際には、北京市内での渋滞も含め1時間半の時間を要した。自動車

通勤としては無理がある。また、2017 年末を目途に開通するという高速鉄道を利用す

れば、北京通州区まで 20 分の距離ということだが、高速鉄道を通勤として利用するに

は、まだ一定の社会的成熟を遂げる必要がある。

一方、運河生態城の東側に省級の香河経済技術開発区があり、包装用印刷、自動車部

品、紡織、電子、新型材料、コンベンションサービスを主体とした産業集積が行われて

いるが、12 平方キロメートルの敷地に累計で 198 プロジェクト、総額 70 億元の投資が

行われたのみで、住宅型産業新都市の形成にはまだ一定の時間が必要であると思われる。

また、住宅建設とともに、運河生態城には「第一城」と呼ばれる中国明清朝時代の北京

の城壁を模した塀に囲まれた 200 ヘクタールの敷地内に、古代風建築様式を取り入れた

ホテル、レストラン、会議場、娯楽施設などの総合的な商業施設が建設されている。我々

が訪れた際には、利用客も少なく、閑散とした印象を受けた。盛達置地投資有限公司に

よれば、国慶節や春節など祝祭日には数々のイベントが催され、その際には多くの客で

賑わうとのことであったが、これだけの大規模な施設の運営を維持するには、さらなる

工夫が必要であると思われる。

運河生態城としては、住居、産業、商業施設などの一体化開発の構想はあるものの、

現段階では高級住宅販売が中心である。総合的な街づくりには、デベロパーによる不動

産開発とともに、地方政府による産業誘致政策の実施、都市間及び市内の軌道交通整備

など官民連携による都市設計が必要である。CCUD との交流も始まったばかりで、日中

スマートシティ協力のモデルプロジェクトとして機能するには、今しばらくの時間が必

要であると思われる。

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43

《プロジェクト候補エリア写真》《プロジェクト候補エリア写真》《プロジェクト候補エリア写真》《プロジェクト候補エリア写真》

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44

3333....鄭州鄭州鄭州鄭州

2015 年 7 月、当協会は日本の専門家、企業関係者及び国家発展改革委員会城市・小

城鎮改革発展中心(以下「CCUD」)とともに、モデルプロジェクトの候補地である河南

省鄭州市を訪問し、鄭州市政府及び現地の最大手デベロッパー建業集団との意見交換と

視察を行った。その背景は、調査開始に当たり中国側調査グループから、日本式のスマ

ートシティ・コンセプトを活かすことのできるデベロッパーとして建業集団を推薦され

たことによる。

ここでは、訪問調査内容に加え、各種情報収集を通して、鄭州の概要、課題、日本と

の協力可能性等について総合的にまとめた。

(1)鄭州市の概要(1)鄭州市の概要(1)鄭州市の概要(1)鄭州市の概要

(1-1)全国から見た鄭州市の位置づけ(1-1)全国から見た鄭州市の位置づけ(1-1)全国から見た鄭州市の位置づけ(1-1)全国から見た鄭州市の位置づけ

国務院が 2010 年に発表した「全国主体機能区規劃」

22

から、鄭州市の位置づけが明確

に読み取れる。同規劃では、各地域を開発方式によって、「最適化開発区域、重点開発

区域、開発制限区域、開発禁止区域」の 4 つに分類している。「最適化開発区域」は特

大都市群を形成する環渤海、長江三角洲、珠江三角洲地区をいい、「重点開発区域」は

新たな都市群と地域的都市群を形成する中原経済区のほか太原都市群、海峡西岸経済区、

長江中流地区等の全国 18 地域をいうが、鄭州市は中原経済区の中心に指定されている。

また、「両横三縦」を主体とする都市化戦略フレームの構築が掲げられている。両横

とは、ランドブリッジと沿長江の 2 本の横断ライン、三縦とは、沿海、北京・ハルビン

‐北京・広州、フフホト‐昆明の 3 本の縦断ラインをいう。これらのラインは、最適化

開発区域及び重点開発区域内の都市化地域を支柱とし、軸線上にあるその他都市化地域

を組み入れて構成され、中国の大部分の人口と経済総量を包含するものである。その中

で、鄭州は横のランドブリッジと縦の北京・ハルビン‐北京・広州ラインが交差する要

衝に位置している。(図表 9)

【CCUD レポートから】

23

鄭州は中国の地理的な中心であり、全国的に重要な鉄道、航空、高速鉄道、電力、郵

便・電信のハブとなる都市である。全国的な普通鉄道と高速鉄道のネットワークの中で、

唯一「二つの十字」の中心であるが、合肥から太原、済南、万州につながる高速鉄道の

乗客専用線が建設されれば、将来的には鄭州を中心とする「米」字型の高速鉄道網がで

きあがる。鄭州新鄭国際空港は、国内外の乗客・貨物用で 143 路線が開通しており、ア

22

国務院「全国主体功能区规划」2010 年 12 月 21 日

23 CCUD レポート「智慧城市建设情况―河南省郑州市」2016 年 1 月 13 日

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45

フリカ、ラテンアメリカを除く世界の主要地をカバーしている。国内では、全国の 3分

の 2の主要都市に 1.5 時間以内で行ける。

鄭州市は、中国の交通・物流において極めて大きな優位性を獲得している。それを支

えるのは、国家第 1 期越境 EC 試点都市及び国家級インターネット直通主幹都市への指

定、鄭州航空港実験区建設の国家戦略への昇格、鄭州―欧州間の列車定期運行化や肉類、

薬品、自動車等各種貨物に関する国内・国際ポート機能の整備である。

鄭州市は、歴史的に著名な商業地であり、1997 年には国家商業貿易改革試点都市、

2010 年には国家サービス業総合改革試点都市となった。現代物流、会議・展示会、文

化・観光、サービス・アウトソーシング等の現代サービス業が相当な勢いで発展してい

る中部地区最大の物資取扱地である。毎年、何百という全国性、地域性の大型商業イベ

ントが開催されており、「中国のベスト会議・展示会都市」、「中国で最もポテンシャル

の高い会議・展示会新鋭都市」と称されている。なかでも、鄭州商品取引所は、三大全

国性商品取引所の一つとなっているが、中国最初の商品先物市場であり、「鄭州価格」

は、一貫して世界の食糧生産と流通の指導価格である。鄭州新鄭総合保税区は、中部地

区唯一の総合保税区であるが、総合保税区、保税物流センター、輸出加工区は、鄭州市

における対外開放三大プラットフォームである。

鄭州市は、中部地区における重要な工業都市である。2014 年、鄭州都市区建設三年行

動計画が成功裏に終了し、「三大主体(新型都市化を先頭に立て、現代産業体系を構築

し、グリッド単位で住民の力で事業推進できる長期的効果を生むメカニズムの建設を全

力で推進する)」事業

24

は著しい成果を上げ、鄭州の経済・社会は驚くほどの変化を遂げ

た。鄭州は、電子情報、自動車とその装備の製造という二大戦略を支える産業、新材料、

生物・医薬という二大戦略新興産業を確立した。同時に、現代食品製造、アルミ及びア

ルミ精錬深加工業、住まいとブランドファッション製造業という三大伝統優勢業界にお

いて改造とレベルアップを実施した。

次に、中原経済区は、ハイテク産業、先進的製造業及び現代サービス業の基地、エネ

ルギー原材料基地、総合的な交通ハブ及び物流センター、科学技術イノベーションセン

ター、中部地区の人口と経済の集積地といった機能が求められている。なかでも、鄭州

を軸に据えた発展目標が注目される。

25

①鄭州を中心として周辺の三層都市群【核心層(鄭州・開封一体化地域)、密着層(半

時間経済圏都市)及び波及層(一時間経済圏都市)】を一体で発展させるメカニズ

ムを整備する。

24

「郑州“三大主体”工作打开都市区建设新局面」2013 年 1 月 21 日、中原網―鄭州日報

25

注 18 に同じ

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46

②鄭州の先進的製造、科学技術・教育、商業・貿易の物流、金融サービスといった機

能を強化し、重点的に鄭州・開封新区を建設し、鄭州・開封の一体化を推進するこ

とを通じ、地域経済の中心地であり、全国的にも重要な交通ハブを建設する。

③「鄭州・開封・洛陽」(各都市の位置関係は図表 10)工業回廊やその他の産業地帯

を建設し、産業間の分業と連携を強化し、中原都市群産業集積区を形成する。

以上のように、鄭州市は、地域の発展を牽引するリーダーとしての重責を担っている

と言える。

(1-2)河南省における鄭州市の重要性(1-2)河南省における鄭州市の重要性(1-2)河南省における鄭州市の重要性(1-2)河南省における鄭州市の重要性

鄭州市は河南省の省政府所在地であり、省の政治、経済、文化、金融、科学・教育の

中心である。1928 年 3 月に市となり、現在は市内に 6 区 5 市 1 県及び鄭東新区、鄭州

ハイテク産業開発区、鄭州経済技術開発区(鄭州新鄭総合保税区)がある(図表 11、

12)。全市の総面積は 7,446 ㎢、うち 6 区総面積は 1,010 ㎢(市街区面積 382.7 ㎢)で

ある。

26

26

注 19 に同じ

図表 9 全国都市化戦略「両横三縦」のイメージ図

(出所)各種資料より筆者作成

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47

建業集団の胡葆森董事長によれば、河南省は次のような特徴がある。

27

� 人口は中国一の 1億 660 万人(2014 年末)。15~20 年後には 1億 3,000 万人に達す

る見込み。国単位で見れば、世界で 12 位に相当。120 以上の県クラス都市がある。

� 交通の要衝。河南省は中原に立地する優位性がある(図表 9)。省内の高速道路総延

長距離は 6千キロに達して全国一であり、イギリス一国を超えており、120 以上の

県クラス都市はすべて高速道路で結ばれている。鄭州は東西南北の高速鉄道(北京

~広州、蘭州~上海)の交差点である。ここ 10 年で中国の高速鉄道も急ピッチで

敷設され、最も長いのが北京~広州間であり、2013 年に全線開通した。2012 年末

27 鄭州市で開催された日中スマートシティ建設交流会における建業集団胡葆森董事長の発

言から。2015 年 7 月 13 日

図表 10 河南省各都市の常住人口(2014 年)

(出所)各種資料より筆者作成

Page 49: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

48

には鄭州~西安が開通。鄭州~江蘇省徐州間が 16 年 7 月に開通し、鄭州に十字型

にクロスする高速鉄道のハブができあがる。杭州~香港の高速鉄道も 16 年末に開

通する。また、徐州は北京~上海の高速鉄道ともつながるので、鄭州~徐州~南京

~上海と接続される。これにより、鄭州から高速鉄道 3時間圏内の人口は 5 億人に

達する。

� 河南省が全国に冠たるのは、人口、交通、そして農業である。農業生産高は全国の

9 分の 1 であり、小麦生産量は 40%を占める。このことから、河南省は中国の経済

社会発展において特殊なポジションにあり、都市化においては、今後の主戦場にな

るだろう。

� 李克強総理は、6 年半にわたり河南省を指導したが、中原の都市化群は彼が省長在

任中に提起。習近平総書記の本籍は河南省南陽であり、祖父は 1930 年代に河南省

南陽から陝西省富平に移った。二人とも河南省をよく知っている。

図表 11 鄭州市内の各市・県の常住人口と面積(2014

(注)鄭州市区の人口 390.1 万人、面積 1,010 ㎢ は、中原、二七、管城、金

水、上街、恵済の 6区合計。上街区のみ飛び地

(出所)各種資料より筆者作成

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49

(1-3)鄭州市の経済概況(1-3)鄭州市の経済概況(1-3)鄭州市の経済概況(1-3)鄭州市の経済概況

鄭州市の主要経済指標(2014 年)は図表 13 の通り。河南省内での比重を見ると、20%

前後を占める指標として、GDP、全工業企業付加価値、固定資産投資、社会消費品小売

総額、新規認可外資企業、観光総収入、外国人観光客数等が挙げられる。不動産開発投

資額及び住宅開発投資額に至っては、それぞれ 39.8%、35.8%にも達している。楊東方

鄭州市規劃局長が言うように、鄭州市の就業、居住、生活面において、それだけのニー

ズが生じている

28

ことの証左である。

鄭州市の都市部居住者一人当たり可処分所得は 29,100 元(2014 年)で、全国平均

28,800 元よりは高いものの(図表 13)、上海の 48,800 元、北京の 48,500 元とまだ大き

な開きがある

29

楊局長によれば、鄭州は中国八大古都の一つで日本の奈良に相当し、8,000 年前には

既に都市として存在していたほどの歴史がある。2014 年の総人口は 930 万人、GDP6,800

億人民元で、中国大都市の中では平均レベルの都市である。

また、河南省の都市化率(14 年末 45.2%)は、全国平均(14 年末 54.77%)を一貫し

28 鄭州市で開催された鄭州市関係政府機関との交流会における発言から。2015 年 7 月 13 日 29 「中国統計年鑑 2015 年版」2015 年 9 月、中国統計出版社

図表 12 鄭州市内区の常住人口と面積(2014 年)

(出所)各種資料より筆者作成

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50

て下回っているが、最近 10 年間(2005~2014 年)の推移を見ると、伸びが早くなって

おり、全国平均との差が 3 ポイント縮小し、農村人口の都市部への移動が進んでいる

(そんな中で、鄭州市は 68.3%と高い数値を示し

30

、都市化をリードする突出した存在

になっている)。

現在、鄭州市の市街区はすでに飽和状態にあり、今後の都市計画としては、鄭東新区

(図表 12)をはじめ、西部、南部にも新区を建設し、更に郊外を外延的に拡大し、市域

面積 7,446 ㎢(図表 12 全体。6市区から成る「鄭州市」と 5つの県級市、1つの県で構

成されている)の範囲内でバランスのとれた発展を図り、人口は 938 万人(14 年)から

最終的には 1,500 万人規模とする大都市建設を目指す。

また、報道によれば、2015 年 1 月 7 日に開催された中国共産党鄭州市第 10 期委員会

第 10 次全体(拡大)会議において、都市建設の重点 7 項目が決定されている。

31

①航空港実験区の発展、②諸改革の全面深化、③人間中心の都市化を核心とした新型

都市化の質向上と速度向上、④現代産業システムによる発展方式の転換、⑤都市競争力

の持続的レベルアップ、⑥大気汚染対策を重点とする環境改善、⑦民生改善による社会

事業の協調発展。

さらに、鄭州市には次のような優位性がある。

32

� 2015 年 12 月 14、15 日、上海合作組織メンバー国総理会議が鄭州で開催された

が、その理由は、河南省が中国古代の政治・経済・文化の中心地であり、中国の

歴史・文化・文明を理解する上で最高の舞台であるため。

� 鄭州は「シルクロード経済帯」の国々をつなぐ鉄道の中継点であり、経済帯建設

において突出した位置づけ。

� 河南省は中部六省の中で GDP 一位。その先頭に立つ鄭州は、中部地区で最も潜

在力のある都市の一つ。

30 鄭州統計信息網「郑州市 2014 年国民经济和社会发展统计公报」2015 年 6 月 10 日

31 大河網「郑州都市区建设新三年行动计划粲然开启」2015 年 1 月 8日

32 「那些“国际范儿”的中国城市」2015 年 12 月 16 日、新華網

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項目

前年比増減

(%)

河南省内で

の比重(%)

GDP 6,783.0 億元 9.5 19.4

うち第一次産業 149.5 億元 3.1 3.6

  第二次産業 3,771.1 億元 10.2 21.1

  第三次産業 2,862.4 億元 8.8 22.2

全工業企業付加価値 3,349.8 億元 9.8 21.1

全市建築業総生産額 2,713.3 億元 19.8

建築施工企業施工面積 17,751.6 万㎡ 24.6

竣工建築物面積 5,240.2 万㎡ 27.9

固定資産投資 5,259.6 億元 20.1 17.5

インフラ投資額 1,258.5 億元 29.3

不動産開発投資額 1,743.5 億元 20.6 39.8

 うち住宅 1,176.9 億元 29.3 35.8

商品家屋施工面積 10,574.2 万㎡ 8.8

 うち住宅 6,988.9 万㎡ 10.1

商品家屋新規着工面積 2,749.3 万㎡ -2.3

 うち住宅 1,954.7 万㎡ -1.1

商品家屋竣工面積 1,889.4 万㎡ 66.1

 うち住宅 1,122.9 万㎡ 47.6

家屋実際販売面積 1,591.9 万㎡ -1.8

上記販売金額 1,205.2 億元 3.7

社会消費品小売総額 2,913.6 億元 12.7 21.1

対外輸出入総額 464.3 億ドル 8.6 11.6

 うち輸入 197.7 億ドル 11.9 8.2

   輸出 266.6 億ドル 6.4 16.9

    うち米国 110.3 億ドル 20.1

       EU 44.2 億ドル -29.7

       韓国 5.3 億ドル 86.7

       ロシア 3.8 億ドル 50.9

       日本 28.9 億ドル 12

新規認可外資企業 66 社 12 20.1

契約外資利用額 14.5 億ドル -26.9 9.7

実際利用外商直接投資額 36.3 億ドル 9.3

観光総収入 892.6 億元 11.4 20.4

鄭州への観光客数 7,766 万人(延べ) 10.6 17

 うち外国人 45.1 万人(延べ) 2.7 19.9

地方財政総収入 1,268.6 億元 13.7

地方公共財政予算支出 918.6 億元 12.6

都市部居住者一人当たり

可処分収入 29,095 元 9.3

河南省 24,391 元 8.9

中国全体*1 28,844 元 9.0

数値

(出所)・鄭州市データは「鄭州市2014年国民経済和社会発展統計公報」2015年6月10日、

鄭州統計信息網

・河南省データは「2014年河南省国民経済和社会発展統計公報」2015年3月6日、

河南省統計網

・中国全体*1は「中国統計年鑑2015年版」2015年9月、中国統計出版社

図表 13 鄭州市の主要経済指標(2014 年)

Page 53: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

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(2)鄭州市(2)鄭州市(2)鄭州市(2)鄭州市におけるにおけるにおけるにおけるスマートシティ建設スマートシティ建設スマートシティ建設スマートシティ建設の現状の現状の現状の現状

CCUD は、鄭州市のスマートシティ建設の現状を次のようにレポートしている(2-

1から2-4までを含む)。

33

鄭州市は、2007 年からスマートシティ建設を開始して以来、デジタル都市の建設を

安定的に進めてきた。鄭州を始めとする省レベルの地理空間情報公共サービスプラット

フォームは基本的に完成し、縮尺 1 万分の 1 データベースのカバー率は省全体の 90%

以上に達している。地理情報公衆サービスシステム、都市・農村規劃情報システム、不

動産ナビシステム、土地データ管理情報システム、交通情報管理システム、公共交通ス

マートコントロールシステム、労働保障観察ダブルネットワーク化管理情報システム、

環境地理情報システム、交渉管理応用システム、教育地理情報システム、デジタル都市

管理応用システム、警備保障応用システム、観光地理情報システム等の 15 分野で応用

システムを構築済みである。

経済構造転換、都市管理、民生サービス等の課題について、基礎の強化と応用の促進

を軸として、スマート化のためのインフラ建設と基礎となるリソースの調整・共有を強

化し、スマート化の応用レベルを引き上げ、これまでの地理測量情報部門が地理情報を

提供する公共プラットフォームから、各部門に対しそれぞれが必要とするパーソナルな

情報サービスを提供するプラットフォームを一歩ずつ構築してきた。政府の事務、企業

管理及び民衆生活のために利便性を提供し、政府の業務効率と社会・経済への効果、民

衆のQOLを大きくアップさせた。

鄭州はデジタル都市建設をベースとして、徐々に「スマート鄭州時空情報クラウドプ

ラットフォーム」の構築を進めているが、これはスマート交通、スマート観光、スマー

ト社会管理、総合市内状況サービスシステム、公衆サービスシステムという 5つのモデ

ルサービスシステムを含んでいる。スマート交通システムでは、「車連網(Internet of

Vehicles)」を立ち上げ、交通データの深度分析と利用を実現する。スマート観光では、

ネット上でバーチャル観光、都市自動ガイド等を実現する。スマート社会管理では、社

会の精緻な管理を実現する。総合市内状況サービスシステムでは、リソースの共有、部

門を跨ぐ情報の総合化を実現し、重大な活動を保障するサービス等の面で役割を発揮で

きるようにする。公衆サービスシステムでは、モバイルネットワークを応用し、公衆が

スマートシティの建設成果、例えばリアルタイム情報検索・問合せや高齢者介護等のサ

ービスを受けられるようにする。

33 注 19 に同じ

Page 54: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

53

(2-1)各分野のスマート化(2-1)各分野のスマート化(2-1)各分野のスマート化(2-1)各分野のスマート化

1)交通

「インターネットプラス」による交通サポートプログラムを実施し、都市公共交通ス

マート化試点プロジェクトを推進する。公共交通企業の「省直轄市及び省直接管理県(市)

スマート公共交通検索建設モデル」を使い、公共交通サポート情報サービスを提供する。

「公共交通優先」モデル都市建設プロジェクトを推進するなかで、都市公共交通の IC

カード化を普及させ、市域を跨ぐ公共交通の IC カード相互利用を進める。

2)医療

住民の健康ファイルデータベース、電子カルテデータベース、全人口情報データベー

スを整備し、住民健康カードを全面的に普及・応用する。公衆に対し、健康管理、医療

相談、公共衛生、予約診療等の総合的なワンストップサービスを提供する。

3)観光

スマート観光公共サービスプラットフォームを構築し、観光客向けに相談・問合せ、

商品推奨、旅程計画、電子チケット、宿泊予約、観光地の観光客統計発表、観光地ガイ

ド等の観光情報一体化サービスを提供する。洛陽、鄭州の国家スマート観光試点都市等

の建設を加速し、スマート観光関連の標準を制定する。

4)社会保障

ネットでの社会保障手続き、個人の社会保障問合せ、地区を跨る医療保険精算等の社

会保障住民サービスを提供するとともに、都市と農村をカバーし、多種類の保険や地域

を跨いで接続できる全住民社会保障情報サービス体系を構築する。

5)教育

ブロードバンドの「学校間通路」、良質なリソースの「クラス間通路」、ネットラーニ

ングの「人同士の通路」に関する整備を加速し、「河南省教育クラウド」公共サービス

プラットフォーム及び教育管理公共サービスプラットフォームを構築することにより、

教育資源の適切な利用と管理サービス能力の向上を促進する。スマートキャンパス試点

を展開し、スマート化したキャンパス群を建設する。さまざまな人々を対象に、大型の

オープンネットワークカリキュラムでの研修を行い、ネットによる教育サービスの発展

に力を注ぐ。

6)保安

公共スペースにおける映像監視設備をさらに整備し、映像監視専用ネットワークの建

設を強化するとともに、省全体の公共安全映像監視システムネットワークの共有を進め

る。飛行場、鉄道駅、旅客ターミナル、地下鉄や公共交通のステーション、学校の門、

病院、大型商業エリア、娯楽施設等の公共の場所における映像監視設備の建設を強化し、

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映像の主体的応用、高度応用ができるメカニズムの建設を全面的に推進する。

(2-2)鄭州のスマートシティ情報サービスプラットフォームの構築(2-2)鄭州のスマートシティ情報サービスプラットフォームの構築(2-2)鄭州のスマートシティ情報サービスプラットフォームの構築(2-2)鄭州のスマートシティ情報サービスプラットフォームの構築

スマートシティの情報システムは、強大な計算能力、感知能力、データ応用能力が必

須である。クラウドコンピューティング、IoT、セマンティックネットワークという三

大技術の発展は、スマートシティ建設に実行可能性を与える。こうした技術の応用やキ

ーテクノロジーの研究には、重要な理論的意義と実用価値がある。

スマートシティ情報サービスプラットフォームは、都市に対し整合的なスマートソリ

ューションを提供する。業界情報のスマート化、サービスのスマート化、総合的情報の

集積、プラットフォーム構築の簡便化、環境指向 IoT のサポート等が注目される。

情報が知識へと変わる過程は、4層の体系構造になっている。センサー層から始まり、

ネットワーク層、プラットフォーム層、そして応用層である。センサー層は、電子ラベ

ル、カメラ、人、コンピューター、携帯電話、飛行機、自動車等の情報を一定の方式で

取り出し、総合的な識別と感知を行う。ネットワーク層は通信網、インターネット、IoT

同士の情報交換であり、IoT 技術は地球上に存在する物体を識別し連結し、インターネ

ット技術は異なる種類のネットワークを連結する。IoT 技術を応用すれば、ネットワー

クでのデータの送受信量と保存量は飛躍的に増大する。ビッグデータ問題を解決するた

めには、高速平行計算能力と膨大なストレージサービスを提供できるクラウドコンピュ

ーティング技術の登場が必要であり、IoT 技術はそれを保証するものである。プラット

フォーム層は、各種のテーマ別データベースを構築する。例えば、空間地理情報データ

センター、各種部門情報データセンター、都市公共情報データセンター、都市応用情報

データセンター等であり、これらはネットワークを通じて各種のボトム情報を効果的に

集計する一方、膨大なデータから掘り起こし技術により知識を取り出す。応用層は、下

層から提供された情報を処理し、得られた知識をフィードバックしながら各種の応用、

例えばスマート環境、スマート経済、スマートサービス、スマート人文、スマート民生

等、に供する。

(2-3)鄭州のスマートシティの目標(2-3)鄭州のスマートシティの目標(2-3)鄭州のスマートシティの目標(2-3)鄭州のスマートシティの目標

2013 年 1 月、鄭州市は住建部が実施した国家スマートシティ試点の第 1 期(2012 年

度分)90 試点の一つに選ばれた

34

。同年 4月、鄭州市で「鄭州市スマートシティ建設マ

スタープラン」の専門家審議会が開催され、張建慧副市長(当時)が出席している。ス

マートシティとは、都市の全面的デジタル化を基礎として立ち上がる「可視化され、測

34 注 13 に同じ

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55

定可能となったスマートな都市管理運営モデル」であり、「情報化と都市化が協調して

進む最良モデル」とされている

35

。これを受け、同年 9 月には鄭州市政府が「スマート

シティの建設加速に関する実施意見」を発出している

36

CCUD レポートによれば、「河南省のスマートシティの健全な発展を促進する事業案

(2015―2017 年)」において、スマートシティの建設推進案が明らかになっている。省

政府所在都市として、スマートシティ建設について多くの分野で全省を牽引している。

同事業案に基づき、「スマートシティ時空情報クラウドプラットフォーム」の構築で

は、デジタル県・区の地理空間フレーム建設プロジェクトを実施し、鄭州等の同プラッ

トフォーム試点の構築と応用を加速し、2016 年年末までにその試点を完成させる。

都市計画・建設管理情報化については、鄭州等のスマートシティ試点建設を加速し、

実績と効果を上げていく。同時に、都市管理システムのデジタル化を加速し、民生や都

市インフラに関わる水関連、地下空間、地下共同溝、グリーン建築等の分野におけるデ

ジタル的応用とスマートシティの有機的結合を進める。

工業化と情報化の強固な融合を図り、鄭州での人材・産業基地等のソフトパーク建設

を加速し、組込みソフトやアプリケーションソフト等の製品を力強く発展させる。

e コマースにおいては、鄭州の越境 EC 試点建設を加速し、国家級の越境 EC 総合試験

区の設立を目指す。同時に、伝統的小売企業にはネットショップ、オンライン・オフラ

イン体験センター等の建設を促し、e コマース、テレフォンショッピング、都市配送を

一体化させた城市内ショッピングモデルを発展させる。

このほか、河南省は「情報恵民試点モデル」を実施しており、鄭州、洛陽、済源の「情

報恵民国家試点都市」及び鄭州の「国家次世代インターネットモデル都市」、「国家 IoT

重大応用モデルプロジェクト区域試点」等のモデルプロジェクトの建設を急いでいる。

同時に、「ブロードバンド中国モデル都市(都市群)」や「ブロードバンド中原モデル県

(市)創設」等の事業も鋭意推進している。鄭州は、国家級インターネット基幹連結点

としての総合的な牽引役としての役割を果たすとともに、国際情報専用ラインも建設す

る。

(2-4)鄭州スマートシティ建設の課題(2-4)鄭州スマートシティ建設の課題(2-4)鄭州スマートシティ建設の課題(2-4)鄭州スマートシティ建設の課題

1)情報の孤島

展示、宣伝、交流、プラットフォームが不十分なため、多くのスマートシティ建設が

「孤島」状態にある。効果的な組織化や管理が欠けており、開発と利用も不足が目立つ。

データと業務が結合した高度な応用ができていない。

35 鄭州市政府「郑州市召开智慧城市建设总体规划专家评审会」2013 年 4 月 2 日 36 「2015 年,郑州建成国家智慧城市示范区」2013 年 9 月 10 日、鄭州晩報

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56

2)情報の共有化

情報化を進めるにはデータの集積が肝要であるが、情報がシステム同士の業務フロー

の中で共有できていないため、現段階では集積が困難である。都市の情報共有があまり

できていないため、政府による総合的政策決定に対し、オンラインでのワンストップ情

報総合サービスができていない。

3)統一性とシステム性

産業がレベルアップするためには、情報を疎通させ、高度な業務連携を行う必要があ

るが、それを十分にサポートできる情報化環境になっていない。

((((3333)鄭州市モデルプロジェクトの推進体制と対象エリア概要、プロジェクトにより解)鄭州市モデルプロジェクトの推進体制と対象エリア概要、プロジェクトにより解)鄭州市モデルプロジェクトの推進体制と対象エリア概要、プロジェクトにより解)鄭州市モデルプロジェクトの推進体制と対象エリア概要、プロジェクトにより解

決すべき課題決すべき課題決すべき課題決すべき課題

((((3333-1)推進体制-1)推進体制-1)推進体制-1)推進体制

鄭州市における都市開発の主要な推進者は、政府と民間の両輪である。

1)政府の関係部局

2015 年 7 月 13 日、鄭州市で開催された鄭州市関係政府機関との交流会における鄭州

市側の出席者から、主な関係部局が分かる。

鄭州市人民政府の規劃局、発展改革委員会、都市管理局、軌道弁公室(及び鄭州市軌道

公司)、建設委員会、財政局、不動産管理局、民政局、外事弁公室。鄭東新区管理委員

会。(順不同)

2)民間

河南省における最大のデベロッパーである建業住宅集団(中国)有限公司(以下「建

業集団」)が鍵を握っている。建業集団 胡葆森董事長の話をもとに、同集団の概要、戦

略等をまとめた。

37

<発展戦略>

建業集団の設立は 1992 年。「中原に根を張り、人々に幸福をもたらす」を核心的価値

観としながら、河南省域内に経営を集中する「省域化発展戦略」が特徴。都市の 4階層

(省級→地方級市→県→鎮)順に事業展開する戦略であり、河南省内 120 都市のうち、

既に 40 都市に展開中。15 年末までには約 50 都市へ拡大し、最終的には全都市への事

業展開を目指す。2030 年までに、全省で 15%のシェア獲得を狙う。

これまでに手掛けた物件は 10 万件を超え、建設面積は 1,300 万㎡に及ぶ。建築中面

37 建業集団胡葆森董事長の鄭州市で開催された日中スマートシティ建設交流会における発言(2015 年 7

月 13 日)及び「スマートシティ建設における中日企業間協力」「日中経協ジャーナル」(2015 年 9 月号)

への寄稿に基づく

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積は500万㎡あり、毎年2万件を完成させるペースで、15年末には竣工面積累計が1,500

万㎡を超える。今年の売上高は 30 億ドルの見通しで、納税額は 4 億ドル。

<日本との協力希望分野>

①河南省で1つか2つの都市を選び、そこをスマートシティのモデルケースとする。

②住宅産業化の面では、生産基地を構築する予定のため、専門家を派遣し日本の住宅

企業で視察や研修を行う。

③資金運用面では、2012 年に香港で 3 億米ドルの債券を投資銀行(野村証券も参加

メンバーの一つ)のサポートを得て発行した。

④ここ数年、鄭州は地下鉄建設を急ピッチで進めているが、同集団の不動産開発もこ

れとリンクしている。日本の設計関係者や投資企業と協力したい。

<中国スマートシティ発展連盟>

建業集団は、2014 年 4 月に中国城市・小城鎮改革発展中心(CCUD)のリーダーシップ

により創設された「中国スマートシティ発展連盟」の発起人。同連盟は、中国の新型都

市化の発展方針に沿い、市場化メカニズムを実践し、スマートシティ関連の施策管理、

社会管理、公共サービス、情報の民生活用等の分野における応用を推し進め、相互補完

で非競争な協力メカニズムを構築し、連盟メンバーと都市の間をつなぐ交流プラットフ

ォームを作り上げるもの。国際協力のための交流会やフォーラムも開催。

<日本との交流実績>

2015 年 5 月、東京で開催された MIPIM JAPAN(不動産プロフェッショナル国際マーケ

ット会議)に参加。会議では、中国と日本それぞれの業界発展情勢及び市場の状況比較

に関する情報を日本の不動産関連企業と共有した。また、建業集団と日建設計の協力意

向書に署名。

2015 年 5 月、建業集団は日建設計と河南省鄭州で「TODとスマートシティ建設シ

ンポジウム」を開催。我々は鄭州軌道公司、鄭州土地儲備センター、鄭州新区建設投資

公司等の機関に参加を呼びかけ、日建設計と友好的な交流を行った。

((((3333-2)モデルプロジェクト-2)モデルプロジェクト-2)モデルプロジェクト-2)モデルプロジェクト対象対象対象対象エリアの概要とエリアの概要とエリアの概要とエリアの概要とプロジェクトによりプロジェクトによりプロジェクトによりプロジェクトにより解決すべき課解決すべき課解決すべき課解決すべき課

題題題題

1)鄭州市の構想

2015年 7月に鄭州市で開催された鄭州市関係政府機関との交流会における張建慧 鄭

東新区管理委員会書記及び楊東方 鄭州市規劃局長の発言から鄭州市の構想を整理した。

<新型都市化の理念>

鄭州市が進める新型都市化の核心理念は「人間本位」。人々の為に役立つサービスを

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58

提供する。この理念に沿って都市建設を進めると同時に、産業の発展も促す。各地域に

おける地理的条件、基本的理念、投資コスト、産業構造等に立脚し、最適な都市開発を

検討していく。

<インフラ投資の資金回収>

固定資産投資には 2 タイプある。一つは道路や橋梁建設等の 100%公共投資。もう一

つは汚水処理や浄水供給など、公共ではあるが資金回収が可能な機能インフラ投資。そ

の他の建設プロジェクトは、すべて社会的な投資。

<住宅>

①保障性住宅。救済住宅的な意味も持ち、中低所得層、生活困難層向けの公共賃貸住

宅のみを整備。民政局が定める基準を満たした者が対象で、一戸あたり面積 40~60 ㎡。

②分譲住宅。不動産取引の大半を占め、市場によって取引されるもの。平均で一戸あ

たり 90 ㎡程度の面積。

<スマートシティの現状と課題>

� 鄭州の課題として、グリーン、エコ、低炭素、スマート発展計画の一部の着手が遅

れている。TODを基礎とした開発モデルの構築が必要。また、生活の利便性、就

業と居住の近接化、教育・衛生・医療・養老等を含めた良好なインフラと公共サー

ビスの整備など、快適な環境作りのため様々なプロジェクトを実施。

� 鄭州のスマートシティ建設、低炭素都市の整備は模索段階。自然条件、地理条件、

気候条件、産業面での条件等を考慮したスマートシティ建設の指標体系を模索して

いる。一定の経験を持つ日本側と協力し、評価基準、建設管理等の体系を構築でき

れば大変意義深い。天津市とシンガポールの実践は、地域の特性を活かしている。

� スマートコミュニティ建設を類型化して推進していくが、まだ系統化されていない。

江南地域の都市や天津に比べ、鄭州市は立ち後れている。

� 鄭州市が解決すべき課題は、都市交通問題、都市化推進過程における省エネ化、汚

染処理の問題等で、日本企業との協力に期待。問題解決に向け、都市設計部門に対

する教育・研修等を実施し、対策を進める。また、都市計画においては、文化財保

護も考慮しなくてはならない。

2)鄭東新区の構想

鄭州市関係政府機関との交流会における張建慧 鄭東新区管理委員会書記の発言及び

建業集団 胡葆森董事長の日中スマートシティ建設交流会における発言(いずれも 2015

年 7 月に鄭州市で開催)と「日中経協ジャーナル」(2015 年 9 月号)への寄稿「スマー

トシティ建設における中日企業間協力」に基づき、鄭州市鄭東新区の構想を整理すると

以下の通りである。

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59

<マスタープラン>

近年、鄭州市は都市計画及び建設において日本との協力に力を入れている。その中で

もシンボリックな出来事は、日本の著名な建築家である黒川紀章氏が鄭東新区のマスタ

ープランを手がけたこと。2002 年、当時の河南省の指導者である李克強省委書記・省長

が鄭東新区の CBD 初動区 30 ㎢の計画を決定したばかりで、鄭州市政府から建業集団に

最初の開発企業として参入するよう要請があった。政府と建業が協力協定を締結すると

き、黒川氏も都市の設計者として調印式に立ち会った。黒川氏が中国で設計した唯一の

住宅社区が鄭州東区の連盟新城であり、プロジェクト建設計画と第 1 期建築設計を手掛

けた。鄭東新区の建設は、今では中国の新型都市化の実践における成功事例となってい

る。

<固定資産投資>

鄭東新区の固定資産投資は、100 ㎢の開発済み面積に対し 3,000 億人民元。うち、政

府による直接的・誘導的投資は 700~800 億人民元。社会投資は市場機能に委ねている。

誘導的投資の機能インフラ投資は、投資と資金回収がほぼバランス。政府の直接投資は、

市場から資金を調達しており、完成した公共施設のメンテナンスや緑化事業等は、国の

基準に則して実施し、具体的には民間に委託。受託企業はメンテナンス事業において資

金投入を行うと同時に、広告設置等で収益を得る事も可能。

<産業と人材>

鄭東新区は、金融サービスを牽引役とする現代サービス産業の重点発展地域であり、

ハイエンド産業エリアでもある。就業人口は 30 万人以上だが、新たに 10 万人以上の新

卒者、ハイレベル人材 2 万人、農民 6万人の都市化を推進するにあたり、特定機能エリ

アを整備しているが、なかでも金融業が強化され、現在 245 の金融業社(商品の研究開

発、ハイエンド金融業、一般的な金融サービス業、金融関連のバックアップセンター等)

が進出している。人材を引きつけ、より活力のある都市作りに努力している。住宅の超

高級・大面積物件は、鄭東新区に集中して建設されている。

3)建業集団の構想

建業集団 胡葆森董事長の日中スマートシティ建設交流会(2015 年 7 月に鄭州市で開

催)における発言に基づき、同集団のスマートシティ構想を候補地ごとに整理してみる。

<巩義市回郭鎮>

鄭州市内の西端にあり、洛陽市に近い(図表 11)。巩義市は、河南省直轄の県行政改

革試点市になっている。

人口は約 10 万人で、全体的な改造を計画している。産業構造もしっかりしている。

河沿いの都市であり、環境に恵まれている。CCUD と協力して小都市である鎮級市のモ

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デル(注:都市化の一環として、行政ランクを鎮から市へと昇格させる)推進を準備し

ている。

2014 年、回郭鎮政府と協議書を締結するとともに、上級所管政府であり全国百強県

の上位にランクされている巩義市(注:鄭州市に属する県級市であるが、河南省政府直

轄のため他の県級市より付与されている権限が大きい)とも回郭鎮の規劃、設計、開発

建造に関する協議書を締結した。

回郭鎮政府によれば、鎮の総面積は約 50 ㎢、行政村が 21 あり、常住人口は 11.4 万

人で、居住地が集中しているため、都市化率は 75%以上と高い

38

2013 年 7 月、建業集団は巩義市と戦略的提携協議を締結した。内容は、巩義市の産

業集積区(所在地は回郭鎮)、中心市街区において、新型コミュニティ(社区)、ハイエ

ンド住宅、特色ある商業街を建設し、居住、余暇、観光、ショッピング等の多様な機能

を一体化させる総合プロジェクトである。そこを巩義市の新たな経済発展、商業金融及

びハイエンド住宅の中心地とする。

39

<河南省許昌市鄢陵県>

鄭州から車で 1 時間。建業集団の緑色基地(面積 300 ha)があり、オランダから切り

花の技術を導入して大量の苗木を植えている。本基地内のコミュニティ(30 ha)を高

齢者向けコミュニティにする計画。日本は本分野での経験があるので、計画、設計、管

理等について学びたい。大規模な高齢者住宅についても、日本との協力を希望。

<鄭州市内社区>

一つの社区(コミュニティ)をスマートコミュニティのモデルケースとして選択。

38 巩義市回郭鎮政府「古都名鎮―回郭鎮」。データの年次は明記されていない。

http://www.huiguozhen.gov.cn/lanmu.aspx?id=1 39 「巩义“联婚”建业集团 推进新型城镇化建设」2013 年 7 月 27 日、鄭州日報

1 鄭東新区の CBD 核心区

2 鄭東新区の国際コンベンション

センターと超高層ホテル

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((((4444))))鄭州鄭州鄭州鄭州市市市市におけるにおけるにおけるにおける日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性日本企業のシステム・ソリューション活用の初歩的可能性と課題、と課題、と課題、と課題、

障害障害障害障害

≪検討結果(要点)≫≪検討結果(要点)≫≪検討結果(要点)≫≪検討結果(要点)≫

鄭州市のスマートシティ建設は、デジタル化が一定の成果を見せているものの、日本

企業のシステム・ソリューション活用の可能性があると言えるのは、現時点では鄭州市

政府の関心が高く、大まかな構想として提示された次の2点である。

①TOD

a)鄭州東駅周辺:高速鉄道の停車駅。駅を中心とした交通、商業開発。

b)鄭東新区龍湖区:軽量軌道交通及び地下鉄、タクシー、公共交通等を戦略的に開

発し、人が集まる地域に。

鄭州市は、都市と交通の総合システム構築に関する訪日視察団派遣を計画中である。

日本側からは、軽量軌道交通等を含めた大規模開発は、下地部分を地方政府が行う

のが前提であること、日本側の協力案件のイメージはより小規模な街作りであること

を指摘した。

②グリーン、低炭素、エコシティ

鄭東新区の龍湖区をモデル地区として開発する計画。

日本側からは、ファシリティについてのライフサイクルコストでの評価を希望する

とともに、エコシティの基準や評価システムは、これらのみを先行して作った場合、

実施地域での特性に対応しきれなくなることを懸念すると指摘した。

≪今後の見通し≫≪今後の見通し≫≪今後の見通し≫≪今後の見通し≫

鄭州市政府及び企業関係者の説明及び意見交換を通じ、鄭州側のスマートシティ建設

に向けた強い意欲を知ることができた。15 年 7 月の調査訪問の後、日本企業がシステ

ム提案・技術提供等を検討できるような対象プロジェクト候補地を明らかにすることを

3 鄭州市内の建業集団建設現場

4 鄭州市内ショッピングモール

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目的として訪中調査を打診したが、内部調整を含めた模索段階という理由で実現しなか

った。具体的な案件形成までにはある程度の時間がかかりそうである。

一方で、こうした流れの場合、他の事例から推察すると、提示されるときは中国側が

既に内容や方式を固めてしまっており、日本側が提案できる余地や優良案件が残ってい

ないことが懸念される。そうした事態を避けるためには、鄭州側に日本の課題解決型ソ

リューションに関する啓蒙を継続することが肝要である。

鄭州は、地理的な重要性、高い都市化率、巨大な人口等の条件が揃っているだけに、

発展のポテンシャルが高く、スマートシティ市場としての将来性は期待できる。したが

って、中長期的には、先行する他地域のビジネスモデルを応用した協力プロジェクトを

立ち上げられる可能性が増大すると予想される。

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Ⅲ.政策提言Ⅲ.政策提言Ⅲ.政策提言Ⅲ.政策提言

1.1.1.1.提言検討提言検討提言検討提言検討に向けたに向けたに向けたに向けた試論試論試論試論(総論)(総論)(総論)(総論)

スマートシティ建設の難しさは、「最大利益の追求」と「効率化の最大化」という正

反対のテーマを抱える現代経済学の矛盾を最大限に体現するプロジェクトであること

にある。現代経済学の基礎となる費用対効果によってこの矛盾を解決するには、最大利

益と効率化のバランスをどこに求めることになり、最大利益と効率化そのものは限定的

にならざるを得ない。その限られた範囲の中で、プロジェクトに参加する供給者と受益

者双方の思惑を調整しなければならないところに、最大の難しさがあると言えるだろう。

このような矛盾を踏まえつつ、実際に協力を前に進めていくには、先ずはモデルとな

るスマートシティを1カ所でも作り出すことが肝要である。我々の(今次調査期間に限

定されない)最終的なターゲットはそこにあり、そのためには、日本でのスマートシテ

ィの取り組みの経験を基礎に、CCUD が推薦する候補地において協力できるコンセプト

やファクターを提示するプロセスが重要である。

そこで先ず指摘し得ることは、2012 年から続いてきた CCUD との日中スマートシティ

交流のなかで、最も重大な問題と思われたことの一つはスマートシティに対する考え方、

コンセプトが一致していないことであった。日本国内でもスマートシティのコンセプト

は一律ではない。北九州の産業エコタウン、横浜のみなとみらい、大阪駅前TODの取

組みも広義のスマートシティの範疇に入れることができる。政治体制、経済発展過程、

文化や習慣が異なる日本と中国との間では、認識が大きく異なるであろうことは容易に

想像できる。

そのようななかで 2015 年 1 月の柏の葉での交流会議を通して、「スマートシティ」の

総合的なコンセプトは「課題解決型の街づくり」と考えることが一つの共通認識となっ

た。これを受け、今回の調査業務における一つの重点は、スマート化で解決とすべき「課

題」を探究することにおかれた。この「課題」が具体化すればするほど、企業からの積

極的なソリューション提案を引き出しやすくなる。

また、都市建設における対象エリアの規模の大小の違いは明白である。日本の 26 倍

の国土面積、10 倍の人口を有する中国では、すべてにおいてスケールが大きくなるの

は仕方ない。例えば、中国の首都経済圏である京津冀は、日本の広域首都圏(1都7県)

と比べても面積では6倍近く、人口では約 2.5 倍も規模が大きい。一方で、経済規模

(2012 年)からいえば、京津冀は日本首都圏の三分の一程度、一人当たり GRP では

15%にとどまっている。このような状況では、日本でかつて行われたような鉄道の沿線

開発や駅前開発、産業立地を進めるにしても、規模が大き過ぎてイメージが湧かず、距

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離感がつかめない。

しかし、一人一人の人間の物理的な大きさや運動機能に大きな違いはない。このため

現段階では、技術的にも経済的にもスマートシティとして建設できるエリアの規模は限

られたものになるのが実情である。中国側が関心を寄せている柏の葉プロジェクトの面

積はわずか 272 万 9,000 平方メートルで、通州新城や運河生態城に比べ圧倒的に小規模

であることが分かる。また、東京都心でスマート化を進めている六本木ヒルズの敷地面

積は約 8 万 5,000 平方メートル、東京ミッドタウンは 10 万 2,000 平方メートルと、柏

の葉よりもさらに小さなプロジェクトである。

図表 14 京津冀/日本首都圏基本状況比較(2012 年)

また、柏の葉スマートシティの特殊性として、当該地が三井不動産所有のゴルフ場で

あったという初期投資段階の例外的な優位性がある。加えて、政府補助金や規制緩和等

が適用されている。

そこで、柏の葉のスマートシティの基本でもある「課題解決型まちづくり」というコ

ンセプトによるスマートシティ構築に対する日中協力を進めると同時に、既存の街のス

マート化の過程で、小規模でもできるところから協力を始めることも必要であろう。コ

ンパクト・スマートシティ建設の中で、先ずは実績を積み上げ、将来的にはそのコンパ

クト・スマートシティ同士を有機的に結合させ、より大きなスマートシティの全体最適

を創り上げるような工夫が必要である。

例えば、行政の財政資金による(地下鉄沿線開発や医療、教育システム等)公共事業

のスマート化に対する協力や、中国デベロッパーのコンパクト・スマートシティ開発事

業のコンセプト段階で、日本の経験を学びたいというニーズに応じてビジネス連携を開

始し、コンパクト・スマートシティ・モデルにおけるビジネス協力の実績をつくり、将

来的には全体最適の共同事業化の仕組みの構築に近づけていくといった工夫である。

面積

万㎢ 相手比 万人 相手比 億ドル 相手比 ドル 相手比

21.70 588.22% 10,770 247.73% 9123.9 37.92% 8,472 15.31%

北 京 1.64 2,069 2844.5 13,917

天 津 1.18 1,413 2051.4 14,823

河 北 18.88 7,288 4228.0 5,820

3.69 17.00% 4,348 40.37% 24063.4 263.74% 55,350 653.36%

東 京 0.22 1,322 11576.4 78,904

神奈川 0.24 907 3812.0 37,467

千 葉 0.52 620 2355.6 34,833

埼 玉 0.38 721 2552.4 31,838

茨 城 0.61 295 1436.3 42,915

栃 木 0.64 199 979.1 44,298

群 馬 0.64 199 957.8 42,143

山 梨 0.45 85 393.9 41,227

日本の域内総生産は2011年のデータを年平均為替レートでドル換算したもの。

日本の1人当りGDPは2010年のデータを年平均為替レートでドル換算したもの。

(出所)『中国統計年鑑』2013年度版、内閣府ホームページ (http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/main_h23.html)等より作成

首都圏(日本)

人口 域内総生産(GRP) 1人当たりGRP

京津冀

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そうした多様なアプローチが可能となるような交流・協力プロセスの検討も、日中両

国の官民双方に深い関係を有する日中経済協会を中心とする今次調査グループの重要

な任務であると思われる。このような発想を出発点として政策提言を取り纏めた。

2222....提言に向けた前提:提言に向けた前提:提言に向けた前提:提言に向けた前提:スマートシティ開発への日本企業参入の現状スマートシティ開発への日本企業参入の現状スマートシティ開発への日本企業参入の現状スマートシティ開発への日本企業参入の現状

これまで日本企業は、経済産業省や NEDO 等の予算を使いながら、中国各地でスマー

トシティ関連の実証事業、技術協力等を展開してきた。(図表 15)

内容は、スマートコミュニティの開発・実証、地域エネルギーマネジメント、スマー

トグリッド、住宅の課題ソリューション、スマートハウス、スマート物流、クラウド提

携、等と多岐にわたる。地域は北京、天津、大連、上海、杭州、広州等の沿海地方が大

勢を占めている。各プロジェクトの実施時期、事業費等の詳細は不明であるが、現地地

方政府、企業等の協力を得ながら一定の成果を上げたものの、その結果として普及、あ

るいはビジネスにまで昇華できたという明確な事例はまだないようである。

なお、この中に深圳坪山新区、北京市通州区、河北省香河県、鄭州市は含まれていな

い。本調査によって初めてモデルプロジェクト候補地となったものである。

図表 15 中国における日本企業のスマートシティ関連事業例

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66

3333.スマートシティ.スマートシティ.スマートシティ.スマートシティ開発開発開発開発・運営・運営・運営・運営への日本企業への日本企業への日本企業への日本企業のビジネスのビジネスのビジネスのビジネス参入の課題参入の課題参入の課題参入の課題

(1)(1)(1)(1)これまでの経験を踏まえた今後の課題これまでの経験を踏まえた今後の課題これまでの経験を踏まえた今後の課題これまでの経験を踏まえた今後の課題

最近の事例(2014 年)として、広州市南沙新区におけるスマートコミュニティ等の事

業可能性調査から、日本コンソーシアムのビジネスモデル案を図表 16 に整理した。

40

図表 16 日本コンソーシアムのビジネスモデル案(広州市南沙新区調査から)

中国でのインフラ敷設等で開発準備を整える 1 級開発には、日本企業にとってはリ

スクが大きく、参画は困難である。1級開発後にウワモノを建築する 2級開発であれば、

ある程度のリスクはあるが主導権をとれる開発参画型、あるいはリスクテイクしないア

ドバイザリー型が考えられるとしている。

こうした限定されたビジネスモデルを前提とするなかで、既に中国のスマートコミュ

ニティ或いはスマートシティに関る何らかの取組みを経験した日本企業等関係者によ

れば、更に以下のような様々な課題がある。

40 みずほ情報総研株式会社「広州市南沙新区 Smart Community プロジェクト報告書」経済産業省平成

25 年度エネルギー需給緩和型インフラシステム普及等促進事業(グローバル市場におけるスマートコミュ

ニティ等の事業可能性調査)、2014 年 3 月

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<日本<日本<日本<日本企業などが指摘する課題企業などが指摘する課題企業などが指摘する課題企業などが指摘する課題>>>>

� スマートシティの投資・回収のビジネスモデルが確立されていないのは、日本の民

間デベロッパーにとっての大きなハードルである。中国側には①開発コンセプトの

早期決定、②不動産マーケットの安定している都市部や比較的小規模なプロジェク

トを選定、③スマートシティ開発における中国政府の支援。

41

� 中国の都市建設において、日本側が付加価値向上に参入し得るのは管理・運営段階

のノウハウ。今後、中国側が保有する技術等を前提としつつ、日本企業がもつ知恵

やノウハウを基にしたコンサルティングからスタートし、課題の特定と解決策の提

示を行い、それらを適切に組み合わせるようなソリューションミックスを提示する

仕掛けが重要。

42

� 中国の公共交通は、交通ネットワークとしては急速に発展しつつあるが、まだ都市

と一体化しているとは言えない。公共交通と都市の一体的発展、つまり TOD は中

国のスマートな都市発展に欠くことのできない要素。中国でも TOD 概念の導入が

進みつつあるが、実践に移るには高いハードルあり。①行政の縦割りの壁、②TOD

への民間参加を促進する上で不可欠な許認可プロセスの透明化が確保されていな

い。③確定した詳細計画を最後まで担保する(チェックする)仕組みが弱く、当初

の計画意図と異なる結果も。

43

� プロジェクトのポイントは二つ。①プロジェクトマネージャの人選、②キャッシュ

フローが回るか否か。資金の出し手からすれば、向こう何年間で回収できるかがポ

イント。オフィス、商業施設、住宅の建設にもそれぞれ地域の相場があり、投資の

規模、採算が変動する。必要額に足りなければ、政府資金が必要。

� 不動産業は投資したものに対してリターンを得ていく仕事。スマートシティは、コ

ストとリターンを始めいろいろな問題に直面している。一番大事なのは継続だが、

住宅、商業施設、オフィスをつくり、それを使う人々にメリットがないと長続きし

ない。スマートシティという概念は、実感してもらえるまでには時間がかかる。デ

ベロッパーとしては、政府の力も借りながら啓蒙していくことが必要。コスト面で

41 三井不動産 小林誠治「デベロッパーから見た日中スマートシティ協力の展望と課題」「日中経協ジャー

ナル」2015 年 9 月号

42 J-CODE 飯塚浩一郎「中国版スマートシティ開発への日本企業の参画について」「日中経協ジャーナル」

2015 年 9 月号

43 日建設計 田中亙「駅まち一体型まちづくり「Station Integrated Urban Design」の実践に向けて―ス

マートシティを支える TOD と中国での関連ビジネスの可能性」「日中経協ジャーナル」2015 年 9 月号

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は、付加価値を加えて回収するが、場合によっては、直接的な資金補助のほか、「人

が集まる、住みたいと思う、企業が集まる」面で、行政による施策面からの支援に

期待。

� スマートシティ事業には 4つの条件が必要。①規模が重要。最初はエリアではなく、

コミュニティで実行するのがよい。実際の条件を見て、実施しやすいものをまずや

るべき、②レール交通等の公共交通手段。③実力のある大手企業が参画すること。

④信念が必要。建設地域の強みや資源を生かしてスマート化を図る。

� たくさんのソリューションと技術があるが、各地域の課題は異なるため、その土地

に合ったプランが必要。課題にはプライオリティをつけることが重要。

� コストがかかりすぎ、収益が上がるビジネスモデルなのかどうかが見えないため、

中国のデベロッパーが本気になりきれない。小さいモデルプロジェクトで実際に実

験し、儲かる、企業のブランド価値が上がるという実績を積み重ねる必要がある。

日本側はデベロッパーを先頭にした取組みを開始したが、投資回収期間が長くなる

都市づくりであるため慎重にならざるを得ない。異なるやり方として、中国側デベ

ロッパーと日本側の技術を持ったプレイヤーとの組み合わせでビジネスができな

いか検討している。この方式の課題は、中国のそれぞれの都市が困っている、ある

いは何をしようとしているかという情報を整理する中国側のインテグレータが必

要だということ。一方、日本側でも日本のこういう企業のこういう技術が、こうい

うビジネスモデルで参加できるというような形で、日本側チームの調整をしてくれ

るインテグレータが必要。日中のインテグレータがお互い相談できるような仕組み

があれば、中国側の困りごと、日本側がどう応えるかがうまく連結できるのではな

いか。

� 日本では、再生エネルギーの固定価格買取り制度がある。電力会社は太陽光発電の

電力を一定価格で買い取ることが義務付けられ、太陽光パネルの設置にも国の補助

金が適用されるので普及が進んでいる。中国の場合は、電力網は国のものであり、

民間が系統連結することは許されていない。太陽光発電は、発電と同時に消費され

ているが、余分な電力は蓄電が重要。蓄電池はリチウム電池など極めて高価である

ため、設置にも国が補助金を出している。中国では国のこうした制度はなく、各都

市がバラバラに対応している。これらが課題である。

� 日本企業が中国で協力を進める上で、一番関心を持っているのは制度制限の問題。

例えば、スマートシティの中で、交通施設、駅の建設等において、様々な制度面の

ハードルがある。建設関連の制度緩和に期待している。

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上記は中国側自らが抱えている課題とも重なる。調査過程で中国側からは以下のよう

なコメントが示された。

<中国側<中国側<中国側<中国側自身の抱えている課題と解決案自身の抱えている課題と解決案自身の抱えている課題と解決案自身の抱えている課題と解決案>>>>

� 中日で協議してきた中で、資金問題には頭を悩ませている。将来的なスマートシテ

ィ交流において、ファンドを作ってはどうか。資金プールを作り、対象モデル都市

を支援する。スタートに必要なのは資金。中国は PPP 方式でやっていこうとして

おり、日本側の資金拠出に期待。中央所属企業であれば、長期間にわたっての回収

ができる。中日がともに資金を出せば、選定・決定権は双方にある。

� ①スマートシティのビジネスモデルは、コスト増につながる。スマート化の程度を

上げるごとに、それに関連するすべての部分の資金がかさんでくる。スマート化の

要件をすべて満たした 100%のスマートシティを一から作るには莫大な資金がか

かるため、政府からの補助金が必要。商業銀行や民間資本が気にするのは、投資コ

スト回収のスパンと可能性。最初のスマート化地点が、本当に商業化できるのかど

うか。②中国社会には数多くの異なるニーズがあるので、それを満足させるという

方向性を目指す。中国は日本と違い、エネルギーや電力に対して、コミュニティや

都市ではそれほどの切迫性はないが、すべてのスマートコミュニティやスマートシ

ティは、省エネルギーから始まるもの。場所が変われば、スマート化する部分やそ

の組み合わせも違ったものになる。③スマートシティのうまみを体験したら、ニー

ズはどんどん拡張していく。ポイントを押さえて徐々にやっていけば、実行可能性

がある。④企業の能力とかけ離れたプロジェクトは進展しない。スマートシティは、

応用・普及できるものでなければならない。そのためには、すべての参加者がやり

たい、やれるというものであるべき。

� 中国の発展段階、成長段階に合わせて考えるべき。中日間には 20~30 年のギャッ

プがある。多くの中国企業の意見は、スマートシティ建設に参加したいが、膨大な

投資に対してどのくらいのリターンがあり、どうやって回収するのかという収益モ

デルがなければ、なかなか参加意欲は高まらない。収益モデルの検討には金融機関

のアイデアも重要であろう。

� 急ピッチの都市化・産業化を見直す必要が出てきている。世界の都市発展の大きな

流れであるスマート化、低炭素化、グリーン化の理念を取り入れ、イノベーション

を行いたい。雨水の総合利用により、海綿都市(スポンジシティ)にしたい。高速

鉄道駅の開発を考えているが、日本の駅は生活と消費の中心的エリアとなっており、

考え方が大きく転換させられた。この部分で日本企業の協力を得たい。

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(2(2(2(2))))想定される日本企業のビジネス想定される日本企業のビジネス想定される日本企業のビジネス想定される日本企業のビジネスアプローチアプローチアプローチアプローチ

以上の論考をもとに、中国のスマートシティ開発・運営において日本側の強みが活か

せるであろうビジネスアプローチを図表にまとめてみた。

図表 17 中国のスマートシティ開発・運営の課題に対する日本側の強み

No

.

中国のスマートシティ建設

における課題 強み 理 由

1 都市建設の管理・運営 ○ ノウハウあり。

2 公共交通、鉄道駅の整備 ○ 公共交通と都市の一体的発展(TOD)

の実績豊富。

3 再生エネルギーの活用、スマー

トグリッド

○ 日本には電力買取り制度、系統連結、蓄

電池等の経験と実績あり。

4 省エネルギー、環境対策、低炭

素化、グリーン化

○ 豊富な実績と技術あり。

5 スポンジシティの建設 ○ 豊富な実績と技術あり。

6 共同溝の敷設 ○ 豊富な実績と技術あり。

7 IT を利用した都市のグランド

デザインや都市のあるべき姿

に踏み込んだ提案

△ 都市開発というテーマでのスマートシ

ティプロジェクトの経験が少ないため、

提案力が弱い。

8 投資・回収のビジネスモデルの

確立

△ 中国側の開発コンセプト、プロジェクト

選定、政府支援が整備されていない。

9 資金調達 △ キャッシュフローや事業継続性に懸念。

政府資金、ファンド、PPP は模索段階。

回収が長期にわたるため慎重。

10 中国側デベロッパーと日本側

の技術の組合せ

△ 日中のインテグレータが必要。

11 各種の標準作成 △ 日本側の参入機会は限定的。

12 必要設備の政府調達 △ 輸入製品の排除あり。メカニズム、運用

規則等が不透明。

13 建設工事 △ 日本側の参入機会は限定的。

14 ソフトウェア、クラウドサービ

△ 豊富な実績と技術があるが、日本側の参

入機会は限定的。

注:順不同。強み欄は、強みがある場合は○、そうでない場合は△とした。

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(3(3(3(3))))外資のビジネス参入に関する外資のビジネス参入に関する外資のビジネス参入に関する外資のビジネス参入に関する政策・制度面の政策・制度面の政策・制度面の政策・制度面の問題点問題点問題点問題点

一方、スマートシティのみならず、中国における外資のビジネス参入には、政策・制

度上の規制が根強く残っている。ここでは、中国日本商会がまとめた「中国経済と日本

企業 2015 年白書」(2015 年 6 月)及び 2015 年度日中経済協会合同訪中代表団派遣に際

して取り纏めた「中国ビジネス環境改善要望事項」の中から、上述の強みを活かしたス

マートシティ開発・運営ビジネスに関ると思われる制度上の問題点を俯瞰し、中国側へ

の改善要望を纏めてみる。

1)1)1)1) 建設建設建設建設

� 外商独資建築企業は、「外商投資建築業企業管理規定」により、請負可能な工事が

①100%外資の海外無償援助案件、②国際金融機構による資金融資建設プロジェク

ト案件、③外資 50%以上の中外共同建設プロジェクト、④外資 50%未満であるが

技術的に困難で、かつ中国企業単独で実施できない建設プロジェクト案件、の範囲

でしか認められないという制限を受けている。従って、外商独資建築企業には、国

内建設投資の主要部分である中国資本 50%以上の案件は門戸が開かれておらず、

新型都市化推進の過程において、日系建設会社が保有する資金と技術を活用する上

で足かせとなっている。地方都市が外国建設会社の資金と技術を利用してよりよい

街づくりができるよう、この規制の緩和を要望する。

� 外資系工事(非国有民間投資プロジェクト)において、勘察(事前探査)・監理・設

計・施工それぞれの業者決定にあたり、発注者による入札実施が必要であることの

見直し、手続きの簡素化を要望する。

� 外資企業の設計資質取得規制(中国設計院との合弁、常駐外国人設計士の人数等)

についての緩和を要望する。

2)不動産2)不動産2)不動産2)不動産

� 不動産業については、外商投資による「投資性公司」の設立が認められておらず、

不動産開発プロジェクト毎に外商投資企業をする必要がある。資本の自由化を進め

る観点からも、早期に認めていただくことを要望する。

3)ソフトウェア3)ソフトウェア3)ソフトウェア3)ソフトウェア

� 模倣品対策・知的財産権について、必要な措置及び具体的な対応を要望する。

� 中国社会における問題解決分野への参入に向けて、環境サービス分野では、センサ

ー技術とビッグデータ技術を用いて、大気、水質等の重点汚染領域に対して監視及

び警戒情報等のソリューションを提供できる。交通分野においても、映像、車輌デ

ータを利用することで渋滞を緩和できる先進的なテクノロジーを有している。こう

した分野の関連政策策定での情報公開、参入機会の拡大を要望する。また、先進的

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な製品を提供できる企業への優遇施策の検討を要望する。

� 中国においては、クラウドサービスが通信・インターネットサービスに該当するの

ではないかという解釈がある(通信・インターネットサービスは外資規制)。クラ

ウドサービスの B2B サービスは、一般向け通信・インターネットサービスとは異な

るものであることを明確にしてほしい。

4)電力4)電力4)電力4)電力

� 再生可能エネルギーに関して、稼働率上昇とさらなる発電設備容量増を進めるため

のグリッド設備の充実や、系統安定機能を持つ大型蓄電池等に対する補助金等の充

実を要望する。

� スマートグリッド推進や電気自動車普及に向けた充電設備構築では、国際標準化へ

向けた活動の継続と、各国関係各機関とのさらなる協調を要望する。

� 電力流通設備への投資や設備調達では、日系企業に対してもプロジェクト参画機会

を与えてほしい。

� 配電網、電力メーターについては、信頼性に加え、耐久性や美観にも適した設備の

構築を要望する。

5555)医療機器・対外診断用医)医療機器・対外診断用医)医療機器・対外診断用医)医療機器・対外診断用医薬品薬品薬品薬品

� 新法令の発布や改定が為されても、実施細則が決まっておらず、中国行政側が運用

できない場合がある。法令の発布・改定時は、運用もできる様に準備と周知徹底を

要望する。

� ソフトウェアの変更に関しての審査が厳しくなっている。バグ修正や小規模なバー

ジョンアップなど頻繁に実施されるものであるので、安全性、有効性に大きく影響

しないソフトウェアの変更に関しては、審査不要とするか審査簡素化するよう要望

する。

6666)技術標準・認証)技術標準・認証)技術標準・認証)技術標準・認証

� 標準化法の改定過程は、内容を適宜開示するなど、透明性を高めることを要望する。

� 国際標準に準拠した標準の内容をさらに徹底すべき。

� 現在の技術水準を考慮し、過度にスペックを詳細化した標準策定は避けるべき。

� 標準の適用範囲の曖昧さ、標準間の重複・矛盾等を回避すべき。

� 標準策定部門の早期明確化、提案窓口一本化に努めてほしい。

� 標準と現場の運用の統一、解釈の明確化、国と地方の連携の強化や役割分担の明確

化を図ってもらいたい。

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7)7)7)7)政府調達政府調達政府調達政府調達

� 輸入製品は、中国の政府調達から排除される場合がある。

� 政府調達活動の公平、公正な実施のために、政府においては、政府調達のプロセス

において評議審査を行う専門家の選任メカニズム、運用規則等の分野の透明性を更

に向上させることを要望する。

� 「省エネ製品政府調達リスト」及び「エコマーク製品政府調達リスト」を改正する

際は、省エネ・環境保護効果の高い輸入製品を追加するよう要望。また、政府には

リストの更新サイクルを短縮し、かつ企業が条件に適合した製品を適宜追加できる

ような制度構築を要望する。

4444....中国スマートシティ開発・運営ビジネス参入に対する政策的支援の提言中国スマートシティ開発・運営ビジネス参入に対する政策的支援の提言中国スマートシティ開発・運営ビジネス参入に対する政策的支援の提言中国スマートシティ開発・運営ビジネス参入に対する政策的支援の提言

(1)(1)(1)(1)スマートシティ・コンセプトスマートシティ・コンセプトスマートシティ・コンセプトスマートシティ・コンセプトの摺り合わせの摺り合わせの摺り合わせの摺り合わせとロードマップとロードマップとロードマップとロードマップ作成作成作成作成のののの必要性必要性必要性必要性

今次調査において、CCUDから示された三つのモデルプロジェクト候補エリアのうち、

短期間で日本企業のソリューション・システム提案を実現する可能性が最も高いと考え

られたのは、深圳市坪山新区「益田共和城邦」プロジェクトであった。しかしそこにお

いても、初歩的なりとも益田集団のシステム導入構想のなかに日本企業のソリューショ

ン・ション提案を組み込んで日中共同プロジェクト計画を提起することは時機尚早であ

った。

その主要因は、益田集団で構想されているスマートシティ・コンセプト(省エネ・環

境システムを含む四大システムを包含)は、理想像としては理解できるものの、13・5

計画期の切実な都市病問題解決の緊急性及び必要性との関係を充分に分析し得る詳細

「データ」に裏付けられた、具体的な「コンセプト」の把握と摺り合わせに充分な時間

をかけることなくしては、最適なソリューション・システム構築には至り得ないからで

ある。また、これと相まって、政府であれ民間であれ、資金を有効活用するためには、

都市病解決の緊急度及び必要度により、解決すべき都市病の優先順位を決め、期限を示

した「ロードマップ」を作成し参加関係者間で共有することが重要である。

今次調査では、これら二つの「重要プロセス」について、益田集団などプロジェクト

関係者が関心を高め説明を切望した「日本の柏の葉スマートシティ」事例に基づき解説

し意見交換を行うことによって共通理解を確保することに努めた。それは(上記1.の

試論にも示した通り)「課題解決型街づくり=スマートシティ」の日本の経験で不可欠

の「重要プロセス」であり、これを経ずしては、日本企業のビジネス参入の道は敷かれ

ず、積極性を牽引し得ないからである。

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従って、今後の新たなプロジェクト候補に対しても、同様のアプローチを継続する必

要がある。しかしながら日本の個別企業の関係者を毎回同様の説明のために動員するこ

とには時間的・人的コスト等の面で限界がある。その効率的な代替手段として、専門性

の高い事例解説ビデオの作成、日中双方の解説推進機関の人材研修、事例都市視察コー

スの整備・メンテナンスを実行する自治体や団体への支援が行われることを提言する。

(2)(2)(2)(2)データデータデータデータ共有共有共有共有の重要性の重要性の重要性の重要性

今次調査を通じて、中国では、スマートシティ建設のための計画づくり、システム開

発等に確実に役立つデータを一部の地方政府が保有していることが明らかになった。し

かし、現段階では、それらのデータは、行政内部のクローズド・データになっており、

広く共有はされていない。

中国の「都市病」の緩和・解決を図ることができる主要なアプローチの一つであるス

マートシティ建設には、中国内外の民間企業の知恵を活用し、創造性を発揮させること

が有効である。このような多様な民間企業の参画者の活力を充分に発揮させるためには、

彼らが自らの技術力を発揮できる分野を見つけ出し、その分野で技術開発等を行うこと

ができる環境を整備する必要がある。このような民間企業が活躍できる分野を効率的に

探せる環境を作り出すためには、地方政府等に集積されつつあるデータが広く公開され、

容易にアクセスできるがことが必要である。

このようなデータへのアクセス性の向上は、日本企業を含む内外の企業が協力して中

国市場向けの技術やシステムの開発やカスタマイズに取り組むことが容易になること

を意味し、スマートシティ建設に参画しようとする民間企業の意欲を掻き立てるものに

成り得る。

一方、中国では、それらのデータが政府のクローズド・データになっている状況に加

えて、データ収集システムの当初開発企業には、それらのデータへのアクセスが容認さ

れているらしい状況も見受けられる。これはシステム・メンテナンスの利便性の為に発

生したものとの推測は可能である。

今後は、中国の中央・地方の政府機関が保有する統計データ等への平等なアクセス性

の向上が促進される方向へ共通認識を醸成していくことを提言する。

(3)(3)(3)(3)官民協力による新ビジネスモデル創出とファイナンスを巡る政府の役割官民協力による新ビジネスモデル創出とファイナンスを巡る政府の役割官民協力による新ビジネスモデル創出とファイナンスを巡る政府の役割官民協力による新ビジネスモデル創出とファイナンスを巡る政府の役割

2012 年 12 月の「国家スマートシティ試点(パイロット都市)展開に関する通知」公

布以降、多くの都市がスマートシティの建設・開発に名乗りをあげ、多くの都市がパイ

ロット都市にリストアップされているが、スマートシティという新しい概念に十分な理

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解が不足するなかで、その建設加速よりもむしろパイロット都市認定で期待される中央

政府からの各種財政支援の獲得こそが目的となってきた側面があり、少なくない構想・

計画で実現可能性に疑義が生じている。

中国経済は中期的な経済の減速基調に入り、地方政府財政は税収の伸び悩み、不動産

市場の低迷をうけた土地譲渡金収入の減少から急速に債務規模が拡大、リスクが顕在化

した。厳しい財政事情に苦しむ地方政府は中央政府から何らかの承認・認定を得ること

で、財政負担の少ないインフラ、都市建設投資の推進に期待を寄せたのだが、これまで

のところ、中央財政から拠出された基金方式による伝統的な資金支援の途は限定的なも

のにとどまり、かわって官民協力(PPP)方式の積極的な導入が呼びかけられている。

PPP 方式は民間資本(外資を含む企業)の投資呼び込みで地方財政問題を有効に解決

してゆく方策の一つとして注目されているが、期待されているのは資金のみならず、ス

マートシティを実際に立ち上げ、機能させていくために必要な優れた技術、ノウハウ、

ソリューションであり、これらを有する企業がプロジェクトへの参画にビジネスチャン

スを見出し得るかがポイントとなる。

新しいビジネス(収益)モデルを官民が協力して構想・確立してゆくプロセスにおい

て、政府側に期待される役割としては、地方レベルでは各行政部門に分断されて存在す

る権限、既得権益、利害関係を調整した上で、前述のようなビッグデータの共有を可能

とすることに加え、必要となれば中央政府やその関係部門に先駆的な事業実施への支持

を取りつけるべく積極的に行動をすること、中央レベルではトップダウン設計を行う上

で、地方や民間からあげられる要望を積極的に取り込んでいくとともに、関係政府部門

の横のつながりを強化すること、かかる姿勢を高い透明性でもって民間資本サイドに示

していくことで、企業が事業参画への期待と自信を深めるように仕向けることがあげら

れる。

中国においてもトータルパッケージ化された高い次元のスマートシティの建設が将

来的には企図されるだろうが、まずは個別の技術やソリューションを選択的に取り込ん

でいく、比較的小規模な実証プロジェクトを通じた(成功)経験の蓄積が当面重要にな

ってくるのではないか。

すなわち不動産デベロッパー、通信キャリア、IT・電子機器メーカー、エネルギー

事業者など想定される事業主体がそれぞれの経験値をあげていくフェーズであり、す

でに一定の経験を有する政策性銀行を除けば、多くの金融機関にとっても個別の事業

主体の取り組み、政府の協力ぶりを与信判断の重要な材料としつつファイナンス提供

の機会を窺っていくことになる。政府にはこうした動向を深く理解した機能分担が期

待されている。日中政府間において、このような企業動向を深く理解した政府の機能

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分担についての中国政府の理解を深め、そうした理解が制度改革にも反映されるよう

な対話が行われることが望ましい。

(4(4(4(4))))外資外資外資外資参入規制緩和参入規制緩和参入規制緩和参入規制緩和に向けたに向けたに向けたに向けた政策対話政策対話政策対話政策対話との連動との連動との連動との連動

前述の通り、スマートシティ開発・運営への外資の参入には各種の規制が存在する。

また、第1章で整理した通り、中国政府は 13・5 計画期の緊急課題である「都市病」の

解決策の一つとして「新型都市化」(スマートシティ開発・運営を含む)における都市

機能の向上を位置づけており、その包摂する分野は、医療・介護、健康、文化等サービ

ス分野を含めて極めて広範に亙る。

日中両国政府間においては、中国の政府及び社会の関心がとみ高まっている広範な

「都市病」の解決策と将来への予防策について、日本の過去及び現在から将来に向けて

の横断的な施策、技術やシステムの経験・知見と展望をベースとした政策対話を行うこ

とと有機的に連動させて、外資参入規制の緩和に向けた検討を粘り強く実施されること

が、結果的に日中両国の企業のビジネス協力による「都市病」解決の加速に繋がるもの

と考える。

(5)深圳等の一線都市での日系企業使用地転換による(5)深圳等の一線都市での日系企業使用地転換による(5)深圳等の一線都市での日系企業使用地転換による(5)深圳等の一線都市での日系企業使用地転換による日中スマートシティ再開発協日中スマートシティ再開発協日中スマートシティ再開発協日中スマートシティ再開発協

力の可能性力の可能性力の可能性力の可能性

中国は産業構造転換期を迎え、生産能力過剰企業の処理及び労働集約型製造業から

ハイテク産業へのアップグレード需要等が、各地方政府にとって大きな課題となって

いる。このような背景のもとで、深圳等の一線都市では、伝統製造工場やエネルギー

効率の悪い企業は政府との間の工場用地賃貸契約が更新されず、土地は回収される可

能性が考えられる。政府の目指すところは、ブラウンフィールドの再開発、ハイテク

産業の育成環境づくり、都市空間のアップグレード等である。

このような政府の目標に沿って、土地の契約更新時期前の相当早い段階から、その

都市の発展戦略に合致した再開発計画を立てて現地政府にアピールし、加えて日中両

国の政府機関等の理解を得ることができれば、新たなサポートや優遇政策も受けやす

くなると考えられる。

特に深圳の場合は、改革開放当初から日系企業が多く進出してきたが、現段階で見

ると、多くは立地条件の非常に良い場所にあり、今後このような土地のポテンシャル

を発揮できれば、スマートシティ開発のハードルやコストも低く抑えられると考え

る。

Page 78: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

77

Ⅳ.資料(調査活動記録)Ⅳ.資料(調査活動記録)Ⅳ.資料(調査活動記録)Ⅳ.資料(調査活動記録)

1111.専門家派遣専門家派遣専門家派遣専門家派遣

(1)「「「「2015201520152015 中国スマートシティ国際博覧会」参加及び鄭州訪問等の訪中団中国スマートシティ国際博覧会」参加及び鄭州訪問等の訪中団中国スマートシティ国際博覧会」参加及び鄭州訪問等の訪中団中国スマートシティ国際博覧会」参加及び鄭州訪問等の訪中団

①目的

日本側専門家、企業等による訪中団を派遣し、国家発展改革委員会城市・小城鎮改革

発展中心(CCUD)が主催する北京での「2015 中国スマートシティ国際博覧会」へのブー

ス出展及び同博覧会プログラムとして「日中スマートシティ分科会」やマッチングイベ

ント「日中企業間交流(北京)」を実施し、日本の課題解決型システムに関する情報発

信を行うとともに、博覧会に参加する中国各地の政府・企業関係者・専門家等との交流

を行う。また、北京では CCUD とのグループミーティング、中国側関係機関、日系企業

への訪問インタビューを行う。こうした活動を通じ、中国におけるスマートシティの現

状と課題・障害等に関する情報収集と分析につなげる。

さらに、モデルプロジェクト候補地である鄭州市を訪問し、現地政府及び関係企業と

の交流会を実施するだけでなく現場視察も行い、同地の現状及び課題の把握を図る。

②期間及び訪問地

2015 年 7 月 9 日(木)~14 日(火) 北京、河南省鄭州

③訪中団名簿

岡本 巖 日中経済協会 理事長

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

篠田 邦彦 日中経済協会 北京事務所所長

滝川 光是 日本総合住生活 営業企画部(新規事業担当)部長

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

伊藤 智 日中経済協会 企画調査部課長

樊 蓉 日中経済協会北京事務所職員

鄭 瑾 日中経済協会 嘱託通訳

楊 晶 日中経済協会 嘱託通訳

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④日程

月日 時間 活動内容 宿泊

7 月 9 日

(木)

09:25→12:20

18:30-20:30

羽田→北京 NH961

CCUD 李鉄主任主催歓迎宴 「唐拉雅秀酒店」

北京

7 月 10 日

(金)

09:00~10:00

13:00~15:00

16:00~17:00

中国スマートシティ国際博覧会 開幕式

(北京展覧館「報告庁」)

「日中スマートシティ分科会」

(博覧会会場「論壇区」)

マッチングイベント「日中企業間交流(北京)」

(博覧会会場「L002 日本ブース」)

同上

7 月 11 日

(土)

09:00~13:00

14:00~17:30

CCUD 事務レベル会議(CCUD 会議室)・ワーキン

グランチ

博覧会 他出展ブース視察・ヒヤリング及び

「日本ブース」来訪者対応

同上

7 月 12 日

(日)

10:05→12:15

10:45→13:36

15:25→17:30

18:30~21:00

羽田→上海虹橋 NH969(理事長、伊藤)

北京西→鄭州東 G487

一部事務局は(G309)にて鄭州へ移動

上海虹橋→鄭州 MU5385(理事長、伊藤)

建業集団公司主催歓迎宴

河南鄭州

7 月 13 日

(月)

08:30~10:00

10:00~12:00

12:00~13:30

13:30~17:00

鄭東新区内開発不動産現場視察

(建業集団物件)ほか

マッチングイベント「日中企業間交流(鄭州)」

(鄭州建業艾美酒店 3F 会議室)

胡葆森建業集団董事長主催歓迎昼食会

(鄭州建業艾美酒店 3F 大宴会庁)

鄭州市関係政府機関との意見交換

同上

7 月 14 日

(火)

09:00→11:31

09:55→12:10

14:00~15:30

鄭州東→北京西 G90(十川、飯塚、伊藤)

鄭州→瀋陽 CA3575(理事長、今村、高見澤)

セコム中国(西科姆(中国)有限公司)訪問

北京

7 月 15 日

(水)

09:00~12:00

15:35→20:00

(十川、飯塚、伊藤)

智慧城市発展聯盟、中国智慧城市産業聯盟、中

国智慧城市産業技術創新戦略聯盟意見交換

北京→羽田(NH962)

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⑤活動概要

<北京>

� 北京で開催された中国初のスマートシティ国際博覧会は、都市生活や行政サービス

におけるインターネットの活用、道路交通のスマート化等の進展ぶりを内外に示し

た。当協会の「日中スマートシティ分科会」等の開催及び「柏の葉スマートシティ」

ブースの出展は大きな注目を集めた。

� 「柏の葉」ブースには、国家発展改革委員会胡祖才副主任はじめ北京市党委員会呂

錫文副書記、西城区蘇東副区長等の内外賓客が視察に訪れ、CCUD 李鉄主任自身が解

説にあたった。また、各地の政府機関、工程院、設計院、団体、報道機関等からの

多くの専門家や一般参加者が訪れ盛況であった。

� 日中スマートシティ分科会では、日本企業は中国スマートシティ開発への貢献の可

能性、課題と提案について発言し、中国側は、中国のスマートシティ現場の課題と

日本企業への提案について発言した。

� 日本の関連技術・システムプレゼンテーションでは、日本の専門家が、都市の在り

方において重要なポジションにある都市交通及び住宅に関するスピーチを行った。

� CCUD との打合せにおいては、日中経済協会と J-CODE がそれぞれの事業スキームを

説明し、具体的な日中合作プロジェクトの形成に向けた今後の協力の進め方と課題

について意見を交わした。

� セコム中国では、対中スマートシティ協力のビジネスチャンスとしては、「安全・

安心」分野における機器及びサービス、ソフト面での参画に可能性があるとの指摘

があった。

� スマートシティ関連団体との交流では、各団体がその組織と機能を紹介したほか、

プロジェクトマッチング、代表的なモデル事業の構築などに対する日本側の協力へ

の期待が表明された。

<鄭州>

� 河南省最大のデベロッパーである建業集団が手掛けるプロジェクトの建設現場や

物件モデルルーム、並びに日本の黒川紀章氏が作成したマスタープランに基づき建

設されている鄭東新区を視察した。また、同集団からは河南省の発展状況や同社の

発展戦略、スマートシティ開発計画及び日本との交流に関する要望と提案が示され、

日本側からは協力の方向性と提言を示して意見を交わした。

� 岡本理事長は、日本との協力において中国側に考慮を促したい点として、設備・フ

ァシリティについてのライフサイクルでのコスト評価の重要性を指摘した。すなわ

ち、日本企業の提案は、初期投資・イニシャルコストが少し割高であっても、しっ

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かりしたメンテナンスを伴い、当初の設計能力・性能を長く維持できるためランニ

ングコストが安くなり、プロジェクト代金全体で見たときのコストはコンペティテ

ィブであると説明した。

� 鄭州市政府との交流会議においては、スマートシティ建設に関わる政策、都市計画、

土地、都市管理、軌道交通等の所管部門幹部と意見を交わした。内容は、新型都市

化、固定資産投資の資金回収、住宅問題、金融、都市交通、TOD開発、歴史文化

財、等の広範囲に及んだ。

⑥出席者

「2015 中国スマートシティ国際博覧会」

【日本側】

田村 計 国土交通省 大臣官房審議官(都市局担当)

大嶋 翼 駐車場綜合研究所 代表取締役会長

細谷 清 海外エコシティプロジェクト協議会(J-code) 代表理事

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

篠田 邦彦 日中経済協会 北京事務所所長

青木 重人 三井不動産 海外事業二部 部長補佐

三田村 喜己男 UR リンケージ 執行役員 都市整備本部計画部長

滝川 光是 日本総合住生活 営業企画部(新規事業担当)部長

富田 建蔵 在中華人民共和国日本国大使館 一等書記官

近藤 哲生 三井不動産(北京) 副総経理

松尾 剛志 野村不動産諮詢(北京) 副総経理

川瀬 敦雄 国土交通省 都市局総務課国際室 課長補佐

鄒 仁 英 駐車場綜合研究所 取締役執行役員国際事業本部長

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-code) 事務局員

栗村 英男 UR リンケージ 計画部 副課長

和田 雅人 日建設計総合研究所 研究員

本田 りか 海外エコシティプロジェクト協議会(J-code) 事務局員

励 瑩 UR リンケージ 計画部

樊 蓉 日中経済協会北京事務所職員

鄭 瑾 日中経済協会 嘱託通訳

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「2015 中国スマートシティ国際博覧会」プログラム

■開幕イベント(7 月 10 日)

9:30~10:00 開幕式、調印式(4 件)

挨拶 胡 祖才 国家発展改革委員会副主任

田 世宏 国家標準委員会主任

田村 計 日本国土交通省大臣官房審議官

Jesse Berst 米スマートシティ理事会(SCC)会長

Ten Keesin マレーシア中小企業協会会長

李 鉄 国家発展改革委員会都市小城鎮改革発展中心主任

中国智慧城市発展聯盟理事長

10:00~11:00 2015 中国スマートシティ国際博サミットフォーラム

テーマ「インターネット+スマートシティ」

11:00~12:00 2015 中国スマートシティ投融資イノベーション大会

■分科会(以下以外に、中国 ASEAN スマートシティ投融資セミナー、国家スマートシテ

ィ標準化工作大会等)

13:00~15:00 日中スマートシティ分科会(「中日智慧城市発展論壇」)

テーマ「スマートシティ開発と TOD――課題とソリューション」

主催者・来賓 挨拶

李 鉄 国家発展改革委員会都市小城鎮改革発展中心主任

中国智慧城市発展聯盟理事長

田村 計 国土交通省大臣官房審議官

垣見 直彦 在中華人民共和国日本国大使館参事官

1)日本企業による中国スマートシティ開発への貢献の可能性と課題、そして中国側へ

の提案

「日本企業による中国スマートシティ建設への貢献」

細谷 清 海外エコシティプロジェクト協議会代表理事

「日本企業による中国スマートシティ開発への貢献の可能性と課題、そして中国への提

案~デベロッパーの視点~」

小林 誠治 三井不動産諮詢(北京)有限公司総経理

「スマートシティを支える日本の TOD」

王 嘉和 株式会社日建設計城市設計部門開発管理室主任

「日立のスマートシティ実現への取り組み-柏の葉を例に-」

戸辺 昭彦 株式会社日立製作所イノベーションプロジェクト本部

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ソリューション・ビジネス推進本部事業主管

2)中国スマートシティ現場の課題と日本企業への提案

陳 寧 北京市西城区副区長

瀋 遅 中国城市小城鎮改革発展中心規劃院院長

江 泓毅 万通投資控股有限公司総経理、万通地産董事長

張 焱 港中旅集団地産公司副総経理

16:00~17:00 日本の関連技術・システムプレゼンテーション

「街づくりにおける静態交通と動態交通の融合」

大島 翼 株式会社駐車場綜合研究所代表取締役会長

「住民中心の持続可能な住宅管理~半世紀の知見を次世代へ~」

滝川 光是 日本総合住生活株式会社営業企画部新規事業担当部長

CCUD と日中経済協会・J-CODE との共同調査打合せ

日時:2015 年 7 月 11 日(土)09:00~11:15

場所:CCUD 8 階会議室

【中国側】

張 国 華 国家発改委 城市・小城鎮改革発展中心 総合交通研究院院長

胡 天 新 国家発改委 城市・小城鎮改革発展中心 規劃院副総規劃師、博士

段 国家発改委 城市・小城鎮改革発展中心 規劃師

馬 強 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心

中日城鎮化合作項目専門家

李 白 鷺 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心 中日項目主管

【訪中団】

川瀬 敦雄 国土交通省 都市局総務課国際室課長補佐

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

石川 貴之 日建設計総合研究所 理事・上席研究員

篠田 邦彦 日中経済協会 北京事務所長

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

栗村 英男 UR リンケージ 計画部副課長

王 嘉和 日建設計 都市デザイン部門開発 PM 室主任

和田 雅人 日建設計総合研究所 研究員

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

Page 84: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

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本田 りか 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

励 瑩 UR リンケージ 計画部

樊 蓉 日中経済協会北京事務所職員

鄭 瑾 日中経済協会 嘱託通訳

中国スマートシティ制度整備調査団(鄭州訪問)

岡本 巖 日中経済協会 理事長

細谷 清 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 代表理事

富田 建蔵 在中華人民共和国日本国大使館 一等書記官

大嶋 翼 駐車場綜合研究所 代表取締役会長

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

鄒 仁 英 駐車場綜合研究所 取締役執行役員国際事業本部長

付 開楠 日建設計大連 董事長

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

滝川 光是 日本総合住生活 営業企画部(新規事業担当)部長

通山 義浩 上海住友商事 開発企画部 部長

重野 勇 野村不動産

松尾 剛志 野村不動産諮詢(北京) 副総経理

横山 譲 駐車場綜合研究所 コンサルティング事業本部 担当部長

伊藤 智 日中経済協会 企画調査部課長

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

金 雪花 野村不動産諮詢(北京) 高級経理

邵 偉剛 上海住友商事 開発企画部 高級産品経理

本田 りか 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

楊 晶 日中経済協会 嘱託通訳

建業集団とのスマートシティ建設交流会

日時:2015 年 7 月 13 日(月)10:00~12:30

場所:鄭州建業艾美酒店3階会議室

【中国側】

胡 葆 森 建業集団 董事長

陳 建 業 建業地産股份有限公司 首席執行官

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劉 大 勇 建業集団 執行総裁

陳 剣 建業集団 副総裁兼鄭州区域総公司総経理

焦 笑 言 建業集団 助理総裁兼産品中心総監

安 豊 彬 建業集団 助理総裁兼鄭州区域総公司副総経理

王 常 然 建業集団 鄭州区域総公司助理総経理

王 有 為 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心 交通院副総規劃師

馬 強 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心

中日城鎮化合作項目専門家

李 白 鷺 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心 中日項目主管

鄭州市関係政府機関との交流

日時:2015 年 7 月 13 日(月)15:00~17:00

場所:鄭州市鄭東新区展覧館会議室

【中国側】

張 建 慧 鄭東新区管理委員会書記

袁 聚 平 鄭州市政府副秘書長

楊 東 方 鄭州市規劃局長

李 書 峰 鄭州市発改委主任

胡 葆 森 建業集団董事長

趙 新 民 鄭州市城管局長

劉 志 敏 鄭州市軌道弁主任

郭 拥 軍 鄭州市軌道公司董事長

王 立 新 鄭州市建設委員会副主任

屈 学 敏 鄭州市財政局副局長

楊 智 勇 鄭州市房管局副局長

夏 楊 鄭州市発改委副主任

王 旭 東 鄭州市発改委副主任

張 樹 忱 鄭州市外事弁公室副主任

楊 杭 軍 鄭州市民政局副局長

鄭州市関係政府機関との交流会及び建業集団との日中スマートシティ建設交流会に

おける議論を以下にまとめた。

1)鄭州市政府の考え方

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張建慧 鄭東新区管理委員会書記や楊東方 鄭州市規劃局長によれば、鄭州市として今

後の課題と日本側への期待は次の通り。

①TOD

実現はしなかったが、2012 年、鄭州市内の旧駅改装設計を日本企業に依頼する検討

をしたことがある。日本の経験を鄭州東駅(高速鉄道の停車駅)周辺のモデル開発に適

用出来ることを期待している。同時に、都市における交通、人の流れ、駅を中心とした

商業開発及びそのビジネスチャンスを探ることも期待。例えば、鄭東新区龍湖区では、

軽量軌道交通や地下鉄、タクシー、公共交通等を戦略的に開発し、人が集まる地域に成

長させたい。まずは大きなイメージを作成した上で、個々のプロジェクトにつき個別に

交流していくことになる。

日本は都市開発における交通システムに対し素晴らしいソリューションを持ってい

る。日本の都市化経験に基づく開発理念や関連技術を鄭州市の都市化建設理念と摺り合

わせ、両国協力のチャンスを探るという考えに賛同。

鄭州市は、都市と交通の総合システム構築について考察を行うべく、日本への研修訪

日団派遣を計画中。その際に日本で更に詳細な交流ができる事を期待。

<王有成 中国城市・小城鎮改革発展中心 交通研究院院長>

鄭州市には、高速鉄道を含め非常に膨大な交通網計画がある。交通インフラの建設と

都市開発、土地利用を一体化して進める事が非常に重要な要素であり、日本の多くの経

験と CCUD の知識等を組み合わせ、プロジェクトに応用していくことが課題。制度上の

障害が多く存在しているし、鉄道運営の問題もあるが、鄭州市と日本が協力して建設を

推進することを期待。

②グリーン、低炭素、エコシティ

鄭東新区の龍湖区をモデル地区として開発を進める計画。

<王有成院長>

CCUD もエコシティを全国的に推進しているが、環境汚染の酷い都市であっても、自

らエコシティと名乗っているケースもあり、エコシティの指標、規格制定は非常に意味

のあるもの。こうした指標が整備できれば、鄭州をモデルケースとして河南省のみなら

ず全国のスマートシティやエコシティ建設に普及させ、他都市でのプロジェクトが本当

に緑色都市であるのか審査できるようになる。天津エコシティでは私自身もプロジェク

トの一部に参画したが、非常に複雑な基準体系になっている。海外の実施例なども多く

参考にしたが、国情の違いもあるので、如何にして国際的技術を中国国内に適用し、そ

の役割を発揮させるかが重要。

Page 87: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

86

③文化財

河南省の地下文化財数は全国 1 位で、地上の文化財数は全国 2位。歴史文化財を保護

しなければならないが、地下文化財の場合、位置は概ね把握できているが、まだ全てで

はない。

2)日本側の考え方

日本側からの提言は次の通り。

①岡本巖 日中経済協会 理事長

設備、ファシリティについてのライフサイクルでのコスト評価が重要。日本企業の提

案するいろいろなプロジェクト、あるいはそれを構成する設備は、初期投資、イニシャ

ルコストで言えば少し割高だという場面が少なくない。他方で、日本の設備はしっかり

としたメンテナンスを伴って耐久性が長いうえ、時間が経っても当初の設計能力、性能

を長期間維持できるため、ランニングコストが安くなり、プロジェクト総費用全体で見

たときのコストは、必ずやコンペティティブなものである。中国側にはライフサイクル

コストでの評価に対する留意を希望する。

②細谷清 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 代表理事

日本のどのようなノウハウ、経験が活きるのか。柏の葉のスマートシティは、健康、

エネルギー、あるいは産学による起業等のいろいろな業態が組み合わさって一つの街づ

くりを進めている。多業種が連携してスマートシティづくりを進めるという形になって

いる。日本のいろいろなプレイヤーが連携して街づくりを進めるモデルを考えている。

その都市における問題解決へ向けた、地域の政府、地域のデベロッパーと日本の各企

業が、共同研究して推進するのがエコシティと認識。都市によって取り組むべき事柄は

少しずつ異なる。

J-code は、エコシティの基準や評価システムを研究した事がある。参画する民間企

業へのインセンティブや規則を作成しなければ、日本企業も動きづらい。最も初期の段

階で、内部委員会により研究した。しかし、基準のみを先行して作ると、実施地域での

特性に対応しきれなくなることを懸念。具体的な協力が進む中で、個別に提示していく

アイテムを整えている。

軽量軌道交通などを含めたかなり大規模なエコシティやスマートシティでは、地方都

市が主導的に行う部分が非常に大きくなる。駅周辺の開発等ある程度の下地部分を地方

政府が行うという前提があり、その上で民間が住民の視点でスマートな街を建設する部

分において民間資金が活用される。

日本側がイメージする協力案件は、もう少し小規模な街作り。スマートシティの評価

システム作りも、街の規模によって全く異なるものになる。

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③飯塚浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

日本でもそうだが、新たな不動産の試みをすると、なかなか市場に受け入れられない

タイムラグが発生する。新たな付加価値を市場に受け入れてもらえるまでの間、どうや

ってスマートシティの新しい試みを進めるのか、推進していくのかという時には、日本

では政府が補助金を始めたり、それから容積率にボーナスを与えたりして支援すること

がある。

④滝川光是 日本総合住生活株式会社 営業企画部新規事業担当部長

日本は住建設から住生活に重点を置いた取り組みが始まっている。住み慣れた地域で

どう長く暮らしていくかがポイントであり、居住者の視点からの管理が重要。事故対応、

資産価値の維持管理、顧客ニーズへのレスポンス等を重視。

日常の不具合が起きたとき、事故、修繕等に対応するために、技術研究、商品開発等

を行っている。エレベーターのない既存ビルへの中層エレベーター設置、超高層ビルで

のモニター劣化診断による修繕内容確認等ができる。顧客の視点に立ち、居住者が安心、

安全で快適に暮らし、長く住み続けられる持続可能な住宅管理を目指している。

居住者のライフステージ、ライフスタイルは常に変化していく。その時代の進展に沿

ったニーズにどう対応していくか。そのための生活サービスの充実、安全な住まいの確

保、時代に対応した取り組みというきめ細かな対応を日本では行っている。

西科姆(中国)有限公司訪問

日時:2015 年 7 月 14 日(火)14:00~15:30

場所:西科姆(中国)有限公司 応接室

【出席者】

高附 修一 西科姆(中国)有限公司 董事長・総経理

山口 忠弘 北京京盾西科姆電視安全有限公司 董事・総経理

【訪問者】

十川 日経協理事、細谷 J-code 代表理事、伊藤日経協課長、飯塚 J-code 事務局員、

本田 J-code 事務局員

智慧城市発展聯盟、中国智慧城市産業聯盟、中国智慧城市産業技術創新戦略聯盟

との合同意見交換

日時:2015 年 7 月 15 日(水)09:30~11:00

場所:中国城市・小城鎮改革発展中心会議室(中商大厦)

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【中国側】

馬 強 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心

中日城鎮化合作項目専家

李 白 鷺 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心

東アジア国際合作項目主管

熊 垓 智 中国智慧城市産業連盟 秘書長(工業信息化部系統)

李 超 中国智慧城市産業技術創新戦略連盟 常務副秘書長

(科学技術部系統)

趙 蕃 蕃 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心

発展改革試点処副主任科員 智慧城市発展連盟秘書処

【日本側】

細谷 J-code 代表理事、十川日経協理事、富田日本大使館一等書記官、伊藤日経協課長

飯塚 J-code 事務局員、本田 J-code 事務局員、楊晶通訳

(2)第第第第 1 回日中スマートシティ研究会開催と関係機関訪問の訪中回日中スマートシティ研究会開催と関係機関訪問の訪中回日中スマートシティ研究会開催と関係機関訪問の訪中回日中スマートシティ研究会開催と関係機関訪問の訪中

①目的

北京において、日系企業と中国側専門家とのグループミーティングである「第 1 回日

中スマートシティ研究会」を開催するほか、政府機関、シンクタンク及びスマートシテ

ィ発展連盟加盟企業に巡回訪問インタビューを行い、現状整理と課題・障害要因等の分

析につなげる。

②期間及び訪問地

2015 年 10 月 25 日(日)~29 日(木) 北京

③訪中者名簿

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

④日程

月日 時間 活動内容 宿泊

10 月 25

日(日)

13:40→16:00 関西→北京 CA928(今村)

北京

10 月 26

日(月)

10:00~12:30

14:00~15:30

北京易華録信息技術股份有限公司訪問

中城智慧城市建設研究会訪問

同上

10 月 27

日(火)

午前

14:00~16:30

研究会準備

第 1回日中スマートシティ研究会

(於:CCUD)

同上

Page 90: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

89

10 月 28

日(水)

09:30~10:30

14:00~15:00

北京市投資促進局訪問

神州数码(デジタルチャイナ)訪問

同上

10 月 29

日(木)

10:00~11:30

15:50→20:05

中国社会科学院城市発展・環境研究所訪問

北京→羽田 CA421(今村)

⑤活動概要

� 北京易華録信息技術股份有限公司は 1992 年設立の国有企業。「華録」は中華ビデオ

カメラの意味。1994 年、松下電器との合弁により大連工場でビデオデッキの生産を

開始。情報産業(ネットワーク、クラウド、ビッグデータ、プログラム等)、ハイエ

ンド製造業、文化産業の 3分野結合でスマートシティ建設に貢献。各地で一桁億元

から十数億元までの規模での受注実績あり。

� 中城智慧城市建設研究会は、住宅・城郷建設部、科学技術部から国家スマートシテ

ィ試点事業を請負。全国 3 千の県・市の行政単位の 10%相当に当たる 277 試点か

ら共通点を取りまとめ、全国的な応用を図るとともに、各地域の発展に適したビジ

ネスモデルを研究。

� 第1回日中スマートシティ研究会

<次第>

参加者紹介

熊垓智 中国スマートシティ産業連盟秘書長

「スマートシティ建設における中国のチャンスと課題、日本企業との協力」

鄭明媚 スマートシティ発展連盟執行副秘書長

「北京・河北省地域で展開するスマートシティ事業

今村健二 日中経済協会関西本部事務局長

「スマートシティ関連の日本国内および中国における各種事業について」

高見澤学 日中経済協会北京事務所副所長

「日本のスマートシティの概要と対中協力の可能性」

質疑応答、意見交換

<中国側発言>

� 2015 年はスマートシティ建設メカニズムの構築に向け、25 の政府部門間で調整

が行われた。省庁をまたいで効率的に協調発展を進めるため、科学技術部、住宅・

城郷建設部、工業信息化部それぞれの傘下の連盟とともに行政サイドの連携を図

っている。

� 資金問題がボトルネックであり、ファンドを設立し、対象モデル都市を支援して

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90

はどうか。中国は PPP 方式を主眼としており、日本側の資金拠出に期待。

� スマートシティのビジネスモデルは、スマート化の程度を上げるごとに、関連部

分の資金がかさみ、コスト増につながる。商業銀行の心配は資金回収の期間であ

り、個人や民間資本も投資コスト回収のスパンと可能性を気にするため、商業化

がポイント。

� 中国のコミュニティや都市では、エネルギーに対して切迫性はないが、場所が変

われば、スマート化する部分やその組み合わせも違ったものになる。対象となる

コミュニティの具体的な事業に合わせ、そこに適した組み合わせプランを考える

ことが大切。

<日本側発言>

� プロジェクトのポイントとして、プロジェクトマネージャの配置及びプロジェク

トのキャッシュフローが重要。

� スマートシティという概念は、実感できるまで時間がかかるが、そこを使う人々

にメリット、享受できるものがないと長続きしないため、政府の力も借りながら、

啓蒙していくことが必要。

� コストがかかるので、付加価値を加えて回収していくことが必要だが、行政とし

ての直接的な資金面の補助や支援施策が期待される。

� 日本では、1社では街づくりができないので、事業パートナーに参画してもらい、

サービスを提供している。タウンマネジメント会社を作り、運営からサービスに

係るマネジメントフィーまでの回収を行う。長期的視点で、街のインフラ整備を

活用し、常に進化したサービス、世代交代に応じたサービスを提供できるように

している。

� スマートシティ事業には 4つの条件が必要。規模(最初はエリアではなく、コミ

ュニティで実行)、公共交通手段、実力ある大手企業の参画、信念。

� 地域ごとに課題が異なるので、プライオリティをつけてもらい、それに応じて日

本側から中国に合ったソリューションを提供したい。

� 北京市投資促進局からは、北京の都市開発に関し、工業・商業用地の開発許認可厳

格化、北京第 3空港プロジェクト、大気汚染改善に向けた交通規制・人口規制及び

省エネ・環境保全技術の重要性、等の紹介があった。また、京津冀の一体化推進に

伴う新しい都市づくりの可能性について言及があった。

� 神州デジタルは、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT、モバイルネッ

ト等の先進的技術を活用し、都市の 3次元バーチャルリアリティ映像と併せて基礎

的なデータによる公共サービスを提供している。サービス対象は、e 行政、都市管

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理、企業の 3 分野。

� 中国社会科学院城市発展・環境研究所では、中国政府がスマートシティ建設を本格

的に重視し始めたのは 2010 年以降であり、国家発展改革委員会、工業信息化部、

住宅・城郷建設部、科学技術部等が、単独あるいは複数省庁の連携で多様なプロジ

ェクトを実施していること、スマートシティ建設の重要分野は、スマート交通、ス

マート政務、エネルギーマネジメント、安全管理、スマートコミュニティ(養老、

健康管理)、地下共同溝網の建設とマネジメント等であること、等の紹介があった。

⑥出席者

【訪問者】

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

日中経済協会 嘱託通訳 古成賢(26 日午前、28 日午前)、

鄭瑾(26 日午後、27 日午後、28 日午後、29 日午前)

北京易華録信息技術股份有限公司訪問

日時:2015 年 10 月 26 日(月)10:00~12:30

【出席者】

馬 旭 光 北京易華録信息技術股份有限公司 副総裁

王 宇 北京易華録信息技術股份有限公司 智慧城市BG

規劃設計中心総経理 ほか

李 白 鷺 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心

国際協力部プロジェクトマネージャ

中城智慧城市建設研究会訪問

日時:2015 年 10 月 26 日(月)14:00~15:30

【出席者】

李 建 平 中城智慧城市建設研究会 秘書長

遅 樹 亮 中城智慧城市建設研究会 副秘書長

邱 一 特 中城智慧城市建設研究会 戦略協作部

李 白 鷺 国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心

国際協力部プロジェクトマネージャ

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92

第1回日中スマートシティ研究会

日時:2015 年 10 月 27 日(火)14:00~16:30

場所:国家発展改革委員会城市・小城鎮改革発展中心会議室

(北京市西城区三里河東路 5号中商大厦8階)

【中国側】

熊 垓 智 北京中科新型城鎮化研究院教授、秘書長

鄭 明 媚 国家発展改革委員会城市和小城鎮改革発展中心副研究員

涂 立 森 万通投資控股股份有限公司常務副総経理

楊 志 強 北京万通弘泰商貿有限公司総経理

張 玲 清華大学建築学院博士、博士後研究員

馮 波 国家発展改革委員会城市和小城鎮改革発展中心博士

智慧低炭素城市処副処長、スマートシティ発展連盟副秘書長

馬 強 国家発展改革委員会城市和小城鎮改革発展中心

日中都市化プロジェクト専門家

李 白 鷺 国家発展改革委員会城市和小城鎮改革発展中心

国際協力部プロジェクトマネージャ

尹 江 燕 北京国楓律師事務所 弁護士

【日本側】

富田 建蔵 駐中国日本国大使館経済部一等書記官

付 開 楠 日建設計大連董事長

千原陽一郎 パナソニックチャイナ事業企画担当部長

顧 一 能 日立(中国)有限公司 PJ 開発部経理

袁 夢 笳 日立(中国)有限公司 PJ 開発部高級主管

近藤 哲生 三井不動産諮詢(北京)有限公司副総経理

孫 海 鴎 三井不動産諮詢(北京)有限公司高級経理

熊谷 嘉人 三菱東京日聯銀行(中国)有限公司中国投資銀行部次長

多田 修 三菱東京日聯銀行(中国)有限公司企画部上席調査役

松尾 剛志 野村不動産諮詢(北京) 副総経理

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

鄭 瑾 日中経済協会 嘱託通訳

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93

北京市投資促進局訪問

日時:2015 年 10 月 28 日(水)09:30~10:30

【出席者】

張 麗 北京市投資促進局 対外投資促進処副処長

柯 鹏 北京市投資促進局 対外投資促進処副処長

神州デジタル訪問

日時:2015 年 10 月 28 日(水)14:00~15:00

神州デジタル社の視察コース 案内者

李 白 鷺 国家発展改革委員会城市和小城鎮改革発展中心

国際協力部プロジェクトマネージャ

中国社会科学院城市発展環境研究所訪問

日時:2015 年 10 月 29 日(木)10:00~11:30

【出席者】

单 菁 菁 中国社会科学院城市発展環境研究所 城市規劃研究室主任

王 業 強 中国社会科学院城市発展環境研究所 土地経済不動産研究室主任

(3)モデルプロジェクトエリア視察訪中モデルプロジェクトエリア視察訪中モデルプロジェクトエリア視察訪中モデルプロジェクトエリア視察訪中

①目的

本訪中では、スマート化、グリーン化を始め、中国が推進している都市開発の先行的

な取組み事例を選定し、関連の政府機関、中国企業、日系企業等との交流を行い、各プ

ロジェクトの特徴や課題を把握し、今後のビジネスモデルの分析・提言につなげる。

広東省佛山市は中独協力モデル都市の一つであるが、同市で開催される CCUD 主催の

「2015 中欧都市サスティナブル発展フォーラム」に出席するほか、低炭素化への取組

みを中国企業にインタビューする。寧波市では三井不動産の開発事例を視察し、深圳市

では、モデルプロジェクト候補サイトの開発企業との交流を行うほか、日系企業にスマ

ート化に関わる事業展開についてインタビューする。

②期間及び訪問地

2015 年 12 月 17 日(木)~23 日(水) 寧波、佛山、深圳

③訪中団名簿

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

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今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

伊藤 智 日中経済協会 企画調査部課長

陶 旭 日中経済協会 嘱託通訳

④日程

月日 時間 活動内容 宿泊

12 月 17

日(木)

10:00→12:25

13:50→15:50

14:35→16:55

14:56→16:46

羽田→上海虹橋 NH969(十川、飯塚)

地下鉄乗継

関空→寧波 MU2098(今村)

北京→寧波 CA1541 (陶)

高速動車 G7517(乗継)上海虹橋→寧波

(十川、飯塚)

寧波

12 月 18

日(金)

10:00~11:45

13:00~13:50

13:50~14:15

16:40→18:55

(十川、飯塚、今村、陶)

杉井アウトレット広場・寧波訪問

寧波市東部新城銀泰城、地下鉄視察

寧波市国際投資促進局訪問

寧波→広州 MU5237

佛山

12 月 19

日(土)

09:30~10:10

10:10~12:45

11:35→14:20

13:45~17:00

(十川、飯塚、今村、陶)

瀚天科技城視察

碳連科技有限公司訪問

太原→広州 CZ3702(高見澤)

2015 中欧都市サスティナブル発展フォーラム

同上

12 月 20

日(日)

09:25→13:50

09:30→12:20

15:00~17:00

羽田→広州 NH923(伊藤) 車で深圳へ

(十川、飯塚、今村、高見澤、陶)

バス移動 佛山→深圳

光明新区開発予定地、高速鉄道光明城駅等視察

深圳

12 月 21

日(月)

午前

12:30~16:00

16:00~18:30

中国側との緊急打合せ

深圳市民中心、深圳市工業展覧館等視察

融智節能環保(深圳)有限公司訪問

同上

12 月 22

日(火)

10:00~14:10

15:00~17:00

15:05→20:00

(十川、飯塚、今村、高見澤、伊藤、陶。藤原)

深圳市益田集団股分有限公司訪問

綜合開発研究院(中国・深圳)訪問

広州→羽田 NH924(飯塚、伊藤)

同上

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12 月 23

日(水)

09:40→13:05

10:40→13:05

15:05→20:00

18:35→21:30

深圳→北京 ZH9851(高見澤、陶)

深圳→上海浦東 CZ3831(今村)

広州→羽田 NH924(十川)

(乗継)上海浦東→関西空港 MU729(今村)

⑤活動概要

� 杉井アウトレット広場・寧波では、同施設の合弁事業としての開発経緯と現状、今

後の展望についてインタビューした。スマートシティ建設については、現地は日本

の発展ステージと 20 年位ずれており、収入が上がって基本的な生活が確保され、

余裕が出てきて環境にも目が向くようになってからの話になるとの見解。

� 寧波市国際投資促進局では、寧波は最近、海洋、ハイテク、ロボット産業への投資

を歓迎しており、日本からの来客も多いとのこと。会議室には寧波市規劃設計研究

院作成の「寧波市城市総体規劃(2004-2020)」図が掲示されていた。

� 瀚天科技城では、佛山市南海区の環境産業への取組みについてインタビューした。

南海区の特徴は、多様な環境サービスに対応できる関連企業が集中していることで、

日系企業も 100 社近く進出している。日系企業による実証事業も展開されている。

� 碳連科技有限公司は 2013 年の設立だが、地域の低炭素化促進をビジネスにして急

成長している企業。海外にも展開しており、海外の先進的技術を導入し、それを現

地化し、さらに海外進出につなげている。

� 「2015 中欧都市サスティナブル発展フォーラム」は CCUD が主催。訪中団は、「投融

資メカニズムのイノベーションと PPP」、「科学技術のイノベーションとスマートシ

ティ」、「グリーン発展と低炭素都市」の分科会に出席し、中国各地政府・企業及び

海外企業の様々な取組みについて理解を深めた。

� 融智節能環保(深圳)有限公司は中日台の合弁企業で、ESCO 事業及び LED 等のソリ

ューションを実施。ESCO 事業の仕組みそのものがスマートシティのポリシーに重

なることから、スマートシティ全体ではないが、スマートメーターなどのデバイス

で深圳市役所や深圳空港の荷物仕分けシステム、深圳地下鉄など、広く展開してい

るところ。

� 深圳市益田集団股分有限公司は、住宅、商業施設開発をコア事業とし、高速道路、

不動産管理、生物製薬等も展開する不動産総合開発企業。CCUD の薦めに応じて同社

を訪問し、計画中のスマートシティ事業候補(深圳坪山新区、長春シリコンバレー

新城、北京郊外・香河)についてインタビューを行った。

� 綜合開発研究院(中国・深圳)は政府系シンクタンクで、低炭素化、グリーン発展

を巡る計画策定のための調査研究も数多い。スマートシティ計画を推進するに当た

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96

っての深圳市のニーズや課題、関連制度につき把握していると考えられることから

同院を訪問し、CCUD と共にインタビューを行った。

⑥出席者

杉井アウトレット広場・寧波訪問

日時:2015 年 12 月 18 日(金)10:00~11:45

【出席者】

岩本 貴志 三井不動産集団(上海)投資諮詢有限公司

事業推進総部 商業施設事業部 兼 商業施設営業部 総監

寧波市国際投資促進局訪問

日時:2015 年 12 月 18 日(金)13:50~14:15

【出席者】

余 韵 寧波市国際投資促進局 職員

【訪問者】十川、今村

瀚天科技城訪問

日時:2015 年 12 月 19 日(土)09:30~10:10

【出席者】

林 慈 生 佛山早稲田信息諮詢有限公司 社長

碳連科技有限公司訪問

日時:2015 年 12 月 19 日(土)10:10~12:45

【出席者】

唐 錦 成 碳連科技有限公司 董事長 CEO ほか職員

融智節能環保(深圳)有限公司訪問

日時:2015 年 12 月 21 日(月)16:00~18:30

場所:深圳南山区更新技術産業園達実スマートビル

【出席者】

井手 義浩 融智節能環保(深圳)有限公司 総経理

李 信 洪 融智節能環保(深圳)有限公司 副総経理・技術総監

益田 光 融智節能環保(深圳)有限公司 営業総監

呂 楓 深圳達実智能股份有限公司 副総裁

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陳 麟 深圳達実智能股份有限公司 智慧城市事業部総経理

深圳市益田集団股分有限公司訪問

日時:2015 年 12 月 22 日(火)10:00~12:00 (12:00~14:10 昼食懇談)

【出席者】

呉 群 力 深圳市益田集団股份有限公司 董事長

黎 志 強 深圳市益田集団股份有限公司 執行董事・総裁

劉 力 軍 深圳市益田集団股份有限公司 商業集団董事長

初 暁 輝 深圳市益田集団股份有限公司 董事・副総裁

鄭 自 元 深圳市益田集団股份有限公司 深圳前海益田金融控股有限公司総裁

孟 繢 深圳市益田集団股份有限公司 設計管理中心総経理

韓 振 国 深圳市益田集団股份有限公司 首席信息官(IBMから転職)

張 琛 深圳市益田集団股份有限公司 営業中心策劃経理

孫 運 洲 深圳市益田集団股份有限公司 総裁弁公室主任助理

馮 波 CCUD:スマートシティ担当副処長

綜合開発研究院(中国・深圳)訪問

日時:2015 年 12 月 22 日(火)15:00~17:00

【出席者】

郭 万 達 綜合開発研究院(中国・深圳) 常務副院長

蒋 学 民 綜合開発研究院(中国・深圳)

城市発展・園区経済規劃研究所執行所長

劉 宇 綜合開発研究院(中国・深圳)城市化研究所 副主任研究員

鄭 鑫 綜合開発研究院(中国・深圳)城市化研究所 項目研究員

馮 月 秋 綜合開発研究院(中国・深圳)交流合作部部長

劉 芸 娉 綜合開発研究院(中国・深圳)交流合作部項目協調員

張 蔚 綜合開発研究院(中国・深圳)職員

馮 波 CCUD:スマートシティ担当副処長

(4)深圳スマートシティ可能性・追加調査出張訪中深圳スマートシティ可能性・追加調査出張訪中深圳スマートシティ可能性・追加調査出張訪中深圳スマートシティ可能性・追加調査出張訪中

①概要

前回 2015 年 12 月の調査時には、深圳到着日(12 月 20 日)に光明新区山間部崩落事

故が発生し、目的としたインタビュー及び視察調査は不可能となった一方、共同調査主

Page 99: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

98

催者である CCUD から深圳に本社を置くデベロッパー「益田集団」を紹介され、董事長

以下、スマートシティ担当責任者等から同社の計画するプロジェクトのなかにも日本の

システム導入によるスマートシティ化の可能性があることが判明した。但し、同訪問は、

上記の背景による代替的な訪問であったことから、プロジェクト候補地(坪山新区)の

視察や現地政府へのインタビュー等は後日に期すこととなった。

今回は、別件での日中経済協会岡本理事長の深圳出張に際し、プロジェクト候補地の

視察と現地政府のインタビューのアレンジが可能となったため、これに合わせて急遽追

加調査を実施したもの。

②期間及び訪問地

2016 年 1 月 12 日(火)~14 日(木)深圳

③訪中者名

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

④日程

月日 時間 活動内容 宿泊

1 月 12 日

(火)

8:25→12:30 成田→深圳

深圳市

1 月 13 日

(水)

10:00~12:30

14:00~15:30

坪山新区・BYD 視察

坪山・益田共和城邦プロジェクトサイト視察

同上

1 月 14 日

(木)

10:00~12:00

深圳市規劃国土資源委坪山管理局事務中心と

の意見交換

深圳→成田

(5)深圳深圳深圳深圳「益田共和城邦」「益田共和城邦」「益田共和城邦」「益田共和城邦」スマートシティスマートシティスマートシティスマートシティ・セミナー出張・セミナー出張・セミナー出張・セミナー出張訪中訪中訪中訪中

①概要

前回 2016 年 1 月に深圳坪山新区を訪問した結果を受け、深圳市益田集団股份公司が

計画している「益田共和城邦」をモデルプロジェクトとして形成することに向け、より

一歩進んだ交流を図ることとした。今回は、プロジェクトへの日本企業の参入可能性の

検討、ポテンシャル向上に向け、日中双方の関係者の参加によるクローズドセミナーを

開催した。

また、益田集団は、日本及び内外のリーディングカンパニーとの協力によりスマート

コミュニティ、低炭素・省エネルギー等を含む先進技術・システムの導入を計画し、将

来の中国のスマートシティ建設と新たな運営モデル検討に資するものとしたいとして

おり、同社主催の「中日英スマートシティ産業発展サミット論壇」においても議論を深

Page 100: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

99

めた。

②期間及び訪問地

2016 年 2 月 24 日(水)~27 日(土)深圳

③訪中団名簿

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

篠田 邦彦 日中経済協会 北京事務所長

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

伊藤 智 日中経済協会 企画調査部課長

鈴木 玲子 日中経済協会 嘱託通訳

楊 晶 日中経済協会 嘱託通訳

④日程

月日 時間 活動内容 宿泊

2 月 24 日

(水)

08:50→12:50

08:50→12:50

16:30~18:00

成田→深圳 ZH9066(十川、飯塚、今村、伊藤)

北京→深圳 CA1367(高見澤)

益田集団との打合せ

深圳市

2 月 25 日

(木)

08:05→11:35

14:30→17:45

15:15~16:30

16:40~17:20

19:00~21:00

北京→深圳 CA984(篠田、鈴木)

北京→深圳 CA1397(楊)

益田共和城邦プロジェクトサイト及び

坪山新城展示館視察

坪山新区管理委員会との意見交換

歓迎夕食会

同上

2 月 26 日

(金)

09:00~11:40

15:30→18:40

14:00~17:45

19:40→23:00

20:00~21:40

益田共和城邦スマートシティ建設・運営クロー

ズドセミナー(於:深圳市坪山新区管理委員会)

深圳→北京 CZ3189(鈴木、楊)

中日英スマートシティ産業発展サミット論壇

(於:深圳市坪山新区管理委員会)

深圳→北京 CZ3155(篠田)

サミット論壇参加者交流夕食会

同上

2 月 27 日

(土)

14:50→18:05

15:40→20:50

16:10→20:30

深圳→北京 CA3306(高見澤)

深圳→成田 ZH9065(十川、伊藤、飯塚)

広州→関空 CZ393(今村)

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100

⑤活動概要

� 日本企業とともに益田共和城邦プロジェクトサイトを視察し、益田集団から建設計

画の紹介を受けた。坪山新城展示館視察では、坪山新区の発展状況について理解を

深めた。さらに、坪山新区管理委員会とも今後の計画等について意見交換した。

� 益田共和城邦スマートシティ建設・運営クローズドセミナーでは、日本企業から柏

の葉スマートシティの経緯・計画及びシステム等についてプレゼンテーションを行

うとともに、参加各社が自社の事業・技術を紹介した。また、日中間でスマートシ

ティ建設の方向性、課題等について意見を交換した。

� 中日英スマートシティ産業発展サミット論壇では、中国、日本の専門家がスマート

シティ建設の将来、技術的進歩、TOD 等について基調報告を行ったほか、英国の専

門家も加わり、これまでの成果及び課題に関して討論が行われた。

⑥出席者

坪山新区管理委員会との意見交換

日時:2016 年 2 月 25 日(木)16:40~17:20

場所:深圳市坪山新区管理委員会 207 会議室

【中国側】

姚 早 興 深圳市規劃・国土資源委員会坪山管理局長

夏 冰 益田集団 副総裁、深圳市益田世達投資管理有限公司 董事長 他

【日本側】

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

篠田 邦彦 日中経済協会 北京事務所長

展 梁 富士電機株式会社 北京駐在員事務所副所長

大嶋 翼 株式会社駐車場綜合研究所 代表取締役会長

鄒 仁 英 株式会社駐車場綜合研究所 国際事業本部長

藤原孝之 三菱東京日聯銀行(中国)有限公司

中国投資銀行部中国ビジネスソリューション室

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

伊藤 智 日中経済協会 企画調査部課長

鈴木 玲子 日中経済協会 嘱託通訳

Page 102: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

101

益田共和城邦スマートシティ建設・運営クローズドセミナー

日時:2016 年 2 月 26 日(金)09:00~11:40

場所:深圳市坪山新区管理委員会 207 会議室

【中国側】

<中国城市・小城鎮改革発展中心・関係企業>

馮 波 中国城市・小城鎮改革発展中心 スマート低炭素シティ処副処長

李 白 鷺 中国城市・小城鎮改革発展中心 国際合作処

東アジア国際合作プロジェクト主管

朱 振 旗 新奥能源研究院 院長

劉 敏 新奥智能能源 総裁

張 鳴 北京建誼集団 董事長

祝 鵬 北京泰豪知能工程有限公司 副総経理

鄧 超 語路控股公司 CEO

張 自 力 雲浮市佛雲中鉄投資発展有限公司 執行総経理

<政府代表>

姚 早 興 深圳市規劃・国土資源委員会坪山管理局長

<軟通動力集団>

劉 超 軟通動力集団 戦略発展総監

葉 朱 蓀 軟通動力 華南大区秘書長兼深圳公司総経理

余 偉 傑 軟通動力深圳公司 副総裁

蒼 杉 百度会社 カスタマーマネージャー

<ファーウェイ技術有限公司>

呉 玉 奎 ファーウェイ技術有限公司 深圳政府・公共事業部部長

周 小 紅 ファーウェイ技術有限公司 スマートシティ研究開発部

方 承 京 ファーウェイ技術有限公司 深圳企業業務部

<華陽国際設計集団>

孔 輝 華陽国際設計集団 設計総監

石 燦 華陽国際設計集団 主任設計師

陳 恵 平 華陽国際設計集団 主任設計師

<深圳市益田集団股份有限公司>

呉 群 力 益田集団 董事長

黎 志 強 益田集団 執行董事、総裁

夏 冰 益田集団 副総裁、深圳市益田世達投資管理有限公司 董事長

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102

初 暁 輝 益田商業集団 副董事長

呂 艶 益田集団 総裁助理、営業販売センター総経理

韓 振 国 益田集団 首席信息官

劉 冰 益田集団 首席戦略官

韓 剛 深圳市益田世達投資管理有限公司 総経理

王 定 中 深圳市益田世達投資管理有限公司 副総経理

伊 英 国 深圳市益田世達投資管理有限公司 副総経理

孟 繢 益田集団設計管理センター 総経理

王 子 鵬 益田集団設計管理センター 建築設計副総監

【日本側】

篠田 邦彦 日中経済協会 北京事務所長

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

栄 千治 株式会社日建設計 設備設計グループ エネルギー・情報計画部長

牧野(張)暁輝 日建設計(上海)諮詢有限公司 董事・副総経理

増田 亮太 株式会社日立製作所 社会イノベーション事業推進本部

ソリューション・ビジネス推進本部

グローバルエンジニアリング本部グローバル戦略室主任技師

袁 夢 茄 日立(中国)有限公司 プロジェクト開発部

展 梁 富士電機株式会社 北京駐在員事務所副所長

大嶋 翼 株式会社駐車場綜合研究所 代表取締役会長

鄒 仁 英 株式会社駐車場綜合研究所 国際事業本部長

藤原 孝之 三菱東京日聯銀行(中国)有限公司

中国投資銀行部中国ビジネスソリューション室

今村 聡 東芝(中国)有限公司 営業本部副本部長

梁 傑 東芝(中国)有限公司 広州分公司総経理

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

伊藤 智 日中経済協会 企画調査部課長

鈴木 玲子 日中経済協会 嘱託通訳

楊 晶 日中経済協会 嘱託通訳

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103

中日英スマートシティ産業発展サミット論壇

日時:2016 年 2 月 26 日(金)14:00~17:45

場所:深圳市坪山新区管理委員会 3 階大ホール

【中国側】(午前セミナー参加者以外)

李 鉄 中国城市・小城鎮改革発展中心 主任

スマートシティ発展連盟理事長

張 備 深圳市坪山新区管理委員会 党工作委員会書記

李 清 泉 深圳大学 学長

郭 仁 忠 中国工程院 院士

孟 建 民 中国工程院 院士

邱 建 中 深圳市坪山新区信息化管理弁公室 主任

馮 ○(山偏に容) 軟通動力 副董事長

郭 力 群 鳳凰都市メディア 副総裁 他

【英国等】

Matthew Rous 英国駐広州領事館 総領事

Tim Heaht ノッチングハム大学 教授

Jaya Skandamoorthy BRE 中国区 総裁

Peter Kindel SOM 建築設計事務所 規劃総監

【日本側】

篠田 邦彦 日中経済協会 北京事務所長

十川 美香 日中経済協会 理事・企画調査部長

栄 千治 株式会社日建設計 設備設計グループ エネルギー・情報計画部長

牧野(張)暁輝 日建設計(上海)諮詢有限公司 董事・副総経理

増田 亮太 株式会社日立製作所 社会イノベーション事業推進本部

ソリューション・ビジネス推進本部

グローバルエンジニアリング本部グローバル戦略室主任技師

袁 夢 茄 日立(中国)有限公司 プロジェクト開発部

展 梁 富士電機株式会社 北京駐在員事務所副所長

大嶋 翼 株式会社駐車場綜合研究所 代表取締役会長

鄒 仁 英 株式会社駐車場綜合研究所 国際事業本部長

藤原 孝之 三菱東京日聯銀行(中国)有限公司

中国投資銀行部中国ビジネスソリューション室

今村 聡 東芝(中国)有限公司 営業本部副本部長

Page 105: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

104

梁 傑 東芝(中国)有限公司 広州分公司総経理

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

伊藤 智 日中経済協会 企画調査部課長

2222....訪日調査団受入訪日調査団受入訪日調査団受入訪日調査団受入

(1)中国城市中国城市中国城市中国城市・小城鎮改革発展中心・小城鎮改革発展中心・小城鎮改革発展中心・小城鎮改革発展中心 喬潤令副主任一行訪日団喬潤令副主任一行訪日団喬潤令副主任一行訪日団喬潤令副主任一行訪日団

①目的

CCUD の喬潤令副主任を団長とする中国側専門家調査グループを招聘し、日中省エネ

ルギー・環境総合フォーラムのスマートシティ分科会での発表・討論を行う。また、モ

デルプロジェクト候補サイトの一つである深圳市光明新区一行の来日機会を捉え、「深

圳光明新区鳳凰城スマートシティ・ソリューション検討ワークショップ」を開催し、日

本企業との交流を通じて現地の状況と課題を把握する。さらに、訪日団は日本の代表的

なスマートシティ及びTOD開発地を訪問し、視察・交流を行う。こうした活動を通じ、

中国のスマートシティ建設と日本側の協力の在り方に関する分析を深め、提言事項の抽

出に資する。

②期間及び訪問地

2015 年 11 月 28 日(土)~12 月 2 日(水) 東京、横浜、柏の葉、大阪

③訪日団名簿

喬 潤 令 中国城市・小城鎮改革発展中心 副主任

呉 曉 剛 中国城市・小城鎮改革発展中心 主任助理

馬 強 中国城市・小城鎮改革発展中心 日中都市化プロジェクト専門家

呉 曉 敏 中国城市・小城鎮改革発展中心 スマートシティ部

プロジェクトマネージャ

李 白 鷺 中国城市・小城鎮改革発展中心 国際協力部

プロジェクトマネージャ

④日程

月日 時間 活動内容 宿泊

11 月 28

日(土)

08:35→12:50

午後

北京→羽田 CA181

訪日団との事業予定、日程等打合せ

羽田

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105

11 月 29

日(日)

10:00~12:27

14:00~16:50

日中省エネルギー・環境総合フォーラム

(全体会議)

スマートシティ分科会

会場:ザ・プリンスパークタワー東京

同上

11 月 30

日(月)

09:00~11:30

14:00~16:30

UR本社訪問及び「みなとみらい 21」現場視察

【深圳市光明新区一行参加】 場所:横浜

深圳光明新区鳳凰城スマートシティ・ソリュー

ション検討ワークショップ

【深圳市光明新区一行参加】

場所:日中経済協会

秋葉原

12 月 1 日

(火)

10:00~11:20

13:00→15:33

16:00~18:00

柏の葉スマートシティ 視察

【深圳市光明新区一行参加】

東京→新大阪(新幹線 のぞみ 229 号)

大阪駅周辺TOD関連施設 視察

【深圳市光明新区一行参加】

南船場

12 月 2 日

(水)

09:00→11:20 関西→北京 CA162

⑤活動概要

� 日中省エネルギー・環境総合フォーラムのスマートシティ分科会において、CCUD 喬

副主任がスピーチ。中国の都市化は、第 13 次五カ年計画から新段階に入り、規模

から質へ、低炭素、コンパクトシティ等を発展目標として「都市の更新改造」、「ス

マートシティとグリーンシティの建設」が進むと強調。また、中国の都市の課題は、

公共交通が主役の街づくりだが、高速鉄道の駅と既存の都市が隔絶しており、日本

のTODに期待していると述べた。

� UR 本社では、横浜市の「みなとみらい 21 プロジェクト」の計画から実行までの紹

介を受け、中国側は「建設面の関連規制」、「プロジェクト推進における国と地方自

治体、UR、企業の関係」等について質問した。

� 深圳光明新区鳳凰城スマートシティ・ソリューション検討ワークショップ

<次第>

参加者紹介

1.喬潤令副主任から CCUD の取り組みの現状紹介

2.深圳市光明新区のスマート化構想説明

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106

3.スマートシティ建設の日中協力に関する意見交換

<中国側発言>

� CCUD 喬副主任は、「スマートシティは、情報化技術活用により、人と都市の運営

に関わる機能をつなぎ、都市の管理と運営を細やかに、人に重きを置き、高効率

に資源配置の最適化を実現すること。つまり、最新の情報化技術と都市の管理・

運営及び公共サービスを密接に結びつけること」、「グリーンシティは、13・5 の

理念。グリーン・低炭素・エコを包括。コア概念は、エネルギーの高効率利用」、

「13・5 では、グリーン GDP の概念に基づき、各地方政府及び企業の人事考課に

環境コストを導入(①省エネ・排出削減、②自然資産価値の評価体系、③着任・

離任時の生態環境考課制度)」と述べた。

� 深圳市光明新区管理委員会 徐松明副主任は、光明新区の概要を紹介。「区の面積

は 156 平方キロ、鳳凰城は 15 平方キロ」、「CCUD から認可された国家新型城鎮化

総合試点の一つ」、「鳳凰城を次の 30 年にわたる産業集積基地、新興産業をリー

ドする地としたい」、「中山大学光明キャンパスの誘致が決定。工学部等の理系を

重点としてイノベーション力を高める」、「グリーンリングというコンセプトで開

発」、「高速鉄道駅の開発や河川の改善について日本企業に協力を得たい」。

<日本側発言>

� 中国側の課題は、デベロッパーが本気にならないと進まないこと。コストがかか

りすぎ、収益が上がるビジネスモデルかどうかがまだ見えていないので、疑心暗

鬼になっている。

� 中国側デベロッパーと日本側の技術を持ったプレイヤーとの組み合わせで、スマ

ートシティあるいはグリーンシティ建設のビジネスができないかと検討中。この

場合、各都市の情報を整理する中国側インテグレータが不可欠。

� 中国は広く、発展段階によってそれぞれの都市が抱えているニーズも異なるため、

一つの場所を選んでニーズを見極め、最終的には事業の利益モデルをつくること

が目標になる。

� 金融スキームでいえば、PPP は都市化づくりの資金的な解決方法であるが、ニー

ズに合わせ、それが最も経済効果のあるプロジェクトの進め方であると認識でき

た時にはじめて使われるもの。

� スマートシティを進める上で、コスト回収が先ず重要。初期段階でチームをつく

り、両国制度の共通点と相違点を明らかにし、実施方法を検討する必要がある。

また、収益モデルを打ち立てることが重要。双方とも利益が上げられるようにす

るには、それぞれに国の補助金も必要。

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107

� 日本企業が一番関心を持っているのは制度制限の問題。交通施設、駅の建設等に

おいて様々な制度面のハードルがある。深圳は中国でいち早く改革開放を進めて

きた特区であり、光明新区には制度面の突破を期待。

� 柏の葉では、中国側はスマート化に伴う国からの補助及びコストと販売価格の関係、

健康長寿の取組み、水処理システム等について質問した。

� 大阪駅周辺のTOD関連施設では、JR 大阪駅、大阪ステーションシティ、グランフ

ロント大阪、阪急梅田駅、梅田阪急ビル等の現場を回りながら、それぞれの開発の

経緯と特徴について説明を受けた。

⑥出席者

【随行者】

今村 健二 日中経済協会 関西本部事務局長

髙見澤 学 日中経済協会 北京事務所副所長

日中経済協会 嘱託通訳 (30 日:伊藤鴻、1日午前:河本佳世、1日午後:余点)

UR本社訪問及び「みなとみらい 21」現場視察

日時:2015 年 11 月 30 日(月)09:00~11:30(その後、現場視察 11:30~12:45)

【日本側】

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

本田 りか 海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE) 事務局員

【中国側】

中国城市・小城鎮改革発展中心訪日団 5名

<深圳市光明新区訪日団 9名>

徐 松 明 深圳市光明新区管理委員会 党工作委員会委員、管理委員会副主任

王 妍 深圳市光明新区城市建設局 副局長

馬 飛 深圳市光明新区新城開発建設弁公室 副主任

黄 曦 深圳市規劃国土委員会光明管理局 規劃科副主任科員

方 喆 深圳市光明新区管理委員会 綜合弁公室

劉 冰 冰 深圳城市規劃設計研究院 城市設計一所主任、高級規劃師

王 健 深圳市水務規劃設計院 市政工程設計中心総監

陳 珊 深圳市水務規劃設計院 市政工程設計中心工程師

薛 倩 中国城市科学研究会智慧城市連合実験室 対外連絡主管

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深圳光明新区鳳凰城スマートシティ・ソリューション検討ワークショップ

日時:2015 年 11 月 30 日(月)14:00~16:30

場所:日中経済協会会議室

【日本側】

今村 健二 日中経済協会関西本部 事務局長

高見澤 学 日中経済協会北京事務所 副所長

伊藤 鴻 日中経済協会嘱託通訳

細谷 清 海外エコシティプロジェクト協議会 専務理事

飯塚 浩一郎 海外エコシティプロジェクト協議会 事務局員

本田 りか 海外エコシティプロジェクト協議会 事務局員

藤原 孝之 三菱東京 UFJ 銀行(中国)有限公司

田辺 智彦 三菱東京 UFJ 銀行 トランザクションバンキング部

中国ビジネスソリューション室 調査役 中国室副室長

西嶋 ゲレリ 株式会社日立製作所 エネルギーソリューション社

プロジェクト推進部 技師

王 嘉 和 株式会社日建設計 開発 PM 室 主任

励 瑩 株式会社 UR リンケージ 都市整備本部 計画部

【中国側】

中国城市・小城鎮改革発展中心訪日団 5名、深圳市光明新区訪日団 9 名

柏の葉訪問

日時:2015 年 12 月 1 日(火)10:00~11:20

【日本側】

三井不動産 柏の葉街づくり推進部 濱 記代子 ほか

【中国側】

中国城市・小城鎮改革発展中心訪日団 5名、深圳市光明新区訪日団 9 名

大阪駅周辺TOD関連施設視察

日時:2015 年 12 月 1 日(火)16:00~18:00

【日本側】

来住 竜一 株式会社日建設計 プロジェクト開発部門

都市開発グループ 企画開発部長

王 嘉 和 株式会社日建設計 開発 PM 室 主任

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【中国側】

中国城市・小城鎮改革発展中心訪日団 5名、深圳市光明新区訪日団 9 名

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110

3.3.3.3.調査報告調査報告調査報告調査報告に向けたに向けたに向けたに向けた意見交換レポート意見交換レポート意見交換レポート意見交換レポート

(以下は執筆者個人の見解であり、所属する組織としての見解を示すものではありません。)

(1)スマートシティ建設関与に向けた障害とデータアクセスの重要性(1)スマートシティ建設関与に向けた障害とデータアクセスの重要性(1)スマートシティ建設関与に向けた障害とデータアクセスの重要性(1)スマートシティ建設関与に向けた障害とデータアクセスの重要性

一般社団法人海外エコシティプロジェクト協議会主幹 飯塚浩一郎

一般社団法人海外エコシティプロジェクト協議会(以下では「J-CODE」という。)は、

新興国における環境共生型都市開発のニーズに、ジャパンチームとして応えるために関

係民間企業群により設立された団体である。J-CODE は発足当初より、中国での都市開

発を対象とした活動を行っている。日中経協とは中国のスマートシティ建設に対する日

本企業の関与の確保を図るという共通の目的から協力関係にあり、本年度の日中経協に

よる本調査に全面的な協力をしてきたところである。

≪≪≪≪スマートシティ建設への関与に向けた障碍スマートシティ建設への関与に向けた障碍スマートシティ建設への関与に向けた障碍スマートシティ建設への関与に向けた障碍≫≫≫≫

中国におけるスマートシティ建設に日本企業が関与する方策として、J-CODE では以

下のようなものを想定している。詳しい内容については、日中経協ジャーナル 9 月号で

報告したため割愛するが、第一に地方政府が実施するスマートシティ建設の計画づくり

段階から参画して、インフラ整備や不動産開発等当該スマートシティ建設に全面的に関

与するもの、第二に中国が進める都市開発等の一部に、日系デベロッパーを中心に参画

し、その不動産開発の中でいわば小さなスマートシティの実現を目指すもの、そして第

三に中国が建設しようとするスマートシティの実現に必要な技術・機器の提供を行うも

のである。

さて、都市をよりスマートなものとするためには、都市の現状を把握し、その上で都

市化が抱える課題を認識し、その課題を解決・改善する為に如何なる対策を行うのか、

という観点からの取組や計画づくりが必要であることは論を待たない。しかるに、中国

ではその「現状の課題」は渋滞や大気汚染という形で目に見えているし、その課題への

対策も地下鉄建設等の形で打たれているように見える。しかし、その課題が何に起因し

て発生しているのかのデータに基づいた分析、「都市の現状の把握」が如何に行われて

いるのかは分かりにくい。すなわち中国側の当局者が、都市の現状をどのように把握し

たうえで、現状の課題を認識し、対策を行っているのかという、現状分析、計画立案、

計画の実施、実施状況のモニタリングという過程が見えにくいのである。

J-CODE でも、このような目に見えている「課題」の改善について漠然と協力を求めら

れたり、現に実施しようとしている「対策」への協力を求められたりすることが多い。

しかし、「課題」解決に対する漠然とした協力要請に対しては、「対策」立案のための現

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111

状把握の内容が不明で、J-CODE 側で「対策」を立案することが困難であったり、「対策」

への協力では、「対策」の効果の見込みが不明で、J-CODE 側にどれほどの負担があって、

どれほどの見返りが見込めるのかが不透明であったりするため、なかなか案件形成まで

たどり着けない状況がある。

このような状況、すなわち、当局者が何をどれくらい改善したいのか、その為に掛け

られる費用はどれくらいかといったことが分かりにくいという状況は、日本企業を含む

民間企業にとって、中国向けの商材の開発やカスタマイズに大きな費用と手間がかかる

ことを意味している。

≪≪≪≪日本での状況日本での状況日本での状況日本での状況≫≫≫≫

日本では、都市計画等の計画立案やその実現のための実施計画等は、その計画立案過

程において、国勢調査、経済センサス、住宅・土地統計等の各種公的統計や企業が持つ

詩的統計による机上調査や、交通量調査や動植物調査(生態系調査)等の現地調査を実

施して、地域の現状を明らかにし、地域の課題をなるべく客観的な形で、関係者が共有

できるようにしている。このような情報共有があるからこそ、策定した都市計画等の計

画の効果測定や、実施計画(ロードマップ、アクションプラン)の実行状況の監視が可

能になる。

そして、これらの情報は、一般的に公開されており、広く入手することが可能になっ

ているので、様々な民間事業者はそれらを上手く活用できるような技術開発に鎬を削る

環境が生まれることになっている。例えば、コンサルタントであればデータの分析技術

の開発やノウハウの蓄積であろうし、機器開発メーカーであれば環境改善技術の開発等

であろう。

最近では、民間事業者が保有するデータについても、まちづくりに活用できるような

形で共有するような取組が進んでいる。例えば、内閣府のまち・ひと・しごと創生本部

の地域経済分析システム(Regional Economy and Society Analyzing System(RESAS):

https://resas.go.jp/)では、外国人滞在分析として株式会社NTTドコモと株式会社

ドコモ・インサイトマーケティングが提供する「モバイル空間統計®」の一部が、外国

人メッシュ分析として株式会社ナビタイムジャパンが提供する「インバウンドGPSデ

ータ」の一部が活用可能となっており、閲覧することができる。

日本では、すでにこれらの統計データの活用が各計画作成の一般的な前提となってい

るので、これらのデータそのもののアクセス性が各企業の商品開発に影響を与えている

とはもはや言い難い状況になっている。しかし、それでも前述の例に挙げたような新し

いデータに対しアクセスができるようになることが、新たなサービスの開発に結びつい

たりするようなことがあるし、直接的に把握できるデータが存在しないことが、それを

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112

補完するための推計方法の開発や、データの取得のためのシステム開発を促進すること

もある。

このように日本には民間事業者がまちづくりに参画しやすい環境が整っているし、こ

のことがまちづくりに参画可能な民間事業者を多数存在せしめている理由であろう。そ

して、この「まちづくり」には「スマートシティ」づくりも含まれていることは言うま

でもない。民間事業者がスマートシティづくりに関与できるようになるためには、その

前提として、その地域でどのような「スマート」を目指すのか、そして目指せるのか、

また企業としてどのような関与が可能なのかが、民間事業者として把握できる環境が必

要なのである。

≪≪≪≪中国の現地調査で見えてきたもの中国の現地調査で見えてきたもの中国の現地調査で見えてきたもの中国の現地調査で見えてきたもの≫≫≫≫

翻って、中国での状況であるが、今年度の日中経協の調査では、広東省佛山市で表面

水の汚染状況を、深圳市では一部大型ビルの消費電力をモニタリングしていることが把

握できた。しかし、これらの情報について公表しているかどうかについて確認したとこ

ろ、佛山市、深圳市ともにデータの公表は行っておらず、外部からのアクセス性に難が

あることが分かった。今回把握できたものは一部にすぎないが、道路のあちこちにある

監視カメラの存在を見ても、中国では実に多様なデータが収集されていることは容易に

想像がつく。

例えば、中国の都市では深刻な渋滞という「都市の課題」が発生しているが、この課

題が単に交通需要(自動車の数)に対する交通供給(公共交通機関の整備、道路整備)

の不足だけで起こっているのか、例えば道路ネットワークの構造の不備(広すぎる道路、

細街路の不足、駐車場の不足等)や交通規制の不備(信号の不足や信号制御の不備等)

等、需給の不一致以外の要因を改善する必要もあるのではないかと感じさせるところも

ある。もちろん、大きくは需給構造の改善が必要であることは論を待たないが、中国の

当局者が得ていると考えられる情報を見ることができるのであれば、その場所ごとに小

さな改善活動ができるのではないかと思われるのである。

一方で、先述のようなデータの存在を把握したのは、これらのデータ収集のためのシ

ステムを開発した企業のショールーム等であった。そして、ここからシステム開発会社

はシステム納入後も収集したデータにアクセスが可能な状況にあることが分かった。こ

れは、当該システム開発企業は、その後のシステム開発や営業等で優位な地位を確保し

ていると考えられる。

都市に関わるデータは多様な観点から見られることによって初めて、多様なアイデア

の発生や様々な技術開発の促進に繋がるものと考えられるのであり、少数者が情報を独

占していることは新規技術開発の促進に必ずしも良い環境とは言えないものと考えら

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113

れる。

≪≪≪≪データへのアクセスの容易性データへのアクセスの容易性データへのアクセスの容易性データへのアクセスの容易性のののの確保確保確保確保がががが必要必要必要必要≫≫≫≫

中国における様々な「都市病」を克服していく為には、民間企業の創造性を発揮させ、

効果的な解決策の開発が促進されることが望まれる。この民間企業は何も日本企業に限

ったものではない。中国内外の民間企業が切磋琢磨して、技術開発競争を行うことが望

ましい。

都市の現状を把握する様々なデータにアクセスできる環境があれば、民間企業はその

地域の課題を客観的に把握することが可能になり、その課題に対応した的確な商品開発

やカスタマイズが可能になる。このような技術開発競争は、当該地域経済の発展だけで

なく、他都市への応用力の向上ももたらすことになる。また民間企業にとっては、これ

らのデータが入手できることは、余計なリサーチコストが不要になる分開発コストも引

き下げられることを意味する。

さらに、データの公開が進めば、何が調査されていないかが明らかになり、当該地域

の課題の解決策の検討・提案のために、どのようなデータ収集が必要かといった提案や、

必要な情報を現有するデータから推計するような手法の開発も可能になる。これは、コ

ンサルタントやシステム開発会社にとっては、新たな商機が生まれることを意味する。

今回の調査では、佛山市において、日系企業により水質監視のためのセンサーが供給さ

れ、市全域のうち工場等の汚染源となりうる施設の排水の水質の監視がなされているこ

とを知った。現在どのようなデータが把握されているのかが分かれば、民間企業からは

このようなセンサー技術の提供というビジネスの提案もできるようになるだろう。

すなわち、都市に係るデータへのアクセスの容易であるということは、中国の「都市

病」の緩和・解決を図るために、中国内外の民間企業の知恵を活用し、創造性を発揮さ

せるために有効であるとともに、日本企業にとってはこの市場への参画を容易にさせる

ものである。そして、このことは、「都市病」克服の主要なアプローチの一つであるス

マートシティ建設に有効であるだけでなく、他のアプローチの進展にも繋がると考えら

れる。

そして、日本としても、中国が「都市病」を克服しながら健全に発展することは、「都

市病」克服のための協力過程での事業機会の確保だけではなく、その後の中国社会の持

続的発展とそれに伴う市場の拡大から、日本企業の事業機会を確保できる可能性が高ま

ることを意味する。

しかるに、先述の通り、中国で一部企業が既得権益のようにデータへのアクセスを独

占することは決して望ましい状況ではない。中国ではビッグデータやインターネットの

活用が強く謳われているところである。日本としては、これら都市に関するデータへの

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アクセス性を容易にすることを強く要望していく必要があるものと考えられる。

(2)スマートシティ建設に取り組む地方政府の財政問題と金融セクター(2)スマートシティ建設に取り組む地方政府の財政問題と金融セクター(2)スマートシティ建設に取り組む地方政府の財政問題と金融セクター(2)スマートシティ建設に取り組む地方政府の財政問題と金融セクターの支援のあの支援のあの支援のあの支援のあ

り方り方り方り方

三菱東京 UFJ 銀行(中国)有限公司 藤原孝之

2012 年 12 月の「国家スマートシティパイロット業務の展開に関する通知」公布以

降、多くの都市がスマートシティの建設・開発に名乗りをあげ、これまでに多くの都

市がパイロット都市にリストアップされてきたが、少なくない構想・計画の実現可能

性に疑義が生じている。スマートシティという新しい概念に十分な理解が不足するな

か、債務増加に苦しむ地方政府にとってはスマートシティの建設加速よりもむしろパ

イロット認定で期待される中央政府からの各種財政支援の獲得こそが目的となってい

たとの指摘もある。中国経済は中期的な経済の減速基調に入り、地方政府財政は税収

の伸び悩み、不動産市場の低迷をうけた土地譲渡金収入の減少から急速に債務規模が

拡大、リスクが顕在化した。厳しい財政事情に苦しむ地方政府は中央政府から何らか

の承認・認定を得ることで、財政負担の少ないインフラ、都市建設投資の推進に期待

を寄せたのだが、これまでのところ、中央財政から拠出された基金方式による伝統的

な資金支援の途は限定的なものにとどまり、かわって政府は官民協力(PPP)モデルの

積極的な導入が呼びかけられている。

1. PPP(官民協力)関連政策の展開

(1)2014 年後半から本格化

PPP モデル導入推進に関連する政策整備の動きは 2014 年の下半期以降、本格化し

た。9 月 23 日(日付は文書作成日、以下同)、財政部が PPP に関する初の指導意見

「政府と社会資本協力モデルの推進に関する通知」(財金〔2014〕76 号)が公表され

ると、これに続く国務院の「地方政府債務の管理強化に関する意見」(国発〔2014〕43

号)(10 月 2 日)では、地方政府融資プラットホーム会社を通じた地方政府のプロジ

ェクト資金調達にかわって PPP 方式の推進によって社会資本が特許経営(コンセッシ

ョン)等の方式を通じて都市インフラ建設など一定の収益が見込まれる公益性事業へ

の投資、運営に参入することを奨励する方針が示された。10 月 23 日の「地方政府既

存債務の予算管理への組み込みに際する識別弁法」(財預〔2014〕351 号)では、各地

方政府に PPP モデルの推進を強化して政府債務を企業債務に転換するよう求めた。

一連の動きは 12 月にさらに加速、「政府と社会資本協力デモンストレーションプロ

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115

ジェクト実施に関連する問題に関する通知」(財金〔2014〕112 号)(11 月 30 日)にお

いて財政部は地方政府の財政部門が推薦、専門家グループが審査を経て選出した 30 項

目(うち新規は 8件で多くが既存のプロジェクト)のモデルプロジェクトを発表、同

時に PPP プロジェクトの実施プロセスにおける選別、準備、入札、執行、譲渡の五段

階におけるガイダンスとなる「政府と社会資本協力モデルに関する手引」(財金

〔2014〕112 号)(12 月 4 日)、国家発展改革委員会が各地方発改委に 2015 年 1 月よ

り月 1回 PPP プロジェクトの推進状況を報告しデータベース化するよう求めること等

を内容とする「政府と社会資本協力に関する指導意見」(発改投資〔2014〕2724 号)、

さらに 15 日の「『政府によるサービス調達管理暫定弁法』の印刷配付に関する通知」

(財総〔2014〕96 号)、30 日の「政府と社会資本協力契約管理業務の規範化に関する

通知」(財金〔2014〕156 号)、31 日の「『政府と社会資本協力プロジェクト政府調達管

理弁法』の印刷配布に関する通知」(財庫〔2014〕215 号)まで年内いっぱいまで続

き、2014 年は中国の「PPP 元年」と称されることになった。

2015 年に入って以降も 2月 3 日の「民間資本の養老サービス業の発展への参画を奨

励することに関する実施意見」(民発〔2015〕33 号)から 4 月 7日の「『政府と社会資

本協力プロジェクト財政引受能力論証の手引』の印刷発布に関する通知」(財金

〔2015〕21 号)、4月 21 日の「政府と社会資本協力モデルの運用で公共賃貸住宅投資

建設と運営管理を推進することに関する通知」(財総〔2015〕15 号)、5 月 15 日の「費

用徴収道路領域において政府と社会資本協力モデルの運用を推進拡大することに関す

る実施意見」(財建〔2015〕111 号)、5月 19 日の「公共サービス領域で政府と社会資

本協力モデルを推進することに関する指導意見」(国弁発〔2015〕42 号)、6月 24 日の

「ビッグデータ運用と市場主体へのサービスと監督管理の強化に関する若干の意見」

(国弁発〔2015〕51 号)と関連の通達の公布が進んできた。特に財政部、国家発展改

革委員会、中国人民銀行の連名で作成され国務院弁公庁から転達された「国弁発

〔2015〕42 号」文では「PPP モデルの公共サービス領域における推進拡大は、政府機

能の転換、市場の活力の刺激、経済の新たな成長点を造り出す重要な改革措置であ

り、エネルギー、交通運輸、水利、環境保護、農業、林業、科学技術、保障性住宅プ

ロジェクト、医療、衛生、高齢者事業、教育、文化等の公共サービス領域で積極的に

PPP モデルを採用していく」方針が示され特に注目される内容となった。

(2)地方債務リスク対応手段としての期待

2014 年下半期以降の PPP 政策整備の加速は、2014 年 6 月 30 日の中央政治局会議

(「財税体制改革の深化に関する法案」を審議、地方債務管理の規範化に関する全体像

Page 117: (相手国の産業政策・制度構築の支援事業 (中国における ...0 平成27年度新興国市場開拓事業 (相手国の産業政策・制度構築の支援事業

116

を提出)、8月 31 日の全人代常務委員会の「予算法改正案」(規則に則った地方政府の

起債の許可を含む)の可決の動きとも軌を一にするものであった。改正予算法は 2015

年 1 月より施行、同年 3 月の全人代では改正予算法で認められた地方債の発行を含む

予算案が承認(地方債 5,000 億元、企業債 1,000 億元(禁止された地方融資プラット

フォームの起債(「城投債」)に代わる特別債)の計 6,000 億元)、4月にはさらに地方

政府の高利の債務借り換えを目的とする 1 兆元規模の地方政府特別債の発行が発表さ

れ、5月には地方債を担保とする人民銀行からの資金借り入れを認める条件で、銀行

に期日を迎えた地方政府向け融資額相当の地方債の引受を求める通達(「対象を定める

引受方式による地方債発行の通知」(102 号)(5 月 12 日))が示されるなど地方政府債

務の問題は一先ずは先送りによって抜本的な対応に必要な時間を稼ごうという格好に

なっている。PPP はなかでも最重要の取り組みという位置づけである。

2.スマートシティ建設における PPP モデルの意義と課題

スマートシティ建設において PPP モデルを推進することで如何なる効果が期待され

るのか、同時に課題とポイントは何か、政策決定者に近い政府系シンクタンクや研究

機関の専門家の分析をまとめると以下のとおりである。

(1)PPPモデル導入の意義

(i)政府の資金圧力の軽減、資金調達難の解消に向けた道筋の提供

工業・情報化部傘下のシンクタンク賽迪智庫によると、スマートシティに関連領域

における情報化建設・運営・メンテナンスに必要な資金の投入はおのおの 1 千万元、

多い場合数百億元に達する。2014 年末時点全国で建設中のスマートシティ関連投資規

模は 8,000 億元を突破する一方、残高 15.4 兆元を数える地方政府債務の深刻化により

建設資金ショートのリスクが高まり、未着工プロジェクトの資金も十分といえない状

況にある。PPP モデルを通じて社会資本のスマートシティ公共プロジェクトへの参画

を促し、合理的な投資回収を得ることができれば、効果的に政府公共財政の起債圧力

を軽減できる。

(ii)公共サービス独占打破、スマートシティ建設プロセス加速に向けた新たな動力

注入

中国では公共サービスに関連するプロジェクトの設計・実施は政府部門がコントロ

ールしプロジェクト建設のみが社会資本に委託されることが一般的だった。スマート

シティも例外でなく、一般に政府の情報弁公室ないし情報化主管部門が推進の責任を

担ってきた。

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PPP モデルを通じて社会資本がスマートシティ公共プロジェクト領域に深く関わる

ようになれば、公共サービス領域の独占の構図を打破できるだけでなく市場主体の活

力と創造力を喚起することが期待できる。政府と企業それぞれの役割と機能にも変化

が生じ、政府は公共サービスの提供者から協力者、管理者となり、プロジェクト全体

の実施プロセス、後続するサービスの質や価格について引き続き監督を行い、企業が

暴利を企図し公衆の利益が侵害される事態の発生を防ぐ。企業にとってもプロジェク

トへの関与は単に建設請負者からプロジェクトの設計から投資建設、運営管理、後期

のメンテナンスに至る全プロセスに関与する多面的なものとなる。政府のトップデザ

インおよび戦略策定に、社会資本による資金の投入、技術革新、専門人材、管理経験

などの優位性を加わることで、プロジェクト建設には新たらしい動力源がもたらされ

る。

(iii)参加者の権利、責任、利益の明確化、建設リスクの回避の新メカニズムの提供

これまでの政府と企業の協力では双方の権利と責任、利益配分に不明確な面があっ

た。地方政府融資プラットフォーム会社と政府の契約において典型的であったよう

に、癒着、独占の温床となってきた。従来のコンセッションモデルでも双方がリスク

の押し付け合い良好なパートナー関係の形成に支障を来たし協力効果があがらないケ

ースも発生してきた。例えばスマート交通プロジェクト運営では当初想定した交通量

が不足して企業が期待した利益があがらない場合、その経営リスクは政府が負担(補

助金の提供)する等あらかじめ取り決めておく対応が考えられる。同時に企業は経験

に基づく優位性を発揮して政府が不得手とするところのより多くの管理面での職責を

担う。このようにリスクは共同で担う理念の下、共同の目標を靭帯に政府と企業、さ

らには金融機関が結集して強力なパートナー関係を構築できれば、建設推進のリスク

にしっかりと対応する力となり得る。

(2)スマートシティを PPP モデルで推進する際の課題

(i)目標設定:一部政府の PPP モデルへの認識不足

PPP モデルは社会の資本ストックを有効に活用し、民間の投資活力を呼び起こし、

スマートシティ建設に必要な資金を調達し、政府債務を抑制し、財政圧力を緩和する

有効な手段だが、単に資金調達ルートであるだけでなく、同時に公共事業の生産性を

高める長期的に有効なメカニズムである。現状、多くの地方政府が PPP モデルの資金

調達ツールの側面ばかりを重視し、かつての政府融資プラットフォームを代替するも

のとして利用しようとしており、さらには債務のレバレッジを企業に負担させようと

しているが、企業のプロジェクトへの参画・協力の意欲を削ぐことになっている。地

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方政府は公共プロジェクトのコントロールに対する従来の考え方を転換し、平等互

恵、相互監督、協力強化でプロジェクトに臨み、企業に一定の自主権を認め企業が有

する効率性優位性を発揮させる必要がある。

(ii)収益問題:将来的な収益面での不確実性による官民のコンセンサス不足

期待収益の不確実性が政府と企業双方のスマートシティ PPP プロジェクトへの熱意

が高まらない根本原因といえる。現時点ではスマートシティ建設は探索段階にあると

いえ、成熟した案件も少なく経験を参考にできず、関係する標準類の制定もまだまだ

これからである。

プロジェクト検収の基準もなく、検収時に客観的な評価に依拠するものがないこと

が収益発生時期の予測に不確実性をもたらしている。不確実性による収益不足のリス

クは政府が最終的に負担すべきだが、そうなれば政府の積極性に影響することは疑う

べくもない。

(iii)法とガバナンスの問題:不健全な関連法体系。政府の契約不履行リスク

スマートシティ PPP 案件では地方政府の一方的な違約により社会資本サイドが損害

を受ける状況が発生している。一部の地方政府は契約後に一方的に協議のやり直しを

求め、受託価格の引き下げを求めるケース、政府が当初指定した管理弁法を廃止した

ことにより、事業実施機構によるプロジェクト会社の経費の支払いが遅滞するケース

など。国内の関係法規に照らせば PPP 契約は公法に帰属するのか、それとも私法か。

前者なら社会資本側は従属者であるが、後者なら両者の地位は平等であり、社会資本

の権利保護に有利となる。とはいえ政府の契約不履行リスクを有効にコントロールで

きない現状では社会資本の利益は法律により適切に保護されているとはいえない。

(3)課題解決への道筋

(i)政府の PPP モデルへの理解と実施能力の引き上げ

地方政府が PPP モデルに理解を深め、操作プロセスに習熟することでプロジェクト

の順調な推進の確保に資することになる。啓蒙や研修の強化でより多くの政府の管理

人材が PPP モデルの含意と有効性を精確に理解し、優位性と限界を客観的に判断して

合理的に活用の範囲を定めること、省レベル政府がリードして各地にスマートシティ

サービス総合サービスセンターを設立し、関連情報の統一的な公表と技術指導に責任

を負い、下級地方政府がプロジェクト落札者を確定する作業を補助する。資金面や技

術面で支援能力のある仲介機構のスマートシティ PPP プロジェクト参入支持など、専

門的なサービスの提供することが重要である。

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(ii)認定標準ならびに第三者評価メカニズムの制定

標準は PPP 参画主体間の利益分配が依拠するもので、標準体系の構築強化は何より

も重要といえる。まず、スマートシティ PPP モデル標準制定機構の設立を推進し、業

界、領域ごとに消費者からの費用徴収標準とプロジェクト研修標準を研究の上制定す

ること、浮動収益率メカニズムについて検討を重ね、プロジェクト建設運営ならびに

期待収益を科学的に導き、コントロール可能な価格調整対応方針を制定、社会資本の

利潤率を合理的なレンジに確保するべきである。また標準の順守、執行の確保に努

め、スマートシティプロジェクトの設計、契約の制定、建設運営等のプロセスにおい

て第三者機関を招いた評価を政府部門の政策決定の参考とするべきである。

(iii)法律放棄および政策体系の整備

スマートシティ PPP モデルの効果的な運営には合理的で完備され明確な政策法規の

依拠が必要であり、政府と社会資本双方の協力は法に基づき守られる必要がある。

そのために PPP 法体系の改正整備を加速、利害関係者の規定違反行為に合理的に制

限をかけること、PPP モデルの法律の効力と操作可能性を高め、経営環境に予測可能

性を強め、プロジェクトリスクのコントロールを確保することである。PPP スキーム

の体系整備の加速、中央政府と地方政府および異なる部門間の職責と位置づけを明確

に定め、PPP モデルの体制上の障害除去を秩序だって推進することも重要である。

3.今後の展望

最後にスマートシティ建設をめぐる政策当局や地方政府、研究機関、関係企業の取

り組みの初歩的な観察を通じてのひとまずの私見をまとめておきたい。

PPP モデルは社会資本の投資呼び込みで地方財政問題を有効に解決してゆく方策の

一つとして注目されているが、期待されているのは資金のみならず、スマートシティ

を実際に立ち上げ、機能させていくために必要な優れた技術、ノウハウ、ソリューシ

ョンであり、これらを有する企業がプロジェクトへの参画にビジネスチャンスを見出

し得るかがポイントとなる。

新しいビジネス(収益)モデルを官民が協力して構想・確立してゆくプロセスに

おいて、政府側に期待される役割としては、地方レベルでは各行政部門に分断されて

存在する権限、既得権益、利害関係を調整した上で、ビッグデータとして利用可能に

してゆくことや、必要となれば中央政府やその関係部門に先駆的な事業実施への支持

を取りつけるべく積極的に行動をすること、中央レベルではトップダウン設計を行う

上で、そうした地方や民間からからあげられる要望を積極的に取り込んでいくととも

に、関係政府部門の横のつながりを強化すること、かかる姿勢を高い透明性でもって

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民間資本サイドに示していくことで、企業が事業参画への期待と自信を深めるように

仕向けることがあげられる。

金融機関も社会資本の一員としてPPPモデルの推進に積極的な参画・貢献が求め

られている(下表)。上述した課題解決に向けた官民あげての対応に、金融機関にしか

果たすことのできない重要な役割を担っていくことになる。

中国においてもトータルパッケージ化された高い次元のスマートシティの建設が将

来的には企図されるだろうが、まずは個別の技術やソリューションを選択的に取り込

んでいく、比較的小規模な実証プロジェクトを通じた(成功)経験の蓄積が当面重要

になってくるのではないか。すなわち不動産ディベロッパー、通信キャリア、IT・電

子機器メーカー、エネルギー事業者など想定される事業主体がそれぞれの経験値をあ

げていくフェーズであり、すでに一定の経験を有する政策性銀行を除けば、多くの金

融機関にとっても個別の事業主体を対象に、公開性、透明性に担保される予見できる

事業の将来性を与信判断の重要な材料としつつファイナンス提供の機会を窺っていく

ことになるだろう。

2016 年は「第 13 次五か年規画(2016~2020 年)」のスタートの年であり、3 月の全

人代では規画が正式に公表されることになるが、直近の 2 月には国務院から「新型都

市化建設を深く推進することに関する若干の意見」(国発〔2016〕8 号)、中国共産党

中央と国務院から「都市規画管理工作をさらに強化することに関する若干の意見」が

相次いで示達され、全人代や規画に先立ってスマートシティに関連するトップデザイ

ンの方向性が明らかとなっている。前者では全面的な都市機能の引き上げの項目のな

(表表表表))))金融機関金融機関金融機関金融機関ののののPPPプロジェクトへのプロジェクトへのプロジェクトへのプロジェクトへの参画参画参画参画

総論 直接参画 間接参画

自らが社会資本として直接的にプロジェクト設計、建設、運営、

維持等の能力を持つ他の社会資本と政府との間で協力協議を

締結してプロジェクトに参画するほか、顧問として計画、資金調

達、財務などの適切な助言を行う

資金提供者として間接的に参画。プロジェクト経営に主たる責任

を負う社会資本ないしプロジェクト会社にプロジェクトファイナン

ス、信託貸付、持分出資、リミテッド・パートナーシップ・ファンド、

レベニューボンド、資産証券化等の方式で融資を実行

銀行 政策銀行 商業銀行

中長期融資の実施を通じてプロジェクトに総合的な金融サービ

スを実施。他の銀行、保険会社等と協調融資を行うなど幅広い

資金調達手段を提供

最も重要な資金提供者として貸付、投資銀行、キャッシュマネジ

メント、コンサルティング、メザニンファイナンス等の方式でPPPプ

ロジェクトに参画

保険

証券

信託

ファンド

(資料)財政部政府・社会資本協力センター

PPPプロジェクト向けに信用保険を開発し、履行リスクやオペレーショナルリスクの引受手となる。プロジェクト構造の柔軟性を高め

、参加者のリスクを低減移転

IPOに際する取引所への推薦、M&A融資、財務顧問、債券引受等の投資銀行業務をPPPプロジェクト向けに実施。また資産証券

化、投資管理サービス(資産管理計画)、オルタナティブ投資などの方式で参画

直接的な投資者としてインフラ建設・運営に参画、配当を通じて投資を回収。主に期間の長い持分或いは債権信託契約商品を

発行、資金は主に銀行、保険等の機関に依る。間接的にはPPP参画者向けの融資や他の社会資本と共に投資プロジェクト会社

として持分出資、約定の時期に持分を売却して退出

インフラPPPプロジェクトに投資する投資ファンドは投資家に低リスク、中レベルの収益、長期の固定収益を提供。投資事業組合

としてPPPプロジェクトを投資運営。金融機関はSPVを設立、ファンドの有限パートナーとして参画

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かで、➀スラムの改造、②総合交通網の建設、③地下パイプライン改造、④スポンジ

都市建設、⑤新型都市建設、⑥公共サービスレベルの引き上げについて言及してお

り、さらに後段では⑤の新型都市建設を取り上げ、グリーンシティ、スマートシテ

ィ、ヒューマンシティの建設、ブロードバンド中国戦略、インターネット+(プラ

ス)計画の推進、交通、電力網、水道、パイプライン、産業園区のインテリジェント

化を目標に掲げている。後者では都市のスマート管理の推進に一節を割いて、「ビッグ

データ、モノのインターネット、クラウドコンピューティング等のIT技術と都市の

管理サービスを融合し、都市管理のガバナンスとサービスレベルを高める。交通管

理、環境管理、応急対応のデジタル化プラットフォームと機能を整備、総合的な都市

管理データベースを建設する。ブロードバンドインフラ建設を推進、ネットワークの

安全保障を強化する。民生サービス向けのスマートアプリケーションを発展させる。

2020 年には特色が鮮明なスマートシティの建設を完成させる」ことが謳われている。

このほか通達の作成日は 2015 年末ながら同じく 2016 年 2 月に一般に公表されたも

のとして、「『グリーンボンド(緑色債券)発行手引』の印刷配布に関する通知」(発改

弁財金〔2015〕3504 号)があり、ここでは①省エネ排出削減技術改造、②都市グリー

ン発展、③クリーンエネルギー、④新エネルギー開発利用、⑤循環経済、⑥水資源節

約・開発、⑦汚染防治、⑧生態農業・林業、⑨省エネ環境保全、⑩低炭素産業、⑪生

態文明デモンストレーション、⑫低炭素発展試行デモンストレーション、以上 12 のプ

ロジェクトにおいてプロジェクト実施主体が債券発行を認めるとされている。スマー

トシティは②に明確に記されているほか、③、⑨、⑪、⑫とも関連する可能性があ

る。このように 2016 年についても関連の政策出動が慌ただしくなりそうな気配であ

る。

(了)

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頁 図表番号

28頁 図表5 

29頁 図表6 

29頁 図表7  対象7区画(益田集団提供資料)

二次利用未承諾リスト

委託事業名:平成27年度新興国市場

開拓事業(相手国の産業政策・制度構

築の支援事業(中国におけるスマート

シティ開発から運営に係る制度整備に

係る調査))

報告書の題名:平成27年度新興国市

場開拓事業(相手国の産業政策・制度

構築の支援事業(中国におけるスマー

トシティ開発から運営に係る制度整備

に係る調査))報告書

受注事業者名:一般財団法人日中経済

協会

タイトル

坪山新区「益田共和城邦」の位置付け

坪山新区「益田共和城邦」位置図