Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
慈恵ICU勉強会 2017年11⽉28⽇研修医 ⽝養舜
JAMA.2017Oct3;318(13):1233-1240
Introduction
EGDT(EarlyGoalDirectedTherapy)
・2001年,Riversらが提唱した敗⾎症の早期蘇⽣protocol.
・⽇本語で早期⽬標指向型治療.
・敗⾎症診断後6時間以内に,CVP・MAP・Ht・ScvO2が⽬標値になるように補液・昇圧・輸⾎し,循環管理.
NEngl JMed.2001Nov8;345(19):1368-77
・単施設RCT
・263⼈(①SIRScriteriaを2項⽬以上② 20ml/kg/min投与後もSBP≤90mmHgor乳酸≥4mmol/Lの2つを満たす.)・経験的治療群 vsEGDT群・EGDT群はprotocolに従って治療
【EGDT群のprotocol】6時間以内に
CVP≧8mmHgMAP≧65mmHgScvO2≧70%Ht≧30%を達成
=
【28⽇死亡率】経験的治療群 vsEGDT群=46.5%vs30.5%
→EGDT群で有意に改善.2015年7⽉21⽇⽕曜勉強会
IntensiveCareMed.2004Apr;30(4):536-55
RiversらのRCTをもとに,SSCG2004の初期蘇⽣にEGDTが導⼊された.
Riversらの研究の問題点・単施設RCTであり,普遍性に乏しい.
・⼊院時より低CVP,低ScvO2,⾼乳酸⾎症であり,対象が重症患者に限られていた可能性がある.
CritCare.2008;12(5):223
低CVP
低ScvO2
⾼乳酸⾎症
・CVP(前負荷の指標),ScvO2(組織酸素需要量の指標)の信頼性が低い.
そこでEGDTの普遍性の検証のため,2014年に3つの⼤規模RCTが施⾏された.
2014年11⽉10⽇⽕曜勉強会
・アメリカの31施設でのRCT
・2008年3⽉-2013年5⽉の間の1341⼈
・Protocol-basedEGDT群 vsprotocol-basedstandardtherapy群 vsusualcare群
・Primaryoutcome:60⽇院内死亡率
・Secondaryoutcome:⻑期間死亡率,ICU⼊室率,ICU滞在期間,⼊院期間,臓器補助(昇圧剤・⼈⼯呼吸・⼈⼯透析)使⽤率 etc.
NEngl JMed.2014May1;370(18):1683-93
2014年5⽉13⽇⽕曜勉強会
各群間で死亡率に有意差を認めない.
結果
・昇圧剤や人工呼吸器の使用率,ICU滞在期間,⼊院期間,重⼤な合併症イベント発症率において各群間で有意差を認めない.
・ Protocol-basedEGDT群ではICU⼊室率が有意に多い.
・オーストラリア,ニュージーランドの31施設でのRCT
・2008年10⽉5⽇-2014年4⽉23⽇の間の1600⼈
・ Usualcare群 vsEGDT群
・Primaryoutcome:90⽇死亡率
・Secondaryoutcome:28⽇死亡率,ICU滞在期間,⼊院期間,臓器補助(昇圧剤・⼈⼯呼吸・⼈⼯透析)使⽤率 etc.
NEnglJMed.2014Oct16;371(16):1496-506
結果
両群間で死亡率に有意差を認めない.
・両群間で,ICU滞在期間,⼊院期間,人工呼吸器・⼈⼯透析の使用率に有意差を認めない.
・EGDT群では昇圧剤の使⽤率が有意に⾼い.
NEngl JMed.2015Apr2;372(14):1301-11・イギリスの56施設でのRCT
・2011年2⽉16⽇-2014年7⽉24⽇の間の1260⼈
・ Usualcare群 vsEGDT群
・Primaryoutcome:90⽇死亡率
・Secondaryoutcome:SOFAscoreの変化,臓器補助使⽤率,28⽇死亡率,ICU滞在期間,⼊院期間,費⽤ etc.
2015年7⽉21⽇⽕曜勉強会
結果
両群間で死亡率に有意差を認めない.
・EGDT群において,SOFAscoreの増悪,輸液量の増加,昇圧剤や輸⾎頻度の増加,ICU滞在期間の増加,医療費の増加を認める.人工呼吸器の使用率に有意差を認めない.
IntensiveCareMed.2015Sep;41(9):1549-60
3研究のmeta-analysisの結果,EGDTは90⽇死亡率を改善しないことがわかった.
EGDTの有⽤性が疑問視される中,SSCG 2016が発表された.
・
・SSCGの初期蘇⽣の項⽬からEGDTを削除.
・EGDTの有害性は⽰されていないので,使⽤してもいいが,推奨はしない.
・次のbundleを推奨.IntensiveCareMed.2017Mar;43(3):304-377
・3時間以内に達成すべき項⽬①乳酸値を測定する.②抗⽣剤投与前に血液培養を採取する.③広域抗生剤を投与する.(これは1時間以内.)④低⾎圧 or乳酸値≥4mmol/Lに対して30mL/kgの晶質液を投与する.
・6時間以内に達成すべき項⽬⑤初期輸液に反応しない低⾎圧に対してMAP≥65mmHgを⽬標に昇圧剤投与.⑥上記でも低⾎圧 or初期乳酸値4mmol/L以上のとき(1)バイタル,CRT,⽪膚所⾒(2)CVP,ScvO2,UCG, PLRや輸液チャレンジのうち2項⽬のいずれかをもとに循環動態を評価.⑦初回乳酸値⾼値の場合は,乳酸値を再測定する.
SSCGが推奨するbundle
・先ほどのmeta-analysisは,3試験の結果を統計解析し,平均化しただけ.
↓
・対象患者間には,敗⾎症の重症度・受けた治療内容・患者背景の違いがあり,これによる治療効果への影響も加味したmeta-analysisが必要.
↓
・3試験の患者データ全てをランダムに割り付け,患者レベルのmeta-analysis(=meta-analysisofindividualpatientdata)を⾏ったのが次の試験.
NEngl JMed.2017Jun8;376(23):2223-2234
・ProCESS,ARISE,ProMISeの3つのRCTのmeta-analysisofindividualpatientdata
・3試験の患者3723⼈・Usualcare群 vsEGDT群・Primaryoutcome:90⽇死亡率・Secondaryoutcome:臓器補助,28⽇死亡率,ICU滞在期間,⼊院期間,費⽤
2017年5⽉30⽇⽕曜勉強会
PRISM
両群で90⽇死亡率に有意差を認めない.
結果
・EGDT群では,usual-care群よりもICU滞在期間が有意に⻑い.
・EGDT群では,usual群よりも有意差はないものの,コストが⾼い.
・EGDT群では,昇圧剤の使⽤頻度が有意に多く,投与期間は⻑い.その他の臓器補助(人工呼吸器を含む)に有意差を認めない.
・RiversらのRCTの対象患者は重症例(死亡率46.5%)のみ.その後のPRISM試験は軽症例も多く含まれていた.
IntensiveCareMed.2016Jun;42(6):1048-50
↓
・重症敗⾎症ならば,EGDTは有⽤なのでは?↓
・PRISM試験において,subgroup解析し,RiversらのRCT対象患者と同等の重症度の群(死亡率35-50%)でusualcare群 vsEGDT群の死亡率を⽐較.
↓
RiversらのRCTとPRISM試験とで,usualcare群 vsEGDT群の死亡率の有意差になぜ解離が生じるか
Subgroup解析において,重症群でもusualcare群とEGDT群の間で死亡率に有意差を認めない.
↓
・PRISM試験では,重症度に関わらずEGDTとusualcareの死亡率に有意差を認めない.
↓
・RiversらのRCTの時代よりも,usualcareの質が向上したため(=早期診断・早期治療・⾼度な医療資源の存在),PRISM試験ではusualcare群とEGDT群の間で死亡率に有意差がなかったのではないか.
・PRISM試験は,①良質なusualcareが受けられる先進国において②成⼈の敗⾎症に対して,EGDTが有⽤ではないことを⽰した.
↓
・しかし,PRISM試験で想定されていない条件に対しても同様の結果が得られる確証はない.
↓
・EGDTの途上国や⼩児を対象としたRCTが必要.IntensiveCareMed.2015Sep;41(9):1676-8
↓
・途上国で,EGDTに準じた敗⾎症初期蘇⽣protocolのRCTがなさなれた.
NEngl JMed.2011Jun30;364(26):2483-95
・途上国の⼩児敗⾎症に対する初期蘇⽣protocolの有⽤性の評価(輸液の種類・投与⽅法を重視したprotocol)・ウガンダ,ケニア,タンザニアの多施設RCT
・重症敗⾎症(ショックを伴わない敗⾎症)の⼩児3141⼈・5%albumin20-40mL/kgbolus群 vsNS20-40mL/kgbolus群 vsnobolus群・ Primaryoutcome:48時間死亡率
・Bolus投与群はno bolus群に⽐べ,48時間死亡率が有意に⾼い.
→医療資源が限られている途上国では,輸液のbolus投与は小児敗血症の死亡率を高める.
Albuminbolus(10.6%)
Salinebolus(10.5%)
Nobolus(7.3%)
48h死亡率
Bolustherapyvsnobolus1.45(95%CI,1.13to1.86;P=0.003)
結果
CritCareMed.2014Nov;42(11):2315-24
・ザンビアにおけるmodifiedEGDTの有⽤性の評価・ザンビアの単施設RCT
・重症敗⾎症(SIRS2点以上+感染+多臓器不全)の112⼈・modified EGDT群 vsusualcare群※modified EGDT:晶質液2Lbolus投与→ JVP<3 cmで追加2L投与→MBP<65mmHgでdopamine10γで開始→Hb< 7 g/dLで輸⾎.
・Primaryoutcome:院内死亡率
・両群間で,院内死亡率に有意差を認めない.
・もともと呼吸不全を認めた患者群では,100 %vs70%(relativerisk,1.43; 0.95–2.14)とmodified EGDT群で死亡率が有意に⾼かったため,試験は中止.
→⼈⼯呼吸器管理という医療資源が不⾜している途上国では,敗⾎症+呼吸不全の患者への補液は危険.
院内死亡率Modified EGDT
64.2%
Usualcare60.7%
(RR,1.05;0.79-1.41)
結果
ここまでのまとめ・EGDTは成⼈の敗⾎症の初期蘇⽣protocolとして,有効と考えられていた.
・しかし良質な敗⾎症治療が可能な近年の先進国では,もはやEGDTは不要であることが,⼤規模RCTやそのmeta-analysisにより⽰された.
・限られた医療資源しかない途上国でEGDTのRCTを施⾏したが,今のところその有⽤性は証明されていない.(⼩児や呼吸不全ではEGDTの有害性さえ指摘された.)
・治療介⼊前に呼吸不全のない途上国の成⼈敗⾎症患者を対象した場合,EGDTに準じたprotocolは有⽤か?
→この検証が今回のザンビアでのRCT.
⾸都:ルサカ⼈⼝:約1450万⼈
(東京都の約1.1倍)
⾯積:約75万km2(⽇本の約2倍)
平均寿命:51.83歳HIV感染率(15-49y)12.5%
結核患者:42700/10万⼈1千⼈あたり医師数: 0.07⼈
(⽇本は2.14⼈)
ICU病床数:10床/国世界ランキング 国際統計格付けセンター(http://top10.sakura.ne.jp/index.html)
ザンビア
⽬的:途上国(ザンビア)における敗⾎症に対する初期蘇⽣protocolの有⽤性の評価
Methods
STUDYDESIGDN
・単施設⾮盲検化RCT
・期間:2012年10⽉22⽇-2013年11⽉11⽇・施設:ザンビア⼤学附属教育病院(1500床)・対象:18歳以上の敗⾎症患者212⼈
POPULATION・2012年10⽉22⽇-2013年11⽉11⽇にザンビア⼤学病院救急部に受診し,下記条件を満たした患者.
【Inclusioncriteria】①感染症が疑われ,SIRScriteriaを2項⽬以上を満たす.②低⾎圧(SBP≦ 90mmHgorMBP≦ 65mmHg)
【Exclusioncriteria】低酸素血症(PaO2< 90%),頻呼吸(RR>40/min),消化管出⾎,⼼不全,末期腎不全,頸静脈圧上昇,ヘルニア嵌頓,緊急⼿術適応
RANDOMIZATION
・条件を満たした患者382⼈を早期蘇⽣protocol群とusualcare群にコンピューターで治療介入前にランダムに割り付ける.
BLINDING
・割り付けられた後に,患者⾃⾝・医療者は,患者がどちらの群なのかわかってしまう.=患者と医療者は⾮盲検化.
・試験結果の評価や分析を⾏う研究グループは盲検化されている.
・両群の医師達は,治療場所(⼀般病棟 or集中治療室)や抗⽣剤治療の内容を決定できる.
TREATMENT【初期蘇⽣protocol群】・割り付けられてから1時間以内に晶質液2 Lbolus投与.・その後4時間かけて2L追加補液.・1L補液するごとに診察し,下記溢⽔所⾒(①SpO23%低下②RR5回/min上昇③JVP≥3 cm)を認めたら補液を終了する.・救急部受診時からの総補液量は最⼤4Lまで.・2Lのbolus投与をしてもMBP<65mmHgならば,MBP≥65mmHgを⽬標にdopamine末梢持続投与を10γから開始.・Hb<7g/dL or⾼度の顔⾯蒼⽩がある場合は,輸⾎.
【Usualcare群】補液,昇圧剤,輸⾎は医師の采配に任される.
頸静脈圧(JVP)測定法・仰臥位headup45°で測定.
・内頸静脈拍動最⾼点を同定し,胸⾻⾓からの垂直距離(a)を測定.
・右房-胸⾻⾓の垂直距離=5cm(b)を利⽤.
・a+b≒ CVP(CVP↑は8cm以上.本試験ではa≥3cmと定義.)
・患者が歩⾏出来ないほどの全⾝状態であったため,体重測定ができず,栄養状態の評価は上腕径で⾏った.
・補液量については,「治療介⼊直後-6 h」,「6h-24h」,「24-72 h」で記録した.
・退院した患者の28⽇後の⽣存率については,患者またはその親族に電話して聞いた.
DATACOLLECTION
OUTCOMES・Primaryoutcome院内死亡率
・Secondaryoutcome
①28⽇死亡率,死亡までの時間②治療による低酸素⾎症・頻呼吸の発症頻度③総補液量④抗菌薬・昇圧剤・輸⾎の使⽤状況⑤副作⽤(dopamineの⾎管外漏出,組織虚⾎,壊死,医原性肺⽔腫,輸⾎の副作⽤ etc.)
STATISTICALANALYSIS
・
・前回のザンビアでのmEGDTのRCTの死亡率をもとに,死亡率を65%と仮定.
・死亡率の絶対危険度20 %低下を検出する.(前回のザンビアでの試験での相対危険度30.8%低下に相当.)・検出⼒=80%有意⽔準α=0.5
以上よりsamplesizeを212とした.
・Modifiedintention-to-treat
→割り付け後にinclusioncriteriaを満たさないことが判明した患者(3⼈)は対象から除外.結果的に対象患者は209⼈.
STATISTICALANALYSIS
・連続変数:平均値・標準偏差または中央値・四分位範囲.
・カテゴリー変数:頻度・割合.
・グループ間のparametric連続変数:t検定・グループ間のnonparametric連続変数:Mann-Whitney検定・カテゴリーデータ:χ2検定・⽣存期間:log-rank検定・2群間の院内死亡率:χ2検定・Subgroup解析:Mantel-Haenszel検定・解析はStataversion12.1を使⽤.
Results
Patients Entry 3515⼈除外症例:3133⼈
↓Metinclusioncriteria:382⼈除外症例:・MetexclusionCriteria:127⼈・満たしたが不参加:43⼈
↓試験対象:212⼈Protocol群:107⼈Usualcare群:105⼈↓割り付け後除外:3⼈Protocol群:106人Usualcare群:103人↓Followup失敗:15⼈Protocol群:97⼈Usualcare群:97⼈
Characteristic
低栄養
若年(36.7歳)高いHIV陽性率免疫不全多い結核の既往多い
患者背景に有意差を認めない.
208/209人は人工呼吸器のない一般病棟で管理.
乳酸低値もいる
・呼吸器感染症が最多.
・肺結核が⾼頻度で,全体の38.3%は肺結核を合併.
・両群間で抗⽣剤投与開始までの時間に有意差を認めない.
Diagnosisandtimetoantibiotics
Microbial pathogens
・先進国では稀な結核・マラリア陽性患者を認める.
Primaryoutcome(院内死亡率)
Protocol群 vs usualcare群=48.1%vs33.0%(p=0.3)
・Protocol群で有意に院内死亡率が⾼い.
Secondaryoutcome(Hemodynamic)
・総補液量はprotocol群で有意に多い.
・Protocol群の41⼈(38.7%)は,4Lまたはprotocolに反して4L以上投与した.
・Protocol群の65⼈(61.3%)は,溢⽔所⾒を認めたため,4L補液する前に補液を中⽌した.
Usualcare群の補液量
・補液のbolus投与を施⾏したのは,usualcare群の50⼈(48.3%).
・Usualcare群では,補液のbolus投与をせず,治療介⼊後から24hで合計3L投与した患者が最も多かった.
Secondaryoutcome(Changefrombaselineafterenrollment)
・乳酸値はprotocol群で有意に改善したが,両群間で⾎圧の変化に有意差を認めない.
・Protocol群で有意に呼吸状態の増悪を認める.
Secondaryoutcome(Vasopressor, transfusion)
・Dopamineの使⽤率はprotocol群で有意に多い.
・輸⾎率は両群に有意差を認めない.
Secondaryoutcome(Adverseevents)
・有害事象については,両群で有意差を認めない.
Subgroup解析
・HIV陽性患者では,protocol群の⽅が死亡率が有意に⾼い.その他のsubgroup解析では重症度によらずprotocol群の⽅が死亡率が有意に⾼い.
Discussion
・現在の先進国のRCTでは,EGDTは標準治療と治療効果は変わらないという⾒解.
・しかし,今回の途上国ザンビアでのRCTでは,EGDTに準ずる治療(protocol群)は院内死亡率上昇・呼吸状態の増悪を来すという結果.
↓
なぜか?
Discussion①
Discussion②(⼈⼯呼吸器の不⾜)
①・途上国では,HIV陽性患者,結核既往患者が多く,補液のbolus投与による肺⽔腫や呼吸不全のリスクが先進国より⾼い可能性あり.・今回のRCTでは,呼吸状態の増悪は protocol>usualcare.
→途上国のprotocol群は治療後の呼吸不全のリスク⼤.
②先進国ならば,呼吸不全の患者に対して⼈⼯呼吸器管理が可能だが,途上国では⼈⼯呼吸器が使⽤できずに呼吸状態が増悪した患者を挿管せずに病棟管理.
①+②=⼈⼯呼吸器という医療資源の不⾜が,呼吸不全を来しやすい途上国のprotocol群で死亡率を増悪させた?
Discussion③(中⼼静脈カテーテルの不⾜)
①総補液量・呼吸状態の増悪は protocol>usualcare.
②・今回のRCTでは,中⼼静脈カテーテルがなかったため,EGDTの評価項⽬のCVPをJVPで代⽤.・しかし呼吸状態が増悪した患者のうちJVPの上昇を認めたのは10%未満であり,JVPの上昇は容量負荷の指標として有⽤でなかった可能性がある.
①+②=中⼼静脈カテーテルという医療資源の不⾜のために使⽤したJVPが溢⽔を⾒逃してしまい,補液過剰となりやすいprotocol群で死亡率が増悪した?
Discussion④(昇圧⼿段がdopamineのみ)
Crit CareMed.2012;40(3):725-730
①昇圧剤の使⽤率はprotocol群で有意に多い.
②ショック患者に対する昇圧は,dopamineの⽅がnorepinephirineよりも死亡率が⾼い.
①+②=昇圧⼿段が死亡率の⾼いdopamineのみであったため,昇圧剤使⽤頻度の⾼いprotocol群において死亡率が上昇した?
Strength
・ランダム化されていること.
・割り付け時は医療者・患者は盲検化されていたこと.
・データの観察や記録や収集は,盲検化された研究グループが施⾏したこと.
・従来のEGDTのRCTと異なり,protocol群とusualcare群との間に①輸液のbolus投与の有無②総補液量の有意差があり,これらの敗血症への影響を検証できる.
Limitation
・中規模の単施設研究であること.→普遍性に⽋ける.
・発症のonsetが介⼊よりも数⽇-1週間前の症例あり.→治療内容の違い(protocolorusualcare)とはべつに,敗⾎症への治療介⼊時期の違いが死亡率に影響を及ぼし得る.
・割り付け後は,医療者や患者は盲検化されていない.→バイアスの原因になり得る.
・JVPという信頼性の低い指標を⽤いたこと.→JVPが容量負荷を反映していない可能性.
・全患者のうち,集中治療室で治療できたのは1⼈のみ.→途上国の医療を反映しているが,⼀般化はしづらい.
Conclusion
・HIV,結核の罹患率が⾼く,医療資源に制限がある途上国では,EGDTに準じた治療(輸液のbolus投与・昇圧)はusualcareに⽐べて院内死亡率を⾼める.
・途上国の敗⾎症治療における輸液のbolus投与・昇圧の有⽤性について更なる検証を要する.
Editorial
JAMA.2017Oct3;318(13):1225-1227
今回のRCTの問題点・課題(本⽂のlimitationで指摘されたもの以外)
・Protocol自体に補液過剰のriskがあり,今後の改善が望まれる.①初回のbolus投与が⼀律2L.(体重の記載はないが,SSCGで推奨されている20-30mL/kgを明らかに上回る.)②Bolus投与後の補液は,溢⽔所⾒さえなければ⾎圧が改善していたとしても,2Lを4時間で追加投与.③その溢⽔の評価も,補液1Lを追加するタイミングのみであり少ない.(1時毎に評価するなど,より頻回におこなうべき.)
・対象に純粋な感染症(not敗血症)が含まれていた可能性あり.①対象に多い低栄養患者はしばしば低⾎圧を合併する.②乳酸値が上昇していない患者も含まれている.③usualcare群では無治療で⾎圧が改善した患者がいる.
・治療介⼊群とコントロール群の区別が明確.
・設定したoutcomeについて患者の追跡を⼗分におこなっている.
・Subgroup解析とsecondaryoutcomeに⼀貫性がある.
・途上国の敗⾎症死亡率を改善させるためには,⼤規模臨床研究とそれにより⾒出されたprotocolの作成が必要.今回の研究はその先駆的な存在である.
今回のRCTの評価すべき点①
・今回のRCTでは,①輸液のbolus投与の有無②総補液量の違いで両群を割り付けることができた.(cf.従来のEGDTのRCTでは,①対象全員が割り付け前に輸液のbolus投与②両群間の総補液量の有意差がないものが多い.)→輸液のbolus投与や過剰な補液が敗血症の院内死亡率を高める可能性が示唆された.
NEngl JMed.2017Jun8;376(23):2235-2244
NEngl JMed.2011Jun30;364(26):2483-95
・敗⾎症において,輸液の初回bolus投与(30mL/kg)と院内死亡率は相関しない.
・アフリカの⼩児に対して輸液のbolus投与は有意に死亡率を⾼めた.
→敗血症の初期蘇生protocolにおける輸液のbolus投与の意義に疑問.これについての更なる検証が望まれる.
今回のRCTの評価すべき点②
私⾒・今回のRCTがおこなわれたザンビアは,⽇本と医療資源や患者背景が⼤きく異なるため,⽇本における今後の敗⾎症の治療⽅針として参考になる点は確かに少ない.
・今までの先進国でのEGDTのRCTでは,EGDT群とusualcare群の間に総補液量や輸液のbolus投与の有無に違いはなかった結果,呼吸不全→⼈⼯呼吸器使⽤率に有意差を認めなかったとも考えられる.途上国のみならず先進国でも,総補液量の違いや輸液のbolus投与の有無についてのRCTを⾏い,敗⾎症治療における適切な補液について検討してもよいのではないだろうか.
・先進国には補液過剰による呼吸不全に対して⼈⼯呼吸器という⼿段があるが,漫然と補液を⾏っていいということにはならない.SSCGが推奨する補液量は過剰である可能性があり,今後はこの点を念頭に治療にあたると共に,今後の知⾒に注⽬したい.
参考:各RCTでの補液量
【今回のRCT】
2015年7⽉21⽇⽕曜勉強会