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8

石炭

「斜陽」

Ii炭 労の企業整備反対闘争

一九五九~六〇年は炭鉱合理化の大攻防でもちき

った二年間だった。日本資本主義が自由化体制

の世界市場に進

出してゆくために、炭鉱合理化の大攻防はどうしても踏みこえなければならぬ関門であ

ったQ

一般の経済状況は

一九五七年下期から五八年下期にかけての景気不振から五九年のはじめには回復に向かい、五

九年下期には未曽有の活況にはいった。それはアメリカの経済動向を別とすれば日本資本主義自体

の国際競争力の

強化によ

って支えられていた。好況が好況を再生産し、技術革新と消費革命とよばれる現象

のもとで、全産業にわ

たる近代化投資、旺盛な耐久消費財需要、機械工業によ

って主導される産業全般の異常な発展、

いわゆる

「高度成

長」期にはいっていた。にもかかわらず石炭産業のみは好転せず、生産は停滞し、のみならず、

一〇〇〇万トンを

こえる貯炭の異常な圧力が強まるばかりであった。この石炭不況は世界的なもので、その原因には

エネルギー変革、

すなわち

エネルギー源の石炭から重油

への転換を基本とし、それに支えられた新規油田の開発、タ

ンカーの輸送力

の発達などの事情が加わ

った。

炭鉱不振が

一時的なものではないということはすでに誰の目にも明らかだ

った。炭鉱経営者たちは、その対策が

これまでのような単なる出炭制限による需給安定、炭価維持をこえて、炭鉱の

「体質改善」に徹す

るのでなければ

ならぬとの意思を固めた。すなわち、経営

・技術

・労務にわたる全面的画期的な合理化、なかでも炭鉱資本の技術

731

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第一章 石炭合理化反対闘争

構成の特殊性からして大量の首切りは必須の課題であるとしたのである。

資本家はもちろん炭労相手では大量首切りは容易でないと考えた。しかし、炭鉱の体質改善には非能率炭鉱の徹

底したスクラップ化と優良炭鉱

への生産集中、そして生産集中された炭鉱の労働節約を軸とした抜本的な合理化が

必要であり、そのためには首切りはぜひのりこえなければならぬ課題であ

った。なかんずく労働組合の抵抗力の排

除、ないしは組織破壊、あるいは

「組合なき経営」の追求すらが必要と考えられた。そこで資本家

たちは、まず労

働組合対策に全精力を集中した。かれらは炭鉱問題は全日本独占資本の問題であることを知

っていた。だから炭鉱

問題解決の鍵は国が労働問題をどう解決するかにかか

っていることを、独占資本全体

にかわ

って強く訴えっづけて

きたQかれらが政府に期待したことは、大量首切りを実行するに際して、労働者の抵抗の前面に国家権力をどのよ

うに引き出すか、労働争議および首切りに要する資金手当をいかに確保するか、失業者をめぐる社会不安の増大を

いかに爆発させないようにするか、労働者の抵抗をくじく作用をもつマスコミ機関をいかに統制す

るか、等の諸問

の迅速適切な処置であ

った。

日本石炭協会、日経連、石炭鉱業審議会、通産省らが、石炭危機のりきり策についてそれぞれにいろいろの意見

を出した。だがこれらはどれも日本の独占資本、石炭独占資本の政策を異な

った言葉で表現してみただけである.

炭労の前年末の長計改更闘争がすんで間もない

一九五九年

一月二七日に石炭鉱業審議会は、合理化法による買上

げ炭鉱の枠を三三〇万トンからさらに

一〇〇万トン増加することを決定し、四月

一三日政府は、①

一般炭の二〇%

生産制限、②貯炭融資、③買上げ枠

一〇〇万トン増加その他の施策を決定した。また

一〇月

=二日石炭経協が発表

した新長期計画は

一九六三年度までに大手

一八社はトン当たり八〇C円の炭価引下げを行なうため、約六万人の人

732

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E炭 労の企業整備反対闘争

員整理と、高能率炭鉱

への生産集中と非能率炭鉱の閉山を行なうというものであ

った。また中小炭鉱にっいては同

じ期間内に約三万七〇〇〇人の整理を見込んだものであ

ったQ

石炭鉱業審議会は、合理化推進機関として、第三老的理論的よそおいをしているだけに、なお罪重き存在である。

一九五九年

一二月

一四日の通産大臣に対する審議会

の答申は石炭協会のものよりもさらにきびしく、

一九六三年ま

でにトン当たり

一二〇〇円の炭価引下げと、人員減九万な

いし

万人を内容とする徹底的な合理化を推奨したも

のであ

った。答申は経済的合理性を強調するが、それはあくまで個別資本の無策に放任された経済合理性であ

って、

その合計がもたらす社会的な浪費に目をつぶる、というよりは浪費を推奨している。そして合理化

の犠牲が労働者

や地域住民への

一方的なシワ寄せに終わることについては、首切り合理化はやむをえないものだと理解せよと説教

し、

「良識による協調」が

「かえって石炭全体の安定と向上のための出発点であり、国民的基盤に立つ石炭対策を

める捷径である」という。そして

「合理化にともないやむをえず発生する離職者に対しては、炭鉱離職者臨時措

置法による緊急就労事業、特別職業訓練、離職者援護会

の設置」によって処置するとともに、

一般経済界の協力に

って離職者の吸収が円滑に行なわれるように期待するというものであ

った。

その後の石炭調査団の答申がそうであるように、この答申も、個別資本の合理化のテンポと規模

を煽動する役割

をも

っている。しかも、労働対策の無策を弁解し、

「合理化」しようとしている。答申によれば誇張した首切りが

先行し、ほとんど効果

のない

「離職者対策」なるものが重い足を引きず

って後についてゆくことにな

っている。現

に就業している石炭労働者

コ雇用対策Lを答申するのではなくて、切り落された者

への

「離職者対策」を用意し

ようとするにすぎないQ

いわゆる

「棄民政策」しか考えられていない。

:

'

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第一章 石炭合理化反対闘争

炭鉱の安定が緊要だというが、首を切られた人間にと

って何の

「炭鉱の安定」であろうか。首を切られる労働者

347

に何の

「良識による協力」というのであろうか。それは残される人と首を切られる人の意識の分裂をあおる言葉で

しかない。このように、この答申は、後のこの種のいくどかの答申とま

ったく同様に、独占的大石炭業者の経営の

安定のみを眼中におき、ま

ったく欺購と無策の糊塗とによって、労働者とその背景にある国民をごまかそうとした

ものにすぎなか

った。

われわれは現段階における体制的合理化政策を独占資本の自由化対策、体制危機打開策とみるのであるが、それ

は戦争政策にも比すべきものであることに気づくのである。石炭合理化も、待

ったなしの戦争政策

に似て、強引無

慈悲である。しかもその

「政策を合理化する」ために審議会とか調査団なるものが活躍する。だが

その結論はきま

って合理化の推奨、犠牲者の放置、および代償なき犠牲負担協力

への説教である。だがむしろこれが合理化の国家

意思とみるべきであろう。

マスコミは炭鉱失業者の悲惨な生活を取材しながら、このような政策の結果としての炭

界に合致したイデオ

ロギーたる

「斜陽」論を展開、合理化政策のあとおしの役割を果たしたのであ

った。

ここに参考のために、二つの表をかかげておこう

(第6表、第7表)。

一九五八年は中小炭鉱に劇的な企業整備が、

一九五九年は中小に加えて大手にも劇的な企業整備がや

ってきた。第7表によって大手と中小の人員減少の推移の

ちが

いを指摘しておきたい。

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H炭 労の企業整備反対闘争

第6衷1959年 大手各社 人員整理状況

会 社 刷 組韻 数1鯉 縢 人員1希 望退嚇

三 井

三 菱

住 友

明 治

鉱42,000

職5,000

鉱27,000

職300

鉱9,500

職2,000

鉱8,500

古 河 鉱8,000

雄 別 鉱5,50G

一 次6,000

二 次4,580

一 次2 ,500二 次1,150

一・次1 ,000(中 止)二 次497

一一次580

二 次goo

一 次1 ,200(撤 回)二 次648

一 次1 ,131二 次480

一 次 鉱1 ,324

職586二 次3,900

一 次800

二 次1,058

二次3!0

一 次500

二 次.700

400三次 職72

498

日 鉄 二 副 鉱3・4・ ・165・ 500

杵 島 鉱4,5・ ・16・ ・ 400

宇 部 鉱8,000 660 一・次600

二 次540

計 123・…1 21,976 12,188

第7表 九 州 に お け る炭 鉱 労 務 者増 減 表(九 州石炭統計年鑑195g年 版)

 

穏Ωり

Q/

O

I

【∠

り)

4.

2

2

3

3

3

3

3

十一三ロ

本年度 対前年度

188,202-34,991

163,743-24,459

163,875十132

168,095十4,220

174,292十6,197

162,698-11,594

142,661-20,037

大 手

本年度 対前年度

114,423-16,815

105,111-9,312

96,954-8,157

96,614-300

96,309-305

96,255-54

85,100-11,155

中 小

本年度 対前年度

73,779-18,176

58,632-15,147

66,921十8,289

71,481十4,560

77,983十6,502

66,443-11,540

57,561-8,882

訓 一…5321 一46・1381

一一34,394

735

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第一章 石炭合理化反対闘争

9

春闘と合理化反対

の結合-

一次合理化に対する闘争

(一九五九年)

}

炭労は当面する合理化反対闘争について、「当面

の炭鉱独占の攻撃の方向は労働者との正面衝突

をさけ

(長計協定

締結-

筆者)、

しな

ら、

くず

に合

よう

とす

こと

にあ

るが

これ

でも

階的なものである。恐慌がより深刻化すると、かれらはいままでの

一切の慣行をかなぐりすてて、協定の破棄はも

ちろんのこと、大量首切り、坑口の休廃止、労働条件の切下げなどの非常手段で真向から対決を求めてくるであろ

う」かかる攻撃をかけられた場合は

「階級的視野に立

って全体闘争を組織し、いかなる大規模な攻撃に対しても断

としてたたかう」(炭労、一九五八年度運動方針)と、事態の深刻さを認めつつ、攻撃に対しては炭労の全体闘争と

イデオロギ 

ることを強調している。また、合理化攻撃が

「斜陽」論にあらわれている思

想攻撃と不離

一体である点につい

ても見落とすことなく、

「われわれに対する直接的な攻撃に対しては総力をあげてたたかわなければならない。そ

のためにはまず第

一に、われわれの武装解除をねらうあらゆる宣伝もその本質を明らかにし、労働者みずからがす

すんでたたかう意欲と経営者に対する怒りを自覚させるために必要な教宣活動を徹底する」(一九五八年九月、第一二

回炭労臨時大会、運動方針)との基本姿勢を明確にした。

また、統

一闘争の行動指針としては、

「各企業連、各支部は経営協議会などを通じて生産制限や

一般的企業整備

に関する提案をうけたときは、長計協定の完全実施を要求してこれを拒否する

とも

に、中央闘争委員会に報告

736

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皿 炭労の企業整備反対闘争

(中小支部は地方本部)し、その指導を得て反対闘争を組織し、首切り、賃金遅払、休廃山、坑口閉鎖などに対して

は炭労としての統

一闘争を展開するLとの基本に立ち、具体的には、

「いかなる理由があろうとも、現在の労働条

件および生活水準を絶対ゆずらないという基本的な立場に立

って、職場を闘争の対決点とし、企業連または炭労

一闘争としてたたかうQ

①首切り、閉山、坑口閉鎖についてはゼロのたたかいを展開する。

一時帰休は絶対認めないこととし、時間短縮をたたかう。

③生産制限のための時間外抑制には反対する。

④賃下げ配転をともなう番方交替制の変更に反対する。

⑤休日増加等の操業短縮に反対する。

⑥生産制限を目的とする配置転換は拒否する(③④⑤⑥については譲らなけれぱならないときは、実績賃金の保証をたた

かいとるという条件がつけられている)。

⑦賃金形態の改悪賃下げに反対する。

⑧検炭強化やゴ

マかしは絶対許さない。」

との方針が確認され、

「生産制限を含み企業整備反対の三権を本大会において中央闘争委員会に集約する」ことに

った

(炭労同上、一=

回臨時大会)。

しかし、事態は炭労が予想した以上に深刻かつ急速に展開した。

一九五九年

一月

↓三日の炭労中央委員会が春闘

準備段階の情勢につき

「情勢は容易ではない。景気後退、市場縮小、貯炭増大は、石炭資本を合理化攻勢にかり立

737

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第一章 石炭合理化反対闘争

てている。賃金闘争は、このような敵

の政策に対する労働者の先制攻撃であり、積極的に階級的利益を守るたたか

いであるLといったすぐそのあとで、

一月

一九日、大手炭鉱の先頭をき

って

コニ池闘争Lのき

っかけをなす三井鉱

の第

一次合理化案が提案された。それは、能率の向上をはかるための職場規律の厳格化、残業時間縮小による労

務費削減、人員補充の制限、福利厚生費の削減、勇退募集にそなえた退職手当臨時措置などを主たる内容とするも

のであ

った。炭労が前年、石炭経協側が正面衝突をさけて長計協定を結び、抵抗をそらしつつ、なし崩し合理化を

め、やがては協定や慣行を破棄した正面からの

一大対決を求めてくるだろうといったことが、三井

の合理化案と

して早くも現実のものとな

ってきたのである。

三井の第

一次合理化案に接した炭労は、

「今次闘争は本質的には、政府

・日経連らがその石炭政策の失敗には目

をおおい、不況を理由として労働者階級にかけてきた巻返しとの対決である。……このたたかいの成果いかんがた

だちに他社に波及することは必至であり、われわれの後退は

ω企業格差による労働条件の格差設定を可能にする

②長計協定の実質的破棄

の実例をつくる

㈲経営者に賃金ストップ政策

の突破口を与える

㈲企業別各個撃破による炭労組織の弱体化をきたす

ことになるので、これからはじまる賃金闘争の前哨戦であるという時期的問題をはなれた基本的たたかいとして、

断固たたかいぬかねばならない」

(一九五九年

一月二七日、炭労中闘発)との方針を決定、三鉱連、三社連に対して闘

争体制確立、共闘、交流理解について遺漏のないようにと指令を発するとともに、他支部に対しては、

「全支部は

738

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H炭 労の企業整備反対闘争

次再建案の本質と統

一闘争の意義をすみやかに組合員に理解徹底させ、統

一闘争の諸行動が実施

できる闘争体制

を確立せよLと指令し同時に各支部間の交流、地方本部の任務などについても適切な指令を出して統

一闘争成功

ために心をくだいたQ

だが他方では、炭労には企業別闘争を認めざるをえない弱味があ

った。すなわち、二月の明治鉱業の平山、上芦

別を中心とする五八〇名の減員案に対するたたかいについては、

「炭労の統

一闘争として長計協定を順守、首切り、

希望退職勧告反対を指標としてたたかう」との指令を出しながら、炭労中執と明治労連による交渉、実力行使に終

わらせてしま

っている。会社側は、希望退職募集案を停年制案に切りかえ、配転案とともに組合側

の了解をえて事

を終結させたが、これによ

って五〇〇名の退職と計画通りの配転を得たということは、介入の炭労にもかかわら

合理化は個別資本の側のペースで進みはじめたものとして注目しなければならないであろう。なお明治鉱業では、

さきに炭労を脱退した豊国

・高田両鉱において、これを四月末に閉山する協定が成立し、これによ

って約七〇〇名

が離職

したのであ

った。明治は炭労大手脱落のトップ

であ

ったと同じく、大手閉山の先頭にも立

っていたのである。

ところで賃金闘争を、資本の合理化攻撃に対する労働者

の先制攻撃であるとした炭労は、二月二〇日からの中央

闘争委員会において、次

のような理由から炭労の賃金統

一闘争と三井の企業整備反対闘争は不離

一体のものである

とした。すなわち、

「石炭資本の合理化の重点が労務費の引下げに指向されている点から、三井の合理化闘争は今

次賃金闘争と切りはなして解決を考えることはできない。また石炭経協内に占める三井資本の比重

の大きさを考え

ると、三井を抜きにしてその他の社が賃金に対する態度を決めることは組織的には考えられない。……以上の判断

から今次賃金闘争は三井の企業整備反対闘争の解決と不離

一体の関係にあり、それは別べつのたたかいでなく結合

739

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第一章 石炭合理化反対闘争

された

一つのたたかいでなければならない。合理化闘争と賃金闘争という両面をも

った

一つのたたかいである。こ

れが今次闘争の特徴的な性格である。……三井の再建案にかぎらず、各社にも今次闘争中に合理化攻勢が予想され

るが、それは今次闘争が両面をもつという性格をますますは

っきりさせるものであるL(一九五九年二月二一日炭労中

闘指令第四四号)と。だが、炭労傘下の

一般組合員が自分の賃闘を三井の企反闘争と結合させ、統

一闘争を進めるよ

うな意識をもちうるかどうかは疑問である。炭労は統

一闘争を困難にする条件が賃金闘争自体の中

から生じ

つつあ

ることを指摘してこういっている。

「交渉経過のなかで判断できることは、敵側では企業格差にも

とつく労働条件

の格差を設定しようとする意図が打ち出されているということである。したが

って、今次賃闘は統

一賃金の最大の

危機

であり、これを守ることに力点をおかなければならない」(同上指令)と。

だから合理化攻撃のさなかでは、賃金闘争における統

一の条件は、賃金闘争内部ですら乏しくな

ってゆく。した

って、賃金闘争が成功するためには、現に三井に起こっている合理化問題炭鉱労働者全体

への攻撃と受けとって、

これを春闘に結び

つけなければならない。すなわち、労働者を各社の合理化攻撃のなすがままに放置しておいては、

格差が表面に出て、統

一春闘にならないから、反合理化の

一点に立たせることが春闘を統

一的にたたかう上で大事

ことである。反面、三井の企業整備反対闘争は炭労のまとまりやすい賃闘につつまれてこそ有効に処理しうるも

のであると考えられる。賃闘も反合理化闘争も、どちらも統

一と分裂

の要因がある。三井の合理化と当面の賃闘と

いう限定された発想であるにしても、この両面の性格を巧みに結合させて、統

一闘争の前進に役立たせようという

わけである・

「賃闘と企反闘争は

一体

のものであり、同時解決を原則として指標を併示してたたかいを進める」、

そして

「た

740

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∬ 炭労の企業整備反対闘争

とえ三井以外の各社が解決しうる事態をむかえたにしても

(右の)原則に立ち、全体闘争でつつんで解決すること

とし、闘争体制は解除しないL

(同上指令)。すなわち同時闘争による、

「同時交渉、同時解決」を基本戦術とした

のであるQ

だが残念ながら炭労の指導は、

一九五七年の杵島闘争の場合同様に、三井に関しても真の意味の産業別統

一闘争

にはならなか

った。なぜなら各支部は、闘争指標に賃金要求と企業整備反対の二つを併せかかげてはいたが、企業

整備についてはやはり、単に三井支援という気持だげではなくて、支部独自

の合理化反対に立つと

いうことにはな

らなかったからである。

炭労は総評の春闘スケジ

ュールにあわせて、二月二五日以降、二つの指標による実力行使を三井系および他の各

支部に指令した。この間、三月

一〇日には三井が勇退者六〇〇〇名募集を提案したため、事態は新しい段階にはい

った。炭労は三月二三日以降全山無期限ストライキにはいり、三

一日の中闘は、この日出された中労委の賃上げ斡

旋案について協議した結果、

コニ井の解決後に斡旋案の諾否を決定する。今次企業整備を炭労全体

のものとして全

組合員がよりよく理解し統

一闘争を強化推進するため、①職場民主化を阻害し職制支配の確立を図

る事項

②基準

外抑制を中心とする賃金切下げの事項

③入れ替え採用の中止、退職者募集による人員削減に関す

る事項

の三点

を重点項目とし、炭労組織として統

一的考え方に立ち、守るべきものを明らかにし、重点交渉を行なう。闘争推移

の過程で三鉱連を中心に戦術強化を行なうLとの方針を決定した。しかし、残念ながらひとたび賃金について斡旋

案が出ると組織の張りが弛緩するのが弱みである。この頃炭労内部には早期解決の空気が強ま

っていた。

こうして四月三日、

三井の会社側から、

①入れ替え採用については原案を若千緩和する、

②作業管理

(勤務時間、

741

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第一章 石炭合理化反対闘争

配役配転、出勤対策等)については山元交渉におろす、

③超過労働賃金の縮小については山元の実態

に即して決める、

六〇〇〇名の勇退募集については、本人

の自由意思による希望退職とし、強制勧告は行なわない、⑤福利関係は

原案通り、という提案があり、組合側は交渉団会議を開いて協議した結果、これによって事態収拾をはかることに

なり、四月四日、賃金闘争とともに三井問題も妥結することにしたのであ

った。

炭労は妥結を決定するにあたっては、右の会社提案につき、

「職制支配から職場を防衛で

こと、労働条件

(賃金)の防衛という主張が容れられていること、

退職勧告、

強制解雇を封殺できたことなど、企反闘争指標の最

低限が守られた内容である」との解釈をしたのであ

ったが、産業別統

一闘争の重点指標を山元交渉におろすと決定

している点では、統

一闘争は決して成功したものとはいえなかった。統

一賃闘と三井企闘を結合し、同時交渉、同

時妥結を貫いたことはすぐれた戦術であるとしても、斡旋案提示後

の、早期妥結の空気を内部に醸成さ

こと

が、統

一闘争にとって障害にな

ったとすれば、統

一闘争成功の鍵は、やはり合理化に耐えうる内部体制、あるいは

理化

の本質を見抜き、反合理化の産業別連帯性が末端にまで浸透するような指導性の有無にかか

っていたといえ

よう。

742

10

大手炭鉱

の地す

べり的

閉山ー

「あがり山」闘争、三菱

・住友

・古河

・雄別

炭労は四月九日の中闘で、各企業連各支部に対し、それぞれ

一九五九年度生産計画の提示を資本に要求し、予定

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皿 炭労の企業整備反対闘争

される政府の二割出炭制限勧告に対する態度と長計協定実施について再点検を行ない、監視実行の立場を明らかに

して経過を本部に報告せよと指令した。

同じ指令はいう、「長一計協定の特別協議

(経済事情の著しい変動時)を主張して次のような合理化案が予想される

イ退職者

の補充停止

ロ休日の増加

ハ一時帰休制

二非能率鉱の休廃止、高能率鉱

への配置転換並びに労働条

件悪化を伴う番方変更

ホ残業の削減、抑制

へ勇退、希望

(勧告)退職、強制解雇

ト閉山、坑口閉鎖

われわれは今後、たたかいとった新賃金の配分展開に関するたたかいを進めるとともに、このささやかな賃上げ

をなし崩しに奪

い、合理化の美名のもとに労働者の生活権を抹殺しようとする敵

の攻撃に対し果敢

にたたかいを起

こさなげればならない」とQ

ついで四月二〇日には、五月から

一〇月まで出炭二〇%制限の官報告示がなされた。これに対し炭労

二九

「一企業

一支部のたたかいといえども企闘の単独指標で全体闘争として長期にたたかえる意識と体制を整備する」

との統

一闘争体制確立の指令を発した。こうして果たして政府の二割出炭制限告示が、各社

への合理化総攻撃の合

となった。

三井についで第二陣の合理化提案は

一九五九年五月六日、三菱、住友、古河、雄別の四社

一せいに行なわれた。

きわめて政治的である。

三菱の合理化提案

二子、端島、大夕張を除き

437

①退職手当臨時措置の実施ー1

勇退者募集

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第一章 石炭合理化反対闘争

②入れ替え採用の

一時停止

③自然減耗無補充

の原則確認

住友も、配転の提案があるほかは三菱と同様の提案であ

った。古河は、好間で約七〇〇名、好間以外で約五〇〇

の希望退職募集、福利厚生費の節減、基準外労働の適正化、職場規律の確立を提案しているほかは、これも三菱

と同様であ

った。

雄別は、鉄道事業の分離、希望退職

(一二一二名)の募集のほか、他の三社に出た事項をすべてふくんだような細

い提案であ

った。

炭労はこれについて次

のように考えたQ

「今次企業整備は、不況と政府の生産制限勧告に合理性を求め、三井闘争の結果に便乗した首切り提案であり、

の動機と実態には相違がある。三井再建案は企業危機感の浸透を背景にわれわれの闘争組織化の弱点をとらえた

トップ

レベルへの攻撃である」。これと四社とを同

一視しないよう、また

「その妥結内容に基準を求

めることのない

よう」思想統

一を行ない、闘争を組織すると同時に、

「三井企反闘争の結果が今次提案に影響を与えたと同様に、

このたたかいの結果はただちに各社に影響を与える。したが

って今次企反闘争は提案された四社だけの問題ではな

く、炭労組織対石炭総資本の対決であることを認識し、……全支部が生産点である職場闘争を中心

に大衆闘争とし

てたたかい、闘争の発展にしたが

って炭労全組織をあげた統

一闘争

(ストライキ)を目的達成まで決行する決意と体

制が必要である」(一九五九年五月九日、炭労、企闘第六二号)とした。

闘争体制としては、該当支部現地の体制を重視し、①居住区組織単位の常会、闘争懇談会等により闘争の理解を

744

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皿 炭労の企業整備反対闘争

め、会社側の行動について厳重な監視を行ない、②職場組織単位の集合を行ない、職制に対する監視と係員の行

なう作業指示以外の干渉を排除し、③大衆動員や抗議行動を実施し、④職労共闘の組織化と⑤企業連組織内部の相

互認識と理解を深める等の諸点についての指示を行ない、

「今次闘争は柔軟にしてねばり強く長期

の体制をも

って

対決する。したが

って、戦術も柔軟戦術を多面多様に採用することを方針とする」と強調された。

一闘争、全体闘争を主張しつつ、その成功のために、全支部が生産点である職場での闘争を土台として大衆闘

争を組むことを基本とした点、そして職場居住単位に多様な行動戦術を駆使するよう指令した点、当然といえぱ当

然だが、問題はこのすぐれた戦術指導が実際に企業連支部

レベルでどれほど実行されるよう指導できたかというこ

とであろう。指令そのものに下部体制の自然発生主義が感じられないわけでもない。またとくに、非該当支部の闘

争体制の確立にも留意し、

①今次企業整備を炭労の統

一闘争をも

って

バネ返すため、日常活動を強化し、企反闘争

の意義の徹底と闘争の理

解をふかめることによ

って闘争体制の確立をはかれ

②企反闘争の相互理解のため当該支部との交流を実施せよ

③職場要求、山元要求をまとめ、みずからの要求をも

って企反闘争の戦列に参加できるよう極力努力せよ

(同前、

五月九日指令)

といい、なかでも

「みずからの要求をも

って企反闘争の戦列に参加」という点の指摘はまことにすぐれた指導とい

うことができる。だが残念ながらこの点も、実際は炭労レベルでの指令の域を多く出てなか

ったのではないか。こ

457

のような職場居住でのもり上がりや、統

一闘争における末端職場居住組織の主体性の確立の有無を点検し、資本の

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第一章 石炭合理化反対闘争

側の組織切りくずしにどの程度耐えうるものにな

っているかを事実によって検証し、不十分な点は改めて到達させ

る指導体制が炭労中央部に必要であ

ったと思う。立派な指令も出しっぱなしであ

ってはならないのである。

六月

一日に示された次の各社回答によ

って交渉は決裂した。

ω五月六日の提案は当面の危機を突破するためにはこれ以外の方途はないので絶対に撤回できない

㈹組合が白紙撤回を固執して時日が遷延する場合は自衛上強行せざるを得ない

そこで炭労は、四社の全支部に対し、六月

一〇日から二五日までの間に二四時間ストライキ、各番方

一時間五〇

分ストライキを各三回実施し、六月二五日以降炭労全支部が統

一ストライキができるよう体制を確立すること、ま

たその間、各支部でも、積極的に職場闘争が組織化されるよう指令した。

そうしているうちに、六月二六日三井が不況を理由に賃金

の分割払いを提案してきた。二年前の杵島と同じ攻撃

の仕方である。さらに日本炭鉱では六月二八日

「山田鉱は残炭少なく九月末をも

って閉山する。このため従業員五

二三名は三五年三月までに全員高松鉱に原則として直接夫に配置転換する」との提案があ

った。炭労は七月

一日の

中闘で

「企闘は高原闘争方式を持続し、長期にねばり強くたたかう」との方針を確認したが、このようにな

ってく

ると、闘争の基本線はそれはそれとして確認しながらも、情勢は全体として

一種のなだれが起こりはじめていると

みるほかはなか

ったので、問題を個別的にあたっていけるところまでいってみるというのが指導部

の本心ではなか

っただろうか。

七月九日、三菱、住友、古河の三社は希望退職募集

の強行にふみ切り、中央、現地での抗議行動などによる抵抗

をうけながらもそれぞれに成果をおさめたところで、三菱は七月

一八日、住友は七月

一五日、古河

は七月

一七日、

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皿 炭労の企業整備反対闘争

雄別は八月二日、それぞれに勇退強行募集を打ち切り、会社原案に画執せず平和的な方法で事態を解決する、との

方向を示してきたので、事態はなし崩し的ではあるがその点で

一応落着した。

三菱は退職募集目標二五〇〇名に対し応募が八〇〇名であ

った。会社側は入れ替え採用、自然減耗無補充および

勇退後の配転については山元協議とすると提案した。これに対して炭労は、勇退募集は会社が

一方的に強行したも

のであるから、原則として配転に反対し、労働強化を排除するなかから人員充足をたたかいとるとの方針を対置し

たので、七月

二二日の中央団交は打ち切られた。その後会社は

一〇月八日次のごとく第二次合理化案を示してきた。

▼三菱の第二次合理化案

ω方城、上山田を三六年四月、三七年二月閉山目標に生産計画を進める。

②このため年内に方城五五〇名、上山田六〇〇名を減員する。そのうち高島に一〇〇名、古賀山に五〇名を配転する。

③あと一〇〇〇名の減員方法は、端島を除く九州各山から希望退職を募集し、そのあとを方城、上山田より配転する。

ω閉山にともなう将来の問題については、政府の離職者対策と相まって三菱同系各社に配転するよう努力する。

住友は七月

一五日

「希望退職募集は中止するが、体質改善は必要であるので山元の具体的問題について提案し平

和的に話合いたい」と申入れていたが、七月二〇日

「潜竜鉱を縮小し、約五〇〇名を北海道に配転したい」と提案

した。

古河は、好間鉱で七〇〇名、それ以外で五〇〇名の退職募集をしたのに対し、二〇〇名の応募で募集が中止され

ていたが、八月

一二日

「好間鉱の自然条件悪化にともない、斜坑を閉鎖する、このため六四八名の余剰人員は全社

的見地から配転したい」との新提案があ

った。

477

こうなると日本炭鉱山田鉱、三菱鉱業方城、上山田両鉱、住友石炭鉱業潜竜鉱、古河鉱業好間鉱はいわゆる

「あ

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第一章 石炭合理化反対闘争

り山」問題に発展したわけである。これにどう対処するかである。炭労は、日炭山田については七月二

一日、三

両鉱については

一一月七日、古河好間については九月二二日、それぞれ調査団を派遣した結果

「あがり山」を確

し、完全雇用確保の観点からの対策を進めることにな

ったが、そうなれば企反闘争方針にも大きな変化があらわ

れたわけである。すなわち

一歩後退が不可避であ

った。ただ住友潜竜は、炭労調査団の報告により、会社提案の撤

と放棄炭量の復元を要求することにして交渉を進めたが、九月上旬には会社側の就職斡旋に応ず

る者が相当にで

るとともに潜竜支部自体も九月

一三日には炭量復元闘争はきわめて困難との大会決定を下した。炭労もこうな

って

「完全雇用を前提とする配転は認める」と戦術を転換せざるをえなか

った。こうして

一↓月

一〇

日、

「天災地変、

炭量のなくなった場合、完全配転のための安定職場を設けた場合以外は休廃山しない」という基本線において了解

が成立、潜竜から北海道三山

への配転のほか、潜竜鉱の縮小案が会社の線で実施されることで住友

の問題は

一応終

った。

炭労は

一九五九年

一〇月の第二三回臨時大会で

「企業整備反対闘争方針」を決定したがその中で

「あ

策」を次のように規定している。

748

〔当面

の対策

これは終掘

・閉

山をさす。

ここでのたたか

いは会社側

の赤字山をたてての労働強化、配転

、人

べらしなど

の攻撃

に徹底的

に対決し、少

なく

とも労働条件の引下げ

には妥協

はないと

いう態度を堅持す

る。

〔長期的対策〕

終掘

・閉

山が予見

でき

る山は、事前

に代替鉱区

、代替職場

を要求し、完全

犀用をかたかいとる。この場合

則として新鉱開発そ

の他

によ

って労働者を吸収す

るが、それが不可能な場合は、安定した職場であ

り労働者

の権利

を奪わ

れない条件があれば他産業

での消化吸収も行

なわ

せる。

〔たたかい方〕

当該支部が徹底的

にたたかう体制

をつくり、これ

を企業連

つつみ、統

一闘争

でたたかう体制をも

つ。こ

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れら

のたたか

いの積み重ねの上に立

って炭労全体闘争を組織す

る。

、終掘

・閉

前提

にし

場合

は、炭

この闘

方針

やむ

いし正

いと思

るQ

ただ

「終

・閉

山」

いう

とが

たか

いに

って決

こと

いう

とが忘

はな

った

であ

11

切り

強行ー

三井

・日鉄二瀬

ll炭 労の企業整備反対闘争

三菱、住友、古河、雄別に加え日炭の合理化が

「あがり山」問題として落着しつつあるとき、他方で杵島、三井、

日鉄二瀬の問題がまたでてきた。

杵島炭鉱は七月

一六日、

「労働時間の厳守、超過労働時間の規制、福利厚生関係費の縮減、六〇〇名以上の勇退

募集」を中心とする企業整備案を提示した。

日鉄二瀬は八月七日、「六五〇名の希望退職募集を行なう」と提案した。

三井は、第

一次企業整備で六〇〇〇名の目標に対して

一九〇〇名しか退職応募がなか

ったことから経理状況がふ

たたび悪化したとして、さらに七月二九日に八月分の給料の分割払

いを提案し、加えて八月二八日、

「四五八〇名

の退職募集、超過労働の抑制、請負給作業

の固定給部分設置、配給所

の分離、三池製作所分離などを含む抜本的な

二次合理化案を提出した。いわゆる

「三池闘争」がはじまるのである。

炭労は三井全支部を杵島支部に対し、期末手当獲得と企業整備に反対のストライキとして七月二五日二四時間と

749

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第一章 石炭合理化反対闘争

以後毎週水曜各番昇坑時

一時間五〇分の二通りを指令した。そして八月四日

"7

①三鉱連、杵島支部は八

月二五日以降独走の決意と体制をも

って各資本に対決する体制を確立せよ

②全支部は、三井、杵島の闘争を統

一ストライキをも

ってつつむ体制が必要であり、八月二五日以降

いつでもス

トライキに突入しうる体制を確立せよ

と指令した。だが三鉱連は七月の御嶽大会で、三池と美唄を除き田川、山野、砂川、芦別の四支部が会社側の提案

に譲歩する線を打ち出していたし、職員組合も会社側に傾いていたので、会社側は高姿勢になり、九月

一〇日交渉

は決裂した。杵島も九月

一五日決裂した。日鉄二瀬は

「九月

一六日より退職募集を行ない、予定数

に達しない場合

は指名解雇を行なう」と通告してきた。

一〇月二日、こんどは宇部興産が、日常の労働管理問題と称して組合に通

告なしに退職募集を行ない、五四〇名の応募を得たところで組合の反対にあい、募集を中止した。さらに日鉄二瀬

一〇月

一〇日、指名解雇にふみきり、強行就労、仮処分、

一〇月

一四日から七二時間の反復ストライキというよ

うに情勢は険悪の度を加えた。三井も

一〇月七日、再度交渉は決裂し、会社側が退職募集をはじめ、杵島も九月末

公式

に就職斡旋をはじめるなど、資本の側は

一せいになぐり込み乱闘をかけ、事態はま

ったく新

しい段階にはい

ったのであ

った。さきにみた

一〇月八日の三菱第二次合理化案、さらに

一〇月二〇日の雄別の第二次合理化案も新

い段階の要素に加えなければならない。

こうな

ってくると、

一〇月五~七日の炭労第二三回臨時大会が闘争方針

のなかで

「たたかいの組み方」として指

摘している点は、正しくもあるが、実際がこれにともないがたいだけに、むしろ悲壮感さえ与える。すなわち、

「これまでの闘争指導を反省し、労働者が直接合理化攻撃をうけている職場でのたたかいを強化し、組合員の階級意識を高

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II炭 労の企業整備反対闘争

め、いかなる攻撃

に対しても

ただち

に対応

できる体制を確

立し、

さら

にこれを統

一闘争レこ

てたたかう体制

を確

立するとと

もに、独占資本

の合理化攻撃

とたたかう他産業労働者と

の共闘を強化す

る。さら

に地域地区においては拠点として失業者そ

の他

の労働者階級

の枠

をこえ

た民主的諸階層

の共感

のもとに全体

とし

ての行動

の統

一を強め、炭鉱独占が

いま進

めつつあ

反社会的反国民的な政策

を阻止す

るたたかいの先頭

に立たなければならな

い。

このたたかいは困難なけわし

いたたかいであ

るが、このようなたたかいを組織すれば、炭鉱労働者

のみでなく、全日本

の労働者階級

の勝利

への展望がひらける。

ω職場闘争

の強化

独走体制

の強化

個別資本と対決する思想をも

って独走体制

を確立しな

いかぎ

り、全体としてのたたか

いはく

めな

い。

③統

一ストライキ体制

の確

各支部各企業連が組合員のたたかいを自分

のも

のとし

てとらえ、石炭独占に対決す

るとい

う怒

りと憎しみがないかぎり、統

一ストの効果はな

い。同時

ストを長期

にたたかう体制を確

立し、機械的統

一闘争、統

闘争依存主義

の思想を

この際完全に取除き、統

一闘争

の基本理念

一人

ひとり

のも

のとしなげればならな

い。

理化内容も企業

によ

って同

一でなく、時期

もそろ

って

いな

い。従

って統

一闘争

を組織することは困難であるが、

たた

いの意義が理解されれば、敵

の攻撃

がいかなる形

で現われても統

一闘争

は困難ではない。統

一闘争

で長期にたたたう決意

体制を

つくることは、敵

一歩後退

せしめるものである。

ω総評のたたか

いとの結合

イ他産業と

の共闘体制

の強化

p地域地区共闘の強化

(以上)

炭労はすでに統

一闘争をなしうる力を極度に失いかけている。前面に総攻撃をかけてくる資本をむかえ、陣営内

の足なみは乱れはじめているからである。三鉱連と杵島に指令された独走体制はそのネガティブな表現である。

しかし炭労は、あるべき統

一闘争

の姿を

一字

一字たんねんに、この条件のもとでこそ追求できたし、追求しておく

べきだと考えたのであろう。

炭労

の悲願は、も

っとも頼みがいがあると思われ、しかも当事者でもあ

った三井組合グループの不統

一によ

っては

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第一章 石炭合理化反対闘争

かなくもかき消された。

一〇月二二日、三社連は炭労に対し

「会社の実情は真に苦しいものがあり、われわれはたた

かうべき時でないと考える。したが

って三社連に妥結権を委譲するよう、また職場闘争は係員をつるし上げるとい

う形で指導されているがこれは誤りであり改善された」

いとの要請状を出した。覆面をぬいだのである。また二四

日、三池労組では三池製作所支部が三鉱連を脱退、別組合を結成し、三鉱連内部の田川、山野、砂川、芦別の四支

では、希望退職者数が会社予定数にほぼ達し、三池と歩調を共にしがたいとの声が現地で高ま

ってきたのであ

った。

三井は組合側の乱れに乗じて追撃にう

つった。すなわち、

一〇月

二六日三鉱連に対し

「指名解雇をせざるをえな

い段階にはいった。事態収拾のため最後の機会として団交を開きたい」と申し入れた。従来のような単なる企業整

ではなく三池労組を

一挙につぶしてしまおうという意図がありありとみえる。炭労は、この闘争がまずい意味の

三池独走

になることをおそれ、首切りが避けられるならば他は譲

っても

よいとの判断に傾いた。

しかし会社側は

「業務阻害者を排除する」との条件を付加して組合側の譲歩を

一蹴した。合理化問題は三池におけ

る退職予定者数

の確約と活動家排除の質の点に集約されて、ここで

一一月

一二日交渉は決裂した。

一一月

一三日から行なわれた中

労委斡旋

についても、二五日労使双方が斡旋案を拒否するに及んで事態は重大段階に突入した。

炭労は指令により、三池のみ毎週火金曜

の二四時間スト、他の三鉱連五山は時間外拒否および

一せい一時間休憩

を火金曜に行なわせることを通じて長期

の態勢をとることにした。その意味は

「三池のたたかいを中心に三鉱連と

しての統

一対決が決行され、最終的に炭労全体がストライキをも

って三井資本に対決することにおく。この体制は

たたかいを通じて全組合員に思想として消化され、行動として発展するまでねばり強い努力が各級機関においてな

されなければならない」

(一九五九年、

一一月二五日、炭労中闘指令)ということにあ

った。

つまり、

長期の態勢とは

752

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∬ 炭労の企業整備反対闘争

ナーソドックスな論法を、その態勢が現にないので順を追

ってこれを再建するほかないということである。逆にい

えば現実は相当後退していることを意味している。

一一月二六日から三池における希望退職募集が再度強行され、

一二月はじめには

一四九二名に対し退職勧告状が

発せられ、

一二月

一〇日には

一二七八名に対し、

「一五日までに退職に応じない場合は

一六日以降解雇する」との

再勧告が発せられた。これによる解雇発効者は

一一二

〇名であ

った。

一〇月

=二日以降火金の二日各二四時間スト

を実施していた三鉱連では、

一二月

一日以降は三池のみのストライキにな

った。会社は三池と他の五支部との分離

に成功したのである。

一二月

一五日以降行なわれた配転交渉も

一九六〇年

一月七日最終的に決裂し

た。

三井とともに長期化が予想されていた杵島では

一〇月二二日、希望退職者が相当数に達したのと、組合側が協力

に出たため、急転解決したが、これは三井に少なからぬ影響を与えたにちが

いなか

った。

他方、日鉄二瀬では

一〇月

一二~三日、指名解雇をうけた者

一二〇名の強行就労をめぐ

ってトラブルが起こった

が、

一四日からは毎週木金土の七二時間ストが

一一月

一ぱいつづけられた。その後団交を中にはさ

み、戦術委員七

名の辞任問題などあり、二瀬も

一二月

一七日以降七二時間

ストライキを中止して内部体制をととのえることにな

たが、交渉の方は決裂したまま三池問題とともに年を越したのであ

った。

三池問題についてであるが、早くから炭労の合理化反対運動に反対していた三社連は何度か炭労

の規律から離れ

て単独妥結をするため妥結権の三社連

への委譲をせま

っていたが、中労委斡旋案拒否という事態のもとで臨時大会

をひかえ、ふたたび妥結権委譲を炭労に申請してきた。炭労戦術委員会は協議の結果、次の条件により、委譲を決

た。

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第一章 石炭合理化反対闘争

コニ社連は会社が提案している企業合理化の内容中、協議決定の結果がただちに三鉱連傘下組合員の労働条件の

問題となる事項については三鉱連闘争に支障をきたさないよう特に留意し闘争を推進する」。

だが

一二月七日、早速妥結した三社連の協定書の内容は、炭労や三鉱連はおろか、会社のペースそのままだ

った。

「各所別提案については、会社提案の趣旨に沿い各所ごとに協議する」との結びの条項がすべてを言い表わしてい

た。組合としての三社連葬送の辞である。

一九六〇年

一月五日、三池は年明け初の二四時間ストを実施し、指名解雇通知を

ヘリコプターで

一括返上した。

一月七日、配転交渉決裂後、会社は業務命令で対抗、組合もこれを拒否したため、

一月二五日以降

ロックアウト

と無期限ストという状態にな

った。

754

12

大手炭鉱の中小鉱化i

北炭の三山分離反対闘争

(一九六〇年)

三池の事態拾収のため四月六日に示された第二次中労委斡旋案に対し、態度を決定する目的で開かれた炭労第

五回臨時大会

(四月九日~四月一七日)

は苦悩のすえ、三鉱連五山の脱落にもかかわらず斡旋案を拒否して三池をつ

つんで闘争をつづけるほかないことを決定したのであ

ったが、この大会は

「当面のたたかう方針に

ついて」

のなか

で、

「これまでの企業整備反対闘争の欠陥」を次

のように集約している。

ωわれわれが企業整備反対闘争を産業別でたたかうという方針を決定しながら、そのことを消化できず、つねに企業連の

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炭労の企業整備反対闘争

責任

において解

決する方向がとられ、内容的

にも統

一されたものでなか

った。

②合理化

の、各

企業各山におけるあらわれ方

に相違があ

ったという原因にも

よるが、各

企業、各山

の合理化に対決する姿

のア

ソバラソ

スが今日三池

のたたかいを統

一闘争

としてたたかう視点を見失わせている原因

であ

る。

㈹前二項の原因が、三井五山

の組合員

に対

して、期末手当無支給や賃金遅欠配と

いう経済面

の圧迫

とともにかけられた首

りに対し

『三井だけがとりのこされている』と

いう敗北感

をも

たらし、今日

の事態

を惹起し

たとみなければならな

い。

たたかいの構えが各企業各山あ

るいはせいぜい炭労

の中だけ

でのたたかいにとどまり、権力を総動員し

マスコミを最大

限に生

かした敵

の全国的な組織攻撃

に比較

すれば、われわれのたたかうための戦線

の幅

の狭

さと厚み

のなさは決定的な欠陥

とな

っている。たたか

いはすでに局地戦ではなくな

って

いる

のに、われわれの戦線はいま

だに局地戦

の範囲を出ていな

い。

一一万人首切りに対決するため、

一〇月大会で

「長期か

つ柔軟」と

いう方針を決定し

たが、

たた

かいの主体

である内部

体制がともなわず、結局

一=

二号指令

の変更を余儀

なくされた。二〇三号指令が藤林あ

っせん案を出させた

「混乱する内

体制」をもたらした直接

の原

因である以上、内部体制

の正し

い認識をも

った戦術指導が必要

であ

った。

また、

これからや

っていくことのなかで重要な体制づ

くりとし

ては、

いろ

いろの形を

ってあ

らわれてき

ている各

々の合

理化

に対してたたかえなか

った

ことが、今日三池闘争を孤立化

せて

いる大きな原因

一つであ

ることを理解し、合理化に対決す

る基本的な姿勢を確

立す

る。

ω各支部

の特殊性

のなかで労働者

の自発性と創意性を尊

重しあ

らゆ

ることを行なう。各支部

の最低

の統

一行動をやる

こと

から全体闘争を組織し

ていく。この内容

は抗議集会、職場大会

一せい休憩など

の低

い次

元から次第

に高めていく。

この具

体的な内容

は指令として出され

るが、その支部

の独自

性によ

って指令以外

に組みあげ行動

を組織し

ていく

ことが望まし

い。

このように、炭労が合理化反対闘争を進める上で、くりかえしいっていることは、合理化に対す

る正しい認識に

った各支部の内部体制の確立であ

った。また各支部の独自性と創意性を生かした行動のつみ重ね

の上に築かれる

"

産業別統

一闘争であ

った。

7

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第一章 石炭合理化反対闘争

だが、三池をつつむ他の支部では三池闘争のなりゆきとの見合

いのなかで合理化企業整備が進められ、炭労の統

一闘争の悲願はますます遠ざかっていった。

一九六〇年

の炭労傘下の主な支部について合理化反対闘争の経過の概

をみよう。

まず北炭の三山分離反対闘争である。

北海道炭鉱汽船では、

一九五九年以来、労働者の自然減耗無補充および坑口統合などによる配置転換等に関して

山元交渉が進められていたが、

一九六〇年二月

一日の夕張二鉱のガス爆発

(四二名死亡)

によ

って交渉は中断した。

四月七日から再開された交渉の結果、会社は長計再検討の必要があるとして

一たん合理化案を撤

回した。そして

六月二〇日にあらためて提出された合理化案は、万字、美流渡、赤間の三山を北炭から分離し、全山から希望退職

(目標四七五〇名)を募集する、離職者の就職斡旋を行なうというものであ

った。

北炭労連は大会を開いて絶対反対を決定してストライキを行な

ったが、八月下旬までに、三次にわたる希望退職

募集が強行された。これに応募した者は二

一四九名にも達したが、会社の目標には半分にも達しな

かった。この段

では組合の抵抗はまだもちこたえていたのである。

だが八月

一八日から九月六日まで開かれた炭労

の第二七回臨時大会が三池闘争の終息を決定するや、これに勢

をえた資本の側は、九月九日、三山分離の提案にふみき

った。万字鉱は五二七名を四五六名に縮小して能率を

一九

トンに、美流渡鉱は三八八名を据えおくが能率を二二

・六トンに、赤間鉱は八九〇名を八五〇名として能率を二

ニトンにするという内容がこれに加わ

っていた。しかも会社のいい方は高圧そのものであ

った。

すなわち、

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皿 炭労の企業整備反対闘争

ω三山分離以外に北炭の再建はない。

②経営面からだけいえば閉山したいところだが、労働者の生活権確保を考えての措置である。

③支払われる退職手当を会社預金とし、その受取利息をプールして考えれば賃金減収もヵバーできる。

㈲具体的な賃金、労働条件は、北炭労連および山元組合と協議してきめる。

⑤三池闘争

のように血で血を洗うことはさけて了解してほしい。

⑥新会社設立の時期は手続完了次第と考えているが交渉がまとまらなくても

一方的に実施する方針である。

このような強盗的提案に対し組合側は九月

一〇日、理性的な筋を通した方針を決定している。すなわち

①分離案撤回闘争

の基盤は三鉱にあることを確認し、監視活動強化、分裂策謀防止につとめ、単独行動を排除

し、残留

・配転等

の意思表示を禁止する。必要ある場合は統制権の発動を行なう。

ω

一〇山については三鉱分離案を撤回させるために三山をつつんでたたかう意思統

一の体制の点検整備をはか

る。また、職場居住の問題を掘りおこし山元闘争の組織につとめる。

③団交においては

一〇山の生産計画をひき出し、具体的に協議する。会社が拒否した場合は二四時間ストをは

じめとして労連全体の闘争に発展させ、地域闘争から産業別全体闘争に発展させ、対決段階を迎える。ー

だが残念ながら、資本の側の企業整備、組織破壊の合理化攻撃は不均等破行的であ

ったので、受けとる側の未熟

さが、事態の緊要度も手伝

って、それぞそれに異な

った反応とな

ってあらわれざるをえない。重圧

の直接にかか

ている三山が闘争

の基盤になること、他の

一〇山がこれをつつみ、山元闘争

の組織化を進め、たたかいを労連全体

の閣争に発展させ、地域のたたかいを全産業別閣争に発展させるという方針はまことに立派ではあ

るが、三池闘争

757

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第一章 石炭合理化反対闘争

に際しても同じことがいえたのに実行されなか

ったのである。三池闘争が中労委ー会社のラインで終結することに

った今、この立派な方針が山元、労連、炭労の各

々のレベルで果たしてどれほど消化できるであろうか。総退却

にはいったとみられる炭労各支部がどこまでふみとどまれるかもまた問題であった。炭労のやり方

は、方針として

というよりは、実際問題として北炭

の場合も三池の場合と同じであ

った。つまり、山元の問題を企業連にたたかわ

せ、単に指導部としてこれを指導するというやり方である。北炭の問題を全炭労の問題として処理する、つまり北

問題を指標として、北炭以外の支部にも反対闘争に立ち上がらせるという

(一九五七月の杵島闘争に際しての同情ス

ト)ような勢いはすでに炭労にはなか

ったQ

っとも、会社が強引に新会社移行措置を進めるのに対抗して山元では種

々抵抗が行なわれ、会社側を追いつめ

る局面もあり、そして、そのような情勢下で九月下旬

の炭労中闘は北炭闘争について

「北海道地域

のスト及び炭労

全体のストを背景として

一」月中旬を目途に強力な戦術を行使する体制を確立する。三山がストに突入した場合及

び戦術強化に対応するため、闘争資金、生活資金として当面二億五〇〇〇万円

(一人当たり月一万円以上)を確保す

るLと決定し、北炭の闘争を全北海道および全炭労に発展させる方向に指令したのであ

ったが、いかにせん、三池

闘争終結の体制は全体として全炭鉱労働者の合理化反対闘争を支える上での士気に決定的な影響を与えていたし、

具体的

には会社が新会社移行を進めている三山での職員組合は、早くも

「条件闘争

への転換」の声が高まり、北炭

下部山元組合の内部にもこのような動向が高ま

っていたのであ

った。すなわち、北炭労連は九月二四~五両日の闘

争委員会において

ω三山内部にたたかいに対する批判が出ている

758

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皿 炭労の企業整備反対闘争

一〇山の体制も不十分である

⑧会社の攻撃も、分離から休山に変わり、さらに閉山も予想される状況であり、たたかいの見通しがない

㈲だから、

一八日に決められた労連の毎週

一回二四時間ストも機械的には実施できない

という意見が出された。そこでこの闘争委員会は代表者会議に切りかえられ、さらに論議が加えられたが、

「産業

別統

一闘争に対する自信の喪失、

一〇山の体制としては、想定される閉山攻撃に対してテンポをはやめてこれに対

応する組織体制が困難であり、閉山攻撃が始まれば

ご二山の体制に動揺が生じ阻止することができない」という空

気が強かった。

もちろん退却論はかならずしも常に卑怯なのではないが、北炭労連のこの闘争委員会、代表者会議における退却

論は自己批判と前向きの努力のない、敵に背を向けた自滅的な、腐敗した退却論であ

った。だから炭労は

「閉山と

いう桐喝によ

ってたたかいの幕を引くわけにはいかない。

一〇山にたたかう体制がないというのであれば産業別統

一闘争のテソポをはやめるための臨時大会を招集しよう。三山の組合員家族の生活保障と重点

スト採用にっいては

炭労全体のカンパを行なうから」との提案をも

って説得につとめたが、炭労とても、いやという下部組織の首に縄

をかけて引

っぱるわけにはいかなか

った。合理化攻撃をかけられ、資本の懐にころげこもうとする組織には理屈は

通用しなくなる。北炭労連は条件闘争に、炭労はそれにもかかわらず体制立てなおしに、というふうに両者は異な

る道を歩むことになる。

九月二六日から会社は

「桐喝的」休山にはいり、三山はスト同然にな

った。さらに

一〇月

一日赤間鉱には閉山、

資材撤収というおどしをかけるかたわら、批判派を育成し、強行就労を試み、これは道炭労派のピケによって阻止

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第一章 石炭合理化反対闘争

いう

一幕

った

操業

の執

を貫

した

607

一〇月三~四日、騒然たる情勢のなかで開かれた北炭労連

の臨時大会では、事態収拾、条件闘争

をとなえる七支

(平和、真谷地、登川、幌内、新幌内、新夕張、空地)と闘争継続をとなえる五支部

(夕張、神威、万字、美流渡、赤間)

と態度保留

一支部

(清水沢)にわかれたが、

北炭労連としては、炭労の説得もあ

って、

一〇月

一二日からの炭労第

二八回臨時大会まで決めないことにな

った。

炭労二八回大会でも事態をまとめることはできなかった。北炭

の収拾派は、炭労指導

への不信、

ことに北炭闘争

コニ池闘争のように泥沼闘争におちいるLことをおそれ、

「本部はたたかう体制にない、事態収拾で条件闘争と

べきだ」と主張したのに対し、闘争継続派は炭労本部とともに、

「三山分離を認めることは今後

一一万人の整理

を認めることになる」として統

一闘争の必要を訴えた。大会は全体としては本部中闘案すなわち、

ω三山分離は認められない

②政策変更要求のたたかい、三池の条件闘争、各社の合理化闘争を結合して、

一〇月下旬より炭労全体の闘争

を組織する

の線

に沿

って組まれた

一〇月下旬以降四次にわたる統

一実力行使を承認した。北炭の収拾派は、大会ボイコットを

行な

ったり、

「炭労オルグの導入を拒否する、指令は返上する」などの発言により、炭労本部の意図する議事進行

に抵抗したが、結局、

「前向きの体制をとるよう努力する」「態度留保を決定した北炭七支部については理解する」

の議長集約に服して大会は終わ

った。

その後炭労指令による二四時間

ストが三波にわた

って行なわれ、美流渡、赤間においては条件闘争派の除名が行

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なわれるなど曲折はあ

ったが、北炭労使の中央交渉で局面は打開されるにいたらなか

った。中央交渉が行きづま

たあと、北炭労連から条件闘争のための権限委譲の要請があり、これを検討した炭労は

一一月二三日、

「現状から

みて長期にわたる反対闘争は困難である」との結論をえ、炭労を加えた北炭労連交渉団に

一切の権限が委譲され、

一一月二五日、三山分離に関する協定調印に達して、ここに、北炭闘争もまた炭労の統

一闘争に発展せぬまま資本

家に押しきられてしま

ったのである。

13

央大手

労組

の敗退t

三菱

・住友

・古河

・明治

・雄別

・太平洋

∬ 炭労の企業整備反対闘争

三菱

三菱鉱業では

一九六〇年三月、職員の二五〇名希望退職に引き

つづき、方城、上山田、飯塚の三山の終掘

にともなう鉱員の社内配転が提案され、組合側がこれを認めたため、五月にはなんということもなく解決した。

その後九月にな

ってから崎戸鉱の採掘条件の悪化を理由に、菱炭連九州各支部に対し、崎戸鉱の減員六〇〇の分

担に協力してほしい

(とくに飯塚、上山田、方城各鉱で)、

勇退者には就職を斡旋する等の提案を示した。組合側は

〇月三日、①崎戸

の減員案を撤回せよ

②長計協定を完全に実施せよ

③長期操業安定計画を示せ

④飯塚、上山

田、方城に対しては就職斡旋

の計画を示し、かつ退職条件を引上げよ

の四条件を要求したが、会社側はこれを拒

否し、退職募集を強行した。組合側は

一時間五〇分のストを二波おこな

ったが退職希望者は八〇〇名にも達したの

で、配転をめぐる条件闘争に切りかえざるをえなか

った。そしてそれも

一一月末に会社にと

っては難なく解決して

761

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第一章 石炭合理化反対闘争

しま

った。

住友

資本の側の撤収作戦に対して組合側もそれに同調せざるをえなか

ったのが、三菱九州各支

部の場合であ

た。これに対し住友潜竜の場合は

「残された者の雇用安定のため」の炭労からの離脱であ

った。

潜竜鉱は

一九五九年

一一月、準上がり山ということで組合も認めた人員整理が行なわれ、

一〇〇〇名をこえた従

業員も四〇〇にまで減少していた。

一九六〇年七月にな

って潜竜の現地組合は、就職斡旋の困難性

や会社側の閉山

えにたいし、「鉱命延長に最善を尽くし、残された者

の生活確保を図る」との見地から、「閉山を前提として現地

に形を変えた新しい職場を作り

一人の失業者も出さない、従

って安定職場として第二会社による経営を行なわせる」

の方針を決定した。長計協定にいう

「安定職場」も、ここまで変容したものとな

っては、炭労の産業別合理化反

対闘争も内部から腐敗崩壊していることが歴然としているであろう。

潜竜労組のこの決定には住炭連もやむをえないとしたが、炭労は、

「第二会社による操業継続は企業分離による

全員解雇であるから認めるわげにはいかない」とし、九月八日

「オルグ派遣、住炭連としての対決体制確立」の方

針を決定した。これに対し潜竜労組は九月

一七日に臨時大会を開き、三

一六対四の圧倒的多数をも

って既定の方針

を再確認し、

「第二会社による完全雇用をたたかいとるため、現地交渉を行なう。したが

ってこれが推進のため

の上部組織から離脱せざるをえない」として、即刻、住炭連と炭労から脱退し、会社と閉山協定を結んだのであ

った。炭労がいう完全雇用、安定職場は潜竜労組が主張するのとは鳥鷺のへだたりがあ

ったはずである。潜竜労組

は、たたかうことがかえって職場の安定をそこね、賃金や労働条件の切下げは鉱命延長、したが

って安定職場に通ず

ると考えたし、企業の縮小の場合は必要以上に希望退職が出る方が、かえって

「残された者」の完全雇用が確実に

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II炭 労の企業整備反対闘争

なると考えたのであろう。これは資本のいう完全雇用、安定職場でしかない。

他方、住友では三月に筑豊の昭嘉鉱の第二会社化が提案された。隣接忠隈鉱との関連で提案されたものであ

った

が、組合は

「本人の自発意思にもとつく就職斡旋を認め」、

会社側も当初の案に固執しなかったので、

大きな波瀾

なく解決した。

古河.明治.雄別

・太平洋

古河では

一九五九年

一二月に大峯、三五年三月に峯・地、つづいて五月末

には峯地、雨

竜、好間に関する合理化を提案してきた。理由は、経営の悪化、赤字

の累積、金融逼迫であり、提案内容は、①定

員制の廃止

②賃金

の合理化切り下げ

③職場規律の確立

④福利厚生面の切下げ、その他であ

った。

明治は

一九六〇年八月に提案があ

った。それは筑豊の赤池鉱の縮小配転であった。古河も明治も組合側

のいくば

くかの抵抗ののち、会社の方針がほぼ貫かれて妥結した。

雄別では

一九六〇年四月に、

一九六三年度までに一二〇〇円の炭価引下げを行ない

「炭鉱を保持す

るた

の対

策」として茂尻鉱の在籍

一七五八名を

一一〇〇名に縮小することを中心とした合理化案が提案された。会社側

の提

は他社の場合と同様に、組合が同意しなくても

一方的に行なうというも

のであ

った。雄労連はこれに対し、次

ような方針で臨んだ。

茂尻に対する攻撃はかならず雄別、尺別にもかけられる。したが

って雄労連の統

一闘争とし

て推進する。

直接攻撃を受げている茂尻は独走体制でたたかう。

指名解雇に発展することを十分配慮して闘争を組織する。

炭労は六月二四日の戦術委員会で、雄別のたたかいを、北炭、古河のたたかいと結合すべく

「三社企業整備反対

763

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第一章 石炭合理化反対闘争

会議

の設置

つき

のよ

に指

た。

64

ここ数年間企業整備にたいす

るたたかいは産業別統

一闘争

は勿論、企業連

全体の闘争

にさえも発展しな

いまま

たた

かいが

7

終息し

ている。その結果ほとんど

の企業連支部にお

いてそ

の目的

が達成することができなか

ったのみならず

、今

日三池

の事態

を招

いている原因

ともな

っていることを第

二五回大会

は指摘して批判がお

こなわれた。しかし今

日にいたるもたたか

いの問

題点は除去され

ていな

い。第

二六回大会は

このような現状から、さらにたたかいの具体的発展方向

として組織抵抗体

の単位

であ

る支部の体制を重点的

に点検し討議し、そ

の中

から全体の意思統

一をおこなうことを態勢確立

の基盤

とし

て決定

した。

現在北海道

における北炭労連、雄労連、雨竜支部

に提起されている企業整備

に対

して大会決定

の右

の諸活動

を実践す

ること

は当然

のことであるが、さらに組織

相互間の連携を深め、全体闘争発展

への素地を

つくるため、……次

の闘争指導調整機関

を設置することを決定し

(北炭

、古河

、雄別

三社企業整備反対闘争連絡会議設置に関

する指示、炭労中闘発

二五〇号、

九六〇年

六月

二四日)。

地本

に設

られ

の三

社構

の闘

連絡

は何

ほど

の効

あげ

った。

のくず

の山

交渉

への収

ても

るよ

に炭

の期

は裏

切ら

であ

った

雄別

「長期

の構

え」

で抵抗

たが

、会

退

職募

退

職勧

の措

を次

々に強

った

。組

七月

八月

上旬

かけ

て四波

にわ

三山

一行

(二四時間

スト三波)

を実

たが

八月

一日次

の条

で妥結

ω人員関係

①茂

尻の希望退職を打切り退職勧告を撤回す

(予定人員

にす

でに達

したので)。

②雄別

・尺別

の退職

募集

も中止する。③雄別

・尺別

の減員

に伴

い、茂尻

より配転する。

②茂尻関係

①露

天掘

(租鉱権)を行なう。②監断業務

を設定する。③時差出勤を

一部職種に採用する。④賃金支払

日を

超過労働

ついて、六ヵ月後から

一ヵ月ず

らす

。⑤購買会、映画、車庫、鉄工所等を分離し、茂尻商事

に移管する。⑥職場

一部統合す

る。⑦減員

に伴う不均衡是正

のため、所内配転を行なう。⑧職場秩序

の確立。⑨自然減耗

は坑外

は補充

せず、

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坑内夫は半期毎に協議する。⑩茂尻再建委員会を設置する。

太平洋炭砿労組は、三月中旬、機械化およびそれにともなう作業システムの変更、時差入坑などの合理化提案を

うけたのに対し、

「長計協定の再確認による安定職場の確立を基調として人員要求、全体給要求、福利厚生要求を

行なう」との方針によって、実力行使を背景とした団交を重ねたが、これもすぐれた効果なく、会社の合理化方針

つらぬかれていったQ

14

地方大手

労組

の敗

退-

日炭

・日鉄二瀬

・貝島

・大正

・宇部

丑 炭労の企業整備反対闘争

九州大手ではまず日炭で

一九六〇年二月中旬大君鉱の縮小配転

の提案があり、組合は炭労の調査団による調査を

へて、

「配転対策を行ない完全雇用と安定職場の確保を行なうべきである」との方針のもとに交渉

を行ない、その

結果、①できるだけ原職とする、②配転によって労働条件は低下させない等の条件をとって四月末、円満妥結をみ

たQ日

鉄二瀬ではさきにもふれたように、

↓九五九年八月、六五〇名の希望退職募集が提案され、これをめぐる闘争

三池闘争と併行してはげしくたたかわれたが、

一〇月

一〇日には

一二〇名の指名解雇に発展し、

この間

一二月中

旬までに七二時間スト八回、四八時間スト

一回、二四時間スト三回、一時間五〇分

スト

一〇回という実力行使を織り

657

まぜてのたたかいとな

った。ところが

一〇月

一二~三日指名解雇された者

の強行就労、仮処分、衝突などの事件がお

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第一章 石炭合理化反対闘争

こり、組合員

の間には闘争の前途に不安をいだく者も数がふえ、そのため、指名解雇者を三〇名減らすという会社側

の修正提案を機に二瀬労組の戦術委員会は炭労指令の週七二時間ストライキをひとまず中止し、たたかう体制を整

し、次

の段階で実行可能な実力行使を組織して解決をはかる、という方向で戦術転換をはか

った。

これにたいする

対者も多く、妥協策として、二四時間

ストライキと

一時間五〇分ストライキを週

一回交互に反復するとの案が出

されたが、いずれも二瀬闘争委員会

の段階で否決されたため、三役と四支部長の戦術委員会は、闘争指導に自信が

もてないということで総辞職した。これは慰留されたが、炭労は

一二月

一七日以降

の七二時間ストライキを中止し

て組織分裂の回避と闘争態勢の立て直しをはかることになり、二瀬問題は三池問題とともに越年することにな

った。

二瀬の指名解雇に関する会社の修正提案

(一二〇名を九〇名とする)が行なわれた

一九五九年

一二月

日に、「安

定職場の確立に努め終掘規定という実態認識にもとついて社内配転、関係会社

への就職斡旋を図る」ということで、

掘想定の日鉄高雄

一坑の配転に関する提案が行なわれた。日鉄二瀬支部も、調査団を派遣した炭労も、これを了

承し、

」九六〇年

一月

一三日、所内配転を中心とした協定が成立した。

他方、二瀬の指名解雇問題は

一九六〇年

一月に会社側はさらに

一〇名を撤回して八〇名としたが

(最終段階での、拒

否者七〇名)、三池の成り行きに依存するほかない組織状態

のため闘争は発展しなか

った。その後九月の炭労第二七

回臨時大会は、三池に関する中労委第三次斡旋案を受諾するとともに、二瀬の指名解雇問題は

コニ池

の事態収拾に

準じて解決をはかる」ことに決定した。こうして、

一一月

二日、二瀬問題は解雇指名がなされてから

一年

一ヵ月ぶ

りに、

「勇退希望をした者」として解決されたのであ

った。

貝島炭鉱では

一九六〇年二月二四日に第

一次合理化案、三月

一二日に第二次合理化案が出され、組合の反対闘争

766

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皿 炭労の企業整備反対闘争

にもかかわらず強行された

「希望退職募集」によってほぼ会社側の目的が達成され、組合側も採炭夫の若返り、超

過労働の適正化、職場規律の確立などについては日常問題として処理するという形の譲歩をしたので、四月中旬ま

でに決着した。

大正鉱業では二月、四月とたたみかけるように合理化案が提案された。配転から始ま

って希望退職、賃上げ分お

よび期末手当の半額を三年間すえおき社内貯金化、ならびに福利厚生費の削減などに至るきびしい合理化であ

った。

希望退職問題は応募者も多くほぼ解決し、五月中旬に派遣された炭労調査団も事態の深刻さを認め、配置転換と生

産目標達成に協力する方向で

一応問題をおさめたのであ

ったが、

一〇月

一二日、さらに賃金を平均

二三%切下げる

など二〇項目の合理化提案とな

った。組合の実力行使を背景とする交渉にたいし会社側は次のように訴えた。

「金

融筋、業者は先行き不安から資金融資を躊躇している。新中鶴

の立坑開発工事について開発銀行の融資制限から三

井建設が工事中止を申し入れている。債権者が組合の態度から見通し困難として返済を強硬にせま

っている。ホー

ル導入が見合わされている。坑内条件が悪化している」と。さらに会社側は

「このまま長期のストが続行される

とすれば、もはや企業の崩壊は必至である」として非常手段に訴えると宣言した。

組合側は

「閉山を覚悟して白紙撤回を指標としてたたかいを進める。しかし会社の窮状も理解できる。具体策と

しては出炭確保に関する協力体制の中で将来の雇用の安定をはかり、基本的労働条件の確保をたたかいとる」との

方針に立ち、会社のロックアウトを予想して一挙に攻撃を集中して勝利をつかむため、

一一月

一二日から無期限ス

トライキに突入することにな

ったQ

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すでに会社側は

一一月二日に賃金切下げについて譲歩を示していたのであ

ったが、炭労と九州石炭鉱業連盟のト

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第一章 石炭合理化反対闘争

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Page 39: Ii炭労の企業整備反対闘争junposha.com/library/pdf/60005_22.pdf · 第一章 石炭合理化反対闘争 構成の特殊性からして大量の首切りは必須の課題であるとしたのである。

このようにして、表むきは三池闘争に高揚した炭労の企業整備反対闘争ではあ

ったが、背後では各山の合理化反

対闘争は産業別としてもほとんどみるべきものがなくな

っていたのが炭労の実態であ

った。

一九六〇年までの炭鉱合理化問題についての考察を終わるに当た

って、

一九五五~六〇年の炭鉱概況の推移をか

かげておこう

(第8表)。

一九五〇年を基準にすると能率はほぼ倍増している。労働者数は

一一万四千人の減少であ

る。

一九五五年から六〇年までの労働者数をみても全国で四万四〇〇〇人の減少である。この間炭鉱数はおよそ九

一〇〇、全国で

一三〇の減少である。減少の主たるものが九州であ

ったということがわかる。労働者数の減少

についても同様にいえる。このように石炭鉱業の合理化は明らかに主として九州に集中してあらわれたのであ

った。

三池闘争後の合理化反対闘争

皿 三池闘争後の合理化反対闘争

i

石炭政策転換闘争

三池労組は、就労後、あらん限りの差別攻撃に組織をゆさぶられながら、この差別を含めた合理化攻撃にたいす

るたたかいの戦略として長期抵抗路線を築き上げた。ここでは、三池労組の長期抵抗路線

の視点から、炭労の政転

闘争の意義と限界をみてみようと思う。

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