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日興アセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第368加入協会: 一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会 1 20138サマリー 時価加重インデックスの問題点に鑑み、非・時価加重インデックスは大きく 3つのグループに分類でき、運用目的に応じて選択することが重要である。 :ウェイト平準型グループ 時価加重インデックスのウェイトはごく一部の大型銘柄や国、業種に集中して いることから、この問題を改善するインデックス :ファンダメンタルズ型グループ 時価加重インデックスが市場参加者のセンチメントに振り回されやすく、過大に 評価された後の暴落が発生しやすいことから、この問題を改善するインデックス :リスク・リターン改善型グループ 時価加重インデックスがボラティリティリスク・リターンの点で効率的ではなく、 リターンに対してボラティリティが過大であることから、この問題を改善する インデックス いずれも、時価加重ではないものの、株式市場を代表する市場インデックスであり、 パッシブ運用のベンチマークとして用いることが可能である。また、それぞれのイン デックスは異なる特性があることから、運用目的に応じて選択することが可能である。 「日興アセットマネジメント:資産運用シリーズ」では、「効率性」をキーワード に、多角的な視点からインデックスを用いた新たな運用も含め、新しい資産運 用について複数回にわたって考察している。 4回は、「非・時価加重インデックスの登場」について具体的に考えてみる。 貴博 日興アセットマネジメント クライアント・サービス部 シニア プロダクト マネージャー 非・時価加重インデックスの登場 ~日興アセットマネジメント:資産運用シリーズ(4)~ 機関投資家向け資料

Investment Insight Series 2013年8月 - Nikko AM...⑦MSCI_Value Weighted 低ボラティリティ及び、 本源的価値による株 式の構成比率を実現 するように設計。残余利益成長モデル

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日興アセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第368号 加入協会: 一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会

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2013年8月

サマリー ■時価加重インデックスの問題点に鑑み、非・時価加重インデックスは大きく 3つのグループに分類でき、運用目的に応じて選択することが重要である。 Ⅰ:ウェイト平準型グループ 時価加重インデックスのウェイトはごく一部の大型銘柄や国、業種に集中して いることから、この問題を改善するインデックス Ⅱ:ファンダメンタルズ型グループ 時価加重インデックスが市場参加者のセンチメントに振り回されやすく、過大に 評価された後の暴落が発生しやすいことから、この問題を改善するインデックス Ⅲ:リスク・リターン改善型グループ 時価加重インデックスがボラティリティリスク・リターンの点で効率的ではなく、 リターンに対してボラティリティが過大であることから、この問題を改善する インデックス いずれも、時価加重ではないものの、株式市場を代表する市場インデックスであり、パッシブ運用のベンチマークとして用いることが可能である。また、それぞれのインデックスは異なる特性があることから、運用目的に応じて選択することが可能である。

「日興アセットマネジメント:資産運用シリーズ」では、「効率性」をキーワードに、多角的な視点からインデックスを用いた新たな運用も含め、新しい資産運用について複数回にわたって考察している。 第4回は、「非・時価加重インデックスの登場」について具体的に考えてみる。

星 貴博 日興アセットマネジメント クライアント・サービス部 シニア プロダクト マネージャー

非・時価加重インデックスの登場 ~日興アセットマネジメント:資産運用シリーズ(4)~

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■時価加重方式の反省から生まれた非・時価加重インデックス①

時価総額の大きさに基づいてウェイト付けを行なう時価加重インデックスには大きく3つの問題点がある。

Ⅰ:一部の大型銘柄や国、業種にウェイトが集中し、偏りがある Ⅱ:業績よりもセンチメントに振り回されやすく、PBR・PERといった 指標の影響を大きく受ける Ⅲ:リスクとリターンの関係では釣り合っておらず、「ボラティリティの 割にリターンが低い」もしくは「リターンの割にボラティリティが 大きすぎる」という効率性の問題がある

上記3つの問題点に対する解決のために、以下のような手段が考えられる。

<問題点>

Ⅰ:偏りをなくし、GDPや均等ウェイトによる再配分を行なう Ⅱ:PBRやPERといった指標を使用せず、銘柄別に過去財務実績 データに基づくウェイト付けをする Ⅲ:株価推移から分散もしくは標準偏差の最小化を図ったり、あるい はリスク・リターンを最適化するようにウェイト付けする

時価加重インデックスでは、米国にウェイトが偏っていることから、ウェイト調整の結果、北米が低下する。また、米国においてウェイトが高いヘルスケアなどのセクターウェイトが低下する。(グローバル株式の時価加重インデックスの場合)

株主資本・売上・収入・配当・キャッシュフローなどの企業価値を算出し、これらに基づいてウェイト付けした結果として 時価加重インデックスに比べてバリューに傾斜したインデックスとなる。

ボラティリティもしくは分散を最小化しようとする最小ボラティリティインデックス、リスクウェイトインデックスの場合は、ウェイト上位には低ベータ銘柄が採用される傾向がある。また、保守的な銘柄の割合が多くなる傾向にある。

また、上記の解決策の結果として、非・時価加重インデックスには以下の 特徴が現れる。

<解決策>

<現れる特徴>

※上記は、一般的なインデックスの特徴を説明したものであり、実際と異なる場合があります。

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その他にもこれら3グループに分類しにくい非・時価加重インデックスも登場しており、今後「どのような市場ベータの獲得をめざすのか」という選択肢はますます広がっていくと見られる。 インデックスに優劣はなく、すべてのインデックスは何らかの目的のために合理的に構成されている。では「どの非・時価加重インデックスを選択すべきか」という問題になるが、それはまさに「何を求めるか」に応じて決まることになる。市場ポートフォリオの偏りを平準化したいのか、センチメントによるバブルの影響を回避したいのか、あるいはリスク・リターンの改善を求めるのかによって投資家は異なった選択をしなければならない。

【図表1】 主な市場インデックスと位置付け

■時価加重方式の反省から生まれた非・時価加重インデックス②

※上記整理は日興アセットマネジメントが独自に行なったものであり、インデックス提供会社の認識と異なる場合があります。

過去財務データでウェイト付けバリュエーション先行で割高となった銘柄(=バブル)の悪影響を回避

国・業種ウェイトまたはリスクを平準化し一部銘柄への集中リスクを排除

市場インデックスの背景にある考え方とインデックス構築の概要

株価は常に正しい

PERやPBRなどの、バリュエーションの変化を敏感に反映。

時価総額加重インデックス~MSCI Kokusai、TOPIX, etc

①FTSE_Active Beta

時価総額加重インデックスは各種潜在リスクやウェイトが大きく偏っているので効率的ではない。

偏った配分(国別ウェイトや各種リスク)を再構成。

②MSCI_Equal Weighted

③FTSE_DBI

④MSCI_GDP Weighted

株価は短期的変動が大きいため常には正しくない。実績財務データは常に正しい。

財務実績をもとにウェイト付けしバリュエーションの短期的変動の影響を抑制

⑤FTSE_GWA

⑥FTSE_RAFI

⑦MSCI_ValueWeighted

低ボラティリティ及び、本源的価値による株式の構成比率を実現するように設計。

残余利益成長モデルとベータ抑制によるリスク・リターンの改善。

⑧S&P_GIVI

ハイリスク・ハイリターンは成立せず、低リスク・ハイリターンである。

ポートフォリオのボラティリティまたは高ボラティリティ銘柄のウェイトを引き下げる。

⑨MSCI_MinimumVolatility

⑩MSCI_RiskWeighted

下方偏差ではリスクとリターンにトレードオフが成立している。

実績下方偏差と実績株価ボラティリティからリスク・リターンの最大化を追求。

⑪FTSE_EDHEC

時価総額加重インデックスのボラティリティは一定ではない。

一定の実績ボラティリティ(リスク)を維持するようにキャッシュウェイトを増減。

⑫MSCI_Risk Control

FTSE_Risk Target

ゆえに

過去株価の動きからウェイト付け高ベータもしくは高ボラティリティ銘柄の抑制、あるいはインデックスポートフォリオのボラティリティの抑制によりリスク・リターンを改善

ゆえに ゆえに ゆえに ゆえに ゆえに ゆえに

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1980年代以降、「時価加重ベンチマークへのパッシブ運用」と「時価加重ベンチマークを上回ることを目標としたアクティブ運用」の組み合わせで運用されるのが一般的で、前者のリターンがベータ、後者の超過収益がアルファと呼ばれている。しかし、最近MSCI Inc.では新たに、非・時価加重インデックスの組み合わせによる運用を提唱しており、ベータの概念とアルファの概念に変化が生じている。 MSCI Inc.によると(図表2)、かつて複数のアルファ・マネージャーのマンデートで分散されていた戦略は、「複数の“新しい市場インデックス”でのストラテジーマンデートで分散」することが提唱されている。 【図表2】 アクティブ運用の再定義

※上記はイメージであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。 ※上記の区分などは当社が独自に行なったものであり、インデックス提供会社の認識と異なる場合があります。

■ベータとアルファの組み合わせはどうなる?①

現行のフレームワーク 新たなフレームワーク

ストラテジー 複数のアルファ・マネージャーの マンデートで分散

複数の“新しい市場インデックス”での ストラテジーマンデートで分散

役割とツール 年金基金などの投資家は資金配分と マネージャー選択でストラテジーを 管理 アルファは広義に定義:ボトムアップ、 トップダウン、タイミング リスク管理は主に資金配分とマネ ジャー分散

投資家はリターン・ドライバーとリスク プレミアムへのアロケーションからストラ テジーを管理 アルファは狭義に定義され、システマ ティックなソースは除外 主にリスクファクターへの感応度を調整 することでリスク管理

経済面 アクティブ運用のマンデート(高コスト) がポートフォリオの主体 多数の外部マネージャーと投資家側の 少数のスタッフ

アクティブマンデートはベータマンデートと 組み合わされるのでコストは下がる より大きな資産を管理する大人数の内部 スタッフと少数の外部マネージャー

非・時価総額インデックスは、時価加重とは異なるリスク・プレミアムをとらえた市場指数。投資家は、様々な非・時価総額指数を組み合わせ、リスク調整後パフォーマンスの向上が可能

1970年代 1980年代 1990年代 2000年代

ポートフォリオ リターン

アルファ

アルファ アルファ

ストラテジーベータ

ファクター ベータ

ファクター ベータ

時価加重 インデックス 市場ベータ

地域ベータ ブロード マーケット ベータ

国ベータ

業種ベータ

<時代の変化に伴ない、リターンの分解方法が異なる>

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1980年代は、「市場ベータといえば時価加重インデックスリターン」、「アルファといえば市場参加者の加重平均リターンを上回った部分のリターン」と認識されていた。同時に、時価加重インデックスはベンチマークでもあったため「ベンチマーク運用」「インデックス運用」「パッシブ運用」はそれぞれ異なった意味であったにもかかわらず、同義語として理解されていた。

■ベータとアルファの組み合わせはどうなる?②

しかし市場ベータが1種類ではなく、何通りもの市場ベータが開発されたため、ベータ・アルファの言葉の定義は変容せざるを得ない状態になっている。従来ベータと呼称されていたものは「時価加重ベータ」に過ぎず、他にも「ファンダメンタルズベータ」、「最小分散ベータ」といった市場ベータが存在しているからだ。そのため、「最小分散ベータに対する超過リターン=最小分散アルファ」をめざす運用戦略といったものも定着する可能性もある。 また、パッシブとアクティブの違いについても様々な定義が可能だ。現在では「ポートフォリオマネージャーに裁量権があるかないかという運用手法の違い」に過ぎないと一般的に考えられている。下記のように時代に応じて、用語の意味合いは変化している。

従来 現在

ベンチマーク運用 いずれもTOPIX、MSCI Kokusaiなど時価加重インデックスに一致させる運用を意味する

時価加重インデックスに連動する運用を指す。

インデックス運用

時価加重インデックスに限らず、EDHECリスク効率性インデックス、ファンダメンタルインデックス、最小ボラティリティインデックス等各種の公開された市場インデックスで運用することを指す。

パッシブ運用 銘柄選択やポートフォリオ構成に関して変更の裁量権をポートフォリオマネージャーに与えない運用手法のことを指す。

アクティブ運用

時価加重インデックスに対する超過収益(=アクティブリターン)を獲得しようとする運用手法。そのため、時価加重インデックス運用を除くすべての運用はアクティブ運用として分類される。

銘柄選択やポートフォリオ構成に関して変更の裁量権をポートフォリオマネージャーに与える運用手法のことを指す。対ベンチマーク超過リターン型のみならず絶対リターン型も含む。

【図表3】 用語の意味の変化

※上記は、一般的な戦略に関する説明をしたものであり、実際と異なる場合があります。

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■ベンチマーク運用は意味がないのか?

TOPIX、MSCI Kokusaiといった時価加重インデックスには2つの側面がある。一つは、ベンチマークとしての側面、もう一つは投資対象市場としての側面である。比較するモノサシとして見た場合には非常に優れたベンチマークである。過去の「市場参加者全体の加重平均リターン」がどのように推移してきたかをモニタリングする際には極めて有用だ。あるいは複数のアクティブマネージャーのスキルを確認するときにどのマネージャーがどういった市場環境でどのようなリターンとなるのかを分析する際にも非常に有用である。このため、今後も時価加重インデックスはこれまでと同様モノサシとして機能しよう。 しかし、投資対象市場として見た場合にはあくまで「市場参加者全体の加重平均リターン」が期待できるにすぎず、市場参加者が合理的でない局面では当然リスク・リターンは効率的にはならない。かつて市場インデックスが時価加重インデックスしか存在していなかった時代ならともかく、現在は複数の市場インデックスを選択できる時代であり、アクティブマネージャーを選ぶのと同等の注意を払って市場インデックスを選択する必要がある。

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■平準化グループの特性は?

代表的なインデックスを取り上げ、3つの非・時価加重グループの特性をみてみよう。最初に平準化グループの中からイコールウェイトインデックス(=等金額または均等ウェイトインデックスとも呼ばれる)を例に、そのコンセプトと特性を説明する。 背景にある問題意識は、「時価加重インデックスは大型銘柄へウェイトが過剰に偏っている」というものだ。2013年7月末時点のMSCI ACWIでは、全2426銘柄のうち、わずか上位200銘柄程度で全ウェイトの50%を占めている。また、約50%の銘柄で時価ウェイトの90%を占めている。つまり、わずか10%の時価ウェイトを50%の銘柄数で分け合っているということになる。MSCI ACWIのリターンにおいて、これら下位50%の銘柄の影響力はほとんどないと考えられる。この状態を改善するため、1銘柄あたりの時価ウェイトを等しくすることで集中リスクを引き下げ、より分散効果の改善を高めることが可能と考えられる。 【図表4】 時価加重インデックスの構成イメージ

時価加重インデックスが大型銘柄にウェイトが集中する一方で、イコールウェイトインデックスではすべての銘柄を「1/全銘柄数」でウェイト付けするため、時価加重インデックスと比較すれば極めて強い小型バイアスが生じる。 また、国別ウェイト、業種別ウェイトも“銘柄数”に比例して決まる。もし特定の国や業種においてM&Aが進んでいればウェイトが小さくなり、スピンオフや新規上場が多ければウェイトが大きくなる。時価加重インデックスでは米国銘柄に大型銘柄が多く含まれるため、それら銘柄のウェイトが引き下がり、米国ウェイトも引き下がる。また、合併が繰り返された企業の多い、エネルギーセクターやヘルスケアセクターは大型銘柄が多いため、時価ウェイトが引き下がる傾向になる。 さらに、等金額にリバランスするたびに「株価が上昇した銘柄をウェイトダウン」し、「株価が下落した銘柄をウェイトアップ」することになるため、逆張り的(マイナスモメンタム的)な要素を持つインデックスとなる。

銘柄

構成比率

上位202銘柄で時価の50%

⇒残りを分け合う

※上記はイメージであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

上位775銘柄で時価の80%

約50%の銘柄で時価の90%

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【図表5】 イコールウェイトインデックスのリターン特性(2003年1月末~2013年7月末)

上図のように、 時価加重インデックスに対するリターン特性としては、

①米国株をアンダーウェイトしているので、米株が好調な時は時価加重 ベンチマークを下回る。 ②逆張り的特性になるので、循環物色される市場環境下では強い。 しかし「下がった銘柄がさらに下がる」という局面には弱い。 ③小型バイアスがかかっているので小型優位の市場環境下では強い。 大型優位の市場環境下では弱い。 といった点が挙げられる。

※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

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-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

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0%

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180%

240%

03年1月 04年1月 05年1月 06年1月 07年1月 08年1月 09年1月 10年1月 11年1月 12年1月 13年1月

累積超過収益率(左) 月次超過収益率(右) MSCI EQUAL WEIGHTED (Grs) Kaigai(左) MSCI Kokusai (Grs)(左)

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■倍率を使用しないインデックスの特性は?①

株式時価総額を構成するのは発行済株式数、1株あたり業績、倍率の3つである。このうち、発行済株式数と1株あたり業績は日次で変化することはない。変化するのは、市場参加者のセンチメントを敏感に反映するPERやPBRといった倍率であり、またバブルを引き起こす遠因にもなる。 倍率を利用しない場合は「発行済株式数×1株あたり業績」が残ることになり、これは企業の業績でウェイト付けすることを意味する。業績情報には「株式資本、売上、収入、キャッシュフロー、配当」などを利用するのが一般的となっている。

【図表6】 インデックス構成イメージ

● 株式時価総額=発行済株式数×1株あたり業績×倍率

株価

MSCI バリュー ウェイト*

時価加重 インデックス ウェイト

MSCI バリュー ウェイト

時価加重 インデックス ウェイト

割高な(≒企業価値ウェイトより、時価ウェイトが大きい)銘柄はアンダーウェイト

割安な(≒企業価値ウェイトより、時価ウェイトが小さい)銘柄はオーバーウェイト

時価総額加重インデックスに比べ ・低PBR、低PER、低PSR、 低PCFR ゆえにバリュー相場で優位となる

*下記の指標を利用 ・直近株主資本 ・直近3年平均売上高 ・直近3年平均収入 ・直近3年平均キャッシュフロー

時価加重インデックスと比べた場合、MSCI企業価値ウェイトより時価加重ウェイトが大きい場合はウェイトが引き下がり、割高な銘柄がアンダーウェイトになる。例えば倍率で嵩上げされて時価ウェイトがMSCI企業価値以上に大きくなっているような割高銘柄は、ウェイトダウンされることになる。一方で、MSCI企業価値ウェイトより時価加重ウェイトが小さい場合は時価加重ベンチマークよりもオーバーウェイトされることになる。市場のリスク回避時に倍率が小さくなり時価総額が小さくなっている銘柄の場合、実際の業績に基づいたMSCI企業価値ウェイトはもっと大きくなるはずで、その銘柄のウェイトは引き上げられる。 つまり、いわゆるバリュー特性が強く、時価加重インデックスに対しては、 ①バリュー優位の市場環境下で強い。しかしバリューが効かない市場環境 下では弱い。 ②実績のない成長期待銘柄はアンダーウェイトするため、グロース優位の 市場環境下で弱い。 ③バブルが発生している(=一部の銘柄の株価が倍率で嵩上げされている ような)場合には当然追随できない。一方、バブル崩壊後はそれらバブル 銘柄のウェイトがほとんどないため時価加重インデックスをアウトパフォー ムする。 といったリターン特性が考えられる。

※上記はイメージであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

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■倍率を使用しないインデックスの特性は?②

実際、個々の企業のファンダメンタルズによって株価が決定され、バリューが効いていた時期には時価加重インデックスを上回るリターンとなった。しかし金融危機以降の2010~2011年にはファンダメンタルズは軽視され、割安となった欧州株や金融株をオーバーウェイトしていたことがマイナスに作用した。 【図表7】 ファンダメンタルズ型インデックスのリターン特性 (2003年1月末~2013年7月末)

※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

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-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

8%

-180%

-120%

-60%

0%

60%

120%

180%

240%

03年1月 04年1月 05年1月 06年1月 07年1月 08年1月 09年1月 10年1月 11年1月 12年1月 13年1月

累積超過収益率(左) 月次超過収益率(右) KOKUSAI VALUE WEIGHTED (Grs) (左) MSCI Kokusai (Grs)(左)

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■リスク・リターン改善型の特性は?①

時価加重インデックスは、銘柄集中度が高く、センチメントに振り回されるなどの理由で、「ボラティリティの割にリターンが低い」あるいは「リターンの割にボラティリティリスクが高すぎる」といったマイナス面がある。この点を改善すべくいくつかの非・時価加重インデックスが誕生した。一つは最小ボラティリティインデックスや最小分散戦略と呼ばれるように、リターンはさておき「ボラティリティリスクを最小化しよう」とするものだ。加えて、EDHEC リスク効率性インデックスのように「リスク単位あたりのリターンの最大化を目的」とするものがある。 下記では代表例として、最小ボラティリティインデックスを例に説明する。最小ボラティリティインデックスの依拠する学説はいわゆる“低ボラティリティ効果”、“ボラティリティパズル”と呼ばれるもので、「ボラティリティの低い銘柄またはポートフォリオのほうが時価加重インデックスよりも高いリターンが期待できる」というものである。 【図表8】 効率的フロンティア

ボラティリティ

リターン

● 最小ボラティリティインデックス

● 時価加重インデックス

【証券アナリストジャーナル2009年6月号P109】

過去のボラティリティの高低で分位ポートフォリオを作成し、その後のリターンを計測した。その結果、ほとんどのユニバースにおいて、低ボラティリティの分位ポートフォリオは高ボラティリティの分位ポートフォリオに比べて統計的に有意にシャープレシオが高いことが示された。(略)各国株式市場において広範囲にわたる低ボラティリティ・アノマリーが存在していること、低ボラティリティ運用は長期的にMP(=時価加重ポートフォリオ)よりも低いリスクで同程度以上のリターンが期待できることを示している。 (参考文献:山田徹・上崎勲[2009]「低ボラティリティ株式運用」、『証券アナリストジャーナル』47(6))

この考え方を背景に、CAPM上の効率的フロンティアにおいては左端に収まるような、リスクを最小化したポートフォリオの構築をすると、リターンは一切考慮しないため、リスク・リターンは最大化されないものの、時価加重インデックスよりも高い投資効率が期待される。

※上記はイメージであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

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■リスク・リターン改善型の特性は?②

最小ボラティリティの市場ポートフォリオを構築する際には、業績などのファンダメンタル情報は一切使用せず、株価推移を基に算出した分散・共分散行列を使用する。MSCI 最小ボラティリティインデックスでは、BARRA社の最適化ツールにいくつかの制約条件を加えてポートフォリオを構築する。 【図表9】 最小ボラティリティインデックスの構築方法

MSCIワールド Barra GEM2で利用されている グローバル株式分散マトリックス

Barra 最適化 下記制約条件でMSCIワールドをBarra GEM2の共分散に基づいて最適化 1.1銘柄当たりの最大ウェイト1.5%以下、もしくはMSCIウェイトの20倍まで 2.1銘柄あたりの最小ウェエイトは0.05% 3.セクターウェイトはMSCIワールドに対して±5%の範囲 4.国別ウェイトはMSCIワールドに対して±5%の範囲 5.国別ウェイトは、MSCIワールドで2.5%未満の場合、3倍までを上限 6.Barraリスク指標においてはボラティリティリスクには制約を与えず、他の リスクファクターはMSCIワールドに対して±0.25の範囲 7.米ドル建て基準であり、為替ヘッジは用いない 8.片道回転率は最大10%

MSCIワールド 最小ボラティリティインデックス

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■リスク・リターン改善型の特性は?③

最小ボラティリティインデックスの特性としては、

・ディフェンシブ銘柄への偏り ・低ベータ銘柄への偏り ・小型銘柄への偏り

が生じることが知られている。したがって、市場が景気敏感銘柄や大型銘柄主導で上昇する局面では、時価加重インデックスに追随できないものの、下落局面では下値抵抗力を持つと言われている。実際、MSCI Worldインデックスにおいては、1988年5月末からITバブルが生じた2001年中頃までは最小ボラティリティインデックスは時価加重インデックスを下回ったものの、その後のITバブル崩壊期や2008年金融危機後にはディフェンシブ優位の市場展開がプラスに作用している。 【図表10】 インデックスの比較 (1988年6月末~2013年7月末)

※上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。

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88年6月 93年6月 98年6月 03年6月 08年6月 13年6月

累積超過収益率(左) 月次超過収益率(右) WORLD MINIMUM VOLATILITY (Grs) (左) MSCI World (Grs)(左)

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日興アセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第368号 加入協会: 一般社団法人 投資信託協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会

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■ 何 を 求 め る の か ?

非・時価加重インデックスの3つのグループについて、代表例とともに特性を見てきた。このように、それぞれ異なる問題意識と異なる解決法、異なる特性を持っている。時価加重インデックスに代わる市場ベータを、どの非・時価加重インデックスに求めるのか、というのはまさに「投資家として何を求めるのか」に依拠する。 もし集中度の高さや国別・業種別ウェイトの是正を求めるのであれば、GDPウェイトやイコールウェイトインデックスが候補になる。また、センチメントの影響やバブルの影響を回避したいのであれば、ファンダメンタルインデックスやGWA、MSCI バリューインデックスが候補になる。“リターンはさておき”ボラティリティリスクを引き下げることを株式運用に求めるのであれば、最小ボラティリティインデックスが候補になる。 しかし、筆者は「株式運用の目標はキャピタルゲインによるトータルリターン」であるべきと考え、ボラティリティリスクは、国債のウェイトを増すことで簡単に引き下げることができ、また国債は償還まで保有すれば額面が保証されている。従って、「株式という限られたリスク量の中でリターンを最大化する」ためにリターン源泉を伴う運用に注目するのが有効と考えられ、この観点からであれば、EDHEC リスク効率性インデックスがリターンを考慮した市場インデックスとして候補となる。 次回はEDHECリスク効率性インデックスについて説明します。 [参考文献] 山田徹・上崎勲[2009]「低ボラティリティ株式運用」、『証券アナリストジャーナル』47(6))

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■執筆者紹介 星 貴博 (ほし たかひろ) 日興アセットマネジメント株式会社 機関投資家事業本部 クライアント・サービス部 シニア プロダクト マネージャー 日系金融機関にて外国株式運用ファンドマネージャー、外資系金融機関にてプロダクトスペシャリスト を務め、2010年に日興アセットマネジメントに入社。 マンチェスター大学大学院経済学修士 京都大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得修了 日本証券アナリスト協会検定会員

資料は日興アセットマネジメントが市場環境等についてお伝えすること等を目的として作成した資料であり、特定商品の勧誘資料ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。資料中において個別銘柄に言及する場合もありますが、これは当該銘柄の組入れを約束するものでも売買を推奨するものでもありません。当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。当資料に掲載されている数値、図表等は、特に断りのない限り当資料作成日現在のものです。また、当資料に示す意見は、特に断りのない限り当資料作成日現在の見解を示すものです。当資料中のグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。当資料中のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。尚当資料の情報は信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、情報の正確性・完全性について弊社が保証するものではありません。

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