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IPCCの役割• 設立
– Intergovernmental Panel on Climate Change– 気候変動に関する政府間パネル
– 1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立.
• 報告書の目的– 学術文献をレビューして知見を取りまとめる.
– 政策に関連する情報の提供を求められているが,政策提言を行ってはならない.
– しかし,SPMは極めて政治的.
先進国と途上国の対立
• 共通だが差異のある責任
• 途上国は先進国の責任を追及し,補助金や技術移転等を引き出そうとする.
• 先進国はすべての国の参加による削減に持って行きたい.
• ただし欧州は,すべての国の参加よりも排出権取引制度を温存するための強制力のある排出削減目標を必要としている.
• 中進国の排出が急増している.なかでも中国の排出量が突出.中国は途上国として排出削減義務を背負いたくない.
AR5の2℃目標• 21c末の大気中のGHGの濃度が約450ppm(RCP2.6に
対応)であれば,産業革命前に比べて気温上昇を2℃未満に抑えられる可能性が高い.
• これをもって,「2℃未満が目標になった」という報道もある.
• 同濃度に達するには,2050年のGHG排出量を10年と比べて40~70%削減し,21c末にはほぼゼロまたはマイナスにする必要がある.
• そのためには,再生可能エネルギーや原子力エネルギーなど低酸素エネルギーの供給比率が2050年までに10年の3倍から4倍近くになっている必要がある.
• 植林をして,木材で発電.発生したCO2を地中に埋めることを大規模に行うことが想定されている.BECCSと呼ばれる.
• コスト,安全保障,国際競争,環境影響を考慮すると,極めて難しいし,実行可能性はあまり議論されていない.という意見もある.
研究の背景・目的
2013年9月,IPCCは第5次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約(AR5 WG1 SPM)を公表した.
AR5は,世界平均海面水位が26cm~82cm上昇し,高潮は「極端な高い潮位の発生や高さの増加」が21c初期で「可能性が高い」,21世紀末で「可能性が非常に高い」とした.
海面水位の上昇と高潮偏差の増大は,日本の沿岸域における高潮による浸水リスクの増大をもたらす.
AR5に採用された気候モデルで予測された海面の上昇量をもとに,高潮浸水被害予測モデルを使い,日本の高潮浸水による被害リスクがGHGの代表的濃度経路(RCP)ごとに全国でどれだけ変化するかを予測した.
高潮の温暖化影響を予測するためのモデル構成
気候モデル
GCM
GHG排出シナリオ
RCM
高潮モデル
浸水モデル
被害モデル
風・気圧分布
台風コース 越波・越流
浸水・遡上
経済指標
被害機構風波
高潮浸水リスクマップ
1E3
1E2
1E1
1E0
1E-1 ha
1E4
1E3
1E2
1E1
1E0
1E4
1E3
1E2
1E1
1E0 M\
1E5
1E6
浸水面積
浸水人口 浸水被害額
RCP別の高潮被害指標の100年間の変化
2000 2050 21000
200
400
600
2000 2050 21000
200
400
600
2000 2050 21000
200
400
600
2000 2050 21000
300
600
900
1200
2000 2050 21000
300
600
900
1200
2000 2050 21000
300
600
900
1200
2000 2050 21000
10
20
30
2000 2050 21000
10
20
30
2000 2050 21000
10
20
30
年
浸水
面積
(km2)
浸水
面積
(km2)
浸水
面積
(km2)
RCP2.6
年
RCP4.5
年
RCP8.5
年
浸水
人口
(k)
浸水
人口
(k)
浸水
人口
(k)
RCP2.6
年
RCP4.5
年
RCP8.5
年
被害
額(T\)
RCP2.6
年
被害
額(T\)
RCP4.5
年
被害
額(T\)
RCP8.5
被害額
浸水人口
浸水面積
○:MIROC5,□:MRI-CGCM3,△:HadGEM2-ESX
まとめ
IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書(AR5)の公開を受け,AR5で採用された代表的濃度経路(RCP2.6,RCP4.5,RCP8.5)および気候モデル(MRI-CGCM3,MIROC5,HadGEM2-ESX)による2050年および2100年の海面上昇量をもとに,
高潮浸水による被害リスクを全国の低地を893に分割して推
計し,それらの結果を集約することによって,高潮浸水による被害リスクの全国の空間的な分布と2100年までの50年間隔の変化を把握した.
推計結果から,三大湾,瀬戸内海および有明・八代海地域で相対的に大きなリスクになること,2100年までの100年間
の間ではリスクが直線的に増加していくことなどが示唆された.
それらの地域では,主に港湾と漁港の海岸でリスクが高い.有明海は農地海岸でリスクが高い.
台風30号(ハイアン)の概要 H25.11.8早朝にフィリピン中部に上陸.900hPaの勢力を約1日半
維持した.フィリピン中部は60m/s以上の強風と高潮に襲われ,レ
イテ島のタクロバンを中心に甚大な被害を引き起こした.フィリピン国家災害リスク削減委員会(NDRRMC,2013年11月22日20時)によれば,死者5200人,負傷者23千人,行方不明1600人,被害額520億円である.
最低気圧:895hPa 最大風速:(気象庁)65m/s〈10分平均〉,(米海軍)87.5m/s〈1分
平均〉
平均移動速度:31.8km/時 PAGASA(フィリピンの気象庁)のデータでは,台風30号は中心の
風力と陸上での最大瞬間風速で過去にフィリピンを襲った台風の中で7番目.(The Wall Street Journal,H25.11.15)
COP19(ワルシャワ,11.11~11.22)の直前であったことが世界
の関係者・マスコミの関心を高め,スーパー台風が襲ったという報道につながった可能性がある.
2つの目標
全体的な目標
実施の目標
問題の構造が複雑 情報が少ない 不確定要素が多い
高めの目標を設定することになる.目標の精度が悪い.
目標と個別対策の関係が不明確.
内容が具体的
各種の制約を具体的に考慮できる
現実的な目標を設定することになる
全体的な目標と実施の目標 を少し切り離して
考える
Back Casting
要保全海岸・海岸保全施設の管理セクター
一般36%
港湾29%
農地11%
漁港22%
河川・
農地2%
要保全海岸延長
一般34%
港湾32%
農地13%
漁港19%
河川・
農地2%
海岸保全施設延長
※ 防護人口では,港湾海岸で約60%.三大湾等ではもっと高い.