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IPv6 アドレス割り当てポリシー観測 による脅威予測とその対策 高田 雄太 早稲田大学 基幹理工学研究科 情報理工学専攻 後藤滋樹 研究室

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IPv6 アドレス割り当てポリシー観測 による脅威予測とその対策

高田 雄太 早稲田大学 基幹理工学研究科 情報理工学専攻

後藤滋樹 研究室

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目次

• 研究背景

• 研究目標

• 既存研究

• 観測実験、実験結果・考察

• 脅威と対策

• まとめ

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 2

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研究背景

• IPv4 アドレスの枯渇 – 2011/2/3 に IANA の管理する IPv4 アドレスが枯渇

• 対策案 1. IPv4 アドレスの共有

2. IPv4 アドレスの移転/売買

3. IPv6 アドレスへの移行 • IPアドレスの数は42億個から340澗個*1へ

– 32ビットアドレスから128ビットアドレスへ

– 表記は 192.168.0.1 から 2001:db8:db8:db8:1234:5678:90ab:cdef へ

• World IPv6 Launch*2 による利用推進

– 2012年6月6日に恒久的かつ商用 IPv6 対応

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 3 *1 340澗 = 340兆 × 1兆× 1兆 *2 World IPv6 Launch, http://www.worldipv6launch.org/

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ホストスキャン

• IP アドレスを利用したホストの探索

– 存在を確認したホストは攻撃目標や踏み台とする

– IPv4 サブネットのアドレス空間は 08ビット = 28

– IPv6 サブネットのアドレス空間は 64ビット = 264

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 4

ICMP エコー要求 (ping)

ICMP エコー応答

ホストの存在が確認できたら、 ・ ポートスキャン ・ サービスの脆弱性を悪用した攻撃 と続く

X.X.X.X

X.X.X.Y

X.X.X.Z

更なる調査、攻撃へ

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IPv6 アドレス割り当て例

• 128ビットのアドレスを手動設定するのでは、 管理が困難

– 上位64ビットは、RIR や ISP から取得

– 下位64ビットは、一般的に MAC アドレスを利用

• StateLess Address AutoConfiguration (SLAAC)

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 5

ここだけ変更 2001 db8 PRE FIX OUI* XX : XXXX ff : fe

下位64ビット

64bit 128bit

上位64ビット

* OUI (Organizationally Unique Identifier) ・・・ IEEE によってネットワーク製品の製造者に割り当てられるMAC アドレス上位24 ビットのこと

IPv6 アドレスの割り当てには一定の規則 (ポリシー) が 存在するため、ホストスキャンは可能?

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目次

• 研究背景

• 研究目標

• 既存研究

• 観測実験、実験結果・考察

• 脅威と対策

• まとめ

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 6

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研究目標

• 規則に従う IPv6 アドレス割り当て方法が存在

– IPv6 アドレス割り当てポリシーは存在する?

• ポートごとにポリシーは存在するか?

– 新たに考えられる脅威は何か?

– 具体的な対策は何か? • 脅威を緩和する IPv6 アドレス割り当てポリシーの提案

(ベストプラクティス)

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 7

IPv6 アドレス割り当てポリシーの存在を観測から明らかにし、

割り当てポリシーのベストプラクティスを導く

本研究の目標

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目次

• 研究背景

• 研究目標

• 既存研究

• 観測実験、実験結果・考察

• 脅威と対策

• まとめ

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 8

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既存研究

• アドレス空間を小さくする IPv6 アドレス 割り当て方法が存在 – T. Chown, “IPv6 Implications for Network Scanning,” RFC 5157, Mar. 2008. – F. Gont, “Network Reconnaissance in IPv6 Networks,” Internet-Draft of IETF,

Oct. 2012.

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 9

自動割り当て 手動割り当て 移行技術/共存技術

SLAAC アドレス Privacy アドレス

IPv4-based 0埋めアドレス

文字埋めアドレス 手動設定

6to4 ISATAP Teredo

IPv6 アドレスの割り当て方法の紹介だけでなく、 実環境での観測を含む

本研究の新規性

表. IPv6 アドレス割り当て方法概要

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IPv6 アドレス割り当て方法

割り当て方法 特徴 割り当て例 アドレス空間

SLAAC アドレス (SLAAC)

下位64ビットに MAC アドレスを用いる

2001:db8:: 1234:56ff:fe78:90ab

OUI を固定

すると 224

プライバシー アドレス (Privacy)

下位64ビットに 一定期間で更新する ランダム値を用いる

2001:db8:: 1f9a:a208:394b:2b7e

264

IPv4-based (IPv4)

IPv4 アドレスを下位64ビットに用いる

2001:db8::192:168:0:1 232

0埋め (Low-byte)

下位64ビットの最後の16ビットのみ使用し、 残りを 0 で埋める

2001:db8::1, 2001:db8::abcd

216

文字埋め (Wordy)

単語や連続値を用いる 2001:db8:: 1111:dead:beef:ffff

辞書攻撃

手動, その他 (Manual)

手動で設定 (上記以外のアドレス)

2001:db8::db8:db8 264

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 10

自動

割り

当て

動割

り当

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IPv6 アドレス割り当て方法の割合

割り当て方法 割合 [%]

SLAAC 50

IPv4-based 20

Teredo 10

Low-byte 8

Privacy 6

Wordy < 1

Others < 1

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 11

割り当て方法 割合 [%]

Low-byte 70

IPv4-based 5

SLAAC 1

Wordy < 1

Privacy < 1

Teredo < 1

Others < 1

ホスト ルータ

表. ホストとルータにおけるアドレス生成割合 (2008/04)

• ホストとルータにおける IPv6 アドレス割り当て方法を集計 – D. Malone, “Observations of IPv6 Addresses,” PAM2008, Apr. 2008.

より実運用に近い環境での観測であり、大きく異なる結果を得た

本研究の新規性

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目次

• 研究背景

• 研究目標

• 既存研究

• 観測実験、実験結果・考察

• 脅威と対策

• まとめ

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 12

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観測データ概要

• APAN* にて、IPv6 パケットを観測

– 期間は、2012/07/16〜2012/10/15 の 3ヶ月

• 日ごとにユニークアドレスを収集

– ポート番号 25, 53, 80 の通信のみ抽出

– IPv6 におけるグローバルアドレスのみ抽出

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 13

総アドレス数 5,183,962

ユニークアドレス数 2,788,288

ユニーク /64 Prefix 数 296,866

whois 未登録 /64 prefix 数 53,936

表. キャプチャデータ概要

* APAN (the Asia Pacific Advanced Network), http://www.apan.net/

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IPv6 アドレス割り当て方法の分類

• 正規表現を用いて IPv6 アドレスを分類

– e.g. SLAAC “ff:fe” + “0-9a-f”×2 + “:” + “0-9a-f”×0〜4 (24ビット分の IPv6 アドレス ) で終わるアドレス

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 14

割り当て方法 特徴 分類方法 (正規表現)

SLAAC “ff:fe” を使用 "ff:fe[0-9a-f]{2}:[0-9a-f]{0,4}$"

Privacy ランダム値を使用 ":[0-9a-f]{2,4}:[0-9a-f]{3,4}:[0-9a-f]{3,4}:[0-9a-f]{3,4}$"

Low-byte “::” を使用し、最後の16ビットのみ使用

“::([0-9a-f]){1,4}$”

IPv4 1〜3桁の数字を4回使用 "((:(¥d|¥d¥d|1¥d¥d|2[0-4]¥d|25[0-5])){4})$”

Wordy 単語や連続値を使用 “cafe”, “face”, “1111” 等

Manual 上記以外のアドレス どれともマッチしない

自動

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IPv6 アドレス割り当て方法の割合

• Privacy が9割弱を占め、SLAACは 2% に

– 既存研究とは大きく異なる結果に

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 15

種類 個数 割合 [%]

Privacy 2,436,929 87.40

6to4 233,577 8.38

Manual 171,663 6.16

SLAAC 67,961 2.44

Low-byte 61,350 2.20

Wordy 52,542 1.88

ISATAP 47,310 1.70

IPv4-based 3,075 0.11

表1. 期間中のユニーク IPv6 アドレス割り当て方法傾向

割り当て方法 割合 [%]

SLAAC 50

IPv4-based 20

Teredo 10

Low-byte 8

Privacy 6

Wordy < 1

Others < 1

表2. 既存研究の 2008/4 の結果

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ポートごとの IPv6 アドレスの割り当て方法の傾向

• 90% 以上の IPv6 アドレスは eph80* で観測 • eph80 では、Privacy が 90% を占める

– IPv6 による通信は、プライバシーアドレスが割り当てられたホストに よる Web 通信がほとんど

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 16 * eph25, eph53, eph80 は、ポート25,53,80に対する通信相手のエフェメラルポートを集約したもの

ポート 個数 割合 [%]

25 1,050 0.04

53 17,127 0.61

80 51,725 1.85

eph25 1,623 0.06

eph53 144,065 5.14

eph80 2,587,439 92.31

図. ポートごとのアドレス割り当て方法の割合

表. ポートごとに観測したユニーク IPv6 アドレス数

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目次

• 研究背景

• 研究目標

• 既存研究

• 観測実験、実験結果・考察

• 脅威と対策

• まとめ

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新たに考えられる脅威

• ポートごとにアドレス割り当てポリシーが存在

– 公開サーバ (ポート 25, 53, 80)

• Low-byte によるアドレス

• 人間が覚えやすいアドレスを使用

– (非) 公開サーバ (ポート eph25, eph53)

• SLAAC によるアドレス

• プライバシーアドレス

– クライアント(ポート eph80)

• プライバシーアドレス

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 18

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提案対策手法

• IPv6 アドレス割り当てのベストプラクティス

• その他対策手法 – 適切な IPv6 用の FW 設定

– IPv6 に対応したセキュリティアプライアンスの導入 • IDS/IPS、OSS* など

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 19 * OSSとして、IPv6-Guard, 6Guard等が挙げられる

• Low-byte アドレスの使用

• SLAAC アドレスをオフ • 複雑なアドレスを

手動設定

• SLAAC アドレスをオフ

• プライバシーアドレスの使用

公開サーバホスト 非公開サーバホスト クライアントホスト

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目次

• 研究背景

• 研究目標

• 既存研究

• 観測実験、実験結果・考察

• 脅威と対策

• まとめ

Feb. 08, 2013 Yuta TAKATA, GOTO Lab. 20

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結論

• まとめ

– IPv6 アドレスの割り当て方法の存在を確認 • ポートによってアドレス割り当てにポリシーが存在

– 新たに考えられる脅威を示し、その脅威を緩和する対策を提案

• 今後の課題 – 他ネットワークでの観測実験

– ポリシーを活用した実ネットワークでのホストスキャン

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