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IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

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研究経過と今後 福島武彦(筑波大学). IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性. 下流汚染蓄積型湖沼の代表である霞ヶ浦の水環境の問題とは?. 霞ヶ浦では、最近の20年間に約1兆円を投資したが、水環境改善ははっきりとはみられない。 流域での様々な生産活動が、水の再利用率や汚染蓄積性の高さとあわせて、改善を遅らせているのではないか。 水量的に問題点が少ないこと(渇水がない、川に水がある、 ‥ )、水質的に問題点が多いことが、人々の湖沼への興味、親近性を失わせていないか。. ・量的なリスク少ないが、質的なリスク高い - PowerPoint PPT Presentation

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Page 1: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

IS研究( 2010年度)下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題

と未来可能性

研究経過と今後

福島武彦(筑波大学)

Page 2: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

下流汚染蓄積型湖沼の代表である霞ヶ浦の水環境の問題とは?

•霞ヶ浦では、最近の20年間に約1兆円を投資したが、水環境改善ははっきりとはみられない。

•流域での様々な生産活動が、水の再利用率や汚染蓄積性の高さとあわせて、改善を遅らせているのではないか。

•水量的に問題点が少ないこと(渇水がない、川に水がある、‥)、水質的に問題点が多いことが、人々の湖沼への興味、親近性を失わせていないか。

・量的なリスク少ないが、質的なリスク高い・流域と湖沼との関係を総合的に解析することが必要?・流域として,将来の課題が何であるかを的確に指摘することが重要

Page 3: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

研究背景(日本社会の特徴)

公共投資により水環境保全を図る例えば、霞ヶ浦流域 100万円 /人更新費用が必要な時期老齢化退職市民の活用自然災害の多さ災害を受け流すシステム

Page 4: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

アンケート結果1:問題は何か?赤字は下流汚染蓄積型湖沼特有

緑字は未来可能性が失われる可能性があるもの

• 流域(地下水)地下水の汚染土地利用連鎖系の破壊農業水利用の多さ農業-畜産の連結のなさ耕作放棄地の増大不浸透面の増大

Page 5: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

続き• 湖内(底泥,生物種)底泥 脱窒素作用,リン資源活用化学物質汚染滞留時間の増大侵略的外来植物空間的多様性の低下

• 社会経済環境(湖との関わりあい)財政のひっ迫・経済性の低下関心(湖利用の多様性)の低下文化・伝統知の消失

Page 6: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

アンケート結果2:ストーリーラインと仮説

水利用の増大により汚染の蓄積度は増加するとともに,それらはいずれ水・湖利用の障害となる

環境変動→湖内脱窒能力低下→流域灌漑水 N濃度上昇→地下水 N濃度上昇→水利用障害

底泥への P資源蓄積→有害化学物質の同時蓄積→底質利用が不可能

or 脱窒能力→自然浄化能、底泥の P資源化水利用の多様性、流域人口が減少すると,湖沼の

resiliencyが減少し,流域住民の sustainability (futurability)が減少する

下流汚染蓄積型湖沼→限られた利用→関心の低下( or伝統知の消失)→カタストロフィックな変化

人口減少→財政力低下(維持管理費は減少せず)→公共的管理力の低下→カタストロフィックな変化 (まずい撤退)

or 人口減少→環境負荷低下→ QOLの上昇  (うまい撤退)

Page 7: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

アンケート結果3:海外の湖沼

洱海(中国)泊洋堤湖(中国)太湖(中国)Lake Bosten(博斯騰湖:中国)セマングム干拓事業(韓国)Lake Limboto(インドネシア)インドネシアの貯水池バングラデシュのため池Salton lake(アメリカ)

Page 8: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

FS研究( 2011年度)地球環境および地域発展制約下での下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題と未来可能性 1.トレーサーとリモートセンシングを活用した流域水・物質循環の観測、モデル化

流域:表流水+地下水動態モデルの作成湖内:流動・拡散モデル+水質・底質・生態系モデルの作成フロー(河川や湖内の水量、水質)とストック(物質だまり:地下水、底泥への蓄積量)としての評価

地下水関与者(質:農業+畜産関係、ならびに量:地下水くみ上げ事業者)の管理

里山荒廃、不浸透域増大の影響(回復の難しさ、対策、‥)

底泥の場合は、資源管理(例えば、リン)マクロ物質収支

Page 9: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

排出負荷と流入負荷の乖離COD

TPTN

Page 10: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

トレーサーとリモートセンシング情報

湖とその流域での物質循環とトレーサーによる時間軸,起源・過程情報の推定

湖湖とその流域でとその流域での物質循環の物質循環ととトレーサーによる時間軸,起源・過程情報の推定トレーサーによる時間軸,起源・過程情報の推定

•山地の土砂流出•137C s , 7B e, 87S r, 210P b

•山地の土砂流出•137C s , 7B e, 87S r, 210P b

•地下水年代・湖沼内滞留時間•3H, 18O, 2H, •36C l, フロン•15N

•地下水年代・湖沼内滞留時間•3H, 18O, 2H, •36C l, フロン•15N

•湖沼底質・生態系•13C , 18O, 2H•34S , 137C s, 210P b•色素

•湖沼底質・生態系•13C , 18O, 2H•34S , 137C s, 210P b•色素

•農業負荷・汚染•3H, 18O, 2H•15N, 34S , 農薬

•農業負荷・汚染•3H, 18O, 2H•15N, 34S , 農薬

•大気循環・汚染•18O, 2H•フロン, pH

•大気循環・汚染•18O, 2H•フロン, pH

•市街地流出•18O, 2H•P AHs ,重金属

•市街地流出•18O, 2H•P AHs ,重金属 流域環境変化

・土地被覆・利用変化・酸性雨,温暖化

流域環境変化・土地被覆・利用変化・酸性雨,温暖化

イベントの寄与イベントの寄与

湖沼生態系変化•レジームシフト•淡水化,水利用

湖沼生態系変化•レジームシフト•淡水化,水利用

湖とその流域での物質循環とトレーサーによる時間軸,起源・過程情報の推定

湖湖とその流域でとその流域での物質循環の物質循環ととトレーサーによる時間軸,起源・過程情報の推定トレーサーによる時間軸,起源・過程情報の推定

•山地の土砂流出•137C s , 7B e, 87S r, 210P b

•山地の土砂流出•137C s , 7B e, 87S r, 210P b

•山地の土砂流出•137C s , 7B e, 87S r, 210P b

•山地の土砂流出•137C s , 7B e, 87S r, 210P b

•地下水年代・湖沼内滞留時間•3H, 18O, 2H, •36C l, フロン•15N

•地下水年代・湖沼内滞留時間•3H, 18O, 2H, •36C l, フロン•15N

•湖沼底質・生態系•13C , 18O, 2H•34S , 137C s, 210P b•色素

•湖沼底質・生態系•13C , 18O, 2H•34S , 137C s, 210P b•色素

•湖沼底質・生態系•13C , 18O, 2H•34S , 137C s, 210P b•色素

•湖沼底質・生態系•13C , 18O, 2H•34S , 137C s, 210P b•色素

•農業負荷・汚染•3H, 18O, 2H•15N, 34S , 農薬

•農業負荷・汚染•3H, 18O, 2H•15N, 34S , 農薬

•農業負荷・汚染•3H, 18O, 2H•15N, 34S , 農薬

•農業負荷・汚染•3H, 18O, 2H•15N, 34S , 農薬

•大気循環・汚染•18O, 2H•フロン, pH

•大気循環・汚染•18O, 2H•フロン, pH

•市街地流出•18O, 2H•P AHs ,重金属

•市街地流出•18O, 2H•P AHs ,重金属

•市街地流出•18O, 2H•P AHs ,重金属

•市街地流出•18O, 2H•P AHs ,重金属 流域環境変化

・土地被覆・利用変化・酸性雨,温暖化

流域環境変化・土地被覆・利用変化・酸性雨,温暖化

イベントの寄与イベントの寄与

湖沼生態系変化•レジームシフト•淡水化,水利用

湖沼生態系変化•レジームシフト•淡水化,水利用

不浸透地域( ISA)の増加

土地被覆・利用の変化蒸発散推定地下水動態湖内水質湖内水生生物 (水草占有率)

Page 11: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

研究内容(つづき)2. 未来可能性確保のための管理手法水利用と生態系の適切な評価→人間系、環境系、生態系のベネフィットとリスク評価→湖沼との親近性、日常的利用者:経済的利益、非日常的利用者:様々な利用の定量化、水草の役割、‥

持続性指標の計算と利用可能性→生産(漁業、農業、畜産、工業、観光業、‥)、生活(住む、食べる、買う、楽しむ、育てる、‥)の豊かさ、地球環境への影響、未来可能性に関わる問題→地球環境および地域発展制約下でのインフラ整備・維持管理、適切な撤退方法、‥

ガバナンスの方法→国、県、市町村、民間の役割、手法→科学・社会・政治の関与、質の観点での利害調整方法、湖沼とその流域の空間的な機能分離の design、‥

 

Page 12: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

研究内容(つづき)3. 日本や海外湖沼情報の収集指数、指標の計算、地域による制約条件の違い

DPA-lakesの特徴付け

水利用の多様性が湖沼の環境保全にどのように寄与するか(関与人口の増大が環境リスクの低下につながるか)地域のどのような特性が制約条件となるのか

Page 13: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

仮説

・・・・

イベントの寄与イベントの寄与

イベントの寄与

時間スケールの遅いサブシステム時間スケールの遅いサブシステム

時間スケールの早いサブシステム

時間スケールの早いサブシステム

水の繰り返し利用(下流汚染蓄積型湖沼の特徴)により、システム特性量(水量、水質、‥)に時間スケールの遅いサブシステム(地下水、底泥、‥)の影響が大きくなる。

••

見るもの(水利用に関わる関係者の種類)が多様となると、環境保全レベルが上がる。

川や湖を見る眼

Page 14: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

研究体制( 19 名)

• 流域での汚染蓄積:黒田(茨城大学)、辻村、 山中 (筑波大学)

• 湖内での汚染蓄積:丸岡、恩田(筑波大学)、今井、高津(国環研) 、尾崎(広島大学)

• 生態系変化:西廣(東京大学)、松下(筑波大学)

• 湖沼とのつきあい方:白川、遠藤(筑波大学)

• 指標/計画論:福島(筑波大学)、飯島→井上(茨城県)、大野(阪南大学)アドバイザー:谷口、中野 (地球研)、鳥越

( 早稲田大学) 、花里(信州大学)

Page 15: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

FS研究に対するコメント

• 地球環境問題としての位置付け:地球研プロジェクトでなくてはできない理由を明確に!

• ガバナンス分野での作業仮説を明確に:水利用の多様性と湖沼環境保全との関係の実証道筋をはっきりと!

• 湖沼水質保全戦略における世界の動向:この研究の独創性は何か?

• 未来社会の設計:流域外との関係も含めて!

Page 16: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

地球環境問題としての位置付け• 「湖沼」をベースに長期に文明が繁栄したか。

「水と文明」(秋道智彌編著: 2010)ではアラル海の消失(農業水利用、気候変動、‥)

固有生物種の消失(水草、魚、‥)固有文化の消失(生物資源の活用法、‥)

「湖沼」を長期に、賢く活用する知恵を自然科学と人文社会科学から考える

Page 17: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

ガバナンス分野での話題• Commonsの管理:自然資源の協治のうまくいった例

Ostrom 1990など:日本では「グローバル時代のローカルコモンズ(室田武編著 2009)、入会権、最近では、森林ボランティア、共同漁業権、河川・流域管理

• 資源の過小利用、予防原則「自然資本の保全と評価」(浅野耕太編著 2009)、過小利用(鎮守の森、野生生物、ため池)、予防原則(地球温暖化、湖沼の富栄養化、島嶼部の地下水、等)(リン:霞ヶ浦への負荷量 200-300 kg/y、これに対して漁獲による持ち出し量は、 2000年 ( 漁獲 2500トン /y) 5.6 kg/y, 1975年 ( 漁獲 17000トン /y) 38.3 kg/y:田渕俊雄 2005)

• 協働型ガバナンスと社会関係資本( Social Capital)PPP (Public Private Partnership)市民団体と行政の関係(監視、提案、説明、要請:内規)

Page 18: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

仮説検証への道筋「水利用の多様性が下がると、関心が低下し、湖沼環境状態が悪化し、様々な変動に対する resiliencyが低下

する」• 比較湖沼:水利用の多様性、下流汚染蓄積性、流域

sustainability index + 社会の成熟度(平等、倫理、参加、‥)、関心度、 ‥と湖沼環境状態指標、 resiliency(モデル計

算)、‥の歴史的関係解析

Page 19: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

湖沼水質保全戦略における世界の動向Irreversibleな湖沼水質変化( Regime shift, Critical

transition, Catastrophic shift, Tipping point, Early warmingの代表的事例)水草(+濁度)以外に、底泥、湖辺地形、流域からの水流出形態、などが関係していないか

開発途上国での湖沼環境の急激な劣化:お金のかからない対処法魚を利用した Biomanipulationはあまりうまく行かない水草帯の再生は?

Sustainable lake management →  StewardshipVolunteer monitoring, Payment, ‥議論が始まったばかし

Page 20: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

流域窒素管理指標( Nitrogen Footprint、水資源確保、食物管理、課税や所得補償制度の観点や濃度、滞留時間、同位体などの状態量を活用して)

農地:食料生産

灌漑

排水高濃度化

畜産ふん尿過剰施肥溶脱

不可避溶脱

下流汚染蓄積型湖沼

地下水

蓄積窒素

水田・湿地

自然窒素浄化

総量窒素施肥削減、カバークロップ対策、など

有機質肥料化

超節水型農業システム

脱窒植物プランクトン

都市食物

排水処理

食物栄養管理

流域外との健全な関係?

Page 21: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

海外湖沼の例 (インドネシア)• 水・湖沼利用の多様性は少ない

L. ManinjauArea: 93.7 km2, Max depth:165 m, Elevation: 462 mL. SinkarakArea: 107.8 km2, Max depth:

268 m, Elevation: 362 m

Page 22: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

LIPI: Research Center for Limnologyとの共同研究

• Lake Maninjau : blue-green algae• Jati Luhur, Saguling, Cirata Reservoir : blue-green algae• Lake Limboto : flood plain, macrophyte , DPA lake• Lake Tempe: flood plain, macrophyte• Java and Sumatera islands : ISA • AP-BON : Asia Pacific – Biodiversity Observation Network

L.Limboto

Page 23: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

研究提案

• 湖沼+流域、流域外との関係を含めて「比較」を主体

「湖沼学」は湖沼内の物質動態の類型化ここでは流域、流域外との関係も含めて類型化対象:霞ヶ浦、琵琶湖、洱海、 (L. Laguna, L. Limboto,

etc)• 過去、現在、将来の情報を集約化(同位体、リモ

セン、モデル)• 持続性・未来可能性の評価軸:自然特性、水利用・つきあい、環境変動の大きさ、ガバナンス湖沼未来可能性指標の提案とその活用方法

Page 24: IS 研究( 2010 年度) 下流汚染蓄積型湖沼の水環境問題 と未来可能性

研究方向• 水利用の程度、繰り返し利用率の変化や湖沼間差などを、同位体などのトレーサーやリモートセンシング情報で捉えられないか?

• 未利用資源の増大や消失する文化が湖沼とその周辺社会の持続性を失わせる可能性があることを例示できないか?

• 水利用の多様さを高める社会的仕組みを考えられないか?

• 震災や原発事故などを未来可能性を脅かすイベントの一つとして入れ込めないか?