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ISO9001:2015 年版移行に向けての取り組み
株式会社ディスコ
品質保証部システム グループリーダー
田村 直様
「お客様感謝デー 2017」(2017 年 7 月 6 日/東京)でのご講演より
■ 株式会社ディスコについて
みなさま、こんにちは。株式会社ディスコ品質保証部の田村と申します。
本日は、2015年版ISO9001の取り組みをご紹介させていただきたいと思います。
まずはじめに、会社についての説明と実際にわれわれがしてきた活動を紹介させ
ていただきます。
株式会社ディスコは、1937年広島県呉市で創業し、今年でちょうど80周年を迎え
ます。創業当時は、万年筆のペン先に溝を入れるような砥石や、アポロが持ち帰っ
た月の石を日本で調査するため、スライスに使用されたのがディスコの砥石でした。
その後、砥石だけでなく、精密加工装置も手がけるようになり、現在に至っております。本社は、東京の大田区大
森にあり、広島に工場が2つあります。
■ ディスコの事業内容と方針
ディスコは、「Kiru・Kezuru・Migaku」という3つの分野の加工に特化したビジネス活動を進めております。切る、
削る、磨くという文字は、われわれの技術が世界標準になるようにあえてローマ字にしています。
「Kiru・Kezuru・Migaku」技術の紹介をさせていただき
ます。まずは切る(Kiru)技術の事例です。髪の毛を35
分割にしたり、シャープペンシルのペン先を切ることが
できる技術です。削る(Kezuru)技術では、例えばシリコ
ンウェーハを5ミクロンに加工することが可能です。磨く
(Migaku)技術は、薄くして弱まった強度を、磨くことに
よって高める技術です。身近な例では、色々なICカード
の中のチップなどで採用されています。「Kiru・Kezuru・
Migaku技術によって遠い科学を身近な快適につなぐ」
というのが私どものミッションです。
株式会社ディスコ
(東京都大田区) https://www.disco.co.jp/jp/
砥石(ブレード)で小さく、精密に「Kiru」
ミッションのご説明をさせていただきましたが、ミッショ
ンを実現する上でのマイルストーンである「DISCO
VISION 2020」というものがございます。2010年に制
定され、2020年をターゲットにして活動しています。そ
の中の構成要素の一つにステークホルダーアングルと
いうものがございます。従業員、顧客、株主などのステ
ークホルダーに対して、われわれがどのようなことを達
成しなければならないのかを描いたディスコの2020年
におけるありたい姿、目指すべき目標を明らかにしたも
のです。「DISCO VISION」は、われわれの中の品質
方針にもなっています。利害関係者のニーズや、内部・
外部の課題を毎年、年度目標という形にして全社で達
成に向けて活動しています。
ISO9001は、国内の子会社3社と、海外拠点で取得し
ており、今後も他のサイトで認証取得を進めていく計画
をしています。
■ ISO9001:2015年版移行に向けての取り組み
2015年版移行に向けて行ってきた取り組みについてご紹介します。まずは、われわれの現状の仕組みに足りな
い部分があるかギャップ分析を行いました。
2015年版の要求事項においてトップマネジメントの関与がより強調された部分に関しては、先ほどご説明させて
頂いたように、ビジョンやミッションを掲げ経営を行っていますので、経営者のISOに関する理解が非常に深く、
問題ございませんでした。
リスクベースの考え方が重視された点は、各部門でどのようなリスクがあるのかを毎年の目標管理としておりま
す。経営者のリスクに対する感度が非常に高いので、ミスによる結果を例に挙げるなどして、全社員に周知して
います。
直接、ものづくりの根幹に関わる技術部門や製造部門に関しては、FMEAといったようなリスクアセスメントのツ
ールを導入していますので、問題がないと考えました。そのほか、組織の知識や変更管理という項目もございま
すが、変更管理に関しては、お客さまと「このような変更があった際は必ず申請する」という契約を結んでおり、お
客さまごとに要求が違い、一つ一つを管理しているため必要ないと判断いたしました。
このように、全体的に大きなギャップはありませんでした。ISO9001が2015年版に変わったとはいえ、お客さま
や会社の成長を考えて事業を行ってきましたので、このままで問題はないという結論に至りました。しかし、昨今
いろんな変化が起きている状況では、リスクベースの考え方が強調された規格の意図をしっかり理解して運用し
砥⽯(ホイール)で薄く、精密に「Kezuru」
研磨パッドで鏡⾯のように「Migaku」
ていくのが大事なのではと考え、PDCAのC(CHECK)にあたる内部監査員のパフォーマンス向上に努めまし
た。
次にその取り組みをご紹介させていただきます。
■ 内部監査員のパフォーマンス向上のための取り組み
内部監査員のパフォーマンス向上のために行ってきたことを、簡単にご紹介します。内部監査員は工場に28名、
本社に15名おります。今までの教育は、工場や本社などでばらばらに行っておりましたが、今回は、長野県蓼科
の研修所に全員を集めて1泊2日の合宿を行いました。監査員同士も本社の人、工場の人とでは会う機会もあま
りないので、大変刺激になったようです。研修は、座学ではなく、ケーススタディを中心に行いました。
規格の中身を理解し、意図する部分を考えることが重要だと考え、「なぜ、今回新しい要求事項に変更管理が入
ってきたのか」や「ISO9001を改正した人の気持ちになってみる」などの問題を作成し、チームで話しあって、発
表をしてもらいました。
そのほか、実践的なケースとして身近なラーメン店の事例を取り上げ、どのような監査を行うのか、どのようなこ
とに着目し、2015年版を意識して監査するのかを考えてもらいました。
ラーメン店という設定から、麺を打つ人もタレを作る人も一人しかいない場合、組織の知識やノウハウをどのよう
に共有しているのか、原材料の産地をホームページでオープンにしているが、それが変更になったときにどのよ
うに変更管理を行うかなどの視点で要求事項を学びました。
ラーメン屋でケーススタディ
1泊2日の研修後、内部監査員には、自分の一番やりたい箇条毎のチームで3カ月間勉強会を行い、その成果を
発表してもらいました。その1つのアウトプットをご紹介させていただきます。
今回の2015年版ISO9001の4.4で、タートル図を引用するという文献を見かけますが、あるチームではそこにプ
ラスアルファで4.1や4.2、さらにリスクと機会の総合的なプロセスを見ることで、より良い監査ができるのではない
かとビートル図と名付けたチャートを運用してはどうかというアウトプットがありました。これは内部監査するとき
に利用したり、被監査部門にこれを見せることで2015年版の変わった点やどのように答えれば良いかを理解し
てもらったりするのに良いツールなのではないかと思っています。
そして最後に「2015年版のプロセスアプローチをISOが全然分からない人にも理解できるように、自分自身の言
葉で説明してください」という類の設問を10問設定し、テストを行いましたが、約3分の2の人が不合格という結果
になりました。その結果、監査員を辞める人もいましたが、再チャレンジする人もおり、現在は監査員を続けたい
という強い意思を持った人が監査員になっています。
■ 社内のマネジメントシステムの取り組み
(1) 内部監査員のスキルの見える化
弊社では、監査員のスキルを見える化する取り組みを行っています。どのようなスキルを持っていて、監査結果
ビートル図- 9001:2015Ver. -
はどうだったかを見える化するものです。
スキルを見える化することで、監査員が強みや弱みに気づき改善するきっかけになったり、被監査部門の人が、
監査員を指名できる仕組みに利用したりしています。
(2) 多角的視点でリスク指摘できる環境を整える
弊社には他にも事業継続マネジメント(BCM)や労
働安全、環境という他のマネジメントシステムがあり
ます。各マネジメントシステムの事務局間でリスクを
い共有し、監査をもう一度しっかり見直していくとい
う活動も始めています。マネジメントシステムとして
共通の監査ミッションを作成し、各マネジメントシス
テムに合わせたステークホルダーのターゲットを掲
げ、監査員に共有し組織の進化を図りたいと考えて
います。一つのマネジメントシステムでのリスクだけ
ではなく、色々なところにリスクがあるということを多
角的視点で指摘できるようにしていきたいと考えて
います。
他のマネジメントシステムとの関わり
監査員のパフォーマンス評価-
内部監査員 自分の強み弱みに気づき、改善へ
■ 監査員プロフィール 氏名: 田村 直2277
資格区分: 主任監査員 役職:
監査員歴: 14 年
主任経験: 13 年
監査回数: 153 回
公的監査資格: QMS Lead Auditor (IRCA)一言:
■ 監査スキル偏差値 対象期間: 2016.3
監査協力度 報告スピード 問題発見力 ムダ取り 指摘納得度 報告書の質 総合
田村直さん
66.3 53.2 44.1 48.8 51.8 53.0 52.9全体 50 50 50 50 50 50 50
☆ 項目名の意味 ☆
監査協力度 8.0 回2015年から実施した内部監査の総回数 (全平均:3.7 回)
報告スピード 1.3 日監査実施から報告書発行までの平均期間 (全平均:1.5 日)
問題発見力 1.6 件監査1回あたりの改善指摘の平均件数 (全平均:2.6 件)
ムダ取り 0.3 件監査1回あたりのスクラップの平均件数 (全平均:0.3 件)
指摘納得度 23.1 %被監査部門に指摘を受入拒否された割合 (全平均:27.2 %)
報告書の質 9.5 %事務局に報告書や指摘を否認された割合 (全平均:12.4 %)
※2015年以降の監査データを元に算出 (上期監査していない人は『#VALUE!』と表示されています)
リクエストに応じた臨機応変な監査及び組織の成長に繋がる監査がモットーです
(社長)品質保証部システムグループ本社
システムグループリーダー
0
20
40
60
80監査協力度
報告スピード
問題発見力
ムダ取り
指摘納得度
報告書の質
田村 直さんの偏差値 全体
監査協力度 実施した監査の回数報告スピード 報告書発行のスピード問題発見力 指摘の平均件数ムダ取り スクラップ(過剰な仕組み改善)の平均件数指摘納得度 被監査部門に指摘を拒否された割合報告書の質 事務局に報告書・指摘を否認された割合
偏差値で算出
50 50 50 50
0
20
40
60
80監査協力度
報告スピード
問題発見力
ムダ取り
指摘納得度
報告書の質
西村 奈津子さんの偏差値 全体
報告書の提出が遅い
ムダ等の指摘は多い
提案内容は受け入れられてない
報告書の差し戻しは無し
また、QMSの事務局では、新入社員、中途社員が入社した際に受講するISO9001の社内講習では、イラストを
活用した資料を用いるなど、身近に感じてもらえるように努めています。
■最後に
2015年版の移行審査において、ギャップ分析をした結果、現状のままで問題はありませんでしたが、品質マネジ
メントシステム(QMS)は、継続していかなければならないものですので、内部監査員のパフォーマンス向上と問
題がある箇所のチェックができる体制作りに力を注いだ事例をご紹介いたしました。
ちょうど先週1週間、ISO9001とISO14001の移行審査が行われまして、無事終了いたしました。
ご清聴ありがとうございました。
※各図は講演資料より抜粋
ビューローベリタスのサービス:
品質マネジメントシステム認証(ISO9001)
ISO ガイドブックと川柳