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JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

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Page 1: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

i

JAEA-Research 2010-011

3 次元応力場同定手法の高度化に関する研究(委託研究)

日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 東濃地科学研究ユニット 水田 義明1金子 勝比古2松木 浩二3菅原 勝彦4

須藤 茂昭5平野 享丹野 剛男松井 裕哉

(2010 年 3 月 18 日受理)

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大深度地下に建設される坑道の設計施工ではそ

の坑道の安定性および掘削による周辺岩盤への影響などの評価が重要であるこの評価には 3 次

元場における岩盤の初期応力を把握することが必要となるそこでこの初期応力を精度良く把握

するには一般に考慮の難しい広範囲な岩盤の不確定要素や不均一性などを扱わずに済む坑道

掘削位置における原位置調査が望ましいしかしながら数平方 km スケールの地下構造物を建

設する場合坑道位置での多数の調査を行なうことは経済的に困難と考えられるそのためボ

ーリング孔の掘削を伴う調査は調査地点や調査数に制約があると考えるべきであるそこで限

られた数のボーリング調査の結果を用いて任意地点の初期応力を予測する手法の開発が課題と

されたこの課題の解決を目的として数 kmtimes数 km の領域(概ね超深地層研究所計画での

ローカルスケールに相当)を対象としてその領域で得られている初期応力測定結果を用いて領

域内の任意地点における初期応力を計算する手法と計算コードの開発を行ないその適用結果に

ついて検討するものとした

本報告書は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開

発機構)が社団法人資源素材学会に委託した「3 次元応力場同定手法の高度化に関する研究」

について成果をとりまとめたものである本委託研究では初期応力評価の例題として東濃地域を

取り上げたはじめに数 kmtimes数 km の領域を数値モデル化し次いで領域内で実施された初期

応力測定結果を拘束条件とする逆解析を行なった逆解析により領域内の広域応力広域ひずみ

が得られこれを用いた順解析は領域内の任意地点の初期応力の平均的な状態を概ね予測してい

ることを確認した

本報告書は日本原子力研究開発機構(旧核燃料サイクル開発機構)との委託研究契約に基づき

社団法人資源素材学会が実施した研究の成果に関するものである 東濃地科学センター(駐在)509-6132 岐阜県瑞浪市明世町山野内 1-64 1 崇城大学 教授 2 北海道大学 教授 3 東北大学 教授 4 元 熊本大学 教授 5 社団法人 資源素材学会 技術開発協力員

ii

JAEA-Research 2010-011

Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research)

Yoshiaki MIZUTA1 Katsuhiko KANEKO2 Koji MATSUKI3 Katsuhiko SUGAWARA4

Shigeaki SUDO5 Toru HIRANO Takeo TANNO and Hiroya MATSUI

Tono Geoscientific Research Unit

Geological Isolation Research and Development Directorate Japan Atomic Energy Agency

Akiyo-cho Mizunami-shi Gifu-ken

(Received March 18 2010) For design or excavation of deep underground tunnels such as for a radioactive waste

disposal facility there is need to assess the mechanical stability of tunnels and any kinds of excavation effect on the rock mass surrounding the tunnels The three-dimensional in situDagger stress state is one of the main factors of the assessment The best way to know the in situ stress clearly is to measure it in the location where a tunnel will be excavated to minimize the effect of any rock mass heterogeneities However obtaining a large number of in situ stress measurement can be difficult budgetary considerations notwithstanding because of the large scale of underground structures such as envisioned for a radioactive waste disposal facility Therefore we developed a method for determination of in situ stress for arbitrary points from limited results of in situ stress measurement

This report is a summary of the contract work done in the fiscal years from 2004-2006 for the development of a new in situ stress determination method Initially we made local scale numerical models of the Tono area Using these models we estimated the regional stress state from a limited set of in situ stress measurement results using an inverse analysis Then we applied the estimated regional stress state to boundary conditions of the same numerical models and calculated local stress at arbitrary points using a forward analysis The results indicate that the calculated local stress matched the original in situ stress measurement results from the inverse analysis Furthermore this approach can be used to explain estimates and in situ stress measurements at other locations independent of the regional stress analyses

Keywords Regional Stress Local Stress Numerical Model Initial Stress Measurement Dagger mean ldquoin the natural or original positionrdquo

This work was performed by Mining and Materials Processing Institute of Japan under contract with Japan Atomic Energy Agency 1 Sojo University 2 Hokkaido University 3 Tohoku University 4 Former Kumamoto University 5 Mining and Materials Processing Institute Collaborating Engineer

JAEA-Research 2010-011

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目 次

1 はじめに 1

2 逆解析による広域応力場の評価 3

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算 3

22 広域応力の数値モデルへの与え方 3

3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価 5

31 評価手法の概要 5

311 弾性定数を未知とする解析 5

32 東濃地域を対象とした評価 6

321 数値モデル 6

322 弾性定数の大小関係 7

323 広域応力場の計算 8

324 解析結果と検討 11

33 まとめ 15

4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価 16

41 評価手法の概要 16

411 成因を踏まえた広域応力の表現 16

42 東濃地域を対象とした評価 17

421 数値モデル 17

422 広域応力場の計算 19

423 解析結果と検討 20

43 まとめ 22

5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価 23

51 評価手法の概要 23

511 数値モデルを貫通する断層面 23

512 断層面を考慮した広域応力の与え方 24

52 東濃地域を対象とした評価 25

521 数値モデル 26

522 広域応力場の計算 27

523 解析結果と検討 28

53 まとめ 32

6 結言 33

参考文献 34

JAEA-Research 2010-011

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CONTENTS

1 Introduction 1

2 Determination of regional stress state -an inverse problem solution 3

21 Inverse problem and forward problem on computing of rock stress 3

22 Two approaches to regional stress definition 3

3 Determination of regional stress state with unknown Youngs modulus 5

31 Overview of the method 5

311 Estimation of Youngs modulus of rock mass 5

32 Application to Tono regional model 6

321 Numerical model 6

322 Restriction of Youngs modulus 7

323 Computation of regional stress state 8

324 Results and discussions 11

33 Summary 15

4 Determination of regional stress state considering tectonic force 16

41 Overview of the method 16

411 A expression of regional stress considering tectonic force 16

42 Application to Tono regional model 17

421 Numerical model 17

422 Computation of regional stress state 19

423 Results and discussions 20

43 Summary 22

5 Determination of regional stress state considering fault slip 23

51 Overview of the method 23

511 A fault plane in a numerical model 23

512 A method of regional stress definition considering fault slip 24

52 Application to Tono regional model 25

521 Numerical model 26

522 Computation of regional stress state 27

523 Results and discussions 28

53 Summary 32

6 Conclusion 33

References 34

JAEA-Research 2010-011

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図目次

図 221 逆解析と順解析の関係 4

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方 4

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 6

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 6

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係 9

図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違 11

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定結果の順解析による再現性 12

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定結果の順解析による予測 12

図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1号孔研究坑道の位置(原子力機構 2007に加筆) 12

図 328 研究坑道位置の推定局所応力 13

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布 14

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 2003 に加筆) 16

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 17

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析) 18

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析) 18

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2号孔位置) 20

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較 21

図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力 22

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部) 23

図 512 断層面の弾性結合モデル 23

図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系 24

図 514 断層面の滑り判定 24

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定 24

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 25

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 26

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値 27

図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値 28

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me 28

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性 29

図 526 研究坑道位置の推定局所応力 30

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比 30

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要 31

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向 32

JAEA-Research 2010-011

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表目次

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 1998 を改変) 1

表 12 今回検討した解析手法の一覧 2

表 321 数値モデルに設定した地質物性 7

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性 8

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 9

表 324 解析モデルのサイズによる影響 10

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ 10

表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析) 19

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 19

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 19

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ 20

表 521 数値モデルに設定した地質物性 26

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 26 表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔 27

JAEA-Research 2010-011

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1 はじめに

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大深度地下に建設される坑道の設計施工ではそ

の坑道の安定性および掘削による周辺岩盤への影響などの評価が重要であるこの評価には 3 次

元場における岩盤の初期応力を把握することが必要となるそこでこの初期応力を精度良く把握

するには一般に考慮の難しい広範囲な岩盤の不確定要素や不均一性などを扱わずに済む坑道

掘削位置における原位置調査が望ましいしかしながら数平方 km スケールの地下構造物を建

設する場合坑道位置での多数の調査を行なうことは経済的に困難と考えられるそのためボ

ーリング孔の掘削を伴う調査は調査地点や調査数に制約があると考えるべきである

このように限られた数の測定結果しか得られない場合測定結果をどのように坑道を掘削する

位置に反映するのかその方法が課題と考えられるまた坑道を掘削する位置で初期応力が測

定できる場合においてもその結果が検討を要する坑道の安定性評価に関わるスケールで把握し

たものとなっているかすなわち測定位置のごく近傍だけの局所的状況を捉えたものである可能

性はないかその検証が課題として残ると考えられるこの課題は用いた初期応力測定法が安

定性評価に関わるスケールと比較してごく狭い領域にしか測定範囲を有していないことに主に起

因するものと考えられる

表 11 は初期応力測定法とその測定範囲とされる領域の大きさ(特性体積 m3 と呼称)の関

係を示したものである表 11 によると逆解析によるものと自然現象から初期応力を求める地

震学的評価法測地学的評価法を除きほとんどの場合特性体積は一般的な坑道のスケールお

よびその周辺岩盤における力学的影響領域のスケールに比較して小さいことがわかる

一方他の測定法と比べて桁違いに特性体積が大きい地震学的評価法と測地学的評価法では

その他の測定法と異なり測定行為が受動的ともいえる自然現象の観測が必要なため一定の結論

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 19981)を改変)

測定法の分類 測定法の名称 特性体積(m3)

水圧法 水圧破砕法2) 05~50

Sleeve fracturing 法3) 05~2

応力解放法

孔径変化法4) 01~1

孔径ひずみ法5) 01~1

球面孔底ひずみ法6) 01~1

円錐孔底ひずみ法7) 001~1

コアを用いる方法

AE 法8) 0001~001

ASR 法9) 0001~001

DRA 法10) 0001~001

DSCA 法11) 0001~001

コアディスキング法12) 01~1

その他

逆解析法13) 102~104

地震学的評価法14) 109

測地学的評価法15) 1010~1012

JAEA-Research 2010-011

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を得るための長期の測定を要することが欠点と言えるまたこの欠点に起因して要求されるス

ケールや精度の初期応力を常に与えるものでもないこれらの手法から得られる情報はどちら

かといえばその他の測定法で得られた初期応力の妥当性検証のための参考情報として用いられ

ている16)17)結局表 11 に示した測定方法の中では比較的大きな特性体積の初期応力を求め

る場合逆解析法が最も適していると結論される

ところで表 11 で示している逆解析法 13)とは坑道内で得られた計測結果を逆解析して坑

道周辺岩盤の特性体積に相当する領域で発生している平均的初期応力を得ようとするものである

そこでこの方法論に倣い坑道から離れた位置で計測した初期応力を逆解析して坑道を含めた

広範囲の初期応力状態を推定しここからさらに拡張して逆解析の結果を入力とする順解析に

より坑道位置の局所的な初期応力を求めることが考えられるこれが可能であれば冒頭に述べ

た調査数を必要最小限とする要求を満たした任意地点の初期応力評価が行えることになる

本報告書は上記の発想に基づいて開発した解析手法を概説しまたその解析手法を用いて

東濃地域を例とする評価を行なった場合の検討結果を述べたものであるここで解析手法の開

発および東濃地域の評価とその検討は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構

(現日本原子力研究開発機構)が資源素材学会に委託して実施した成果に基づくものである

第 2 章では任意地点の初期応力(局所応力)と逆解析で評価される広域応力広域ひずみの関

係について概説しこの関係に基づいてある地点の初期応力の測定結果から別地点の初期応力

を推定する流れを説明する第 3 章~第 4 章は開発した 3 種類の解析手法別の各論である(表

12)各章とも解析方法の具体的要点を示した後東濃地域を対象とする評価例を示しその

結果について考察するものとした最後の第 5 章はまとめであるなお本報告書では正値の

応力ひずみが引張応力伸びとなるように符号を統一する

表 12 今回検討した解析手法の一覧

種類 (括弧は記述章)

数値モデルの岩盤の弾

性定数を逆解析と同時

に評価する広域応力場

評価(3 章)

地殻運動による水平応

力が深度方向に非線形

と考えた広域応力場評

価(4 章)

数値モデルに含まれる

大規模断層の影響を考

慮した広域応力場評価

(5 章)

特徴

弾性的性質の異なる複

数の岩相の弾性定数を

初期応力評価と同時に

行なえる

初期応力の水平成分が

深度方向に非線形変化

であることを考慮でき

大規模断層の断層面に

おける相対変位と滑り

評価が行なえる

逆解析モデル 有限要素モデル 境界要素モデル 有限要素モデル 順解析モデル 同上 有限差分モデル 同上

入力 地形地質などの座標データ 初期応力測定結果 各岩相の密度弾性定数 大規模断層(月吉断層)の剛性

出力

ポアソン比 比ヤング率 広域ひずみ 局所応力

広域応力 局所応力

大規模断層面の すべり判定

広域ひずみ 局所応力

3 章の手法では岩相毎の具体的な値は不要であるが相互の大小関係は必要である

JAEA-Research 2010-011

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2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

JAEA-Research 2010-011

- - 4

図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

JAEA-Research 2010-011

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

JAEA-Research 2010-011

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合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

参考文献 1) 菅原勝彦 ldquo岩盤応力測定に関する研究の動向rdquo 資源と素材 Vol225 pp834-844 (1998)

2) Fairhurst C ldquoMeasurement of in-situ rock stresses with particular reference to hydraulic

fracturingrdquo Rock Mech Eng Geol Vol2 pp129-147 (1964)

3) 佐久間彰三 菊地慎二 中村哲也 水田義明 ldquoダブルフラクチャリング法による 3 次元応力場の

決定rdquo 土木学会論文集 448Ⅲ-19 pp9-18 (1992)

4) Suzuki K ldquoTheory and practice of rock stress measurement by borehole deformation

methodrdquo Int Symp on the Determination of Stresses in Rock Masses Lisbon pp173-182

(1969)

5) Worotnicki G Walton R J ldquoTriaxial hollow inclusion gauges for determination of

rockstresses in-siturdquo Supplement to Proc of ISRM Symp on Investigation of Stress in

Rock Advances in Stress Measurement Sydney Suppl pp1-8 (1976)

6) Sugawara K Obara Y ldquoMeasurement of In-situ Rock Stress by Hemispherical-ended

Borehole Techniquerdquo Int J Mining Sci and Tech Vol3 pp287-300 (1986)

7) 坂口清敏 尾原祐三 中山智晴 菅原勝彦 ldquo円錐孔底ひずみ法の応力測定精度rdquo 資源と素材

Vol108 pp455-460 (1992)

8) 金川忠 林正夫 仲左博裕 ldquo岩石における地圧成分の Acoustic Emission による推定の試みrdquo 土

木学会論文報告集 Vol258 pp63-75 (1977)

9) 松木浩二 ldquo岩石の非弾性ひずみ回復を用いた三次元地圧計測法の理論的検討rdquo 資源と素材

Vol108 pp41-45 (1992)

10 ) Yamamoto K ldquoThe rock property of in-situ stress memory Discussions on its

mechanismrdquo Proc of Int Workshop on Rock Stress Measurement at Great Depth

pp46-51 (1995)

11) Stickland F D Ren N K ldquoUse of differential strain curve analysis in predicting the

in-situ stress state for deep wellsrdquo Proc of 21st US Symp on Rock Mech Rolla

pp523-532 (1980)

12) 菅原勝彦 亀岡美友 斉藤敏明 岡行俊 平松良雄 ldquoコアディスキング現象に関する研究rdquo 日本

工業会誌 Vol94 No1089 pp797-803 (1978)

13) Sakurai S Shimizu N ldquoInitial Stress back analyzed from displacements due to

undergrounds excavationsrdquo Proc of Int Symp on Rock Stress and Rock Stress

Measurements Stockholm pp679-686 (1986)

14) Jang H K Sugawara K ldquoMacro rock stress measurement at the Kamaishi districtrdquo

Proc of the Korea-Japan Joint Symp on Rock Engineering Seoul pp207-215 (1996)

15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 2: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

ii

JAEA-Research 2010-011

Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research)

Yoshiaki MIZUTA1 Katsuhiko KANEKO2 Koji MATSUKI3 Katsuhiko SUGAWARA4

Shigeaki SUDO5 Toru HIRANO Takeo TANNO and Hiroya MATSUI

Tono Geoscientific Research Unit

Geological Isolation Research and Development Directorate Japan Atomic Energy Agency

Akiyo-cho Mizunami-shi Gifu-ken

(Received March 18 2010) For design or excavation of deep underground tunnels such as for a radioactive waste

disposal facility there is need to assess the mechanical stability of tunnels and any kinds of excavation effect on the rock mass surrounding the tunnels The three-dimensional in situDagger stress state is one of the main factors of the assessment The best way to know the in situ stress clearly is to measure it in the location where a tunnel will be excavated to minimize the effect of any rock mass heterogeneities However obtaining a large number of in situ stress measurement can be difficult budgetary considerations notwithstanding because of the large scale of underground structures such as envisioned for a radioactive waste disposal facility Therefore we developed a method for determination of in situ stress for arbitrary points from limited results of in situ stress measurement

This report is a summary of the contract work done in the fiscal years from 2004-2006 for the development of a new in situ stress determination method Initially we made local scale numerical models of the Tono area Using these models we estimated the regional stress state from a limited set of in situ stress measurement results using an inverse analysis Then we applied the estimated regional stress state to boundary conditions of the same numerical models and calculated local stress at arbitrary points using a forward analysis The results indicate that the calculated local stress matched the original in situ stress measurement results from the inverse analysis Furthermore this approach can be used to explain estimates and in situ stress measurements at other locations independent of the regional stress analyses

Keywords Regional Stress Local Stress Numerical Model Initial Stress Measurement Dagger mean ldquoin the natural or original positionrdquo

This work was performed by Mining and Materials Processing Institute of Japan under contract with Japan Atomic Energy Agency 1 Sojo University 2 Hokkaido University 3 Tohoku University 4 Former Kumamoto University 5 Mining and Materials Processing Institute Collaborating Engineer

JAEA-Research 2010-011

iii

目 次

1 はじめに 1

2 逆解析による広域応力場の評価 3

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算 3

22 広域応力の数値モデルへの与え方 3

3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価 5

31 評価手法の概要 5

311 弾性定数を未知とする解析 5

32 東濃地域を対象とした評価 6

321 数値モデル 6

322 弾性定数の大小関係 7

323 広域応力場の計算 8

324 解析結果と検討 11

33 まとめ 15

4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価 16

41 評価手法の概要 16

411 成因を踏まえた広域応力の表現 16

42 東濃地域を対象とした評価 17

421 数値モデル 17

422 広域応力場の計算 19

423 解析結果と検討 20

43 まとめ 22

5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価 23

51 評価手法の概要 23

511 数値モデルを貫通する断層面 23

512 断層面を考慮した広域応力の与え方 24

52 東濃地域を対象とした評価 25

521 数値モデル 26

522 広域応力場の計算 27

523 解析結果と検討 28

53 まとめ 32

6 結言 33

参考文献 34

JAEA-Research 2010-011

iv

CONTENTS

1 Introduction 1

2 Determination of regional stress state -an inverse problem solution 3

21 Inverse problem and forward problem on computing of rock stress 3

22 Two approaches to regional stress definition 3

3 Determination of regional stress state with unknown Youngs modulus 5

31 Overview of the method 5

311 Estimation of Youngs modulus of rock mass 5

32 Application to Tono regional model 6

321 Numerical model 6

322 Restriction of Youngs modulus 7

323 Computation of regional stress state 8

324 Results and discussions 11

33 Summary 15

4 Determination of regional stress state considering tectonic force 16

41 Overview of the method 16

411 A expression of regional stress considering tectonic force 16

42 Application to Tono regional model 17

421 Numerical model 17

422 Computation of regional stress state 19

423 Results and discussions 20

43 Summary 22

5 Determination of regional stress state considering fault slip 23

51 Overview of the method 23

511 A fault plane in a numerical model 23

512 A method of regional stress definition considering fault slip 24

52 Application to Tono regional model 25

521 Numerical model 26

522 Computation of regional stress state 27

523 Results and discussions 28

53 Summary 32

6 Conclusion 33

References 34

JAEA-Research 2010-011

v

図目次

図 221 逆解析と順解析の関係 4

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方 4

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 6

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 6

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係 9

図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違 11

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定結果の順解析による再現性 12

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定結果の順解析による予測 12

図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1号孔研究坑道の位置(原子力機構 2007に加筆) 12

図 328 研究坑道位置の推定局所応力 13

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布 14

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 2003 に加筆) 16

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 17

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析) 18

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析) 18

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2号孔位置) 20

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較 21

図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力 22

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部) 23

図 512 断層面の弾性結合モデル 23

図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系 24

図 514 断層面の滑り判定 24

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定 24

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 25

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 26

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値 27

図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値 28

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me 28

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性 29

図 526 研究坑道位置の推定局所応力 30

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比 30

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要 31

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向 32

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vi

表目次

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 1998 を改変) 1

表 12 今回検討した解析手法の一覧 2

表 321 数値モデルに設定した地質物性 7

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性 8

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 9

表 324 解析モデルのサイズによる影響 10

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ 10

表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析) 19

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 19

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 19

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ 20

表 521 数値モデルに設定した地質物性 26

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 26 表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔 27

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1 はじめに

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大深度地下に建設される坑道の設計施工ではそ

の坑道の安定性および掘削による周辺岩盤への影響などの評価が重要であるこの評価には 3 次

元場における岩盤の初期応力を把握することが必要となるそこでこの初期応力を精度良く把握

するには一般に考慮の難しい広範囲な岩盤の不確定要素や不均一性などを扱わずに済む坑道

掘削位置における原位置調査が望ましいしかしながら数平方 km スケールの地下構造物を建

設する場合坑道位置での多数の調査を行なうことは経済的に困難と考えられるそのためボ

ーリング孔の掘削を伴う調査は調査地点や調査数に制約があると考えるべきである

このように限られた数の測定結果しか得られない場合測定結果をどのように坑道を掘削する

位置に反映するのかその方法が課題と考えられるまた坑道を掘削する位置で初期応力が測

定できる場合においてもその結果が検討を要する坑道の安定性評価に関わるスケールで把握し

たものとなっているかすなわち測定位置のごく近傍だけの局所的状況を捉えたものである可能

性はないかその検証が課題として残ると考えられるこの課題は用いた初期応力測定法が安

定性評価に関わるスケールと比較してごく狭い領域にしか測定範囲を有していないことに主に起

因するものと考えられる

表 11 は初期応力測定法とその測定範囲とされる領域の大きさ(特性体積 m3 と呼称)の関

係を示したものである表 11 によると逆解析によるものと自然現象から初期応力を求める地

震学的評価法測地学的評価法を除きほとんどの場合特性体積は一般的な坑道のスケールお

よびその周辺岩盤における力学的影響領域のスケールに比較して小さいことがわかる

一方他の測定法と比べて桁違いに特性体積が大きい地震学的評価法と測地学的評価法では

その他の測定法と異なり測定行為が受動的ともいえる自然現象の観測が必要なため一定の結論

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 19981)を改変)

測定法の分類 測定法の名称 特性体積(m3)

水圧法 水圧破砕法2) 05~50

Sleeve fracturing 法3) 05~2

応力解放法

孔径変化法4) 01~1

孔径ひずみ法5) 01~1

球面孔底ひずみ法6) 01~1

円錐孔底ひずみ法7) 001~1

コアを用いる方法

AE 法8) 0001~001

ASR 法9) 0001~001

DRA 法10) 0001~001

DSCA 法11) 0001~001

コアディスキング法12) 01~1

その他

逆解析法13) 102~104

地震学的評価法14) 109

測地学的評価法15) 1010~1012

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- - 2

を得るための長期の測定を要することが欠点と言えるまたこの欠点に起因して要求されるス

ケールや精度の初期応力を常に与えるものでもないこれらの手法から得られる情報はどちら

かといえばその他の測定法で得られた初期応力の妥当性検証のための参考情報として用いられ

ている16)17)結局表 11 に示した測定方法の中では比較的大きな特性体積の初期応力を求め

る場合逆解析法が最も適していると結論される

ところで表 11 で示している逆解析法 13)とは坑道内で得られた計測結果を逆解析して坑

道周辺岩盤の特性体積に相当する領域で発生している平均的初期応力を得ようとするものである

そこでこの方法論に倣い坑道から離れた位置で計測した初期応力を逆解析して坑道を含めた

広範囲の初期応力状態を推定しここからさらに拡張して逆解析の結果を入力とする順解析に

より坑道位置の局所的な初期応力を求めることが考えられるこれが可能であれば冒頭に述べ

た調査数を必要最小限とする要求を満たした任意地点の初期応力評価が行えることになる

本報告書は上記の発想に基づいて開発した解析手法を概説しまたその解析手法を用いて

東濃地域を例とする評価を行なった場合の検討結果を述べたものであるここで解析手法の開

発および東濃地域の評価とその検討は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構

(現日本原子力研究開発機構)が資源素材学会に委託して実施した成果に基づくものである

第 2 章では任意地点の初期応力(局所応力)と逆解析で評価される広域応力広域ひずみの関

係について概説しこの関係に基づいてある地点の初期応力の測定結果から別地点の初期応力

を推定する流れを説明する第 3 章~第 4 章は開発した 3 種類の解析手法別の各論である(表

12)各章とも解析方法の具体的要点を示した後東濃地域を対象とする評価例を示しその

結果について考察するものとした最後の第 5 章はまとめであるなお本報告書では正値の

応力ひずみが引張応力伸びとなるように符号を統一する

表 12 今回検討した解析手法の一覧

種類 (括弧は記述章)

数値モデルの岩盤の弾

性定数を逆解析と同時

に評価する広域応力場

評価(3 章)

地殻運動による水平応

力が深度方向に非線形

と考えた広域応力場評

価(4 章)

数値モデルに含まれる

大規模断層の影響を考

慮した広域応力場評価

(5 章)

特徴

弾性的性質の異なる複

数の岩相の弾性定数を

初期応力評価と同時に

行なえる

初期応力の水平成分が

深度方向に非線形変化

であることを考慮でき

大規模断層の断層面に

おける相対変位と滑り

評価が行なえる

逆解析モデル 有限要素モデル 境界要素モデル 有限要素モデル 順解析モデル 同上 有限差分モデル 同上

入力 地形地質などの座標データ 初期応力測定結果 各岩相の密度弾性定数 大規模断層(月吉断層)の剛性

出力

ポアソン比 比ヤング率 広域ひずみ 局所応力

広域応力 局所応力

大規模断層面の すべり判定

広域ひずみ 局所応力

3 章の手法では岩相毎の具体的な値は不要であるが相互の大小関係は必要である

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2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

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図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 3: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

iii

目 次

1 はじめに 1

2 逆解析による広域応力場の評価 3

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算 3

22 広域応力の数値モデルへの与え方 3

3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価 5

31 評価手法の概要 5

311 弾性定数を未知とする解析 5

32 東濃地域を対象とした評価 6

321 数値モデル 6

322 弾性定数の大小関係 7

323 広域応力場の計算 8

324 解析結果と検討 11

33 まとめ 15

4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価 16

41 評価手法の概要 16

411 成因を踏まえた広域応力の表現 16

42 東濃地域を対象とした評価 17

421 数値モデル 17

422 広域応力場の計算 19

423 解析結果と検討 20

43 まとめ 22

5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価 23

51 評価手法の概要 23

511 数値モデルを貫通する断層面 23

512 断層面を考慮した広域応力の与え方 24

52 東濃地域を対象とした評価 25

521 数値モデル 26

522 広域応力場の計算 27

523 解析結果と検討 28

53 まとめ 32

6 結言 33

参考文献 34

JAEA-Research 2010-011

iv

CONTENTS

1 Introduction 1

2 Determination of regional stress state -an inverse problem solution 3

21 Inverse problem and forward problem on computing of rock stress 3

22 Two approaches to regional stress definition 3

3 Determination of regional stress state with unknown Youngs modulus 5

31 Overview of the method 5

311 Estimation of Youngs modulus of rock mass 5

32 Application to Tono regional model 6

321 Numerical model 6

322 Restriction of Youngs modulus 7

323 Computation of regional stress state 8

324 Results and discussions 11

33 Summary 15

4 Determination of regional stress state considering tectonic force 16

41 Overview of the method 16

411 A expression of regional stress considering tectonic force 16

42 Application to Tono regional model 17

421 Numerical model 17

422 Computation of regional stress state 19

423 Results and discussions 20

43 Summary 22

5 Determination of regional stress state considering fault slip 23

51 Overview of the method 23

511 A fault plane in a numerical model 23

512 A method of regional stress definition considering fault slip 24

52 Application to Tono regional model 25

521 Numerical model 26

522 Computation of regional stress state 27

523 Results and discussions 28

53 Summary 32

6 Conclusion 33

References 34

JAEA-Research 2010-011

v

図目次

図 221 逆解析と順解析の関係 4

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方 4

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 6

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 6

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係 9

図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違 11

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定結果の順解析による再現性 12

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定結果の順解析による予測 12

図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1号孔研究坑道の位置(原子力機構 2007に加筆) 12

図 328 研究坑道位置の推定局所応力 13

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布 14

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 2003 に加筆) 16

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 17

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析) 18

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析) 18

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2号孔位置) 20

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較 21

図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力 22

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部) 23

図 512 断層面の弾性結合モデル 23

図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系 24

図 514 断層面の滑り判定 24

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定 24

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 25

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 26

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値 27

図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値 28

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me 28

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性 29

図 526 研究坑道位置の推定局所応力 30

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比 30

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要 31

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向 32

JAEA-Research 2010-011

vi

表目次

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 1998 を改変) 1

表 12 今回検討した解析手法の一覧 2

表 321 数値モデルに設定した地質物性 7

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性 8

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 9

表 324 解析モデルのサイズによる影響 10

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ 10

表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析) 19

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 19

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 19

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ 20

表 521 数値モデルに設定した地質物性 26

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 26 表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔 27

JAEA-Research 2010-011

- - 1

1 はじめに

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大深度地下に建設される坑道の設計施工ではそ

の坑道の安定性および掘削による周辺岩盤への影響などの評価が重要であるこの評価には 3 次

元場における岩盤の初期応力を把握することが必要となるそこでこの初期応力を精度良く把握

するには一般に考慮の難しい広範囲な岩盤の不確定要素や不均一性などを扱わずに済む坑道

掘削位置における原位置調査が望ましいしかしながら数平方 km スケールの地下構造物を建

設する場合坑道位置での多数の調査を行なうことは経済的に困難と考えられるそのためボ

ーリング孔の掘削を伴う調査は調査地点や調査数に制約があると考えるべきである

このように限られた数の測定結果しか得られない場合測定結果をどのように坑道を掘削する

位置に反映するのかその方法が課題と考えられるまた坑道を掘削する位置で初期応力が測

定できる場合においてもその結果が検討を要する坑道の安定性評価に関わるスケールで把握し

たものとなっているかすなわち測定位置のごく近傍だけの局所的状況を捉えたものである可能

性はないかその検証が課題として残ると考えられるこの課題は用いた初期応力測定法が安

定性評価に関わるスケールと比較してごく狭い領域にしか測定範囲を有していないことに主に起

因するものと考えられる

表 11 は初期応力測定法とその測定範囲とされる領域の大きさ(特性体積 m3 と呼称)の関

係を示したものである表 11 によると逆解析によるものと自然現象から初期応力を求める地

震学的評価法測地学的評価法を除きほとんどの場合特性体積は一般的な坑道のスケールお

よびその周辺岩盤における力学的影響領域のスケールに比較して小さいことがわかる

一方他の測定法と比べて桁違いに特性体積が大きい地震学的評価法と測地学的評価法では

その他の測定法と異なり測定行為が受動的ともいえる自然現象の観測が必要なため一定の結論

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 19981)を改変)

測定法の分類 測定法の名称 特性体積(m3)

水圧法 水圧破砕法2) 05~50

Sleeve fracturing 法3) 05~2

応力解放法

孔径変化法4) 01~1

孔径ひずみ法5) 01~1

球面孔底ひずみ法6) 01~1

円錐孔底ひずみ法7) 001~1

コアを用いる方法

AE 法8) 0001~001

ASR 法9) 0001~001

DRA 法10) 0001~001

DSCA 法11) 0001~001

コアディスキング法12) 01~1

その他

逆解析法13) 102~104

地震学的評価法14) 109

測地学的評価法15) 1010~1012

JAEA-Research 2010-011

- - 2

を得るための長期の測定を要することが欠点と言えるまたこの欠点に起因して要求されるス

ケールや精度の初期応力を常に与えるものでもないこれらの手法から得られる情報はどちら

かといえばその他の測定法で得られた初期応力の妥当性検証のための参考情報として用いられ

ている16)17)結局表 11 に示した測定方法の中では比較的大きな特性体積の初期応力を求め

る場合逆解析法が最も適していると結論される

ところで表 11 で示している逆解析法 13)とは坑道内で得られた計測結果を逆解析して坑

道周辺岩盤の特性体積に相当する領域で発生している平均的初期応力を得ようとするものである

そこでこの方法論に倣い坑道から離れた位置で計測した初期応力を逆解析して坑道を含めた

広範囲の初期応力状態を推定しここからさらに拡張して逆解析の結果を入力とする順解析に

より坑道位置の局所的な初期応力を求めることが考えられるこれが可能であれば冒頭に述べ

た調査数を必要最小限とする要求を満たした任意地点の初期応力評価が行えることになる

本報告書は上記の発想に基づいて開発した解析手法を概説しまたその解析手法を用いて

東濃地域を例とする評価を行なった場合の検討結果を述べたものであるここで解析手法の開

発および東濃地域の評価とその検討は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構

(現日本原子力研究開発機構)が資源素材学会に委託して実施した成果に基づくものである

第 2 章では任意地点の初期応力(局所応力)と逆解析で評価される広域応力広域ひずみの関

係について概説しこの関係に基づいてある地点の初期応力の測定結果から別地点の初期応力

を推定する流れを説明する第 3 章~第 4 章は開発した 3 種類の解析手法別の各論である(表

12)各章とも解析方法の具体的要点を示した後東濃地域を対象とする評価例を示しその

結果について考察するものとした最後の第 5 章はまとめであるなお本報告書では正値の

応力ひずみが引張応力伸びとなるように符号を統一する

表 12 今回検討した解析手法の一覧

種類 (括弧は記述章)

数値モデルの岩盤の弾

性定数を逆解析と同時

に評価する広域応力場

評価(3 章)

地殻運動による水平応

力が深度方向に非線形

と考えた広域応力場評

価(4 章)

数値モデルに含まれる

大規模断層の影響を考

慮した広域応力場評価

(5 章)

特徴

弾性的性質の異なる複

数の岩相の弾性定数を

初期応力評価と同時に

行なえる

初期応力の水平成分が

深度方向に非線形変化

であることを考慮でき

大規模断層の断層面に

おける相対変位と滑り

評価が行なえる

逆解析モデル 有限要素モデル 境界要素モデル 有限要素モデル 順解析モデル 同上 有限差分モデル 同上

入力 地形地質などの座標データ 初期応力測定結果 各岩相の密度弾性定数 大規模断層(月吉断層)の剛性

出力

ポアソン比 比ヤング率 広域ひずみ 局所応力

広域応力 局所応力

大規模断層面の すべり判定

広域ひずみ 局所応力

3 章の手法では岩相毎の具体的な値は不要であるが相互の大小関係は必要である

JAEA-Research 2010-011

- - 3

2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

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図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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- - 23

5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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- - 26

521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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- - 27

522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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- - 28

図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 4: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

iv

CONTENTS

1 Introduction 1

2 Determination of regional stress state -an inverse problem solution 3

21 Inverse problem and forward problem on computing of rock stress 3

22 Two approaches to regional stress definition 3

3 Determination of regional stress state with unknown Youngs modulus 5

31 Overview of the method 5

311 Estimation of Youngs modulus of rock mass 5

32 Application to Tono regional model 6

321 Numerical model 6

322 Restriction of Youngs modulus 7

323 Computation of regional stress state 8

324 Results and discussions 11

33 Summary 15

4 Determination of regional stress state considering tectonic force 16

41 Overview of the method 16

411 A expression of regional stress considering tectonic force 16

42 Application to Tono regional model 17

421 Numerical model 17

422 Computation of regional stress state 19

423 Results and discussions 20

43 Summary 22

5 Determination of regional stress state considering fault slip 23

51 Overview of the method 23

511 A fault plane in a numerical model 23

512 A method of regional stress definition considering fault slip 24

52 Application to Tono regional model 25

521 Numerical model 26

522 Computation of regional stress state 27

523 Results and discussions 28

53 Summary 32

6 Conclusion 33

References 34

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図目次

図 221 逆解析と順解析の関係 4

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方 4

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 6

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 6

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係 9

図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違 11

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定結果の順解析による再現性 12

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定結果の順解析による予測 12

図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1号孔研究坑道の位置(原子力機構 2007に加筆) 12

図 328 研究坑道位置の推定局所応力 13

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布 14

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 2003 に加筆) 16

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 17

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析) 18

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析) 18

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2号孔位置) 20

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較 21

図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力 22

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部) 23

図 512 断層面の弾性結合モデル 23

図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系 24

図 514 断層面の滑り判定 24

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定 24

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 25

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 26

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値 27

図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値 28

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me 28

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性 29

図 526 研究坑道位置の推定局所応力 30

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比 30

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要 31

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向 32

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表目次

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 1998 を改変) 1

表 12 今回検討した解析手法の一覧 2

表 321 数値モデルに設定した地質物性 7

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性 8

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 9

表 324 解析モデルのサイズによる影響 10

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ 10

表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析) 19

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 19

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 19

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ 20

表 521 数値モデルに設定した地質物性 26

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 26 表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔 27

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1 はじめに

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大深度地下に建設される坑道の設計施工ではそ

の坑道の安定性および掘削による周辺岩盤への影響などの評価が重要であるこの評価には 3 次

元場における岩盤の初期応力を把握することが必要となるそこでこの初期応力を精度良く把握

するには一般に考慮の難しい広範囲な岩盤の不確定要素や不均一性などを扱わずに済む坑道

掘削位置における原位置調査が望ましいしかしながら数平方 km スケールの地下構造物を建

設する場合坑道位置での多数の調査を行なうことは経済的に困難と考えられるそのためボ

ーリング孔の掘削を伴う調査は調査地点や調査数に制約があると考えるべきである

このように限られた数の測定結果しか得られない場合測定結果をどのように坑道を掘削する

位置に反映するのかその方法が課題と考えられるまた坑道を掘削する位置で初期応力が測

定できる場合においてもその結果が検討を要する坑道の安定性評価に関わるスケールで把握し

たものとなっているかすなわち測定位置のごく近傍だけの局所的状況を捉えたものである可能

性はないかその検証が課題として残ると考えられるこの課題は用いた初期応力測定法が安

定性評価に関わるスケールと比較してごく狭い領域にしか測定範囲を有していないことに主に起

因するものと考えられる

表 11 は初期応力測定法とその測定範囲とされる領域の大きさ(特性体積 m3 と呼称)の関

係を示したものである表 11 によると逆解析によるものと自然現象から初期応力を求める地

震学的評価法測地学的評価法を除きほとんどの場合特性体積は一般的な坑道のスケールお

よびその周辺岩盤における力学的影響領域のスケールに比較して小さいことがわかる

一方他の測定法と比べて桁違いに特性体積が大きい地震学的評価法と測地学的評価法では

その他の測定法と異なり測定行為が受動的ともいえる自然現象の観測が必要なため一定の結論

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 19981)を改変)

測定法の分類 測定法の名称 特性体積(m3)

水圧法 水圧破砕法2) 05~50

Sleeve fracturing 法3) 05~2

応力解放法

孔径変化法4) 01~1

孔径ひずみ法5) 01~1

球面孔底ひずみ法6) 01~1

円錐孔底ひずみ法7) 001~1

コアを用いる方法

AE 法8) 0001~001

ASR 法9) 0001~001

DRA 法10) 0001~001

DSCA 法11) 0001~001

コアディスキング法12) 01~1

その他

逆解析法13) 102~104

地震学的評価法14) 109

測地学的評価法15) 1010~1012

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を得るための長期の測定を要することが欠点と言えるまたこの欠点に起因して要求されるス

ケールや精度の初期応力を常に与えるものでもないこれらの手法から得られる情報はどちら

かといえばその他の測定法で得られた初期応力の妥当性検証のための参考情報として用いられ

ている16)17)結局表 11 に示した測定方法の中では比較的大きな特性体積の初期応力を求め

る場合逆解析法が最も適していると結論される

ところで表 11 で示している逆解析法 13)とは坑道内で得られた計測結果を逆解析して坑

道周辺岩盤の特性体積に相当する領域で発生している平均的初期応力を得ようとするものである

そこでこの方法論に倣い坑道から離れた位置で計測した初期応力を逆解析して坑道を含めた

広範囲の初期応力状態を推定しここからさらに拡張して逆解析の結果を入力とする順解析に

より坑道位置の局所的な初期応力を求めることが考えられるこれが可能であれば冒頭に述べ

た調査数を必要最小限とする要求を満たした任意地点の初期応力評価が行えることになる

本報告書は上記の発想に基づいて開発した解析手法を概説しまたその解析手法を用いて

東濃地域を例とする評価を行なった場合の検討結果を述べたものであるここで解析手法の開

発および東濃地域の評価とその検討は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構

(現日本原子力研究開発機構)が資源素材学会に委託して実施した成果に基づくものである

第 2 章では任意地点の初期応力(局所応力)と逆解析で評価される広域応力広域ひずみの関

係について概説しこの関係に基づいてある地点の初期応力の測定結果から別地点の初期応力

を推定する流れを説明する第 3 章~第 4 章は開発した 3 種類の解析手法別の各論である(表

12)各章とも解析方法の具体的要点を示した後東濃地域を対象とする評価例を示しその

結果について考察するものとした最後の第 5 章はまとめであるなお本報告書では正値の

応力ひずみが引張応力伸びとなるように符号を統一する

表 12 今回検討した解析手法の一覧

種類 (括弧は記述章)

数値モデルの岩盤の弾

性定数を逆解析と同時

に評価する広域応力場

評価(3 章)

地殻運動による水平応

力が深度方向に非線形

と考えた広域応力場評

価(4 章)

数値モデルに含まれる

大規模断層の影響を考

慮した広域応力場評価

(5 章)

特徴

弾性的性質の異なる複

数の岩相の弾性定数を

初期応力評価と同時に

行なえる

初期応力の水平成分が

深度方向に非線形変化

であることを考慮でき

大規模断層の断層面に

おける相対変位と滑り

評価が行なえる

逆解析モデル 有限要素モデル 境界要素モデル 有限要素モデル 順解析モデル 同上 有限差分モデル 同上

入力 地形地質などの座標データ 初期応力測定結果 各岩相の密度弾性定数 大規模断層(月吉断層)の剛性

出力

ポアソン比 比ヤング率 広域ひずみ 局所応力

広域応力 局所応力

大規模断層面の すべり判定

広域ひずみ 局所応力

3 章の手法では岩相毎の具体的な値は不要であるが相互の大小関係は必要である

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2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

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図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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- - 22

図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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- - 23

5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

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JAEA-Research 2010-011

- - 35

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23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

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定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

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関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

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engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

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Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 5: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

v

図目次

図 221 逆解析と順解析の関係 4

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方 4

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 6

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 6

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係 9

図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違 11

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定結果の順解析による再現性 12

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定結果の順解析による予測 12

図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1号孔研究坑道の位置(原子力機構 2007に加筆) 12

図 328 研究坑道位置の推定局所応力 13

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布 14

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 2003 に加筆) 16

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 17

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析) 18

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析) 18

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2号孔位置) 20

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較 21

図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力 22

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部) 23

図 512 断層面の弾性結合モデル 23

図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系 24

図 514 断層面の滑り判定 24

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定 24

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 1980 に加筆) 25

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル 26

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値 27

図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値 28

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me 28

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性 29

図 526 研究坑道位置の推定局所応力 30

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比 30

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要 31

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向 32

JAEA-Research 2010-011

vi

表目次

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 1998 を改変) 1

表 12 今回検討した解析手法の一覧 2

表 321 数値モデルに設定した地質物性 7

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性 8

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 9

表 324 解析モデルのサイズによる影響 10

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ 10

表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析) 19

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 19

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 19

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ 20

表 521 数値モデルに設定した地質物性 26

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 26 表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔 27

JAEA-Research 2010-011

- - 1

1 はじめに

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大深度地下に建設される坑道の設計施工ではそ

の坑道の安定性および掘削による周辺岩盤への影響などの評価が重要であるこの評価には 3 次

元場における岩盤の初期応力を把握することが必要となるそこでこの初期応力を精度良く把握

するには一般に考慮の難しい広範囲な岩盤の不確定要素や不均一性などを扱わずに済む坑道

掘削位置における原位置調査が望ましいしかしながら数平方 km スケールの地下構造物を建

設する場合坑道位置での多数の調査を行なうことは経済的に困難と考えられるそのためボ

ーリング孔の掘削を伴う調査は調査地点や調査数に制約があると考えるべきである

このように限られた数の測定結果しか得られない場合測定結果をどのように坑道を掘削する

位置に反映するのかその方法が課題と考えられるまた坑道を掘削する位置で初期応力が測

定できる場合においてもその結果が検討を要する坑道の安定性評価に関わるスケールで把握し

たものとなっているかすなわち測定位置のごく近傍だけの局所的状況を捉えたものである可能

性はないかその検証が課題として残ると考えられるこの課題は用いた初期応力測定法が安

定性評価に関わるスケールと比較してごく狭い領域にしか測定範囲を有していないことに主に起

因するものと考えられる

表 11 は初期応力測定法とその測定範囲とされる領域の大きさ(特性体積 m3 と呼称)の関

係を示したものである表 11 によると逆解析によるものと自然現象から初期応力を求める地

震学的評価法測地学的評価法を除きほとんどの場合特性体積は一般的な坑道のスケールお

よびその周辺岩盤における力学的影響領域のスケールに比較して小さいことがわかる

一方他の測定法と比べて桁違いに特性体積が大きい地震学的評価法と測地学的評価法では

その他の測定法と異なり測定行為が受動的ともいえる自然現象の観測が必要なため一定の結論

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 19981)を改変)

測定法の分類 測定法の名称 特性体積(m3)

水圧法 水圧破砕法2) 05~50

Sleeve fracturing 法3) 05~2

応力解放法

孔径変化法4) 01~1

孔径ひずみ法5) 01~1

球面孔底ひずみ法6) 01~1

円錐孔底ひずみ法7) 001~1

コアを用いる方法

AE 法8) 0001~001

ASR 法9) 0001~001

DRA 法10) 0001~001

DSCA 法11) 0001~001

コアディスキング法12) 01~1

その他

逆解析法13) 102~104

地震学的評価法14) 109

測地学的評価法15) 1010~1012

JAEA-Research 2010-011

- - 2

を得るための長期の測定を要することが欠点と言えるまたこの欠点に起因して要求されるス

ケールや精度の初期応力を常に与えるものでもないこれらの手法から得られる情報はどちら

かといえばその他の測定法で得られた初期応力の妥当性検証のための参考情報として用いられ

ている16)17)結局表 11 に示した測定方法の中では比較的大きな特性体積の初期応力を求め

る場合逆解析法が最も適していると結論される

ところで表 11 で示している逆解析法 13)とは坑道内で得られた計測結果を逆解析して坑

道周辺岩盤の特性体積に相当する領域で発生している平均的初期応力を得ようとするものである

そこでこの方法論に倣い坑道から離れた位置で計測した初期応力を逆解析して坑道を含めた

広範囲の初期応力状態を推定しここからさらに拡張して逆解析の結果を入力とする順解析に

より坑道位置の局所的な初期応力を求めることが考えられるこれが可能であれば冒頭に述べ

た調査数を必要最小限とする要求を満たした任意地点の初期応力評価が行えることになる

本報告書は上記の発想に基づいて開発した解析手法を概説しまたその解析手法を用いて

東濃地域を例とする評価を行なった場合の検討結果を述べたものであるここで解析手法の開

発および東濃地域の評価とその検討は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構

(現日本原子力研究開発機構)が資源素材学会に委託して実施した成果に基づくものである

第 2 章では任意地点の初期応力(局所応力)と逆解析で評価される広域応力広域ひずみの関

係について概説しこの関係に基づいてある地点の初期応力の測定結果から別地点の初期応力

を推定する流れを説明する第 3 章~第 4 章は開発した 3 種類の解析手法別の各論である(表

12)各章とも解析方法の具体的要点を示した後東濃地域を対象とする評価例を示しその

結果について考察するものとした最後の第 5 章はまとめであるなお本報告書では正値の

応力ひずみが引張応力伸びとなるように符号を統一する

表 12 今回検討した解析手法の一覧

種類 (括弧は記述章)

数値モデルの岩盤の弾

性定数を逆解析と同時

に評価する広域応力場

評価(3 章)

地殻運動による水平応

力が深度方向に非線形

と考えた広域応力場評

価(4 章)

数値モデルに含まれる

大規模断層の影響を考

慮した広域応力場評価

(5 章)

特徴

弾性的性質の異なる複

数の岩相の弾性定数を

初期応力評価と同時に

行なえる

初期応力の水平成分が

深度方向に非線形変化

であることを考慮でき

大規模断層の断層面に

おける相対変位と滑り

評価が行なえる

逆解析モデル 有限要素モデル 境界要素モデル 有限要素モデル 順解析モデル 同上 有限差分モデル 同上

入力 地形地質などの座標データ 初期応力測定結果 各岩相の密度弾性定数 大規模断層(月吉断層)の剛性

出力

ポアソン比 比ヤング率 広域ひずみ 局所応力

広域応力 局所応力

大規模断層面の すべり判定

広域ひずみ 局所応力

3 章の手法では岩相毎の具体的な値は不要であるが相互の大小関係は必要である

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2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

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図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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- - 16

4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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- - 26

521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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- - 27

522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 6: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

vi

表目次

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 1998 を改変) 1

表 12 今回検討した解析手法の一覧 2

表 321 数値モデルに設定した地質物性 7

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性 8

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 9

表 324 解析モデルのサイズによる影響 10

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ 10

表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析) 19

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 19

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名 19

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ 20

表 521 数値モデルに設定した地質物性 26

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性 26 表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔 27

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1 はじめに

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大深度地下に建設される坑道の設計施工ではそ

の坑道の安定性および掘削による周辺岩盤への影響などの評価が重要であるこの評価には 3 次

元場における岩盤の初期応力を把握することが必要となるそこでこの初期応力を精度良く把握

するには一般に考慮の難しい広範囲な岩盤の不確定要素や不均一性などを扱わずに済む坑道

掘削位置における原位置調査が望ましいしかしながら数平方 km スケールの地下構造物を建

設する場合坑道位置での多数の調査を行なうことは経済的に困難と考えられるそのためボ

ーリング孔の掘削を伴う調査は調査地点や調査数に制約があると考えるべきである

このように限られた数の測定結果しか得られない場合測定結果をどのように坑道を掘削する

位置に反映するのかその方法が課題と考えられるまた坑道を掘削する位置で初期応力が測

定できる場合においてもその結果が検討を要する坑道の安定性評価に関わるスケールで把握し

たものとなっているかすなわち測定位置のごく近傍だけの局所的状況を捉えたものである可能

性はないかその検証が課題として残ると考えられるこの課題は用いた初期応力測定法が安

定性評価に関わるスケールと比較してごく狭い領域にしか測定範囲を有していないことに主に起

因するものと考えられる

表 11 は初期応力測定法とその測定範囲とされる領域の大きさ(特性体積 m3 と呼称)の関

係を示したものである表 11 によると逆解析によるものと自然現象から初期応力を求める地

震学的評価法測地学的評価法を除きほとんどの場合特性体積は一般的な坑道のスケールお

よびその周辺岩盤における力学的影響領域のスケールに比較して小さいことがわかる

一方他の測定法と比べて桁違いに特性体積が大きい地震学的評価法と測地学的評価法では

その他の測定法と異なり測定行為が受動的ともいえる自然現象の観測が必要なため一定の結論

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 19981)を改変)

測定法の分類 測定法の名称 特性体積(m3)

水圧法 水圧破砕法2) 05~50

Sleeve fracturing 法3) 05~2

応力解放法

孔径変化法4) 01~1

孔径ひずみ法5) 01~1

球面孔底ひずみ法6) 01~1

円錐孔底ひずみ法7) 001~1

コアを用いる方法

AE 法8) 0001~001

ASR 法9) 0001~001

DRA 法10) 0001~001

DSCA 法11) 0001~001

コアディスキング法12) 01~1

その他

逆解析法13) 102~104

地震学的評価法14) 109

測地学的評価法15) 1010~1012

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を得るための長期の測定を要することが欠点と言えるまたこの欠点に起因して要求されるス

ケールや精度の初期応力を常に与えるものでもないこれらの手法から得られる情報はどちら

かといえばその他の測定法で得られた初期応力の妥当性検証のための参考情報として用いられ

ている16)17)結局表 11 に示した測定方法の中では比較的大きな特性体積の初期応力を求め

る場合逆解析法が最も適していると結論される

ところで表 11 で示している逆解析法 13)とは坑道内で得られた計測結果を逆解析して坑

道周辺岩盤の特性体積に相当する領域で発生している平均的初期応力を得ようとするものである

そこでこの方法論に倣い坑道から離れた位置で計測した初期応力を逆解析して坑道を含めた

広範囲の初期応力状態を推定しここからさらに拡張して逆解析の結果を入力とする順解析に

より坑道位置の局所的な初期応力を求めることが考えられるこれが可能であれば冒頭に述べ

た調査数を必要最小限とする要求を満たした任意地点の初期応力評価が行えることになる

本報告書は上記の発想に基づいて開発した解析手法を概説しまたその解析手法を用いて

東濃地域を例とする評価を行なった場合の検討結果を述べたものであるここで解析手法の開

発および東濃地域の評価とその検討は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構

(現日本原子力研究開発機構)が資源素材学会に委託して実施した成果に基づくものである

第 2 章では任意地点の初期応力(局所応力)と逆解析で評価される広域応力広域ひずみの関

係について概説しこの関係に基づいてある地点の初期応力の測定結果から別地点の初期応力

を推定する流れを説明する第 3 章~第 4 章は開発した 3 種類の解析手法別の各論である(表

12)各章とも解析方法の具体的要点を示した後東濃地域を対象とする評価例を示しその

結果について考察するものとした最後の第 5 章はまとめであるなお本報告書では正値の

応力ひずみが引張応力伸びとなるように符号を統一する

表 12 今回検討した解析手法の一覧

種類 (括弧は記述章)

数値モデルの岩盤の弾

性定数を逆解析と同時

に評価する広域応力場

評価(3 章)

地殻運動による水平応

力が深度方向に非線形

と考えた広域応力場評

価(4 章)

数値モデルに含まれる

大規模断層の影響を考

慮した広域応力場評価

(5 章)

特徴

弾性的性質の異なる複

数の岩相の弾性定数を

初期応力評価と同時に

行なえる

初期応力の水平成分が

深度方向に非線形変化

であることを考慮でき

大規模断層の断層面に

おける相対変位と滑り

評価が行なえる

逆解析モデル 有限要素モデル 境界要素モデル 有限要素モデル 順解析モデル 同上 有限差分モデル 同上

入力 地形地質などの座標データ 初期応力測定結果 各岩相の密度弾性定数 大規模断層(月吉断層)の剛性

出力

ポアソン比 比ヤング率 広域ひずみ 局所応力

広域応力 局所応力

大規模断層面の すべり判定

広域ひずみ 局所応力

3 章の手法では岩相毎の具体的な値は不要であるが相互の大小関係は必要である

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2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

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図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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- - 8

て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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Proc of the Korea-Japan Joint Symp on Rock Engineering Seoul pp207-215 (1996)

15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 7: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 1

1 はじめに

高レベル放射性廃棄物の地層処分のように大深度地下に建設される坑道の設計施工ではそ

の坑道の安定性および掘削による周辺岩盤への影響などの評価が重要であるこの評価には 3 次

元場における岩盤の初期応力を把握することが必要となるそこでこの初期応力を精度良く把握

するには一般に考慮の難しい広範囲な岩盤の不確定要素や不均一性などを扱わずに済む坑道

掘削位置における原位置調査が望ましいしかしながら数平方 km スケールの地下構造物を建

設する場合坑道位置での多数の調査を行なうことは経済的に困難と考えられるそのためボ

ーリング孔の掘削を伴う調査は調査地点や調査数に制約があると考えるべきである

このように限られた数の測定結果しか得られない場合測定結果をどのように坑道を掘削する

位置に反映するのかその方法が課題と考えられるまた坑道を掘削する位置で初期応力が測

定できる場合においてもその結果が検討を要する坑道の安定性評価に関わるスケールで把握し

たものとなっているかすなわち測定位置のごく近傍だけの局所的状況を捉えたものである可能

性はないかその検証が課題として残ると考えられるこの課題は用いた初期応力測定法が安

定性評価に関わるスケールと比較してごく狭い領域にしか測定範囲を有していないことに主に起

因するものと考えられる

表 11 は初期応力測定法とその測定範囲とされる領域の大きさ(特性体積 m3 と呼称)の関

係を示したものである表 11 によると逆解析によるものと自然現象から初期応力を求める地

震学的評価法測地学的評価法を除きほとんどの場合特性体積は一般的な坑道のスケールお

よびその周辺岩盤における力学的影響領域のスケールに比較して小さいことがわかる

一方他の測定法と比べて桁違いに特性体積が大きい地震学的評価法と測地学的評価法では

その他の測定法と異なり測定行為が受動的ともいえる自然現象の観測が必要なため一定の結論

表 11 初期応力測定法と特性体積の関係(菅原 19981)を改変)

測定法の分類 測定法の名称 特性体積(m3)

水圧法 水圧破砕法2) 05~50

Sleeve fracturing 法3) 05~2

応力解放法

孔径変化法4) 01~1

孔径ひずみ法5) 01~1

球面孔底ひずみ法6) 01~1

円錐孔底ひずみ法7) 001~1

コアを用いる方法

AE 法8) 0001~001

ASR 法9) 0001~001

DRA 法10) 0001~001

DSCA 法11) 0001~001

コアディスキング法12) 01~1

その他

逆解析法13) 102~104

地震学的評価法14) 109

測地学的評価法15) 1010~1012

JAEA-Research 2010-011

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を得るための長期の測定を要することが欠点と言えるまたこの欠点に起因して要求されるス

ケールや精度の初期応力を常に与えるものでもないこれらの手法から得られる情報はどちら

かといえばその他の測定法で得られた初期応力の妥当性検証のための参考情報として用いられ

ている16)17)結局表 11 に示した測定方法の中では比較的大きな特性体積の初期応力を求め

る場合逆解析法が最も適していると結論される

ところで表 11 で示している逆解析法 13)とは坑道内で得られた計測結果を逆解析して坑

道周辺岩盤の特性体積に相当する領域で発生している平均的初期応力を得ようとするものである

そこでこの方法論に倣い坑道から離れた位置で計測した初期応力を逆解析して坑道を含めた

広範囲の初期応力状態を推定しここからさらに拡張して逆解析の結果を入力とする順解析に

より坑道位置の局所的な初期応力を求めることが考えられるこれが可能であれば冒頭に述べ

た調査数を必要最小限とする要求を満たした任意地点の初期応力評価が行えることになる

本報告書は上記の発想に基づいて開発した解析手法を概説しまたその解析手法を用いて

東濃地域を例とする評価を行なった場合の検討結果を述べたものであるここで解析手法の開

発および東濃地域の評価とその検討は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構

(現日本原子力研究開発機構)が資源素材学会に委託して実施した成果に基づくものである

第 2 章では任意地点の初期応力(局所応力)と逆解析で評価される広域応力広域ひずみの関

係について概説しこの関係に基づいてある地点の初期応力の測定結果から別地点の初期応力

を推定する流れを説明する第 3 章~第 4 章は開発した 3 種類の解析手法別の各論である(表

12)各章とも解析方法の具体的要点を示した後東濃地域を対象とする評価例を示しその

結果について考察するものとした最後の第 5 章はまとめであるなお本報告書では正値の

応力ひずみが引張応力伸びとなるように符号を統一する

表 12 今回検討した解析手法の一覧

種類 (括弧は記述章)

数値モデルの岩盤の弾

性定数を逆解析と同時

に評価する広域応力場

評価(3 章)

地殻運動による水平応

力が深度方向に非線形

と考えた広域応力場評

価(4 章)

数値モデルに含まれる

大規模断層の影響を考

慮した広域応力場評価

(5 章)

特徴

弾性的性質の異なる複

数の岩相の弾性定数を

初期応力評価と同時に

行なえる

初期応力の水平成分が

深度方向に非線形変化

であることを考慮でき

大規模断層の断層面に

おける相対変位と滑り

評価が行なえる

逆解析モデル 有限要素モデル 境界要素モデル 有限要素モデル 順解析モデル 同上 有限差分モデル 同上

入力 地形地質などの座標データ 初期応力測定結果 各岩相の密度弾性定数 大規模断層(月吉断層)の剛性

出力

ポアソン比 比ヤング率 広域ひずみ 局所応力

広域応力 局所応力

大規模断層面の すべり判定

広域ひずみ 局所応力

3 章の手法では岩相毎の具体的な値は不要であるが相互の大小関係は必要である

JAEA-Research 2010-011

- - 3

2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

JAEA-Research 2010-011

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図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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- - 6

合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

- - 32

④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

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21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

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Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

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関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

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engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

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に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 8: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 2

を得るための長期の測定を要することが欠点と言えるまたこの欠点に起因して要求されるス

ケールや精度の初期応力を常に与えるものでもないこれらの手法から得られる情報はどちら

かといえばその他の測定法で得られた初期応力の妥当性検証のための参考情報として用いられ

ている16)17)結局表 11 に示した測定方法の中では比較的大きな特性体積の初期応力を求め

る場合逆解析法が最も適していると結論される

ところで表 11 で示している逆解析法 13)とは坑道内で得られた計測結果を逆解析して坑

道周辺岩盤の特性体積に相当する領域で発生している平均的初期応力を得ようとするものである

そこでこの方法論に倣い坑道から離れた位置で計測した初期応力を逆解析して坑道を含めた

広範囲の初期応力状態を推定しここからさらに拡張して逆解析の結果を入力とする順解析に

より坑道位置の局所的な初期応力を求めることが考えられるこれが可能であれば冒頭に述べ

た調査数を必要最小限とする要求を満たした任意地点の初期応力評価が行えることになる

本報告書は上記の発想に基づいて開発した解析手法を概説しまたその解析手法を用いて

東濃地域を例とする評価を行なった場合の検討結果を述べたものであるここで解析手法の開

発および東濃地域の評価とその検討は2004 年度から 2006 年度まで核燃料サイクル開発機構

(現日本原子力研究開発機構)が資源素材学会に委託して実施した成果に基づくものである

第 2 章では任意地点の初期応力(局所応力)と逆解析で評価される広域応力広域ひずみの関

係について概説しこの関係に基づいてある地点の初期応力の測定結果から別地点の初期応力

を推定する流れを説明する第 3 章~第 4 章は開発した 3 種類の解析手法別の各論である(表

12)各章とも解析方法の具体的要点を示した後東濃地域を対象とする評価例を示しその

結果について考察するものとした最後の第 5 章はまとめであるなお本報告書では正値の

応力ひずみが引張応力伸びとなるように符号を統一する

表 12 今回検討した解析手法の一覧

種類 (括弧は記述章)

数値モデルの岩盤の弾

性定数を逆解析と同時

に評価する広域応力場

評価(3 章)

地殻運動による水平応

力が深度方向に非線形

と考えた広域応力場評

価(4 章)

数値モデルに含まれる

大規模断層の影響を考

慮した広域応力場評価

(5 章)

特徴

弾性的性質の異なる複

数の岩相の弾性定数を

初期応力評価と同時に

行なえる

初期応力の水平成分が

深度方向に非線形変化

であることを考慮でき

大規模断層の断層面に

おける相対変位と滑り

評価が行なえる

逆解析モデル 有限要素モデル 境界要素モデル 有限要素モデル 順解析モデル 同上 有限差分モデル 同上

入力 地形地質などの座標データ 初期応力測定結果 各岩相の密度弾性定数 大規模断層(月吉断層)の剛性

出力

ポアソン比 比ヤング率 広域ひずみ 局所応力

広域応力 局所応力

大規模断層面の すべり判定

広域ひずみ 局所応力

3 章の手法では岩相毎の具体的な値は不要であるが相互の大小関係は必要である

JAEA-Research 2010-011

- - 3

2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

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図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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- - 26

521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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- - 27

522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 9: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 3

2 逆解析による広域応力場の評価

21 逆解析による広域応力評価と順解析による局所応力計算

局所応力は重力や広域的な地殻運動などの作用による応力(以下広域応力)が地形や地質

などの影響(以下局所的影響)を受けて二次的に変化した結果であると考えるそして局所応

力を測定しこの仮定の下で逆解析を行って局所的影響が取り除かれた広域応力が評価できたと

すると次にその広域応力を用いた順解析によって最初の測定場所とは別地点の局所応力が計算

可能になると考えられる

いま広域応力をlobalGG

ij で表すと局所応力LocalL

ij は広域応力と領域内の座標 )( zyxx の

関数Fで示されるまた広域応力に代えて重力や広域的な地殻運動などの作用によるひずみ

を広域ひずみと定義することもでき広域ひずみと領域内の座標の関数Gで示される(式 211)

GijLij xFx または GijL

ij xGx (211)

ここでFやG は局所的影響を定義した何らかの関数であるこの関数が具体的に決まると広

域応力Gij や広域ひずみ G

ij を入力とした任意地点の局所応力 Lij の計算が行なえるすなわち

式 211 は順解析の式であるGij や G

ij は直接測定することが難しく一般に未知数とされ計

測データから逆解析により推定されることが普通であるLij や L

ij を入力とする逆解析の式を示

すと式 211 の逆関数1F や

1G を用いた式 212 で示されるまた図 221 に逆解析と順

解析の関係を示した

LijGij 1xFx または LijG

ij 1xGx (212)

広域応力場の評価においては式 212 の関数を具体的に決めることが課題となる

局所的影響を定義する関数は評価対象とする岩盤領域の数値モデル化の結果(岩相断層な

ど地質構造の定義応力とひずみの構成式要素分割などを踏まえた結果)に依拠して決まるも

のなのでその関数形の決定とは数値モデルの構築と言い換えることもできるこの関数で示さ

れる広域応力Gij は計測により把握した様々な地点の局所応力

measuremij をこの関数自身に入

力し未知数以上の本数だけ連立させた観測方程式の最適解として得ることができるここで

この関数には岩盤の弾性定数や密度断層剛性等のパラメータが含まれ一般にはこれらパラメ

ータを既知として最適解を計算するがパラメータが未知である場合にその値を幾つか仮定し

たケースの計算結果の誤差比較を行なって未知パラメータの値を絞り込む工夫を施した

22 広域応力の数値モデルへの与え方

後述する各検討で用いた数値モデルではモデルに外部境界の有無(外部境界の有る有限要素

モデルおよび有限差分モデルと外部境界の無い境界要素モデル)という差異がある先に定義し

た広域応力の各モデルへの与え方は計算効率を上げるため外部境界の有無で若干異なるもの

とした(図 222)

外部境界の有るモデルの場合煩雑となるのを避けるため式 211 や 212 のように広域応力

と局所応力の関係をモデル内の座標毎に定義することはせずモデルの外部境界で一括定義する

ものとした(境界条件による広域応力の付与)これは広域応力が重力や地殻運動に拠るものと

仮定した場合数 kmtimes数 km の領域では領域内で広域応力は一様と考えられその場合定義

方法を変えても等価な計算結果を与えることから可能となるものである一方外部境界の無い

モデルでは同様のことが出来ないため式 211 や 212 のとおり広域応力と局所応力の関係を

モデル内の各座標で定義した(初期条件による広域応力の付与)

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図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

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3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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- - 12

図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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- - 15

33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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- - 17

これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

JAEA-Research 2010-011

- - 26

521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 10: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 4

図 221 逆解析と順解析の関係

図 222 広域応力の数値モデルへの与え方

以降の章では上記の考え方に基づく広域応力評価において評価結果に影響を与える三つの項

目(弾性定数の不均一性地殻運動による水平応力の発生大規模不連続構造の存在)に着目し

た解析手法を順に紹介する

観測方程式を与える

計測デ タ mm 数値モデルの構築

関数形を与える

逆解析

任意地点の応力Lij ひずみ

Lij mij1xF または mij1xG

Gij その他パラメータの最適解

順解析

GijxF または GijxG

(必要に応じて整合性を検証)

モデルの外部境界で

境界条件Gij を与える

各座標(解析点)で

初期条件Gij を与える

広域応力場Gij

外部境界が有る 有限要素モデル

有限差分モデル

外部境界が無い 境界要素モデル

モデル化領域

JAEA-Research 2010-011

- - 5

3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

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- - 6

合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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- - 12

図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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- - 15

33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

JAEA-Research 2010-011

- - 26

521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 11: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 5

3 数値モデルの岩盤弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価

弾性定数をはじめとする岩盤物性値は広域応力場の評価に必要な情報であるがそれら値の

原位置測定は難しいものが多いまた岩盤の不均一性を反映した評価を行なうには少なくとも

岩相別の物性値が必要と考えられるが現実には十分な調査量が確保できず誤差を許容した仮定

値が用いられることも珍しくないしかし広域応力場の評価において岩盤物性値の信頼性は評価

結果の信頼性に直結するため物性値の精度や推定方法の合理性を確保することが望まれるそ

こで原位置測定が比較的難しく広域応力場の評価への影響度も大きい岩盤の弾性定数を未知

数とした広域応力場の評価手法を開発した

31 評価手法の概要

311 弾性定数を未知とする解析

岩盤初期応力のうち広域応力Gij の寄与で発生したひずみを広域ひずみ

Gij と定義するこの

とき局所応力Lij は式 311 のような重力による寄与と広域ひずみによる寄与の重ね合わせ

であると考えられる18)なお座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく

GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xijij

Lij g 0 xxxxx (311)

ここで xLij は座標点xでの局所応力 gij 0x はその局所応力のうち重力による寄与を表

し は岩盤密度gは重力加速度である肩文字 Lは局所の値0は重力の寄与Gは広域の

値であること添字 ijは応力成分を表しているまた GxyXYij

Gyy

Yij

Gxx

Xij xxx は局所

応力のうち広域ひずみの水平面内成分(Gxy

Gyy

Gxx )による寄与をそれぞれ表している

式 311 は任意定数0ij を用いて

0 ijGijijc のように変数変換すると式 312 のように書

き直すことができる

xxxxx XYijxy

Yijyy

Xijxxij

Lij cccg 0 (312)

一般に広域ひずみは直接測定できないため前章で述べたように局所応力Lij の項に初期

応力の測定結果mij を代入した観測方程式を作りこれを未知数以上の数だけ連立させた方程式

の最適解として得ている先の変数変換は広域ひずみに相当する変数を関数の外に括り出すこ

とでこの連立方程式を解き易い形にするものである

いま密度や弾性定数などの岩盤物性値が既知である場合式 312 により3 個の ijc を未知

数とする方程式の最適解として広域ひずみが求められるしかし岩盤物性値例えば弾性定数

が未知である場合を考えると式 312 の第1項がポアソン比に依存し第 2 項以降の関数が比

ヤング率1

脚注)に依存することから広域ひずみの最適解を計算する前にこれら弾性定数をパラ

メータとする誤差の最小化を行なって妥当な弾性定数を決定しなければならない

いまある仮定した弾性定数に対して ijc の最適解が得られておりこれを用いて nx 点での広

域応力 nGij x が計算されたとするここで nx 点が初期応力を測定した地点となるように選ぶと

同地点での測定値 nmij x との残差二乗和が仮定した弾性定数を用いた場合の評価誤差と言え

るこの残差二乗和は式 313 で示される

2222n

Lxyn

mxyn

Lyyn

myyn

Lxxn

mxxnAe xxxxxxx (313)

なお2Ae の値は誤差の絶対量に対応するもので計測点の応力レベルが互いに大きく異なる場

注) ヤング率が異なる複数の岩相に対しいずれかの岩相のヤング率を基準とした比で示したヤング率

JAEA-Research 2010-011

- - 6

合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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- - 15

33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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- - 26

521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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- - 27

522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 12: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 6

合に計測点の重みも大きく異なり不正確な評価を与えるその場合はこれを水平面内応力の不

変量で正規化した残差二乗和2Re (相対的な誤差に対応するもの)に変換する(式 314)そして

全ての初期応力を測定した地点(総数 N )について求めた2Re の総和から不偏分散 RE を計算し(式

315)この RE が仮定した弾性定数の場合の解析誤差の指標と考えるとより正確である

2

22

2

n

Lyyn

Lxx

nAnR eexx

xx

(314)

n

nRR eNE x231 相対誤差の不偏分散 (315)

以下に示す解析では相対誤差の不偏分散とする程の計測点の応力レベルの相違がないため

式314で得た2Re によらず式315で

22AR ee とした絶対誤差の不偏分散 AE を用いるものとした

32 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 34km南北

30km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 321)

図 321 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

321 数値モデル

数値モデルは 6 面体要素で構成された 3 次元有限要素モデルとした計算を簡単とするため

評価領域内の月吉断層は無視しその不連続構造をとくにモデル化しなかった評価領域に対

図 322 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

全体モデル範囲

枠内実線で示す3 種の小領域はサブモデル

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

東濃鉱山を

含む小モデル

正馬様用地を

含む小モデル

左記両者を

含む中モデル

全体モデル サブモデル

1kmtimes1km 2kmtimes2km 3kmtimes34km

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- - 7

する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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- - 8

て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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- - 15

33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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- - 16

4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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- - 28

図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 13: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

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する要素分割は水平面内で南北東西方向とも 20m メッシュ鉛直方向はモデル幅を等しく

25 分割としたその結果要素数はモデル化領域全体で 637500接点数は 671500 となった

その他評価領域内には後述するモデルの大きさが及ぼす解析結果への影響の検討のためサ

ブモデルを 3 種類(東濃鉱山を含む小モデル正馬様用地を含む小モデルこれら双方を含む中

モデル)を考えたこれらは全体モデルから単純に切り出したもので要素分割は変えていない

評価領域の地質構造は堆積岩(被覆層)と土岐花崗岩に大別しその不整合面での土岐花崗

岩の風化帯は被覆層側に含めるものとしたさらに被覆層は深度増大による圧密進行を考慮し

た 2 層にまた土岐花崗岩は開口割れ目の閉塞による弾性定数の変化を考慮した 2 層にそれぞ

れ細分し合計 4 層の構造(表 321)から成るものと考えたここで各地質の物性値または

物性の大小関係は表 321 のとおりとしたなお本解析では弾性定数を解析パラメータとおき

誤差の最小となる解析ケースを探すためモデルに設定する弾性定数の値はモデル作成の段階で

は定義しないただし各岩相の弾性定数の間にある大小関係は表に示すとおりとした

表 321 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量

(103kgm3) ヤング率 大小関係

ポアソン比 大小関係

第Ⅰ層

瀬戸層群

瑞浪層群 生俵明世累層

18 1E 1

第Ⅱ層 瑞浪層群 土岐夾炭累層

19 12 EE 12

第Ⅲ層

土岐花崗岩

(深度約 300m 以浅)

26

深度増大に

伴って 1E か

ら 4E まで

線形的増加

13

第Ⅳ層

土岐花崗岩 (深度 300m 以深)

26 14 EE 34

322 弾性定数の大小関係

弾性定数の大小関係は正馬様用地で実施されたボーリング調査(MIU-1~3 号孔調査20))で

得られたボーリングコアの深度方向の RQD 変化(図 323)を踏まえて設定したこの図を見る

と深度約 200m 付近(表 321 の第Ⅲ層に該当)を中心とする領域と深度約 700m より深いと

ころ(同表の第Ⅳ層のうち深部側)で RQD が小さくそれぞれの領域で相対的に割れ目密度が

高いものと推測される

一方深部にある割れ目は大きな初期応力によって閉塞している可能性がありその場合ヤ

ング率の低下をもたらす影響は小さいことが知られている21)割れ目が閉塞する応力レベルは亀

裂のアスペクト比と亀裂周囲の物質のヤング率から計算される22)その計算によると花崗岩の

マイクロクラックが閉塞する応力レベル(数 10MPa23))ではより低い応力レベルで閉塞しは

じめる岩盤の巨視的な割れ目の方は既に閉塞していると考えることができるそこで岩盤の巨視

的な割れ目の閉塞する応力レベルは 5~15MPa 程度であると見積もられ前述した深度約 700m

より深い地点ではこれを初期応力が上回ることから割れ目は閉塞し結果そこでの弾性定数に

変化は少ないと考えられる以上の考察を踏まえ花崗岩のヤング率は第Ⅳ層では深度に対し

深度

(m)

深度

(m)

深度

(m)

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て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

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② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

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20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

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21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

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23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 14: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 8

て一様第Ⅲ層では深度に対して(初期応力増大に対して)第Ⅱ層の値から第Ⅳ層の値まで線形

的に増加するとした解析モデルを考えた

その他被覆層のヤング率は表 322 に示す物性試験の結果をみる限り第Ⅰ層と第Ⅱ層で

さほど変化しないと考えられるまた割れ目のヤング率低下を及ぼす影響について土岐花崗岩

ほど情報が無いことから第Ⅰ層と第Ⅱ層のヤング率は土岐花崗岩より小さな同じ値で深度に

対し一様であると簡単に仮定したポアソン比もよく分からないため簡単に同一の岩相内で一

様に同じ値(ただし土岐花崗岩<被覆層)と仮定した

図 323 正馬様用地でのボーリング調査で得られた RQD 変化

表 322 東濃鉱山正馬様用地で得られたボーリングコアの物性

地層岩相名 岩種 ヤング率

(GPa) ポアソン比

瑞浪層群(明世累層) 砂岩泥岩 262 030

瑞浪層群(土岐夾炭累層) 砂岩 237 030

土岐花崗岩 花崗岩 501 035

323 広域応力場の計算

計算は前述の有限要素モデルに対しボーリング孔(表 323 に示す 8 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)の結果を拘束条件として与え広域ひずみ場を求めるのに必要な

式 312 の ijc 最適解を逆解析により求める手順としたここで単位体積重量は表 321 に示し

た定数とするがヤング率とポアソン比は大小関係を示しつつもその値は未知としているので

最初にその具体的な値を確定するための予察的な逆解析を行なうものとした

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-10

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-2

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 200 400 600 800 1000

深度(m)

RQD値

MIU-3

RQ

D (

)

RQ

D (

)

RQ

D (

)

掘削深度(m)

掘削深度(m) 掘削深度(m)

JAEA-Research 2010-011

- - 9

① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

JAEA-Research 2010-011

- - 10

② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 15: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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① 弾性定数の同時評価

予察的な逆解析では中モデル(図 322)を用いて表 323 に示される全ての初期応力測定

結果を拘束条件として与えた逆解析を行ない解析結果の不偏分散 AE を求め AE を最小とする

比ヤング率( 4E を基準)とポアソン比の組合せを探した(図 324)この図を見ると 1041 EE

401 304 の組合せで AE が最小となっているこの弾性定数をボーリングコアで得られ

た値(表 322)と比較すると岩相間の大小関係およびコアに対する岩盤でのヤング率低減など

の点で矛盾しておらずよってこの値を用いて以後の解析を行なうことにした

表 323 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施場所 数値モデルに示した岩相別の初期応力測定地点数

第Ⅰ層 第Ⅱ層 第Ⅲ層 第Ⅳ層

1 TM-1 東濃鉱山 0 5 2 0

2 TM-2 東濃鉱山 0 6 4 0

3 98SE-01 東濃鉱山 0 4 6 0 4 99SE-02 東濃鉱山 0 7 4 0 5 00SE-03 東濃鉱山 0 0 9 0

6 AN-1 正馬様用地 0 0 0 15

7 MIU-2 正馬様用地 0 0 3 17

8 MIU-3 正馬様用地 0 0 0 8

図 324 比ヤング率およびポアソン比と不偏分散 AE の関係

AE

JAEA-Research 2010-011

- - 10

② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

JAEA-Research 2010-011

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

JAEA-Research 2010-011

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

JAEA-Research 2010-011

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

- - 32

④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

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予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

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岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 16: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 10

② サブモデルを用いた解析サイズの決定

全体モデルに対し同モデルの一部を切取ったサブモデル(東濃鉱山を含む小モデル等)を用

いて解析モデルのサイズが結果に及ぼす影響を検討したこれはモデルが小さすぎると地形

による影響が相対的に大きくなりモデルの外部境界で求められる広域ひずみが地形による局所

擾乱をうけた不適切なものとなる可能性があるため行なった検討である表 324 に検討結果を

示す検討では拘束条件として与える初期応力測定結果は同じとし解析モデルのサイズを変

化させた場合の相違を比較したここで相違とは逆解析で得られた広域ひずみを用いて任意地

点の局所応力を順解析した結果に認められる値の差である

この表によると拘束条件を同じとすればモデルサイズによる絶対誤差の不偏分散に相違はほ

とんど無く逆解析での最適解への収束性は同程度であることがわかるしかし東濃鉱山を含

む小モデルだけが拘束条件(東濃鉱山での初期応力測定結果)のある深度以深(約 300m 以深)

で他のモデルとは異なる結果を与えた(図 325)モデルが小さくて冒頭に述べた地形の擾乱が

現われやすいところに狭い範囲の拘束条件を与えたことで不適切な結果を与えている可能性が

考えられる以上のことから解析モデルはできるだけ大きなものが望ましいと考えて以後の

解析では全体モデルを用いるものとした

表 324 解析モデルのサイズによる影響

拘束条件 初期応力 測定数

モデル サイズ

絶対誤差の

不偏分散

AE (1013Pa2)比較結果

東濃鉱山で

の初期応力

測定結果 47 地点

東濃鉱山を含む小 059 小モデルの場合だけが他と異

なる結果を与える 中 060

全体 060 正馬様用地

での初期応

力測定結果 43 地点

正馬様用地を含む小 845 どのモデルも同様の結果を与

える 中 862

全体 830

③ 広域ひずみGij

図 322 の全体モデルと表 323 の全ての初期応力測定結果を用いた逆解析で得た広域ひずみGij の値は表 325 のとおりである

表 325 全体モデルで計算された広域ひずみ

Gxx

(μ) Gyy

(μ) Gxy

(μ)

絶対誤差の 不偏分散

AE (1013Pa2)

351 437 546 469 座標系は右手系 X (East) - Y (North) ndash Z (Vertical)

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 17: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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図 325 解析モデルサイズによる局所応力順解析の結果の相違

324 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得た広域ひずみ(表 325)を用いると順解析によりどの程度の精度で局所応力が推

定可能であるか検討した図 326-(1)は逆解析で拘束条件とした MIU-2 号孔の初期応力測定

結果が順解析によりどの程度再現できているかを確認したものであるこの図を見ると順解析

で計算した局所応力(L )は初期応力測定結果(

m )の平均的傾向を再現していることがわか

る初期応力測定結果は細かな局所的変動(ばらつき)を持っているが解析に用いた全体モデ

ル(図 322)がそこまで細かな地質の不均一性を表現しておらずこの程度の近似に留まったこ

とはむしろ妥当であると考えられる以上のことから用いているモデルと逆解析で得た広域ひ

ずみは概ね妥当であると考えた

次にこの妥当なモデルと広域ひずみを用いて任意地点である MIZ-1 号孔 16)位置(図 327)

の局所応力の予測精度を確認した(図 326-(2))MIZ-1 号孔においても初期応力測定が行われ

ているがその結果を逆解析に用いていない点が MIU-2 号孔での検討と異なっているこの図

をみると拘束条件として用いていない初期応力測定結果( )であるにも関わらず順解析で

計算した局所応力(L )はその平均的傾向を予測していることが注目に値するその推定誤差

は 469(1013Pa2)で広域ひずみの 523(1013Pa2)と同程度であり誤差は拡大していない以上

のことから本手法による局所応力の推定は良好に行われていると言える

応力 (MPa)

深度

(m

)

小モデル

中モデル

全体モデル

LxxL

yy Lxy

この深度より深いところで

だけが他と異なる値を示す

東濃鉱山での初期応力測定結果を与えた場合

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

- - 32

④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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5) Worotnicki G Walton R J ldquoTriaxial hollow inclusion gauges for determination of

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16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

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JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

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21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 18: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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図 327 瑞浪超深地層研究所用地と MIZ-1 号孔研究坑道の位置(原子力機構 200724)に加筆)

MIZ-1 号孔

瑞浪超深地層研究所

研究坑道

(2 つの立坑)

孔跡

掘削深度

250m 以深

で斜向し

ている

応力 (MPa) 応力 (MPa)

深度

(m

)

深度

(m

)

図 326-(1) 拘束条件とした初期応力測定

結果の順解析による再現性

図 326-(2) 拘束条件としない初期応力測定

結果の順解析による予測

LxxLyyLxy

xx

yy

xy

拘束条件としない初期応力測定結果

LxxLyyLxy

mxxmyymxy

拘束条件に用いた初期応力測定結果

全体モデル MIU-2 号孔位置 全体モデル MIZ-1 号孔位置

JAEA-Research 2010-011

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

JAEA-Research 2010-011

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

JAEA-Research 2010-011

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

JAEA-Research 2010-011

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

JAEA-Research 2010-011

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 19: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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② 瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置での推定

前項で本手法による局所応力の推定が良好であると認められたので瑞浪超深地層研究所の

研究坑道とその周辺(以下研究所用地図 327)の局所応力を得ることにした図 328 に研

究坑道位置(2 本の立坑を含む領域)における局所応力の深度に対する変化を示すこの図を見

ると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧

縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されている最後に図 329 に全体モデル

の等深度面を用いて局所応力の全容を示すここで岩相は色分けでまた局所応力は代表成分と

して HS (線分長が HS 値線分方向が HS 方向)を用いて示した HS の値と方向は同一岩相内で

概ね一定であるが比ヤング率の大きな深層側の岩相ほど HS 値が大きくまた岩相境界で HS 方

向が回転することが予測されているこれら予測結果の妥当性は今後行なわれる研究坑道から

の応力測定などにより検証されるべきと考えている

図 328 研究坑道位置の推定局所応力

HS

hS

水平面内の最大(圧縮)主応力

水平面内の最小(圧縮)主応力

HS 水平面内の最大(圧縮)主応力

最大(圧縮)主応力方向 N から反時計回りの方位角(度)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

被覆層

(第ⅠⅡ層)

土岐花崗岩

(第ⅢⅣ層)

SH Sh

SH

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 20: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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(a) 標高 200m (立坑深度 09m)

(b) 標高 100m (立坑深度 1009m)

(c) 標高 0m (立坑深度 2009m)

(d) 標高 -200m (立坑深度 4009m)

(e) 標高 -400m (立坑深度 6009m)

図 329 全体モデルに計算された局所応力の分布

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

正場様用地

N

研究所用地

研究坑道

JAEA-Research 2010-011

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 21: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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33 まとめ

数値モデルに与える岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する広域応力場評価のための解析手

法を検討したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結

果を用いた逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られ

た広域応力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定され

る初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたさらにここで未知数とした岩盤

の弾性定数はこれをパラメータとおく順解析から得られる再現誤差(計算局所応力と拘束条件

である初期応力測定結果の残差二乗和より計算した不偏分散)の最小化探索により決定できるこ

とが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置の初期応力状態を推定する

と岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の境界で水平面内最大(圧縮)

主応力 HS の方向が大きく変化することが予測されたこれら予測結果の妥当性を研究坑道位

置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題と考えられる

JAEA-Research 2010-011

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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- - 22

図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

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査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

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査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

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予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

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岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 22: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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4 地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価

広域的な岩盤初期応力(以下広域応力)が発生する原因は岩盤の自重による鉛直方向の圧

縮(土被り圧)とこれによる側方への弾性的膨張(量はポアソン比で示される)が拘束されて

発生する側圧が考えられるまたこの他に地殻運動(広域的な外力)によるもの(例えば日

本列島では太平洋プレートの沈み込みによる概ね東西方向の圧縮など)があると考えられるそ

のため広域応力は両方が重なった結果であると考えるのが妥当と言えるそこで広域応力が

このような成因で成り立つものと考えたモデルによる広域応力の評価手法を開発した

41 評価手法の概要

411 成因を踏まえた広域応力の表現

岩盤の自重による鉛直方向の弾性的な圧縮( gh )とそれに伴う側方膨張( gh 1 )の

拘束による側圧の発生を考慮した広域応力は式 411 で示される25)

ghzz 0 ghyyxx

1

00 (411)

ここで 0ij は広域応力(座標系は X-Y-Z 系で Z 軸を鉛直におく) は密度 gは重力加速度

hは土被り は岩盤のポアソン比をそれぞれ表しているまた肩文字0は広域応力であるこ

と添字 ijは応力成分を表し gh は土被り圧と呼ばれる値である

式 411 は自重以外による水平応力の発生を考慮しておらず原位置で測定される初期応力と

大きく異なることが多いそこで自重以外による水平応力 ijS の寄与分を式 411 に足し合わせ

た式 412 が考えられる26)

)(0 ghS ijijij (412)

ところで図 411 は日本における原位置初期応力の測定結果に対し側圧係数(水平応力

鉛直応力比)の深度分布を示したものであるここで式 411 の広域応力の場合側圧係数を

求めると 1 でありその意味するところは側圧係数が深度と関係なく一定で 1 より小さいこ

となので(岩盤の は 03 程度)図 411 の測定結果とは全く一致しないことが分かるそこで

その一致しない差異が式 412 で補足した ijS の寄与分であると考えると ijS は深度方向に一定

な成分と深度の増加によって急速に小さくなる成分からなるものと考えられる

図 411 日本国内の側圧係数の深度分布と ijS の寄与(駒田ほか 200327)に加筆)

0ijS の寄与のうち

深度方向に

一定な成分

自重による寄与

0ijS の寄与のうち

深度の増加で

急速に小さくなる成分

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

- - 32

④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

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23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

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Publishing Co St Paul 472 (1976)

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に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 23: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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これを踏まえて ijS を書き直すと式 413 となる

)()(0 ghghkah

bS ijijijij

(413)

本解析では式 413 を用い広域応力を記述するものとしたなお式中の各記号は以下のよう

な意味を持っている

0

00

00

0

00

0

0

zz

yyyx

xyxx

ij

広域応力である 後述する逆解析で水圧破砕法の計測データを入力とすることから同手

法では計測されない鉛直面内せん断力は 0 と仮定している

000

0

0

yyyx

xyxx

ij SS

SS

S 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度方向に一定な成分

000

0

0

yyyx

xyxx

ij kk

kk

k 水平方向の応力のうち自重以外によるもので深度の増加で急速に小

さくなる(すなわち非線形な変化を与える)成分 定数 ba と深度を示す変数 hで非線形性の度合いを示す

100

010

001

ij 水平方向の応力のうち自重によるもの 式 411 に相当

42 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため例題として概ね正馬様用地を中心とする東西 32km南北

24km深度方向は地表からの深さ約 1km までの領域を対象とする広域応力場の評価を行なった

(図 421)

図 421 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

421 数値モデル

数値モデルは逆解析と順解析で異なるものを用いた計測データから広域応力場を得る逆解

析では 3 次元境界要素モデル(BEM Boundary Element Method)としたまた得られた広

域応力場の検証のために計測データを再現する順解析では 3 次元有限差分モデル(FDM Finite

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

正馬様用地

モデル化範囲

瑞浪超深地層研究所

東濃鉱山

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Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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- - 20

xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

JAEA-Research 2010-011

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

- - 32

④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

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- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

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engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 24: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 18

Difference Method)とした境界要素モデルでは仮想応力法(FSM Fictitious Stress Method)

要素を用いて地表と岩相境界を表現しまた月吉断層は変位くい違い法(DDM Discontinuous

Displacement Method)のジョイント要素で表現したここで要素分割は標準が 1 辺 200m の

矩形計測データを与える地点の周囲(モデルの中央部)のみ密とした 1 辺 100m の矩形に設定

した図 422 に逆解析用の 3 次元境界要素モデルを示す一方3 次元有限差分モデルは280160

要素301704 接点で作成し逆解析で得られた広域応力場をモデルの外部境界に与えて内部の

応力分布を計算した図 423 に順解析用の有限差分モデルを示すここで断層が 2 面あるが

逆解析同様に月吉断層だけの場合を基本とし666 断層は順解析で示される MIZ-1 号孔におけ

る計測データの再現性がMIZ-1 号孔内で確認された断層をモデル化することでどの程度向上す

るのかを検討する目的で追加したものである(詳細は後述)

評価領域の地質構造は逆解析順解析の両方のモデルとも堆積岩から成る被覆層が土岐花

崗岩を覆った 2 層構造に単純化した各地質の物性値は表 421 の値を用いるものとし被覆層

の物性値は明世累層の値で代表させたまた月吉断層の断層面の剛性は表 422 の値とした

予察的に行なった解析では断層面の剛性が逆解析で得られる広域応力の値にあまり影響を与えな

かったことからその値として良い収束性が得られるかなり小さめの値を選ぶものとした一方

順解析での断層面の剛性は計算される局所応力への影響が予想されるため実測された物性値を

参考として決めた値とした

図 422 広域応力場を評価する 3 次元境界要素モデル(逆解析)

図 423 広域応力から局所応力を評価する 3 次元有限差分モデル(順解析)

地表面(仮想応力法要素)

岩相境界面(仮想応力法要素)

被覆層を 1 層とし土岐花崗岩との境界のみモデル化

月吉断層 (変位くい違い法要素)

被覆層 土岐花崗岩

モデル化した断層

JAEA-Research 2010-011

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

JAEA-Research 2010-011

- - 20

xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

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Vol103 pp9-15 (1987)

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予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 25: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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表 421 数値モデルに設定した地質物性(逆解析順解析)

岩相 密度

(103kgm3) ヤング率

(GPa) ポアソン比

被覆層(明世累層) 184 221 030

土岐花崗岩 256 501 035

表 422 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

解析モデル 垂直剛性 nk (GPam) せん断剛性 sk (GPam)

逆解析 0010 0010

順解析 0050 0050

422 広域応力場の計算

計算は前述の境界要素モデルに対しボーリング孔(表 423 に示す 9 孔)で実施した原位

置初期応力測定(水圧破砕法)および採取コアを用いた室内試験による初期応力測定(AEDRA

法)の結果を拘束条件として与え式 413 で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk を逆解析に

より求める手順とした具体的にはijS と ijk を未知数とし6 地点以上の計測データを用いて 6

本以上の観測方程式を作り(∵ijS と ijk の 0 成分と対称性から独立未知数は 6 個)未知数の最適

解を計算する観測方程式は式 421 で示されるなおこの最適解の計算には Beer and Watson

の方法を用いた28)

観測方程式で左辺のmixx は位置 iにおいて得られた計測データの xx 成分を表している計測

が n地点で行われている場合 ni ~1 であるここで肩文字mは計測値を意味している右辺

第 1 項のマトリックスは右辺第 2 項に示される 9 つのパラメータ( xyxx kS ~ )のうち1 つを

単位量としたときの左辺に与える影響係数である例えばSxxixx は位置 iにおける xxS のみ 1 で

ある場合の xx 成分を表しているこれらの影響係数は数値モデル(境界要素モデル)に依存し

て決まる値であり逆解析の前に予め計算しておくまた式 413 の ba はシンプレックス法

を用いて近似値を得ておく(今回は 18126904 ba であった)

計測データとして表423を与えた場合の逆解析の結果を表424に示すこの表の値は式413

で広域応力場を求めるのに必要なijS と ijk である

表 423 逆解析で与える計測データの数と実施ボーリング孔号名

No ボーリング孔号名 実施した初期応力測定 初期応力測定地点数

水圧破砕法 AE 法 DRA 法

1 98SE-01 水圧破砕法AE法 10 6 0 2 99SE-02 水圧破砕法AE 法 12 14 0 3 00SE-03 水圧破砕法 10 0 0 4 AN-1 水圧破砕法 16 0 0 5 MIU-1 AE法DRA法 0 10 10 6 MIU-2 水圧破砕法AE法DRA法 20 23 35 7 MIU-3 水圧破砕法AE法DRA法 9 19 19 8 TM-1 水圧破砕法AE法 7 1 0 9 TM-2 水圧破砕法AE法 10 2 0

鉛直応力のみ算定水圧破砕法は原位置測定AE 法と DRA 法は採取コアを用いた室内試験

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xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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mechanismrdquo Proc of Int Workshop on Rock Stress Measurement at Great Depth

pp46-51 (1995)

11) Stickland F D Ren N K ldquoUse of differential strain curve analysis in predicting the

in-situ stress state for deep wellsrdquo Proc of 21st US Symp on Rock Mech Rolla

pp523-532 (1980)

12) 菅原勝彦 亀岡美友 斉藤敏明 岡行俊 平松良雄 ldquoコアディスキング現象に関する研究rdquo 日本

工業会誌 Vol94 No1089 pp797-803 (1978)

13) Sakurai S Shimizu N ldquoInitial Stress back analyzed from displacements due to

undergrounds excavationsrdquo Proc of Int Symp on Rock Stress and Rock Stress

Measurements Stockholm pp679-686 (1986)

14) Jang H K Sugawara K ldquoMacro rock stress measurement at the Kamaishi districtrdquo

Proc of the Korea-Japan Joint Symp on Rock Engineering Seoul pp207-215 (1996)

15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 26: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 20

xy

yy

xx

xy

yy

xx

kxynxy

kyynxy

kxxnxy

zznxy

yynxy

xxnxy

Sxynxy

Syynxy

Sxxnxy

kxynyy

Sxxnyy

kxynxx

Sxxnxx

kxynxy

Sxxnxy

kxyixx

Sxxixx

kxyixy

Sxxixy

kxyiyy

Sxxiyy

kxyixx

kyyixx

kxxixx

zzixx

yyixx

xxixx

Sxyixx

Syyixx

Sxxixx

mnxy

mnyy

mnxx

mnxy

mixx

mixy

miyy

mixx

k

k

k

S

S

S

1

1

1

11

11

1

1

(421)

表 424 境界要素モデルで計算された広域応力場を決めるパラメータ xxS (MPa)

yyS (MPa)

xyS (MPa) xxk yyk xyk

199 345 -0755 0778 0674 -0168

座標系は右手系 X (East) - Y (North) - Z (Vertical)

423 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

逆解析で得られる広域応力(表 424)を用いた局所応力の計算結果を図 424 に示す図 424

の左は有限差分モデルを用いた順解析で MIU-2 号孔の位置での局所応力を再現したものである

一方右は広域応力を求める逆解析で拘束条件の一つとした MIU-2 号孔の初期応力測定結果で

あるそれぞれ応力成分は水平面内の主応力( HS hS )と鉛直応力 VS で示した

図 424 広域応力より計算した局所応力と実測値の比較(拘束条件を与えた MIU-2 号孔位置)

応力 (MPa)

mij 拘束条件に用いた実測値

VSHS

hS

応力 (MPa)

VSHS

hS

Lij 計算した局所応力

高 (

m)

高 (

m)

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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- - 25

352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 27: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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図 424 を見ると計算した局所応力は実測値の平均的な傾向を再現したものであることがわ

かるしかし計算された局所応力では標高約-200m で交差する月吉断層の影響を大きく受け

て交差深度より深部側で hS ≒ HS ≒ VS となっており一方このような応力変化は実測値にお

いては認められない前述のとおり逆解析で得られる広域応力は断層にあまり影響されないこと

からその後の順解析の際に用いた有限差分モデルが断層の影響を正確に再現できていないもの

と考えられる

② MIZ-1 号孔位置での推定と順解析モデルの改良

前項で本手法による局所応力の推定は断層による影響の再現性にやや問題があるものの平

均的な傾向を得ることはできると認められたので拘束条件として用いていない任意地点の局所

応力を推定することにしたその例として最初に月吉断層だけを含む有限差分モデルを用いて

MIZ-1 号孔 16)位置(図 326)の局所応力を計算したまたその後に得られた同孔での初期応

力測定結果を実測値として示すその結果を図 425 に示すこの図を見ると計算した局所応

力は深度の比較的浅いところでは実測値の平均的な傾向を示したが深度約 500m より深部で実

測値から離れる傾向が認められる

MIZ-1 号孔の調査では深度 666m と 969m(標高約 470m と約 770m)でボーリング孔と交差

する主要な断層が認められた 24)その断層の位置を図 425 に破線で示すと断層との交差深度

より深部側で計算した局所応力と実測値の一致性が低下するように見える前項でみたように断

層は局所応力の計算結果に影響を与えるため深度約 500m より深部で実測値から離れる傾向は

これら断層をモデル化しなかったことによる可能性が高いそこで一つの断層をモデル化するこ

とで局所応力の計算結果がどの程度改善されるのかを見るために月吉断層に加えて浅層側の

666 断層一つをモデル化した場合の局所応力を再計算したその結果を図 426 に示す

図 425 任意地点 MIZ-1 号孔位置での局所応力と実測値の比較

応力 (MPa)応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

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図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

JAEA-Research 2010-011

- - 30

図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

JAEA-Research 2010-011

- - 31

を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

- - 32

④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 28: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 22

図 426 666 断層をモデル化した場合の MIZ-1 号孔位置での局所応力

図 426 を見ると以前は深度方向の変化がほぼ単調な線形で示されていたものが666 断層

をモデル化したことで非線形な変化を表せるようになり実測値へのフィットが改善されている

ことがわかるまた666 断層一つのモデル化でこの程度改善されることから969 断層をさら

に追加すればより一層の改善が図られるものと予想されるただしモデルの複雑化は計算効率

の低下を招くためどの程度まで断層をモデル化すべきであるかが残された課題と考えられる

43 まとめ

地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた広域応力場評価のための解析手法を検討

したその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用い

た逆解析(境界要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限差分法)として行うと実際に測定される初期応力

の変化の平均的傾向を再現できることが示された広域応力場の同定において逆解析モデルに含

まれる断層の影響は少ないことに比べ局所応力の計算において順解析モデルに含まれる断層の

影響は比較的大きいものと推測されたそこで MIZ-1 号孔を例題とするとMIZ-1 号孔と交差す

る主要な断層のモデル化の有無が初期応力の再現精度に大きく影響を及ぼすことが示された順

解析における断層の適切なモデル化が本手法における今後の課題と考えられる

応力 (MPa)

高 (

m)

高 (

m)

断層との

交差深度

666 断層

969 断層

666 断層

969 断層

HS hS

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

ij 逆解析と独立な実測値

Lij 計算した局所応力

応力 (MPa)

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- - 23

5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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7) 坂口清敏 尾原祐三 中山智晴 菅原勝彦 ldquo円錐孔底ひずみ法の応力測定精度rdquo 資源と素材

Vol108 pp455-460 (1992)

8) 金川忠 林正夫 仲左博裕 ldquo岩石における地圧成分の Acoustic Emission による推定の試みrdquo 土

木学会論文報告集 Vol258 pp63-75 (1977)

9) 松木浩二 ldquo岩石の非弾性ひずみ回復を用いた三次元地圧計測法の理論的検討rdquo 資源と素材

Vol108 pp41-45 (1992)

10 ) Yamamoto K ldquoThe rock property of in-situ stress memory Discussions on its

mechanismrdquo Proc of Int Workshop on Rock Stress Measurement at Great Depth

pp46-51 (1995)

11) Stickland F D Ren N K ldquoUse of differential strain curve analysis in predicting the

in-situ stress state for deep wellsrdquo Proc of 21st US Symp on Rock Mech Rolla

pp523-532 (1980)

12) 菅原勝彦 亀岡美友 斉藤敏明 岡行俊 平松良雄 ldquoコアディスキング現象に関する研究rdquo 日本

工業会誌 Vol94 No1089 pp797-803 (1978)

13) Sakurai S Shimizu N ldquoInitial Stress back analyzed from displacements due to

undergrounds excavationsrdquo Proc of Int Symp on Rock Stress and Rock Stress

Measurements Stockholm pp679-686 (1986)

14) Jang H K Sugawara K ldquoMacro rock stress measurement at the Kamaishi districtrdquo

Proc of the Korea-Japan Joint Symp on Rock Engineering Seoul pp207-215 (1996)

15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 29: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 23

5 数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価

広域応力場の評価を目的に作成した数値モデルは評価対象領域を実際の岩盤環境から切り離

したものなので実際の現象を精度良く再現するための適切な境界条件を与えることが必要であ

るまた計算機の制約などによる数値モデルの精密さと大きさの上限があるため例えば超深

地層研究所計画の調査研究の対象地域に含まれる月吉断層のように比較的大規模な断層構造

は数値モデルを貫通する断層面として表現せざるを得ないこのような断層面の挙動は数値モデ

ル全体に影響を及ぼすため断層面の挙動の評価精度が数値モデル全体の評価精度を決めてしま

うそこで断層面の応力状態の把握と滑り判定を考慮した広域応力場の評価手法を開発した

51 評価手法の概要

511 数値モデルを貫通する断層面

大規模断層は例えば図 511 に示すような数値モデルを貫通した断層面で示されるこ

の断層面は仮想的な外部境界を持つ(数値モデルの上面との交線は地表に相当するが他の側面

と底面との 3 交線は仮想的な外部境界である)外部境界があることの影響は図中の点線円内

に及ぶ29)そのため外部境界に変位を与えて断層面の応力状態を計算する場合この点線円内

での値は信頼性に欠けると考えられるしたがって目的とする評価領域がこの点線円外の領域

(図中のハッチング部)に収まるよう初めに数値モデルの大きさを決めなければならない

図 511 数値モデルを貫通する断層面と評価可能領域(ハッチング部)

断層面の結合条件は最も単純な Goodman のジョイント要素30)で表現することを考えたこ

れは断層の両面を図 512 のように断層面に垂直および平行なバネにより弾性結合したモデル

であるここで簡単のためにバネ強さ(ばね係数 nK sK )の異方性は無く方向に拠らず一

定であると仮定した

図 512 断層面の弾性結合モデル

図 512 のように弾性結合した断層面の応力と変位の関係は式 511 で示されまた断層面に

平行な方向の合せん断応力と変位ベクトルは式 512 の と で示されるここで簡単のため

に座標系は断層面の走向と傾斜方向に 2 軸を一致させた局所座標系( ZYX -- )を用い変

位はその座標系に基づく( wv u )を用いている(図 513)または変位が断層面での相

対変位であることを示している

wkvkuk nnsysx (511)

2222 vuyx (512)

k n k s

JAEA-Research 2010-011

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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- - 27

522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

JAEA-Research 2010-011

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 30: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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図 513 断層面においた局所座標系と数値モデル全体の座標系

断層面の滑り条件は最も単純な Coulomb 条件(粘着力 0 とする)を考えたすなわち断

層面での相対変位を解析により得た後式 511 の n と式 512 の を求めて図 514 のよう

なグラフにプロットし(記号)境界面の摩擦係数 i に対応する直線 ni (すなわち粘着

力 0 の Coulomb 条件)より上にある場合滑りが発生すると考えた

図 514 断層面の滑り判定

512 断層面を考慮した広域応力の与え方31)

広域応力場におかれた状況を再現するため数値モデルの外部境界(地表に相当する上面を除

いた図 515 の Sで示される 5 面)で広域応力場により発生する変位を与えるこの変位は

数値モデルの断層面より下部の岩体では鉛直ひずみ z が深度の一次関数その他ひずみ成分が

位置によって変わらないとする条件(式 513)を満たす関数の中で最も簡単なもの(式 514)

で与えたなおこれらの式は図 515 に示した全体座標系を用いている

図 515 数値モデルの外部境界( S)と内部領域( I )の設定

n

n 1

n 2n 3

この図の例では断層面の

摩擦係数μ3では滑らない

がμ2 が滑る滑らない

の境界μ1では滑る

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352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

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521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 31: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 25

352

7641

2

aaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(513)

276

54

321

zazaw

zayav

zayaxau

s

s

s

(514)

次に数値モデルの断層面より上部の岩体では断層面で相対変位が発生すること(断層面の

上部岩体と下部岩体で変形モードが異なること)を再現するため下部岩体の式 513 と 514

を若干修正した式 513 と 514 を用いて外部境界の変位を与えるものとした

22019181716

15141312

111098

zazayaxaaw

zayaxaav

zayaxaau

s

s

s

(515)

171118151310

2019149

2

aaaaaa

zaaaa

zxyzxy

zyx

(516)

52 東濃地域を対象とした評価

本手法の適用性を検討するため概ね東濃鉱山を中心とする東西 99 km南北 96 km深度

方向は標高 -1000 m(地表からの最大深さ約 15 km)までの領域を対象とする広域応力場の評

価を行なった(図 521)なお前述 511 で述べたモデル全体を貫通する断層の影響のため

局所応力を評価可能な領域はモデル全体のごく一部と考えた(図521の局所応力評価可能領域)

図 521 広域応力場評価のためのモデル化領域(地質図は糸魚川 198019)に加筆)

瀬戸層群

瑞浪層群

土岐花崗岩

濃飛流紋岩類

美濃帯堆積岩類

断層

瑞浪超深地層研究所

正馬様用地

モデル化範囲

東濃鉱山

局所応力評価可能領域

JAEA-Research 2010-011

- - 26

521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

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- - 27

522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

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- - 29

M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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- - 30

図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

JAEA-Research 2010-011

- - 31

を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

- - 32

④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

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21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

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Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

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engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 32: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 26

521 数値モデル

数値モデルは 2 次のアイソパラメトリック要素(ジョイント要素を含む)で構成された 3 次元

有限要素モデルとした評価領域内の月吉断層は前述したジョイント要素を用いて数値モデ

ルを貫通する断層面で表現した評価領域に対する要素分割は広域応力場の逆解析に対する入

力計測データを与えるボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)と月吉断層の近傍で密に

分割し数値モデルの外部境界側で粗く分割したその結果要素数は通常要素が 2548ジョ

イント要素が 182節点数は中間節点を含めて 12556 となった(図 522)

図 522 広域応力場評価のための 3 次元有限要素モデル

評価領域の地質構造は堆積岩から成る被覆層が土岐花崗岩を覆った二層構造に単純化した

各地質の物性値は表 521 の値を用いるものとしこのうち被覆層の物性値は同表に示された 2

種類の岩相の平均値を用いたまた月吉断層の断層面の剛性( 0nk と 0sk 値総称して 0k 添

字 0 は標準設定値であることを示す)は表 522 の値を仮定したこれは月吉断層を貫くボ

ーリング孔(MIU-23 号孔)の調査結果から断層厚と断層内の弾性波速度(P 波)の健岩部に

対する低下率を求めそれを踏まえて推定した値であるなお解析では仮定した剛性値を用

いるほか表 522 に併記した 11 段階の低減係数( 0kk )を乗じたものを解析ケースとして設

定した

表 521 数値モデルに設定した地質物性

岩相 単位体積重量 (103kgm3)

ヤング率 (GPa)

ポアソン比

明世累層 184 262 0300

土岐夾炭累層 190 191 0318

被覆層(上記平均) 187 227 0309

土岐花崗岩 256 501 0350

表 522 数値モデルに設定した月吉断層の剛性

岩相 垂直剛性 0nk (GPam) せん断剛性 0sk (GPam)

被覆層 00884 00328

土岐花崗岩 195 0724

0 kk注) 005 01 015 02 025 03 04 05 06 07 1

注)各剛性値に低減係数をかけたものをそれぞれ解析ケースとした

土岐花崗岩

堆積岩 岩相を区分せず一様で表現

MIZ-1 号孔

98SE01 号孔

月吉断層

MIU-2 号孔

JAEA-Research 2010-011

- - 27

522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

JAEA-Research 2010-011

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 33: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 27

522 広域応力場の計算

計算手順は前述の数値モデルに対しボーリング孔(98SE01MIU-2MIZ-1 号孔)で水

圧破砕法によって測定された初期応力値(以下計測値)を拘束条件に与え逆解析によって外

部境界面の変位すなわち広域応力場によってもたらされる変位を求める具体的には式 513

と 515 に含まれる 20 個の影響係数 2021 aaa を未知数とし20 地点以上の個数の計測値を用

いて観測方程式を作り未知数の最適解を計算するなお観測方程式は式 521 で示される 31)

SgS

gI

S

I

FF

F

u

u

KK

KK

2221

1211 0 (521)

ここで ijk は剛性マトリックスを表し通常要素とジョイント要素の寄与分を足し合わせたも

のである SI uu は接点変位であり添字 SI は数値モデルの内部接点か外部境界の接点かを示

している(添字の意味は以下同様)また gSgI FF は重力による接点力 SI FF は外力(すな

わち広域応力場)による接点力を示し前述のとおり広域応力場は外部境界においてのみ考える

ので 0IF である

表 523 は逆解析に与える計測値を得たボーリング孔の一覧であるまた図 523-(a) (b)は

その計測値の深度に対する変化を示したものである計測値は水圧破砕法によるものであること

から完全な 3 次元成分ではなく ENNE の測定 3 成分と推定土被り圧 V の計 4 成分で示

されている(座標系は E東‐N北‐V鉛直上向き)この図を見ると計測値は深度の変化に対

して細かな変化が認められるが前述した数値モデルは単純な 2 層地質構造としたことからそこ

まで細かな表現は無理と予想されるそこで逆解析に与える計測データとして実際の値を単

純に線形近似したもの(以下入力値図中の破線で示す)を考えた

表 523 逆解析で与える計測値の数とそれを採取したボーリング孔

No ボーリング

孔号名 実施した初期応力測定

測定地点数 被覆層 土岐花崗岩

1 98SE-01 水圧破砕法

2 4 2 MIU-2 0 5 3 MIZ-1 0 5

図 523-(a) 計測値を線形近似して作成した入力値

計測データ

入力データ

計測データ

入力データ

(被覆層)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

標高

(m

)

初期応力 (MPa) 初期応力 (MPa)

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図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

JAEA-Research 2010-011

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

JAEA-Research 2010-011

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 34: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 28

図 523-(b) 計測値を線形近似して作成した入力値

523 解析結果と検討

① 局所応力の推定精度

局所応力の推定精度を検討するため逆解析で得られた影響係数 2021 aaa から外部境界変位

を求めこれを数値モデルに境界条件として与える順解析を行なったそして逆解析に与えた

計測値mij を順解析で計算された局所応力

Lij がどの程度再現しているのか検討したなお逆解析

順解析とも月吉断層が滑っていると考える根拠がなかったので簡単として月吉断層は滑らな

い(弾性結合している)ことを仮定した

まず仮定した月吉断層の剛性が局所応力の推定精度に及ぼす影響を検討した図 524 は計

測値mij と同地点に計算された局所応力

Lij の相違(式 522 で示される残差誤差 me で表すここ

でM は測定地点数)が仮定した剛性 0 kk に対しどのように変化するかを示している

図 524 計測値に対する計算された局所応力の残差誤差 me

計測データ

入力データ(被覆層)

(土岐花崗岩)

標高

(m

)

初期応力 (MPa)

断層モデル化なし

3 孔実測値で逆解析

MIZ-1 除く 2 孔実測値で逆解析

JAEA-Research 2010-011

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M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

JAEA-Research 2010-011

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

JAEA-Research 2010-011

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

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22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

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23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

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28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 35: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 29

M

e m ij

Lij

mij

m

2

(522)

この図を見ると 0 kk の値が 0 に近いと誤差が大きく02 より大きければ誤差はほぼ一定と

なることがわかるすなわち断層剛性を極端に小さくした計算を行なうと局所応力の推定精度

が悪化することを示している

同図には比較として断層を無視(数値モデルにジョイント要素を組込まない)場合および

逆解析に与える計測値mij の調査数(ただし調査孔単位)を少なくした場合の誤差をそれぞれ

併記しているそれによると断層を無視した場合の誤差が最も大きくまた計測値として

98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔に加えMIZ-1 号孔を追加して逆解析を行なうとかえって誤差が

大きくなることがわかる前者は与えている計測値が月吉断層の影響を受けていることを意味す

ると考えられるまた後者は計測値の調査数を数多く逆解析に与えるほど一般には計測誤差が

相殺されると期待できる半面数値モデルの出来によっては増加する拘束条件にフィットせず解

の収束性が悪くなる例を示したと考えられる

さて図 524による検討では局所応力の推定精度が最良となるのは 0 kk =02かつ 98SE-01

MIU-2 号孔の 2 孔の計測データを逆解析に与えた場合と認められたこの場合の計測値mij と局

所応力Lij による再現結果の比較を図 525 に示す

図 525 計測値と計算された局所応力によるその再現性

この図を見ると98SE-01 号孔の EN で再現性が悪いがその他では概ね良好に計測値を再現

していることがわかるそこで同条件の下で任意地点として研究坑道位置の初期応力を推定し

た(図 526)その結果をみると E に大きな引張力が生じる地下深部としては不合理な値が

得られており98SE-01MIU-2 号孔の 2 孔の計測値だけを逆解析に与える場合はこれら 2 孔

からやや離れている研究坑道位置の初期応力を推定することは無理であったと考えられるそこ

で以下では残差誤差 me が最小でないことを承知の上2 孔に MIZ-1 号孔を加えた 3 孔の計測

値を逆解析に与える場合について検討する

98SE-01 号孔での再現結果 MIU-2 号孔での再現結果

測定値 mij

Lij

測定値 mij

Lij

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(被覆層)

(土岐花崗岩)

(月吉断層)

初期応力 (MPa)初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m

)

JAEA-Research 2010-011

- - 30

図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

JAEA-Research 2010-011

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

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6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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- - 35

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Publishing Co St Paul 472 (1976)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 36: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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図 526 研究坑道位置の推定局所応力

図 527 月吉断層の断層面に計算されるせん断応力垂直応力比

② 月吉断層の滑りに関する検討

月吉断層が滑らず弾性結合していると仮定した点が妥当であるか検討を行なった図527は

月吉断層の断層面のせん断応力垂直応力比( n 比)の分布を示しているここで実際の

月吉断層は平面ではないが分かり易いようこの図は断層面を東西鉛直面に投影してあるま

た断層面の位置の目安として計測値を与えたボーリング孔 3 本の位置を同様に投影した分布

研究坑道位置の予測結果

(被覆層)

(土岐花崗岩)

初期応力 (MPa)

標高

(m

)

標高

(m)

標高

(m)

西larr rarr東 西larr rarr東

西larr rarr東

標高

(m

)

98SE-01位置

MIU-2位置

MIZ-1位置

が 08 超

等 n 比線n が引張

凡例

0 kk =02

0 kk =05

0 kk =03

JAEA-Research 2010-011

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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14) Jang H K Sugawara K ldquoMacro rock stress measurement at the Kamaishi districtrdquo

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15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

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19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

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岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

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Publishing Co St Paul 472 (1976)

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に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 37: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

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を示すにあたり異なる断層面の剛性について示すものとし図 524 による検討で 3 孔の計測

値を与える場合の残差誤差 me が比較的良いと認められた 0 kk =02 03 05 の場合を選んだ

この図をみると 0 kk =05 の場合標高約-350m より深部において断層面に垂直な引張応

力が計算されており地下深部における状況として不合理な値が得られているしたがって 0 kk=05 の設定は不適切と考えられる次に 0 kk =03 の場合MIZ-1 号孔付近を中心として n 比が 08 を超えているByerlee32)は n が 200MPa 以下において岩盤不連続面の摩擦係数は平均

で 085 であるとした仮に月吉断層の摩擦係数がこの程度であれば少なくとも逆解析で求めた

広域応力場の下ではMIZ-1 号孔付近を中心として月吉断層が滑っている可能性が高いことを示

している最後に 0 kk =02 の場合Byerlee の摩擦係数では断層面に滑りが発生せず月吉断

層が滑っている証拠のない現実と整合的である以上のことから 0 kk =02 とすることが最も

合理的な局所応力の推定結果を与えるものと考えられるまたこのことから 0k 値(表 522)

を決める根拠としたボーリング調査の結果は大局的な月吉断層の状況よりも断層の厚みを薄く

剛性を大きく与えるものであった可能性が考えられる

③ 断層の滑りを考慮した解析手法

月吉断層に対する検討では現実と整合する滑りが発生しない場合の断層面に一様な剛性

0 kk =02 を見つけることができたしかし一般に岩盤の不均一性を考慮すると断層の剛性も

不均一と考えることのほうが自然であり解析において剛性が一様と仮定することが無理の場合

前述の方法では解が得られない可能性が考えられるそこで逆解析された広域応力の下で計算

した断層面のある地点の局所応力が滑り条件(図 514)を満たした場合その地点だけ断層の剛

性を滑らなくなるまで低減させ広域応力および局所応力を再計算する手法が考えられるそし

てこの計算を繰り返すと結果として不均一な断層剛性の最適分布が得られるものと期待され

る図 528 にこの考え方に基づく解析の手順の概要を示すなおこの手順による解析は式

521 の剛性マトリックスを計算途中で大きく変えるため最適解に収束しない可能性が比較的高

いそのため現段階では予察として小さな単純形状の概念的モデルを用いた収束性の検討を行

なっている 31)東濃地域など実規模モデルへの適用性の検討は今後の課題である

図 528 断層剛性の最適分布を得るための解析手順の概要

断層剛性を初期値とおいたモデルの作成

逆解析による広域応力場(影響係数)の決定

順解析による局所変位の計算

断層面の滑り判定

滑り状態にある位置の断層剛性を低減

剛性マトリックス修正

局所応力の計算

滑り判定が収束

滑り判定が未収束

おわり

計測値の 再現誤差 が収束

計測値の 再現誤差 が未収束

はじめ

JAEA-Research 2010-011

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④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

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24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 38: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 32

④ 評価領域内の主応力分布

解析で計算された局所応力を用いて図 521 の評価可能領域における標高 200m~-600m 領

域の主応力分布を求めたものを図 529 に示すこの図は評価可能領域に含まれる全ての応力評

価地点の主応力方向を重ねて書いたもので評価可能領域における局所応力のばらつきと標高に

対する平均的変化を示しているこの図をみると最大(圧縮)主応力 1 1

脚注)の方向は深度が

大きくなる(標高が低くなる)と概ね水平な NW-SE 方向から伏角が約 50 度の EW 方向に向き

を変えることがわかるまた浅部では鉛直方向にあり土被り圧に相当すると考えられる 3 の方

向が深部になると伏角が約 30 度の NE-SW 方向に向きを変えている全体として主応力軸は 3

次元的に回転し鉛直方向の応力(土被り圧)が主応力と一致しなくなることが示された

図 529 評価可能領域内の全主応力と深度に対する主応力方向の変化傾向

53 まとめ

数値モデルに含まれる大規模断層の影響を考慮した広域応力場評価のための解析手法を検討し

たその結果本手法によれば地表からのボーリング孔の掘削による初期応力測定結果を用いた

逆解析(有限要素法)により広域応力場を同定できることが示されたまた得られた広域応

力場における局所応力の計算を順解析(有限要素法)として行なうと実際に測定される初期応

力をある程度まで再現できることが示されたさらに局所応力を用いて数値モデル内の大規模

断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当性を検討することができたまたこ

れを拡張し断層の剛性が不均一な場合の剛性を計算によって推定する手順について考察した

計算された局所応力は東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15kmtimes3km の領域におけ

る平均的な主応力の軸方向が深度増加に伴って回転しそのうち 1 の方向は浅部で概ね水平な

NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW 方向に移動することを予測したこれ

ら予測結果の妥当性を研究坑道位置で実施する応力測定などにより検証することが今後の課題

と考えられる

注)本報告書では正値の応力を引張応力としたので最も大きな圧縮応力は最小値(負値)で示されるしかし岩盤初期応力を示す際の慣例に倣ってここでは最大圧縮のものを最大主応力 1 と呼称した

N

E

S

W

等角下半球投影

ステレオ図

1

3

2月吉断層の剛性 0 kk =02 標高 200m~-600m

矢印は深度増加に

ともなう回転方向

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

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15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

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JAEA-Research 2010-011

- - 35

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Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

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25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

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30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

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31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 39: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 33

6 結言

本研究ではおよそ数 km 四方の領域に含まれる任意地点の初期応力状態をその位置とは異

なる点で測定された初期応力値を入力とする数値計算により予測する手法を検討した検討では

例題として東濃地域を取り上げたはじめに超深地層研究所計画でのローカルスケールにほぼ

相当する大きさの数値モデルを作成しそのモデル内に含まれる地点で測定された初期応力値を

拘束条件とする逆解析を行なった続いて逆解析で得られた広域応力広域ひずみを境界条件

とする順解析を行い任意地点の初期応力状態を計算するものとしたまた数値モデルは岩

盤の弾性定数の不均一性に着目したもの広域応力の水平成分の非線形性に着目したもの大規

模断層の滑りなどに着目したもの合計 3 種類を考えてその各々の計算結果を検討した

はじめに 3 章では数値モデルの岩盤の弾性定数を逆解析と同時に評価する解析手法を検討し

たその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行なうと

実際に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた岩盤の弾性

定数が未知であってもその大小関係が仮定できればこれをパラメータとおく再現誤差の最小

化探索により決定できることが示された本手法を用いて瑞浪超深地層研究所の研究坑道位置

の初期応力状態を推定すると岩相の境界で応力の値が変化すること土岐花崗岩とその被覆層の

境界で水平面内最大(圧縮)主応力 HS の方向が大きく変化することが予測された

つづいて 4 章では地殻運動による水平応力が深度方向に非線形と考えた解析手法を検討した

その結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計算を行うと実際

に測定された初期応力の変化の平均的傾向を再現できることが示されたまた断層のモデル化

の相違の及ぼす影響は逆解析の結果には少ないが順解析では比較的大きい実例としてMIZ-1

号孔における主要な断層のモデル化の有無が計算される初期応力に及ぼす影響を示した本解析

手法においては順解析のための断層の適切なモデル化が課題と考えられた

最後に 5 章では数値モデルに含まれる大規模断層の影響(断層の滑りなど)を考慮した解析

手法を検討したその結果本手法によれば広域応力場を同定できこれを用いた局所応力の計

算を行うと実際に測定される初期応力をある程度まで再現できることが示されたまた局所

応力を用いて数値モデル内の大規模断層面の滑り判定を行ない断層面に仮定した剛性値の妥当

性を検討することができた本手法を用いて東濃鉱山正馬様用地研究所用地を含む約 15km

times3km の領域における平均的な主応力方向を求めると主応力軸が深度増加に伴って回転しそ

のうち 1 の方向は浅部で概ね水平な NW-SE 方向にあるものが深部では伏角約 50 度程度の EW

方向に移動することが予測された

以上 3 種類の解析手法により予測された初期応力分布の妥当性は今後研究坑道位置で実施

する初期応力測定などの調査により検証する予定である

JAEA-Research 2010-011

- - 34

参考文献 1) 菅原勝彦 ldquo岩盤応力測定に関する研究の動向rdquo 資源と素材 Vol225 pp834-844 (1998)

2) Fairhurst C ldquoMeasurement of in-situ rock stresses with particular reference to hydraulic

fracturingrdquo Rock Mech Eng Geol Vol2 pp129-147 (1964)

3) 佐久間彰三 菊地慎二 中村哲也 水田義明 ldquoダブルフラクチャリング法による 3 次元応力場の

決定rdquo 土木学会論文集 448Ⅲ-19 pp9-18 (1992)

4) Suzuki K ldquoTheory and practice of rock stress measurement by borehole deformation

methodrdquo Int Symp on the Determination of Stresses in Rock Masses Lisbon pp173-182

(1969)

5) Worotnicki G Walton R J ldquoTriaxial hollow inclusion gauges for determination of

rockstresses in-siturdquo Supplement to Proc of ISRM Symp on Investigation of Stress in

Rock Advances in Stress Measurement Sydney Suppl pp1-8 (1976)

6) Sugawara K Obara Y ldquoMeasurement of In-situ Rock Stress by Hemispherical-ended

Borehole Techniquerdquo Int J Mining Sci and Tech Vol3 pp287-300 (1986)

7) 坂口清敏 尾原祐三 中山智晴 菅原勝彦 ldquo円錐孔底ひずみ法の応力測定精度rdquo 資源と素材

Vol108 pp455-460 (1992)

8) 金川忠 林正夫 仲左博裕 ldquo岩石における地圧成分の Acoustic Emission による推定の試みrdquo 土

木学会論文報告集 Vol258 pp63-75 (1977)

9) 松木浩二 ldquo岩石の非弾性ひずみ回復を用いた三次元地圧計測法の理論的検討rdquo 資源と素材

Vol108 pp41-45 (1992)

10 ) Yamamoto K ldquoThe rock property of in-situ stress memory Discussions on its

mechanismrdquo Proc of Int Workshop on Rock Stress Measurement at Great Depth

pp46-51 (1995)

11) Stickland F D Ren N K ldquoUse of differential strain curve analysis in predicting the

in-situ stress state for deep wellsrdquo Proc of 21st US Symp on Rock Mech Rolla

pp523-532 (1980)

12) 菅原勝彦 亀岡美友 斉藤敏明 岡行俊 平松良雄 ldquoコアディスキング現象に関する研究rdquo 日本

工業会誌 Vol94 No1089 pp797-803 (1978)

13) Sakurai S Shimizu N ldquoInitial Stress back analyzed from displacements due to

undergrounds excavationsrdquo Proc of Int Symp on Rock Stress and Rock Stress

Measurements Stockholm pp679-686 (1986)

14) Jang H K Sugawara K ldquoMacro rock stress measurement at the Kamaishi districtrdquo

Proc of the Korea-Japan Joint Symp on Rock Engineering Seoul pp207-215 (1996)

15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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Page 40: JAEA-Research 2010-011 · 2013. 2. 25. · ii JAEA-Research 2010-011 Determination of Regional Stress State for Estimating Local Stress State (Contract Research) Yoshiaki MIZUTA*1,

JAEA-Research 2010-011

- - 34

参考文献 1) 菅原勝彦 ldquo岩盤応力測定に関する研究の動向rdquo 資源と素材 Vol225 pp834-844 (1998)

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3) 佐久間彰三 菊地慎二 中村哲也 水田義明 ldquoダブルフラクチャリング法による 3 次元応力場の

決定rdquo 土木学会論文集 448Ⅲ-19 pp9-18 (1992)

4) Suzuki K ldquoTheory and practice of rock stress measurement by borehole deformation

methodrdquo Int Symp on the Determination of Stresses in Rock Masses Lisbon pp173-182

(1969)

5) Worotnicki G Walton R J ldquoTriaxial hollow inclusion gauges for determination of

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Rock Advances in Stress Measurement Sydney Suppl pp1-8 (1976)

6) Sugawara K Obara Y ldquoMeasurement of In-situ Rock Stress by Hemispherical-ended

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7) 坂口清敏 尾原祐三 中山智晴 菅原勝彦 ldquo円錐孔底ひずみ法の応力測定精度rdquo 資源と素材

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8) 金川忠 林正夫 仲左博裕 ldquo岩石における地圧成分の Acoustic Emission による推定の試みrdquo 土

木学会論文報告集 Vol258 pp63-75 (1977)

9) 松木浩二 ldquo岩石の非弾性ひずみ回復を用いた三次元地圧計測法の理論的検討rdquo 資源と素材

Vol108 pp41-45 (1992)

10 ) Yamamoto K ldquoThe rock property of in-situ stress memory Discussions on its

mechanismrdquo Proc of Int Workshop on Rock Stress Measurement at Great Depth

pp46-51 (1995)

11) Stickland F D Ren N K ldquoUse of differential strain curve analysis in predicting the

in-situ stress state for deep wellsrdquo Proc of 21st US Symp on Rock Mech Rolla

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12) 菅原勝彦 亀岡美友 斉藤敏明 岡行俊 平松良雄 ldquoコアディスキング現象に関する研究rdquo 日本

工業会誌 Vol94 No1089 pp797-803 (1978)

13) Sakurai S Shimizu N ldquoInitial Stress back analyzed from displacements due to

undergrounds excavationsrdquo Proc of Int Symp on Rock Stress and Rock Stress

Measurements Stockholm pp679-686 (1986)

14) Jang H K Sugawara K ldquoMacro rock stress measurement at the Kamaishi districtrdquo

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15) 地震予知総合研究振興会 ldquo日本の地殻水平歪1985~1993 年(1987)

16) 平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)MIZ-1 号孔における岩盤力学調査rdquo JAEA-Research 2009-031 (2009)

17)平野享 中間茂雄 山田淳夫 瀬野康弘 佐藤稔紀 ldquo超深地層研究所計画(岩盤力学に関する調

査研究)深度 100m における岩盤力学ボーリング調査rdquo JAEA-Research 2010-002 (2010)

18) 金子勝比古 中村直昭 尾原祐三 伊藤耕介 米田哲郎 加藤昌治 ldquo鳥形山地域の広域的応力状

態の推定rdquo 資源と素材 Vol116 pp572-576 (2000)

19) 糸魚川淳二 ldquo瑞浪地域の地質rdquo 瑞浪市化石博物館専報 第 1 号 pp1-50 (1980)

JAEA-Research 2010-011

- - 35

20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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JAEA-Research 2010-011

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20) 松井裕哉 前田信行 吉川和夫 ldquoMIU-3 号孔における力学特性調査結果及び正馬様用地におけ

る土岐花崗岩体の岩盤力学的概念モデルrdquo JNC TN7420 2001-001 (2000)

21) 金子勝比古 柴拓海 大見美智人 ldquoクラック理論に基づく岩盤のヤング率の評価rdquo 日本鉱業会

誌 Vol104 pp863-870 (1988)

22) Walsh J B ldquoThe effect of cracks on the uniaxial elastic compressionrdquo J Geophys Res

Vol70 pp381-389 (1965)

23) 金子勝比古 村田健司 柴拓海 大見美智人 ldquo花崗岩の弾性率とその評価rdquo 日本鉱業会誌

Vol103 pp9-15 (1987)

24) 三枝博光 瀬野康弘 中間茂雄 鶴田忠彦 ほか ldquo超深地層研究所計画における地表からの調査

予測研究段階(第 1 段階)研究成果報告書rdquo JAEA-Research 2007-043 (2007)

25) 水田義明 城戸利夫 加藤幸夫 加藤春實 新宮和喜 堀之口賢二 藤井伸一郎 木村信彦 ldquo局所

岩盤応力測定結果からの広域応力場の決定rdquo 資源素材 97 AⅣ-10 pp142-145 (1997)

26) 水田義明 大西康智 土井隆史 ldquo地殻応力と地層境界を考慮に入れた境界要素法による残壁安

定性解析rdquo 資源素材 99 A2-11 pp60-63 (1999)

27) 駒田広也 河西基 ldquo連載講座 放射性廃棄物の処分 第 2 回 高レベル放射性廃棄物の地層処分に

関連するわが国の地質環境rdquo 日本原子力学会誌 Vol45 No11 pp55-66 (2003)

28) Beer G Watson J O ldquoIntroduction to finite and boundary element methods for

engineersrdquo John Wiley amp Sons Ltd (1992)

29) 木村直樹 松木浩二 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo不均一岩体の広域応力場評価法rdquo 資源と素材

Vol119 pp655-662 (2003)

30) Goodman R E ldquoMethods in Geological Engineering in Discontinuous Rocksrdquo West

Publishing Co St Paul 472 (1976)

31) 松木浩二 内藤徳人 加藤俊樹 中間茂雄 佐藤稔紀 ldquo断層の影響を考慮した広域応力場評価法

に関する研究rdquo 資源と素材 Vol121 pp564-575 (2005)

32) Byerlee J ldquoFriction of Rocksrdquo Pure and Applied Geophysics Vol116 pp615-626 (1978)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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  国国際際単単位位系系((SSII))

乗数  接頭語 記号 乗数  接頭語 記号

1024 ヨ タ Y 10-1 デ シ d1021 ゼ タ Z 10-2 セ ン チ c1018 エ ク サ E 10-3 ミ リ m1015 ペ タ P 10-6 マイクロ micro1012 テ ラ T 10-9 ナ ノ n109 ギ ガ G 10-12 ピ コ p106 メ ガ M 10-15 フェムト f103 キ ロ k 10-18 ア ト a102 ヘ ク ト h 10-21 ゼ プ ト z101 デ カ da 10-24 ヨ ク ト y

表5SI 接頭語

名称 記号 SI 単位による値

分 min 1 min=60s時 h 1h =60 min=3600 s日 d 1 d=24 h=86 400 s度 deg 1deg=(π180) rad分 rsquo 1rsquo=(160)deg=(π10800) rad秒 rdquo 1rdquo=(160)rsquo=(π648000) rad

ヘクタール ha 1ha=1hm2=104m2

リットル Ll 1L=11=1dm3=103cm3=10-3m3

トン t 1t=103 kg

表6SIに属さないがSIと併用される単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

電 子 ボ ル ト eV 1eV=1602 176 53(14)times10-19Jダ ル ト ン Da 1Da=1660 538 86(28)times10-27kg統一原子質量単位 u 1u=1 Da天 文 単 位 ua 1ua=1495 978 706 91(6)times1011m

表7SIに属さないがSIと併用される単位でSI単位で表される数値が実験的に得られるもの

名称 記号 SI 単位で表される数値

キ ュ リ ー Ci 1 Ci=37times1010Bqレ ン ト ゲ ン R 1 R = 258times10-4Ckgラ ド rad 1 rad=1cGy=10-2Gyレ ム rem 1 rem=1 cSv=10-2Svガ ン マ γ 1γ=1 nT=10-9Tフ ェ ル ミ 1フェルミ=1 fm=10-15mメートル系カラット 1メートル系カラット = 200 mg = 2times10-4kgト ル Torr 1 Torr = (101 325760) Pa標 準 大 気 圧 atm 1 atm = 101 325 Pa

1cal=41858J(「15」カロリー)41868J(「IT」カロリー)4184J(「熱化学」カロリー)

ミ ク ロ ン micro 1 micro =1microm=10-6m

表10SIに属さないその他の単位の例

カ ロ リ ー cal

(a)SI接頭語は固有の名称と記号を持つ組立単位と組み合わせても使用できるしかし接頭語を付した単位はもはや コヒーレントではない(b)ラジアンとステラジアンは数字の1に対する単位の特別な名称で量についての情報をつたえるために使われる

 実際には使用する時には記号rad及びsrが用いられるが習慣として組立単位としての記号である数字の1は明 示されない(c)測光学ではステラジアンという名称と記号srを単位の表し方の中にそのまま維持している

(d)ヘルツは周期現象についてのみベクレルは放射性核種の統計的過程についてのみ使用される

(e)セルシウス度はケルビンの特別な名称でセルシウス温度を表すために使用されるセルシウス度とケルビンの

  単位の大きさは同一であるしたがって温度差や温度間隔を表す数値はどちらの単位で表しても同じである

(f)放射性核種の放射能(activity referred to a radionuclide)はしばしば誤った用語でrdquoradioactivityrdquoと記される

(g)単位シーベルト(PV200270205)についてはCIPM勧告2(CI-2002)を参照

(c)3元系のCGS単位系とSIでは直接比較できないため等号「   」

   は対応関係を示すものである

(a)量濃度(amount concentration)は臨床化学の分野では物質濃度

  (substance concentration)ともよばれる(b)これらは無次元量あるいは次元1をもつ量であるがそのこと   を表す単位記号である数字の1は通常は表記しない

名称 記号SI 基本単位による

表し方

粘 度 パスカル秒 Pa s m-1 kg s-1

力 の モ ー メ ン ト ニュートンメートル N m m2 kg s-2

表 面 張 力 ニュートン毎メートル Nm kg s-2

角 速 度 ラジアン毎秒 rads m m-1 s-1=s-1

角 加 速 度 ラジアン毎秒毎秒 rads2 m m-1 s-2=s-2

熱 流 密 度 放 射 照 度 ワット毎平方メートル Wm2 kg s-3

熱 容 量 エ ン ト ロ ピ ー ジュール毎ケルビン JK m2 kg s-2 K-1

比熱容量比エントロピー ジュール毎キログラム毎ケルビン J(kg K) m2 s-2 K-1

比 エ ネ ル ギ ー ジュール毎キログラム Jkg m2 s-2

熱 伝 導 率 ワット毎メートル毎ケルビン W(m K) m kg s-3 K-1

体 積 エ ネ ル ギ ー ジュール毎立方メートル Jm3 m-1 kg s-2

電 界 の 強 さ ボルト毎メートル Vm m kg s-3 A-1

電 荷 密 度 クーロン毎立方メートル Cm3 m-3 sA表 面 電 荷 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA電 束 密 度 電 気 変 位 クーロン毎平方メートル Cm2 m-2 sA誘 電 率 ファラド毎メートル Fm m-3 kg-1 s4 A2

透 磁 率 ヘンリー毎メートル Hm m kg s-2 A-2

モ ル エ ネ ル ギ ー ジュール毎モル Jmol m2 kg s-2 mol-1

モルエントロピー モル熱容量ジュール毎モル毎ケルビン J(mol K) m2 kg s-2 K-1 mol-1

照射線量(X線及びγ線) クーロン毎キログラム Ckg kg-1 sA吸 収 線 量 率 グレイ毎秒 Gys m2 s-3

放 射 強 度 ワット毎ステラジアン Wsr m4 m-2 kg s-3=m2 kg s-3

放 射 輝 度 ワット毎平方メートル毎ステラジアン W(m2 sr) m2 m-2 kg s-3=kg s-3

酵 素 活 性 濃 度 カタール毎立方メートル katm3 m-3 s-1 mol

表4単位の中に固有の名称と記号を含むSI組立単位の例

組立量SI 組立単位

名称 記号面 積 平方メートル m2

体 積 立法メートル m3

速 さ 速 度 メートル毎秒 ms加 速 度 メートル毎秒毎秒 ms2

波 数 毎メートル m-1

密 度 質 量 密 度 キログラム毎立方メートル kgm3

面 積 密 度 キログラム毎平方メートル kgm2

比 体 積 立方メートル毎キログラム m3kg電 流 密 度 アンペア毎平方メートル Am2

磁 界 の 強 さ アンペア毎メートル Am量 濃 度 (a) 濃 度 モル毎立方メートル molm3

質 量 濃 度 キログラム毎立法メートル kgm3

輝 度 カンデラ毎平方メートル cdm2

屈 折 率 (b) (数字の) 1 1比 透 磁 率 (b) (数字の) 1 1

組立量SI 基本単位

表2基本単位を用いて表されるSI組立単位の例

名称 記号他のSI単位による

表し方SI基本単位による

表し方平 面 角 ラジアン(b) rad 1(b) mm立 体 角 ステラジアン(b) sr(c) 1(b) m2m2

周 波 数 ヘルツ(d) Hz s-1

力 ニュートン N m kg s-2

圧 力 応 力 パスカル Pa Nm2 m-1 kg s-2

エ ネ ル ギ ー 仕 事 熱 量 ジュール J N m m2 kg s-2

仕 事 率 工 率 放 射 束 ワット W Js m2 kg s-3

電 荷 電 気 量 クーロン C s A電 位 差 ( 電 圧 ) 起 電 力 ボルト V WA m2 kg s-3 A-1

静 電 容 量 ファラド F CV m-2 kg-1 s4 A2

電 気 抵 抗 オーム Ω VA m2 kg s-3 A-2

コ ン ダ ク タ ン ス ジーメンス S AV m-2 kg-1 s3 A2

磁 束 ウエーバ Wb Vs m2 kg s-2 A-1

磁 束 密 度 テスラ T Wbm2 kg s-2 A-1

イ ン ダ ク タ ン ス ヘンリー H WbA m2 kg s-2 A-2

セ ル シ ウ ス 温 度 セルシウス度(e) K光 束 ルーメン lm cd sr(c) cd照 度 ルクス lx lmm2 m-2 cd放射性核種の放射能( f ) ベクレル(d) Bq s-1

吸収線量 比エネルギー分与カーマ

グレイ Gy Jkg m2 s-2

線量当量 周辺線量当量 方向

性線量当量 個人線量当量シーベルト(g) Sv Jkg m2 s-2

酸 素 活 性 カタール kat s-1 mol

表3固有の名称と記号で表されるSI組立単位SI 組立単位

組立量

名称 記号 SI 単位で表される数値

バ ー ル bar 1bar=01MPa=100kPa=105Pa水銀柱ミリメートル mmHg 1mmHg=133322Paオングストローム Å 1Å=01nm=100pm=10-10m海 里 M 1M=1852mバ ー ン b 1b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2

ノ ッ ト kn 1kn=(18523600)msネ ー パ Npベ ル B

デ ジ ベ ル dB

表8SIに属さないがSIと併用されるその他の単位

SI単位との数値的な関係は    対数量の定義に依存

名称 記号

長 さ メ ー ト ル m質 量 キログラム kg時 間 秒 s電 流 ア ン ペ ア A熱力学温度 ケ ル ビ ン K物 質 量 モ ル mol光 度 カ ン デ ラ cd

基本量SI 基本単位

表1SI 基本単位

名称 記号 SI 単位で表される数値

エ ル グ erg 1 erg=10-7 Jダ イ ン dyn 1 dyn=10-5Nポ ア ズ P 1 P=1 dyn s cm-2=01Pa sス ト ー ク ス St 1 St =1cm2 s-1=10-4m2 s-1

ス チ ル ブ sb 1 sb =1cd cm-2=104cd m-2

フ ォ ト ph 1 ph=1cd sr cm-2 104lxガ ル Gal 1 Gal =1cm s-2=10-2ms-2

マ ク ス ウ ェ ル Mx 1 Mx = 1G cm2=10-8Wbガ ウ ス G 1 G =1Mx cm-2 =10-4Tエルステッド( c ) Oe 1 Oe  (1034π)A m-1

表9固有の名称をもつCGS組立単位

(第8版2006年改訂)

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