14
Keysight MIMOの基礎と MIMO受信機の性能試験 アプリケーション・ノート Tx0 Tx1 Rx0 BS Array Boresight MS/UE Array Boresight LOS Rx1 Cluster n+1 Θ n, AoD Θ n, AoA Θ n+1, AoA Cluster n Path n+1 Path n Θ n, AoD σ n, AoD σ n, AoA

Keysight MIMOの基礎と MIMO受信機の性能試験literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5991-0671JAJP.pdf · Keysight MIMOの基礎と MIMO受信機の性能試験 アプリケーション・ノート

  • Upload
    dothu

  • View
    252

  • Download
    1

Embed Size (px)

Citation preview

KeysightMIMOの基礎とMIMO受信機の性能試験アプリケーション・ノート

Tx0

Tx1

Rx0

BS Array Boresight

MS/UE Array Boresight

LOS

Rx1

Cluster n+1

Θn, AoD

Θn, AoA

Θn+1, AoA

Cluster n

Path n+1

Path n

Θn, AoD

σn, AoD

σn, AoA

2

目 次

はじめに .................................................................................................................................. 3

1. MIMOの基礎 ...................................................................................................................... 3

1.1  MIMOとは一体何か? どうしてデータ容量が増えるのか1.2  MIMOの通信性能に影響を及ぼすアンテナ・デザイン

1.3  MIMOの原理

2. 現実環境におけるMIMOの劣化要因 : アンテナ側の因子と環境因子 ...................................... 5

2.1  ノイズとアンテナ間相関

2.2  アンテナ間相関とアンテナの各種パラメータ、電波の到来方向分布とAngular Spread

3. アンテナの性能を含めた測定方法 ........................................................................................ 8

3.1  マルチ・プローブ・アンテナを使用したMIMO-OTAテスト手法3.2  キーサイト・テクノロジーの測定器を使った場合3.3  事前にアンテナの性能を測定しておく、2-ステージ法3.4  キーサイト・テクノロジーの測定器を使った場合3.5  反響チャンバを使用した方法

3.6  キーサイト・テクノロジーの測定器を使った場合

まとめ ................................................................................................................................... 14

3

はじめに

 LTEやWiMAXをはじめ、RF帯での高速無線通信において無くてはならないキーテクノロジーとなったMIMO。テクノロジー自体が市場で使用されるようになったのは、2006年初頭のIEEE802.11nの台頭までさかのぼります。しかし、各種要素を最適化し、無線通信が利用される環境やアンテナの特性・筐体のデザイン等に大きく左右されるこのテクノロジーの性能を引き出すのはいまだに難しいようです。

 本稿では、これからMIMOを使用する端末の開発に関わるエンジニアを対象に、MIMOの原理と、MIMOを現実世界で適用するときにキーとなるアンテナ環境について基本的な考え方を示します。端末全体のMIMO性能を引き出すために、“アンテナ環境”として何に留意すべきかについて述べ、最後にMIMO端末の性能測定手法として、3GPPで議論されているOTA測定を含むいくつかの方法について触れます。

1. MIMOの基礎

1.1 MIMOとは一体何か? どうしてデータ容量が増えるのか

 MIMOとは、Multi-Input Multi-Outputの略で、送受信に多数のアンテナを使う通信形態です。その原理を一言で述べると下記のようになります(図1)

1.  複数の送信アンテナから同時刻に、同じ周波数で、異なるデータを送信します。それぞれのアンテナから送信されたデータは空間を通って受信アンテナに到着するが、受信アンテナ端では複数の送信データが混合されてしまいます。通常このままでは受信した信号から送信データを読み解くことはできません。

2.  しかし、伝搬チャネルによってどのような信号の混合が行われたかを推定し、混合された送信データを数学的に分離することが可能です。こうすれば、あたかもそれぞれのアンテナ間をケーブルでつないだかの様に複数の独立した送受信を行うことができます。

 1対だったアンテナを2対、N対と増やすことで、理想的にはN倍のスループットを得ようと言うのがMIMOのコンセプトです。しかしながら、現実問題としてアンテナをN対用意して、MIMOをサポートするチップセットを買ってきてつなげても、いきなり通信容量が最大になることはありません。

図1: MIMOとは

送信

送信

送信

送信

受信

受信

伝播チャネル伝播チャネル

↓推定

劣化キャンセル

受信

受信

4

1.2 MIMOの通信性能に影響を及ぼすアンテナ・デザイン

 MIMOの通信性能を低下させるファクタは様々です。たとえば、MIMOでは伝搬チャネルを推定すると書きましたが、チャネルの推定アルゴリズムによって推定誤差は異なります。またアナログ-RFのデザインによっても、もちろん性能に影響が出ます。RFの送受信パスが複数系統に増えるため、その間のリーケージ等が問題になることがあります。つまりチップセットを変えるとMIMOの性能は変わると言うことです。

 MIMOで特徴的なのは、チップセットを変えなくても、アンテナ環境によっても大きく影響を受ける点です。従来通信のように、ある程度以上のS/Nが確保されているというだけでは、高いスループットは期待できません。後述しますが、電波の到来方向の角度広がりが大きく取れるかどうかと言った伝搬環境や、アンテナの構成、筐体の影響も非常に大きいです。

 以上の様に、MIMOは今後のキーテクノロジーとして必要不可欠ですが、その性能をきちんと評価し一定の効果を得るのはそれほど簡単なことではありません。

 実際に、MIMO通信を行ったときに、どのような劣化が起きるかという本稿の本論は次章に回すことにして、ここでは、MIMOのベーシックコンセプトを定義から振り返ります。具体的には送信アンテナからのデータを受信端で推定するために、送信データを伝達チャネルと受信を使って計算する方法(連立方程式を解く)と、伝達チャネルについて簡単に触れます。ご存知の方は次章“現実環境におけるMIMOの劣化要因”から読んでいただいても構いません。

 なお、簡単に2x2のMIMOのケースを例にとって説明しますが、NxNの高次のMIMOでも本質的には変わりません。

1.3 MIMOの原理

 MIMOの基本的なコンセプトは、連立方程式です。このことを図を用いて簡単に説明します。

 送信アンテナ①、②、受信アンテナ①、②を用意し、それぞれの送信アンテナからの送信データをs1、s2とおきます。

 送信されたデータは図1左側のように複雑な伝達チャネルを通って受信端にたどり着くが、これを図2のように4つの伝達関数h11~h22でモデル化します。受信データr1,r2は送信データs1,s2にそれぞれの伝達関数がかかったものなので、下記のように書くことができます(式1)

 Sを対角行列にするなど工夫することで、Hの推定はさらに簡単になります。実際、無線LAN・WiMAX・LTE等の各規格ではその様な方法を取っています。

 上述のようにMIMOとは基本的には連立方程式です。したがってMIMOの性能を引き出すアンテナ環境とは、この連立方程式が立てやすい/解きやすいアンテナ環境であると言えます。それはどのような環境か、キーワードはノイズと相関です。

 したがって、h11~h22が既知であれば、受信データr1、r2から送信データを割り出すには、式1をs1、s2の連立方程式としておきます。

 ここで伝達チャネルh11~h22をあらかじめ知っておくことが必要ですが、これは上記とよく似たコンセプトで求めることができます。すなわち、あらかじめ受信側にとって既知のデータを送って受信データを既知の送信データで割ればよいのです。たとえば、2回送信を行い、一回目の送信をs11、s12、受信をr11、r12、二回目の送信をs21、s22、受信をr21、r22等と置くと、下記のように求めることができます(式 2)。

h11

h22

h12

h21

Tx Rx d0,d1,d2,d3`...

s1=d0, d2, ...

s2=d1, d3, ...

r1

r2

d0,d1,d2,d3`...

図2: MIMOの原理

式1

式2より

5

図3: 理想環境下でのMIMO 

図4: ノイズがあると…

式3

2. 現実環境におけるMIMOの劣化要因 : アンテナ側の因子と環境因子

 ここでは実際の環境でMIMOの通信を張った時、本質的に避けられない要因としてノイズと相関を取り扱い、両者がどのように関わっているかを説明します。

 また、アンテナ間相関が高い状態では高い通信容量は望めないが、アンテナ間相関を低くするにはどのようなアンテナ・筐体の設計を行う必要があるのか、さらにその様に設計した端末を試験するにあたって、どのような環境を再現する必要があるのかについて説明します。

2.1 ノイズとアンテナ間相関 :

 前章では伝搬チャネルHが分かっていれば、未知数である送信データs1、s2は連立方程式(式1)を解くことで求めることができると述べました。これは、s1、s2をx、yとする平面上で図3のように書くことができます。これはノイズが無くH-1が容易に定義できる理想的な環境下での話しで、実際にはシステムには必ずノイズが乗ります。式1は3のようになります。

 ノイズ成分は切片および傾きでの誤差要因として働くため、求められるs1、s2にも同様に誤差が生まれます。(図4)

h11 s1 + h12 s2 = r1

h21 s1 + h22 s2 = r2

s1

s2(S1,S2)

h11 s1 + h12 s2 +n1= r1

h21 s1 + h22 s2 +n2= r2

s1

s2(S1,S2)

6

 さらにMIMOのシステムではアンテナ間相関というファクタを考慮する必要があります。アンテナ間相関とは、2つのアンテナがどれだけ似通った電波を受け取るかという指標です。アンテナ間相関が1のとき2つのアンテナは全く同じ電波を受け取る事になります。たとえば、基地局と端末が非常に離れており、かつ端末の周りには何もない見通し環境等では、端末側の2つのアンテナのアンテナ間相関は非常に高くなります。この場合、たとえば図3ではh11=h21、h12=h22という状況が構築されます。この状況では、図3でいう2直線の傾きが同じ(h11/h12=h21/h22)になるため、式1の連立方程式の解が無くなります。

 ノイズ・相関の2つのファクタを同時に考えてみましょう。相関が低い状況では2直線の傾きが大きく異なるためノイズが乗ってもそれほど誤差は多くなりませんが(図5上側)、相関が高い状況では2直線の傾きが似通っており、ノイズが乗ると一気に推定したい送信データの所在が分からなくなります(図5下側)。このように、アンテナ間相関が高いと、一定のノイズ環境でもMIMOの伝送が難しくなる事がわかります。

 図6に基地局のアンテナ間相関をβ、端末のアンテナ間相関をαとした時にシャノン限界がα・βによってどのように変わるかを示します。αまたはβが0.3以下であればMIMOによる通信容量拡大が十分達成できているのが分かります。

理想的なMIMO通信環境 ノイズ環境下でのMIMO

相関環境下でのMIMO ノイズと相関環境下でのMIMO

図5: MIMOにおけるノイズと相関

図6: 相関とシャノン限界

h11

h22

h12

h21

送信アンテナ間Correlation=β

受信アンテナ間Correlation=α

Uncorrelated

Correlated

Loss fromCorrelations

SNR (dB)0

0

2

4

6

8

10

α=0 β=0α=0.95 β=0α=0.95 β=0.95α=0.3 β=0.3α=1 β=1

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

Capa

city

(bps

/Hz)

h11

h22

h12

h21

7

図7: アンテナ間距離 vs アンテナ間相関※2つのアンテナはゲインパターン、偏波面等は同じとした場合

2.2 アンテナ間相関とアンテナの各種パラメータ、電波の到来方向分布とAngular Spread

 では、どうしたらアンテナ間相関を低く保つことができるでしょうか。

 アンテナ間相関は2つのアンテナがどの程度似通った電波を受信するかという指標で、ゲインパターン・アンテナ間距離・偏波面等のアンテナ側の特性と環境因子である電波の到来方向分布で決まります。

 相関を下げるためにはアンテナ側の措置として、

- アンテナ同士の偏波面を直行させる- 二つのアンテナ間の距離を離す

等の改良が考えられます。

 しかしながら、たとえば2GHz帯(λ=10cm強)を想定すると、実際にアンテナを何波長も離して置くことは難しいです。では、所望のレベルまで(たとえば0.3程度にまで)相関を下げるにはどの程度アンテナを離して置けばよいのか、そもそも端末として現実的な大きさで収まるのか。

 この疑問を解決するには、実際のフェージング環境を念頭に置く必要があります。繰り返しになりますが、アンテナ間相関はアンテナ側の特性と環境因子である電波の到来方向分布で決定されます。電波の到来方向の広がりをAngular Spread(AS)というが、ASが大きいと多様な方向から来た電波によって端末アンテナの周りのフェージング環境は複雑になります。アンテナの位置をずらした時の電磁界の変動も大きくなるため、アンテナ間距離を少し離しただけで無相関に近い状況が作れるようになります。

 一例として、図7に2つのアンテナを離して行った時、アンテナ間相関がどのように変化するのか、ASを変えながらシミュレーションしてみた結果を示します。ASが35°ある場合には1λ程度で十分相関を低くできています。一方ASが2°しかないような状況では、10λ離しても相関が0.3以下にならず、端末の大きさによってはMIMOの伝送を行うのは難しい事がわかります。つまり、アンテナ間相関を低く保つため、アンテナの設計をするにあたって、端末の通信環境としてどの程度のASが確保できるかを考慮する必要があります。

 同様に出来あがった端末を測定するにあたっても、ASの与え方如何では測定結果が大きく異なることが予想されます。実験室で実現されるASが、実際の通信環境のASよりも極端に大きいようなことがあると、実験室では上手くMIMOを使った高速通信ができたのに、現実世界では使えないというようなことが起こります。逆に現実環境より測定環境のASが小さいと、端末の通信速度を過小評価することになります。

0.1

AS=35°

AS=2°

アンテナ間距離(λ)

Omni AS=2

Omni AS=5

Omni AS=35

Directive AS=35

00

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

2 4 6 8 10

アンテナ間

相関の絶対値

8

3. アンテナの性能を含めた測定方法

 以上のように、アンテナ間相関はMIMOの通信機の性能を本質的に左右するため、MIMOの通信機を測定する場合にはアンテナ環境を含めて測る必要があります。すなわち、実際に端末が使用される環境から、ASをはじめ、フェージング環境を現実的に定義し、実装されたアンテナの性能を含む端末全体のスループットを測定する必要があります。

 近年まで、こうした実装されたアンテナ性能と外部のフェージング環境とを複合で評価できるような測定使用はされてきませんでしたが、最近になって、LTEやHSPA+でMIMOを使用するに当たり、3GPPで受信試験の方法が規格化されようという動きがみられるようになりました。ここでは、現在3GPPで議論されている方法を、大きく3つに分類して紹介します。

3.1 マルチ・プローブ・アンテナを使用したMIMO-OTAテスト手法

 この方法は、もっとも感覚的に理解しやすい方法です。大きめの暗室を用意し、暗室の中央に被試験端末を配置します。暗室内に多数(8本~16本)のプローブ・アンテナを用意し、中央の被試験端末へ向けて壁に沿って、円形に配置します。配置されたプローブ・アンテナはフェージング・シミュレータを介して基地局に接続されています。基地局からの信号を、多数のプローブ・アンテナの一部あるいは全部を使って、一斉に中央のDUTへ電波を放射することで、到来波の方向分布を模擬することができます。例として、キーサイト・テクノロジー製のフェージング・シミュレータPXBを使用した場合の測定系を図8に示します。

 このような、測定系を用いれば電波の到来角方向分布をある程度自由に模することができる上、アンテナが実装された端末を、実用状態に近い状態でテストすることができます。

 この方法の最大のデメリットはコストです。波長と同程度の大きさの端末に、360°から到来する電波を模擬するためにアンテナが8本、それより大きな端末や人体頭部模型付きのテストを行おうとすると、その倍等のアンテナが必要になります。偏波を考えればさらにその倍のアンテナが必要になります。それぞれのアンテナ端までの校正を取る時間的コストも大変に大きいですが、基地局とそれらのアンテナを結ぶフェージング・シミュレータの構成も16チャネル(2x8)、32チャネル(2x16)などと巨大なものになり、非常に高額になることが予想されます。

 このようなコスト面でのデメリットを鑑みて、プローブ・アンテナをぐるりと配置して360°から到来する電波を模擬するのではなく、片側のみにプローブ・アンテナを配置するなど、角度を限定しプローブ・アンテナの数を減らして行う測定も考案されています。

BER, FERPower

SignalGenerator

Example 8 antennaconfiguration

ChannelEmulator

BS Emulator

N5106AE6621AProbe

Antennas

MIMODUT

AnechoicMaterial

TestChamber

図8: マルチ・ブローブ・アンテナ法

9

3.2 キーサイト・テクノロジーの測定器を使った場合

- 測定器構成図8に示すようにN5106A PXBユニバーサル受信機テスタ、E6621A基地局シミュレータ、N5182A MXGを用いてマルチ・プローブ・アンテナを構成します。     - 測定器の設定- E6621AにてLTE MIMO試験チャネルパラメータを設定します。(図9参照)

- N5106Aの設定N5106AではChannel Modelとそれに応じたフェージング・パラメータを設定します。Single-user MIMO(ext-in)2x8を選択しその構成をLoadします。(図10参照)Fader Setup MIMO SetupよりRing of Probes Methodを選択し必要なChannel Model、Power Azimuth Spectrum(Laplacian/Gaussian/Uniform)を適用します。(図11参照) Antenna SetupよりProbe Polarization(Single/Dual)、Probe Constellation(Full Circular/Single Cluster)、Tx Antenna Pattern(Omni/Three-Sector/Six-Sector)等を選択します。 (図12参照)N5182A 接続I/O Port から必要に応じてAWGNを印加します。

Parameters Value

DL MIMO mode 2 x 2 open loop spatial multiplexing

Duplex mode FDD

Operating band band 7 (21100, 3100)/band 20 (24300, 6300)

Bandwidth DL 10 MHz

Number of RBs DL 50

Start RB DL 0

Modulation DL 16 QAM 64 QAM

TBS Idx DL 13 (RMC defined) 24 (RMC defined)

Bandwidth UL 10 MHz

Number of RBs UL 50

Start RB UL 0

Modulation UL QPSK 16 QAM

TBS Idx UL 6 (RMC defined) 19 (RMC defined)

Transmit power control -10 dBm, open loop

Number of HARQ transmissions 1 (no HARQ re-transmissions)

AWGN OFF

Number of subframes for FOM measurement

2000 minimum for static channel20000 minimum for faded channel

図9: MIMO-OTA測定時の基地局シミュレータのパラメータ

図10: MIMO-OTA測定のシミュレータの設定

in on

PXB : Channel EmulatorN5106A

PXT : BS EmulatorE6621A

MXG : Signal GeneratorN5182A

Digital out

Analog out Analog in

Digital in

I/O 1 Port A1

out onI/O 3 Port A1 MXG1

out onI/O 4 Port A2

out onI/O 5 Port B1

out onI/O 6 Port B2

out onI/O 7 Port C1

out onI/O 8 Port C2

out onI/O 9 Port D1

out onI/O10 Port D2

f onFader1

f onFader3

f onFader5

f onFader7

f onFader9

f onFader11

f onFader13

f onFader15

f onFader2

f onFader4

f onFader6

f onFader8

f onFader10

f onFader12

f onFader14

f onFader16

in onI/O 1 Port A2

MXG2

MXG3

MXG4

MXG5

MXG6

MXG7

MXG8

10

図11: フェージングのパラメータ

図12: アンテナのパラメータ

図13: 暗室内のキャリブレーション

- N5182Aの設定外部SG N5182Aの設定(周波数/パワー)をN5106AのSG Setting Browser を通じて行います。

- CalibrationVNA(Vector Network Analyzer)によるPath Loss計測、SG/SAによるProbe power calibrationを行い、Channel power calibrationを45度ステップで各Pathに対し行います。(図13参照)

SignalGenerator

Channelemulator

Channelemulator

eNodeBemulator

SpectrumAnalyzer

SpectrumAnalyzerProbe

AntennasProbe

Antennas

Anechoic Chamber

Probe Power Calibration Setup

Anechoic Chamber

Composite loss

ReferenceAntenna

ReferenceAntenna

A A BB

Channel Power Calibration Setup

11

図14: 2-ステージ法

3.3 事前にアンテナの性能を測定しておく、2-ステージ法

 2-ステージ法は、コストをかけずアンテナの性能を加味した試験を行うために開発されました。この測定は2つのステージに分けて行われます。

 まず、第一ステージとして、端末に実装されたアンテナの複素ゲインパターンを外部フェージング環境(電波の到来方向分布等)と切り離して測定します。ゲインパターンは、暗室内で基準アンテナからの基準信号を出力し、被測定アンテナがどのような電波を受け取ったかを測定して得られます。

 第二ステージで、端末の実際の受信試験を行います。まず、第一ステージで測定した端末アンテナの複素ゲインパターンをフェージング・シミュレータに入力をします。フェージング・シミュレータは電波の到来方向分布を含む環境の設定を行い、その環境の中に第一ステージのアンテナ特性が置かれたら、アンテナの端末側の端子にどのような電圧がかかるかを計算し、出力します。フェージング・シミュレータからの出力は(既にアンテナの効果が含まれているので、アンテナはバイパスし)、端末のアンテナ端子に直接入力されます。例として、キーサイト・テクノロジー製のフェージング・シミュレータPXBを使用した場合の測定系を図14に示します。

 この方法の最大のメリットは、端末が開発段階で未だ完成していない状態で試験できることです。アンテナの複素ゲインパターンさえ既知であれば、筐体デザインが未定でアンテナ端末に接続されていなくても、測定を行うことができます。また、マルチ・プローブ・アンテナを使用した方法に比べ、AS等の設定の自由度を失うことなく測定系を大幅に簡素化出来ます。

 リスクやデメリットもいくつかあります。まず、第一ステージが完了出来ない可能性があげられます。アンテナゲインはアンテナ端子に接続が許される状態であれば、ネットワーク・アナライザ等である程度簡単に測ることができますが、確度の問題や物理的な問題でアンテナ端子への接続が許されない場合、アンテナゲインが測定できるかどうかは端末側のチップセットに依存します。アンテナ端子への接続が出来ない状況でアンテナの測定を行う方法はいくつかありますが、いずれの場合も暗室内で被測定アンテナがどのような電波を受け取ったか、端末側のベースバンドチップが記録し後で取り出せる必要があります。また、第二ステージでアンテナ端子への接続が必要になる点も見逃せません。端末側にアンテナ端子が無ければならないし、アンテナ端子-アンテナ間のインピーダンス・ミスマッチも何らかの形で再現する必要があるかもしれません。また、端末が発生するスプリアス等がMIMOアンテナへ回り込む等の悪影響は加味できない等のリスクを先に考えて置く必要があります。

AntennaPatterns

BER, FER,H, R

MIMODUT

MIMODUT

AnechoicMaterial

ReferenceAntenna

TestChamber

BS Emulator

BS EmulatorE6621A

Stage 1Antenna pattern

measurement

Stage 2Throughput

measurement

Measuredpattern Conducted

Channel EmulatorPXB

E6621A

12

3.4 キーサイト・テクノロジーの測定器を使った場合

- 測定器構成図14に示すようにステージ1で端末アンテナパターンを所有する暗室で測定し、そのアンテナパターンをN5106Aに入力し2x2MIMO構成の上端末とケーブル接続で測定を行います。     - 測定器の設定- E6621AにてLTE MIMO試験チャネルパラメータを設定します。(図9参照)

- N5106Aの設定N5106AではChannel Modelとそれに応じたフェージング・パラメータを設定します。Single-user MIMO(ext-in)2x2を選択しその構成をLoadします。(図15参照)Fader Setup MIMO Setupより2-StageMethod を選択し必要なChannel Model、Power Azimuth Spectrum(Laplacian/Gaussian/Uniform)を適用します。(図11参照) Antenna SetupよりTx Antenna Pattern(Omni/Three-Sector/Six-Sector)、Rx Antenna Pattern(user specified)等を選択します。(図16参照)N5182A 接続I/O Port から必要に応じてAWGNを印加します。

in on

PXB : Channel EmulatorN5106APXT :

BS EmulatorE6621A MXG :

Signal GeneratorN5182A

Digital out

Analog out

Analog in

Digital in

I/O 1 Port A1 MXG1f onFader1

f onFader2

f onFader3

f onFader4

in onI/O 1 Port A2

out onI/O 3 Port B1

out onI/O 4 Port B2 MXG2

図15: 2-ステージ法時のフェージング・シミュレータの設定

図16: 2-ステージ法時のフェージング・シミュレータ内のアンテナ・パラメータ

13

- N5182Aの設定外部SG N5182Aの設定(周波数/パワー)をN5106AのSG Setting Browser を通じて行います。

- CalibrationVNA(Vector Network Analyzer)によるPath Loss 計測、SG/PMによるPower calibrationを特性の既知のreference antennaを用いて行います。接続されるAntennaのAmplitudeとPhase測定をサポートするChipsetからの情報と前calibration情報から適当なAntenna pattern情報を得ます。

3.5 反響チャンバを使用した方法

 3つ目の方法は、反響チャンバを使用する方法です。反響チャンバとは金属製の大きな共振器で、多数の共振モードを内在させることができるようになっています。非常に多数の共振モードによって、被試験機のアンテナの周りに等方的な到来波環境を作成し、モード・スターラー・バーでモードを撹拌することでレイリーフェージングを作ることができます。(図17)

 この方法は上記で述べた中で最も廉価かつ簡易で、高速に測定することができますが、電波の到来方向分布として一様等方分布しか再現できません。したがって、室内での伝搬環境等のように、3次元的に拡散が起きる環境を模擬する分には有効ですが、屋外などの使用環境を模擬するには向かないという欠点があります。

3.6 キーサイト・テクノロジーの測定器を使った場合

- 測定器構成図17に示すように反響チャンバ及びE6621A基地局シミュレータによって構成されます。必要に応じてN5106Aユニバーサル受信機テスタを接続して有効パラメータ設定を補完します。     - 測定器の設定- E6621AにてLTE MIMO試験チャネルパラメータを設定します。(図9参照)- N5106Aを使用する場合、Fader SetupにてDoppler frequency、AS、XPRを含むDelay profileを設定します。

- CalibrationVNA(Vector Network Analyzer)により全てのfixed antenna(wall antenna)とreference antenna間のS-parameterをstirrerのpositionごとに計測します。

BS EmulatorE6621A

反響チャンバ

MIMODUT

ModeStirrer

MetallicWalls

WallAntennas

Turntable

受付時間 9:00-18:00 (土・日・祭日を除く)

[email protected]

TELFAX

キーサイト・テクノロジー合同会社

0120-421-345 (042-656-7832)0120-421-678 (042-656-7840)

本社〒192-8550 東京都八王子市高倉町9-1

www.keysight.co.jp

お問い合せ先

© Keysight Technologies, 2014Published in Japan, November 25, 20145991-0671JAJP0000-08cS

まとめ

 増え続ける通信容量の増大を支えるために、MIMOはなくてはならないキー・テクノロジーです。MIMOの性能を決定づけるアンテナ間相関というパラメータは、外部フェージング環境とアンテナ自体の性能の両方に大きく影響を受けます。したがって、MIMO端末の通信性能を見積もるには、今までのようなフェージング・シミュレータをアンテナ端子に直結する測定手法は使えません。アンテナの性能を考慮する必要があるだけでなくフェージング環境を現実的に見積もることが非常に重要です。

 このような、フェージング環境下における、アンテナの性能を加味した端末の通信性能を測るのは容易ではありません。こうした中、開発されている測定手法は大きく分けてマルチ・プローブ・アンテナ法、2-ステージ法、反響チャンバ法の3つがあります。どれも一長一短があり、全て携帯電話などの最新規格に取りいれられる方向で議論されています。

 キーサイト・テクノロジーでは、上記の3つの方法を全てサポートする測定器とノウハウを持って、MIMO時代の端末試験を支えています。