Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
Kobe University Repository : Kernel
タイトルTit le
英語教育の新しい取り組み (インフォメーション)(インフォメーション)
著者Author(s) 三輪, 邦子
掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学医学部神緑会学術誌,20:84-87
刊行日Issue date 2004-08
資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文
版区分Resource Version publisher
権利Rights
DOI
JaLCDOI 10.24546/81007833
URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81007833
PDF issue: 2020-08-25
イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン
英語教育の新 しい取 り組み
1.ス モ ー ル グル ー プ化
医学医療国際交流センター
医学英語担当 三 輪 邦 子
従来,医 学 部2年 前期の英語カ リキュラムは六甲台
で実施 されていたが,2002年(平 成14年)度 前期 か ら,
医学部2年 生の英語授業は医学部(楠 キャンパス)で
実施 されるようになった.2年 前期は教養 と専門の橋
渡 しの段階であるとの認識で医学に関連 した一般英語
のテキス トを用いて一学年 を3ク ラスに分けて授業が
展開された,
.,
神緑会学術誌 第20巻2004年
2002年 後期か らはアルク教育社が開発 したイン トラ
ネ ッ ト環境 を活用 した新 しい英語学習 システムALC
NetAcademyを 導入 した.学 生が一人一台のパ ソコン
に向かって医学英語(リ スニ ング,リ ーデ ィング,語
彙)を 学習するシステムを利用 して,原 則 として自習
す るシステムではあるが,授 業 に取 り入れることによ
りある程度の強制力 を持 って能動的に学習で きる.知
識 としては十分 な能力のある医学部学生 にとって,医
療現場で よく用い られる表現を聞取 る,医 学関連単語
を正 しく発音す る,コ ミュニケーションによ く用い ら
れる会話文 を正 しく話す,と い うことを練習するのに
大 変役立つプログラムである.こ の システムを利用 し
て2002年 後期 か ら2年,3年 が 同時 に履修 を開始 し
た.
一学年 を3ク ラス に分けて講義形式ではな く,で き
るだけ少人数でのクラス展 開を 目指すために学外か ら
非常勤講師を招 いて,平 成14年 度は3ク ラスに,さ ら
に平成15年 か らは2年 生を4ク ラスに分 ける試み を始
めた.一 クラスの人数 を少数に したほうが良いであろ
うと始めた試みであるが,学 生 アンケー トの結果から
は必ず しも3ク ラス よりも4ク ラスに分 けたほうが よ
いという結果は出ていない.そ れは,入 学時点ですで
に学生間に大 きな英語力の差があ り,ま た学生が医学
本来のカリキュラム履修 に多 くの時間 と関心 を費やす
ため,英 語の勉強に対 してはどちらか といえば受動的
な立場であるためであろう.ク ラスを少人数に分 ける
試みについてはさらに注意深 く検討を行いたい.
皿.到 達 目標
現在 医学部のカ リキュラムでは1,2,3,5年 に
英語が置かれている.受 験で勉強 してきた一般英語で
はな く医学英語 とい う特殊 な分野 を効果的 に履修 して
もらうためには各学年 ごとに担当講師がシラバスを考
えるのではな く,一 ・貫 した方針で徐hに 医学分野の英
語 を勉強 してもらいたい と考え担当講師 らが}「 「医学
英語」到達 目標 について(案)」(2004年4月1」 ヨ)を
立案 した.
2004年4月1日
「医学英語」到達 目標 について
1.6年 間の医学英語到達目標
研 究者や臨床家 として身に着けたい 目標:
留学,国 際学会での発表,英 語論文投稿,研 究者 と対
等 に討論で きる英語力 をつける.
外 国人患者 を診察 し,意 思疎通 を図るための英語力を
つける
そのための具体的 目標は次の通 りです.
A)各 科共通の基本的医学用語の完全習得
B)専 門領域のテクニカル タームの習得
C)TOEF'Lの ス コア ア ップに必 要 な リーデ ィ ン
グ ・リスニング力向上
D)英 語論文速読/熟 読
E)英 語論文,抄 録作成の習得
F)英 語での発表,質 疑応答,デ ィス カッション法
の習得
G)病 歴聴取に必要 な医学英語表現の習得
H)英 語 による病歴聴取法,患 者 との会話法の習得
1)英 語によるカルテの書 き方習得
II各 学年の到達 目標 と学習内容
6年 間の 目標 を達成す るために各学年の到達 目標を設
定 し,そ れに沿 って学習内容を次のように定 めていま
す.
(上記の6年 間の 目標の記号A-1を それぞれに記 し
ています.)
1年 次(教 養部)
① 日常英会話がで きるようにするF
② 医療ニュースが聞き取れるようにするF
(CNN,ABCetc.の 医療ニュース を聴 き内容 を理解
する)
③将来留学 を目指す者 は,1年 生の うちにTQEFL(留
学 に必要 な点数は550,あ るいは,CBT300点 満点で213
点)と 英検(準1級 以上)を 受験す ることが望 ましい.
(英検 ではspea㎞ ㎎ の力 を測定で きます)C,F
2年 次
①医学用語の基本 を習得す る.A
(「これだけは知つてお きたい医学英語 の基本用 語
と表現」の用語 を習得する.)
②医学論文 を読みこなす読解力 を高めるD
(医療関係 のテキス ト(現 在使用 している 「医療 ド
ラマERで 学ぶ英語」等)を 使い)読 解力 の向上 だ
けでな く,ア メリカ等諸外国の医療事情r医 学用語
も学 ぶ)
③速読力 を高める.WPM(wordperminute)150を 目
指すD
(アルクのネ ット教材 で訓練 をする)
④ リスニ ングカ を高めTflEFL550(CBT300点 満点で
213点)を 目指す(TOEFL過 去問題,英 語ニュース
を授業 で使いrま たネ ッ トアカデ ミーTOEICテ ス
ト演習 コースを自習す る)C,F
⑤外国人患者の診療 における基本会話を習得する
(ネッ トアカデ ミーの教材 を使用)G,H
一一85
3年 次
①医学用語の基本 を習得する.A
(「これだけは知 っておきたい医学英語の基本用語
と表現」の用語 を全て習得す る.)
②医学論文 を読みこなす読解力 を高めるD
(医療関連テキス トを使 う)
③速読力 を高める.WPM(wordperminute)200を 目
指すD
(アルクのネッ ト教材等で訓練 をする)
④ リスニ ングカ を高 めTOEFL550(CBT300点 満 点で
213点)を 目指す(TOEFL過 去問題,英 語ニュース
を授業 で使い,ま たネ ッ トア カデ ミー-TOEICテ ス
ト演習 コースを自習する)C,F
⑤外 国人患者の診療 における基本会話 を習得する
G,H
(「これだけは知ってお きたい医学英語の基本用語
と表現」後半 の病歴聴取 のための表現 を全て覚 え
る)
⑥英文抄録,英 文 カルテの書 き方の基本 を習得す る
E,1
4年 次
現在 「医学英語」 は開講 されてい ませんが,今 後開
講 を検討 します
5年 次(医 学部専門科 目教員,英 語教員 による少人数
クラス)
①英語論文,英 文抄録,英 文 カルテの書 き方 を習得す
るE,1
②学会発表 ・質疑応答の基本を習得するF
(海外 の大学で は必修であるPubhcSpeakingの 基
礎 を学 び,実 際 に発表練習をする)
③語 による病歴聴取 ・症例報告の技術 を習得す る
B,G,H
(「これだけは知 ってお きたい医学英語 の基本用語
と表現」,ア メ リカで広 く使 われているBates'Guide
toPhysicalExaminationandHistoryTakingな どの
テキス トを使用 し,ロ ールプ レイによる病歴聴取練
習を行 う)
④ 英語 による意見交換の能力 を習得するF
医療 関連の英語 ニュース,イ ンターネッ ト記事な ど
を視聴 し,英 語で意見交換する.
⑤ 基礎配属実習の一環 として希望者は海外 にて実習を
行 うG,H,1
現在 のカ リキュ ラムでは,BSLの 中で半分 は医学
部専 門科 目教員による①②,英 語教員 による英文カ
ルテの書 き方(中 野次郎元 オクラホマ大教授,医 専
1卒)及 び上記③ を実施 している.
6年 次
選択臨床配属実習の一環として希望者は海外にて実
習を行うG,H,1
※各学年 を通 し,将 来留学 を希望す る者 は,TOEFL,
USMLEの ある設定 目標 まで達成するよう各 自で学
習 してお くことが望 まれます.
※尚,上 記各学年の学習内容は,今 年度の内容ですの
で今後多少変更 されることがあ ります.
上記 目標 を理想的な形で履行するにはまだ努力 と工
夫が必要ではあるが,担 当者はその必要性 を認識 して
シラバスを考えている.ま だ始まったところであるの
で,学 生 にどの ような結果が出るか長い 目で観察 した
い.
皿.授 業 外 活 動
医学部の学生 に英語の重要性を認識 させ,さ らにそ
の具体的な勉強の機会を与えるため,前 田 盛学科長
(当時)の 発案で授業以外に様々な試みが行われてき
た.
2003年(平 成15年)4月2日 一4日 には,カ リキュ
ラムの中で英語 を学ぶ機会のない4年 生のために春季
特別講座「や さしい医学英語」を神緑会館で開催 した.
京都大学 ・高橋玲助教授,非 常勤講 師 ・玉巻欣 子先
生,医 学英語担当 ・三輪邦子 らを講師 として開催 し
た.参 加申込者 は20名.
2003年(平 成15年)7月22日 一8月15日 には夏季研
修を同 じく神緑会館で開催 した.前 述の講師の他に学
内の外 国人研究者 らの協力 を得,さ らに語学学校(グ
ローバ)か ら講師派遣 を依頼 して開催 した.西 医体 と
一部 日程が重なったが,参 加学生は多い日は20名,少
ない日は5名 程であった.こ れは,引 き続 き行われた
ハ ワイ大学語学研修の準備のために行われたものであ
る.
瞳急響
1{覧1驚警謬
㌶蝶出発前,関 西国際空港で
一86一
神緑会学術誌 第20巻2004年
開講式 で,左 端Izutsuハ ワイ大学副医学部長
犠
脚竃
ぜ
∵ド
翻
ー
磐
職馨
簗
%
回
麟
3
-
縢
猿
、哩髪
"
幽
二
・
"i>.
ヒ
コノ
し
ロ
…
ダ
鱒
,
0碍ー
の
えゑ
猶纏
攣麹
毒
博
多
、
翠
当
撫欝
・
寧
,灘
遷
鐵轡
謬臨、
蒸
響
貼
vメ
鹸
畿
趣
燃瑚課翼添 砂 ・ノ ・ 苺
蕪'.謹 噌 ・勝
ハ ワ イ 大 学 キ ャ ン パ ス で,左 よ り 二 人 目Outreach
college教 員
2003年(平 成15年)8月17日 一28日 にハ ワイ大学 キャ
ンパスでの語学研修,東 海大学パ シフ ィックセ ンター
での医学英語研修 を開催 した(詳 細 は学務課所有報告
書の とお り).初 めての試 みではあったが,個 々の学
生の前向 きな姿勢,お 世話 になったハ ワイの講師 らと
の活発 な意見交換で,学 生それぞれにとって大変有意
義な体験 の場 となった.勉 強 とは別 に学生 らはわずか
なが ら楽 しいバカンスの時 を
過ごす こともできたようであ
る(掲 載写真4枚).
ハ ワイでの1回 目の試み を
継 承 して,2004年(平 成16
年)8月22日 一29日 に第2回
目の研修 を行 う.今 回は経費
を節約するためにハ ワイ大学
キャンパスではな く,東 海大
学パ シフ ィックセンターを利
用 させていただ くことになっ
た.こ れは,神 戸大学医学部
の1988年 卒業の小林恵一先生
(現在ホノルル聖ルカ総合内
科 クリニ ック)の 大 きなご努
力の賜物である.
先年同様,こ の研修の準備のため に,8月2日 一13
日に神緑 会館 で語学研修 を開催 する.講 師 は前述 の
方 々に加 え,江 本憲昭先生,外 国人研究者,グ レン ・
エ ドワーズ教授,公 衆衛生学講座のTeguh ,Hamim先
生,語 学学校 アルク社か らの派遣講師にお願い してい
る.今 年度は1-2年 生を対象 に した一般英語,3-
4年 生 を対象 としたクラス,5年 の臨床英語のクラス
に分けて行 う.
医学部の中で,英 語教育 をこの ように積極 的に取 り
入れていることは,学 生か らも徐 々に評価 されて きて
いる.医 学英語 を取 り入れていない他大学の学生から
うらや ましが られているという学生か らの嬉 しいコメ
ン トもあ り,神 戸大学医学部学生の中で は,徐 々に し
か し確実 に英語が重要であるという認識が育 っている
ようである.勉 強の必要性 を感 じることが,そ の分野
の熟達のためには不可欠なことであ り,日 々国際化 し
てい く世界の動 きの中にあって,最 近の改革の試みが
徐 々にではあるが3年 目に して学生 の意識 に変化 を及
ぼ しつつあるように感 じる.
語学教育の施設や設備が全 くなかった医学部 キャン
パスで最初 はカセッ トデ ッキだけで始 まった ときから
2年 余 りを経て,多 くの資金援助 をいただい き現在 は
パ ソコンや オーデ ィオの環境が整 い始めていますが1
学年100名 の学生の多 くが英語 に対する前向 きな姿勢
を身につけ,そ の中の数名が さらに真の実力 を身に着
けることがで きるようさらに努力 を続 けていきたい.
編集部注)海 外での英語研修や病棟実習には神緑会 よ
り多大なご援助 をいただきました.こ こに感謝の意
を表 します.
授業終了後,中 央 は小林恵一先生(63年 卒,ハ ワイ開業中)とIzutsu副 医学部長
87