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3. 決定したμの値を使って,今度はλの値をパラメータとしたSモードの固有振動数の理論曲線が求められる.
4. 2.で分離したSモードの共振周波数の測定値を重ねることで,交点からλの値を決定できる.
共振法による弾性定数の測定
生出秀行 岡部勝臣 舘野聡 (指導:比屋根先生)
球の自由振動の理論
実験装置
弾性定数 独立なもの:21個
等方弾性体の仮定
!, µ
1
一様等方な球の場合,振動モードは二つの種類に分類できる.
Cijkl 等方弾性体の運動方程式
!"u"t2
= µ!2u + (# + µ)!(! · u)
1
Torsional mode(ねじれ振動)
•体積変化を伴わない振動•固有振動数は経度方向に縮退•固有振動数はパラメータμによって決まる
Spheroidal mode(伸び縮み振動)
•体積変化を伴う振動•固有振動数は経度方向に縮退•パラメータはλとμの2つ
緯度方向の節の数動径方向の節の数
経度方向の節の数 nSml
1
等方弾性体の場合,これらのモードに対応する固有振動数が共振周波数として観測される.
1. Tモードはμのみに依存するので,μの値をパラメータとしたTモードの固有振動数が解析的に求められる.
2. 測定した共振周波数を重ねると,ひとつの理論曲線に複数の交点が得られてしまうが,このうちTモードに関しては,同じμの値に交点を持つはず→μの決定およびTモードの分離
理論の問題点•そもそも扱った弾性体が等方的でない →異方性を考慮した自由振動の理論(21個のパラメータ)の必要性•弾性体が真球でない →非球度の考慮(真球からの摂動)
自作測定装置の問題点•測定装置自身の共振を取り除けない →共振しにくい測定装置の開発または測定装置の共振周波数の特定•球を固定するために圧力がかかり,球が歪む →非球度を考慮できれば解決できる•圧電素子自身に特性が存在する
測定機械の問題点•発振器の上限周波数が5MHz →小さな球での測定が不可能•MHz域では発振周波数のばらつきが大きい
小さな球での測定のメリット•重力による歪みが少ない•等方的な弾性体が多い•実際に存在する岩石について調べられる
異方弾性体の理論異方性のある弾性体では,固有振動数についての解析解はない→「弱形式」によって数値解を求めることができる.そのためには,•等方弾性体の振動モードを基底として固有関数のベクトル空間を考える•運動方程式は固有モードの成分ごとの「行列要素」•運動方程式中に固有関数の球座標での体積積分を含む•対角化によって固有振動数を得られる•弾性定数を求めるのは,これらの計算の逆算(インバージョン)という手順を踏めば良いが,時間の問題から今回の実験では断念した.しかし,これは 本来この実験の解析を行うのに必要なプロセスである.
問題点
球概要
共振周波数から弾性定数を求める方法考察
+表面とハンダ付け表面を削って
裏面と絶縁
銀ペーストで裏面と接続
球共振システム(第五世代)
圧電素子入力素子
試料の球~φ5cm
緩衝ゴム(振動が外部に伝わるのを防ぐ)
支持柱(パイプ型)緩衝ゴム
出力素子
素子は試料に軽く触れる程度にするため,試料の上側と下側からボルトで挟んである
ボルト(繰り出しで変長)
緩衝ゴム
弾性体に衝撃を加えると,弾性体はその後外力を加えなくてもしばらく振動を続ける.これを自由振動という.一昨年のスマトラ沖地震では,地球の自由振動も実際に観測されている.本実験では,球弾性体の自由振動を再現し,その測定・解析を通して弾性波動論に対する理解を深めることを目的とする. 具体的には,弾性球に正弦波の衝撃を加え,オシロスコープで共振周波数を観察することによって弾性定数を求める実験を行なった. また,本実験は初めての試みであったため,単なる測定・解析だけでなく,実験装置の自作,測定手法の開発・研究も行った.
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en
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Hz]
/1010
T-02
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T-03
T-13
T-04
T-05
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1e+06
5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9 9.5 10 10.5 11 11.5 12 12.5 13 13.5 14
Fre
qu
en
cy [
Hz]
/1010
S-00
S-11
S-02
S-12
S-03
S-04
609.4E3
867.1E3
323.3E3
611.5E3
481.0E3
616.4E3
測定された共振周波数 μの値によるTモードの固有振動数のグラフ
ふたつを重ね合わせて交点からμとTモードの特定
μを固定したときの,λの値によるSモードの固有振動数のグラフと観測されたSモードの共振周波数を重ね合わせてλを特定する
実験方法
試料の球
重さを量る
直径を測る
半径 a
密度
共振周波数帯域
の見積もり
理科年表に載っている
試料の弾性定数
結果:測定できる周波数帯に試料の共振と推定できるピークは見られなかった→試料のサイズが小さく、共振周波数が高い→測定できる周波数帯を広げるには機器を変えなければならない→測定不可能!
測定結果赤ガラス(a = 3.1750 [mm],ρ = 2.46×103 [kg/m3])ルビー(a = 2.500 [mm],ρ = 3.97×103 [kg/m3])
結果:予想をはるかに超える数のピークが見られた 素子などの外部原因として棄却できるピークがほとんどない→異方性によるピークの分裂と解釈できる→弾性定数を求めることは難しい
鉄球(a = 25.4 [mm],ρ = 7.79×103 [kg/m3])水晶(a = 16.0 [mm],ρ = 2.55×103 [kg/m3])
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Am
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ud
e [
mV
/V]
Frequency [kHz]
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200 300 400 500 600 700 800 900 1000
Am
plit
ud
e [
mV
/V]
Frequency [kHz]
鉄球の共振周波数
鉄球の場合に,ピークの分裂の様子から等方的だった場合のピーク周波数を予想し弾性定数を求めると…μ = 7.5×1010 [Pa] λ = 1.12×1011 [Pa]となる.これより,VP = 5.7×103 [m/s] (理科年表 5950m/s)VS = 3.1×103 [m/s] (理科年表 3240m/s)と求まる.
参考
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Am
plit
ud
e [
mV
/V]
Frequency [kHz]
0T2
0T3
0T4 1T1
1S2
0S0
0S2
0S3
球共振法はとてもデリケートな実験であったため今回使用した測定機械では少し難しいものだった.共振自体の理論だけでなく素子などの実験装置の特性に関する理論も必要であることが分かった.
できるだけ球の自由振動に近づけるために,球自体の重力による影響の少ない小さな球を使用することが望ましい.
1. 今回行った手動での測定ではピークを見逃す可能性がある.そこで,周波数をsweepさせて得られた交流振幅を平滑回路を使って直流振幅になおし,プロッターで自動的にピークを描かせると共振の見落としは少なくなるとともに,ピークの細かな特徴も得られる.この平滑回路の作成にも取り組んでみたが成果は得られなかった.
2. 試料にかかる力を測定できるようにしておき,いくつかの力で測定することから,試料にかかる力が0になるような極限を考えることで自由振動に近づけることができる.
3. 装置自体の共振は,何種類かの素子を用意しておき,素子を変えても同じ周波数に出るピークのみを読み取ることで装置自体の共振を取り除く方法も考えられる.
4. 得られた振幅から振動モードの推定と判別をはっきりさせるため,素子の特性と振動モードの振幅との関係について理解できると良かった.
5. 素子自体の性質について不明な点が多かったので素子を使わない振動装置を考えてみる手もある.
自作測定装置の改善
水晶の共振周波数0S4
学んだこと今回の実験で以下のことがらを学んだ 1.等方性弾性球の共振の理論 2.実験装置を自作することによる問題解決の方法
圧電素子は特定の方向に力を加えて変形させると,結晶の両側に電荷が現れ,電圧が発生する.また,逆にこの結晶に電圧をかけると,今度は結晶が特定の方向に歪む.このような性質を圧電性とよび,これを利用して電圧と圧力を変換する.
①準備 ②測定
ファンクションジェネレータで出力する周波数を変化させながら,オシロスコープで出力振幅が極大になるおおよその周波数を読み取る
読み取った周波数のまわりで入力周波数を細かく微調整して,もっとも出力電圧が高くなる周波数を共振周波数として記録し,そのときの出力電圧と入力電圧を記録する
0T2 0T3 0T4 0S0 0S2 0S3
LeCroy WAVERUNNER
入力素子へ正弦波を出力
出力素子から応答を受け取る
ファンクションジェネレータ・最高周波数:5MHz・最大電圧:20V・各種波形を出力可能・周波数を時間変化させることができる・十分な精度の周波数を出力できるのは 2MHz が限度
オシロスコープ・周波数や電圧振幅の統計処理が可能・時間分解能:1nsWAVETEK