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1 M38星団までの距離 明星大学理工学部物理学系 天文学研究室 131076 三村 貴之

M38星団までの距離 · 2017-02-13 · 2 要旨 私のこの研究は明星大学天文台での観測からm38 星団までの距離を求めるこ とを研究目的とした。

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M38星団までの距離

明星大学理工学部物理学系

天文学研究室

13s1-076 三村 貴之

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要旨 私のこの研究は明星大学天文台での観測からM38星団までの距離を求めるこ

とを研究目的とした。

しかし私は明星大学にある反射型望遠鏡を用いてM38星団の写真を撮影する

ことができなかったので撮影されてある画像を使用し距離を求めた。

目標天体M38の画像から各バンドでのみかけの等級を求め、既に絶対等級の

分かっている明るい恒星と近距離の恒星(絶対等級)と同じグラフ上に CM図

を作成した。

グラフ上で両者の主系列を比較したところ、絶対等級とみかけの等級の差は 11

等級と求められ、ここからM38星団までの距離は 5613光年と推定された。

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目次 第 1章 星団・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

1.1散開星団・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

1.2球状星団・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

1.3目標天体M38 について・・・・・・・・・・・7

第 2章 距離の求め方・・・・・・・・・・・・・・・8

2.1 HR図・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

2.2 CM図・・・・・・・・・・・・・・・・・・9

2.3 求め方・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

2.4 見かけの等級 絶対等級・・・・・・・・・・11

2.5 UBV測光系・・・・・・・・・・・・・・・12

第 3章 画像・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

3.1 画像処理・・・・・・・・・・・・・・・・・14

3.2 測光・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

3.3 標準星・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

第 4章 測定結果・・・・・・・・・・・・・・・・17

第 5章 計算結果・・・・・・・・・・・・・・・・19

第 6章 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

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第1章 星団 狭い範囲内に、多数の恒星が密集して見えるもののうち

物理的な関連をもったものを星団と呼ぶ。

星団内の星は、同じ起源の星であると考えられる。

星団には、大きく分けて球状星団と散開星団の2種類がある

図 1 M45 おうし座 Astro Artsより

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1.1 散開星団 数百~数千の恒星が比較的まばらに集まった星団。

特に決まった形状は持っていない。プレアデス星団(M45・すばる)やプレセ

ペ星団(M44)などが有名である。

図 2 M52 カシオペヤ座 Astro Artsより

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1.2 球状星団 数万~数百万の恒星がぎっしりと球状に集まった星団。

M13や、オメガ星団が有名である。球状星団を構成する恒星は銀河系でも最も

古い世代の星である。

また、球状星団は銀河系全体を囲むように分布している。

図 3 M22 いて座 Astro Artsより

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1.3 目標天体M38について

M38 (NGC 1912)

星座 ぎょしゃ座

距離 4,300光年

推定年齢 約 220×10^6年

赤経 05h28.7m

赤緯 +35°50’

等級 7.4等

視直径 18’

図 4 M38 ぎょしゃ座

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第 2章「距離の求め方」

2.1 HR図

HR(ヘルツスプリング・ラッセル)図の略で、デンマークの天文学者 E・ヘル

ツスプリングとアメリカの天文学者 H・N ラッセルによって考案されたもので

ある(図 1)光度と温度が分かっている星を HR図に乗せると、理論計算による軌

跡と比較することで、星の進化段階を推測することができる。HR 図は星の進化

を知る上で、非常に重要な図である。

HR図を作成するには、星団内の恒星一つ一つのスペクトル測定を行う必要があ

る。今回は簡易的に2種類のフィルターによる観測で得ることができる CM 図

をHR図の代わりに作成した。。

図 5 HR図 駿河台天文講座

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2.2 CM図 CM図とは、縦軸に絶対等級、横軸にスペクトル型(表面温度)をとった恒星の分

布図のことである。

地球から単一の星団の星までの距離はすべて同じと考えて良いので、CM 図の

縦軸には絶対等級ではなく見かけの等級を用いる事ができる。またスペクトル

型は星の色に対応していることから色指数(よく使用されるのは B フィルター

で測った等級と V フィルターで測った等級の差 B-V)という値を横軸に用いる

ことができる。

このように縦軸に見かけの等級、横軸に色指数をとった CM 図を色一等級図と

いう。

図 6 CM図 理科年表オフィシャルサイト

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2.3 求め方 距離を求めるためには、絶対等級とみかけの等級の関係から

m-M=5log(r/10) (1.1)

m:みかけの等級

M:天体の絶対等級

r:天体までの距離(pc)

r=に直すと、

r=10^((m-M+5)/5) (1.2)

となる。

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2.4 みかけの等級 絶対等級

みかけの等級

地球上からみたときの天体の明るさを見かけの等級と呼ぶ。

絶対等級

天体の見かけの等級は地球上の観測者から見た相対的な値である。天体から離

れるほど見かけの等級は大きく(暗く)なる。そこで、天体を地球から 10 パーセ

ク(32.6光年)の距離の置いたものと仮定したときの明るさを絶対等級と呼ぶ。

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2.5 UBV測光系 2種類の異なるフィルターを使用して撮影を行い、その等級の差を色指数として

いる。各フィルターの透過率は以下の通りである。

図 7 ジョンソンフィルターの透過率と波長

世界基準規格「ジョンソン光電測光専用フィルター」

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第 3章 画像

Bフィルター

Vフィルター

以上の画像は「星団視差(散開星団までの距離を求めよう)」の画像データを使

用した。

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3.1 画像処理

図 8 マカリィの作業中の画面

上記の画像は Bフィルター、Vフィルターの画像を天体教育画像解析ソフト

マカリィを使用して測光の作業してる画像である。

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3.2 測光

Bフィルター

Vフィルター

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3.3 標準星

名前 BD+35 1125

座標 05h28m44s +35°49‘52“

B等級 11.04

V等級 9.85

数値は simbadに示されている数値を使用した。

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第4章 測定結果 Bのカウント値

1 43940 17 562 33 571

2 6395 18 415 34 6835

3 34094 19 31673 35 47075

4 14612 20 381 36 16826

5 18716 21 603 37 1475

6 798 22 940 38 1722

7 2960 23 1563 39 488

8 734 24 568 40 1737

9 512 25 670 41 623

10 1396 26 2461 42 8659

11 566 27 779 43 10016

12 28287 28 2853 44 693

13 718 29 1477 45 8405

14 1050 30 10290 46 5739

15 361 31 4045 47 926

16 1652 32 665 48 1401

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Vのカウント値

1 40445 17 701 33 736

2 6499 18 563 34 6740

3 28829 19 27773 35 41905

4 13285 20 479 36 14982

5 17609 21 802 37 1640

6 1190 22 1097 38 1573

7 2934 23 1676 39 595

8 968 24 797 40 1894

9 669 25 914 41 738

10 1926 26 5269 42 7795

11 728 27 658 43 9277

12 52311 28 3670 44 750

13 986 29 1805 45 7829

14 1257 30 9388 46 5638

15 471 31 3980 47 1107

16 2076 32 738 48 1340

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第 5章 計算結果

図 8 CM図 星団視差 (散開星団までの距離を求めよう)

「明るい恒星」「近距離の恒星」のデータ(絶対等級)で、ここが主系列だと思っ

た部分を囲み

自分が測光した M38 のデータ(みかけの等級)で、ここが主系列だと思った部分

を囲み

囲んだ 2ヶ所の主系列の上下の差を比べて、みかけの等級mと絶対等級Mの等

級差(m-M)を見積もった。

M:絶対等級 ― 1等級

m:みかけの等級 ― 12等級、

とおいたので、m-M=11等級とした。

この値を(1.2)式に代入し計算すると、

M38までの距離rは次のページのとおりになった。

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r=10^((m-M+5)/)

r=10^((11+5)/5)

r=1584(pc)

r=1584 (pc)=5613光年

以上からまとめると

AstroArtsより 計算結果

距離 4300光年 5163光年

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第 6章 考察

図 9 CM図 星団視差 (散開星団までの距離を求めよう)

今回求めた結果は、文献の値と離れてしまった。

その原因としてひとつは測光の作業の際、私が選んだ恒星の明るさに偏りが出

てしまったもしくは、暗い恒星を見落としてしまいグラフに影響されたためだ

と考えられる。

実際のM38までの距離は 4300光年で、pc(パーセク)に直すと 1319pcに

なる。計算をするとm-Mは 10.5 等級にならないといけない。

上記の図 9 はm-M=10.5 等級にした時のグラフで図 8 のグラフと見比べると

ほとんど差がないので誤差の範囲内で一致してると考えることができる。

また等級をグラフから読み取り求めたため、そこで誤差の範囲外の値がでてし

まい参考文献の距離の値から離れてしまったためだと考えられる。

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引用文献

「HR図による散開星団M41

の距離と年齢推定」 明星大学卒業論文

12s1-043 菅原 慶裕 12s1-048 高松謙太郎

Astro Arts http://www.astroarts.co.jp/

星団視差(散開星団までの距離を求めよう)

http://paofits.nao.ac.jp/Materials/SpParall/index

.html.ja.euc-jp

世界標準規格「ジョンソン光電測光専用フィルター」

http://www.sbig-

japan.com/UBVRI/ubvri_m.html

Nakajima

http://sundai.sakura.ne.jp/getsurei/2013getsurei

/Nakajima.html

理科年表オフィシャルサイト

https://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/tenmon/ten

mon_025.html

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謝辞

今回の研究にあたって、小野寺先生、日比野さん、井上先生、院生の皆様か

らご指導をいただきました。天文学の知識や望遠鏡の操作方法や冷却 CCD

カメラの撮影の仕方大変多くのご指導ありがとうございました。

また研究のことで助言していただいた同研究室の皆さんにも大変お世話に

なりました。

また私ごとで大変皆様に心配やご迷惑おかけし申し訳ありませんでした。本

当にお世話になりました。

心から皆様に感謝しております。1年間ありがとうございました。