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Microsoft Dynamics CRM による新統合案件管理システム 「TRICK」を構築 営業担当者の事務作業と営業コストを大幅に削減し、ワーク フロー可視化による業務改善のサイクルを確立 国内大手通信キャリアとして FMBC (Fixed Mobile and Broadcasting Convergence) をスローガンに、固定・携帯電話などの通信から放 送までを統合したソリューショ ンを積極的に展開する KDDI株式会社 (以下、KDDI)。同社では 2010 年 4 月、 Dynamics CRM による新統合案件管理システム「TRICK」を全面稼働させました。 KDDI では過去 10 年間に 16 社と合併してきたため、複数のシステムが併存した 状態が続き、営業担当者には、案件申請などの煩雑な事務処理が存在していました。 そこで TRICK によるワークフローのシステム化を実施した結果、社内承認の業務速 度が 20% スピードアップし、加えてペーパーレス化による用紙節約だけでも 1 千万 円のコストが削減されました。さらに業務プロセスのパフォーマンス分析によるボト ルネック解消で事務処理がスピードアップするなど、科学的手法と数値データに基づ くワークフロー改革を実現しています。 導入背景とねらい 煩雑なワークフローを統合、刷新して 営業担当者への業務サポート力を強化 「新統合案件管理システム "TRICK" 導入のきっかけとなったのは、当社 が、過去およそ 10 年間に 16 社との合併を繰り返してきたため、各社 から引き継いだシステムが混在し、営業担当者にとって事務処理作業が 複雑になっていたことです」と、KDDI の法人営業サポート部門を統括 する理事 ソリューション事業本部 サービス推進本部長 山本泰英氏は 当時を振り返ります。 加えて当時は紙の書類の処理ワークフローが煩雑で、作成や承認に費 やすタイムロスや人的ミスの可能性も避けられませんでした。さらに法人 向けの営業では、従来のような製品単体での販売から、個々の顧客企 業のニーズに最適化されたソリューション提案へと市場戦略が移りつつ ありました。膨大な商材を迅速かつ的確に組み合わせて提供するうえで も、IT を活用した省力化とスピードアップが必須だと考えられていたのです。 「この状況を脱するために、営業プロセスをシステム化できないかと考えたのです。もちろん現 状の改善だけではなく、将来の市場戦略の布石という意図もありました。通信市場はかつての 右肩上がりの急成長から、成熟期に移りつつあります。そこ ではプロダクトアウトで製品を売るだけでなく、お客様のニー ズを先取りして、最適なソリューションに組み合わせて提案し ていくアクティブな営業が必須となります。そうした意味でも、 営業担当者が本来の営業活動に集中できる環境作りが急務 だったのです」 (山本氏)。 TRICK は営業担当者の業務支援を目的としており、その導 入の際も山本氏は、会社の収益に貢献できるバックヤードと いうコンセプトを強く意識したと語ります。営業担当者の負荷 軽減の一方で、バックヤード部門の士気向上というねらいも あったとのことです。 ソリューション概要 KDDI 株式会社 ○プロファイル KDDI株式会社は 1984 年の創業以来、「新たな価値創造」を スローガンに掲げ、情報通信環境の構築、整備はもとより、誰 もが安心かつ安全に情報通信を利用できる環境作りを行ってき ました。また近年では、お客様サポート、サービス、コンテン ツのソフト面と、インフラ・端末機器のハード面の両面から、 固定通信とモバイル通信を融合したサービスの提供を進める一 方、通信と放送との連携も進みつつあり、次世代通信インフ ラ構想「ウルトラ3G」をベースに、FMBC (Fixed Mobile and Broadcasting Convergence) の実現に向け貢献を続けていま す。 ○シナリオ ・新総合案件管理システム TRICK 導入以前、KDDI の法人営 業部門では、ソリューション ビジネスの拡大に伴い営業案件 が複雑化しており、また過去 10 年間に繰り返された企業合 併の結果、営業担当者の事務処理において複数のシステムが 併存し使い勝手が煩雑になっていた。 ・そこで、Microsoft Dynamics ® CRM を導入し TRICK を構築。 営業ワークフローの移行とペーパーレス化、プロセスの可視化 と自動化を実現した。 ・その結果、社内承認の業務速度の 20% スピードアップ、ペー パーレス化による約 1 千万円のコスト削減、タイム スタンプ とログ取得によるプロセス改善のサイクル確立とスピードアッ プ、証跡管理などの成果を実現した。 ・現在は将来の成熟市場に不可欠なアフター サービス充実に向 け、CRM としての機能向上とさらなる活用に向けた取り組み を推進中。 ○ソフトウェアとサービス ・Microsoft Dynamics ® CRM 4.0 ・Microsoft ® SQL Server ® 2005 Enterprise Edition ・Microsoft ® Windows Server ® 2008 ・Microsoft ® Windows Server ® 2003 R2 Enterprise Edition ・Microsoft Dynamics ® CRM Sure Step (Dynamics CRM シ ステム構築方法論) ○メリット Dynamics CRM によるワークフローの自動化で、営業担当者 の事務処理にかかわる作業負担を大幅に軽減。その結果、営 業行動に付随する工数や費用などの大幅な削減と効率アップが 実現します。またプロセスの可視化による問題発見から分析が 可能になり、迅速な業務改善のサイクルが確立できます。 ○ユーザー コメント 「TRICK 導入の最も大きな成果は、"営業を科学する" という テーマの実現です。定量的な分析や評価が難しかった営業行動 のプロセスをワークフロー全体にわたって可視化し、案件の進 捗度合いなどを客観的に計測できるようになったのです。この データを基に、業務プロセスごとに必要な対応や改善を指示で きるようになったのが最大の変化であり、収穫でした」 KDDI株式会社 理事 ソリューション事業本部 サービス推進本部 本部長 山本泰英 氏 KDDI株式会社 KDDI株式会社 理事 ソリューション事業本部 サービス推進本部 本部長  山本泰英 氏

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Microsoft Dynamics CRM による新統合案件管理システム「TRICK」を構築営業担当者の事務作業と営業コストを大幅に削減し、ワークフロー可視化による業務改善のサイクルを確立

国内大手通信キャリアとして FMBC (Fixed Mobile and Broadcasting Convergence) をスローガンに、固定・携帯電話などの通信から放送までを統合したソリューションを積極的に展開する KDDI株式会社 (以下、KDDI)。同社では 2010 年 4 月、Dynamics CRM による新統合案件管理システム「TRICK」を全面稼働させました。KDDI では過去 10 年間に 16 社と合併してきたため、複数のシステムが併存した状態が続き、営業担当者には、案件申請などの煩雑な事務処理が存在していました。そこで TRICK によるワークフローのシステム化を実施した結果、社内承認の業務速度が 20% スピードアップし、加えてペーパーレス化による用紙節約だけでも 1 千万円のコストが削減されました。さらに業務プロセスのパフォーマンス分析によるボトルネック解消で事務処理がスピードアップするなど、科学的手法と数値データに基づくワークフロー改革を実現しています。

■ 導入背景とねらい

煩雑なワークフローを統合、刷新して 営業担当者への業務サポート力を強化

「新統合案件管理システム "TRICK" 導入のきっかけとなったのは、当社

が、過去およそ 10 年間に 16 社との合併を繰り返してきたため、各社

から引き継いだシステムが混在し、営業担当者にとって事務処理作業が

複雑になっていたことです」と、KDDI の法人営業サポート部門を統括

する理事 ソリューション事業本部 サービス推進本部長 山本泰英氏は

当時を振り返ります。

加えて当時は紙の書類の処理ワークフローが煩雑で、作成や承認に費

やすタイムロスや人的ミスの可能性も避けられませんでした。さらに法人

向けの営業では、従来のような製品単体での販売から、個々の顧客企

業のニーズに最適化されたソリューション提案へと市場戦略が移りつつ

ありました。膨大な商材を迅速かつ的確に組み合わせて提供するうえで

も、IT を活用した省力化とスピードアップが必須だと考えられていたのです。

「この状況を脱するために、営業プロセスをシステム化できないかと考えたのです。もちろん現

状の改善だけではなく、将来の市場戦略の布石という意図もありました。通信市場はかつての

右肩上がりの急成長から、成熟期に移りつつあります。そこ

ではプロダクトアウトで製品を売るだけでなく、お客様のニー

ズを先取りして、最適なソリューションに組み合わせて提案し

ていくアクティブな営業が必須となります。そうした意味でも、

営業担当者が本来の営業活動に集中できる環境作りが急務

だったのです」 (山本氏)。

TRICK は営業担当者の業務支援を目的としており、その導

入の際も山本氏は、会社の収益に貢献できるバックヤードと

いうコンセプトを強く意識したと語ります。営業担当者の負荷

軽減の一方で、バックヤード部門の士気向上というねらいも

あったとのことです。

ソリューション概要

KDDI 株式会社

○プロファイルKDDI株式会社は 1984 年の創業以来、「新たな価値創造」をスローガンに掲げ、情報通信環境の構築、整備はもとより、誰もが安心かつ安全に情報通信を利用できる環境作りを行ってきました。また近年では、お客様サポート、サービス、コンテンツのソフト面と、インフラ・端末機器のハード面の両面から、固定通信とモバイル通信を融合したサービスの提供を進める一方、通信と放送との連携も進みつつあり、次世代通信インフラ構想「ウルトラ3G」をベースに、FMBC (Fixed Mobile and Broadcasting Convergence) の実現に向け貢献を続けています。

○シナリオ・ 新総合案件管理システム TRICK 導入以前、KDDI の法人営

業部門では、ソリューション ビジネスの拡大に伴い営業案件が複雑化しており、また過去 10 年間に繰り返された企業合併の結果、営業担当者の事務処理において複数のシステムが併存し使い勝手が煩雑になっていた。

・ そこで、Microsoft Dynamics® CRM を導入し TRICK を構築。営業ワークフローの移行とペーパーレス化、プロセスの可視化と自動化を実現した。

・ その結果、社内承認の業務速度の 20% スピードアップ、ペーパーレス化による約 1 千万円のコスト削減、タイム スタンプとログ取得によるプロセス改善のサイクル確立とスピードアップ、証跡管理などの成果を実現した。

・ 現在は将来の成熟市場に不可欠なアフター サービス充実に向け、CRM としての機能向上とさらなる活用に向けた取り組みを推進中。

○ソフトウェアとサービス・ Microsoft Dynamics® CRM 4.0・Microsoft® SQL Server® 2005 Enterprise Edition ・Microsoft® Windows Server® 2008 ・Microsoft® Windows Server® 2003 R2 Enterprise Edition ・ Microsoft Dynamics® CRM Sure Step (Dynamics CRM シ

ステム構築方法論)

○メリットDynamics CRM によるワークフローの自動化で、営業担当者の事務処理にかかわる作業負担を大幅に軽減。その結果、営業行動に付随する工数や費用などの大幅な削減と効率アップが実現します。またプロセスの可視化による問題発見から分析が可能になり、迅速な業務改善のサイクルが確立できます。

○ユーザー コメント「TRICK 導入の最も大きな成果は、"営業を科学する" というテーマの実現です。定量的な分析や評価が難しかった営業行動のプロセスをワークフロー全体にわたって可視化し、案件の進捗度合いなどを客観的に計測できるようになったのです。このデータを基に、業務プロセスごとに必要な対応や改善を指示できるようになったのが最大の変化であり、収穫でした」

KDDI株式会社理事ソリューション事業本部サービス推進本部本部長 山本泰英 氏

KDDI株式会社

KDDI株式会社理事ソリューション事業本部サービス推進本部本部長 山本泰英 氏

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KDDI 株式会社

「たとえば、開通申請などの事務処理プロセスをスピードアップして受

注から開通までの納期が短縮できれば、それだけ売り上げの計上が早

く行えます。また、今まで 1 万円かかっていた開通コストを 5 千円に

圧縮できれば、そのコストの回収月数は半分になり、直接の収益向上

に結び付く。こうした経験を通じて、バックヤードも立派に会社の利益

に貢献できるのだと気付いて欲しかったのです」と山本氏は明かします。

■ 導入の経緯

既存のワークフローを生かすため カスタマイズしやすいオンプレミス型を選択

2007 年 12 月に TRICK 導入プロジェクトを立ち上げ、企画および

検討期間を経た 2008 年 5 月に具体的な製品選定を開始。最終的に

2008 年 9 月には Dynamics CRM の採用が決まりました。

「性能限界の高さ、そして高度なカスタマイズに耐える柔軟さが大きな

決め手になりました。また Dynamics CRM はクラウド型、オンプレミ

ス (自社設置) 型のいずれも選べますが、カスタマイズの容易さという

点でオンプレミス型を選びました。というのも、システムとワークフロー

を一度に移行して現場を混乱させたくなかったので、現行のワークフ

ローをそっくり移行して、それに合わせてシステムの方をカスタマイズす

る方法を採用したからです。加えて、他の社内システムとの連携作業も

考慮すると、やはり高度なカスタマイズが可能なオンプレミス型になり

ました」 (山本氏) 。

自社でスクラッチ開発での見積もりを作成し、検討した結果、コスト的にも

開発期間もパッケージの方が有利と判断。そこで候補に挙がった 4 社の

製品を比較し、最終的に Dynamics CRM の採用を決定したのです。

最も大きな選択理由の 1 つに、カスタマイズ

での優位性があります。自ら製品の評価、検討

にあたった技術統括本部 情報システム本部 ソ

リューションシステム部 開発4グループ グループ

リーダーの田村隆司氏は、「TRICK ではエンド

ユーザーの使い勝手を第一に、営業活動の生産

性を損なわないレスポンスの実現を目指しました

が、取扱商品が多岐にわたり、データベースなど

は管理項目が非常に多く構造が複雑になるので、

カスタマイズしやすいオンプレミス型が選べる

Dynamics CRM が良いと考えたのです」と語り

ます。また作り込みに .NET Framework を利用

すれば、パッケージのコアな部分の変更やリスク

を冒さずに作業できる安心感も評価されました。

今回の TRICK 導入は、テーマごとに 2 つの大

きなフェーズに分けて行われました。ソリューショ

ン事業本部 サービス推進本部 業務企画部 シス

テム推進グループ 課長補佐 伊藤雄士氏は、「ま

ずフェーズ 1 (2009 年 7 月カットオーバー、累

計ユーザー数 2,000 名) は "営業ワークフロー

のシステム移行" が行われました。ここでは、従

来の紙ベースや添付ファイルでやりとりされてい

た報告や承認申請、その他規定の書式など、案件の進行に必要なすべ

てのドキュメントの電子化がメインになりました。続くフェーズ 2 (2010

年 4 月カットオーバー、累計ユーザー数 3,000 名)のテーマは "既存

の案件管理システムからの移行" です。ここでは既存の案件管理システ

ムに含まれる試算、相対申請、見積もり、料金調整といった一連の機

KDDI株式会社ソリューション事業本部サービス推進本部業務企画部 システム推進グループ課長補佐 伊藤雄士 氏

KDDI株式会社技術統括本部情報システム本部ソリューションシステム部 開発4グループ グループリーダー 田村隆司 氏

システム フロー図

企業情報管理システム 請求システムTRICK 導入前 営業日報

システム

オーダー情報管理システム

試算 申請 見積 料金

案件管理システム

スケジュール

企業情報管理システム 請求システムフェーズ 1

2009 年 7月営業日報システム

オーダー情報管理システム

試算 申請

TRICK(営業ワークフロー)

見積 料金

案件管理システム

スケジュール

企業情報管理システム 請求システムフェーズ 2

2010 年 4月営業日報システム

オーダー情報管理システム

試算 申請

          TRICK(統合案件管理) 

見積 料金

(案件管理) ⇒ TRICK:「統合案件管理」へ

スケジュール

案件発掘 日報 請求初期提案 最終提案・申込 構築・開通

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能を TRICK に移行、統合しました」と語ります。

これら 2 つのフェーズでは、構築手法も対照的に大きく異なっています。

「フェーズ 1 では、現行の営業のプロセスを変更することなくシステム

化することが主眼でした。それまで紙やメール添付などで動いていた書

式や、職制・職階と承認権限が必ずしも一致していないといった現場

の実状を吸収するために、カスタマイズに大きな労力を注ぎました。反

対にフェーズ 2 は Dynamics CRM が本来得意とする案件管理システ

ムの移行だったため、 Dynamics CRM の API を駆使して旧システムの

機能を Dynamics CRM の標準機能に落とし込んでいく作業が中心に

なりました」 (伊藤氏) 。

併行して、営業担当者全員を対象にした説明会を開くといった周知徹

底策も積極的に行われたと伊藤氏は語ります。

「リリースの 2 か月前には、システム部門に頼んで社内のネットワーク上

にテスト環境を用意してもらいました。Microsoft® Windows Server®

2008 Hyper-V ™ 上に展開したこの環境を実際に操作しながら説明会

を行ったのですが、非常にわかりやすいと好評でした。現在もこの環境

は残されていて、個別の問い合わせや要望があった際の対応に活用して

います」。

またシステム構築の実作業では、MCS (マイクロソフト コンサルティ

ング サービス) がサポートにあたりました。田村氏は一緒に構築に取

り組んだ感想を、「特にフェーズ 2 で既存システムの機能を Dynamics

CRM の標準機能に落とし込む作業では、 Dynamics CRM が得意と

する領域と当社の要望とをマッチングさせるうえで、大いに手腕を発揮

してもらえたと感じています。こちらの要望を伝えると、それを標準機

能で実現するにはこうしたら良いという落とし込みの提案がすぐ返って

くるので、オンスケジュールで仕様の取りまとめを完了できました」と

語ります。

■ システムの概要

社内承認の業務速度 20% アップ と 経費 1 千万円のコスト削減、運用面での効率も向上

「今回の TRICK 導入がもたらした最も大きな成果は、"営業を科学する"

というテーマを実現したことです。これまでは定量的な分析、評価が難

しかった営業行動のプロセスを、ワークフロー全体にわたって可視化す

ることで、案件の進捗度合いなどのパフォーマンスを客観的に計測でき

るようになりました。ここで得たデータを基に、業務プロセスごとに必

要な対応や改善を指示できるようになったのが最大の変化であり、収

穫だったと言えます」 (山本氏) 。

この結果、定量的に 3 つの大きな成果が得られたと山本氏は言います。

「第一に、社内承認の業務速度が 20% もスピードアップできたこと。大

きくは紙文書のコピーをとる手間などがシステム化で不要になり、一連の

事務処理が簡素化されたのです。また異なったシステムが並立し、両者

の差異の調整だけでプロビジョニング工程の 10 〜 15% を占めていた

のも不要になりました。第二は、営業に付帯するコストが減ったこと。こ

れも紙がなくなったことが大きく、3 か月で約 1 千万円の節約になりま

した。そして第 3 はスピードアップです。プロセスごとにタイミング スタ

ンプとログ取得が行われるため、作業のボトルネックの発見から改善ま

でが速やかに、かつ数値に基づいて行えるようになったのです。中でも、

手戻りのチェック機能は特筆すべき成果です。承認段階で手戻りの多い

案件の原因分析から改善までが、迅速に行えるようになりました」。

また伊藤氏は、「他の Microsoft® Office 製品と連携できるメリットにも注

目しています。たとえば Dynamics CRM の動的データ エクスポート機能

を使って、営業データベースからユーザーのデスクトップ上の Microsoft®

TRICK システム構成図

SMTPサーバー

NTPサーバー

スイッチ

SLB(ハードウェア ロードランサー)

ストレージ エリアネットワーク

CRM Databases2 nodes failover failover clustering

SQL Server 2005 Enterprise EditionWindows Server 2003 R2 Enterpries x64 Edition

SQL Reporting Services2 nodes web farm

(load balanced by SLB)SQL Server 2005 Reporting Services Enterprise Edition

Windows Server 2003 R2 Enterprise x64 Edition

CRM 4.0 Application Servers2 nodes web farm

(load balamced by SLB)Microsoft CRM 4.0

Windows Server 2003 R2 Enterprise x64 Edition

CRM Domain Controller2 nodes

Windows Server 2003Standard Edition

CRM ドメイン (TRICK)

ドメインコントローラー

KDDI ドメイン

3,000 ユーザー

KDDI イントラネット

スイッチ

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KDDI 株式会社

Office Excel® へデータをリアル タイムで抽出でき

るようにすれば週次の営業報告が不要になり、一

層の工数削減が可能です」と期待を語ります。

こうした業務改善の効果に加えて、システムの管理

および運用面でも負荷軽減とスピードアップが実

現しました。技術統括本部 情報システム本部 ソ

リューションシステム部 開発4グループ 課長の宮崎

秀夫氏は、パッケージ製品ならではの長所として、

アップグレードの際も、ベンダー側できちんと作り

込まれている安心感があると評価します。

「基本的な検証だけ自社で行ってすぐにアップグ

レードできるため、システム更新が迅速かつ安全に行えるのがいいです

ね。反面、パッケージは内部まで自分たちでは細かく見られませんが、

TRICK ではデータベースのパフォーマンス チューニングなども、MCS

がリリース直前まで手を入れてくれたおかげで、十分に満足のいくレベ

ルにできました。また以前のシステムでパッケー

ジを利用した際は、カスタマイズを重ねすぎて

バージョンアップができなくなってしまったのです

が、Dynamics CRM では MCS が、カスタマ

イズできる範囲をあらかじめ提示してくれるので、

その面でも安心して改良できます」。

さらに技術統括本部 情報システム本部 ソリュー

ションシステム部 開発4グループ 課長補佐 渡

部高裕氏は、「Dynamic CRM は、ユーザー イ

ンターフェイスの変更などが非常に簡単に行えま

す。業務担当者から今すぐと言われても対応でき

るようになり、仕事のスピードにシステムが応えられるようになったと感

じています」と語ります。

■ 今後の展望

成熟期の市場を制する強力な CRM を目指し、 さらなる機能向上と活用を

本稼働から間もない TRICK を、今後は商談からアフター サービスま

で、よりトータルな顧客サポートのツールとして成熟させていきたいとソ

リューション事業本部 サービス推進本部 業務企画部 システム推進グ

ループ グループリーダーの平嶋淳氏は抱負を語ります。

「今後はモバイル系システムとも積極的に連携して、営業現場の訪問履

歴や応対履歴なども取り込んで、プレセールスか

らアフターケアまでをカバーできるように育てて

いきたいですね。営業担当者から見て、仕事が

TRICK だけで管理できるところまで持っていけ

たらと願っています」。

一方で伊藤氏も「将来的にはマーケティング デー

タベースへと発展していくのではないかと予想して

います。特にモバイルと連携することで、外出先な

どからもリアルタイムで情報をインプットして、即

時に営業担当者と共有、活用できるまでのスピー

ド感のあるものにしていきたいですね」と語ります。

こうしたスタッフのさまざまな想いをまとめるように、「冒頭でもお話しし

たように、通信業界は成長期から成熟期へというパラダイム シフトの中

にあります。これからは新規契約を増やすよりも、既存のお客様にいか

に継続していただくかが重要な課題になるでしょう」と語る山本氏は、そ

の実現には顧客満足度を高める顧客サポートが不可欠であり、通信キャ

リアの生きる道はアフター サービスにかかっていると確信します。

「その予想に基づくと、現在の私たちの TRICK の使い方は、新規の

営業活動を中心に支援する SFA (Sales Force Automation) の域に、

いまだとどまっていると言わざるを得ません。今後のアフター サービス

強化、そしてキャリアとしての生き残り戦略を実現するために、本来の

意味での CRM システムとして TRICK をさらに大きく育て、フルに活

用していきたいと願っています」と力強く語る山本氏。我が国の情報通

信のリーディング カンパニーとして、KDDI は自らに課せられた新たな

ステップに向かってチャレンジし続けていきます。

本ケーススタディは、インターネット上でも参照できます。http://www.microsoft.com/japan/showcase/本ケーススタディに記載された情報は製作当時(2010 年 5 月)のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。本ケーススタディは、情報提供のみを目的としています。Microsoft は、明示的または暗示的を問わず、本書にいかなる保証も与えるものではありません。製品に関するお問い合わせは次のインフォメーションをご利用ください。■インターネット ホームページ http://www.microsoft.com/japan/■マイクロソフト カスタマー インフォメーション センター 0120-41-6755

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KDDI株式会社技術統括本部情報システム本部ソリューションシステム部 開発4グループ課長補佐 渡部高裕 氏

KDDI株式会社技術統括本部情報システム本部ソリューションシステム部 開発4グループ課長 宮崎秀夫 氏