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MOSER SCHAFFHAUSEN AG SWITZERLAND MEDIA KIT BASELWORLD 2012

Moser Media Releases_Japanese_Baselworld 2012

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Moser Media Releases_Japanese_Baselworld 2012

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M O S E R S C H A F F H A U S E N A G

S W I T Z E R L A N D

MEDIA KIT

BASELWORLD 2012

目次

LegaL Note

Product News 2012メリディアン・デュアルタイム

モナードデイト・マローネ

マユ・マローネ・ダイヤモンド

comPaNy Portrait稀有な時計ブランド 「H. Moser & Cie」

ヨハン・ハインリッヒ・モーザー

時計製作所モーザー シャフハウゼン 株式会社

モーザーグループ AG

年表

suPPLemeNtary iNformatioNモーザーの永久カレンダー

細部まで熟慮したイノベーションとして結実した「ダブルプルクラウン」

交換可能なエスケープメント構造グループ

シュトラウマン・ヘアスプリング®

シュトラウマン・ダブルヘアスプリング・エスケープメント

時計の重心誤差を修正するトゥールビヨンか排除するシュトラウマン・ダブルへアスプリングか ‒

Pictures Product News 201201 メリディアン・デュアルタイム ref. 346.121-023 黒バック

02 メリディアン・デュアルタイム ref. 346.121-023 白バック

03 メリディアン・デュアルタイム ref. 346.121-024 黒バック

04 メリディアン・デュアルタイムref. 346.121-024 白バック

05 メリディアン・デュアルタイム lifestyle piCture

06 メリディアン・デュアルタイムdiAl view CAl. HMC 346.121

07 メリディアン・デュアルタイム MoveMent view CAl. HMC 346.121

08 メリディアン・デュアルタイム ペラトン式自動巻き機構

09 モナードデイト・マローネref. 342.502-006 黒バック

10 モナードデイト・マローネ ref. 342.502-006 白バック

11 モナードデイト・マローネ ref. 342.502-007 黒バック

12 モナードデイト・マローネ ref. 342.502-007 白バック

13 モナードデイト・マローネ lifestyle piCture

14 マユ・マローネ・ダイヤモンド ref. 321.503-B15 黒バック

15 マユ・マローネ・ダイヤモンド ref. 321.503-B15 白バック

16 マユ・マローネ・ダイヤモンド ref. 321.503-B16 黒バック

17 マユ・マローネ・ダイヤモンド ref. 321.503-B16 白バック

18 マユ・マローネ・ダイヤモンド ref. 321.503-B16 lifestyle piCture

cataLogue 2012

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Legal note

coPyright moser schaffhauseN ag, march 2012

All products As well As the trAdemArks Are protected And remAin the

exclusive property of moser schAffhAusen AG. technicAl specificAtions And

AvAilAbility of All models Are subject to chAnGe.

denise studer, [email protected], t +41-52-674 00 54

verenA ZimmermAnn, [email protected], t +41-52-674 10 94

h. moser & cie

moser schAffhAusen AG

rundbuckstrAsse 10, ch-8212 neuhAusen Am rheinfAll, switZerlAnd

t +41 52 674 00 50, www.h-moser.com

member of moser Group AG

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メリディアン・デュアルタイム 4 / 39

メリディアン・デュアルタイム

モーザー社は鋭意な開発作業によって結実した初の自動巻きムーブメントをバーゼルワールド2012 で発表します。全く新たな自動巻きムーブメントを組み込み,第二タイムゾーンを表示します。

メリディアン・デュアルタイム専用に開発したムーブメントには、モーザー特有の特徴として知られ、愛でられている複雑機能に新たな機能を付加しました。午前・午後 (AM/PM) で自動的に切り替わる 12 時間表示と 24 時間表示文字盤です。上部に配置された特徴的な大型ウィンドウでは、午前 (AM) は 12 時間表示で、午後 (PM) は 24 時間表示になります。第二タイムゾーンを示すやや小さめの赤色時針は、リューズの操作によって 自在に時間単位で前後に調整できます。特許取得済みのモーザーのダブル・プル・クラウン機構により、リューズを間違いなく中間位置にセットできます。正確に合っている時刻を止めたり、ホームタイムを変えることはありません。第二タイムゾーンが必要ない場合は、色違いの時針は本来の時針の下に隠れて動きます。

モーザー自動巻きムーブメント HMC 346.121 は 72 時間、つまり 3 日間というこの市場では長時間のパワーリザーブを確保します。大型のゴールド製ローターには 185 年来変わらずに使われているモーザー刻印が施されています。これこそモーザー時計の卓越した品質と真正さの証です。ローターの作動エネルギーは、両方向に巻上がるラッチメカニズムを介して大型香箱に伝えられます。一方のラッチは引張り、他方は押しつけるように作動します。モーザー独自のモジュール型脱進機がメリディアン・デュアルタイムの正確な動きを保証します。自社製造のシュトラウマン・ヘアスプリング、巻上げヒゲゼンマイ、硬化ゴールドを用いたアンクルとガンギ車が組み込まれていることは言うまでもありません。

メリディアン・デュアルタイムのケース側面はモーザーならではのフリーシェイプにデザインされています。サファイヤクリスタルを用いたシースルーの裏ブタから、新型の機械式自動巻きムーブメントをじっくり見ることができます。

12 時表示と 24 時表示の切替え

メリディアン・デュアルタイム では午前と午後を区別するため、全く新規の機構が採用されています。1、2、4 の数字だけで構成されているスライダーが相応に動きます。数字 4 が文字盤表示枠の下側で右側に隠れ、あるいは数字 1 が同様に左側に隠れることで、午前・午後が正しく表示されるメカニズムです。この表示は、正午と深夜零時にわずか 1 秒間で切替わります。約 8 時間分巻上るスプリングによってのみこのメカニズムが可能になります。ムーブメントのその他の動きを妨げることは全くありません。毎日二度このスプリングの力が瞬時に働いて、スライダーが素早く作動します。

メリディアン・デュアルタイム 5 / 39

メリディアン・デュアルタイム 6 / 39

技術仕様メリディアン・デュアルタイムリファレンス 346.121-023

ケース∙ 18k ローズゴールド製の円形 3 ピースケース∙ サテン処理と研磨加工のケース面∙ 直径 40.80 mm∙ 高さ 10.97 mm∙ 商標の頭文字’ M ‘を刻印したゴールド製リューズ 6.00 mm∙ ドーム型サファイヤクリスタル、内側は無反射仕上げ∙ サファイヤクリスタルを用いたシースルーの裏ブタ

ムーブメント∙ キャリバー HMC 346.121、自動巻きムーブメント∙ 機械式マニファクチュール・ムーブメント∙ 固定リング無し∙ 直径 34.00 mm∙ 高さ 6.51mm∙ 石 29 個∙ 振動数 毎時 18,000 回の振幅運動∙ パワーリザーブ 最低 3 日間∙ 調整 6 ポジション∙ ラッチ∙ ゴールド製ローター∙ カナや駆動歯車は全てモーザー式歯車機構∙ 独自のモジュール型脱進機∙ 純正シュトラウマン・ヘアスプリング、巻上げヒゲゼンマイ∙ 硬化ゴールドを用いたアンクルとガンギ車

機能∙ 第二タイムゾーン∙ 午前・午後 (AM/PM) 表示∙ ダブル・プル・クラウン機構リューズの確実な調整位置を確保する特許取得済み機構∙ 秒針停止機能

表示∙ シルバー、サンバースト模様の文字盤とダイヤモンド研磨の装飾部∙ 針先が平坦研磨された立体的デザインの時針、分針、中央からずらして配置された懐中時計式秒針∙ センター配置の赤色時針が第二タイムゾーンを表示∙ 表示は 12 時位置で 12 時間または 24 時間表示に切替わる

ストラップおよびクラスプ∙ ブラウンの手縫いアリゲーター・レザーストラップ∙ モーザー印章付き 18k ローズゴールド製のフォールディング・クラスプ

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メリディアン・デュアルタイム 8 / 39

メリディアン・デュアルタイム

技術仕様メリディアン・デュアルタイムリファレンス 346.121-024

ケース∙ プラチナ製の円形 3 ピースケース∙ サテン処理と研磨加工のケース面∙ 直径 40.80 mm∙ 高さ 10.97 mm∙ 商標の頭文字 ‘M ‘を刻印したプラチナ製リューズ 6.00 mm∙ ドーム型サファイヤクリスタル、内側は無反射仕上げ∙ サファイヤクリスタルを用いたシースルーの裏ブタ

ムーブメント∙ キャリバー HMC 346.121、自動巻きムーブメント∙ 機械式マニファクチュール・ムーブメント∙ 固定リング無し∙ 直径 34.00 mm∙ 高さ 6.51 mm∙ 石 29 個∙ 振動数 毎時 18,000 回の振幅運動∙ パワーリザーブ 最低 3 日間∙ 調整 6 ポジション∙ ラッチ∙ ゴールド製ローター∙ カナや駆動歯車は全てモーザー式歯車機構∙ 独自のモジュール型脱進機∙ 純正シュトラウマン・ヘアスプリング、巻上げヒゲゼンマイ∙ 硬化ゴールドを用いたアンクルとガンギ車

機能∙ 第二タイムゾーン∙ 午前・午後 (AM/PM) 表示∙ ダブル・プル・クラウン機構リューズの確実な調整位置を確保する特許取得済み機構∙ 秒針停止機能

表示∙ アルドワーズ、サンバースト模様の文字盤とダイヤモンド研磨の装飾部∙ 針先が平坦研磨された立体的デザインの時針、分針、中央からずらして配置された懐中時計式秒針∙ センター配置の赤色時針が第二タイムゾーンを表示∙ 表示は 12 時位置で 12 時間または 24 時間表示に切替わる

ストラップおよびクラスプ∙ 黒の手縫いアリゲーター・レザーストラップ∙ プラチナ製のモーザー印章付きフォールディング・クラスプ

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モナード・デイト・マローネ 10 / 39

モナード・デイト・マローネ

モナード・デイト・マローネ

H.モーザーの新顔として、南国的エレガンスやバイタリティを醸し出すモナード・デイトが登場しました。スイス、シャフハウゼンで製作され、時計愛好家に人気を誇るモーザー独特のブラウン文字盤が特徴の日付時計にバリエーションが更に広がりました。

ケース側面はサテン処理と研磨加工で仕上げられた無類の形状であるため、モナード・デイトは外観だけでも見まごうとはありません。3 ピースケースの直径は 40.8 mm で、厚さ 10.85 mm の薄型です。ケースの材質により異なる色調のブラウン文字盤が光沢を放ちます。温かい雰囲気のローズゴールド製ケースは、エレガントなライトブラウンに見事にマッチします。クール感覚のホワイトゴールド製ケースはダークブラウン文字盤によって一段と引き立ちます。

他のモーザー日付時計と同様、モナード・デイトでも日付は深夜零時に瞬時に翌日に変わります。月の日数が異なる場合は、リューズで調整できます。この操作は、ムーブメントがスイッチする瞬間でも可能です。この技術は複雑なカップリング機構によって実現するものです。ムーブメントは調整機構から切り離されるため、どの作動部分も妨げられることはありません。文字盤下端部の大型日付表示は2枚のリングを重ねた構造になっています。上層リングには 1 ~ 15 の数字が刻印され、その下のリングには 16 ~ 31 の数字が配置されています。一桁の数字はセンターに位置し、見やすく表示されます。

日付合わせの際に正しい時刻を変えることがないように、モーザー技術陣は無類のダブル・プル・クラウン機構を開発しました。特許取得済みのこの機構では、リューズを止まるまで1回引いた時だけに日付調整ができるようになっています。調整後にリューズを瞬間的に放した後で再度止まるまで引き出した位置で時刻合わせを行います。

キャリバー HMC 342.502 手巻きムーブメントの直径は 34 mm で、サファイヤクリスタルを用いた裏ブタからムーブメントをじっくり見ることができます。二重香箱が最低 7 日間のパワーリザーブを確保します。これだけ長時間のパワーリザーブをもつムーブメントの正確な動きは、モーザー独自のモジュール型脱進機が保証します。自社製造のシュトラウマン・ヘアスプリング、巻上げヒゲゼンマイ、硬化ゴールドを用いたアンクルとガンギ車が組み込まれていることは言うまでもありません。

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モナード・デイト・マローネ 12 / 39

技術仕様モナード・デイトリファレンス 342.502-006

ケース∙ 18k ローズゴールド製の円形 3 ピースケース∙ サテン処理と研磨加工のケース面∙ 直径 40.80 mm∙ 高さ 10.85 mm∙ 商標の頭文字 ‘M ‘を刻印したゴールド製リューズ 6.00 mm∙ ドーム型サファイヤクリスタル、内側は無反射仕上げ∙ サファイヤクリスタルを用いたシースルーの裏ブタ

ムーブメント∙ 巻上げ輪列に傘歯車を使用した手巻きムーブメント HMC 342.502∙ 機械式マニファクチュール・ムーブメント∙ 固定リング無し∙ 直径 34.00 mm∙ 高さ 5.80 mm∙ 石 28 個∙ 振動数 毎時 18,000 回の振幅運動∙ パワーリザーブ 最低 7 日間∙ 調整 6 ポジション∙ 二重香箱∙ 裏ブタ側ムーブメント上にパワーリザーブ表示∙ カナや駆動歯車は全てモーザー式歯車機構∙ ビス止めされたゴールドシャトン∙ 独自のモジュール型脱進機∙ 純正シュトラウマン・ヘアスプリング、巻上げヒゲゼンマイ∙ 硬化ゴールドを用いたアンクルとガンギ車

機能∙ 日付表示はムーブメントの動きから独立しているため、いつでもリューズを前後に動かすことで調整できま

す。∙ ダブル・プル・クラウン機構リューズの確実な調整位置を確保する特許取得済みの機構∙ 秒針停止機能

表示∙ ライトブラウン、サンバースト模様の文字盤とダイヤモンド研磨の装飾部∙ 針先が平坦研磨された立体的デザインの時針、分針、秒針∙ 大型日付表示

ストラップおよびクラスプ∙ 茶色の手縫いアリゲーター・レザーストラップ∙ モーザー印章付き 18K ローズゴールド製のクラスプ

モナード・デイト・マローネ 13 / 39

モナード・デイト・マローネ 14 / 39

モナード・デイト・マローネ

技術仕様モナード・デイトリファレンス 342.502-007

ケース∙ ホワイトゴールド製の円形 3 ピースケース∙ サテン処理と研磨加工のケース面∙ 直径 40.80 mm∙ 高さ 10.85 mm∙ 商標の頭文字 ‘M ‘を刻印したゴールド製リューズ 6.00 mm∙ ドーム型サファイヤクリスタル、内面は無反射仕上げ∙ サファイヤクリスタルを用いたシースルーの裏ブタ

ムーブメント∙ 巻上げ輪列に傘歯車を使用した手巻きムーブメント HMC 342.502∙ 機械式マニファクチュアムーブメント∙ 固定リング無し∙ 直径 34.00 mm∙ 高さ 5.80 mm∙ 石 28 個∙ 振動数 毎時 18,000 振幅運動∙ パワーリザーブ 最低 7 日間∙ 調整 6 位置∙ 二重香箱∙ 裏ブタ側ムーブメント上にパワーリザーブ表示∙ カナや駆動歯車は全てモーザー式歯車機構∙ ビス止めされたゴールドシャトン∙ 交換可能なモーザー・エスケープメント∙ 巻上げゼンマイを取付けた純正シュトラウマン・ヘアスプリング∙ 硬化ゴールドを用いたアンクルとガンギ車

機能∙ 日付表示はムーブメントの動きとは独立しているため、いつでもリューズを前後に動かすことで調整できま

す。∙ ダブル・プル・クラウン機構リューズの確実な調整位置を確保する特許取得済みの機構∙ 秒針停止機能

表示∙ ライトブラウン、サンバースト模様の文字盤とダイヤモンド研磨の装飾部∙ 針先が平坦研磨された立体的デザインの時針、分針、秒針∙ 大型日付表示

ストラップおよびクラスプ∙ ブラウンの手縫いアリゲーター・レザーストラップ∙ モーザー印章付き 18K ホワイトゴールド製のクラスプ

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マユ・マローネ・ダイヤモンド 16 / 39

マユ・マローネ・ダイヤモンド

女性の手首にアクセントを添えるモーザーのクラッシック時計にエレガントなモデルが加わりまし

た。創業者ハインリッヒ・モーザーの最初の妻シャルロッテ・マユの名から取ったこの絶品を飾る最高純度のダイヤモンドが女性の優雅さを一段と引き立てます。

マユ・マローネに加わったこの新型モデルは、絶妙な反射を奏でるブラウンカラーの文字盤と、ダイヤモンドをあしらったベゼルで飾られています。二種類のモデルを用意しました。特殊なサンバースト模様でライトブラウンの輝く文字盤は、ローズゴールド製ケースの暖かな色彩に完璧に調和します。もう一つのバリエーションの文字盤はダークブラウンで、まばゆく輝くホワイトゴールド製のケースと絶妙のコントラストを演出します。

サファイヤクリスタルを用いたシースルーの裏蓋から通して見えるキャリバー HMC 321.503 は長時間のパワーリザーブを確保する手巻きムーブメントで、裏蓋ムーブメント上にパワーリザーブが表示されます。大型香箱により、80 時間のパワーリザーブを確保できるので、巻き直しせずに 3 日間以上確実に時を刻みます。巻上げ輪列に傘歯車を装備し、ソフトで摩耗の少ない動きを保証します。カット・研磨仕上げのエッジの他、地板やブリッジのサンバースト模様、モーザーストライプ仕上げが、このマニファクチュール・ムーブメントの稀有な価値を強調します。刻印された印章は 185 年来使い続けられて、モーザー時計の品質と真正さを証明しています。32 mmの大型ムーブメントにはスイスのノイハウゼンで自社製造されるシュトラウマン・ヘアスプリングと巻上げヒゲゼンマイが取付けられ、マユの正確な動きを保証します。モーザー独自のモジュール型脱進機には、硬化ゴールドを用いた無比のアンクルとガンギ車が組み込まれています。

ケース面はサテン処理と研磨加工で仕上げられ、64 個のダイヤモンドをあしらったベゼルが、直径 38.8 mm のゴールドケースのアクセントになっています。他のモデルではあまり見かけられない大きな「懐中時計秒針」が調和のとれた文字盤を際立たせます。モーザーのかつての懐中時計を模範にして、セコンドは中央からずらして、分リングに最も近い文字盤の端部に配置されています。固定リングを付けない自社開発の大型ムーブメントだけに可能な配置です。

マユ・マローネ・ダイヤモンド 17 / 39

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技術仕様マユリファレンス 321.503-B15

ケース∙ 18k ローズゴールド製の円形 3 ピースケース∙ サテン処理と研磨加工のケース面∙ 64 個のダイヤモンドをあしらったベゼル∙ 直径 38.80 mm∙ 高さ 9.30 mm∙ 商標の頭文字 ‘M ‘を刻印したゴールド製リューズ 5.50 mm∙ ドーム型サファイヤクリスタル、内側は無反射仕上げ∙ サファイヤクリスタルを用いたシースルーの裏ブタ

ムーブメント∙ 巻上げ輪列に傘歯車を使用した手巻きムーブメント HMC 321.503∙ 機械式マニファクチュール・ムーブメント∙ 固定リング無し∙ 直径 32.00 mm∙ 高さ 4.80 mm∙ 石 27 個∙ 振動数 毎時 18,000 回の振幅運動∙ パワーリザーブ 最低 3 日間∙ 調整 6 ポジション∙ 裏ブタ側ムーブメント上にパワーリザーブ表示∙ 秒針停止機能∙ カナや駆動歯車は全てモーザー式歯車機構∙ 独自のモジュール型脱進機∙ 純正シュトラウマン・ヘアスプリング、巻上げヒゲゼンマイ∙ 硬化ゴールドを用いたアンクルとガンギ車

表示∙ ライトブラウン、サンバースト模様の文字盤とダイヤモンド研磨の装飾部∙ 針先が平坦研磨された立体的デザインの時針、分針、中央からずらして配置された懐中時計式秒針

ストラップおよびクラスプ∙ ダークブラウンの手縫いアリゲーター・レザーストラップ∙ モーザー印章付き 18k ローズゴールド製のクラスプ

マユ・マローネ・ダイヤモンド 19 / 39

マユ・マローネ・ダイヤモンド 20 / 39

技術仕様マユリファレンス 321.503-B16

ケース∙ 18k ホワイトゴールド製の円形 3 ピースケース∙ サテン処理と研磨加工のケース面∙ 64 個のダイヤモンドをあしらったベゼル∙ 直径 38.80 mm∙ 高さ 9.30 mm∙ 商標の頭文字 ‘M ‘を刻印したゴールド製リューズ 5.50 mm∙ ドーム型サファイヤクリスタル、内側は無反射仕上げ∙ サファイヤクリスタルを用いたシースルーの裏ブタ

ムーブメント∙ 巻上げ輪列に傘歯車を使用した手巻きムーブメント HMC 321.503∙ 機械式マニファクチュール・ムーブメント∙ 固定リング無し∙ 直径 32.00 mm∙ 高さ 4.80 mm∙ 石 27 個∙ 振動数 毎時 18,000 回の振幅運動∙ パワーリザーブ 最低 3 日間∙ 調整 6 ポジション∙ 裏ブタ側ムーブメント上にパワーリザーブ表示∙ 秒針停止機能∙ カナや駆動歯車は全てモーザー式歯車機構∙ 独自のモジュール型脱進機∙ 純正シュトラウマン・ヘアスプリング、巻上げヒゲゼンマイ∙ 硬化ゴールドを用いたアンクルとガンギ車

表示∙ ダークブラウン、サンバースト模様の文字盤とダイヤモンド研磨の装飾部∙ 針先が平坦研磨された立体的デザインの時針、分針、中央からずらして配置された懐中時計式秒針

ストラップおよびクラスプ∙ ダークブラウンの手縫いアリゲーター・レザーストラップ∙ モーザー印章付き 18k ホワイトゴールド製のクラスプ

マユ・マローネ・ダイヤモンド 21 / 39

伝説的時計ブランド Moser & Cie

伝説的時計ブランド Moser & Cie

1828 年からのチームワーク

時計マイスターの下での徒弟修業が終了に近づいた 1826 年、ハインリッヒ・モーザーは何処でどのように成功の道を見出すべきか考えを巡らせました。彼の故郷であるシャフハウゼンの時計製作所において分業式の時計作りを導入し、自らも小規模の時計工房を設立しようと考えたのですが、当時の市議会はこれを受け入れず、シャフハウゼン市御用時計職人の栄誉は他者に与えられてしまいました。モーザーはロシアのサンクト・ペテルブルクに渡り、そこで 1828 年末

「H. Moser & Co. 商会」を設立します。この店名から筆記体の商標を考案し、更に刻印が付け加えられました。キリル文字やラテン文字筆記体で表された社名と刻印は 1918 年頃まではごく一部の例外を除いて、自社製造品あるいは他社購入品の如何にかかわらず、標準署名としてモーザー時計商会全ての時計に用いられました。

1829 年モーザーはルロックルに時計製作所を設立し、欧州やアジア向けに懐中時計を製作しました。1831 年にはモスクワに支店を出すまでに発展します。当時のロシアで主要な展示会都市であったニジニノヴゴロドとイルビットに支店を出したことも賢明な決断でした。こうしてモーザー社はロシアの二大行政都市と主要展示会開催地で事業を展開することになります。

モーザーは老舗企業はもとより、創業新たな競合者も次第に追い抜いてきます。わずか数年の間に日本、中国、ペルシャ、トルキスタン、シベリア、カムチャッカへと販路を拡大しました。1845 年頃にはモーザー社はロシア全土で他社を寄せ付けない業界トップとなり、時計市場を支配します。はるかパリにも進出するようになります。

ロシアのモーザー社には当時約 50 人のスタッフが働いていました。ドイツ、スイス、ロシア、スウェーデン出身の時計職人達です。当時の書簡から、スイス出身の時計職人ヨハン・ヤコプ・ベア、G. ガンター、ヨハン・ヴィンターハルター、ヴィクトル・ギュイ、パルク、シュヴァープ、そしてモーザーの娘婿アドルフ・リヒャルトの名をうかがうことができます。イタリア人ビアンコも記されています。中でも J. ヴィンターハルターは特に有能で、後にロシアのモーザー社を受け継ぐことになります。

名を上げ、豪商となってシャフハウゼンに戻った後も、モーザーの時計職人としての情熱は失われることはありませんでした。懐中時計ではしばしばケースの造りや品質が弱点であることを修行時代から知っていたので、1853 年シャフハウゼンに時計工房を設立し、約 20 人の職人を使って主に銀製の時計ケースを製造することになります。3 ~ 4 年後には第二の工房を開きます。1863 年には工房を一新し、モーザー自らが開発した機械設備でケースの製作を容易にしました。

残念なことに、一人息子であるアンリ・モーザー (1844-1923) は父の意思に反して時計事業にあまり関心を示さず、1870 年には父子断絶となってしまいます。1874 年ハインリッヒ・モーザーは他界し、二番目の夫人ファニーが営業網全てとルロックルのモーザー工房を相続します。しかし夫人には荷が重すぎたため、1877 年に営業網をヨハン・ヴィンターハルターに、そしてルロックルの時計工房をポール・ジラールに売却しました。ファニー夫人は夫の遺志に従い、H. Moser & Cie や Heinrich Moser & Co. のブランド名を後継会社に引き継ぐことを契約で約束させました。こうしてモーザーは会社全として創業家から他家へと移ったのでした。モーザーの一人息子アンリには後継ぎの男子がなかったため、モーザー家の名跡も途絶えてしまいました。

一方、モーザーの世界規模での店舗網やルロックルの時計工房は、約束どおりに、従来通りの企業・ブランド名

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を継承することになります。1917 年頃までこの状況は変わりません。ところが、スイスの時計職人が支配していたロシアの時計市場は十月革命によって消滅する運命に遭遇します。ロシアのモーザー社最後の経営者二人、コルネリウス・ヴィンターハルター ( 在任 1908 ~ 1918 年 ) とオクタヴ・メイラン ( 在任 1910 ~ 1918 年 ) は 1918 年初頭、全財産を没収されてスイスに戻ることになったのでした。

モスクワではモーザー社が残した施設から 1920 年頃「時計修理工房センター」が設立され、1927 ~ 1930 年に時計の自社製造を開始します。しかし、モーザー時計はその後も長い間最高級時計の代名詞として高く評価されます。ソビエト連邦時代の 1966 年になっても、没収前の 18 金純正モーザー懐中時計が軍首脳陣の一人に献詞彫金を施して贈呈されたものでした。その時計は現在、特別な歴史の証としてモーザー・シャフハウゼン株式会社に所蔵されています。

ジラール家によって引き継がれた後もルロックルの工場は精密時計の製作所として事業展開します。創業者モーザーの方針を継いで、企業基盤を懐中時計や腕時計へと拡大する一方で、卓越した部品メーカーとの密接な事業活動を展開します。ただ、にそれまで頻繁に使われていた埃よけカバー内側にキリル文字で刻まれた会社名は消え去ります。

1953 年には腕時計製作の拡張が記録されています。12 リーリュの防水時計や 11 ½ リーリュの自動巻き時計がその一例です。1973 年には H. Moser & Co. 社は、精密アンクル時計や、主に 18 金や宝石をケースにあしらった特殊時計のメーカーとして言及されています。ルロックルの時計製作所は 1979 年に Dixi-Mechanique グループ傘下に入り、Hy Moser & Cie のブランドで登場します。

創業者が用いた元来のブランド名 H. Moser & Cie がユルゲン・ランゲ博士によって 2002 年に再び国際登録されます。モーザー・シャフハウゼン株式会社がモーザーの子孫も参加して設立されました。現在はハインリッヒ・モーザーの曾孫にあたるロジャー・ニコラスバルジガー氏が取締役会名誉会長を務めます。2005 年秋のハインリッヒ・モーザー生誕後 200 年にあたる日に、モーザー社は再び世界の時計舞台に登場しました。

H. Moser & Cie 社がこの数年に新規開発した時計は、モーザーの伝統であるクラシックでエレガントな外観と媚びの無いアンダーステートメントをかもし出します。モーザーブランドの伝統に忠実に、完璧な品質の自社開発機械式ムーブメントを採用しています。革新的な技術と卓越した使い良さの双方を絶妙に盛り込んだ時計は、H. Moser & Cie だからこそ具現できることなのです。

こうして波乱の歴史の輪が完結します。曾孫バルジガー氏は会見の場でその思いを述べています。「生誕 200 年経った今、ハインリッヒ・モーザーを時計名匠としてシャフハウゼンに帰還させることができて感無量です。」

伝説的時計ブランド Moser & Cie 23 / 39

ヨハン・ハインリッヒ・モーザー

ヨハン・ハインリッヒ・モーザー

シャフハウゼンの優れた時計職人兼実業家のパイオニア

ヨハン・ハインリッヒ・モーザーは 1805 年 12 月 12 日にシャフハウゼンの時計職人の家に生まれました。彼の祖父であるヨハネス・モーザー(1730-1820)も父のエルハルト・モーザー(1760-1829)も、ライン川の滝に近い町で時計職人として働いていました。彼は 1820 年から 1824 年まで父親から時計製造の伝統技術を学んだ後、スイスのルロックルにある時計製造工場で経験を積みました。次第に時計職人ギルド(同業者組合)が様々な規則や制約を課していることに気付くと、それらに猛烈に反対しながらも、こうした制約が製品の品質を向上させるということは十分に理解していました。そして彼自身、その規範を改善させようと努力しました。ほどなく優れた時計職人となり、小規模ながらも予備部品の供給会社を設立し順調に事業を進めました。わずか 18 ヶ月でとび抜けた才能を持つ専門家という評判を得たモーザーの元には、イタリアやパリから注文が殺到しました。1826 年からは、独立した時計会社として、あるドイツ商人のためにケースや家具に収められた置時計を作りました。1827 年 11 月、事業にとって絶好のチャンスを見込んだ彼はロシアのサンクト・ペテルスブルクへと向かい、1828 年には H.Moser 社を設立します。

モーザーの事業は隆盛を極めましたが、これは、高い品質基準を備えた時計を販売するという彼の一生を通じての徹底した入念さによるところが大きかったようです。彼自身、あるいは彼の代理人による品質チェックを受けずに時計が店頭に並ぶということは決してありませんでした。こうした高品質基準を維持する目的で、1829 年、彼はルロックルに時計工場を設立しました。ここでは、ヨーロッパおよびロシア市場専用に時計が製造されました。会社の本拠地となったこの建物は今日もまだ残っています。

モーザーの時計製品は 70 種類のキャリバーを持つまでに拡大しました。自社工場から供給されるムーブメントに加え、アーバン・ユルゲンセンやジャガー・ルクルトといった名高いブランドからもムーブメントを購入していました。ジャガー・ルクルト社の保存記録には、1860 年から、得意先としてモーザーの名が記されています。ここから、複雑機構を備えた 24 種類のキャリバーを含めて 64 種類以上のキャリバーが供給されました。妥協のない品質を掲げるモーザーの時計は、やがてロシア宮廷をはじめ様々な王家や軍隊に供給されるようになり、ほんの数年のうちに、東洋は日本、中国、ペルシャから、西洋はパリ、ニューヨークにまで販売されました。危機の時代も事業はとどまるところを知らず、時計メーカーおよび販売人として活躍していたモーザーは、1848 年の終りに、家族ともにシャフハウゼンに戻ろうと決心しました。

この時点から、彼は自分の人生における一つの使命を見出すようになります。それは、当時非常に静かであったシャフハウゼンの町を、時計の生産設備もある活気あふれる魅力的な産業の町に変えることでした。一方で、家族のためにシャルロッテンフェルズの素晴らしい邸宅の建設にも着手しました。

1851 年にはライン川の運河の建設が完了し、およそ 80 馬力(59 656W)の出力でタービンを駆動させるための水が供給できるようになりました。次いで 1853 年にはシャフハウゼンの他の著名人との共同事業で

「Schweizerische Waggonfabrik bei Schaffhausen(シャフハウゼンのスイス鉄道車両製造工場) 」、および「Schweizerische Industriegesellschaft (SIG) Neuhausen(スイス工業社《SIG》ノイハウゼン)」が設立されました。同年、モーザーはシャフハウゼン - ヴィンタートゥール鉄道線路を共同設立しました。彼の熱意は尽きることなく、この時期、その他にもいくつかの会社設立に関与し、設立のための資金拠出も行っています。

1863 年から 64 年にかけての冬には、伝動装置を介して近接する会社に安く電力を提供する目的で、スイスライン川で最も大きなダムの建設に乗り出しました。これは、タービンの動力が巨大なケーブル伝動装置に供給され、これが直接、様々な生産本部や工場に電力を供給するという仕組みでした。この水力発電所によって、シャ

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フハウゼンの町に産業の新たな時代が幕を開けたのです。

モーザーはシャフハウゼンの人々から多大な評価を受けていましたが、それでも失意がないわけではありませんでした。一人息子のヘンリー・モーザー(1844-1923)に、父親の時計製造会社に加わり、やがては後を継ぐという気がまったくないことに対する失望を、彼はどうしても乗り越えることができなかったのです。

ハインリッヒ・モーザーは 1874 年 10 月 23 日にこの世を去り、2 番目の妻であるファニーが、彼の遺言によりすべての事業利益を相続しました。スイスで最も裕福な女性の一人になったとはいえ、彼女には、今や世界的に知られる時計会社の責任を負う気はまったくありませんでした。1877 年、彼女は、ロシアの全事業を地元の代表取締役であるウィンターハルターに売却し、ルロックルの時計工場はポール・ジラールの手に渡りました。販売契約には、「相続会社はすべて、永久に H. モーザー社あるいはハインリッヒ・モーザー社のブランド名の下で操業し続けるものとする」と規定されていました。

ハインリッヒ・モーザーは、今日もなおシャフハウゼンの町にその名をとどめ、旧市街の彼の生家やシャルロッテンフェルズの邸宅も健在です。現在シャフハウゼンにある新しい電力発電所は、ライン川の歴史的なダム用地に建てられています。彼自身、あるいは彼の支援によって築かれた事業の多くが、現在も順調に運営を続けています。彼の名を採ったモーザー通り、特別イベントの会場として使用されるモーザーガーテン・パークのブロンズの胸像…。シャフハウゼンの町には、著名市民モーザーに対する人々の尊敬の念があちこちに見られます。また、シャルロッテンフェルズの家は一般公開されています。

2010 年 11 月、ハインリッヒ&ヘンリー・モーザー財団はモーザーグループ AG の資金援助を得て、シャルロッテンフェルズにモーザーファミリーミュージアムをオープンしました。ノイハウゼンのかつての邸宅に開かれた常設展は ,19 世紀中頃のモーザー家での生活を甦らせます。ハインリッヒ・モーザーの時計アトリエとヘンリー・モーザーの東洋のコレクションの数々は邸宅の一階に展示しております。

ヨハン・ハインリッヒ・モーザー 25 / 39

時計製作所モーザー・シャフハウゼン株式会社

時計製作所モーザー・シャフハウゼン株式会社

独自性にかける情熱 - 長い伝統への責務。

ハインリッヒ・モーザーの曾孫にあたるロジャー・ニコラス・バルジガーと時計専門家ユルゲン・ランゲ博士から成る投資家グループによって 2002 年シャフハウゼンに設立されたモーザー・シャフハウゼン株式会社は、この数年に輝かしい躍進を遂げました。

当初は H. Moser & Cie ブランド名の国際登録やモーザー家系とその時計製作についての歴史調査に重点をおいた事業活動は、次第に新規の時計技術へと大きく転換しました。同社はまもなく、ターゲットを定めたマーケティングだけでなく、伝統的時計製作技能を基盤としながらも、革新的でかつ顧客に利用しやすい時計の製作が目標達成につながると判断しました。かくなる目標は自社製作でのみ達成可能ですが、設立して日の浅い会社にとってはまさに至難のわざです。この果敢な企業戦略を支えたのがハインリッヒ・モーザーが掲げた二つの基本原則でした。

基本原則その一 : 最高の部品メーカーと協力してはじめて最高級の時計を作ることができる。最大限の自社製造をがむしゃらに目指すという最近の風潮を明確に否定したのです。伝統的な時計製作には特別な知恵や何百年かけて積み重ねられた経験が随所に駆使されています。真に無類の部品は何世代にもわたる専門的特殊技能をもつ職人が作り出せるものです。モーザー社はまさにそれを活用します。シャフハウゼンやノイハウゼンの工場で製造するのではなく、特にスイスのジュラ地方の卓越した専門職人と密接な事業共同を行っています。ただし、プロトタイプや量産前の試作品用部品は、ノイハウゼンに設置された最新の機械で製作します。技術開発もノイハウゼンで行いますが、量産品は基本的にジュラ地方の専門企業から調達します。

基本原則その二 : モーザーの最大の強みはムーブメントです。その部品には精巧な技術が求められるため、大量生産は合理的ではありません。機械式時計愛好者にとって最大の関心はそのようなムーブメントです。伝統的方式で製作したムーブメントを組み込んだ現代感覚の腕時計なのです。込み入った製造技術を駆使して製作した部品を手作業で組み込まなければなりません。量産メーカーにはこのような部品はありません。金製のアンクルやガンギ車を組み込んだエスケープメント、さらに巻上げ機構に装備した傘歯車やビス止め式ゴールドシャトンもその例です。そのほか、温度均衡化処理され、先端がカーブした真のビス止め式テンプ、ホワイトゴールド製ビス、スロットネジにはめ込んだスチール製の調整ネジ等々。また、緩急針システムは採用せず、テンプに取り付けたビスで調整する伝統的方式を採用しています。

時計作りで豊かな経験をもつ時計師や時計設計者、プロトタイプ製作者から成る意欲溢れるチームを形成することで、経験と情熱が一つになったのです。確固たる経済的基盤に支えられ、このチームは無類の仕事を成し遂げました。この情熱の成果はモーザーのカタログに見て取れます。

モーザー生誕 200 年にあたる 2005 年秋、ラインの滝のすぐ傍で催された華々しい祝賀会の場でその時計が初めて紹介され、絶賛を浴びました。結成当初から国際性を指向するチームは、2005 年のバーゼルワールドでプロトタイプを展示し、正式な販売代理店も確保しました。こうしてモーザー時計は 2005 年秋から再び世界中に上市される運びとなったのです。

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モーザーグループ

モーザーグループ

ホールディング・カンパニーの設立に資本投資

モーザーは企業ビジョンである 「独自性にかける情熱」 のもと、外観はやや控えめにしながらも、センセーショナルな内部機構を装備した抜群に洗練された時計を世に送り出してきました。それと同時に、時計産業界に旋風を巻き起こし、その卓越した性能がたちまちにして高い評価を受けることになる非常に複雑なエスケープメント部品の開発でもリードしてきました。

ホールディング・カンパニーとして昨年設立した 「モーザーグループ株式会社」は今や、製造にかかわる以下の四社を傘下にもつ企業へと発展しました。

Moser Schaffhausen AG(モーザー・シャフハウゼン株式会社)「H. Moser & Cie (H. モーザー )」で国際的に高い知名度をもつ時計ブランド

Precision Engineering AG(プレシジョンエンジニアリング株式会社)複雑なエスケープメント部品を専門とし、国際登録された「シュトラウマン・スパイラル」や 「ニヴァフレックス」 等のブランドを製造

PEG GmbH(PEG 有限会社)時計製作にかかわる高度なノウハウを積み上げた製造企業

MSG AG(マニュファクチュアリング・サポート・グループ株式会社)最先端の技術および機械設備を装備した製造およびマネジメント企業

モーザーグループはかくして、時計技術の将来に求められる要求を解決するためのあらゆる前提条件を兼ね備えています。その一方で医療技術等、他の分野にも業界の枠を超えて技術・納入業者面での協力関係を推し進め、そのためにモーザーグループ株主から数千万スイス ・ フラン規模の資金を確保しています。

ノイハウゼンのルントブック工業団地に独自の製造施設を改築・増築し、第一ステージが終了しました。最先端の機械を導入し、重要なノウハウ、さらにスタッフを増強することで、最新技術が一段と強化されることになります。モーザーグループはこの地域においてここ数年間で 70 人を超える高度な専門教育を習得したスタッフに雇用の場を提供しました。ただし、メディアに大々的に宣伝しませんし、国の保護も一切受けていません。

「モーザーが創り出す真正性は、そのブランドの歴史や技術、最高度の専門経験を積み上げたスタッフ、そして精通した技術が生み出す」モーザー経営首脳陣が打ち出すビジョンの中核と、グループがこれまでに達成した成功の鍵がこのメッセージに表現されています。

モーザーグループの第二の重心は長期的な視野に立った思考、行動そして決断です。火急の問題には即座に対応しますが、長期的で持続的な経営管理こそが企業の長期的繁栄を確保するものだからです。このため、どのような方向においても独立性を失うことなく、しかも卓越したサプライヤーとは長いタイムスパンで密接な共同事業を展開します。

しかし、どのような企業の活動や経営においても倫理性を見失ってはなりません。お客様をはじめ、企業スタッフ、

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サプライヤー、さらには環境や資源に対する正しい倫理観念が求められます。この観点がモーザーにおける第三のライトモチーフです。

最後にはなりましたが、国際性を見据えた企業活動はモーザーの第四のライトモチーフとして非常に重要な要素です。創業者ハインリッヒ・モーザーが既にグローバルプレーヤーの先駆者であったといっても過言ではありません。地理的境界を超えた彼の活動は当時としては正に例外でありました。このライトモチーフに相応して、モーザーの時計をはじめ、最高精度を誇るエスケープメントやその他の部品は現在も世界中で重宝され高く評価されています。

株式非公開主義によって経営基盤を構成するモーザーグループは、今後も上記四つのライトモチーフをよりどころとし、機械・技術面の能力拡大に向けて建物設備の構築を続行します。これによって垂直連携型製造の可能性が向上するため、グループの独立性、外的要因に対する柔軟な対応、試作品や少量製品の製作等が容易になるだけでなく、製造に必要な工具や装置の工作も可能になります。グループ傘下企業は現段階で既に時計製作に関かかわる技術のほぼ全てを例外を除いて確保しています。その内容には原材料の溶融から構成部品の製造も含まれています。量産では経済観点から不可能な伝統的ソリューションこそが状況に即した柔軟性と高度なノウハウを発揮し、そこから無比の製品が創造されるのです。モーザー・ブランドは吹聴せずとも国際的に商標登録で裏打ちされたゆるぎないものがあります。また機械式時計の重要構成部品を提供するセカンドソースもモーザーグループ共同事業がもたらす魅力です。

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年表

1730 ハインリッヒ・モーザーの祖父であるヨハネス・モーザーがシャフハウゼンに生まれる。見習い時計師を経て、町の専属時計師という名誉ある地位に就く。その後、州議会議員となる。

1760 ハインリッヒ・モーザーの父であるエールハルト・モーザーがシャフハウゼンに生まれる。エールハルトはその父の跡を継いで町の時計師となり、自身も州議会議員となる。

1805 12 月 12 曰、ヨハン・ハインリッヒ・モーザーが誕生する。1820 年から 1824 年の間、父親から時計製造の伝統技術を学ぶ。

1824 ハインリッヒ・モーザーはル・ロックルの一流の時計職人の工房でさらに腕を磨く。彼はすぐに優れた時計職人となり、小規模ながらも部品の供給会社を設立し順調に事業を進める。およそ一年半後モーザーの元には、イタリアやパリから仕事の注文が殺到する。

1826 モーザーは独立した自分の工房でケースや家具に収められた置時計の製造を始める。

1827 大きなビジネスの機会に惹かれて、モーザーはロシアのサンクト・ぺテルスブルグに向けて出発する。馬車と船を乗り継いだ危険に満ちた旅を終えて、彼は地元の時計職人として働くことになる。

1828 モーザーはサンクト・ぺテルスブルグに「H. Moser & Co.(H. モーザー社)」という貿易会社を設立する。これが後に著名となったブランドの始まりであった。モーザーの時計は全て高品質であったことから、ビジネスは大成功を収めた。ハインリッヒ自ら、または彼の代理人による品質検査を通らずに時計が店頭に並ぶということは決してなかったのである。

1829 さらに高い品質を追求するために、モーザーはル・ロックルに自社で販売するための時計を製造する工場を開設する。

1848 裕福な商人であり時計師として活躍していたモーザーは、シャフハウゼンに帰還する。彼は静かなシャフハウゼンの町を活気にあふれる工業都市に変えることを生涯の課題とする。同時に、家族のためにシャルロッテンフェルスに邸宅を建設する。

1851 モーザーはライン川からの運河の建設を完成させる。この運河の水で 80 馬力のタービンを動かす。

1853 シャフハウゼンの有力者たちとの共同事業で「Schweizerische Waggonfabrik bei Schaffhausen(シャフハウゼンのスイス鉄道車両製造社)」、および「Schweizerische Industriegesellschaft(SIG)Neuhausen(スイス工業 < SIG > ノイハウゼン社)」を設立する。同年、モーザーはシャフハウゼン・ヴィンタートゥール鉄道事業の共同設立者となる。さらに、シャフハウゼンに時計ケースを製造する工場を開設する。

1860 モーザーはジャガー・ルクルト社の顧客となる。このころ、彼は 24 個の複雑時計を含めて、64 種類におよぶキャリバーを調達するようになる。品質に妥協を許さなかったモーザーの時計は、ロシア宮廷にも貴族にも軍人にも重宝された。数年を経ずしてモーザーの時計は、日本、中国、ペルシアのみならず、パリやニューヨークのような欧米の都市でも販売されるようになった。

1863/64 モーザーはライン川の最大級のダムを建設する事業に乗り出した。送電システムを通じて、近隣の事業 会社に低価格のエネルギーを供給するためだった。この水力発電所はシャフハウゼンの町の工業時代への幕明けを示すものだった。

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1868 モーザーはアリオスト・ジョーンズ Ariosto Jones がインターナショナル・ウォッチ・カンパニー(IWC)を設立する際、土地と機械の動力となる電力を供給することによって支援を行った。

1874 10 月 23 日、ハインリッヒ・モーザー逝去。彼は遺書で、自分の全事業の相続者として二番目の妻、ファニー・モーザーを指名していた。

1877 ファニー・モーザーはロシアでの事業とル・ロックルの時計工場をそれぞれのジェネラル・マネージャーに売却する。売買契約書には、すべての会社の後継者は永久に “H. Moser & Cie” または “Heinrich Moser & Co.” の社名のもとに経営を続ける、という規定がされていた。

1917 ロシアの 10 月革命によって、スイスの時計製造業者が支配していたロシア国内の時計市場は崩壊してしまった。モーザー社の最後の社長はすべてを奪われ 1918 年の初めにスイスに戻ってきた。ル・ロックルの時計工場はこの政治的混乱を免れ,操業を継続することができ、ロシア市場が崩壊したことで受けた損失を、ほかの国々への輸出を増やすことで埋め合わせようとした。

1920 モスクワのモーザーの時計事業の跡地に国営の「中央時計修理工場」が設立される。

1953 ル・ロックルでは腕時計の生産が拡大され、懐中時計の生産を占める割合は徐々に減少する。なかには、1877 年の契約に違反するにもかかわらず “Henry Moser” の名前を冠した時計もあった。

1973 H. モーザー社は、精密なレバー脱進機を備えた時計や、主にケースに貴石を配した 18K ゴールドの特殊モデルのメーカーとして国際的に認められていた。スイスの時計業界にクォーツ時計の脅威が広がり、ル・ロックルの事業にもその影響が及んだ。

1979 ル・ロックルの時計工場は「ディキシ・メカニック(Dixi Méchanique)」グループの傘下に入り、「Hy Moser & Cie」として営業を続ける。

2002 創設者のオリジナルのブランドである「H. Moser & Cie」がユルゲン・ランゲ博士によってふたたび国際登録される。モーザー・シャフハウゼン AG ウォッチ・カンパニーはハインリッヒ・モーザーの子孫の協力を得て、もとの会社を受け継ぐ形で再出発した。現在はハインリッヒ・モーザーのひ孫のロジャー・ニコラス・バルジガーが取締役会の名誉会長を務める。

2005 ハインリッヒ・モーザーの生誕 200 年を記念して、モーザー・シャフハウゼン株式会社は H. Moser & Cie のブランドのもとに創設の父の貴志に忠実な時計シリーズを国際的な時計市場に向けて再び発表した。

2006 H. Moser & Cie はモーザー・パーペチュアル1(Moser Perpetual 1)、モナード・デイト(Monard Date)、モナード(Monard)及びマユ(Mayu)の 4 つのラインを初めてバーゼル・ワールド 2006 において発表した。

2006 モーザー・パーペチュアル1はウオッチ・オブ・ザ・イヤー(Montre de l’ année)2006 で第二位となる。時計専門誌、「モントル・パッション(Montre Passion)」の専門家の審査員は「モーザー社のパーペチュアル1/ フラッシュ・カレンダーのクラシックなケースのなかには抜群に革新的な機械式ムーブメントが組み込まれている」と評価する。

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2006 H. Moser & Cie 社は 2006 年 11 月、スイスの時計業界で最も注目されるジュネーブ・ウオッチメイキング・グランプリ(Grand Prix d ‘Horlogerie de Genève)で複雑時計賞(Prix de la Montre Compliquée)の栄誉に輝く。モーザー・パーペチュアル1が複雑時計部門で第一位に輝ぃた。

2007 バ - ゼ ル・ フ ェ ア 2007 に お い て、H. Moser & Cie は シ ャ フ ハ ウ ゼ ン の Precision Engineering AG 社との数年にわたる協力によって開発した「シュトラウマン・ヘアスプリング(Straumann Hairspring®)」を世界の時計業界に発表する。

2007 モーザー社の革新的なダブルヘアスプリング脱進機を搭載したトノー型の時計コレクション、ヘンリー・ダブルへアスプリング(Henry Double Hairspring)をバーゼル・ワールド 2007 において発表する。

2007 H. Moser & Cie 社は、白色光沢を放つ非常に希少な貴金属パラジウムを使用したマユ・パラジウム(Mayu Palladium)のモデルを発表する。

2007 モーザー・シャフハウゼン AG 社(Moser Schaffhausen AG)が再編成され、モーザー・グループAG が設立される。これにより、すべての協力会社がひとつの屋根の下にまとめられた。モーザー・シャフハウゼン AG(Moser Schaffhausen AG)とプレシジョン・エンジニアリング AG(Precision Engineering AG)、マニファクチュアリング・サポート・グループ AG(MSG AG Manufacturing Support Group)がー致協力して、H. Moser & Cie ブランドの独立性と業績の躍進を目指す体制を確立する。

2008 H. Moser & Cie ブランドは設立 180 年を祝う。

2008 マザー・オブ・パールの文字盤と優雅なガルーシャ(アカエイ)およびクロコダイル・ストラップ付きのマユ・ブラック・パール(Mayu Black Pearl)と、マユ・ホワイト・パール(Mayu White Pearl)が発表された。

2008 マユ・パラジウム(Mayu Palladium)は硬化処理を施したホワイトゴールドのアンクルとガンギ車を備えたシュトラウマン・ダブルヘアスプリング脱進機を搭載している。文字盤に使われている新しい色がこのモデルの外装にも使われている。

2009 モーザーグループ株式会社は傘下企業の垂直統合型製造に向けた投資を継続。現在まで約 70 人を新たに採用した他、独自の製造所を設立。

2009 エレガントなフュメ仕上げ(Fumé)の文字盤に対する大きな需要に応えるため Henry(ヘンリー)とMonard(モナード)にもこの文字盤を採用。ケースは白色光沢を放つパラジウム、脱進機にはシュトラウマン・ダブルヘアスプリングを採用。

2009 1875 年に出版されたハインリッヒ・モーザーの生涯に関する伝記原本の複製本を私家版として出す。原本はモーザーの死後まもなく出版されたが現在では入手困難なため、今回ファクシミリ版として、他国語への翻訳および現代字体による同内容テキスト冊子を添付したケースに収めて提供。

2010 モーザーグループはコアコンピタンス・持続性・成長に向けた数千万フランにおよぶ投資をほぼ完了。国際的経済危機の中でもモーザーグループは一段と力をつけて発展。H. Moser & Cie は乗馬スポーツの一大イベント「CSI バーゼル 2010」に初めてメインスポンサーとして協賛。この 4 星イベントは際立った国際性とデラックスな随行プログラムで華々しいデビューを果たす。

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2010 モーザー・パーペチュアルムーン(Moser Perpetual Moon)を発表。分単位の精度を修正なしで 1,000 年確保するムーンフェイズ表示を装備した最高級時計。

2011 H. Moser & Cie によるスポンサーとしての貢献もあって、賞金額が世界最高のバーゼルで開かれる屋内乗馬イベント CSI に 5 星等級が与えられる。モーザーはこの祝賀記念にモナード・マローネ(Monard Marrone)を発表。

2011 パーペチュアル・ゴールデンエディション(Perpetual Golden Edition)を発表。ゴールド製のフュメ文字盤や、指針、そしてゴールド製地板やブリッジを装備したムーブメント、交換式シュトラウマン・ダブルヘアスプリング脱進機が奏でる歓喜あふれるこの時計にはクライマックスとして、耐震装置に世界で初めて機能性ダイヤモンド・キャップジュエルが採用された。

2011 パーペチュアル・フュメ・パラジウム(Perpetual Fumé Palladium)は永久カレンダーを装備し、ダブル ヘアスプリング脱進機の長所と、モーザー時計ならではの複雑と洗練美が融合した無比で絶妙の一品。

2012 モーザー社初の自動巻きムーブメントを搭載した「メリディアン)(Meridian)を「バーゼルワールド 2012」発表。新規の第二タイムゾーン表示機能にモーザーならではの洗練された審美性と “独自性に賭ける情熱” が見事に融合した。

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モーザーのパーペチュアルカレンダー

モーザーのパーペチュアルカレンダー

無二の精巧度

モーザーの優れた時計職人によって完全に開発し直された、各月の日数に応じて正確な日付を表示するパーペチュアルカレンダーです。この伝統的な複雑機構に、均整の取れた控え目で上品な文字盤を組み合わせました。これに応じて、「モーザーパーペチュアル1」の日付表示も伝統的スタイルで、3時の位置にある大きな表示窓の数字で表されます。

モーザーのパーペチュアルカレンダーは、世界でただ一つ「フラッシュカレンダー」表示を備えています。これは、日付がいかなる中間的ステップも経ずに月の終りから翌月の初めに直接進むという表示機能です。例えば 2月 28. 日から 3 月 1 日に日付が変わる際に、29、30 などの日付は表示されず、“28” の後に直接 “1” が、文字盤の窓に表示されます。パーペチュアルカレンダーはもちろん前後に調整が可能です。月表示は中央の小さな針と文字盤のアワーインデックスで表示されます。プッシュボタンで調整可能な閏年表示は、HMC341.501 ムーブメントの裏側にあります。

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「ダブルプルクラウン」

「ダブルプルクラウン」 - ディーテイルにまでおよぶ 革新

H. MoSEr & CIE 社製手巻きクラウンのメカニズム

モーザー社の時計開発陣は腕時計の伝統的な機能動作も見直し、手巻きクラウンの複数機能についても熟慮を重ねました。

モーザーの日付時計でも、手巻きクラウンは異なるポジションで選択する三つの機能を兼ねています。ポジション 1 は手巻き位置、ポジション 2 は日付修正、ポジション 3 は指針の調整です。ここまでは全く伝統的です。

リューズの異なるポジションを正確に選択するため、モーザーは「ダブルプルクラウン」 (DPC) メカニズムを開発しました。日付修正のポジション 2 を選択する場合にのみ、リューズを止まるまで引き出します。このポジションでは時計の動きと指針表示は停止しません。リューズを瞬間的に放した後で再度止まるまで引き出すと、ポジション 3 に移り、指針を調整できます。このため操作の不確かさが排除されます。最後にリューズを押すと、巻き上げポジション 1 に戻ります。これによって、モーザーの日付表示付き時計ではリューズ調整する際にわずらわしい中間位置探しが無くなります。さらに、時刻をうっかり変えてしまうことなく日付を修正できます。

この独自の新機能は、お使いになる方にとって非常に便利です。

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H. モーザー社による世界初の技術

H.モーザー社による世界初の技術

腕時計における世界初の交換可能な脱進機構

モーザーの開発技術者が仕様の最初に挙げている特徴は、長い寿命と修理点検の簡便性です。このため技術者は、機械の核心部や時計の調速機にどのような改良を加えるかという点について充分に考慮しました。まず、テンプの調整目的には、インデックスシステムの替わりに、伝統的な純金製重さ補正ネジをテン輪上に配置しました。直径 0.35 mm の精密なネジ山のネジを手作業で製作することを考えると、簡単なことではありませんでした。しかしその結果得られた効果は努力に値するもので、テンプの振動がより均一になり、脱進機は衝撃の影響を受けにくくなり、さらに時計の位置依存度が低減されたのです。

点検の際、時計のムーブメントを掃除して、摩擦により生じた磨耗生成物を取り除く場合は、全ての部品を分解および洗浄し、再度組み立てて注油する必要があります。脱進機の構成部品に対してもこの作業が行われるため、もう一度最初から脱進機の時間調整を行わなければなりません。これは非常に細かい作業であり、何よりも時間がかかります。モーザーでは、この点についてもまた、新しい解決方法を見出しました。その方法とは、腕時計において初めて別個の地板に完全な脱進機構を取り付けることでした。この脱進機構は、ガンギ車の駆動部を介してのみムーブメントの他の部分に接続されています。このためこの脱進機構は、2 本のネジを緩めるだけで、完全に交換することができます。点検の際には、この脱進機構を取り外して、サービス交換品である同等の脱進機構に取り替えます。次いで、取り外した脱進機構の掃除と時間調整を行います。但し、この作業を行うのはモーザーの専門家に限られます。こうして、モーザーによる時計のアフターサービスに要する時間は大幅に短縮され、時間調整の精度を高めることが可能となりました。

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シュトラウマン・ヘアスプリング ®

シュトラウマン・ヘアスプリング®

モーザー時計全ての核心部にまたもや一大センセーション

H. Moser & Cie 社がスイス製アンクルエスケープメントを装備した交換式構成モジュールを 2005 年に初めて紹介した時は大きな関心を呼んだものでした。時計製作技術の粋を極めたソリューションや純金製のガンギ車やアンクルの他にも、テンプには緩急針の替わりに、金製ラテラルアンクルによる全く新しい停止システムを採用した調整ネジ等々、モーザー独特の方式と最高度の装備は列記するときりがありません。

モーザー社時計技師チームの情熱は 2007 年、振動システムの心臓部をなすスパイラルスプリングを開発しました。振動システムの一定性はテンプとともに、一律で正確な時計の動きを確保します。それだけにモーザー開発チームは注意力を集中したのです。モーザーの姉妹会社である精密エンジニアリング ( 株 )、そして高度のノウハウをもつシュトラウマン研究所 ( 株 ) との 5 年間に及ぶ共同開発により、伝説的な NIVAroX の元来の合金の成分や技術を新たに構築しました。NIVAroX はモーザー社の取締役であるトーマス・シュトラウマン博士の祖父であるラインハルト・シュトラウマン名誉博士が 1931 年に 7 種類の成分を用いて発明したもので、破損耐性に優れ、自動補正力をもち、錆びない非磁気性合金です。この発明は特許申請されています。特許で具体的に製法が説明されているように、この合金は時計に要求される特性をもつために、スパイラルスプリングの材料として使われています。この成分をわずかに変更した合金は今日もなお、機械的振動システムを組み込んだ量産ムーブメント全てに採用されています。材料生産においてはシュトラウマンが長年にわたって品質管理にあたっていました。この工程は約 5 年前、精密エンジニアリング社が引き継ぎ、H. Moser & Cie 社と共同で溶融による合金生産からエスケープメントシステムの製作まで、独自の製造ラインを構築しました。

2007 年以降は、H. Moser & Cie に組み込まれているエスケープメントモジュールは全てシュトラウマン・ヘアスプリング ® を採用しています。発明者に敬意を込めたシュトラウマン・ヘアスプリングのブランド名は、Straumann Spirale®、Spiral Straumann®、Straumann Hairspring® として国際登録され保護されています。

溶融混合に使用する超純粋材料の精密な構成はもとより、直径約 20 cm、重さ 80 kg の鋳造スラブを人の毛髪よりも細い 0.075 mm 径のワイヤーに加工する技術には、何世代にもわたって培われてきたノウハウと最高度の工具が求められます。均一な円形ワイヤーを非常に精巧な圧延加工によって帯状に平坦化して初めて、クロノメーターに組み込まれる条件を満たすヘアスプリングとなるのです。シュトラウマン・ヘアスプリング ® の厚さは 0.0001 mm、つまり 1 ミリの一万分の1にまで平坦に圧延加工されているのです。創業者ハインリッヒ・モーザーが 19 世紀に厳守した鉄則「最高の部品メーカーと協力してはじめて最高級の時計を作ることができる」は、現在のモーザー社にも受け継がれているからこそ、スパイラルスプリングの製造だけは他社に任せることはできないのです。ただし、鉱物採掘作業は自らの手では行いません。

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シュトラウマン・ダブルヘアスプリング・エスケープメント

シュトラウマン・ダブルヘアスプリング・エスケープメント

テンプに二本のスパイラルスプリングを装備して重心のずれを排除

H. Moser & Cie はメカニック時計の心臓部となるエスケープメントにまたもや革命を起こしました。交換可能なエスケープメントモジュールを H. Moser & Cie の時計全てに組み込んだ時も世界的にセンセーションを巻きおこしたものです。伝統的な高品質材料が容易かつ確実に交換可能になり、時計師も時計愛好家も喝采を送りました。当然のことですが、テンプと結合して時計の正確な振動を確保するヒゲゼンマイはこれまで通り、自己補正材 Nivarox でできています。この方式により、ヒゲゼンマイ上の第二レベルに “ブレゲ・エンドカーブ “ を曲げられるようになります。このカーブが適切に形成されると、テンプスプリングは振動時に歪むことなく、重心は軸中央にとどまります。このため地球上の重力による誤差は生じません。

理論的にはそうであっても、現実には常にわずかなずれが残ります。エンドカーブの形成は非常に難しいだけでなく、重心は必ずしも軸中央になりません。モーザーの発明陣にとっては当然の事ながら許しがたい欠点です。たとえばトゥールビョンを使ってで誤差を回避するのではなく、何処で誤差が生じるかを特定することで重心誤差を補正する方策が追及されました。その成果がモーザーのダブルヘアスプリング・エスケープメントです。

このエスケープメントでは同一タイプのテンプスパイラルスプリングが二本配置されています。一方のスプリングが振動時に一方向に開く時、もう一方のスプリングは同一カーブを描いて反対方向に動きます。そのため、振動時に二本のスプリング重心は、相反する対称軌道を外側に向けて描くことになります。両者の合成重力は常に軸中央にとどまり、時計の正確な動きに悪影響が生じません。

このように複雑なエスケープメントの製作にあたっては、テンプスパイラルスプリング製造のごく細部にまで熟知したノウハウが求められます。スパイラルスプリング二本の特性曲線や固定は確実に同一でなければなりません。H. Moser & Cie 社は、姉妹会社の精密エンジニアリング社と共同で、ラインハルト シュトラウマン名誉博士が発明した Nivarox のレシピをベースにしたシュトラウマン・ヘアスプリングを開発しました。必要とされる均一性と相応の機械的特性を兼ね備えた材質を確保したのです。このスプリングは温度変化に対する弾性補正機能も同じです。そのため、たとえ温度変化があっても重心は中心からずれません。

Nivarox とその製造技術を 1931 年に特許申請した発明者ラインハルト・シュトラウマン名誉博士に敬意を込め、この革命的エスケープメントはシュトラウマン・ダブルヘアスプリングと命名されました。

シュトラウマン・ダブルヘアスプリング・エスケープメントが交換可能なモジュールタイプであることはモーザーでは当然のことです。2 個のビスを緩めるだけで簡単に交換できます。組み込まれるガンギ車やアンクルは純金製で、その機能面はモーザー独特の硬化処理が施されているため、摩擦が少なく磨耗を抑えた作動を保証します。

この独特のエスケープメントモジュールにおいても、H. Moser & Cie 製の時計全てに組み込まれているトゥールビョンが、香箱を巻き上げた状態でエスケープメントの取り外しを可能にします。時計が無制御状態で作動することはありません。

無類の技術と洗練の粋を集めた時計こそが H. Moser & Cie コレクションに独特の個性と真正さもたらすのです。創立者ハインリッヒ・モーザーが生きているなら、おそらく同じ事を行ったことでしょう。

H. Moser & Cie - 独自性にかける情熱

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トゥールビヨンか、それともシュトラウマン・ダブルヘアスプリング

トゥールビヨンか、それともシュトラウマン・ダブルヘアスプリング・エスケープメントか時計の重心誤差を補正するのか、それとも排除するのか

相互に反対方向に動くシュトラウマン・スパイラルを 2 本装備したモーザーのダブルヘアスプリング・エスケープメントは、重心誤差を全く生じさせません

時計の重心誤差は正確で安定した動きを妨げます。つまり、文字盤が上向きになる水平に置かれた状態と、文字盤が垂直向きに直立に置かれている場合とでは時計の動きに差が生じます。時計職人はこの現象に対処するため、時計の直立状態では遅いテンプの動きを水平状態で相応に速めることでこの誤差をできる限り正確に補正してきました。それにより、時計は平均的には正確に動くことになりますが、時計着用者の行動習慣によってその正確度は異なります。但し、時計の平均的動きは、水平と垂直の状態ができる限り同程度である場合に限られます。実際に多くの時計では、誤差を最小限に抑えるため、5 種類の基準状態で調整されています。モーザーではこの技術を更に進め、時計を 6 種類の状態で調整しています。

では重心誤差は何故生じるのでしょうか。また、どうすればこの現象をより良く回避することができるのでしょうか。時計技術者は何十年もこの問題の解決に取り組んできました。重要なのは、ヒケゼンマイのエンドカーブをどのように固定するかを突き止めることでした。その対策として実現した一つがフラットカーブであり、もう一つがブレゲカーブです。

いわゆるフラットカーブは非常に簡単に実現可能で、機械式時計の大半で採用されています。但し、ヒゲゼンマイの形状が振動時に非対称的に変形する難点があります。それによりヒゲゼンマイの重心が中心からずれてしまいます。ここで、ヒゲゼンマイが垂直状態である場合を想定しましょう。重心がずれたことで振動は地球の重力により「下方向」に加速されることは明白です。それに反して、「上方向」の振動は抑えられるため、遅くなります。ヒゲゼンマイが水平状態ではこのような影響は全く生じません。かくなる現象は時計の正確な動きを確保するためには不都合な前提条件です。

これに対してブレゲカーブはフラットカーブにおける非対称的振動を回避するために開発されました。ヒゲゼンマイの一端を持ち上げて外側から内側へ螺旋状にカーブさせることで問題を解決したのです。しかしこの作業には熟練技巧が求められるため、殆ど手作業で行われます。ブレゲカーブが高級時計にだけ採用される理由は、複雑でしかも高度な職人技が求められるためです。ブレゲカーブにより、ヒゲゼンマイの振動はほとんど完全な対称性が保持されます。但し、あくまでも「ほとんど」です。わずかな残余誤差が残ることは否定できません。

一対のシュトラウマン・スパイラルを装備したダブルヘアスプリング・エスケープメントへの端緒はまことに単純です。スパイラルの 1 本を左回転振動に、そして他の 1 本を右回転振動にして重ねて配置するのです。両方のスパイラルが同一の機械的特性をもつ場合、単一のフラットカーブスパイラルの場合と同様に、振動時に重心は中心から外側に向けて描きます。しかし、2 本のヒゲゼンマイは正確に

反対方向に非対称的に振動するため、両者の総合重心は常に正確に中心にとどまり、ヒゲゼンマイの非対称的振動による重心誤差が生じる余地はありません。

では、重心誤差を補正するトゥールビヨンは何故発明されたのでしょうか。

先ず第一に、トゥールビヨンは鋼鉄製ヒゲゼンマイを装備したバイメタル切りテンプの重心誤差を補正するために開発されものでした。この種のテンプではバイメタルテンプの脚部が温度変化に応じて伸縮することで、時計の精度に及ぼす温度の影響が回避されます。しかし 2 本のテンプ脚部が均一動作を行うことはありえないため、

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トゥールビヨンか、それともシュトラウマン・ダブルヘアスプリング

結果的にはフラットカーブのヒゲゼンマイによる非対称的振動よりも更に大きい重心誤差を招いたことは容易に想像できることです。この技術は当時一般的に着用されたベストやジレに垂直状態で入れられる懐中時計に採用されました。テンプ全体が例えば 1 分間で 1 回自転するので、直接的にトゥールビヨンが有利になります。様々な重心移動は一旦は加速させますが、1/2 分後には逆方向に遅くするからです。平均すると誤差は 1 回転する間に補正されることになります。但し確実に機能するためには、最低でもトゥールビヨンが完全に 1 回転する間、時計は同一ポジションに保たれなければなりません。腕時計では無理な要求であることは明らかです。

今日では、シュトラウマン・スパイラルのような自己補正合金や Glucydur テンプが組み合わされるため、機能性が不完全なバイメタルテンプは採用されません。重心誤差がごくわずかなフラットカーブのヒゲゼンマイ振動を補正する場合にのみトゥールビヨンが組み込まれます。しかしこの場合も確実に機能するためには、トゥールビヨンが 1 回自転する間、時計が同一ポジションに保たれることが前提です。

生じた誤差を事後的に補正するやり方よりも誤差を初めから生じさせない方策が総じて確実なのです。このような理由からモーザーはシュトラウマン・ダブルヘアスプリング・エスケープメントシステムを開発したのです。

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