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ISSN 1346-9029 研究レポート No.377 September 2011 Startup Accelerator の現状と展望 -変化する起業の形から考える今後の ICT ビジネス- 主任研究員 湯川 抗

No.377 September 2011 - Fujitsu Global. Y Combinator Startup Acceleratorという言葉が注目を集め始めたのは、Y Combinator(YC)の実績 によるものであろう。実際、先に挙げたForbesのリストでも、YCは伝統的なIncubatorに

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ISSN 1346-9029

研究レポート

No.377 September 2011

Startup Accelerator の現状と展望

-変化する起業の形から考える今後の ICT ビジネス-

主任研究員 湯川 抗

Page 2: No.377 September 2011 - Fujitsu Global. Y Combinator Startup Acceleratorという言葉が注目を集め始めたのは、Y Combinator(YC)の実績 によるものであろう。実際、先に挙げたForbesのリストでも、YCは伝統的なIncubatorに

Startup Accelerator の現状と展望 ―変化する起業の形から考える今後の ICT ビジネス―

主任研究員 湯川 抗

[email protected] 【要 旨】

1.近年、創業間もない、あるいはこれから創業するような段階のベンチャー企業や創業チ

ームに対して小額の資金を投資し、短期集中の育成プログラムを実施する Startup

Accelerator が数多く生まれている。これら Startup Accelerator は新たな ICT ベンチ

ャー企業を次々と生み出し、その存在感を増している。

2.本稿は、現在注目されている 13 社の Startup Accelerator と、そのプログラムを詳細

に分析した。これら Startup Accelerator が注目される背景には、ICT ビジネスにおい

て、起業自体が以前と比べて容易になっていること、及び起業家にとって実質的なアド

バイスの価値が資金の価値よりも高くなっていることがある。大手 ICT 企業や VC と

いったベンチャー企業に関わるプレイヤーは、今後こうした起業環境の変化を踏まえて

行動しなければならない。

キーワード:Startup Accelerator、Y Combinator、イノベーション、起業、ICT ビジネス

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目 次 1. 問題意識と研究の目的 ........................................................................... 1 2. 研究の方法 ............................................................................................. 1 3. Startup Acceleratorの分析.................................................................... 2

3.1. Y Combinator.....................................................................................................3 3.2. TechStars ...........................................................................................................9 3.3. Excelerate Labs ............................................................................................... 11 3.4. LaunchBox Digital .......................................................................................... 12 3.5. KickLabs .......................................................................................................... 13 3.6. Tech Wildcatters .............................................................................................. 14 3.7. Dreamit Ventures ............................................................................................ 15 3.8. The Brandery................................................................................................... 17 3.9. Capital Factory................................................................................................ 18 3.10. NYC SeedStart Media..................................................................................... 19 3.11. BetaSpring....................................................................................................... 19 3.12. BoomStartup.................................................................................................... 20 3.13. AlphaLab ......................................................................................................... 21

4. Startup Acceleratorの現状と展望 ....................................................... 23

4.1. プログラムの共通点.......................................................................................... 25 4.2. プログラムの相違点.......................................................................................... 26 4.3. 考察:変化するICTビジネスでの起業.............................................................. 26 4.4. Startup Acceleratorの展望............................................................................... 28

5. まとめとインプリケーション .............................................................. 29 参考文献 ........................................................................................................... 33

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1. 問題意識と研究の目的

近年、創業間もない、あるいはこれから創業するような段階のベンチャー企業や創業チ

ームに対して小額の資金を投資し、短期集中の育成プログラムを実施するStartup

Acceleratorが世界各地で数多く生まれている。これらのStartup Acceleratorは、特にICT

ビジネスの世界において存在感を増している。

一般にベンチャー企業は、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル(VC)、大企業と

いった様々なプレイヤーとの連携や協力を経てイノベーションを創出し、成長する。こうし

たベンチャー企業を取り巻く外部環境はエコシステム(生態系)とも呼ばれるが(湯川、

2011)、この新たなプレイヤーの登場は、エコシステムの観点からみれば、どのような意味

を持つのだろうか。Startup Acceleratorは、どのような新しい流儀でICTベンチャー企業を

生み出しているのだろうか。そして、ICTビジネスの世界でこうした新たな育成方法が注目

され始めていることの背景にはなにがあるのだろうか。

Startup Acceleratorが注目を集めることの本質を考察することは、変化が速いといわれ

るICTビジネスにおいて、イノベーションの創出方法を見極めることに繋がると思われる。

これは、VCや大手ICT企業といった、ベンチャー企業の創出するイノベーションに関わる

プレイヤーにとっても重要な問題であろう。

本稿は、Startup Acceleratorの分析を通じて、その本質を考察し、新たなICTベンチャー

企業の成長の方法を探ることを目的とする。

具体的には、①新たなベンチャー企業を次々と生み出し、それらの企業を急成長させる

ことで近年注目を集めている13社のStartup Acceleratorに関して分析を行い、②なぜ

Startup Acceleratorがベンチャー企業の成長に寄与しているのかを検討すると共に、その

将来展望を考察する。 そして、③こうした分析を踏まえて、今後どのようにICTベンチャ

ー企業によって生み出されるイノベーションと関わっていく必要があるのかに関して議論

する。

2. 研究の方法

本稿では目的に照らし、Startup Acceleratorのケーススタディを詳細に行い、これを定

性的に分析する。Startup Accelerator各社は、設立間もないものが多いため、先行研究は

ほとんど存在しない。本稿は基本的には、各社が公開するウェブサイト、及び新聞・雑誌の

記事等から情報収集を基に、Startup Accelerator各社のプログラムと、その創業者・パー

トナーの観点から分析を行うが、TechCrunchが構築するデータベースであるCrunchBase、

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Wikipedia、個人の経歴やプロフィールに関しては、linkedInに公開されているものも参考

にしている。なお、各種の情報源に関してはできるだけ、脚注に記した。

3. Startup Acceleratorの分析

この数年、ベンチャー企業をその創業期から支援、育成するIncubatorが注目を集めてい

る。2010年4月にForbesは“10 Technology Incubators that are changing the world”という

記事を掲載している1(図表 1)。このリストをみると、地方自治体や政府、大学によって

運営されているものが多い。またPARCのようなICT産業の黎明期から新たなイノベーショ

ンを生み出してきた研究施設が名前を連ねているのが特徴である。

確かに、HPやアップルのように、シリコンバレーのガレージからベンチャー企業が生ま

れるという考えはロマンティックではあるが、コントロール不可能なことが多すぎるため、

新たな企業を生み出すには効率的だとはいえないだろう。公的機関や大学などが意図的にベ

ンチャーを生み出す仕組みを作ろうとしているのは、効率的にイノベーションを生み出すた

めの方法と捉えることができる。

図表 1 10 Technology Incubators that are changing the world 名称 地域 創立年 Y Combinator California 2005 Massachusetts Biomedical In iatives it Massachusetts 1985 Houston Technology Center Texas 1997 Palo Alto Research Center Californ ia 1970 The Technolog ovation Center y Inn Illinois 1986 The IceHouse New Ze land a 2001 The Research Park at the University of Illinois at Urbana-Champaign Illinois 1984 The Advanced Technology Development Center Georgia 1985 University Research Park & MGE Innovation Center Wisconsin 1984 The Environmental Business Cluster California 1994

(出所)Forbesの記事を基に富士通総研作成

Forbesの掲載したIncubatorは、いずれもICT分野において新たなイノベーションを生み

出してきた実績のあるものばかりである。一方、近年ではシードステージやアーリーステー

ジといった創業の初期段階のベンチャー企業に対して投資・育成を行うプレイヤーが生まれ

ている。こうしたプレイヤーをIncubatorという場合もあるが、Startup Acceleratorと呼ぶ

ほうが一般的であろう。両者の違いは必ずしも明らかではないが、一般にStartup

Acceleratorは、自らが投資を行ってベンチャー企業を育成しようとしている。

図表 2はテクノロジー関連のベンチャー企業向けのニュースやイベントを紹介するTech

Cocktailが Kellogg School of Managementの協力を得て、2011年5月に公表したアメリカ

1 Ten Technology Incubators Changing The World

http://www.forbes.com/2010/04/16/technology-incubators-changing-the-world-entrepreneurs-technology-incubator.html

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の“Startup Accelerator”のランキングである2。以下では、まずこうしたStartup Accelerator

の先駆けとなったY Combinatorに関して詳細に分析した上で、これら13のStartup

Acceleratorを、そのパートナーとプログラム内容の観点から分析する。

図表 Top 15 U.S. Startup Accelerators 2順位 名称 地域 創立年

1 TechStars Boulder Colorado 2006 2 Y Combinator Californ ia 2005 3 Excelerate Labs Illinois 2010 4 LaunchBox Digital North Carolina 2007 5 TechStars oston B Massachusetts 2007 6 KickLabs California 2010 7 TechStars Seattle Washin ton g 2007 8 Tech Wildcatters Texas 2010 9 Dreamit Ventur s e Penns lvania y 2007

10 The Brandery Ohio 2010 11 Capital Factory Texas 2009 12 NYC SeedStart Media New York 2010 13 BetaSpring Rhode Island 2009 14 BoomStart p u Utah 2010 15 AlphaLab Pennsylvania 2008

(出所)Tech Cocktailの記事を基に富士通総研作成

3.1. Y Combinator

Startup Acceleratorという言葉が注目を集め始めたのは、Y Combinator(YC)の実績

によるものであろう。実際、先に挙げたForbesのリストでも、YCは伝統的なIncubatorに

も並んで掲載されている。

創始者のPaul Grahamは、YCを創業した理由を、ビジネスとして成功させたかったわけ

ではなく、自分はハッカーでありYCが素晴らしいハックに思えたからだとしている3。実際

にGraham自身は高名なLisp(コンピュータ言語)プログラマーであり、起業家である。1993

年、1995年にLispに関する著書を出版している他、1995年に後のYahoo!StoreとなるViaweb

というソフトウエア企業を創業し、1998年にYahoo!に売却している。こうした経歴から、

起業やソフトウエアベンチャー企業に関する見識は深く、2004年に出版した次世代のITビ

ジネスや起業や関するエッセイ集、“Hackers & Painters: Big Ideas from the Computer

Age”は日本語訳もされている他、自らのウェブサイトで執筆しているコラムは、多くの反

2 Top 15 U.S. Startup Accelerators and Incubators Ranked; TechStars and Y Combinator

Top The Rankings http://techcocktail.com/top-15-us-startup-accelerators-ranked-2011-05 ただし、どのようにStartup Acceleratorをランクづけしたのかは明らかにされていない。

3 Why YC http://www.paulgraham.com/whyyc.html

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響を呼ぶと共に日本語の翻訳サイトも生まれている4。

YCは創立当初から起業家やVCから注目されていたが、2011年1月にSV Angel5とロシア

の投資家Yuri Millner6により設立されたStart Fundが、YCから投資を受けたベンチャー企

業全社に15万ドルを転換権付き貸付(convertible debt)として提供すると発表した際には、

その成功が誰の目にも明らかになった7。

MillnerやStart Fundの担当者がYCが投資を行った全企業に対してDue Diligenceなど

の調査を行ったとは考えづらい。当時YCが投資を行ってきた企業は40社程度だとされてい

るが、これら全てがこの条件を受け入れると考えれば、MillnerやStart Fund は600万ドル

の与信枠をYCに与えたことになる。このことは、YCが行ってきたベンチャー企業の目利き

やそれらのベンチャー企業の育成方法が際立っていることを認めたことと捉えることがで

き、YCの名を世界的に有名にすることになった。また、YCは創立当初から、創業者たちの

出資による運営されてきたが、Sequoia Capitalからも出資を受け入れている8。

創業以降2011年6月時点までに、YCは316社のベンチャー企業に投資を行っているが、

Start Fundが投資を決定する以前においても、YCのプログラム修了後に追加の資金調達に

成功した企業の割合は94%にものぼる。一般にベンチャー企業がIPOやM&Aなどでエキジ

ットを果たすにはある程度の時間が必要であり、YCの創業年から考えると必ずしも正確な

評価はできないものの、既に25社は他の企業によって買収されており、そのうち5社は1,000

万ドル以上の評価を得ている9。

4 Grahamのエッセイは、 http://www.paulgraham.com/articles.html に、これらの日本語訳

は、http://d.hatena.ne.jp/lionfan/ 、http://www.aoky.net/articles/paul_graham/ 等に掲載

されている。 5 SV Angel はエンジェル投資家である Ron Conway と David Lee により創設された VC であ

り、主にインターネットベンチャー企業に対して投資を行う。Ron Conway は 15 年以上エ

ンジェル投資家として活動しており、Google や Paypal 等に投資を行ってきた。Graham は

YC よりも多くのベンチャー企業に投資をしているのは Conway だけだとしている。 6 Yuri Millner はウォートンで MBA を取得した後、世界銀行等を経て DST(Digital Sky

Technologies)を 2005 年に創立。Facebook、Zinga、Groupon など世界的に注目されたイン

ターネットベンチャー企業に次々と投資してきた。DST は現在の Mail.ru Group であり、世

界最大のインターネット企業への投資会社のひとつ。 7 転換権付き貸付はアメリカでは創業期のベンチャー企業がよく用いる資金調達方法といわれ

るが、ここでStart Fundが提供しようとしているのは、起業家にとって非常に有利な条件と

なっているため、TechCrunchは“gift”のようなものだとしている。 Start Fund: Yuri Milner, SV Angel Offer EVERY New Y Combinator Startup $150k http://techcrunch.com/2011/01/28/yuri-milner-sv-angel-offer-every-new-y-combinator-startup-150k/?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+Techcrunch+%28TechCrunch%29&utm_content=FaceBook

8 YCによるニュースリリース http://ycombinator.com/party.html 9 Y Combinator Numbers http://ycombinator.com/nums.html

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3.1.1. Y Combinatorのパートナー

2011年7月現在で、Grahamの他5名がYCのパートナーとされているが、このうち常勤は

Paul Buchheit、Harj Taggar、Jessica LivingstonとGrahamの4名とされる。Buchheitは

プログラマーであり起業家でもある。Googleの23番目の社員として入社し、AdSenseや

gmailの開発に携わった後に、ブログや写真・/動画の共有サイトなどで個人が発信する情報

を一元化し、友人と共有、コメントしあうことが出来るサービスであるFriendFeedを2007

年に創業し、2009年にFacebookに売却している10。YCには2010年にパートナーとして参

加した。

Harj Taggar は、2006年にOxford大学で法律を学んだ後、2007年にオークションやマー

ケットプレイスに参加する個人向けのマネジメントシステムを開発するAuctomaticを創業

した。AuctomaticはYCから投資を受けた後、2008年にカナダの上場企業Communicate.com

(現在のLive Current Media)に買収されている。TaggarはYCの卒業生ともいえるが、継

続的にYCに関与を行っており、GrahamもTaggarの貢献を高く評価して2010年にパートナ

ーとなっている11。

Jessica LivingstonはYC創業時からのパートナーであり、以前はAdams Harkness(投資

銀行)のVice President を務めている。2005年からYCに参加しているが、2007年にSteve

Wozniak(Apple)やMitch Kapor( Lotus)ら、有名ICT企業の起業家に対する創業期の状況

に関するインタビューをまとめた“Founders at Work: Stories of Startups' Early Days”を

出版している。

他の2名のパートナーはMITコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL:Computer

Science and Artificial Intelligence Laboratory)教授のRobert Morris、及びロボット開発

を行うAnybotsの創業者でありプログラマーのTrevor Blackwellである 12 。彼らは、

Livingston と同様、YCの創業メンバーでもある。

こうしたパートナーの他にも無料で法律的なアドバイスを行い、基本的な法律業務を行

う弁護士や企業のウェブサイトの作成をサポートするメンバーも存在する。

10 Buchheit の Google 時代の功績に関しては Stross(2008)、Auletta(2009)等に詳しい。 11 Y Combinator announces two new partners, Paul Buchheit and Harj Taggar

http://ycombinator.posterous.com/y-combinator-announces-two-new-partners-paul 12 最近、YCは卒業した起業家をパートタイム・パートナーとして招いている。

Y Combinator Brings On Alumni To Be "Part Time Partners" http://techcrunch.com/2011/06/13/ycombinator-brings-on-alumni-to-be-part-time-partners/

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3.1.2. Y Combinatorのプログラム

YCは創業期の企業に対して毎年2回(1-3月、6-8月)のプログラムを実施している。この

プログラムに参加する企業には11,000ドルと創業メンバー一人当たり3,000ドルが支給さ

れ、この資金と引き換えにYCは2-10%の株式を受け取るとされている13。

例年YCは40~60社程度にこうした投資を行っているとされているが、もちろん、YCのプ

ログラムに参加することを許される企業はある程度の基準を満たしていることが求められ

る。プログラムの申し込みは受付期間中にYCのウェブサイト経由で行なわれ、書類審査を

通過すれば面接へと進み、その後投資を行うかどうかが決定される。

申し込み書類の内容は通常のビジネスプランとは異なり、起業家や創業チームの履歴書

やアイディア、あるいは製品の中身を率直に記載するような内容になっている14。ウェブサ

イトに記載されているFAQでは、審査の際にビジネスプランが問題にならないことが明記

されており、彼らがビジネスモデルよりも起業家、創業チーム、プロトタイプに注力してい

ることがわかる15。現在、YCの知名度向上に伴い、最近では世界各国から1,000社を超える

応募が集まるとされる16。

YCから資金提供を受けることになった起業家や創業チームは3カ月間のプログラムの間、

シリコンバレーに滞在することを求められるが、YCは自らをIncubatorではないとしており、

起業家はどこに暮らすのかは自分たちで決定しなければならない。

Grahamはプログラムの目標は3ヵ月後にベンチャー企業を劇的に良くすることだとして

いるが、ベンチャー企業が良くなる(be in better shape)ということは、企業の提供する

製品のユーザーが増えるようにする、あるいは資金調達の選択肢を増やすということである。

こうした目標のため、YCが実施している支援策は、大きく2つに分けられる。ひとつは、

パートナー達によるベンチャー企業との個別面談であり、Grahamはこの個別面談の時間を

“Office Hour”と呼んでいる。プログラムに参加した企業はOffice Hour中に何度でもパート

ナー達に相談をすることができ、これらには法律相談も含まれる。こうした相談の機会を持

つことの目的に関して、Grahamは個々のベンチャー企業がなにを製品とするべきなのかを

決定することだとしている。こうしたことからも、YCが非常に初期の段階のベンチャー企

13 この数字はWiredの記事によるものだが、Grahamは 1 社当たり 20,000 ドルを越すことは稀

だとしている。Wiredの記事:“Y Combinator Is Boot Camp for Startups” http://www.wired.com/magazine/2011/05/ff_ycombinator/ 、YCのサイトの説明:“What We Do” http://ycombinator.com/about.html

14 YCへの申し込みフォームの内容(2007 年) http://ycombinator.com/s7app.txt 15 Frequently Asked Questions http://ycombinator.com/faq.html 16 謎の投資集団「Yコンビネーター」の実態、少額出資でベンチャーを量産

http://www.nikkei.com/tech/ssbiz/article/g=96958A9C93819696E0E0E2E6948DE0E0E2E4E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E3EAE3E0E0E2E2EBE0E4E2EA

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業に投資を行っていることが理解できる。

もうひとつの活動はプログラムの参加者全員が参加するイベントであり、これらは

“Dinner”、“Angel Day”、“Prototype Day”、“Demo Day”と呼ばれている。Dinnerは半日が

かりのイベントで、週に一度行われる。この場では、Netscapeの創業者Marc Andreessen

やFacebookのMark Zuckerbergなど、成功した起業家や投資家などが起業の際の裏話や失

敗談などを中心とした講演を行うと共に、参加者と実際に会話することができる機会となっ

ている17。

YCは多くの情報を自らのウェブサイトに公開しており、数多くのメディアに取り上げら

れている。そのため、YCに関する情報は溢れているともいえるが、このDinnerや起業家の

アドバイスの中身に関しては全く情報がない。これは、真実の失敗談に基づくアドバイスを

起業家たちが行っていることを考えれば、当然かもしれない。

Angel Dayは起業家がエンジェル投資家たちの前で発表を行う場であり、発表後に起業家

は、マッチングされたエンジェル投資家と対になり、その後定期的に指導を受ける。この場

でマッチングされた起業家が、その後も企業のアドバイザーになることも良くあるとされる。

Prototype Dayは、ベンチャー企業が互いに発表を講評する場で、互いを知ることで助け

合う機会を作ると共にプレゼンテーションの準備の場として機能している。他にも、企業間

の親睦のためのSocial Eventも行われている。

Demo Dayは、投資家に対してベンチャー企業が発表をする場で、VCを初めとする著名

な投資家が集まる場として定着し始めており、YCの活動の中でも外部に最も知られたイベ

ントである。2010年には400人以上の投資家が集まったとされる。プログラムに参加するベ

ンチャー企業が40社~60社であることや、このイベントに参加する投資家の質を考えると、

これはベンチャー企業からみれば大きなチャンスと考えられよう。GrahamはDemo Dayの

目標はベンチャー企業に自己紹介してもらうことだとしており、ベンチャー企業、投資家双

方にとって納得が行くようなディールを望んでいるように思われる。

この他にも、企業の設立に関する法律的な問題を回避するための文書業務もシステム化

されており、このことはYCのプログラムを経たベンチャー企業に投資をする投資家達の安

心材料になると共に、起業家たちが自分のビジネスに集中して取り組む環境を担保している。

3.1.3. Y Combinatorの成功要因

上記に述べてきたYCのパートナーの経歴や、その支援方法から、YCが成功した要因、言

い換えればYCのプログラムに参加したベンチャーを発展させた要因を検討すると、2つの点

17 YCで講演を行ったスピーカーのリスト http://ycombinator.com/speakers.html

7

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が明らかになる。

まず、YCのパートナーらによる直接の支援は大きな要因だろう。YCではGrahamを始め、

自らも企業経験があり創業者や創業期のベンチャー企業が直面する問題に対する知識の豊

富なパートナー達が、その経験や知識に照らして選定した有望な創業者やベンチャー企業に

対して、直接アドバイスを行っている。このことにより、ベンチャー企業はそれぞれの状況

や特性に応じて適切なアドバイスを受けることができる。

直接的な支援には、YCが行っているプログラム修了後のベンチャー企業のための環境整

備も含まれる。こうした支援の代表例は、一般にコストの面などからベンチャー企業には不

得手であるが、重要な設立に関する法律業務などを、システム化して全てのベンチャー企業

に提供していることである。投資家から見れば、YCのプログラムを修了したベンチャー企

業は、法律的な問題をクリアしていると考えられるため、投資の判断がしやすくなる。そし

て、円滑な資金調達はその後の発展可能性を高めることになる。

ベンチャー企業を発展させたもうひとつの原因は、YCが構築してきた人的ネットワーク

による支援である。上記のようなパートナー達による直接的支援が非常に有効であったこと

は疑いの余地がないだろう。しかし、YCではそれで足りない部分を自分達のもつ人的ネッ

トワークやYCが過去の活動を通じて培ってきたネットワークで補おうとしている。

外部のエンジェル投資家に密着して支援させるAngel Dayの開催や、創業者同志の支援を

促すPrototype DayやSocial Event、成功者から直接学ぶ機会を与えるDinnerなどは、いず

れもパートナー達には気づかない点や新たな視点をベンチャー企業に提供している可能性

が高い。

このような、パートナー達による直接的な支援とYCのもつ人的ネットワークを通じた支

援がベンチャー企業を発展させてきたといえる。また、これまで実績から、今やYC自体が

Startup Acceleratorとしてブランドになり始めていることもベンチャー企業にとっては成

功要因となりつつある。先に述べたStart Fundからの投資はその代表例ともいえるが、YC

のプログラムを修了したというだけで、企業価値の評価額が倍になったと感じる創業者も存

在する18。

また、こうしたYCブランドの向上はYCを修了したベンチャー企業を保護する役割も担い

始めている。これらのベンチャー企業に対する扱い方を誤ると、その後YCのネットワーク

に関わることが困難になり、その結果、投資の機会を逸するなどの不利益が生じる可能性が

ある。

YCの成功要因は、以上のようなものだと考えられるが、そもそもこうした成功要因の裏

18 What Happens At Y Combinator http://ycombinator.com/atyc.html

8

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にあるのは、新たなイノベーションや、それを創出する起業家に対するGrahamの信念であ

ろう19。YCの活動は徹底的に起業家や投資家からの信頼を勝ち得るために設計されており、

信頼を失うことを何よりも恐れていることは、GrahamがYCのウェブサイト上で公開して

いる様々な情報からも見て取れる。

3.2. TechStars

TechStarsは2006年に創立され、主にインターネットやソフトウエアを開発するベンチャ

ー企業に対して創業初期の資金提供を行う。3ヶ月間の育成プログラムを年間に4回、Boston

(春)、Boulder(夏)、Seattle(秋)、New York(冬)の4都市で実施している20。図表 2に

示したランキングでは、Boulder、Boston、Seattleのプログラムが選ばれた。

TechStarsの公開する情報によれば、プログラム終了した企業の75%の企業が外部の投資

家から追加投資を受けるか利益を出すことができるようになるとされ、約10%の企業が買

収されている21。

起業家教育と研究を行うKauffman Foundation は、2011年2月にTechStarsに対して

$200,000の資金供給を行っている。これは、Startup Acceleratorのプログラムに起業家が

申し込む際に活用するための共通ソフトウエア開発のためのものである22。また、TechStars

はホワイトハウスが開始したベンチャー企業促進のための官民共同の政策イニシアティブ

である“Startup America”にIntel、IBM等と共に賛同し、2015年までに25,000の新規雇用

を創出することを表明している。 こうしたことから、TechStarsのプログラムがベンチャ

ーの発展を促し始めていることは、一般にも知られ始めていると思われる。

3.2.1. TechStarsのパートナー

TechStarsはDavid Cohen、Brad Feld、Jared Polis、David Brownの4名によって設立

された23。David CohenはDavid Brownと共に、後にZOLL Medical Corporationに買収さ

れるPinpoint Technologiesなど複数のソフトウエア企業を創業し、売却した経験を持つ起

19 こうした Graham の考えは Graham(2004)にも詳しく書かれている。 20 TechStars のウェブサイトには各都市、季節毎のアプリケーションの締切日やプログラムの

期間が明記されている 21 Crunchbaseを基にTechStarsが公開している投資先企業の状況

http://www.techstars.org/results/ 22 TechStars and Kauffman Foundation Join Together to Provide Entrepreneurs Better

Access to Seed Accelerators http://www.kauffman.org/newsroom/techstar-and-kauffman-foundation-join-together-to-provide-entrepreneurs-better-access-to-seed-accelerators.aspx

23 TechStars Launches(Brad Feldのブログ記事) http://www.feld.com/wp/archives/2007/01/techstars-launches.html

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業家であり、エンジェル投資家でもある。また、自らの起業体験を題材にした書籍を出版す

る他、コロラド大学コンピュータサイエンス学部のアドバイザー等も務めている24。

Brad Feldは、1987年に起業したソフトウエア企業であるFeld Technologiesを

AmeriDataに売却し、AmeriDataではCTOの職に就いている25。その後、コロラドに本拠

を置くVCであるFoundry Groupの共同創業者となり、その投資先企業であるZingaなど複

数の有力ベンチャー企業の役員を務めている。

Jared Polisは大学時代に起業した経験をもつシリアルアントレプレナーである。1996年

に起業したオンラインのグリーティングカードサービスであるBlueMountainArts.comは

199年にExcite@Homeに買収された。1998年に起業した花卉の直販サイトである

ProFlowers.comも急成長し、後にecommerceの総合サイトProvide Commerceとなってい

る。

3.2.2. TechStarsのプログラム

プログラムの参加者には、創業者1人につき$6,000、最高$18,000の出資が行われ、それ

と引き換えにTechStarsは6%の株式を取得する。2010年は600社以上の応募があったとさ

れるが、例年各都市のプログラムには10社程度が参加することを許可されている。プログ

ラムへの応募は、TechStarsのウェブサイトから行うことになっており、そのフォームは募

集期間以外には公開されていない。しかし、FAQにはビジネスプランが必要でないことが

明記されており、YC同様にビジネスモデルよりも起業家のアイディアやプロトタイプを重

視して企業を選定していると思われる。

プログラムに参加する企業は、基本的にそのプログラムを開催している場所(Boston、

Boulder、Seattle、New Yorkのいずれか)をベースに活動することが想定されており、各

地でオフィススペースが提供される。

TechStarsのプログラムには、創業者や創業チームに適切なアドバイスを行うことができ

ると見られる数多くのMentorが登録されている。これらMentorには成功した起業家、エン

ジェル投資家、VC、弁護士、投資銀行家などが名前を連ねる26。基本的にプログラムはこ

れらのメンターを活用したアドバイス、及び個々のMentorとの個人的なネットワークの構

築が行えるようにすることに主眼が置かれている。

具体的なイベントとしては、メンターを招いて行われる週に2-3回の夕食会があり、

Q&Aを交えて、参加者との交流が図られている。夕食会に参加するMentorとベンチャー企

24 David Cohenのブログによる http://www.davidgcohen.com/bio/ 25 AmeriData は 1996 年に GE Capital に 490M ドルで買収されている。 26 TechStarsが公開しているメンターのリスト http://www.techstars.org/mentors/

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業の創業者たちとの交流の模様はビデオでも公開されており、起業家たちがカジュアルに交

流を図り、アドバイスを受けることができる様子がわかる。YCのような“Office Hour”に関

しては、正式に提供されていないが、公開されている映像からは、TechStarsの創業者たち

も、プログラム中は頻繁に起業家に対してアドバイスを行っていると思われる。

プログラムの終盤には“Investor Demo Day”が開催され、それぞれのベンチャー企業が投

資家にアピールを行う機会が与えられる27。このイベントには400人以上の投資家が集まる

とされている。

3.3. Excelerate Labs

Excelerate Labsは2010年にChicagoで創立されたStartup Acceleratorである。現在は、

夏季(6~8月)にプログラムを実施しており、受け入れる企業も10社に限定されている。

Excelerate Labsの公開する情報によれば、プログラム終了後10社中8社が外部の投資家か

らの資金調達に成功している28。大手法律事務所であるMcGuireWoodsがプログラムのスポ

ンサーとなっている。

3.3.1. Excelerate Labsのパートナー

Excelerate Labsのパートナーには、Sam Yagan、Troy Henikoff、Adam Koopersmith、

Nick Rosaの4名がパートナーとして名を連ねている。Sam Yaganは、ハーバード大学に在

学中から大学生向けにレポートの書き方など教育ガイドを提供するSparkNotesを創業した

後、P2Pのファイル共有ソフトのeDonkeyなど複数の企業を経験したシリアルアントレプレ

ナーである29。

Troy Henikoffは、中小企業向けの給与計算サービス大手のSurePayrollを初め、複数の企

業の創業に関わった経験をもち、Northwestern Universityの教授も勤めている。Adam

KoopersmithはシカゴのVCであるNew World Venturesのパ-トナーであり、多くの企業の

ビジネス開発に携わってきている。Nick Rosaは、2003年にシカゴのVCであるSandbox

Industriesを起業して以降、ベンチャーの投資・育成に関わっている。

3.3.2. Excelerate Labsのプログラム

Excelerate Labsはプログラムの参加企業1社につき、$25,000の投資を行い6%の株式を

27 このイベントの模様もスライドで公開されている。 http://www.techstars.org/demo-day/ 28 Details http://www.exceleratelabs.com/details/ 29 Digital man (Boston Globeの記事)

http://www.boston.com/yourlife/relationships/articles/2007/09/05/digital_man/

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取得する。先に述べたようにプログラムの参加者は10社に限られているが、2010年は世界

中から307社の応募があったしている。ウェブサイトからアプリケーションフォームを送る

必要があるが、応募期間以外は公開されていない。プログラムはシカゴで行われるため、参

加企業は期間中シカゴでExcelerate Labsの提供するオフィスに入居することになる。

プログラムは13週間にわたって行われ、月毎にテーマが設定されている。Excelerate

Labsは主にシカゴの起業家や投資家など108人のMentorを公開しているが 30 、6月は

“Mentor Immersion”と呼ばれ、これらMentorとの集中訓練を行う期間とされる。具体的に

は創業チームがMentorから事業に関する個別アドバイスを受けると共に、各Mentorのもつ

ネットワークを活用した支援を受ける期間と位置づけられる。

7月は“Business Acceleration”とされる期間で、参加者はExcelerate Labsが開催する起業

家向けの各種セミナーに参加しながら、実際の事業課題に集中的に取り組むことになる。

Excelerate Labsは8月を“Financing Crash Course”としており、200名を超える投資家が集

めてプログラムの最終日に行われる“Investor Demo Day”に向けた、投資家向けのプレゼン

テーションの準備をMentorと共に取り組む。プログラム全体を通して、Excelerate Labs

は自らが招聘するMentorを通じた事業の改善支援を軸にベンチャー企業を育成しようとし

ていることがわかる。

3.4. LaunchBox Digital

LaunchBox Digital は、 2007 年に活動を開始した Startup Accelerator であり、

Washington D.C.で活動を開始したが、現在はNorth Carolinaにある全米有数の研究開発拠

点であるResearch Triangle Parkにその活動を移している。主にインターネットベンチャー

企業向けに資金提供を行うと共に、毎年秋に12週間の集中プログラムを実施している。

TechCrunchによれば、第1期のプログラム参加企業は9社のうち6社がプログラム終了後の

資金調達に成功している31。

3.4.1. LaunchBox Digitalのパートナー

LaunchBox Digitalは、Julius Genachowski、Sean Greene、John McKinleyの3名によ

って設立された。Julius Genachowskiは、連邦通信委員会(FCC)に所属し、Reed Hundt

FCC委員長の側近を務めた後に、Ask.comなど50以上のインターネット企業を40カ国で展

開する、メディア業界の重鎮Barry Diller率いるIACで重役を務めた経験をもち、通信政策

30 Mentors http://www.exceleratelabs.com/mentors/ 31 LaunchBox Digital '09 Now Taking Applications

http://techcrunch.com/2009/02/01/launchbox-digital-09-now-taking-applications/

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やインターネットベンチャー企業に精通している。Sean Greeneは、旅行サイトの運営を行

うThe Away Networkの創業者であり、John McKinley,はAOLでCTOを務めた経験を持つ

32。

3.4.2. LaunchBox Digitalのプログラム

LaunchBox Digitalのウェブサイトで公開されている情報は少ないが、2~4人の開発者か

らなる創業者チームに対してそれぞれ$15,000-$30,000を投資し、各スタートアップの株

式の6~10%、及びプログラム修了後の資金調達ラウンドに参加する権利を得る33。

プログラム期間中、参加者たちはDurhamにある LaunchBox Digitalが提供する無料の

オフィススペースを活用することができるが、30日毎にビジネスに関する評価を受けなけ

ればならない34。

参加者はLaunchBox Digitalの創業者、及び成功した起業家や投資家からなるアドバイザ

ー達35によってアドバイスを受けつつ、製品やサービスのプロトタイプやビジネスプランを

作成することになる。プログラムの最後には、東西両海岸で参加企業によるデモイベントが

行われることになる。

3.5. KickLabs

KickLabsは2009年にSan Franciscoで設立され、年間に20社程度を育成する予定とされ

ている36。San Franciscoを拠点として、創業間もないインターネット企業への投資を行う

VCであるTransmedia Capitalと提携している。

3.5.1. KickLabsのパートナー

KickLabs は、Transmedia Capitalの創業者であるChris Redlitzにより設立された。

Redlitzはシリアルアントレプレナーであり、インターネットの黎明期から特にオンライン

マーケティング関連の企業をいくつも創業している。これらにはLycosに買収された

32 現在、LaunchBox Digital のウェブサイトには McKinley 以外の創業者の名前は掲載されて

いない。 33 投資金額と取得株式の割合に関してはLaunchBox のウェブサイトでは公表していない。

LaunchBox Unleashes Its First Nine Startups http://techcrunch.com/2008/08/05/launchbox-unleashes-its-first-nine-startups/ Internet veterans launch start-up investment fund http://www.reuters.com/article/2007/11/14/us-launchbox-idUSN1422034120071114?sp=true

34 Free Space – Are You Good Enough? http://www.launchboxdigital.com/?p=1391 35 Advisers http://www.launchboxdigital.com/?page_id=163 36 KickLabs Delivers Smart Space for Tech Startups

http://www.prweb.com/releases/2010/06/prweb4099594.htm

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GetRelevantや、Apollo Groupに買収されたAptimusなどがある。また、Omnitureにも創

業期に投資を行っている。

他のStartup Acceleratorと異なり、パートナーやアドバイザーの名前などをウェブサイ

トで公開していないため、情報は限定されているが、Transmedia Capitalのパートナーで

もあるPeter Boboffがパートナーとなっている。Boboffもインターネットの黎明期から数々

のインターネット企業に投資を行ってきたエンジェル投資家であり、自らERPインテグレ

ーションを行う Axis Consulting Internationalを起業し、売却した経験をもつ。

3.5.2. KickLabsのプログラム

KickLabsは2名~8名規模のインターネット企業20社程度に対し、半年から1年間オフィ

ススペースを提供している。不動産業者と提携し、ベンチャー企業に対してSan Francisco

市内に広大なオフィススペースを提供している点が、他のStartup Acceleratorと比べた際

のKickLabsの特徴であろう。サンフランシスコの中心というオフィス環境の良さ、オフィ

ス内での企業間コラボレーションのしやすさがアピールされている。KickLabs自体は、投

資を行っていないがオフィスの賃貸期間や従業員数に応じて株式を取得する。

こうしてみると、オフィスの賃貸料を株式で支払うという支援にも思われる。しかし、

他の起業家たちとカジュアルに話し合うことのできる良好なオフィス環境は、ベンチャー企

業に重視されているといわれ、KickLabsはこうした点で評価されていると考えられる37。

オフィス以外の支援としては、人的ネットワーク構築のため、起業家を初め、Googleや

Yahoo!などの急成長に貢献した経験を持つアドバイザー20人以上からの直接のアドバイス

などを仰ぐことができる環境を提供している。また、販売・マーケティングの専門家と提携

しており、ビジネスの具体的に支援も行う。受け入れる企業は限定されているため、何らか

の審査基準があると思われるが、ウェブサイトでは公開されていない。

3.6. Tech Wildcatters

Tech WildcattersはDallasで設立され、年2回実施する12週間のプログラムを2010年春か

ら開始している。未だプログラムを修了した企業数自体が限られているが、企業向けサービ

スを行うベンチャー企業が多い。

3.6.1. Tech Wildcattersのパートナー

Tech WildcattersのパートナーはGabriella Draney、Jon Feld、Brad Taylor、及びJohn 37 More On AngelPad, The New Incubator Where The Google Blood Runs Thick

http://techcrunch.com/2010/08/23/angelpad-google/

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Reedの4名とされる。Gabriella Draneyはソフトウエア企業を起業した後、Morgan Stanley

や地元のVCで経験を積んでいる。Jon Feldは自ら起業したITコンサルティングを行う

Navigator Systemsで15年間CEOを務めた後にHitachi Consultingに売却した経験をもつ。

Brad Taylorは、CA Technologies、IBM、Siebel Systemsといった大企業、及び複数のベ

ンチャー企業で働いた後、自らが投資し役員をしていた企業を売却しており、大企業とベン

チャー企業、双方に関して知見をもつ。John Reedは、Bluestreak Technology、LifeCast.com、

Source MediaといったICT企業を創業、成長させてきたシリアルアントレプレナーである。

3.6.2. Tech Wildcattersのプログラム

プログラムには毎年数百社の応募があるとされるが、選定の後、8-10社がDallasでのプ

ログラムに参加することができる。参加企業には1社あたり$10,000、創業チームのメンバ

ー一人当たり$5,000で、最大$25,000の投資が行われ、Tech Wildcattersは2-10%の株式を

取得する38。対象とするベンチャー企業がインターネット企業、ソフトウエア企業である点

は他のStartup Acceleratorと変わりないが、消費者向けのビジネスには投資を行わず、大

企業向けのテクノロジーを開発する企業を選定しようとしている点に特色がある。

プログラムは春と秋に行われ、参加企業はTech Wildcattersのオフィスを使うことができ

る他、法務や会計サービスなども利用できる。プログラムの中心と位置づけられているのは

Mentorshipであり、成功した起業家やVCなどから指導を受けることができる39。また、プ

ログラムの最後に、参加企業はエンジェル投資家、VC、大企業の経営企画担当者などを招

いて行われる“Pitch Day”において発表を行う。2010年の“Pitch Day”には300名以上が集ま

ったとされる40。

3.7. Dreamit Ventures

Dreamit Venturesは、2007年にPhiladelphiaで設立され、2011年にはNew Yorkに進出

した。プログラムの期間は3ヶ月で、Philadelphiaでは秋、New Yorkでは春に開催される。

参加者は期間中Dreamit Venturesが提供するPhiladelphiaかNew Yorkのオフィスを活用

することになる。

Dreamit Venturesは、参加者が3ヶ月で実際の製品やサービスを開発することを重視して

いるため、実際にはICT関連の企業が多いとされるが、過去には医療機器を開発する企業か

38 FAQ’s http://techwildcatters.com/faqs/ 39 Mentors http://techwildcatters.com/mentors/ 40 Tech Wildcatters Presents Second Biannual "Pitch Day"

http://www.reuters.com/article/2011/05/23/idUS154060+23-May-2011+PRN20110523

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らの応募もあり、投資分野にはこだわらないとしている。

3.7.1. Dreamit Venturesのパートナー

David Bookspan、Michael Levinson、Steven Welchによって創業された。David

Bookspanは、連邦裁判の記録などをオンラインで提供するCaseStreamを開発した

MarketSpanを創業し、同業者に売却している。継続的にエンジェル投資を行うと共にVC

の代表も務めた経験をもつ。

Michael Levinsonは企業向けのオンライン教育を行うPTS Learning Systemsを起業し、

従業員200名、売上$30Mの企業にまで成長させた後、売却に成功している。その後も4社の

企業を創業したシリアルアントレプレナーである。Steven Welchは、バイオテクノロジー

企業であるMitos Technologiesを創業し、グローバル企業に成長させている。

現在は彼らに加え、Steve Barsh、Kerry Rupp、Mark Wachen、William Crowderの7

名がパートナーとされている。パートナーは全て起業経験や個人投資家としてベンチャー企

業に関わった経験をもつ。

3.7.2. Dreamit Venturesのプログラム

プログラムの参加企業には、一社あたり$10,000、プログラムに参加する創業チームのメ

ンバー一人当たりにつき$5,000が加算され、最大$25,000が投資される。この見返りに

Dreamit Venturesは6%の株式を取得する41。

投資の他、プログラム参加企業には、Mentorによる一対一の指導の他、法務、財務、管

理面でのサポートを受けることができる。Mentorには、他のStartup Accelerator同様、起

業家や投資家などが名を連ねる42。

プログラム中は週に一度、起業家やVCを初めとする投資家などを招いた夕食会を行って

交流を図ると共に、MentorやDreamit Venturesのパートナーによる定期的な打合せが行わ

れる。こうした活動と共に、参加者同士のコミュニティ形成も積極的に行っている。

参加希望者はウェブサイトから申込書を提出し、その後電話などを通じた個別インタビ

ューが行なわれる。受付期間以外は、フォームの内容が公開されていないものの、アイディ

ア、3ヶ月以内にプロトタイプやβ版を作成することができる能力、創業チームメンバーの

能力や熱意などが選定基準として重視される43。

41 FAQ http://www.dreamitventures.com/about/FAQ.php 42 2010 Mentors http://www.dreamitventures.com/team/mentors.php 43 Applying to DreamIt as a Company

http://www.dreamitventures.com/apply/Companies.php

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選定されるとMentorや弁護士、会計士がマッチングされるが、Dreamit Venturesは実際

に複数の有名法律事務所や会計事務所と提携している44。プログラムの前半は製品・サービ

スの開発、後半はプロトタイプやβ版の製作に力点が置かれ、投資家の紹介が行われる場合

もある。他のStartup Accelerator同様、プログラムの最後には投資家などを招いた“Demo

Day”が行われ、追加投資などに向けたアピールの機会が与えられる。

3.8. The Brandery

The Branderyは2010年にCincinnatiで設立された非営利団体である。3ヶ月間のプログ

ラムを実施し、8社~10社の企業を受け入れる。ICT企業だけでなく、広く消費者向けのビ

ジネスに関するアイディアをもつ起業家を募集しており、消費者マーケティングやブランド

構築に強みをもつ。Ohio州が急成長するテクノロジー企業に投資するために設立した官民

共同プロジェクトであるCincyTechや、Cincinnati地域の個人財団などがスポンサーとなっ

ているためか、プログラム終了後もOhio州の7つの郡のいずれかに拠点をおかなければなら

ない。

3.8.1. The Branderyのパートナー

The Branderyはマーケティングの専門家であるDavid Knoxとシリアルアントレプレナ

ーであるJ.B. Kroppによって設立された45。KnoxはP&Gでブランドマネージャーを務めた

経験をもつ。Kroppは、複数の企業の創業経験がある他、ソーシャルメディアマーケティン

グを行うVitrueの副社長を務めている。

3.8.2. The Branderyのプログラム

プログラムへの応募はウェブサイトを通じてフォームを送ることになるが、ビジネスプ

ランは不要であり、ベンチャー企業のアイディアに審査の力点が置かれていると推測できる。

例年8-10社を受け入れ、プログラム参加企業は一社当たり、自社の新株引受権6%と引

き換えに$20,000の投資を受けることができる46。ブランド構築やマーケティングコンサル

タント、法律事務所、会計事務所、マーケティングリサーチの企業などがパートナーになっ

ており、プログラムに参加する企業はこうした専門家からのサポートを受けることができる。

Mentorによるアドバイスは他のStartup Acceleratorと同様に、このプログラムの中核だ

44 Service Providers http://www.dreamitventures.com/team/Providers.php 45 Consumer marketing execs launch nonprofit startup accelerator

http://brandery.org/2010/07/consumer-marketing-execs-launch-nonprofit-startup-accelerator/

46 Details :How can you transform a company into a brand? http://brandery.org/details/

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と思われるが、起業家や地域で活躍する専門家50名以上が名を連ねており、特にマーケテ

ィング関連のビジネスの専門家が多い47。こうした専門家による、デザインやソーシャルメ

ディアマーケティング等の講義のセッションも設定されている。プログラムの最後には、投

資家に向けた自社のビジネスをアピールの場として“Demo Day”が開催される。

3.9. Capital Factory

Capital Factoryは、2009年にAustinで誕生した。投資企業が取り組むビジネスの分野は

特に限定されていないが、これまでのプログラムを修了した企業はインターネット企業が多

い48。

3.9.1. Capital Factoryのパートナー

Capital Factoryが公開しているMentorのうち、Joshua BaerとJason Cohenの2名がディ

レクターとして登録されている。Baerはemailマーケティングの企業など、複数の企業を、

学生時代から創業した経験をもつシリアルアントレプレナーであり、エンジェル投資家でも

ある。Cohenが2006年に創業したSmart Bearは、その後急成長を果たし、今ではAdobeや

Autodeskなど大企業を顧客にもつソフトウエア企業である。

3.9.2. Capital Factoryのプログラム

Capital Factoryはプログラム参加企業一社につき最大$20,000の投資を行い、5%の株式

を取得する49。プログラム期間はオフィスが用意され、毎年5月~8月の初旬の10週間で、9

月には参加企業が投資家や顧客に対して発表する“Demo Day”が行われる。

期間中、ベンチャー企業は企業経験豊富なMentor50と一対一のペアになり、アドバイス

を受けながらそれぞれの課題の改善に取り組むことになる。また、複数のMentorから指導

を受けるセッションや、他の参加企業との交流を図る機会なども設けられている。

こうした他のStartup Acceleratorと同様の機能の他、ホスティング、法務、会計、企業

ロゴの製作といった創業期のベンチャー企業に必要なサービスを無料で提供している51。

47 Meet our Mentors http://brandery.org/mentors/ 48 Five Startups Present At Capital Factory's Demo Day In Austin

http://techcrunch.com/2009/09/11/five-startups-present-at-capital-factorys-demo-day-in-austin/

49 Entrepreneurs like entrepreneurs http://www.capitalfactory.com/details/ 50 20 entrepreneurial mentors http://www.capitalfactory.com/mentors/ 51 More than $20,000 in free stuff to keep your burn low

http://www.capitalfactory.com/freestuff/

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3.10. NYC SeedStart Media

NYC SeedStart Mediaは、Manhattanで設立されたStartup Acceleratorで、2010年から

夏に12週間のプログラムを開始している。プログラムは、インターネット広告、Eコマース、

デジタルコンテンツ、モバイルテクノロジー分野のビジネスに注目しているとしているが、

昨年のプログラム参加企業を見ると広くインターネットビジネスを行う企業を募集してい

ると思われる52。

3.10.1. NYC SeedStart Mediaのパートナー

NYC SeedStart Mediaのウェブサイトなど、直接の情報源には創業者など個人の名前は

公開されていない。ただし、企業パートナーにはComcast、ESPN、Google、MTV Networks、

News Corporation、New York Times、Time Warnerといった超一流メディア企業の名が

並んでいる点は、このプログラムの特徴であろう。また、Comcast VenturesやNYC Seed

等、 New Yorkを拠点に活動するVCがパートナーとなっている。こうした企業パートナー

の他、New York UniversityやSilicon Valley Bankがスポンサーとなっている。

3.10.2. NYC SeedStart Mediaのプログラム

NYC SeedStart Mediaは、最大10社の企業に対して1社あたり5%の株式と引き換えに、

$20,000を投資し、New Yorkのオフィスを供給する。

プログラムに応募する際のガイドラインには、2人の創業メンバー、メディア関連ビジネ

スを行っている、共同創業者の一人は技術者であること、ソースコードやβ版があること、

の4点が指定されている。

プログラムは、起業家、VC、及び一流のメディア企業から専門家をMentorとして招いて

プログラム参加者と議論する機会を提供すると共に、一対一の指導も行い、Mentorや起業

家との間の人的ネットワーク構築に力を注いでいる53。また、全般的に多くの一流メディア

企業が集積するNew Yorkの強みを活かそうとしていると思われる。

12週間のプログラムの最後には“Investor Day”を実施し、参加企業は投資家や提携先、及

び顧客に対してビジネスをアピールすることができる。

3.11. BetaSpring

Betaspringは、2009年にRhode Island州のProvidenceに設立された。地域の商工会議所

やCity of Providenceの関連団体、地元のISPなどがスポンサーとなっており、他のStartup

52 Portfolio http://www.nycseedstart.com/portfolio.html 53 Mentors http://www.nycseedstart.com/mentors.html

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Acceleratorに比べ、非常に地域色が濃いことが特徴だといえるが、必ずしもプログラム修

了後もProvidenceで活動する必要はない。また、過去のプラグラム参加企業にはおもちゃ

や、電化製品のベンチャーなどもあり、様々な業種のベンチャーを受け入れている。

3.11.1. BetaSpringのパートナー

Betaspringは、Allan Tear、Owen Johnson、Jack Templinの3名によって設立された。

Tearは複数のICT企業を起業した経験のあるシリアルアントレプレナーであり、Carnegie

MellonやBrownなどの大学に対して起業家教育に関するアドバイスも行っている。

JohnsonとTemplinも同じくシリアルアントレプレナーであり、Providenceにおける地域活

動に積極的に関わっている。

3.11.2. BetaSpringのプログラム

Betaspringは、最大10社の企業に対して1社あたり6%-10%の株式と引き換えに、$20,000

を投資し、Providenceにオフィスを供給する54。プログラムに参加するための申し込みフォ

ームにはビジネスモデルを明記する必要があり、起業家に対してアイディアやプロトタイプ

以上のものを求めていることがわかる55。

プログラムは6月から12週間 Betaspringが提供するProvidenceのオフィスで行われる。

参加が認められた企業は、この間、成功した起業家や個人投資家、コンサルタント等からな

るMentorの支援を得ながら、プロトタイプの製作を初めとする、具体的なビジネス開発を

行う56。12週間のプログラムの最後には、他のStartup Acceleratorと同様の“Demo Day”が

開催され、追加投資などの機会を探ることができる。

3.12. BoomStartup

BoomStartupは、2010年にUtah州Oremで設立され、現在ではSalt Lake Cityでもプロ

グラムを実施している。ICT企業を対象としており、地元の不動産業者やVC、会計事務所

などがスポンサーとしてプログラムを支えている。

3.12.1. BoomStartupのパートナー

BoomStartupは、Robb Kunz、John Richards、Jon Bradshawの3名によって設立され

た。Kunzは、アーリーステージのICTベンチャーに投資を行うVCのパートナーも務めてい

54 Frequently Asked Questions http://www.betaspring.com/faq 55 Apply http://www.betaspring.com/apply 56 Mentor List http://www.betaspring.com/mentors

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る。2010年にはUtah州のTop 15 Angel Investorsにも選出されている57。

Richardsは、Omniture等、特に地元のICT企業に対して活発にエンジェル投資を行うと

共に、複数の企業のCEOやVPを歴任している58。また、Brigham Young University等の大

学でも教鞭をとる。Bradshawも、他の2人と同様に、エンジェル投資家として活動してき

ており、複数のベンチャー企業のビジネスをサポートしてきた。

3.12.2. BoomStartupのプログラム

BoomStartupはプログラム参加企業一社につき、$15,000を投資し、6%の株式を取得す

る59。2010年には150社から応募があり、10社を受け入れたが、そのうち2社には既に投資

家との契約交渉中だとされる60。

BoomStartupは企業の選定基準として、ビジネスモデルにフォーカスしたICT企業であ

ることや、少なくても1人は技術者である2-3人の創業チームであること、熱意や能力の他、

プログラム修了後もUtah州に留まる意思があることが望ましいこと、等を挙げている。ま

た、アイディアよりも創業チームの質が重要であることを強調している。

プログラムは、5月から8月まで10週間に渡って、BoomStartupの提供するオフィスで行

われる。参加企業は、法務、PR、会計などのサービスをBoomStartupのスポンサー等の企

業から受けることができる。

プログラムの中心となるのは、Mentorshipである 61。参加者企業は、割り当てられた

Mentorから直接指導を受けると共に、Mentorが行う法務、マーケティング、財務管理、製

品開発等のワークショップに参加する。全チーム共通とされるような課題に関するセミナー

も行われ、参加者間の人的ネットワーク構築も促される。Mentorには、Omnitureの創業者

を初めとする、地元の起業家や投資家が選ばれている。プログラムの終わりには、他の

Startup Accelerator同様、“Investor Demo Day”が開催され、企業が投資家にアピールする

機会が与えられる。

3.13. AlphaLab

AlphaLabは、Pennsylvania州で創業期のベンチャー企業専門に投資・育成を行う非営利

57 Founders http://www.boomstartup.com/founders.html 58 BoomStartup Gives Utah Its Own Startup Incubator

http://techcrunch.com/2010/03/10/boomstartup-utah-startup-incubator/ 59 What is BoomStartup? http://www.boomstartup.com/what-is-boomstartup.html 60 Incubator BoomStartup unleashes its first class of Utah startups

http://venturebeat.com/2010/09/02/incubator-boomstartup-unleashes-its-first-class-of-utah-startups/

61 2011 Mentors http://www.boomstartup.com/2011-mentors.html

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団体であるInnovation Works62によって、2008年にPittsburghで設立された。プログラム

を修了した企業は30社以上にのぼり、既に次の資金調達に成功した企業も生まれている63。

3.13.1. AlphaLabのパートナー

AlphaLabの創業パートナーは、Carnegie Mellon大学のEntertainment Technology

Center(ETC)、Refresh Pittsburgh、Project Olympus、及びDevHouse Pittsburghとい

った4つの大学、団体である。

Carnegie Mellon大学の研究センターのひとつで、ETCはテクノロジーと芸術を結びつけ、

新しいツールや映像などを取り入れたインタラクティブなメディアコンテンツの開発・研究

を行うEntertainment Technologyの修士号が取得できる大学院プログラムも提供している。

Refresh Pittsburghは地域で活動するWeb デザイナーと開発者の団体であり、Project

Olympusは、地域のために大学の研究者の先端的研究を商業化することを目的とする団体

であり、学生起業家の支援も行っている。DevHouse Pittsburghは、ソフトウエア開発に関

わるプログラマーとビジネスマンの団体である。

創業パートナーのメンバーから考えると、AlphaLabは基本的にInnovation Worksによっ

て管理運営されていると思われる。

3.13.2. AlphaLabのプログラム

参加企業は5%の株式と引き換えにInnovation Works から$25,000の投資を受ける64。

AlphaLabは、その設立母体である、Innovation Worksが非営利団体であるため、必ずしも

将来の株式売却によるリターンを期待していないが、参加企業は、プログラム終了後も

Pittsburghで事業を行うことを期待される65。

プログラムは1年に2度、20週間に渡って行われ、1回のプログラムにつき最大6社のICT

企業が参加を許可される。他のStartup Acceleratorと比べると、期間が長いこと、参加企

業数が少ないことは大きな特徴であろう。プログラム期間中、参加企業はAlphaLabの提供

するオフィスを使用する。

参加を希望する企業は、申込書を提出した後、実際の面談を経て選出されるが、ビジネ

62 Innovation Works は経済開発プログラムである、Ben Franklin Technology Development

Authority から支援を受けている 63 The Resumator Raises $700,000 For Social Recruiting Solution

http://techcrunch.com/2011/05/06/the-resumator-raises-700000-for-social-recruiting-solution/

64 About AlphaLab http://www.alphalab.org/about.aspx 65 AlphaLab FAQs http://www.alphalab.org/faqs.aspx

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スコンセプトの独自性、テクノロジーのマーケットにおける潜在的可能性、創業チームの開

発能力を基に選考が行われる。また、アイディアレベルでの申し込みも可能とされている。

1-2週間に一度、全ての参加企業向けに、著名投資家や起業家を招いたセミナーが行わ

れる他、Mentor66やAlphaLabのメンバーと共に製品開発などを行う。投資家などへのアピ

ールの場である、“Demo Day”はプログラムの中盤と最後の2度行われる。

4. Startup Acceleratorの現状と展望

これまで、13のStartup Acceleratorを分析してきた。図表 3は、13のStartup Accelerator

を、活動拠点である地域、プログラムの期間、投資額と取得株式数、1回のプログラムでの

受け入れ企業数、Office提供の有無、Mentorship Programの有無、プログラム修了時に投

資家等に対して行われるDemo Dayの有無、及びその他の支援や、プログラム全体の特徴と

いった観点から整理したものである。以下では分析結果を基にStartup Acceleratorの共通

点と相違点に関して分析した上で、全体像を考察する。

66 Advisors & Mentors http://alphalab.org/about/advisors.aspx

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図表 3 プログラムの比較 Startup Accelerator 地域(州) 期間 投資額 取得株式 社数 Office Mentor Demo その他の支援、特徴など

Y Combinator California 3 ヶ月間 (年 2 回)

$20,000 10% 60 ○ ○ ○各種イベントの他、法務等 全社に 150,000 ドルを Start Fund が資金援助

TechStars

Massachusetts(春) Colorado(夏) Washington(秋) New York(冬)

3 ヶ月間 (年 4 回) $18,000 6% 10 ○ ○ ○

全米 4 箇所で実施 TechStars ネットワークは拡大傾向(他の Startup Accelerator と数多く提携)

Excelerate Labs Illinois 13 週間 $25,000 6% 10 ○ ○ ○月毎にテーマが設定が設定され、Demoに向けた準備が実施

LaunchBox Digital North Carolina 12 週間 $30,000 10% 10 ○ ○ ○全 米 有 数 の 研 究 開 発 拠 点 で あ るResearch Triangle Park に拠点 Demo は東西両海岸で実施

KickLabs California 6-12 ヶ月間 - 不明 20 ○ ○ × 良好なオフィス環境、VC と提携

Tech Wildcatters Texas 12 週間 (年 2 回) $25,000 10% 10 ○ ○ ○

法務、会計サービス等 大企業向けのテクノロジーを開発する企業を選定する傾向

Dreamit Ventures Pennsylvania(秋) New York(春)

3 ヶ月間 $25,000 6% 15 ○ ○ ○ 法務、会計、管理面でのサポート

The Brandery Ohio 3 ヶ月間 $20,000 6% 10 ○ ○ ○

法務、会計、ブランド構築、マーケティングリサーチ等 地域色が濃く、Ohio 州の 7 つの郡のいずれかに拠点を置く必要

Capital Factory Texas 10 週間 $20,000 5% 不明 ○ ○ ○法務、会計、ホスティング、企業ロゴの製作等

NYC SeedStart Media New York 12 週間 $20,000 5% 10 ○ ○ ○ 一流メディア企業とのネットワーク形成、

BetaSpring Rhode Island 12 週間 $20,000 10% 10 ○ ○ ○玩具、電化製品等、様々な業種のベンチャーを受け入れている

BoomStartup Utah 10 週間 $15,000 6% 10 ○ ○ ○法務、会計、PR 等 地域色が濃く、Utah 州に留まることが望ましい

AlphaLab Pennsylvania 20 週間 (年 2 回)

$25,000 5% 6 ○ ○ ○Demo はプログラム中盤と最後に実施 地域色が濃く、Pittsburgh で事業を行うことが望ましい

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(出所)富士通総研作成。投資額、取得株式、受入れ社数は最大値(ウェブサイト、過去の投資先企業数の実績などから)。その他の支援に関しては、各 Startup Accelerator のウェブサイト等に明確な記述があるもののみ

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4.1. プログラムの共通点

期間、投資金額、受け入れ社数、プログラムの内容に関しては、今回分析を行った全て

のプログラムに関し、ほぼ同様であると思われる。

期間でみると、KickLabsは、プログラムの実施期間が6ヶ月-12ヶ月と、他に比べて長

くなっているものの、自ら投資は行わず良好なオフィス環境と人的ネットワークの形成のみ

に力を入れるというタイプの支援を提供しており、そもそも運営方法が他のStartup

Acceleratorとは異なるものである。

最大投資金額は$18,000-$30,000と多少ばらついてみえるが、この金額は各プログラム

に参加した際に得られる上限である。Tech WildcattersやDreamit Venturesは、創業チー

ムのメンバー一人当たり$5,000を追加投資すると明記しているが、チームの人数が少なけ

れば投資額も少なくなるというプログラムも実際にはいくつもあると思われる。Paul

Grahamは、YCが供給する$20,000は大学の奨学金のようなもので、プログラム参加期間中

に創業者たちが生活費を賄えるためのものだと述べている67。Startup Acceleratorは一般的

にGrahamの述べる程度の意味で投資を行っていると思われる。

受け入れ社数では、確かにYCのプログラム参加企業は60社程度であり、他に比べて約6

倍程度と、際立って多い。しかし、YCは設立されてから既に6年程度が経過しているのに対

し、他のプログラムの大半は2-3年程度しか経過しておらず、運営方法が確立されていな

いためとも考えられる。TechStars(2006年設立)やDreamit Ventures(2007年設立)は、

設立後プログラムの回数を増加させており、実質的に参加企業を増加させている。

その他、オフィスの提供、実質的アドバイスを行い、人的ネットワークの拡大を図る

Mentorshipは、開催回数や、Mentor人的の人数や著名度等に多少の違いはあるものの、ど

のStartup Acceleratorも、ほぼ同様である。また、組織的にベンチャー企業にアピールの

機会を提供する投資家向けイベントである“Demo Day”も、全てのStartup Acceleratorが提

供するサービスである。

全てのStartup Acceleratorが提供しているサービスではないものの、ベンチャー企業が

抱える共通の課題である、法務や会計などをプログラムのシステムの一環として供給しよう

としていることは共通する付加価値の創出方法である。

図表 3には整理していないが、支援するベンチャー企業の業種、Startup Acceleratorの

創業者やパートナーの経歴も、おおよそ似通っている。業種を全く問わず、実際に様々なベ

ンチャーに支援をしているBetaspringを除けば、全てのStartup Acceleratorが主にICTベン

チャーに対するプログラムを提供しているといっても良いだろう。中でも特にインターネッ

67 What We Do http://ycombinator.com/about.html

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トベンチャー企業が多い。これは後に述べるように、現在のインターネットビジネスが、小

額の資金で起業し、短期間に成長できるビジネスを展開しやすくなっているためであろう。

例えば、The BranderyはICT企業だけでなく、広く消費者向けのビジネスに関するアイ

ディアをもつ起業家を募集しているもの、実際の参加企業のほとんどはインターネット企業

である68。また、BoomStartupやNYC SeedStart Mediaは、募集の条件として創業メンバ

ーに技術者がいることを明記している。

創業者やパートナーの経歴も、ほぼ同様である。個人のパートナーが明記されていない

NYC SeedStart MediaとAlphaLab以外全てのStartup Acceleratorは、創業経験のある起業

家やシリアルアントレプレナーに率いられている。

4.2. プログラムの相違点

Paul Grahamは、YCに類似したStartup Acceleratorに関して、活発なベンチャーの共同

体をある特定の街につくることを目標に作られているとしている69。確かに、ここまで行っ

てきた各Startup Acceleratorの分析からは、場所以外に特別な相違点が見極めらないのは

事実である。言い換えれば、Startup Acceleratorはいずれも地域密着型の性質をもつと思

われる。

一部には、ベンチャー企業を育成することで、地域経済活性化を行うことが目的と思わ

れるものもある。例えば、The Brandery、BoomStartup、AlphaLabは、プログラムに参

加する企業は全世界から募るものの、プログラム修了後も参加したベンチャー企業が、その

後も地域に残って活動し、地域経済に貢献することを期待している。これらのプログラムに

地元企業や団体が支援を行っている傾向がある。

YCの成功は、シリコンバレーという特殊な場所に立地していることにもあると思われる

が70、South by Southwest (SXSW:映画や音楽の祭典として長い歴史があり、現在では最

新のテクノロジーも紹介される)が年一度開催されるAustinで活動するCapital Factoryの

ようなStartup Acceleratorにも、今後地域性を活かした機会がある可能性もあると思われ

る。

4.3. 考察:変化するICTビジネスでの起業

一般的なVCとStartup Acceleratorの違いは、Startup AcceleratorはVCに比べ投資金額

が極端に少ないことと、特定期間に集中して一箇所で教育プログラムを行うことであろう。

創業期の企業専門に投資を行うVCも存在するが、一般にVCの投資額は$1M以上である

68 Companies http://brandery.org/companies/ 69 What Happens At Y Combinator http://ycombinator.com/atyc.html 70 Why to Move to a Startup Hub http://www.paulgraham.com/startuphubs.html

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ことを考えれば、Startup Acceleratorはその50分の1程度の投資しか行わない上、その資金

は事業資金というよりは、創業者たちの生活費となる。

VCもベンチャー企業の経営に参画する、いわゆる“Hands-on”型の投資を行うこともある

し、人的ネットワークを駆使して支援することもあるが、Startup Acceleratorのように短

期集中型の支援は行わない。

もちろん、二者択一という場合は少ないだろうが、創業期のベンチャー企業からみれば

巨額とも思えるVCからの投資と、小額の投資と積極的な育成プログラムを選択するとなれ

ば、VCを選ぶ企業が多くても、全く不自然ではないだろう。実際にVCとStartup Accelerator

を比較し、Startup Acceleratorを活用することは、起業家にとって高コストになるとの指

摘もある71。

しかし、現実にYCは大成功を収めており、これまでみてきたように、同様のプログラム

を実施するStartup Acceleratorが全米で生まれている。これは、ICTビジネスにおいて起業

すること自体が、以前と異なるものになりつつあることを示唆している。

Exciteの創業者であり、後にJotSpot(エンタープライズ向けのソーシャルソフトウエア。

2006年にGoogleに買収)を設立したJoe Krausは2007年に「今ほど安上がりに起業家にな

れる時代はない。」と語っている(Musser et al.,2007)が、その後も、amazonやGoogleの

提供するクラウドサービスを活用することで、資金面ではより簡単な起業することが可能に

なっている。こうした変化は2000年代後半から語られ始めている72。

更に近年では、AndroidやiPhoneを始めとするモバイル端末向けのマーケットは、開発

中のアプリケーションを簡単に世界展開することを可能にしており、10年前と比べれば、

ICTベンチャー企業にとって、開発コストだけでなく流通コストも劇的に低下している。

Startup Acceleratorが注目されているのは、こうして起業にかかるコストが低下したた

め、成功するためには資金よりも実質的には正確なアドバイスやネットワークの提供が求め

られ始めているとも捉えることができる73。

71 Incubators - hot or not?

http://www.venturewoods.org/index.php/2010/04/19/incubators-hot-or-not/ 72 The End Of Venture Capital As We Know It?

http://techcrunch.com/2008/12/06/the-end-of-venture-capital-as-we-know-it/ また、実際にYCのプログラムに参加する企業の大半は、従来のホスティングサービスなどの

代わりに、AmazonやGoogleの提供するクラウドサービスを活用している。 The Services Used By Y Combinator Startups http://www.readwriteweb.com/cloud/2011/01/the-services-used-by-y-combina.php

73 Grahamは実際に起業が安価になったために、力のバランスが投資家からハッカー(開発者)

に移行したと述べる(http://ycombinator.com/about.html)。また、BoomStartupもICTベン

チャー企業が成功するには資金よりも、実際のアドバイスの方が重要であると指摘している

(http://www.boomstartup.com/boomstartup-philosophy.html)。

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先にStartup Acceleratorの共通点として、その創業者やパートナーが起業家やシリアル

アントレプレナーであること、Mentorshipがプログラムの中心であることを述べた。こう

したパートナー達は、自己の起業経験を通じて培った人的ネットワークを新たな起業家たち

に対して開放することとで企業を育成しようとしている。

多くのベンチャー企業は、創業後同じような時期に同じような問題に直面することが多

い。そして、その際に企業経験をもつ他の起業家からアドバイスを受けられることは、以前

から資金的援助にも増して重要なことだとも考えられてきた。しかし、現在ICTベンチャー

企業を創業する場合、以前よりも更にアドバイスの価値が資金の価値よりも高くなっている

可能性がある。

また、YC、TechStars、The Branderyはプログラム参加者を募集する際にビジネスモデ

ルの提出というより、アイディアを基にプロトタイプや実際のプロダクトを完成させられる

かどうかを重視していると思われる74。

これは、クラウドコンピューティングや、各種のアプリケーション流通プラットフォー

ムを活用して起業する場合、資産をもたないままビジネスを始めることができるため、ビジ

ネスモデルの修正が以前よりも容易になったためだろう。ビジネスモデルよりも、自らのア

イディアの正しさを迅速にマーケットに問い、修正を加えながらユーザーを増加させること

の方が重要視され始めていると思われる。こうしたことから、ICT分野での起業は以前と比

べて、よりカジュアルなものになり始めている。

4.4. Startup Acceleratorの展望

Startup Acceleratorの数に関する網羅的な統計は存在しないが、既に世界各国で100を超

えるStartup Acceleratorが確認されており、その数は増加傾向にあると思われる75。我が国

においても、デジタルガレージ、カカクコム、ネットプライス ドットコムの3社が共同で

設立したOpen Network Labのように、完全にYCのようなStartup Acceleratorを志向する

ものも活動を開始している。

TechStarsは、こうした世界各地で展開するStartup Acceleratorをネットワーク化する試

みを始めており、本稿で分析したExcelerate Labs、The Brandery、BoomStartupも、こ

のTechStars Networkに参加している。このTechStars Networkがどのように互恵関係を築

こうとしているのかは明らかではない。しかし、TechStarsのDavid Cohenは、2015年まで

に6,000人の起業家を支援することで、成功の確率を10倍にし、25,000の新規雇用を生み出

74 一方で、Betaspring や BoomStartup はビジネスモデルを重視するとしている。 75 Help for Startups! – A semi-complete list of startup accelerator programs

http://blog.shedd.us/321987608/

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すことを目標に掲げている76。もしも、今後こうした目標が実現するようであれば、Startup

AcceleratorがVCやエンジェル投資家のようなメインプレイヤーへと変化する可能性も否

定できない。

しかし、一方でこうしたStartup Acceleratorの増加は乱立気味にも思われ、これから淘

汰が進む可能性もあるだろう。実際、歴史が浅いこともあるとはいえ、YC以外のStartup

Acceleratorを現時点で成功していると断言するのは難しい。

また、Startup Acceleratorは、その形態から安定して運営することは困難だと思われる。

先に、Paul Grahamは、YCをビジネスとして成功させようとしたわけではないと述べてい

るが、年間10社程度の創業間もないベンチャー企業に投資しただけでビジネスとして成立

するのは難しいだろう77。

こうしたことから、例えばTech Wildcattersのように外部にスポンサーを募っているもの

や、The BranderyやAlphaLabのように、それ自体が非営利団体であったり、非営利団体

によって設立されたものもある。しかし、大半は創業者やパートナー達の資金や人的ネット

ワークによって運営されていると考えられる。また、Mentorに対する報酬などは明記され

ていないが、個々のMentorの経歴等をみるとボランティアに近いものが多いと推測される。

こうした状況から考えると、個々のStartup Acceleratorを安定的に運営するために、今後

何らかの対策が必要となるのではないだろうか。

また、資金面以外にStartup Acceleratorが安定的に運営されるための要素には、起業家

や投資家からの信頼を得るようなプログラムの充実と情報開示にあると思われる。

5. まとめとインプリケーション

Startup Acceleratorの今後は不透明な部分もあるが、重要なのはこの新たなプレイヤー

の行く末よりも、このようなプレイヤーが生まれ、ベンチャー企業の成長に寄与しているこ

との本質を見極めることであろう。

本稿の分析からは二つの示唆が得られる。一つは、ICTベンチャー企業が成長するために

必要な要素の重みに変化が始まっているということである。先に、Startup Acceleratorの

発展の背景として、起業が安価になり始めており、それに伴って起業家にとって資金よりも

実質的なアドバイスの価値が向上していることを述べた。このことを逆に考えれば、

76 The TechStars Network http://www.techstars.org/network/ 77 もちろん、既にビジネスとして成立しているのであれば、Startup Accelerator の投資する

スタートアップは相当将来性があるか、もしくはプログラムが提供する育成方法が非常に適

切だといえるだろう。

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Startup Acceleratorのような、新たなプレイヤーが出現したのは、ICTベンチャー企業の成

長に、資金よりも知識が重要になりつつあるためである。

もう一つは、起業が以前よりも容易になると共に、ICTベンチャー企業が短期間に成長す

ることが可能になり始めているということである。Startup Acceleratorが成長を促してい

るのは、いずれも創業間もないものばかりであるが、短期間のプログラムを経た後、すぐに

次の資金調達を行い、その後に大企業に買収される企業も生まれている。例えば、Paul

Grahamは2011年5月に登壇したカンファレンスで、YCが当初$5M程度を投資したベンチ

ャー企業の企業価値が既に$3B程度に上ると述べている78。

先に分析したStartup Acceleratorだけでも、それらのプログラムが生み出した、あるい

は現在生み出しつつあるベンチャー企業は既に数百社を超える79。今後しばらく、こうして

生み出される企業が増加すると考えれば、冒頭に述べたエコシステムの参加者全てに影響を

与える変化が生まれつつあると思われる。

以下では、こうしたStartup Acceleratorの分析から得られた示唆から、大手ICT企業に関

してそのインプリケーションを検討してみたい。

Startup Acceleratorなどが生み出しているベンチャー企業は、主に既存のPaaS、IaaSな

ど既存クラウドプラットフォーム上で活動するアプリケーション、あるいはクラウド自体の

改善に繋がるテクノロジーを供給している場合が多い。これらは大規模な開発費が必要では

ないものの、将来的にはプラットフォームの存在を左右するものとなる80。企業の業務シス

テムにおいてもクラウドの性能だけでなく、そのプラットフォームでどのようなアプリケー

ションが開発されているのかが重要になるだろう。

図表 4は、我が国大手ICT企業が今後直面すると思われるプラットフォームの変化に関し

てまとめたものである。

78 Paul Graham: Total Value Of Y Combinator-Funded Startups Is $4.7 Billion

http://techcrunch.com/2011/06/01/paul-graham-total-value-of-y-combinator-funded-startups-is-4-7-billion/

79 各種Startup Acceleratorのプログラム参加企業をある程度網羅的に整理したデータを整理

したウェブサイトも存在する

Copying Y Combinator - WHY and HOW http://blog.jedchristiansen.com/2009/09/21/copying-y-combinator-why-and-how/

80 Gawer and Cusumano (2002)、Iansiti and Levien (2004)などはプラットフォームを活用す

るプレイヤーの数や質がプラットフォーム・プロバイダーの戦略にとって非常に重要である

ことを指摘している。

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図表 4 大企業が考えるべきプラットフォームの変化

(出所)富士通総研作成。

製品・サービス

開発の方向性

・・・ ミドルウエア

OS

ハードウエア

アプリケーション

ミドルウエア

OS

ハードウエア

・・・

・・・

ブラウザ

開発組織のあり方連携しあうWebアプリケーション

・・・

アプリケーション(業種・アカウント別など多数)

・・・ ミドルウエア

・・・ OS

・・・ ハードウエア

・・・

アプリケーション

ミドルウエア

OS

ハードウエア

製品・サービス

開発の方向性

歴史的開発組織

富士通を始めとする大手ICT企業における、これまでのプラットフォームの解釈には、

Windows OS、サーバーなど様々なものが混在し、それぞれが独自に最高のパフォーマンス

を目指して開発されてきた。またアプリケーションは業種別など様々なものが独自に開発さ

れてきた。しかし、クラウドコンピューティングの時代になると、Web自体がプラットフォ

ームとなる。

言い換えれば、PaaSやIaaS自体がプラットフォームになり、アプリケーションは基本的

にその上に存在することになる。こうした変化により、ハードウエア、ミドルウエア、OS

等は、Webアプリケーションへの最適化が重要になるため、これまでとは開発の方向は逆に

なる。

こうした将来像を考えると、現在の社内の開発組織では、今後のビジネスの変化に対応

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することは困難になる可能性がある。今後は、自社のプラットフォームで機能し、ユーザー

に支持される多種多様なアプリケーションの開発が重要となり、そうしたアプリケーション

が、ハードウエア等に影響を与えると思われる。しかし、現在の開発組織は必ずしも、そう

した開発を行うようにデザインされているとはいえないだろう。このように考えると、現在

の国内大手ICT企業の開発組織は、今後のICT分野での成長を取り込むことは困難なように

思われる。

一方、本稿でみてきたような、Startup Acceleratorによって生み出されるベンチャー企

業は、まさしくこの大企業の既存の開発組織では困難なイノベーションを生み出していると

考えられる。したがって、オープンイノベーションの概念を持ち出すまでもなく、大手ICT

企業は多くのアプリケーションのビジネスでイノベーションを創出しようとするベンチャ

ー企業と連携せざるをえないだろう。

一般に我が国大手ICT企業はこれまではベンチャー企業と連携してビジネスを拡大する

ことに熱心に取り組んできたとはいえない(湯川、2011)。また、投資やアライアンスを行

う際にも、比較的成長ステージの遅いベンチャー企業としか関わってこなかった。

しかし、今後必要とされるイノベーションに関わろうとすれば、これまでよりも早い段

階でベンチャー企業を見極め、そのビジネスに関わっていく必要に迫られる。そのためには、

これまで以上に積極的にVC等他のプレイヤーとネットワークを構築し、連携して情報収集

を行う必要がある。

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参考文献

Auletta, Ken. 2009. “Googled: The End of the World As We Know It”. Penguin Press HC. (土方奈美訳 『グーグル秘録』文藝春秋 2010 年)

Gawer, Annabelle. Cusumano, Michael A. 2002. “Platform Leadership”. Harvard Business School Press. (小林敏男監訳 『プラットフォーム リーダーシップ』有斐閣

2005 年)

Graham, Paul. 2004. “Hackers & Painters: Big Ideas from the Computer Age”. O'Reilly Media. (川合史朗監訳 『ハッカーと画家』オーム社 2005 年)

Iansiti, Marco., Levien, Roy. 2004. “Hackers & Painters: Big Ideas from the Computer Age”. Harvard Business School Press. (杉本幸太郎訳 『キーストーン戦略』翔泳社 2007年)

Musser, John., O'Reilly, Tim. O'Reilly Rader Team. 2007 “Web 2.0 Best Principles and Best Practices” O'Reilly Media.

Stross, Randall. 2008. “Planet Google: One Company's Audacious Plan To Organize Everything We Know”. Free Press. (吉田晋治訳 『プラネット・グーグル』日本放送出

版協会 2008 年)

湯川抗 2011. 「大手ICT企業がベンチャー企業を活用するべき理由 ―エコシステムか

らみた我が国大手ICT企業とベンチャー企業の関係構造―」 FRI 『研究レポート』

No.365 http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/2011/report-365.html

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研究レポート一覧

No.377 Startup Acceleratorの現状と展望 -変化する起業の形から考える今後のICTビジネス-

湯川 抗 (2011年9月)

No.376 生物多様性視点の地域成長戦略 生田 孝史 (2011年8月)

No.375 成果主義と社員の健康 齊藤有希子 (2011年6月)

No.374 サービス評価に内在する非対称性と非線形性 長島 直樹 (2011年6月)

No.373 日本企業における情報セキュリティ逸脱行為と組織文化・風土との関係

浜屋 敏山本 哲寛

(2011年5月)

No.372 企業の社外との連携によるイノベーションの仕掛けづくりの現状-大学との連携を中心として-

西尾 好司 (2011年4月)

No.371 Linking Emissions Trading Schemes in Asian Regions Hiroshi Hamasaki (2011年4月)

No.370 COP17へ向けての日本の戦略 -アジア大での低炭素市場で経済と環境の両立は可能か?-

濱崎 博 (2011年4月)

No.369 成長する中国の医療市場と医療改革の現状 江藤 宗彦 (2011年4月)

No.368

住基ネットはなぜ『悪者』となったのか(共通番号[国民ID]を失敗させないために) -住基ネット報道におけるセンセーショナル・バイアスと外部世論の形成に関する研究-

榎並 利博 (2011年3月)

No.367 生物多様性視点の成長戦略 生田 孝史 (2011年2月)

No.366 北欧から考えるスマートグリッド ~再生可能エネルギーと電力市場自由化~

高橋 洋 (2011年1月)

No.365 大手ICT企業がベンチャー企業を活用するべき理由 -エコシステムからみた我が国大手ICT企業とベンチャー企業の関係構造-

湯川 抗 (2011年1月)

No.364 中印ICT戦略と産業市場の比較研究 金 堅敏 (2011年1月)

No.363 生活者の価値観変化と消費行動への影響 長島 直樹(2010年11月)

No.362 賃金所得の企業内格差と企業間格差 -健康保険組合の月次報告データを用いた実証分析-

齊藤有希子河野 敏鑑(2010年10月)

No.361 健康保険組合データからみる職場・職域における環境要因と健康状態

河野 敏鑑齊藤有希子

(2010年10月)

No.360 生物多様性視点の企業経営 生田 孝史 (2010年8月)

No.359 クラウドコンピューティングに関するユーザーニーズの調査

浜屋 敏 (2010年7月)

No.358 高齢化社会における「負担と給付」のあり方と「日本型」福祉社会

南波駿太郎 (2010年6月)

No.357 「温室効果ガス25%削減と企業競争力維持の両立は可能か?」

濱崎 博 (2010年6月)

No.356 Global Emission Trading Scheme -New International Framework beyond the Kyoto Protocol-

Hiroshi Hamasaki (2010年6月)

No.355 中国人民元為替問題の中間的総括 柯 隆 (2010年6月)

No.354 サービス評価モデルとしての日本版顧客満足度指数 長島 直樹 (2010年5月)

No.353 健康と経済・経営を関連付ける視点 河野 敏鑑 (2010年4月)

No.352 高齢化社会における福祉サービスと「地域主権」 南波駿太郎(2009年12月)

No.351 米国の医療保険制度改革の動向 江藤 宗彦(2009年11月)

http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/

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Page 38: No.377 September 2011 - Fujitsu Global. Y Combinator Startup Acceleratorという言葉が注目を集め始めたのは、Y Combinator(YC)の実績 によるものであろう。実際、先に挙げたForbesのリストでも、YCは伝統的なIncubatorに