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三田市まちづくり部市民協働室人権推進課 (三田市同和教育研究協議会事務局) 〒669-1595 三田市三輪2丁目1番1号 西3号庁舎(旧市民会館)1階 ☎559-5081・559-5148 FAX 563-3611 Eメールアドレス [email protected] 連絡・問合先 再生紙を使用しています 発行 三田市(〒669-1595 三田市三輪2丁目1番1号 ☎563-1111) 人権さんだは市ホームページからもご覧になれます。ホームページアドレス http://www.city.sanda.lg.jp/  平成22年度 三田市人権標語受賞作品 NO.386 「だいじょうぶ」 その言葉で ほっとする 母子小学校5年(前年度) いしい 井 伸 のぶたか 空さん 2面 3面 4面 大切な人の悩みに気づいてください 〜自殺を防ぐために私たちにできること〜 ・優しさの木を育てよう ・ 三同教サポート事業 学びの蔵 「わたし」No.112〜出会う・気づく・つながる〜 「『母子』で暮らして見えてきたこと」 植松 直美(母子幼小育友会) 平成23年5月15日 (2011)      ~命について考えてみましょう~ 退かけがえのない わたしたちの命

かけがえのない わたしたちの命 - Sanda · 三田市まちづくり部市民協働室人権推進課 (三田市同和教育研究協議会事務局) 〒669-1595 三田市三輪2丁目1番1号

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Page 1: かけがえのない わたしたちの命 - Sanda · 三田市まちづくり部市民協働室人権推進課 (三田市同和教育研究協議会事務局) 〒669-1595 三田市三輪2丁目1番1号

       三田市まちづくり部市民協働室人権推進課 (三田市同和教育研究協議会事務局)〒669-1595 三田市三輪2丁目1番1号 西3号庁舎(旧市民会館)1階 ☎559-5081・559-5148 FAX 563-3611 Eメールアドレス [email protected]連絡・問合先

再生紙を使用しています

発行 三田市(〒669-1595 三田市三輪2丁目1番1号 ☎563-1111)人権さんだは市ホームページからもご覧になれます。ホームページアドレス http://www.city.sanda.lg.jp/ 

平成22年度三田市人権標語受賞作品

NO.386「だいじょうぶ」

その言葉で ほっとする母子小学校5年(前年度)

石い し い

井 伸のぶたか

空さん

2面

3面

4面

・大切な人の悩みに気づいてください 〜自殺を防ぐために私たちにできること〜

・優しさの木を育てよう・ 三同教サポート事業 学びの蔵

・ 「わたし」No.112〜出会う・気づく・つながる〜 「『母子』で暮らして見えてきたこと」

植松 直美(母子幼小育友会)

平成23年5月15日(2011)     

~命について考えてみましょう~

 

由貴奈は五年半もの間、入退院

を繰り返し、何度にもわたる手術

や苦しい治療を受けました。

 「命」という作品を書いた頃、世

間ではいじめや自殺などのニュー

スが連日流れていました。生きた

くても生きられない人もいるのに

自殺なんて…そんな感じでした。

それにちょうど病院内の学級で電

池の勉強をしたばかりだったそう

です。この詩に書いたとおり、由

貴奈は充分精せ

いいっぱい

一杯生きました。書

くことがそんなに得意でなかった

娘のこの「命」という詩は、十一

年という短いけれども凝ぎ

ょうしゅく縮された

人生の中で得た勉強の成果なので

はないかと思います。

 「命」の詩を書いた宮み

やこし越由ゆ

貴奈

さんは五歳のとき「神し

んけい経芽が

細さいぼう胞

腫しゅ

」という重い病気と診断され、

平成九年の六月に十一歳で亡く

なりました。

 

この詩は亡くなる四か月前に

書かれたものです。

 

一人に一つずつ与えられたわたしたちの命。それはとても尊と

うと

く、かけがえの

ないものです。あなたは自分の命を大切にできていますか。あなたの家族は、

友達はどうでしょう。

 

もし命を大切にできない理由があるのならどうしたらよいでしょう。自分の

まわりの人が悩みを抱えているのならどのように寄り添そ

ったらよいのでしょう。

 

今回は「命」について一緒に考えてみましょう。

かけがえのない わたしたちの命

由貴奈さんの

お母さんのことば

出典 「電池が切れるまで」

編者 

すずらんの会

発行 

角川学芸出版

Page 2: かけがえのない わたしたちの命 - Sanda · 三田市まちづくり部市民協働室人権推進課 (三田市同和教育研究協議会事務局) 〒669-1595 三田市三輪2丁目1番1号

優しさの木を育てよう。

平成23年5月15日 人権さんだ No.386 (2)平成23年5月15日人権さんだ No.386 (3)

5 月の定例人権相談…5 月 26 日㈭・6 月の特設人権相談…6 月1日㈬相談希望者は人権推進課へ(TEL559-5081・559-5148) 女性のための相談…問い合わせはまちづくり協働センター男女共同参画担当(TEL563-8000)

大切な人の悩みに気づいてください

~自殺を防ぐために

私たちにできること~

自殺者3万人の現実

 

全国の自殺者は、平成10年から毎年3万人を超えています。この

数は交通事故で亡くなる人の約5倍にも相当します。また兵庫県で

は、年間約1300人が自殺で亡くなっています。自殺は、心身の

疾しっかん患など健康問題、多た

じゅうさいむ

重債務など経済的な問題、家庭の問題、過か

じゅう重

な労働環境や仕事上の問題など、様々な問題が複雑に絡か

み合って起

こります。苦境にさらされるなかで、気分が落ち込み、孤こ

りつかん

立感や焦し

ょう

燥そうかん感がつのり、誰にも相談できないままに自殺に至ってしまいます。

自殺は、個人の問題ではなく、身近な社会の問題として考える必要

があります。

相談を受けたら

支えあうために、「気づき」「傾聴」「つなぐ」「見守り」

サポート事業

サポート事業

 

自殺予防のためには、自殺の危険がある

人を孤こ

つ立させないこと、相談を受けたとき

は聴き

き役にまわることがとても大切です。

重い話なので話をそらしたり、激励したり

しがちですが、まず、徹底的に聴き役にまわります。自分が話を聴

く相手として適切なのか、また何かアドバイスしなければなどと考

える必要はありません。何も言わなくてもいいですから、思いを受

け止めて話を聴いてあげてください。

 

相手の気持ちが落ち着いてきたら、様子を見て、医療機関への受

診や、専門家への相談を勧めてみましょう。また相談を受けた人が、

専門家に相談してもアドバイスを受けることができます。

● うつ症状がでてくる。● 原因不明の身体の不調が長引いている。● アルコールの量が増える。● 生活の安全や心身の健康を保てなくなるような、自

じ ぼ う じ き

暴自棄な行動をとる。● 仕事の負担が過重である、または失敗をよくする。● 職場や家庭に居場所がないか、サポートを得られていない。● 本人にとって価値のあるもの(職、地位、家族、財産など)を最近失った。● 重症の病気にかかった。● 身辺整理をしたり、急にフラッとどこかへ行ってしまったりする。● 自殺をほのめかしたり、自殺未

み す い

遂におよぶ。

<身近な人で>● 寝つきにくい。眠りが浅そうだ。早朝に目覚める。● 身体の具合が悪いと言ったり、とりとめのない訴えが多くなる。● 表情が暗く、いつも考え込むようになる。● 怒りっぽくなり、イライラ、セカセカするようになる。● 服装や身だしなみがだらしなくなり、不潔になる。● うわさや悪口を言われているとまわりを気にしたり、独り言を言う。● 酒の飲み方が変わったり、睡眠薬など乱用するようになる。<職場の中で>● 遅刻や早退、休みが多くなる。● 急に職場転換や退職を希望する。● 仕事の能率が低下したり、ミスや怪

け が

我が多くなる。● 仕事中、ため息ばかりついている。● 「自分はだめな人間だ」など自己評価が低くなる。

※この項目は、兵庫県立精神保健福祉センター発行の「つながる・支える・いのちと心」を参考にしました。

 あなたの大切な人を命の危機から救うために私たちにできることは、「自殺などのサインに気づくこと」「相談されれば、徹底的に聴き役にまわること」「専門医や専門の相談機関につなぐこと」「温かく支え、見守ること」です。そして、日頃から周囲の人のことを気にかけ、支えあう地域づくりが大切です。

気づく

 

家族や友人など身近な人の不調や異変には気づきやすいもので

す。次の「こんなことありませんか」というような様子が見られたら、

本人に心配している気持ちを伝えて、医療機関などへの受診や専門

機関への相談を勧めてください。誰かに話を聞いてもらうだけで楽

になったり、一人では気づかなかったことに気づくことがあります。

問題解決について一緒に考えることができるかもしれません。本人

が受診などを嫌がる場合は、家族だけでもぜひ相談してください。

 

自殺は、かつて個人の問題、個人の責

任とされる傾向がありましたが、近年、

自殺をされた方の多くが、最終的にはう

つ病などにかかっていながら適切なケア

を受けていなかったり、心の病にいたる

までに様々な状況や社会問題の影響を受

けていたりすることがわかってきまし

た。今では「自殺は個人的な問題ではな

く、自殺問題には社会的な取り組みが必

要である」という考え方に大きく変わりつつあります。

 

このたび市では、自殺予防のパンフレット「支えあおう心と

いのち」を発行いたしました。かけがえのない命をみんなで守

るために、私たち一人一人ができることを考えたいと思います。

こんなことありませんか

自殺のサイン

心の不調のサイン

ひとりで悩まずに、まず相談を!!

自殺予防いのちの電話☎0120-738-556 (フリーダイヤル)

開設日:毎月10日 8時〜翌8時

神戸いのちの電話☎078-371-4343

 開設日: 月〜金 8時30分〜21時30分 土 8時30分〜翌16時30分 祝日 9時30分〜16時30分 第4金 8時30分〜翌々16時30分

兵庫県いのちと心のサポートダイヤル☎078-382-3566

開設日:月〜金 18時〜翌8時30分 土・日・祝日 24時間

※短縮ダイヤル#7500 家族や仲間の変化に気づいて、声をかける。●心の悩みや様々な問

題を抱えている人が発する周りへのサインになるべく早く気づきましょう。

●変化に気づいたら、「眠れていますか?」など、自分にできる声かけをしていきましょう。

気づき 本人の気持ちを尊重し、耳を傾ける。●悩みを話してくれたら、

時間をかけて、出来る限り傾聴しましょう。

●話題をそらしたり、訴えや気持ちを否定したり、表面的な励ましは逆効果です。本人の気持ちを尊重し、共感したうえで相手を大切に思う自分の気持ちを伝えましょう。

傾け い

 聴ちょう

 早めに専門家に相談するように促す。●できるだけ早い時期

に、相談・受診ができる専門医や専門機関を勧めるか、電話相談など相談窓口を紹介しましょう。

●相談を受けた側も、一人で抱え込まずに家族や友人、上司などに相談し、協力者を得ましょう。

つなぎ 温かく寄り添いながら、じっくりと見守る。●相手の立場や気持

ちを尊重し理解につとめましょう。

●焦らずに温かく寄り添いながら見守り、支えていく姿勢をとりましょう。

見守り

No. タイトル 時間 対 象 ジャンル 内   容

1 クリームパン 36分 中学生~ ドラマ 子どもへの虐待などを通して、「いのち」について考える。

2 人権のヒント 地域編「思い込み」から「思いやり」へ 25分 中学生~ ドラマ 交流を通じ、違いを思いやる

心の大切さを理解していく。

3 人権のヒント 職場編気づきのためのエピソード集 22分 成  人 ドラマ 日頃気づかない職場の人権に

ついて考える。

4 私が私らしくあるためにー職場のコミュニケーションと人権ー 26分 成  人 ドラマ 主人公の助言をヒントに、職

場の状況を改善していく。

5 インターネットと人権 22分 中学生~ ドキュメント・解説 情報化社会の中で人権と向き合うためにどうすべきか。

6 「部落の心を伝えたい」第 13 巻母娘で問うた部落差別 30分 中学生~ ドキュメント 母娘講演で部落差別をはじ

め、あらゆる差別にNO!を。

7 「部落の心を伝えたい」第 14 巻人権感覚を磨きませんか 30分 中学生~ ドキュメント 自ら描いたマンガを使って、

人権問題をわかりやすく説く。

8 「部落の心を伝えたい」第 15 巻夫婦で差別と闘います! 30分 中学生~ ドキュメント 被差別地区出身の妻と地区外の

夫が、部落差別の実態を暴く。

9 私の中の差別意識ー部落差別から考えるー 24分 中学生~ ドキュメント どうすれば差別がなくなるか

考えるきっかけを提供する。

新作ビデオ一覧

ビデオを見て人権研修!! 人権推進課では、企業や団体等の人権研修に活用するために、啓発ビデオをそろえています。(詳しくは、平成 23 年度発行の「学びの蔵」をご覧ください。市ホームページにも掲載しています。)今年度も新たに 9 本のビデオが加わりました。

貸出無料

『学ま な

びの蔵く ら

三田市同和教育研究協議会では、いろんな気づきの場の提供や学びのサポートをしています。

人権学習や視察研修等のご相談は、市人権推進課(一面下)までお気軽にご連絡ください。

わたしもあなたも ひとりひとり

とっても大切な人だから。

差別される人にも なりたくないし

差別する人にも なってほしくないのです。

人権の自主学習グループへの活動支援 !!人権にかかる自主学習グループの学習経費(講師料、バスレンタル料、交通費、印刷代、消耗品代、入館料、会場費など)の半額 ( 上限3万円)を補助します。※グループの登録申請が必要です。

講師をまねいて、人権学習 !! 各組織、団体、地域、PTA、企業等の人権に関する学習の経費(講師料、交通費、印刷代、消耗品代、会場費など)の半額(上限3万円)を補助します。

交流学習や視察研修へ !!各組織、団体、地域、PTA、企業等で人権に関する施設等の視察・交流学習の経費(バスレンタル料、交通費、通行料、入館料など)の半額(上限3万円)を補助します。

人権に関する博物館等(一例)大阪人権博物館「リバティおおさか」

水平社博物館(奈良県)

国立療養所長島愛生園恩賜記念館(岡山県)

堺市舳松(へのまつ)歴史資料館

大阪国際平和センター「ピースおおさか」

京都市ツラッティ千本

立命館大学国際平和ミュージアム( 京都市)昨年度の「学」サポート事業の活用団体狭間中学校

本庄小幼育友会

「自閉症」理解から共生社会をめざす会

三田西陵高等学校

武庫小学校生活部

三田市消費者協会

小野小学校PTA

三田学園中学校

「小さな音楽会」実行委員会

あかしあ台小学校PTA

三田学園高等学校

藍幼小PTA

富士小学校PTA

高平小学校PTA

小野小学校

結ゆ い

学が く

サポート事業逢あ い

昨年度の「結」サポート事業の登録団体

12グループ

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平成23年5月15日 人権さんだ No.386 (4)

再生紙を使用しています

 人権推進課では、「すまいる」会員を募集しています。 加入された「すまいる」会員のみなさまには、市主催及び三同教などで開催される人権啓発講座の開催案内等の人権に関する情報をお届けします。

<申し込み方法>申し込みには、なまえ・資料送付先・電話(FAX)番号を書いて、FAX・電子メール・電話いずれかの方法にて、人権推進課まで申し込んでください。

<問合せ> 1 面下・人権推進課まで

「すまいる」じんけんネットワーク

会 員 募 集 中

○電話による人権相談は、全国統一電話番号となりました。○相談時間 8:30 ~17:15 月~金(休日を除く) ○担当者 人権擁護委員、法務局職員○相談は無料で、秘密は厳守されます。<問い合わせ> 神戸地方法務局人権擁護課☎ 078-392-1821(内 345)

一人で悩まず、気軽に相談してください。☎ 0570-003-110

ゼロゼロみんな の ひゃくとおばん

常設相談所 全国共通ナビダイヤル

人 権 に 関 す る ご 相 談 は

『母も

子し

』で暮らして見えてきたこと

植うえまつ松

 直な

おみ美(母子幼小育友会)

出会う気づくつながる

出会う気づくつながる

わたしわたしNo.112

 『母子』に引越して来て七年が過ぎま

した。母子幼稚園年長さんで入園式を

してもらった長女が、この春、母子小

学校を卒業しました。

 『母子』は小さな地域ですが、保護者、

学校、地域がしっかり結び合って子ど

もたちを守り、育は

ぐく

んでいます。数々の

学校行事には、地域の大勢の大人が参

加し、子どもたちと一緒に活躍します。

地域の皆さんの多くの目や声かけが、

子どもたちに安心感を与えてくれてい

ます。子ども同士の関わりもとても自

然で、上級生が小さい子たちに優しく

声をかけて、仲良く遊びます。娘二人

はここで温かく見守られて大きくなり

ました。

 

私は、長女が生まれてから仕事に復帰

する事なく、家で子育てをしてきまし

た。家族四人『母子』で暮らし、大自然

の中で娘二人の成長を見続けることが

できた事に幸せを感じています。私自身

の子ども時代はというと、両親は共に

働いていたので、兄と二人いわゆる「カ

ギっ子」でした。親や大人たちに干か

んしょう渉さ

れる事もなく自由に過ごしていました。

私は、娘たちが自分とは正反対の環境で

育っていると思い込んでいました。『母

子』で暮らし、少人数の幼稚園、小学校

に通う娘たちと共に、大変ながら楽しく

過ごすうちに、私も小学生をやり直した

気持ちになりました。

 

そして、思い出したんです。私にも

私を見守っていてくれた沢山の大人た

ちがいた事を。

温あたた か い

母もう

子し

 

私は神戸の下町で育ちました。父と母と兄の四人で暮らしていま

した。カギっ子だった私と兄は、よく歩いて十分ほどの父の職場へ

行きました。父は市場の餅も

ちや屋で職人をしていました。餅屋にはおじ

ちゃんおばちゃんと、お姉ちゃんが二人いて、私たちはとてもかわ

いがってもらいました。

 

餅屋に行くと必ずおばちゃんがお店に並ぶおまんじゅうとジュー

スをくれました。お姉ちゃんは買い物の度た

に私を連れて歩いて、行

く先々のお店で「うちの職人さんの子やねん。直美ちゃんやで。か

わいいやろ~。」と、自慢するように私を紹介してくれました。す

るとお店の人が「へえー。お父さんとそっくりやねえ。」と、私の

顔を見て言葉をかけてくれます。こんな会話がしょっちゅうでした。

 

今でも目を閉じると、お向かいのうどん屋のおばちゃん、時計屋

のおっちゃん、とり肉屋のおばちゃん、食堂のおばちゃん…。沢山

の大人たちの顔が浮かびます。みんなが私のことを「直美ちゃん」

と知ってくれていました。今になってみると、そのあたりまえの風

景は、父と母と、そして父の雇い主である餅屋の家族のみなさんで、

私と兄が安心して過ごせる環境を作ってくれていたのだとわかりま

す。

 

昨年八月、餅屋のおばちゃんが亡くなりました。お通夜に行く為

に、十数年ぶりに私の育った町を歩きました。そこにはもう市場も

商店街もありませんでしたが、何軒かは場所を変えてまだお店を続

けていました。挨拶をすると、懐かしそうに話をしてくれました。

私を「直美ちゃん」と知ってくれている人に出会えて胸が熱くなり

ました。

 

それは失くしたと思っていた私のふるさとを見つけ出した瞬間で

した。

 『母子』に越して来た頃、私は自分が餅屋のお姉ちゃんにしても

らったように、娘たちを連れて歩きました。私たちのことを早く知っ

てもらいたいと思いました。育友会活動や、地域の方が多く顔を合

わせる学校行事のお陰で、娘たちも皆さんに名前で呼んでもらえる

様になりました。『母子』という地域に守られ、ふるさとを感じて

安心して育つ娘たち。私も市場の皆さんに守られ、大切なふるさと

を心に築いて大人になっていったのです。

失くしたと思っていた私のふるさと

 

私は今、育友会活動と合わ

せて、仲間たちと小学校で

「絵本のよみきかせ」の活動

を続けて五年になります。棟

続きの幼稚園さんから、六年

生まで十数人の子どもたち

が、月に一回、十五分間の絵

本の時間を楽しみに待って

くれています。幅広い年齢層

で絵本選びが難しく、始めた

頃は「読んであげる」という

意識があったと思います。そ

れが「聞いてもらう」に変わ

り、今では「子どもたちと一

緒に絵本を楽しむ」ことがで

きるようになりました。ま

た、昨年度新たに自分たちに

できる範囲で、放課後の時間

を利用した「図書室開放」も

学校の協力を得ながら始め

ました。

 『母子』の子どもたちと何

気なくふれ合う時間を多く

過ごすことで、子どもたちに

少しでも私の事を知っても

らえたら… 

 「おばちゃんは、みんなの

ことをよく知ってるよ。い

つまでも覚えているよ。忘

れないよ。」と伝えることで、

子どもたちが自分の存在を

大切に感じることができた

ら…

 

そして近い将来、子どもた

ちが広い世界に飛び出して

行くときに、あたたかいふる

さとを心に持って、安心して

大きく羽ばたいていってほ

しいと願っています。

私は今