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令和2年度 - city.odawara.kanagawa.jp · 小田原から未来を考える。 令和という新しい時代を迎え、平和の祭典として世界中が注目する東京 2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される本年は、小田原

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令 和 2 年 度

施 政 方 針

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令 和 2 年 度 施 政 方 針

令和2年小田原市議会3月定例会が開会し、令和2年度の当初予算案及び関

連諸議案をご審議いただくに当たり、施政に対する私の所信の一端を申し述べ

させていただきます。

1 はじめに

小田原から未来を考える。

令和という新しい時代を迎え、平和の祭典として世界中が注目する東京

2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される本年は、小田原

駅開業100周年を迎える中で、「ミナカ小田原」がオープンするなど、公民連

携の取組を通じてさらなる賑わいと活気が街なかにあふれる年回りとなります。

そして、市制80周年という節目の年でもあり、市民力・地域力を何よりも大切

に育みながら着実に諸事業を進めてきたこれまでの歩みを土台とし、持続可能

な地域社会の実現に向けて「新しい小田原」を進化させていく、未来を拓く希望

の年にしていきたいとの決意を新たにしています。

積年の課題であった地下街・再開発・市民ホールのいわゆる3大案件が結論

を見たことをはじめ、北条早雲公顕彰五百年事業やラグビーワールドカップ

2019の盛り上がり、漁港の駅TOTOCO小田原のオープンなど、令和元

年度は、小田原の魅力を国内外に発信し賑わいを創出することができました。

また、市民生活に直結する新斎場の稼働やごみ処理施設の基幹改良、全小学校

への放課後子ども教室や学校運営協議会の設置、おだわら子ども若者教育支援

センターの開所準備、令和7年度の開業を目指す市立病院建替えの検討など、

市民生活を支える様々な分野での地道な取組も着実に進展してまいりました。

このように、進化の土台は市民の皆様の暮らしの中で彩度を増し、確実に未来

へとつながっています。

一方で、世界に目を向ければ、地球規模の気候変動による災害が大規模化・頻

発化しており、向こう数年間のうちに脱炭素化に真剣に取り組むことが世界共

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通の最優先課題になっています。本市では、過去に例を見ない平成30年の猛

暑を受け、市内業者を中心にオール小田原の力で全市立小中学校の普通教室な

どへのエアコン整備が実現したこと、全市で7,000人を超える避難者を受

け入れた台風第19号の経験において、これまで培ってきた地域コミュニティ

の絆の大切さが再確認されたことなど、危機に直面してもそれを乗り越えてい

く未来に向けた希望とも言うべき「人の力」が、本市には着実に育ってきていま

す。

私たちが暮らす社会の状況は、10年前と比べ遥かにその困難さと不透明感

が増しています。この難局に対し、人口減少・少子高齢化の進展といった大きな

社会変容を受け止める地域の態勢を整えていくこと、社会保障制度やその財源

等の充実を図っていくこと、各種社会インフラの老朽化を乗り越えていくこと

や、難しい時代を担っていく若者たちや子どもたちの生きる力を育んでいくこ

となど、現実を正面から見据えた具体的な実践が求められています。本市の持

続可能な地域社会の実現に向けた歩みは、こうした課題群を意識し、地域の現

場からその解決を目指していくものでありますが、事態の深刻さに鑑みれば、

取組をより一層進化させていく時間的猶予は10年とないものと考えねばなり

ません。

未来に向けた進化の土台が整い、希望とも言うべき「人の力」が育まれている

小田原。今を生きる私たちは、先人から受け継いできた小田原を、より豊かにし

て次世代につないでいくために、小田原から未来を考え、自分ごととして行動

に移していかなければならないと、この節目の年に強く感じております。

2 市政運営の基本方針

2008年の市長就任当初から、多くの市民の皆様と協働で進めてきた「新

しい小田原」への歩み、すなわち持続可能な地域社会づくりの取組は、昨年、

SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業や地域循環共生圏づくりプラッ

トフォーム事業の活動団体への選定という形で国からも高く評価されました。

こうした追い風を受け、「人の力」を育むことに注力しながら、民間事業者との

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連携を加速させ、さらなる地域経済の循環を生み出すとともに、国土強靭化の

枠組みにより災害対策を補強するなど、「いのちを守り育てる地域自給圏の創造」

に向けた取組を力強く推進してまいります。

また、「おだわらTRYプラン」後期基本計画において、課題解決という「受

動」から、持続可能な地域社会モデルの実現という「能動」へと、取組の力点を

移していくことを掲げ、様々な取組を進めてきたことにより、諸課題への処方

箋が一通り出そろう状況に至っております。この際、行政が大切にしなければ

ならないことは、それぞれの取組の質の向上に注力しつつ、より高度化・複雑化

する課題にチームとして対処する力を高めながら、市民の皆様の活躍の場を整

えるプラットフォーム・ビルダーとしての役割を果たしていくことであります。

そして、後に続く世代を育てていくことを強く意識しながら、これまで築き

上げてきた取組を礎に、持続可能な地域社会のより具体的で望ましい姿を、市

民の皆様とともに描いてまいります。この具体的な一歩として、気候が非常事

態にあり、一刻も早く行動に移していかなければならないという認識を共有し、

災害に強いまちづくりなどの適応策と温室効果ガスの削減を図る緩和策にオー

ル小田原で取り組んでいくための道筋を、関係者とともに切り拓いてまいりま

す。

3 重点テーマの主要な取組

令和2年度の市政運営に当たり、総合計画「おだわらTRYプラン」後期基本

計画重点テーマの主要な取組につきましてご説明いたします。

【豊かな自然や環境の保全・充実】

後期基本計画の重点テーマ「豊かな自然や環境の保全・充実」のうち、「エネ

ルギーの地域自給に向けた取組の推進」につきましては、全国初のモデル事業

として、電気自動車(EV)を活用した地域エネルギーマネジメント事業に取り

組んでまいります。また、公民連携による脱炭素イノベーションの創出等にも

取り組み、2050年までの二酸化炭素排出量実質ゼロを目指して再生可能エ

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ネルギーの導入と利用を促進してまいります。

「森里川海がひとつらなりの特徴を生かした、多様な主体の連携による自然

環境の保全と再生」につきましては、森里川海に係る課題解決の取組を経済的・

社会的に価値化し、人と資金が循環する地域循環共生圏の構築を図ってまいり

ます。また、森林に関する基礎調査や意識調査等を踏まえたおだわら森林ビジ

ョンの策定に取り組み、森林整備、木材利用、木育の基本方針のほか、森林生態

系保全、鳥獣被害対策などの視点も加えた、本市の森づくりの方向性を示して

まいります。

「いのちを支える食の生産基盤の強化」につきましては、本市の農業の現状、

現場の意向や課題を踏まえた農業振興計画の策定に引き続き取り組む中で、担

い手の確保、耕作放棄地対策、鳥獣被害対策などの施策について方向性を示す

とともに、農業の生産性向上につながる基盤整備を実施してまいります。

【課題を解決し、未来を拓く人づくり】

重点テーマ「課題を解決し、未来を拓く人づくり」のうち、「地域資源を生か

したさまざまな世代の学びの場づくり」につきましては、1期生が卒業し、3期

生を新たに迎える「おだわら市民学校」において、郷土愛を育むことを目的とし

た1年目の基礎課程であるおだわら学講座と、福祉、子育て、自然、地域など

様々な分野での実践につながることを目的とした2年目の専門課程を通じて、

担い手の育成に努めるとともに、既に活動されている団体に向けた人づくり課

題解決ゼミを引き続き開講してまいります。そして、本市SDGs未来都市計

画の中核に位置付ける取組として、SDGs普及啓発活動とも連動させながら、

現場での学びと実践による人材・担い手育成と地域課題の解決の促進を図って

まいります。

「プロダクティブ・エイジングの推進」につきましては、年齢に関わりなく働

くことができる生涯現役社会の実現に向けて、シニアの就労促進を中心とした

取組を引き続き推進し、シニアの元気な生き方やその知識、経験を地域の課題

解決につなげてまいります。

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【地域コミュニティモデルの進化】

重点テーマ「地域コミュニティモデルの進化」のうち、「目指すべき地域コミ

ュニティ像の確立に向けた取組の推進」につきましては、地域の主体的なまち

づくりを進め持続可能な地域社会を実現するために、地域コミュニティ組織と

行政との協働の取組を推進してまいります。また、自治会加入促進や担い手育

成の支援、地域活動の情報共有を図るほか、小学校などと調整し活動の場の整

備についても進めてまいります。

「子どもの多様な居場所の連携と進化」につきましては、運営を民間委託し

開所時間の拡大や内容の充実を図る放課後児童クラブと、全校設置が完了し内

容の充実や回数の増加を図る放課後子ども教室との連携により、放課後の子ど

もの居場所を充実させてまいります。また、地域コミュニティ組織等が運営す

る子どもの居場所の拡充や市民団体との協働によるプレイパークを引き続き実

施することにより、子どもたちが安心して集い活動できる豊かな育ちの場の形

成に努めてまいります。

【いのちを育て・守り・支える】

重点テーマ「いのちを育て・守り・支える」のうち、「妊娠期から子育て期に

わたるまで切れ目のない支援体制の整備」につきましては、全国でも先進的な

取組となるおだわら子ども若者教育支援センターを4月に開所いたします。乳

幼児期から学齢期・青壮年期に至るまで、子どもの発達を軸にした各施策の相

談・支援機能を集約し、切れ目のない総合的なサービスを提供するとともに、教

育・保育現場での支援環境の向上につなげてまいります。また、利用者が増加し

ている子育て世代包括支援センターの運営を通じ、相談体制の充実を図るほか、

母親の産後うつを予防するため、新たに産婦健康診査の費用助成を行うなど、

子ども、そして母親の皆様を手厚く支援してまいります。

「地域包括ケア体制づくりとケアタウン構想の推進」につきましては、市内

26地区全てとケアタウンに関する協定が成立し、見守りやサロン活動、生活

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応援隊事業などの地域の主体的な取組が定着、拡充しつつある現状を捉え、そ

の取組がより住民ニーズに幅広く対応し、かつ持続的な活動となるよう引き続

き支援してまいります。また、こうした地域の取組を基盤としつつ、複合的な問

題を抱える世帯や個人が増えている状況に対応するため、福祉まるごと相談窓

口での相談支援に加え、新たに地域へのアウトリーチを通じて一人ひとりの問

題解決に寄り添う伴走型の支援に取り組むとともに、各部署や関係機関との組

織横断的な連携体制づくりをさらに進めてまいります。

【「観光」による地域経済活性化】

重点テーマ「『観光』による地域経済活性化」のうち、「観光戦略ビジョンに基

づく観光まちづくりの推進」につきましては、北条氏に関わる歴史的・文化的資

産の活用や情報発信を行うほか、まち歩き観光など回遊性を高めるためのマッ

プ作成や案内板整備に取り組んでまいります。また、令和3年度のオープンに

向けて観光交流センターを整備するほか、増加する訪日外国人旅行者の誘客や

消費促進に取り組むなど、これまで伸びてきた入込観光客数のさらなる増加に

取り組んでまいります。小田原城につきましては、引き続き園内施設の改良に

努めるとともに、展示内容を充実させるなど、より一層のサービス向上と誘客

に努めてまいります。

「観光分野との連携などによる農林水産業・ものづくりの振興」につきまし

ては、地場産品の販路や需要のさらなる拡大を図るほか、若手芸術家とのコラ

ボレーションによる創作活動への支援や、商品開発から販売までの一連のノウ

ハウを学ぶための講座などを通じ、地域資源のブランド力向上に努めてまいり

ます。農業につきましては、レモンやオリーブ、梅などのブランド力や生産量の

向上を図るとともに、水産業につきましては、開業した漁港の駅TOTOCO

小田原、早川駅、本港の3箇所を拠点とした小田原漁港エリアの回遊性向上や

水産市場施設の再整備を引き続き検討していくほか、老朽化している市営漁港

の施設機能保全に向けた調査等に着手するなど、さらなる水産業の振興を図っ

てまいります。

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「しごとと暮らしをつないだ定住促進」につきましては、多種多様で豊富な

地域資源や、それらに支えられる小田原暮らしの魅力を、専用のウェブサイト

や公式インスタグラムなど、様々な媒体や機会を通じて市内外に発信するとと

もに、小田原での暮らしやライフスタイルがイメージできるようなPR動画を

制作・発信することにより、さらなる都市セールスを進めてまいります。

【重要なまちづくり案件の適切な実現】

重点テーマ「重要なまちづくり案件の適切な実現」のうち、「小田原駅・小田

原城周辺のまちづくりの推進」につきましては、愛称が「ミナカ小田原」に決定

したお城通り地区再開発事業広域交流施設の建設を促進するとともに、広域交

流施設と周辺施設を接続する連絡通路の整備に取り組んでまいります。市民ホ

ール整備事業につきましては、建設工事を着実に進めるとともに、皆様に愛さ

れ訪れていただけるよう、令和3年9月5日のオープン、そして、その後の運営

に向けた準備に注力してまいります。

「まちなかの賑わい創出や回遊性向上に向けた街並みづくりの推進」につき

ましては、引き続きかまぼこ通り周辺や西海子小路周辺、板橋地区などにおけ

る歴史的・文化的資源などの魅力を最大限に生かした街並み形成に向け、景観

形成修景費補助金の活用などにより必要な支援を行うとともに、公民連携を視

野に入れた歴史的建造物の利活用方策を検討してまいります。また、本市固有

の歴史的風致を守り育て、次世代へ伝えていくため、第2期となる歴史的風致

維持向上計画を策定してまいります。

【インフラ・公共施設の維持と再配置】

重点テーマ「インフラ・公共施設の維持と再配置」のうち、「公共施設再編に

向けた計画策定と老朽化施設の長寿命化の取組の推進」につきましては、公共

施設再編基本計画に基づき、施設の機能・配置の適正化を進めるとともに、施設

の管理水準を総体的に向上させるためのマネジメント体制の実現、施設の効率

的な利活用に向けた民間提案制度の構築などの取組を推進してまいります。ま

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た、市有建築物維持修繕計画に基づき、施設の安全性を確保するとともに、長寿

命化に資する改修工事を効果的に行うため、全ての工事について優先度を判断

した上で、計画的な維持保全を実施してまいります。

4 分野別方針

これまで述べてきた取組のほか、分野別の主要な取組につきまして、後期基

本計画におけるまちづくりの目標と政策の方向に沿ってご説明いたします。

(1)いのちを大切にする小田原

【福祉・医療】

地域福祉の推進につきましては、セーフティネットの充実のため、生活困窮

者の自立支援のほか、ひきこもりや長期間就労することができていないなど、

直ちに就労することが難しい方を対象とした就労準備支援の取組を推進すると

ともに、民生委員児童委員協議会をはじめ、各種団体の活動をサポートし、担い

手育成や見守り活動を促進してまいります。また、市営住宅につきましては、住

宅セーフティネットとしての役割を充実させるため、住宅にお困りの方の入居

機会が増えるよう募集方法を見直してまいります。

高齢者福祉の充実につきましては、高齢者の自立支援に軸足を置き、社会参

加、生きがいづくり、介護予防、生活支援などの施策を総合的に推進するほか、

令和3年11月に本市において開催が予定されているねんりんピックかながわ

2021のソフトボールとソフトテニスの交流大会の準備を進めてまいります。

障がい者福祉の充実につきましては、個々の障がい者の実状に応じた適切な

サービス利用等を支援していくほか、地域の相談支援体制を強化する基幹相談

支援センターを開設してまいります。また、障がいの種別に応じた分かりやす

い防災ハンドブックの作成・配布、広域避難所等での避難生活が困難な重度障

がい者等の受入れ態勢の強化など、障がい者の災害被害の最小化に向けた取組

を進めてまいります。

健康づくりの推進につきましては、健康寿命の延伸を目的とした健幸ポイン

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ト事業や食を通じた健康づくりに引き続き取り組むほか、乳幼児に急性胃腸炎

を引き起こすロタウイルスのワクチンが定期接種となったことを踏まえ、その

接種率を向上させることで、感染予防に努めてまいります。また、胃がん検診に

つきましては、新たに内視鏡検査を導入するとともに、本市で多い脳血管疾患

の予防対策の一環として、推定1日食塩摂取量を把握し、食生活の見直しに役

立てるため、特定健康診査等に検査項目を追加導入してまいります。

市立病院の機能拡充と健全経営につきましては、県西地域の基幹病院として

急性期医療や高度医療を充実させるため、引き続き、医師、看護師などの医療ス

タッフの確保や、高度医療機器の更新を進めることでその機能拡充を図ってま

いります。また、令和3年度からの地方公営企業法の規定の全部適用に向けて、

令和2年度はその準備作業を着実に進めるほか、引き続き経営改善に取り組み、

健全な病院経営を維持してまいります。さらに、地域の診療所や介護施設など

との連携を引き続き進め、地域の医療機関との役割分担による医療を提供する

とともに、市民に質の高い医療を提供するため、令和7年度中の新病院の開業

に向けて、基本計画の策定や現地での建設準備を進めてまいります。

【暮らしと防災・防犯】

共生社会の実現につきましては、社会における新たな人権課題に対応するた

め、人権施策推進指針を改定し、今後の人権施策の方向性を定めるとともに、性

的マイノリティ支援事業を実施してまいります。また、第2次おだわら男女共

同参画プランの改定作業に着手し、職業生活における女性の活躍を支援するな

ど、全ての市民がお互いの人権を尊重し、認め合い、共に生きていく地域社会の

実現に取り組んでまいります。

災害に強いまちづくりにつきましては、令和元年の台風第19号の経験を踏

まえた防災体制の強化と、災害弱者となり得る高齢者や女性、子どもなどの安

心を確保するための避難所資機材等の充実に取り組んでまいります。令和2年

度の総合防災訓練のテーマを「地震」とし、関係機関を交えた災害時体制の確認

や、ドローンの活用、ボランティア支援といった令和元年度に締結した協定を

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生かした実践的な訓練を実施するほか、県の津波災害警戒区域の指定に伴いハ

ザードマップを作成するとともに、津波防災地域づくり推進計画を策定し、市

民の命を守る安全・安心なまちの構築を図ってまいります。また、地震対策とし

て、ブロック塀等の撤去に対する補助事業を継続するとともに、耐震シェルタ

ーに対する補助事業を新設するほか、耐震改修促進計画の改定を進めてまいり

ます。さらに、近年の大型化する台風や局地的集中豪雨による浸水被害の軽減

を図るため、引き続き下菊川や関口川などの改修を行うとともに、河川や水路

の適切な維持管理を進めてまいります。

消防・救急体制の充実につきましては、効率・効果的な消防体制の構築のた

め、引き続き成田出張所及び岡本出張所を整備するほか、荻窪出張所の機能改

善や、次期署所再整備に取り組んでまいります。また、増加する救急需要や新た

な救急救命処置に対応するため、救急資機材の充実強化、指導救命士の養成な

ど救急隊員の資質の向上に努めるほか、応急手当の普及やAED設置情報の周

知に努め、救命率の向上を図ってまいります。さらに、消防団分団詰所のうち、

特に老朽化している第13分団の建替えを引き続き進めてまいります。

安全・安心の地域づくりにつきましては、引き続き空家等対策に取り組むと

ともに、地域での顔の見える関係づくりに重要となる防犯活動や、交通安全活

動を支援してまいります。また、消費者行政につきましては、消費者の安全と安

心を確保するため、相談体制の一層の充実を継続的に図るとともに、地域や関

係者と協力して高齢者などの消費者被害を未然に防ぐ啓発活動を強化してまい

ります。

【子育て・教育】

子育て環境の充実につきましては、おだぴよ子育て支援センターのお城通り

地区再開発事業広域交流施設内への移転により、子育て支援センター機能の拡

大とサービスの充実を図るなど、引き続き子育てのために地域社会がともに支

え合う環境づくりを進めてまいります。また、認可保育所分園や小規模保育事

業の整備などによる保育の受け皿拡大に向けた取組により待機児童の解消に努

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めるほか、新たな病児保育事業の開設支援や公立・民間の幼稚園・保育園が連携

した就学前教育・保育の質の向上に向けた取組などを行ってまいります。

青少年育成の推進につきましては、全国的な傾向でもある子ども会の減少に

対応するため、子ども会事業の企画・運営をサポートする取組を新たに実施す

るなど、引き続き支援を行ってまいります。

学校教育の充実につきましては、「命・地域・信頼」をキーワードとし、個に

応じたきめ細かい学習指導や、豊かな心の育成、体力・運動能力向上の取組を充

実させることにより、未来を創るたくましい子どもを育成してまいります。特

に、令和2年度は、オリンピック・パラリンピック観戦チケットを生徒に配付す

るなど、スポーツへの関心や意欲向上を図ってまいります。また、本市の教職員

の働き方改革に関する指針に基づき、業務の適正化や教職員の意識改革を図る

ほか、スクール・サポート・スタッフを新規に配置するなど、学校を支える人員

体制をさらに充実させ、教職員の働き方改革を総合的に進めてまいります。

安全・安心で快適な教育環境の整備につきましては、学校施設の外壁の劣化

に対する当面の安全確保策として、打診調査を行ってまいります。また、校舎等

の屋上防水改修、屋内運動場の屋根改修、トイレの全面改修、教室の床改修など

の整備を計画的に実施するほか、幼稚園・小学校の遊具の修繕や、特別教室への

空調設備の設置を順次行ってまいります。さらに、令和6年9月の稼働を目標

に建替えを進める学校給食センターは、最適な事業方式を選定し整備事業を推

進してまいります。

(2)希望と活力あふれる小田原

【地域経済】

産業振興と就労環境の整備につきましては、積年の課題であった鬼柳・桑原

地区工業系保留区域が市街化区域に編入され、民間事業者との連携により工業

団地として開発に着手されたことなどを踏まえ、企業誘致推進条例の適用期間

を延長し、工業団地や工場跡地への新規企業立地、市内既存事業所の拡大再投

資を支援してまいります。また、市融資制度などによる中小企業の経営支援を

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行うとともに、早期離職を抑制するための意識啓発や市内企業への就労と定着

を促すための面接会等を開催してまいります。

商業の振興につきましては、身近なところで住民の生活を支えている商店街

の魅力や買い物客の利便性の向上につながる商店街の取組を引き続き支援して

まいります。

農林業の振興につきましては、鳥獣被害対策やスクミリンゴガイ、いわゆる

ジャンボタニシの被害軽減などに取り組んでまいります。また、小学校施設

内装木質化やウッドスタート事業、いこいの森の管理運営などを通じて、地域

産木材のさらなる利用拡大や木育等を推進し、森林・林業・木材産業の活性化を

図ってまいります。

【歴史・文化】

文化・芸術の振興につきましては、市民ホールの開館を控え、文化によるまち

づくり条例を制定し、産業等との連携を図りながら、引き続き多様な文化・芸術

事業や質の高い芸術活動に触れることのできるアウトリーチ事業を実施するな

ど、文化による魅力と活力あふれるまちづくりを進めてまいります。

歴史資産の保存と活用につきましては、小田原城跡、石垣山などの史跡をし

っかりと後世に残し、その活用を図っていくため、御用米曲輪の修景整備や史

跡の公有地化等を推進するとともに、史跡小田原城跡保存活用計画を策定して

まいります。

生涯学習の振興につきましては、図書施設・機能整備等基本方針に基づき、新

たに小田原駅東口図書館を開館するほか、かもめ図書館については、中央図書

館に名称変更して統括施設の位置付けを明確にするとともに、市立図書館から

貴重資料等を移管するための収蔵機能強化や地域資料の公開に向けた準備に取

り組んでまいります。

生涯スポーツの振興につきましては、城下町おだわらツーデーマーチやウォ

ーキングをはじめとした地域スポーツの普及など、身近な地域でスポーツに親

しめる取組を引き続き進めるとともに、スポーツ施設の必要な改修や修繕を計

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画的に実施し、利用者サービスの向上や効率的な管理運営を行ってまいります。

また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた協定締結

国の事前キャンプやその国々のアスリートとの交流事業、さらには、子どもた

ちがスポーツに触れる機会や障がい者スポーツの普及・啓発の促進などを通じ

て、大会の機運醸成に努めるとともに、スポーツの振興や地域の活性化につな

がる取組を進めてまいります。

(3)豊かな生活基盤のある小田原

【自然環境】

廃棄物の減量化・資源化の推進につきましては、古紙リサイクル事業組合、小

田原生(いき)ごみクラブなどと協力して、紙の分別徹底と段ボールコンポスト

などによる生ごみの資源化による燃せるごみの削減を進めるとともに、食品ロ

ス削減や剪定枝の資源化に向けた取組を推進してまいります。基幹的設備改良

工事が完了するごみ焼却施設につきましては、引き続き施設の安定稼働に努め、

廃棄物の適正処理を進めてまいります。

良好な生活環境の保全と形成につきましては、令和元年度にPFI事業者を

指定管理者に指定し、新斎場の供用を開始しました。今後も引き続き民間のノ

ウハウを生かした良好な維持管理と運営を行ってまいります。

自然環境の保全と再生につきましては、山崩れの防止や水源かん養等、森林

の持つ公益的機能を高めるため、森林整備を着実に実施していくとともに、下

刈等を通じて森に親しみ、森の大切さを学ぶ活動を行うなど、人と自然が共存

する森づくりに取り組んでまいります。また、発足から60周年を迎える酒匂

川水系保全協議会の活動を通じて、酒匂川水系の豊かな環境を将来の世代に引

き継ぐための水質保全や環境の維持向上に資する事業を支援してまいります。

さらに、ニホンザルやニホンジカなどによる被害をなくすため、県や近隣市町

と連携して被害防除対策を進めてまいります。

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【都市基盤】

快適で魅力ある生活空間づくりにつきましては、国府津駅周辺整備事業とし

て自転車駐車場等の整備を進めてまいります。また、人口減少や少子高齢社会

に対応した集約型都市構造への転換に向け、国の制度を活用した民間再開発事

業への支援の拡充に加え、ゆとりある住宅の供給や都市防災の強化に寄与する

と認める事業に対する新たな支援により、市街地環境の整備・改善を図りなが

ら街なかへの定住を促進してまいります。

緑化の推進につきましては、小田原駅周辺の公共空間や民間施設の緑化支援

を強化するとともに、未就学児などが花と緑に触れる機会を増やすなどして、

将来のみどりの担い手を育成してまいります。また、公園の整備管理につきま

しては、長寿命化計画に基づき公園施設を計画的に改修するとともに、市民と

の協働による公園管理や、わんぱくらんど周辺施設との連携を図るほか、久野

霊園の合葬式墓地の整備と運用の方法について検討してまいります。

安全で円滑な地域交通の充実につきましては、幹線道路や狭あいな生活道路

の整備を進め、円滑な交通ネットワークの形成と、歩道のある市道交差点の安

全対策など市民生活に密着した安全な道路空間の充実を図るとともに、道路施

設修繕計画に基づき、効率的な維持管理に努めてまいります。

安定した水供給と適正な下水処理のうち、水道事業につきましては、安全で

安心な水道水を安定供給するため、経営の健全性を確保しつつ、老朽化した施

設や管路の更新、地震や台風等への備えを一層推進してまいります。下水道事

業につきましては、生活環境の改善や公共用水域の水質保全などを図るため、

引き続き下水道の未普及区域の整備を進めるとともに、下水道の機能を持続的

に確保するため、法定耐用年数を迎えた老朽管きょの更新や緊急輸送路下の重

要な管きょの耐震化、不明水の削減に向けた取組など、計画的かつ効率的な施

設の管理を行ってまいります。

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(4)市民が主役の小田原

【市民自治・地域経営】

市民活動の促進につきましては、おだわら市民交流センターUMECOを拠

点として、市民活動のさらなる活性化を図るとともに、様々な分野で活動する

市民活動団体と行政との協働を推進するための提案型協働事業に引き続き取り

組んでまいります。

自立した行財政運営の推進のうち、行財政改革につきましては、第2次行政

改革実行計画を着実に実行するとともに、将来を見据えた不断の業務の見直し

はもちろんのこと、保育所AI入所選考システムの導入、RPAの継続運用な

ど、先端技術を活用した取組によって、さらなる業務の効率化とサービスの向

上に努めてまいります。また、市庁舎等の熱源関係設備の改修を通じ、非常時の

電力確保を強化しつつ、将来的なエネルギー需要の変化にも柔軟に対応し、規

模の最適化を図ってまいります。

歳入の根幹をなす市税収入につきましては、引き続き口座振替の利用促進、

市税等納付促進センターによる早期の納付勧奨、滞納処分の厳正な執行により、

その確保に努めてまいります。

5 むすび

以上が令和2年度の市政運営方針及び重点的に取り組む施策であります。

これまで、市民の皆様とともに積み重ねてきた歩みは、一定の地点にまで辿

り着くことができました。しかし、それはまだ育ち始めた若木のようなもので、

決して後戻りしないよう、また、深く根を張り育っていくよう、しっかりと仕上

げをしていくことが必要です。

私たちは今こそ、「人にとっての幸せとは何か」、「社会の本当の豊かさとは何

か」といった根源的な命題にしっかりと軸足を定め、それに立脚した人づくり

やまちづくりを進めることで、揺るぎない「持続可能な地域社会」、すなわち、

いつまでも皆が笑顔で暮らすことのできる愛すべき「ふるさと」を、それぞれの

地域の現場から創り出していかなければなりません。そして、人や自然、なりわ

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いや文化など、豊かな地域資源に恵まれた郷土・小田原こそ、その実践の最適地

であり、「歴史の峠」において、私たちが未来に向かって進むべき方向とその歩

み方を、小田原での暮らしや営みの姿として示すことができると、私は確信し

ております。

小田原が積み重ねてきた歴史を振り返れば、そこにはいつも「人の力」があり

ました。これは、郷土の偉人である二宮尊徳翁の実践とその教えからも学ぶこ

とができ、その内容は、子どもたちの学びにも表れています。例えば、「二宮金

次郎とわたし」と題した市内の小学生による作文では、「まごころをもって事に

あたる至誠の心から、思い通りに進まなくても丁寧に低学年に寄り添いながら

仲良し班をまとめていきたい」、「どんなものにも必ず良さがあり役立つことが

あるという徳の考え方に触れ、様々なものや人の徳で生きている自分に気づき、

いつかこの徳を自分の力で返していきたい」、「全てのものがお互いに働きあっ

て良い結果を生み出す一円融合という考えから、チームの心をひとつにするこ

との大切さと、先生や仲間、家族に支えられていることに気づいた」など、自分

にできることを考え、日々の暮らしの中で実践している子どもたちの姿が見て

とれます。そして、尊徳翁の教えがSDGsの理念に通じていることを感じさ

せてくれます。

未来に向けて、真に持続可能な地域社会であるためには、次代を担う子ども

たちの学びを充実させていくことはもとより、現場での活動を担う「人の力」

を、地域社会全体として育てていくことが不可欠です。「人の力」に主眼を置き、

現場での学びと実践を循環させる「おだわら市民学校」を中核に据えた本市

SDGsの取組などを通じて、新たな人と人とのつながりを生み出すとともに、

より多くの方々が、目の前の課題を自分ごととして捉え日頃から行動に移して

いける環境を、そして、これまで培ってきた市民力や地域力、協働や公民連携を

礎にワンチーム・小田原の力が最大限に発揮される環境を創り出し、希望とい

う名の「人の力」で「新しい小田原」を進化させてまいります。

これまでの歩みに自信を持ちながら、市民の皆様の暮らしそのものを持続可

能なものとし、それが目に見えて分かるかたちとして享受できるよう、将来都

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市像「市民の力で未来を拓く希望のまち」の着実な実現に向け、引き続き全力を

尽くしてまいります。

以上をもって、令和2年度の施政方針とさせていただきます。議員各位をは

じめ、市民の皆様のご支援とご協力を心からお願い申し上げます。

令和2年2月17日

小田原市長 加 藤 憲 一