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医療安全管理指針 医療安全管理運用マニュアル 東京女子医科大学病院 《第 8 版》

医療安全管理指針 医療安全管理運用マニュアル · 期研修医が行ってよい処置・処方の基準、正確な時間・時刻等職員が広く周知しておくべき点についてまと

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医療安全管理指針

医療安全管理運用マニュアル

東京女子医科大学病院

《第 8版》

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目 次

ページ

はじめに 3~6

医療安全管理指針

第1章:医療安全管理に関する基本 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

第2章:医療安全管理に関する委員会並びに組織に関する基本的事項 ・・・・7~9

第3章:医療安全管理のための研修に関する基本方針 ・・・・・・・・・・・9

第4章:事故報告等の医療に係る医療安全確保を目的とした改善のための方策

に関する基本方針 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10

第5章:事故等発生時の対応に関する基本方針 ・・・・・・・・・・・・・・11

第6章:医療従事者と患者との間の情報の共有に関する基本方針 ・・・・・・11

第7章:患者からの相談への対応に関する基本方針 ・・・・・・・・・・・・12

第8章:その他医療安全推進のために必要な基本方針 ・・・・・・・・・・・12

医療安全管理運用マニュアル

Ⅰ:医療安全管理の基本 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

Ⅱ:医療安全管理システム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

1.構成図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

2.各機関の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15~17

1)医療安全管理委員会

2)医療安全対策室

3)RM委員会

4)各部門RM部会

5)医療安全管理特別部会

6)事故調査委員会

3.院内報告制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

1)院内報告制度の目的

2)インシデント・アクシデント1・アクシデント2・クレームの報告対象

4.インシデント・アクシデント1・アクシデント2の定義 ・・・・・・・18

1)インシデントとは?

2)アクシデント1とは?

3)アクシデント2とは?

5.職員研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

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6.情報の流れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19~20

1)インシデント・アクシデント1・アクシデント2・クレーム報告の原則

2)インシデント情報・アクシデント1情報・アクシデント2情報・クレーム

情報の対応

7.指針の閲覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

(資料)

①RM部会報告書 21

Ⅲ:アクシデント2発生時の対応について ・・・・・・・・・・・・・・・・22

1.アクシデント 2の定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

2.アクシデント 2発生時の院内連絡体制 ・・・・・・・・・・・・・・22~23

3.アクシデント 2発生部門における、重大事故発生時の対応について ・24~25

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はじめに

「よりレベルの高い医療安全を目指して」

(2011年版)

病院長 立元 敬子

東京女子医大病院の「医療安全管理指針•医療安全管理運用マニュアル」は 2000年に初版が発行され、こ

の度、第 8版に更新されました。この間、医療安全に対する職員の意識は、一人一人着実に高まってきてお

り、また、あらゆる部署においても安全性の確保や質の向上に継続して取り組む体制が根付いてきました。

医療は、一人の医療者が始めから最後まで担う時代ではありません。高難度の先進的な医療の提供を期待

されている大学病院では、一人の患者の診療に医師、看護師、薬剤師、検査技師、栄養士、工学技士など多

職種のエキスパートが関わります。したがって、各自の安易な思い込みを避け、その患者に関わるすべての

情報を医療者間で正確に共有することが極めて重要です。

また、患者へのインフームドコンセント(診療内容、危険性、治療効果、副作用、後遺症など)は、より

具体的に、そしてより理解を深めていただけることが求められています。一人の人間の行う行為に 100%は

あり得ませんが、患者の立場と目線にたって、つねに慎重な、真摯な、冷静な医療の実践を心がけていただ

きたいのです。

これこそが、チーム医療の根幹であり、医療安全に直結するものです。情報共有とともに、医療安全遂行

の高い意識を持って役割を果たされることで、女子医大病院の医療安全のレベルをさらに高めることができ

ます。

今般、医療安全対策室を中心に、院内のあらゆる職種が横断的にチームを組み、具体的な課題に取り組ま

れ、手順の見直し、研修、器材の標準化など多方面で検討が重ねられ、それらが新版に盛り込まれています。

職員の皆様には、いつもポケット版を持ち歩き、いつでもどこでも、発生した事例に対し何をどうすれば良

いのかというガイドラインとしても有効活用いただきたいと思います。そして、発生した有害事象に対して

は、ただちに背景にある原因、誘発因子、プロセスを徹底検証することが、明日からの再発予防に繋がりま

す。「安全な医療推進検討会」の場で、事例ごとに関連診療科、関連部署の方々とともに検討会を重ねてお

ります。その中から、新たに誕生したマニュアル(重症者搬送マニュアル、病室出張透析マニュアルなど)

もあります。

医療安全も日々、進化しているのです。各自が現状に満足せず、よりレベルの高い医療安全を目指してい

ただくことを心より期待しています。

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(2011年版)

医療安全対策部門担当副院長 岡田 芳和

私どもの社会には安全神話、すなわち絶対に安全ということはなく、多くの場合悪いことは、一度では収

まらず、二度、三度と重なることが 2011年の東北関東大震災によっても明らかになりました。このような

災害や過去の事例から得られる教訓として安全管理のためには最悪の事態を前提とした準備が必要不可欠

であり、甘い想定や準備では想像をはるかに超える被害が発生しています。

医療現場では一人の医療従事者が病棟、手術室、ICUなど複数の場所で異なる業務を遂行しなければなら

ない状況があり、さらに刻一刻と変化していく患者にプロフェショナルな対応が求められるという特徴があ

ります。これらのために処理しなければならない多様な情報が膨大な量となっています。一方、正確な情報

伝達並びにエラーを完全にチェックできるシステムの構築は極めて困難です。そこには日々の叡智の蓄えが

重要です。例えば手術において術前診断と術中所見が大きく異なるような状況下で適切な判断を下すには術

者の卓越した知識や経験が必須のものとなっています。このような医療現場で安全に医療を行うためには以

下の3つのことを心がけることが重要です。

第一は、医療現場ではエラーが常に起こりうる場であり、それを完璧に防ぐシステムは無いという認識を

持ち、不完全なシステムを補うために職員が相互に良好なコミュニケーションを取ることです。

第二は、現場で起こったインシデントやアクシデント事例の報告、分析、結果のフィードバックを絶えず

行うことです。ひとつの重大なアクシデントが発生した背景には何十、何百という些細なインシデントやア

クシデントが起こっています。インシデント、アクシデントの検証や改善策の策定、いわゆる

PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルの継続は、安全な医療環境を構築するためには不可欠なプロセスになっ

ています。院内報告制度は「逃げない、隠さない、ごまかさない」をモットーとして誠実かつ透明性の高い

安全文化を醸成するうえで欠かせないものです。報告方法が紙運用から電子化に変更したことを期に事例の

報告、分析、結果のより円滑なフィードバックを目指しています。

第三は、職員個人が医療の安全に関する情報を理解し、患者に安全な医療を提供するための技術を身につ

けることです。

今回、医療安全管理指針•医療安全管理運用マニュアルの第 8版が発行されましたが、医療安全管理指針・

マニュアルは東京女子医科大学病院で働く限り、必ず携帯し、活用してください。

皆さんの現場でも工夫して安全な医療を提供して戴き、当院の医療レベルの向上を図るとともに東京都さ

らには日本の医療の発展に寄与できるように努めていただきたいと思います。

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(2009年版)

医療安全対策部門担当副院長 亀岡 信悟

医療は患者のためにあります。患者のための医療は安全で良質かつ高度であることが求められます。安全

な医療とは患者の安全が勿論第一ですが、医療従事者の安全、医療関係者の安全、地域の安全、不特定多数

の方の安全をも含めたものといえます。安全な医療は質の向上にも繋がり、その根幹は患者と医療者側の信

頼関係にあると思います。しかし残念ながら国民の医療不信は現在もなお強く、信頼関係が希薄といわざる

を得ない状況が往々にして見受けられます。したがって患者と医療者側の信頼関係を取り戻すためにも、こ

れからもより一層安全な医療の推進をはからねばなりません。

東京女子医科大学病院では医療安全管理指針・医療安全管理運用マニュアルの初版を 2000年に刊行しま

した。その後、数回小改訂を重ね、今日に至っていますが、此の度リスクマネージャー委員会・小グループ

活動におけるマニュアル作成委員の方々のご尽力により、大きな改訂に漕ぎつけることが出来ました。

今回の大改訂のコンセプトとして大きな点は、医療安全管理運用マニュアルを総論と各論に分け、項目数

を追加したことです。リスクマネージャー委員会のマニュアル作成委員のメンバーが地道に現場の意見を汲

み上げ、更には他施設のマニュアルの優れた部分を参考にさせて頂きながら、なお且つオリジナリティーの

ある内容に仕上がったと自負しております。

今回の総論では個人情報、患者確認、インフォームド・コンセント、処方箋の書き方、医薬品の確認、初

期研修医が行ってよい処置・処方の基準、正確な時間・時刻等職員が広く周知しておくべき点についてまと

められております。各論では医療安全の観点から重要と思われる、すなわち重大な医療過誤を未然に防ぐ為

に必要な項目を取り上げ、1)輸血施行規準・手順、2)医薬品の取り扱い方法、3)手術・麻酔、4)医療記録、5)

医療事故防止のための医療材料、6)ME機器の使用、7)検査、8)転倒転落防止対策、9)褥瘡防止対策、10)急

性肺血栓塞栓症の診断・治療・予防マニュアル、11)高カロリー輸液のための CVカテーテル、12)患者搬送、

13)アナフィラキシーの対応、14)救急蘇生、15)行方不明・無断離院・無断外泊時の対応、16)身体拘束、17)

医療安全管理指針の更新・変更方法など 17項目についてきめ細かく述べられております。

数え切れないほどのアンケートや推敲、校正を重ねて完成させた小グループ活動のリスクマネージャー諸

氏に改めて感謝申し上げます。

さて、マニュアルの完成度はかなり高いと思っておりますが、問題はこれを如何に全職員に周知徹底させ

るかです。安全な医療を推進していくべき医療現場で、マニュアルを理解し活用できなければ意味がありま

せん。職員の方々にはこのマニュアルを折りにふれ手に取り、熟読し、理解して戴き、常に細心の注意を払

い職責を果たして戴くようお願い致します。

なお、この指針・マニュアルは時代の要請などにより、必要に応じてフレキシブルに更新するつもりです。

ご意見ご要望等があれば医療安全対策室へ気軽にお問い合わせ下さい。

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(2007年版)

病院長 永井 厚志

病院において患者の安全を確保することは、良質な医療を提供する上での基本事項です。安全な医療組

織を構築するためには、医療事故(アクシデント)や医療事故に結びつく可能性のある事象(インシデント)

について、情報の収集、分析、対応、評価を系統的に行う必要があります。この一連の作業を恒常的に遂

行することにより、組織体として医療にかかわる事故の発生を抑制することがはじめて可能となります。

人間の行いから“過失”を無くすことは出来ません(To err is human)。何らかの“過失”は日常生活

のなかでしばしば発生しており、“過失”を犯すのは必ずしも不注意な人間とは限らず、優秀な人間でも

無意識のなかで“過失”をしています。労災事故に関する Heinrich の研究では、1 件の事故の背後には

29 件の軽い事故があり、事故には至らなくとも同様な事象が 300 件存在していたといわれています。す

なわち、1:29:300に例えられるように、1件の事故発生は類似の問題が発生しやすい危険要因が組織環

境に存在していることを示唆しています。したがって、有害事象が発生した場合には、関係した当事者の

責任や改善を追求するのではなく、有害事象の発生した状況を十分に調査分析し、その結果をあらゆる職

域で働く人達に周知させることにより、有害事象の再発を防止するために必要な情報と認識を病院全体で

共有することが重要です。この共通した認識事項を踏まえて、診療、看護、事務を遂行する際の手順、情

報伝達の在り方、医療従事者間の連携、組織内の環境、管理、風潮に関して有害事象を誘発する要素や、

阻止することを妨げる要因が存在していないかについて検証することが求められます。これらの作業を通

して常に組織環境を点検することにより、有害事象のおこりにくい(エラーレジスタント)、過失を犯して

も重大な事故にいたらない(エラートレラント)組織へと機構を改善することが可能となります。

病院全体が組織や職種の壁を超えて、医療事故の防止、医療の安全性確保、質の向上に継続して取り

組み続けるとともに、全ての医療従事者が医療安全の必要性・重要性を自分自身の課題として認識しな

ければなりません。

“患者が安心して診療を受けることの出来る医療安全体制を構築し、良質な医療を提供するのは《あな

た》です。”

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(2002年版)

病院長 東間 紘

医聖ヒポクラテスの誓いに「患者に害を与えたり、傷つけたりしてはならない」とあり、またナイチンゲ

ールは「病院は、患者を害してはならない」と言っています。私たち医療者は、日常的に、患者に対して注

射を刺したり、放射線を浴びせたり、あるいはメスで身体を切り開いたり、大変危険な行為を行っています。

もし、これらの行為が電車の車内や道路上で突然行われたとしたら、どうでしょう。それは明らかに犯罪で

あり、人権侵害であります。私たちの行っている医療行為が、傷害罪として告発されないのは、その行為が

患者の命を救い、健康が回復できるなど患者のために役立つことを、患者が十分納得し、了解されているか

らです。そもそも私たちの行う医療行為が医療行為として成り立つためには、患者の納得と了解(同意)が前

提なのです。

私たちは、医療の場で行う全ての行為について、患者に、分かりやすい言葉で十分に説明し、患者のご意

見を聞き、納得を得たうえで、同意を得ることが必要です。そして、決して患者に害を与えるようなことを

してはならないのです。

医療事故を起こさないという強い決意と、そのための不断の努力が何よりも求められています。

患者は、自分を個人として人間として大切にしてくれる、安全で、良い医療を求めています。医療の質は

提供する人の特性に依存するといわれています。私たち医療者は、その道のプロフェッショナルとして最新、

最高の知識や技術を患者に提供しなければなりません。と同時に、プロだからこそ決して患者に害を与えて

はならないのです。

そうは言っても、思わぬときに予期しない間違いや事故が発生することがあります。そういう場合こそも

っとも重要で、即座に適切な対応を行って患者を守り、間違いを修正すると同時に、その事実をできるだけ

広く多くの人に知らせて、2度と同じ間違いが起こらないようにしなければなりません。決してこっそりと

処理したり、隠したりすることがあってはなりません。私は外科医ですので、清潔、不潔という概念を徹底

的に叩き込まれてきました。手術室で、何かちょっとしたことで不潔な手や体が清潔な(消毒・滅菌された)

部分に触ったとします。たとえ誰も見ていなかったり誰にも気づかれなかったとしても、手を上げ、大声で、

そのことを申告し、関係者全員に知らせます。だまってそのままにしたら、もしかしたらその患者は術後感

染で苦しむことになるかも知れないからです。

患者に対して、「決して害を与えない」、「嘘をつかない」、「隠さない」の3原則をモットーとして、

不断の教育、訓練、努力が必要です。もしも、予期せぬ何かが起こったときは、まずその事実を報告してく

ださい。最良のリスクマネージメントは、私たち医療者が、傲慢さを捨て、公明正大に振る舞い、隠しごと

をしないことです。

この指針は、患者本位の、もっとも安全で、最高、最善の医療を実践するための指針を示したものです。

手元において、役立ててほしいと思います。しかし、本当は、こんな指針を必要としない病院でありたいと

切に願っているところです。

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東京女子医科大学病院 医療安全管理指針

第1章 医療安全管理に関する基本

(目的)

本指針は、東京女子医科大学病院(以下「本院」という)において、医療安全管理に必要な

事項を定め、医療の安全の確保のための体制を整備し、良質で安全な医療の提供に資するこ

とを目的とする。

(医療安全管理の基本)

本学の創立者の提唱による「至誠」と「愛」を医療活動の精神的基盤とし、その精神のもと

で「患者中心の医療」が行われることは本院の使命であり、以下の項目を医療安全管理の基

本とする。

(1)本学創設の思想である「至誠の心」と「愛」を基本に、患者のための医療及び安全管理

を確立する。

(2)患者の利益を優先とし、謙虚な姿勢で診療にあたる。

(3)特定機能病院として、患者が安心して受診していただける安全性と質の高い医療を提供

する。

(職員の責務)

職員は業務の遂行に当たり、患者への医療、看護等の実施、医薬品、医療機器等の取扱いな

ど安全な医療を行うよう細心の注意を払うとともに、事故を未然に防ぐための知識・技術を

習得しなければならない。

第2章 医療安全管理に関する委員会並びに組織に関する基本方針

(委員会の設置)

1.本院での医療安全管理の体制の確保及び推進のために、医療安全管理委員会を設置する。

医療安全管理委員会は次に掲げる基準を満たすものとする。

(1)医療安全管理委員会の管理及び運営に関する規程を定めること。

(2)重要な検討内容について、患者への対応状況を含め病院長等へ報告すること。

(3)重大な問題が発生した場合は、速やかに発生の原因を分析し、改善策の立案及び実施並

びに職員への周知を図ること。

(4)医療安全管理委員会で立案された改善策の実施状況を必要に応じて調査し、見直しを行

うこと。

(5)月1回程度開催するとともに、重大な問題が発生した場合は適宜開催すること。

(6)各部門の安全管理のための責任者等で構成されること。

2.医療安全管理委員会は、他の医療の安全に関する委員会(院内感染対策委員会部会、褥瘡

対策委員会等)と連携し、院内全体の医療安全管理体制を確保する。

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(室の設置)

本院における医療安全体制確保のための活動を行い、組織横断的に医療安全対策を推進する

ことを目的として、医療安全管理者及びその他必要な職員で構成する医療安全対策室を設置

する。医療安全対策室は主に次の業務を行う。

(1)医療事故防止に関する情報収集、集計・分析、対策立案、フィードバック、評価。

(2)医療事故発生時における発生部門ならびに患者・家族等への対応、関連部署との連携・

調整。関連委員会の開催。

(3)医療安全に関する組織横断的な改善策の立案・実施・評価。

(4)医療安全管理に関する職員教育・研修。

(5)その他医療安全管理体制の推進に関する事項。

(安全管理者の配置)

医療安全管理のための体制確保ならびに安全管理の推進のため、以下の安全管理者並びに安

全管理責任者及び安全管理副責任者、実務責任者を置く。

(1)医療安全管理者

1)医療安全管理者は、医師、薬剤師または看護師のうちのいずれかの資格を有し、所定の

医療安全管理研修を修了した者とする。

2)医療安全管理者は、医療安全管理委員会の構成員となり医療の安全管理に関する体制の

構築に参画し、医療安全対策室の業務に関する企画立案及び評価、委員会等の各種活動

の円滑な運営を支援する。また、医療安全に関する職員への教育・研修、情報の収集と

分析、対策の立案、事故発生時の対応、再発防止策立案、発生予防および発生した事故

の影響拡大の防止等に努める。そして、これらを通し、安全管理体制を組織内に根づか

せ機能させることで、本院における安全文化の醸成を促進する。

3)医療安全管理者は、医療安全対策の推進に関する業務に専ら従事し、医療安全部門の各

組織ならびに各安全管理者と連携して業務を行う。

(2)医薬品安全管理責任者

1)医薬品安全管理責任者は、医薬品に関する十分な知識を有する医師、薬剤師または看護

師のうちのいずれかの資格を有する者とする。

2)医薬品安全管理責任者は、医薬品の安全使用のための業務に関する手順書の作成。職員

に対する医薬品の安全使用のための研修の実施、医薬品の業務手順書に基づく業務の実

施。医薬品の安全使用のために必要となる情報の収集その他の医薬品の安全使用を目的

とした改善のための方策等の業務を行う。

3)医薬品安全管理責任者は、医薬品に係る安全管理のための体制を確保するため、医療安

全管理委員会ならびに各安全管理者との連携により、実施体制を確保する。

(3)医療機器安全管理責任者及び医療機器安全管理副責任者並びに実務責任者

1)医療機器安全管理責任者は、医療機器に関する十分な知識を有する医師、薬剤師、看護

師、診療放射線技師、臨床検査技師または臨床工学技士のうちのいずれかの資格を有す

る者とする。

2)医療機器安全管理副責任者は、臨床工学部運営部長、放射線管理室室長、中央検査部運

営部長がその任にあたる。

3)実務責任者は、臨床工学部技士長、画像診断部技師長、中央検査部技師長がその任にあ

たる。

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4)医療機器安全管理責任者は、職員に対する医療機器の安全使用のための研修の実施。医

療機器の保守点検に関する計画の策定や保守点検の適切な実施、医療機器の安全使用の

ために必要となる情報の収集その他の医療機器の安全使用を目的とした改善のための

方策等の業務を行う。

5)医療機器安全管理責任者は、医療機器に係る安全管理のための体制を確保するため、医

療安全管理委員会ならびに各安全管理者との連携により、実施体制を確保する。

6)医療機器安全管理副責任者並びに実務責任者は、医療機器安全管理責任者を補佐し業務

を円滑に推進する。

(リスクマネージャーの配置)

各部門の医療安全管理の推進に資するため、リスクマネージャーを配置する。

(1)リスクマネージャーは、診療部門、看護部門、サービス部門、診療支援部門、医療安全

対策部門、臨床研修教育部門ならびに管理部門からそれぞれ選任する。

(2)リスクマネージャーは主に以下の業務を行う。

1)各部門におけるインシデント・アクシデントの発生原因・傾向の分析・改善策等、医

療安全対策の推進に係る検討および提言。

2)医療安全管理委員会において決定した方針・事故防止対策・改善策等に関する事項の

各部門への周知。

3)その他、医療安全管理対策の推進に関する事項。

第3章 医療安全管理のための研修に関する基本方針

(医療安全管理のための職員研修)

1.研修は、医療に係る安全管理のための基本的考え方及び具体的方策等について職種横断

的に開催し、個々の職員の安全に対する意識、安全に業務を遂行するための技能やチー

ムの一員としての意識の向上等を図るとともに、本院全体の医療安全を向上させること

を目的とする。

2.研修は、年2回程度定期的に開催する他、必要に応じて開催する。

3.新人医療職対象の研修は必須とし、中途採用者並びに帰局者についても適宜開催する。

4.医療安全推進に必要な専門研修の開催並びに外部機関研修会等への参加を図る。

5.研修を実施した場合、実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修内容)を記録する。

(研修への参加)

本院の職員は、研修が実施される際には、極力、受講するよう努めなくてはならない。

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第4章

事故報告等の医療に係る安全確保を目的とした改善のための方策に関する基本方針

(安全の確保を目的とした報告体制)

患者の医療安全確保、医療事故防止の観点から、医療を行う過程で発生した想定していなか

った事象や好ましくない事象の発見者または当事者は所定の方法で報告する。

(報告とその目的)

この報告は、情報の収集・分析を行い、医療事故を防止するための改善策を作成し、医療事

故を未然に防止するシステムを構築することを目的とする。

(報告すべき事項)

医療行為を行う過程で、医療者からの不適切行為があった場合、不適切ではなかったが予想

されていない不都合な結果が生じた場合。医療行為に関する苦情。患者要因での不都合な事

態。などについて、患者への影響の有無にかかわらず、いずれかに該当する状況に遭遇した

場合に報告する。

(報告の方法)

報告は、原則としてインシデント報告分析支援システムに入力する形で行う。報告は診療録、

看護記録等に基づき事実のみを記載する。

(報告者の保護)

本指針にしたがって報告を行った職員に対し、これを理由として、職務上等において不利益

な取り扱いを行ってはならない。

(改善方策)

医療安全管理委員会は、院内感染対策委員会部会並びに褥瘡対策委員会等と連携し、院内か

ら報告された事例並びに医療の安全に関する各種情報に基づき、医療の安全に関する再発防

止策や改善策を立案及び実施並びに職員への周知を図るとともに、改善策が有効に機能して

いるかを調査し、必要に応じて見直しを図る。

(事故当事者への配慮)

管理者等は、医療事故に関わった当事者に対して、患者・家族への対応等十分な配慮を行う

とともに、精神的ケアや相談に応じる体制の整備並びに当事者の個人情報保護等に十分配慮

しなければならない。

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第5章 事故等発生時の対応に関する基本方針

(患者生命を最優先)

医療を行う過程で、患者に予期せぬ重大な障害が発生した場合は、患者の生命を最優先とし、

上長や師長等に連絡し、診療の指示を仰ぎ、医療に万全の体制で臨む。また、関連部門スタ

ッフ等との連携により、医療チームとして対応する。

(記録)

職員は、事故経過を整理・確認し、事実経過を医療記録に正確に記録する。なお、事故に

関連した器材・器具などは原因確定の物品として保管する。

(患者・家族への説明)

事故発生後、診療に支障を来たさない限り可及的速やかに、事故の内容及び予後を、医療記

録等に基づき事実経過を正確にわかり易く説明する。

(事故の報告)

診療に支障を来たさない限り可及的速やかに、直接または上長・師長等を通じて医療安全対

策室(医療安全管理者)に連絡を入れ、インシデント報告分析支援システムに報告内容を入

力し送信する。医療安全対策室(医療安全管理者)は、医療安全対策担当副院長(室長)なら

びに病院長等へ迅速かつ正確に報告する。

第6章 医療従事者と患者との間の情報の共有に関する基本方針

(情報の共有)

懇切丁寧な説明を受けたいと望む患者と、十分な説明を行なうことが医療提供の重要な要素

であるとの認識を持つ医療従事者が、協力し合う医療環境を築く事が必要であり、医療従事

者側からの十分な説明に基づいて、患者側が理解・納得・選択・同意が得られるよう、医療

従事者は患者との間で情報を共有するよう努めなくてはならない。

(指針の閲覧)

本指針は、患者及びその家族から閲覧の申し出があった場合には、速やかに応じるものとす

るとともに、ホームページ等で公開する。

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第7章 患者からの相談への対応に関する基本方針

(患者相談窓口の設置)

1)患者や家族等からの相談等に応じられる体制を確保するための患者相談窓口として、患者

サービス室が担当する。

2)相談等を行った患者や家族等に対しては、これを理由として不利益な取り扱いを行っては

ならない。

4)相談を受けた内容等について職務上知り得た内容を、正当な理由なく他の第三者に情報を

提供してはならない。

5)相談を受けた内容は記録するとともに病院長に報告する。また、相談等で医療安全に関わ

るものについては、医療安全管理部門と連携して対応し、安全対策の見直し等に活用する。

第8章 その他医療安全推進のために必要な基本方針

(医療事故事例の報告)

医療事故の発生予防・再発防止策を講じるための、事故事例の報告に関する事項を定めた、

医療法施行規則第9条の23第1項第2号に示されている事案に該当する事例について、医

療安全対策室から所定の機関に報告する。

(医薬品・医療機器安全情報報告)

薬事法第77条の4の2第2項に示されている、医薬品または医療機器の使用による副作用、

感染症または不具合の発生について、保健衛生上の危害の発生または拡大を防止する観点か

ら報告の必要があると判断した情報(症例)について、薬剤部及び医療安全対策室から所定

の機関に報告する。

(医療安全対策ネットワーク整備事業への協力)

医療安全対策ネットワーク整備事業(個々の医療機関が収集・分析した情報や、当該情報を

基に検討した対策などを収集・分析し、提供することにより、広く医療機関が医療安全対策

に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することなどを通じて、医療安

全対策の一層の推進を図ることを目的とする)に対し、医療安全対策室から事例の報告を行

う。

(指針の周知)

医療安全管理委員会は本指針を全職員に周知徹底する。

(指針の改訂)

本指針は、医療安全管理委員会において、定期的な見直し並びに医療法の改正等必要に応じ

て改訂を行う。

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医療安全管理運用マニュアル

Ⅰ.医療安全管理の基本

医療法では特定機能病院での「医療安全管理」が求められております。

本学は創立者の提唱による「至誠」と「愛」が医療活動の精神的基盤となっています。 その

精神のもとで「患者中心の医療」が行なわれることは本学病院の使命でもあります。

1.本学創設の思想である「至誠の心」と「愛」を基本に、患者様のための医療

および安全管理を確立する。

2.患者様の利益を優先とし、謙虚な姿勢で診療にあたる。

3.特定機能病院として、患者様が安心して受診していただける安全性と質の高

い医療を提供する。

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Ⅱ.医療安全管理システム

医療安全管理システム

1.構成図

GRM: General Risk Manager, RM: Risk Manager, ME: Medical Engineering

病院長

<医療安全管理委員会>

委員長:病院長

副委員長:副院長(GRM)

委員:診療部長、管理部長、運営

部長、医療安全管理者

医薬品安全管理責任者

医療機器安全管理責任者

外来関連RM部会

各診療科RM部会

感染対策関連RM部会

リハビリ関連RM部会

手術関連RM部会

中央集中治療関連RM部会

放射線関連RM部会

中央検査関連RM部会

輸血関連RM部会

栄養関連RM部会

ME関連RM部会

中央部門関連 事務・管理部門RM部会

治験部門RM部会

薬剤部門RM部会

看護部門RM部会

〈医療安全管理特別部会〉

病院長、副院長(GRM)、

医療安全管理者、医療安全対

策室員、該当診療部長、事務

長、外部評価委員等

〈事故調査委員会〉

病院長指名メンバー

<RM委員会>

副院長(GRM)

医療安全管理者、RM全員

医療安全対策室員

|

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2.各機関の役割

1)医療安全管理委員会

①構成:委員長(病院長)、副委員長(医療安全対策担当副院長)、医療安全管理者、副院長、診療部長、

管理部長、運営部長、事務部長、医薬品安全管理責任者、医療機器安全管理責任者、

医療安全対策室員

②役割:全病院的または各部門における医療安全対策の妥当性を審議する。

③業務:月に一回委員会を開催し、医療安全対策室からインシデント・アクシデントの報告を受け、現

状を把握すると同時に、RM委員会や医療安全対策室からの対策案や病院全体の改善すべき問題点

などについて、改善策の妥当性を審議・承認や問題についての改善策検討を行い、その改善策を

医療安全対策室から、部門長・医局長 RM などを通じて病院全体に周知徹底させる。また、重大

事故等が発生した場合には適宜開催し、事故情報の詳細を把握すると伴に改善策や対応策を決定

して、病院全体へ周知徹底させる。

なお、この委員会では院内感染対策委員会部会、褥瘡対策委員会等と連携し、病院内全体の広

義の安全管理を統括する。

※ジェネラルリスクマネージャー(GRM)

医療安全対策担当副院長がGRMの任務にあたる。GRMは、医療安全管理者からの提言や報告から

病院としての安全管理のあり方、具体的な方向性の指示、組織編成の妥当性、諸活動の企画・評

価、全体としての整合性、横連携の円滑化などを通じて、病院全体の事故防止活動が組織の目標

に合致し、円滑に行われるよう管理を行う。

※医療安全管理者(専任)

GRMと連携し、医療安全対策の企画・立案・実施・評価を行い、安全管理を推進するため医療安

全管理委員会や RM委員会に提言及び報告を行う。

2)医療安全対策室

①構成:室長(副院長 GRM)、副室長(兼任)、医療安全管理者(専任)、医師(兼任)、薬剤師(兼任)、看

護師(兼任)、情報システム部員(兼任)、事務(専任)

②役割:病院全体として組織の壁を超えて、医療の質の向上、安全性確保のための必要な決定を行い、

これを確実に実行し、現場各部門においても積極的な取り組みが行われるよう活動する。さらに、

病院全体の取り組みと現場での取り組みとが有機的に連携を図れるような活動を通じて、医療事

故の防止、医療の安全性、質の向上に実績をあげる。

③業務:・インシデント、アクシデントの収集・集計・分析ならびに当該RMへの検討依頼

・RM全体会議への検討事項提起

・組織横断的改善策立案ならびに改善実施後の監査及び評価

・各部門に対する院内ラウンド・書類などの調査、閲覧、指導

・各部門の症例検討会や RM部会への参加及び検討内容検証・調査、指導

・事故発生時の診療科等事故発生部門への対応方法助言・コンサルテーションや関連部署(業務

管理課など)の対応依頼

・事故発生時の調査及びヒアリング(インフォームド・コンセント内容、事後説明内容、診療録

等の記録内容確認および検証)、指導

・患者及び家族への対応に関するコンサルテーション

・改善実施のための各部門への依頼・調整・助言・コンサルテーション

・関係会議の企画・運営

・安全管理に関する広報・教育・研修企画立案及び評価

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3)RM委員会

①構成:副院長(GRM)、医療安全管理者、全RM、医療安全対策室員

②役割:医療安全対策室に集められた RM部会毎の改善策や組織全体の問題などを、組織を横断した検討

及び改善策の標準化を行い医療安全対策を実効あるものとする。 医療安全対策の実務者として

医療安全対策を各部門で実施し、周知徹底を図る。

③業務:月に一回または適宜、会議を開催し各 RM部会からの報告書(RM部会報告書)での改善策を組織横

断的に妥当性など含めて検討し、院内標準化改善策を討議する。また、医療安全管理委員会での

検討依頼事項や、さらに RM 部会で検討を要する項目をまとめる。 各 RM を通じて、決定事項の

実施・周知徹底を図る。

※リスクマネージャー(RM)

役割:医療安全推進の担当者。

ア)各部門におけるインシデント・アクシデントの発生原因・傾向の分析・改善策等、医療安全

対策の推進に係る検討および提言。

イ)医療安全管理委員会において決定した方針・事故防止対策・改善策等に関する事項の各部門

への周知。

ウ)その他、医療安全管理対策の推進に関する事項。

業務:ア)インシデント・アクシデント報告をリアルタイムで提出できるようにシステムを整える。

イ)医療安全対策室やスタッフから得たインシデント・アクシデントについての詳細状況を把握

する。

ウ)月1回ほど部門毎の RM部会を開催し、インシデント・アクシデントの発生原因・傾向を分

析し、具体的な改善策について検討を行い、部門内での医療安全策の実施と医療安全対策室

へ改善策を提言する。

エ)各部門を越えて組織横断的、病院内全体の問題として検討が必要な場合には、医療安全対策

室を通じて RM委員会や医療安全管理委員会に対して問題提起を行う。

オ)医療安全管理に必要な情報収集及びシステムや業務改善の実施のために院内のあらゆる既存

の部門・組織と横断的に連携する。

カ)部門内のスタッフに対してリスクマネージメントの観点から教育・安全管理体制や事故防止

策などの周知徹底を行う。

キ)実施された医療安全対策を定期的にチェックし、部門内での実効性評価を行なう。

4)各部門RM部会

①構成:部会長(RM)、以下の委員構成は各部門の裁量に委任する。必要と思われる場合は、他部門の所

属職員をメンバーに入れてもかまわない。

②役割:各部門内および、複数部門に渡る横断的なインシデント・アクシデント情報の詳細状況を把握

し、具体的な医療安全対策を考案、提言する。

③業務:医療安全対策室より検討依頼を受けた問題点やフィードバックされたインシデント・アクシデ

ントなどの情報に基づき、最低月1回、委員会を開催し、分析・検討・医療安全対策の考案を行い、

その結果を医療安全対策室に報告書(RM部会報告書)を用いて報告する。 医療安全対策室は報告内

容をRM委員会に提出し審議・検討されたのち、医療安全管理委員会で安全管理の妥当性を含めて最終

決定を行う。なお、他部門に起因する問題点については前述の報告書(RM部会報告書)の今後の課題欄

に部門名と検討要望事項を記載し、医療安全対策室に報告する。

5)医療安全管理特別部会

①構成:病院長、副院長(GRM)、医療安全管理者、医療安全対策室員、当該診療科の部長・当事者・RM

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担当者、事務長、外部評価委員、病院長指名のメンバー

②役割:患者に予期せぬ重大な障害発生時に病院長の指令の下に特別に設置され、すみやかに再発防止

の観点から事故原因を分析し、改善策を立案する。また、必要な対応策を関連部門に伝達する。

③業務:同上

6)事故調査委員会

①構成:病院長指名のメンバー

②役割:重大事故内容の事例により設置され、事故発生の機序・原因を調査、明らかにし、医療安全管

理特別部会へ報告する。

③業務:同上

3.院内報告制度

1)院内報告制度の目的

患者の医療安全確保、医療事故防止の観点から、医療を行う過程で発生した「想定していなかった事象」

や「好ましくない事象」に関する情報収集を行い、医療事故を防止するための改善策を作成し、医療事

故を未然に防止するシステムを構築する。

2)インシデント・アクシデント1・アクシデント2・クレームの報告対象

①医療を行う過程で、医療者からの不適切行為があった場合。

②医療を行う過程で不適切ではなかったが、予想されていない不都合な結果が生じた場合。

③医療行為に関する苦情。

④患者要因での不都合な事態(転倒・転落・無断離院・ドレーン類の自己抜去、自殺、自殺企図、自己管理

の服薬ミス等)。

※患者への影響の有無にかかわらず、以上の項目に該当する場合に報告する。

なお、医療機器・材料の不具合も報告対象とする。

※報告対象外(これらについては、別途報告システムが設けられている。)

①盗難・暴行。

②職員の針刺し事故。

③医療行為に関連しない苦情。

④院内感染。

⑤食中毒。

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4.インシデント・アクシデント1・アクシデント2の定義

1)インシデントとは?

:不適切行為が患者に及ばない場合

(例:点滴を違う患者の所まで持っていったが投薬する前に気がついた、異なる患者の薬を渡

しそうになったが直前で気がついた、など)

2)アクシデント1とは?

:不適切行為が患者に及んだが患者に症状や障害が発生しない場合。

または一時的な症状や障害が発生したが、対処可能な場合。

(例:指示と違う投薬をしてしまったが、身体には影響が出ないと思われる場合、ベッドから

患者が転落したが検査をして大事にいたらなかった場合、など)

3)アクシデント2とは?

:医療を行う過程で、患者に予期せぬ重大な障害が発生した場合をいう。

※ 参考 厚生労働省での定義は以下の通りである。

インシデント:日常診療の場で、誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、

あるいは、誤った医療行為などが実施されたが、結果として患者に影響を及ぼす

に至らなかったものをいう。

アクシデント:医療事故に相当する用語として用いる。

5.職員研修

研修は、医療に係る安全管理のための基本的考え方及び具体的方策等について職種横断的に開催し、

個々の職員の安全に対する意識、安全に業務を遂行するための知識や技能を高め、チームの一員と

しての意識の向上等を図るとともに、本院全体の医療安全を向上させることを目的とする。

1)研修は、年2回程度定期的に開催する他、必要に応じて開催する。

2)新人医療職対象の研修は必須とし、中途採用者並びに帰局者についても適宜開催する。

3)医療安全推進に必要な専門研修の開催並びに外部機関研修会等への参加を図る。

4)研修を実施した場合、実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修内容)について記録する。

5)主な研修内容

①本学病院の医療安全管理システム(組織・役割・報告制度・事故発生時の対応)。

②過去の事例から学ぶ医療安全対策

③院内感染防止に関する事項。

④医薬品の安全使用に関する事項。

⑤医療機器の安全使用に関する取り扱い方法。

⑥医療事故に関連する法規の知識。

⑦医療人としての意識 (医療人として守るべき事項・チーム医療スタッフの意識向上)。

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6.情報の流れ

《情報の流れ》

①インシデント・アクシデントなどの報告内容

②集計・分析報告、具体事例報告

③各部門改善策、組織横断的問題点・課題

④各部門改善策、組織横断的問題点、医療安全対策室からの改善策

⑤改善策、病院全体での問題点

医療安全対策室

収集・集計・分析・組織横断改善策

の立案)

医療安全管理特別部会

事故調査委員会

<当事者及び発見者>

インシデント・アクシ

デント1・アクシデント

2・クレーム報告

医療安全管理委員会 RM

医局長会

RM 部会

RM 委員会 部門長

① ③ ⑦

① ③

④ ⑤ ⑦ ②

⑧ ⑩

⑥ ⑤ ②

⑧ ⑨

医局長会議

医療安全管理の周知

医療安全管理の周知・RMと

の医療安全管理推進

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⑥承認された改善策、病院全体の問題に対する改善策

⑦承認された改善策(広報情報)

⑧重大事故情報

⑨調査報告

⑩改善策

1)インシデント・アクシデント1・アクシデント2・クレーム報告の原則

①報告は類似事例の再発防止を目的にしており、職員等の懲戒や人事管理の目的には使用

せず、報告者の個人の責任は決して問われない。

②報告はインシデント報告分析支援システムに入力する形で行う。詳細は院内ホームペー

ジの情報を参照。

③報告者は事実のみ記載し、その報告事項についての評価は記載しない。

④報告は原則として、当事者及び発見者が自発的に行う。

⑤報告内容の取り扱い及び保管管理に当たっては、十分な配慮を行う。

留意事項

①報告(当事者及び発見者)は、事故発生後、可及的すみやかに行うこと。

②重大事故発生時は、直接またはリスクマネージャーを通じて医療安全対策室(医療安全

管理者)に連絡を入れ、原則として 24 時間以内に報告内容をインシデント報告分析支

援システムに入力し送信する。

2)インシデント情報・アクシデント1情報・アクシデント2情報・クレーム情報の対応

①集計・分析:医療安全対策室で収集した情報を発生事由ごとに集計および分析を行なう。

②部門別フィードバック:医療安全対策室から各部門 RM にインシデント・アクシデント

などのレポートをフィードバックし、改善策検討を依頼する。

③詳細分析・改善策作成:各部門の RM 部会においてインシデント・アクシデント1・ア

クシデント2・クレーム等の情報について問題把握を行い、改善策を策定する。

④部門別改善策の検討:RM委員会でインシデント・アクシデント1・アクシデント2・ク

レーム情報を全 RM間で共有化し、部門毎の改善策の実効性を検討する。

⑤改善策の院内決定:医療安全管理委員会でインシデント・アクシデント1・アクシデン

ト2・クレーム情報を共有化し、改善策を審議・決定する。

⑥改善策の実施・周知:RM 委員会および医局会を通じて、各部門 RM と医局長において、

改善策を実施し、かつ、各職員に周知を行う。

⑦広報:医療安全対策室では医療安全管理委員会の通達として全職員へインシデント・ア

クシデント1・アクシデント2・クレーム情報などを広報する。

7.指針の閲覧

患者及びその家族から本指針の閲覧の申し出があった場合には、速やかに応じるものとする。

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RM 部会報告書

報告日 年 月 日

報告者氏名

開催日時 年 月 日 時 分~ 時 分

部 門 名 リスクマネージャー氏名

【参加部門名および氏名】

検討事例件数

インシデント 件

アクシデント1 件

アクシデント2 件

クレーム 件

その他 件

【事例の概略】(時系列で発生経緯を記載、登場人物・経験年数)

【事例の背景・要因】

【対策・改善事項】

【今後の課題】

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Ⅲ.アクシデント2発生時の対応について

注意事項 <アクシデント2が発生した場合には、的確な対応が必要となる。>

1.アクシデント2の定義

医療を行う過程で、患者に予期せぬ重大な障害が発生した場合をいう。

2.アクシデント2発生時の院内連絡体制

1)昼間

アクシデント2

発生部署

医療安全対策室

内線 31245

業務管理課

内線 31103・4

医療安全担当

副院長(GRM) 病 院 長

総務部長

内線 30310

事 務 長

内線 31101

理 事 長

専務理事

学 長

医学部長

看護部長

内線 31151

連絡

職場長などの判断により連絡

所属部長

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2)夜間・休日

アクシデント2

発生部署

夜勤師長

内線 35162

PHS 28972

医療安全対策室

(交換室依頼)

病 院 長 医療安全担当

副院長(GRM)

業務管理課

総務部長 事 務 長

理 事 長

専務理事

学 長

医学部長

看護部長

連絡

職場長などの判断により連絡

所属部長

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3.アクシデント2発生部門における、重大事故発生時の対応について

1)患者生命を最優先

患者の生命が最優先となるので、至急上長や師長に連絡し、診療などの指示を仰ぎ、事故に遭

った患者の医療に万全の体制で望むことが必要である。

夜間・休日の場合には、上長や、場合によっては夜勤師長に報告する。

2)対応チームの結成

事故に関連した部門および関連部門スタッフにより、すみやかに事故対応チームを結成し、事

故に対する対応を行う。(当事者だけでなく、医療チームとしての対応が必要。)

3)説明担当者を決める

患者・家族への説明担当者は、上長及び所属部長(科長)から選出する。

(医療従事者の説明が人によって異なってしまうと不信感を冗長する結果になるので、必ず担当

を決め周知する。)

4)カルテの記録 医療記録 診療録

事故経過を整理・確認し、事実経過をカルテへ正確に記録する。

あくまで、結果から検証するのではなく、その時点でどのような理由で、どう判断し、どのよ

うな行為を行ったのかが重要となる。記録した日付・記録者名を必ず記入する。

なお、事故に関連した器材・器具などは原因確定の物品になるので保管をする。

5)家族への連絡

患者家族には、上長または所属部長(科長)から至急連絡を取る必要がある。

なお、連絡した時間及び状況をカルテに記録を行う。

6)患者・家族への説明

説明には、説明担当者の他に所属部長(科長)・当事者を含め複数の者が立ち会う。

事故の原因および予後をカルテに基づき、事実経過を正確にわかり易く説明する。

カルテに説明者、立会者、説明を受けた人、説明時刻、質問事項、説明内容を記載する。

なお、警察に異状死として届ける場合((8)を参照)には、法的には家族の了承は必要としな

いが、信頼関係構築の観点から事前に了承を得ておく。

<患者・家族への対応>

病院として真摯に受け止めて対応することが必要となる。

患者・家族への対応としては以下のことが前提となる。

○不信・不安を与えないよう丁寧に接することが重要。

○事故経過を隠すことなく、事実のまま説明する。

○可能な限り、身体の影響・予後などについて説明する。

○過失の有無や過失と事故の因果関係の有無についても説明を行う。

(医師の他に、看護師も同席し、患者などの状態を把握し以後の看護ケアに役立

てる事が必要である。)

7) 病院への事故報告

診療に支障を来たさない限り可及的速やかに、直接またはリスクマネージャーを通じて医療安

全対策室(医療安全管理者)に連絡を入れ、原則として 24 時間以内に報告内容をインシデン

ト報告分析支援システムに入力し送信する。

報告内容には「いつ、どこで、何を行った」のかを明記する。

なお、報告者の個人的責任は一切問われない。

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8) 監督官庁への届出

・異状死が発生した場合には、「所属部長・医療安全対策担当副院長または病院長」の判断で

牛込警察に届ける。(医療安全対策担当副院長及び病院長に連絡が取れない場合には所属部

長が判断を行う。)

・夜間の場合には「所属部長」の判断で牛込警察に届ける。

(警察への異状死届出は24時間以内となる。異状死の届出:医師法第21条)

・異状死扱いとなる場合、カルテ等が押収されるため事前にコピーを用意する。

なお、予期せぬ重大な障害の場合には、医療安全管理特別部会を至急に開催し医療安全管理

特別部会の判断により、病院長または医療安全対策担当副院長から東京都福祉保健局医療政

策部医療安全課に届ける。

・医療機器の不具合は厚生労働省医薬食品局安全対策課に報告を行う。

9) 病理解剖の実施

異状死としての届出が必要ない場合で、かつ、死亡原因の特定のために解剖の必要性がある場

合には、病理解剖の承諾を求める。

なお、病理解剖の承諾が得られなかった場合には、その旨を必ずカルテに記載する。

10)医療安全管理特別部会の開催

予期せぬ重大な障害の場合には、医療安全管理特別部会を開催し、事故原因の調査および以後

の対応を決定する。

牛込警察署 03-3269-0110平日・夜間・休日

東京都福祉保健局医療政策部医療安全課 03-5320-4431平日

03-5272-0303夜間・土曜・休日

(夜間 5 時から午前 9 時まで)

東京都保健医療情報センター

異状死の報告(届出)に関する原則

1.医療過誤が疑われた場合に報告(届出)をする。

報告(届出)にあたっては所属部長・安全管理担当副院長または病院長が

判断する。

2.所轄警察署には当該部署のリスクマネージャー(または、それに準ずる者)

が報告する。

3.患者家族への対応は当該部署が行う。

平成16年7月医療安全管理委員会決定事項