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2012/1/30
日本小児科学会用語集
VS
日本医学会医学用語辞典
独自の用語集を持つ意義は?
日本小児科学会用語委員会委員長
森内浩幸
小児科学会用語集が目指してきたこと
・1994年に初版が刊行、2003年に補遺が刊行されたつきり、そ のままになっていた。
・時代のニーズに答え、診療、教育、研究などの現場で適切か
誰諜難騒罎嚢驕呈矯蓼よう1こ・常に・日本医学会医学用語辞典に準拠することを基本姿勢とする が小児ならではの問題点を考慮して、取捨選択しているとこ ろもある。
●籍瘡麗・ユーザーである学会員にフレンドリーであること
・学会HPから会員のみがパスワードで入るWEB検索システム の他に、誰にでもアクセスできるPDF版を準備した。
●籍離離臨聾緊急の場合は年度の途中でも改正
・改正においては、委員会メンバーからの提言に加えて、ユー ザーである会員から随時意見をいただき、それを委員会で検 討していくようにしている。
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2012/1/30
日本小児科学会用語委員会
「小児科用語集」は1994年に当時の用語委員会(赤塚順一委員長)の
元で編纂され金原出版株式会社から刊行されましたが、その後2003年に補遺が刊行されたことを除き改正改訂が行われてきませんでした。
その後医学の進歩に伴って、新たに生まれた医学用語もあれば、以前
繁用された用語で現在では不適切になったものも数多くあります。この間、WHOが策定しているlnternationaIClassificationofDiseases(ICD)
はICD-10へ改訂され、現在はさらにICD41への改訂作業が進んでいます。また日本医学会からも医学用語辞典(英和}第3版が刊行されました。
医学用語の使い方を整理し標準化することは、卒前卒後の教育や国
家試験や専門医試験の問題作成にも必要ですし、学会誌に投稿される医学論文の執筆においても拠り所となります。もちろんのことですが、
日常診療の中で適切な用語を用い不適切な用語を避けることは、医
療従事者同士のコミュニケーションの向上に繋がるだけでなく、疾患病
態について患者家族や社会全般に誤解や偏見を与えることを防ぐことにも役に立つと考えています。そこで、今回小児科用語集を改訂する
にあたって、以下の方 で臨みました
1)本用語集では、会員の日常診療(含、診療記録の記載)、医学
部の卒前卒後の教育(含,教科書の執筆)、臨床研究(含、論文執
筆)、医療行政(含、行政文書の作成)に有用な用語の収載を行う
ことを心掛けました。また学会誌投稿論文の執筆、国家試験や専門医試験の問題作成における拠り所としてもらいたいと思います。
2)本用語集の編纂は、ユーザーで △目にフレンド1一で
⊆止を目指しました。例えば、現在では用いられなくなった用語で
も古い文献を読むと出て来る用語は収載してその旨を表記しまし
た。また複数の訳語が当てられる場合には、推奨するものだけを
載せるのではなく、不適切なものもあえて載せて「使わない方がいい」ことを表明しました。
3)日 凸△ 凸 三五 片3 20073 山堂にシ丸しましたが、そこに収載されていない語であっても小児科にとって
必要と思われるものは含めました。逆に専門的すぎて小児科との関連の少ないものは収載しませんでした。また複数の訳語が当
てられている場合は小児科の立場で適切と思われるものに絞りました。
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4)本用語集は辞書ではないので、用語の解説は行いませんでした。
5)医学の進歩や社会情勢に応じて用語の使い方は常に変化していくことを踏まえ、今回の改訂(revision)の後もほぼ毎年改正(update)していくつもりです。
6)改訂改正に即応し、また広く利用してもらうために、印刷物としてではなく、インターネット上で利用できる形にしました。
7)用語集の改訂改正には会員から広く意見を求め、適宜それを反映させていきます。そのために、意見や要望がある場合には随時メールで用語委員会まで送っていただき、その中で広く会員の意見を求めて議論を深める必要があると判断された場合には、学会会員ホームページ上の掲示板で意見募集を行うことに致します。
繰り返しになりますが、この用語集は完成品としてご提供するものではありません。皆様に広く利用していただきながら、さらに利用価値の高い用語集へと発展させるつもりです。
凡例1.本用語集の構成
醗鵬雛一からなり・英文・和文・2.用語の取り扱いについて1)英文用語(略)
難文麗会輪五一一3の文記基1こしている。
雛懸字や表外灘に含まれない場合でも・基本的には漢字表
麹 しかし’画 の い・字で、平 記が一匹化しているものは 、 ( :’一〉つつ、=。今 )。
難来語・生物学名・物質名・ギリシャ文字はカタカナ表記を基本と
難し・ のままで示し・カタカナ書きに1ま⑥英文用語に対して複数の和文用語がある場合には「/」でつないでいる。
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3.記号一覧
本用語集で採用した記号の一覧を示す。
【奨】推奨語であることを示す。
【不適切】差別語と認識されているなどの理由で不適切と考える語
であることを示す。
【旧】現在では使用されなくなった語であることを示す。
【東洋医】東洋医学用語であることを示す。
【和】和文用語が国内で広く用いられている一方で、それに対応す
る英文用語が国際的には必ずしも認知されていないことを示す。
【欠】適切な和文用語がなく、邦文雑誌等でも英文用語のままで用
いられていることを示す。
《》捕捉的な説明などに用いる。
【奨】推奨語であることを示す。
【不適切】差別語と認識されているなどの理由で不適切と考える語であることを示す。
【旧】現在では使用されなくなった語であることを示す。
dwarfism【旧】【不適切】1低身長症
shortstature:低身長症、低身長
日本医学会医学用語辞典WEB版:dwarfism(英語代表語)低身長症(日本語代表語)、侏儒症【旧】、小人症【旧】
echolalia:反響音声1反響言語/オウム返し【不適切】
日本医学会医学用語辞典WEB版:echolalia反響音声/反響言語
InfluenzaAIHIN12009【奨】/pandemicinfluenzaA(HIN1)2009【旧】/novel influenza A(HIN1)2009【旧】【不適切】:インフルエンザA HIN1
2009【奨】/パンデミックA(HIN1)2009【旧】/新型インフルエンザ【旧】【不
適切】
日本医学会医学用語辞典WEB版:載っていない。
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【東洋医】東洋医学用語であることを示す。
Bunshin:聞診(ブンシン)【東洋医】
日本医学会医学用語辞典WEB版:載っていない
【和】和文用語が国内で広く用いられている一方で、それに対応する英文用語が国際的には必ずしも認知されていないことを示す。
simple obesity【和】:単純性肥満
日本医学会医学用語辞典WEB版:載っていない
【欠】適切な和文用語がなく、邦文雑誌等でも英文用語のままで用いられていることを示す。
Notdoingwe”:notdoingweII【欠】/何となく元気がない
goodclinicalpractice:GCP【欠】
日本医学会医学用語辞典WEB版:載っていない
《》捕捉的な説明などに用いる。
chestwa”:胸壁《肺生理学的には呼吸運動に関連した胸郭および横隔膜も指す》
日本医学会医学用語辞典WEB版:chestwaII胸壁
本年度の改正項目(1)
・会員からの要望:「事故抜管」というと、医療事故を起こしたみたいな 響きなので、別に適切な医学用語を充てることはできないか?
↓
・小児科学会用語委員会での話し合いと日本集中治療学会との連絡に より議論を深めていった。
決定事項)
・accidental extubation偶発抜管、事故抜管…集中治療学会の用語集に掲載されており、世界的にも使われている語であるので、不適切とはいえない。
・unplanned extubation予定外抜管、計画外抜管…この語もよく使われるようになった。また「事故」という語がない点が望ましい?
上記の用語を全て併記し、いずれにも現時点では【奨】【不適切】などの注釈は入れないでおいて会員に状況に応じて選んでもらう、ということを決定した。ただ、unpIannedextubationの方はあまり知られていないので、accidentalextubationという言葉を避けたい人に紹介する目的で、《類語:unplanned extubation》と付す。
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本年度の改正項目(2)
・会員からの意見:r障害者」という漢字には「害のある人」のよう
なニュアンスを感じられるため、最近r障がい」と書かれることが
増えてきた。小児科学会として検討する必要はないか?
↓
・小児科学会用語委員会で話し合い議論を深めていった。
決定事項)
・「disorder」「一pathy」「dys一」などに相当する日本語としては、これま
で通り「障害」を用いる。
・「disability」「handicap」に相当する日本語としては、「障害」と「障
がい」を併記し、「障がい」には《近年一部の教育、福祉、地方行
政、マスメディアはこちらを使用することが増えてきた。》という内
容の補足説明を付する。
・rcha”enged障がいを持った/thechallenged障がい者」は、現
時点ではそれほど一般的ではないと考え、今は掲載を見送る。
小児科学会用語委員会のその他の活動の例
医学用語とは
・医療・医学の現場で働く者の間で使われる専門用語
・患者や家族と共有しコミュニケーションを取るための言葉
・教育、福祉、行政の場やマスメディアでも用いられる言葉
小児医療に関わる言葉の特徴として
・子どもを取り巻く様々な立場(医療、教育、保育、福祉など)の人
たちが共有するとともに、状況に応じて使い分けもなされることが
多い(例:アセントやプレパレーションの際の言葉)。
・いわゆる「差別用語」やそれに類する言葉以外にも、患者や家族
の立場からは敏感になる言葉(例えば先天異常・奇形や障害な
ど)が多い。
↓
小児を巡る医学用語や医療現場のコミュニケーション手段について考えるためのシンポジウムの開催を計画中(平成25年4月開催の日
本小児科学会学術集会の会期中?)
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