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No.14 2004 For understanding of solid figures by operateions and activities

操作活動による空間図形の理解のためにcenter.edu.wakayama-u.ac.jp/centerkiyou/kiyou_no14_pdf/... · 2014-02-28 · もうひとつの理由として、我々の頭の中に断面と全

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和歌山大学教育学部

教育実践総合センター紀要No.14 2004

和歌山大学教育学部附属教育実践総合センター

操作活動による空間図形の理解のために  

 

For understanding of solid figures by operateions and activities

遠藤 秀機      佐藤 英雄

        Hideki ENDO           Hideo SATO

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操作・活動による空間図形の理解のためにFor understanding of solid figures

by operateions and activities

遠藤 秀機 (和歌山大学教育学部)

Hideki ENDO

佐藤 英雄 (和歌山大学 教育学部)

Hideo SATO

概 要

図形は、算数・数学を通して考察される重要な教材である。特に、今回の指導要領の改訂では、【操作・活動を通して】の「数量、図形に対する豊かな感性の育成」、「基礎・基本となる知識・技能の確実な定着、将来への素地の涵養」などが謳われている。この場合の操作・活動といえば、数式に対してというよりも、平面図形を曲げたり、折ったりするような図形への直接的なもの (結果として立体図形ができる)が意図されていると理解すべきであろう。従って、教育学部に学ぶ学生にとって、図形に対する素養 (図形に対する操作・活動の経験、数式と図形との対応関係など)が強く求められることになる。また、大学の教師もこのことを強く意識するべきであると考える。この小論は、「幾つかの算数・数学の授業を通して、できるだけ多くの空間図形に触れさせる」という趣旨の

もとに、我々が試みようとしている授業改善の一端である。ソフトの使い方も未熟で、まだ端緒を切ったばかりであるが、以下に幾つかの基本的な関数のグラフ表示の例を紹介する。細やかではあるが、今後に向けての我々の授業改善につながればと願っている。

【キーワード】操作・活動、立体図形、数式、関数

1. はじめに

我々は、小学校の算数以来、中学校、高等学校の数学において、図形を「数、数式、関数」と対応させながら学習してきた。高等学校で学んだこと、解いた問題を思い出してみよう。その多くが関数から定義されるグラフの外形を描くとか、関数のグラフで定まる図形の面積、体積を求める類のものであった。

1といえば正方形とか円 1個を思い浮かべるし、ab

と書いてあれば、縦 a cm 横 b cm の長方形の面積とか、あるいは a cmの線分を b倍した線分の長さのようなものを連想する。y = ax + b と書いてあれば、それがどのような問題から出てきたにせよ、x− y平面上に傾き a、y 切片 b の直線を頭に描く。微分係数といえば、曲線の傾きを、積分といえばなんらかの図形の面積を連想する。また逆に、直線といえば、方程

式 y = ax + b を、円といえば、方程式 x2 + y2 = r2

をほとんど反射的に頭に描くことができる。しかし、このようなことも、平面図形までが精一杯で、空間図形となると、数式と図形の対応という点からだけでもそうはいかない。たとえば、z = xy、z = y2 − x2、z = y/x などのような 2つの変数を含む曲面の方程式 (式としては簡単なものである)が与えられたとき、直ちに空間の図形が浮かぶだろうか。

z = xy であれば、x を固定すれば直線、y を固定しても直線、x = y に限定すれば、放物線というようなことはすぐに理解できるが、それらを統合した全体としての図形はなかなか頭に描けない。描けたとしても、かなりの時間がかかるし、往々にして間違ったイメージ図であったりする。実際、大学の授業で「立方体を合同な 3つの錐に

分け、その展開図を描け。」と「 3辺の長さが違う直

141

和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 No.14 2004

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方体について、立方体のときに対応する頂点を結んでできる 3つの錐の展開図を描け。」という課題を扱ったことがあるが、これ 2つで 90分は短かすぎるのである。我々の空間把握能力は、平面図形に比べて、格段に劣っていると思われる。空間把握能力というとき、端的にいって次の 2つがあると考えられる。

1.全体が与えられたとき、それに対して、いろいろな断面・射影面を想像する力

2.幾つかの断面・射影面が与えられたとき、それらを総合して全体を想像する力

前者の力を育成するためには、基本的な立体図形の模型に対する操作・活動の時間を多く取ることだと考えられるし、後者の力を育成するためには、多くの空間図形について、断面と全体の関係を知ることと思われる。ところで、我々は高等学校までに、基本的な立体図形として、角柱、円柱、球 (以上は小学校)、 正多面体、錐体 (中学校)を学ぶことになるが、これらはともすれば、面積や体積を求めるといういわゆる求積に指導の重点が置かれがちで、「展開図を作る」、あるいは「長方形に直線を描いて円筒を作ってみる」などの操作・活動は必ずしも十分なものとはいえなかったのではなかろうか。この後、空間図形が教科書に登場するのは、高校の数学 Bの「ベクトル」の項目、数学 Cの「式と曲線」 の項目である。当然高校では、図形への直接的な操作・活動というよりも、ベクトルの演算法、あるいは回転体の求積法など、どちらかといえば計算主体である。結局、操作・活動といったものは、中学校一年生までの段階で終わる。もうひとつの理由として、我々の頭の中に断面と全体との関係を示すサンプルとなる基本図形が殆ど無いことによると思われる。空間の図形は、一般に 2変数の関数のグラフで表

されるが、高等学校までは、 1変数の関数までが扱われるので、数式によって表される空間図形に接する機会は、ほとんどなかったといえる。従って、我々の知っている空間図形といえば、中学校までに学習した多面体、球、錐と、高校で習う回転体に留まる。我々は現実生活の中でいろいろな空間図形に接している。見るものすべてが、空間図形といってもよい。しかし、その断面を見ているわけではない。また、大学で 空間図形に対応する 2変数の関数を習う。数式は、その断面図形を想像しやすいものにするが、全体像は掴みにくい。我々の現実の生活の場が、空間の中にあることを思えば、空間図形に対する我々の想像力はもっと豊であってもよいと思われる。扇形と円錐、長方形と円筒などの基本図形に対する操作・活動とともに、数式で

表されるような多くの空間図形に触れ、いろいろな断面を統合して全体像を想像する力を養うことが望まれる。このようなことを反映してか、冒頭に述べたように、今回の指導要領の改訂では、「数量、図形に対する豊かな感性」、「操作・活動を通しての知識・技能の確実な定着、素地の育成」などが謳われている。当然、教育学部に学び、将来学校の教師になろうとするものも、空間図形に対して、操作・活動の十分な経験と、それによって培われるであろう豊かな感性を持つことが望まれる。大学に入れば、2変数の関数を習うので、空間図形の種類は飛躍的に増大するといえる。平面図形に比べ、空間図形は、ノート、黒板に描き難く、従って扱い難いという側面を持つが、 できれば、高校のときに学習した平面図形のように、2変数の関数をいろいろな断面が見えるグラフとして表し、空間図形としての全体、各断面、数式の対応関係を見ながら、学習するのがよいと思われる。このようなことも広い意味での操作・活動と考えられるであろう。当然、教科書・参考書もこの点への配慮から、図形を掲載しているが、ページ数との関係もあってか必ずしも十分なものとはいえない。個々の授業において、多くの図形の提示がなされることが望まれる。しかし、関数のグラフをフリーハンドで描くことは必ずしも容易ではない。平面の図形として表されるものは、まだなんとかなるとしても、変数が 2つとなり、空間内の曲面図形となれば、お手上げに近い。ところが、最近では、コンピュータソフトの発達・普及もあって、関数のグラフを描くソフトもフリーウェアーとして配布されている状況にあり、必要なグラフを作り易くなっている。大学の授業において、グラフを提示しやすい環境が整いつつあると思われる。

2. 基本的関数の断面と全体像

どのような関数を題材に選ぶかは、大きな問題であるが、我々としては、まず確率密度関数を選んでみた。このことの理由は、確率密度関数は、未知定数、あるいは変数が、具体的な意味を持つので、単に図形的な対応関係だけに留まらず、 各断面の図形に応用上の意味を持たせることができ、このことも重要なことだと考えたからである。

2.1. 正規分布

確率・統計では、その理解は欠かすことができないもっとも大事な関数である。関数の式は次のようである。

f(x;µ, σ) =1√2πσ

e−1

2σ2 (x−µ)2 ,

142

操作・活動による空間図形の理解のために

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−∞ < x < ∞, −∞ < µ < ∞, 0 < σ

具体的な意味を離れて、前述の関数の式を見れば、x、µ、σ 3つの文字を含む式であるが、通常は、x を変数とした関数、すなわち確率密度関数を表す式として指導する。このときには、平均 µ 標準偏差 σ であるとき、観測値 x が得られる確率が f(x)dx という応用上の意味を持つ。従って、µ と σ を未知定数とし、x を変数としての関数 f(x;µ, σ) を扱うことになる。したがって、典型的な幾つかの µ と σ の組に対して、次のようなグラフを提示することになる。このグラフは、教科書にもよく掲載されているものであり、平面図形でもあるが、この形は、次に扱う 2変量正規分布 (一般には、多変量正規分布)を x − y 平面に垂直な平面で切った断面を表すことになるので、平面図形としての形、並びに、平均 µ、標準偏差 σ

との関係も重要である。敢えてここに提示する。

【基本型】 標準偏差 σ = 3 に固定、平均 µ を 0、1、3 に固定して、観測値 x の関数と見たときのグラフ

0

0.02

0.04

0.06

0.08

0.1

0.12

0.14

-10 -5 0 5 10

y ax

is

x axis

b1*exp(b2*((x-a1)**2))b1*exp(b2*((x-a2)**2))b1*exp(b2*((x-a3)**2))

µ が分布の位置を表し、σ が分布の集中度を表していることとの対応関係が一目瞭然である。確率密度関数ということを離れて、前掲の式を見れば、数学的には、µ、σ も変数と考えることができ、3変数の関数と考えることもできる。ただ、3変数の関数のグラフは、目に見える形では描けないので、幾つかの変数を固定し、残りの変数の関数として、以下のようなグラフを描くこともできる。このようなことは、無意味のように思えるが、統計では、観測値を固定して、平均 µ、標準偏差 σ の一方、あるいは両方の関数と見る場合も頻繁に生じる。この場合には、前掲の式は、尤もらしさを表すものとして取り扱われ、名前も尤度関数と言い換えられる。当然のことであるが、同じ式で表されていても、何を変数と考えるかで、そのグラフの形は、全く異なったものになる。以外にこのようなことも日ごろの指導では抜けていたかも知れない。

1.平均 µ = 2 に固定、標準偏差 σ を 1、2、3 に固定して、観測値 x の関数と見たときのグラフ

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

0.4

-10 -5 0 5 10

y ax

is

x axis

b1*exp(b2*((x-a1)**2))c1*exp(c2*((x-a1)**2))d1*exp(d2*((x-a1)**2))

2. 平均 µ = 0、観測値 x を 3、4、5、10 を固定して、標準偏差 σ の関数とみたときのグラフ

0

0.01

0.02

0.03

0.04

0.05

0.06

0.07

0.08

0.09

0 5 10 15 20L

axis

SD axis

(1.0/sqrt(2.0*pi)/x)*exp(-(x0**2/x**2/2))(1.0/sqrt(2.0*pi)/x)*exp(-(x1**2/x**2/2))(1.0/sqrt(2.0*pi)/x)*exp(-(x2**2/x**2/2))(1.0/sqrt(2.0*pi)/x)*exp(-(x3**2/x**2/2))

3. 標準偏差 σ = 4 と固定し、観測値 x と平均 µ の2変数の関数とみたときのグラフ

a*exp(-((x-y)**2/s**2/2)) 0.08 0.06 0.04 0.02

0.02

-10-5

0 5

10x axis -10

-5

0

5

10

L axis

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.1

z axis

4. 平均 µ = 0 と固定し、観測値 x と標準偏差 σ の2変数の関数とみたときのグラフ

(1.0/sqrt(2.0*pi)/y)*exp(-(x-a0)**2/y**2/2) 1.5 1

0.5

-1-0.5

0 0.5

1Obsevation axis 0.2

0.3 0.4

0.5 0.6

0.7 0.8

0.9 1

SD axis

0 0.2 0.4 0.6 0.8

1 1.2 1.4 1.6 1.8

2

z axis

5. 変動係数を 0.5 に固定し (すなわち、σ = 2µ)、観測値 x と平均 µ の関数とみたときのグラフ

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和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 No.14 2004

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(abs(r0)/sqrt(2.0*pi)/y)*exp(-(r0**2*(x-y)**2/y**2/2)) 0.8 0.6 0.4 0.2

0

-1-0.5

0 0.5

1Obsevation axis 0.2

0.3 0.4

0.5 0.6

0.7 0.8

0.9 1

mean axis

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9

1

z axis

この関数のグラフを描くときは、変域に注意が必要である。 点 (0, 0) の近くで発散するからである。ほどほどのグラフを得るためには、何回かの試行錯誤が必要となる。

2.2. 確率と尤度

n 個の独立標本 x1、x2、· · ·、xn が観測される確率密度関数は、

(n∏

i=1

f(xi;µ, σ)

)

=(

1√2πσ

)n

exp[− n

2σ2s2 − (x̄ − µ)2

]

ただし、

s2 =1n

n∑

i=1

(xi − x̄)2, x̄ =1n

n∑

i=1

xi

のように書き直すことができる。数理的説明は省くが、このことは、次の確率分布に従う独立な 2つの確率変数の実現値 s2 と x̄ を得たことと等価である。

nS2

σ2∼ 自由度 n − 1 のカイ 2乗分布

X̄ ∼ 平均 µ、分散 σ2

n の正規分布

この 2つは、統計的に独立と言うことになるので、2つの確率分布を分離して扱うことになる。X̄ は正規分布であるので、前の項で説明したとおりである。

nS2

σ2については、授業であれば、幾つかの n につ

いて、カイ 2乗分布の確率密度関数のグラフを描いて見せることになるが、ここでは省略する。実際に観測されるのは、S2 の実現値 s2 なので、S2

の密度関数を求めて、s2 と σ2 の 2変数の関数のグラフを提示して、その関係を視覚的に捉えさせることができる。

S2 の密度関数は次のようになるが、

f(x;σ2) = Cxn−3

2 e−n

2σ2 x

C = D( n

σ2

)n−12

D は n だけが関係する定数である

D = 1、n = 5 を固定して、観測値 s2 と分散 σ2

の関数と見たときのグラフ

(an/y)**(an/2.0-1)*x**(an/2-1.5)*exp(-an*x/y/2.0) 1

0.8 0.6 0.4 0.2

0.2

1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5x axis 1

2 3

4 5

6 7

8 9

10

ss. axis

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

z axis

2.3. 2変量正規分布

同時に 2つの変量 (X, Y ) を観測するときに用いられる基本的な確率密度関数である。その関数の形は、以下のようである。

f(x, y;µx, µy, σx, σy, ρ)

= C exp[D{u2 − 2ρuv + v2}

]

C =1

2πσxσy

√1 − ρ2

, D = − 12(1 − ρ2)

u =x − µx

σx, v =

y − µy

σy

0 < σx, 0 < σy, −1 < ρ < 1

各母数の意味は次に示す通りである。

母数 意味

µx X の平均

µy Y の平均

σx X の標準偏差

σy Y の標準偏差

ρ X と Y の相関係数

1. 概形

b1*exp(b2*((x-a1)**2/s1**2-2*r*(x-a1)*(y-a2)/s1/s2+(y-a2)**2/s2**2)) 0.015 0.01

0.0050.006

-10-5

0 5

10x axis -10

-5

0

5

10

y axis

0 0.002 0.004 0.006 0.008

0.01 0.012 0.014 0.016 0.018

0.02

z axis

144

操作・活動による空間図形の理解のために

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2変量正規確率密度関数を平均 (µx, µy) = (2, 1)、標準偏差 (σx, σy) = (4, 3)、相関係数 ρ = 0.7 として描けば次のようになる。言葉で説明するときは、釣り鐘を伏せた形というが、このままでは、かなり外れているように思われる。どのように変形し、どの部分を切り出せば、釣り鐘を伏せた形になるかを学生に考えさせてみるのも面白い課題かもしれない。水平面との関係を見るために、z = 0.006 という平面を余分に加えているが、これは無い方がよいかも知れない。 実際の授業では、概形以外にも、平均、分散の影響を見る必要があるため、そのための幾つかのグラフを提示することになるだろう。

2. 1変量のときに比べ、母数として、新しく相関係数が導入される。従って、相関係数が及ぼす影響を見るためのグラフは是非とも必要となる。次のグラフは、平均 (µx, µy) = (2, 1)、標準偏差(σx, σy) = (4, 3) を固定して、相関係数 ρ を 0.7から 0.1 に変化させたものを重ね描きしたものである。 嶺の突き出ている方が、相関係数 0.7のグラフである。

b1*exp(b2*((x-a1)**2/s1**2-2*r*(x-a1)*(y-a2)/s1/s2+(y-a2)**2/s2**2))b3*exp(b4*((x-a1)**2/s1**2-2*r1*(x-a1)*(y-a2)/s1/s2+(y-a2)**2/s2**2))

-10-5

0 5

10x axis -10

-5

0

5

10

y axis

0 0.002 0.004 0.006 0.008

0.01 0.012 0.014 0.016 0.018

0.02

z axis

以上、 2変量正規確率密度関数を表す式から得られる幾つか関数のグラフを提示したが、観測値(x, y) の関数と見ている限り、平均、標準偏差、相関係数をどのように替えても、グラフの形そのものは、概形で示したものと変わることはない。関数とその形という点からは、このことを知ることが大切である。

2.4. 中学校で目にする関数

1. 1次関数f(x) = ax + b という中学校で学習する一番簡単な関数である。通常これらは、a、b を定数と考え、幾つかの a、b について、x − y 平面上に、直線 y = ax + b のグラフを描いて見せることになる。しかし、いろいろな a、b の値についてという見方をすれば、x、a、b についての 3変数の関数である。b の役割は、見当がつきやすいの

で 2変数の関数 f(x, a) = ax を描いて見せることになる。このグラフなども、意外に目にしたことが無いものかも知れない。

x*y 100 50 0

-50

-10-5

0 5

10a axis -10

-5

0

5

10

y axis

-100

-50

0

50

100

z axis

2. z = (x − y)(x + y)

(x-y)*(x+y) 50 0

-500

-10-5

0 5

10x axis -10

-5

0

5

10

y axis

-100-80-60-40-20

0 20 40 60 80

100

z axis

いわゆる馬の鞍型である。直交している座標軸を点 (x, y)まで平行移動し、45度傾けたものが、元の x − y 軸と交わる点の座標の積である。

3. z = y−x2 各断面は、y、z を固定すれば放物線、x を固定すれば、直線であるので、中学生・高校生にもなじみやすいと思われる。

y-x**2 50 0

-500

-10-5

0 5

10x axis 0

20

40

60

80

100

y axis

-100-80-60-40-20

0 20 40 60 80

100

z axis

中学生あるいは高校生を対象として考えるときには、正規確率密度関数は、なじみにくいかも知れない。関数を表す式が、少し複雑だからである。中学校・高校で、式としては習っているようなものの方が望ましい。以上は、その幾つかの例である。

4. データ

実際のデータ

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0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

30 40 50 60 70 80 90

y ax

is

x axis

’rsample’’bsample’’jsample’

断面・射影面と全体像という今回の趣旨とは少し離れるが、統計の授業で一番乏しいのは、実際のデータの提示、あるいはその処理である。指導がその数理的な内容に重点がおかれているためと、実際のデータはなかなか得難いということによる。そのため、データといえば、簡単な人為的なものになりがちである。この点については、我々も、実際のデータを収集する努力が大切である。統計の場合には、データに関数を当てはめる という立場になる。従ってデータの形を知ることは大事な訳である。実際のデータとは例えば次のようなものである。一目して、2つの集団が混合していることが分かる。2つに分離すれば、一方の中心部は、何とか楕円をなしているように思える。

3. 終わりに

今回の発表は、主に、確率密度関数を取り上げたが、幾つかの空間図形について、その断面の図形と全体像としての図形に触れさせ、その関係を体得するという趣旨からすれば、狙いが少し多様化し過ぎたのではないかと懸念している。確率密度関数は、母数、変数が具体的な意味を持ち、具体的意味と図形ということからすれば望ましいと思われるが、断面と全体という趣旨からすれば、その他の章で触れたような、基本的な空間図形、更にもっと基本的な立方体、円柱、円錐などに限る方がよいと思える。また、描かれた空間図形も、所詮平面の上であって、空間図形そのものに触れたさせたわけではない。更に、その図形を描いたのも教師側であり、学生は単に描かれたものを見るという受け身の立場でしかない。授業の中で、学生に図形を描かせる、あるいはそれを頼りに模型を作らせてみるなど、学生自身の操作・活動を促す方向への工夫が残されている。更に、見えるように描くということと、分かり易く描くということは、往々にして、異なる。我々は、教科書などによく立方体の図を見るが、それは必ずしも見えるようには描かれてはいない。正方形を斜めにずらしてできる図形を描いているだけである。こ

の図形の方が、見えるように描かれた立方体よりも、理解しやすい。これらの点からも、今後の工夫が求められる。算数・数学の学習を通して、数式、関数、各種の断面の図形、全体の図形、具体的な意味 などが、互いに結びついていくことが大切である。数式を嫌がる児童・生徒は多いかも知れないが、図形を見て嫌がる児童・生徒は意外に少ないかも知れない。インターネット上に、関数のグラフを描いてみて、初めて数学に感動したということも報告されている。数式を操作することは難しくても、それに対応する図形の操作は意外に簡単かも知れない。このためにも、図形についての操作・活動は大事と考えるものである。

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操作・活動による空間図形の理解のために