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1 「知事との元気まるごとトーク」(令和元年10月1日開催) 「知事との元気まるごとトーク」は、知事と地域で元気に活動している団体等の皆さんが、青森県の未 来を創るために直接意見交換をする場です。 令和元年度1回目の「知事との元気まるごとトーク」を令和元年10月1日(火)に「むつ来さまい館(む つ市)」で開催しました。 当日は、下北地域県民局管内の4組(5名)の方にお集まりいただき、「下北で稼ぐ第一次産業者たち ~新たなアイデアと移住・交流が地域を支える~」をテーマに意見交換を行いました。 その概要は以下のとおりです。 当日の出席者 下北地方和牛改良組合 副組合長 千葉 晋さん 佐井村牛滝地区 漁師 大畑 隆道さん 大畑 彩美さん (株)A-berry 代表取締役社長 阿部 伸義さん 海峡ロデオ大畑 会長 佐藤 敏美さん ------------------------------------------------------------------------------------- (知事) こんにちは。 今日は天気が良くて仕事がはかどるところ、こうして御参集いただきました。感謝いたしま す。 このむつ下北地域は、本県が接する4つの海のう ち、陸奥湾、津軽海峡、太平洋と宝の海があり、これ から資源管理や作り育てる漁業など様々なことが出て くると思います。 また、東通牛や大間牛といった畜産も最先端を走っ てくれています。そして、季節をずらして作れるから 良くなるぞと夏秋いちごもスタートしました。一球入 魂かぼちゃなどもやりました。 このように下北は、海あり山あり、海の幸あり山の幸ありで、非常に重要な、様々なことに チャレンジしていける地域です。 また、この第一次産業の可能性、それと観光を上手く結びつけていくという可能性が非常に 大きくなっていると思っています。 御存知のことと思いますが、風間浦村のアンコウが、この間の G20 大阪サミットの夕食会で 使われました。また、今実施している観光ウニ園によって、函館におりたお客さんがフェリー で来て大間からむつ下北地域を回って歩くという、いわゆる立体観光ですね。5倍に増えた海

「知事との元気まるごとトーク」(令和元年10月1 …1 「知事との元気まるごとトーク」(令和元年10月1日開催) 「知事との元気まるごとトーク」は、知事と地域で元気に活動している団体等の皆さんが、青森県の未

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「知事との元気まるごとトーク」(令和元年10月1日開催)

「知事との元気まるごとトーク」は、知事と地域で元気に活動している団体等の皆さんが、青森県の未

来を創るために直接意見交換をする場です。

令和元年度1回目の「知事との元気まるごとトーク」を令和元年10月1日(火)に「むつ来さまい館(む

つ市)」で開催しました。

当日は、下北地域県民局管内の4組(5名)の方にお集まりいただき、「下北で稼ぐ第一次産業者たち

~新たなアイデアと移住・交流が地域を支える~」をテーマに意見交換を行いました。

その概要は以下のとおりです。

当日の出席者

下北地方和牛改良組合 副組合長 千葉 晋さん

佐井村牛滝地区 漁師 大畑 隆道さん 大畑 彩美さん

(株)A-berry 代表取締役社長 阿部 伸義さん

海峡ロデオ大畑 会長 佐藤 敏美さん

-------------------------------------------------------------------------------------

(知事)

こんにちは。 今日は天気が良くて仕事がはかどるところ、こうして御参集いただきました。感謝いたしま

す。 このむつ下北地域は、本県が接する4つの海のう

ち、陸奥湾、津軽海峡、太平洋と宝の海があり、これ

から資源管理や作り育てる漁業など様々なことが出て

くると思います。 また、東通牛や大間牛といった畜産も最先端を走っ

てくれています。そして、季節をずらして作れるから

良くなるぞと夏秋いちごもスタートしました。一球入

魂かぼちゃなどもやりました。 このように下北は、海あり山あり、海の幸あり山の幸ありで、非常に重要な、様々なことに

チャレンジしていける地域です。 また、この第一次産業の可能性、それと観光を上手く結びつけていくという可能性が非常に

大きくなっていると思っています。 御存知のことと思いますが、風間浦村のアンコウが、この間の G20 大阪サミットの夕食会で

使われました。また、今実施している観光ウニ園によって、函館におりたお客さんがフェリー

で来て大間からむつ下北地域を回って歩くという、いわゆる立体観光ですね。5倍に増えた海

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外のお客様を何としてでもむつ下北地域に呼び込みたい。それで県民局と一緒に台湾に行きま

したが、台湾の人たちが、こっちに回ってくれるとか、そういった仕組みをいろいろと整えて

きました。 いろんな可能性をもっともっと拓いていく、そのことが大事です。そのためにはプレーヤー

というよりもチャレンジャーですね。チャレンジして、そして先頭に立ってくれる人たちがい

てくれることが、非常に大切だと思っています。 今日の意見交換は、この地域を自分の力で拓き、自分たちで新しく食っていける算段を作っ

ていこうと頑張ってくださっている4組のチャレンジャーの皆さん、県民局が「この人たちが

頑張るから、むつ下北地域は絶対良くなっていく」と言う皆さんにお願いしました。 県は、常に自ら助くるものを助く、常に皆様方と共にあり。我々は、そういう思いで仕事を

させていただいております。これからのむつ下北地域の未来を大いに切り拓いていく皆さんと

意見交換できることを楽しみにしています。 (下北地域県民局長)

今回のトークのテーマですが、「下北で稼ぐ第一次

産業者たち」、サブテーマを「新たなアイデアと移

住・交流が地域を支える」としました。 その設定の理由です。 まず、このむつ下北地域では、下北ジオパークをツ

ールとした地域づくりの取組が進められております。 皆さんも御存知だと思いますが、この下北半島は恐

竜が繁栄していたジュラ紀、あるいは白亜紀から日本

列島が大陸から引き継がれて、日本海が拡大した新第三記、日本列島が圧縮され隆起した第四

記、そして堆積平野まで、この大きく4つの大地からなっているとのことです。 他の地域にはない地形、海流、気候、これらを有しています。そして、この自然の資源によ

って生まれた水産物をはじめとした食の宝庫となっています。また、豊かな歴史・文化を持つ

魅力的な地域です。 この豊かな地域資源を管内に持ちます下北地域県民局では、地域の特性を生かした農林水産

業の充実を取組の基本方針の1つとして掲げ、自然条件等の地域特性を生かし、地域の基盤と

なる農林水産業の体質強化により、下北ならではの特色ある地域ブランドの確立に地域と協働

しながら取り組んでいるところです。 しかしながら一方で、少子高齢化あるいは若年層の流出による地域社会の縮小、また後継者

の確保問題など、この地域を取り巻く環境は、他の地域より非常に厳しい状況となっていま

す。 このような中で、本日お集まりいただいた皆様は、UターンあるいはIターンなどを経まし

て、このむつ下北の地でしっかりと農業あるいは水産業を生業とし、地域を支える担い手とし

て、幅広い分野でそれぞれの個性や強みを生かしながら、積極果敢にチャレンジしている元気

な方々です。 本日のこのトークですが、この場が皆様のネットワークに広がりをもたせ、経験や知識など

の情報が共有されることにより、持続可能な地域づくりに向けた活動に繋がっていくことを期

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待しまして、また、このことをトークの狙いの1つとして、冒頭申し上げましたテーマとさせ

ていただきました。 皆様の積極的な御発言をお願いしたいと思います。 (下北地域県民局地域連携部)

それでは、意見交換に入っていきたいと思います。 下北地方和牛改良組合 千葉さんから御発言よろしくお願いいたします。 (千葉晋氏)

むつ市で父の跡を継ぎ和牛繁殖しております、美付

(びつけ)ファームの千葉晋と申します。 現在は、下北地方和牛改良組合の副組合長、むつ下

北地区指導農業士会の副会長、そして苫生小学校のP

ТA会長を務めております。 今日は、これまでの経緯から順を追って御紹介させ

ていただきたいと思います。 私は、ここむつ市で生まれまして、田名部高校卒業

までむつ市で過ごしておりました。その後、十和田にあります北里大学獣医畜産学部を卒業い

たしまして、製薬会社の小野薬品工業株式会社に就職しました。 就職の時は、自分がこの下北に帰ってくるということも農業を始めるということも全く想像

していなかったのですが、当時の勤務の担当先であったのが福島県のいわき市で、東日本大震

災に被災したということもあって、その経験から家族とか地域ということの大切さを感じまし

て、自分を育ててくれた下北の地に恩返ししたいということでUターンして、今に至っており

ます。現在、就農して7年目になりました。 就農当初は、父が離農を目前にして規模を縮小しているところに自分は帰ってきたものです

から、大変苦労が多くて、特に牛舎内に病気が大変蔓延していたということで、生産する子牛

も貧弱なものしか生産できなかったという状況でした。 そこで、牛の病気の発生の原因や対処法、育て方、育成方法というものを先輩農家のアドバ

イスを聞いたりとか、専門書、サイト、SNSなどを通じていろいろ情報収集することで、自

分の経営に合うように取り入れたということが、父の代ではなかった部分なのかなと思いま

す。 その結果、就農当初は県の平均以下であった牛の体重や価格が、現在では、体重、価格共に

県の平均以上に達することができました。この対処した内容の一部を「第55回全国青年農業

者会議」で東北代表として発表しまして、この大会では青森県初の最高賞「農林水産大臣賞」

を受賞することができました。 また、娘が通っている小学校には、5年生の総合学習の1つに「ユメココ教室」というのが

あるのですが、下北で働いている人からその仕事の内容であるとか魅力というものを紹介して

もらう授業で、大工さん、薬剤師さん、美容師さんといった方が来て、子どもたちに講演する

という教室です。その「ユメココ教室」で講師を務めさせていただいており、畜産業の仕事に

ついて紹介しています。

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昨年は、下北小学校長会から講師を依頼され、「あなたの知らない農業の世界」というタイト

ルで先生方を対象にお話をさせていただきました。 これまで、こういった活動を通じて苦労や経験がありまして、実際、父の代で牛を飼ってい

るのは見てはいましたが、自分が飼ってみて、つくづく牛というのは正直な生き物だなと思い

ました。 牛というのは、当然、言葉は話せないのですが、その代わりに体調の変化というのは、いろ

んな行動で示してくれる生き物です。このサインというものを察知する力とサインに対して行

動する力によって、仕上がってくる牛がガラッと変わってくるということを学びました。 この経験から、“気持ちよく働いて楽して儲ける”というのが、僕の経営理念になったという

のが、一番大きな部分であります。 牛が病気にならないこと、病気にさせないこと、病気を長引かせないこと、その努力をする

ことが非常に大事だなと思っています。全ての牛が健康で元気だったら、管理する人間は毎日

気持ちよく仕事ができる。元気に育てば、当然大きくなるし、体重も増える。そして治療にか

けるはずだった時間や労力、経費などが全部削減されて、結果的に大きな儲けに繋がると思い

ます。 “楽をする”というのは、「手を抜く」とか「さぼる」というのとは全く違って、「どの時期

に楽をしたいか」「いつ楽になりたいか」という意味です。“楽をする”ために当たり前のこと

をきちんとやれば、牛たちはお金という形でしっかり返してくれる、大変ありがたい生き物だ

と僕は思っています。 今後は、現在の繁殖成績をもっと向上させて、美付ファームという経営体としての受入体力

をどんどん上げていきたいなと思っています。そうすれば、新たな雇用という面にも最終的に

は繋がると思いますし、担い手不足の問題解消の1つにもなるのではないかなと思っていま

す。 そこで1つ問題になるのが、小学校で「ユメココ教室」をやった経験から、畜産を含めて農

業のことを知らない子どもたちが非常に多いというのを感じています。これは、昔と今との経

済の在り方が変わったことで、生活する上で農業が必ずしも必要ではなくなったということ

が、農業や畜産が身近でなくなった原因だと思います。なので、農業とか畜産のPRにもっと

もっと力を入れていかなければ、新たな担い手の確保にも繋がっていかないのではないかなと

思います。 現在、和牛の繁殖という部分だけの経営ですが、今後は、雌の肥育を含む一部一貫経営を考

えております。単純に肥育までしてむつ市で牛肉を生産するだけでも、むつ市にとっては新た

な取組なので良いとは思うのですが、この下北では夏秋いちごやブルーベリーの栽培が盛んな

ので、この地域性を生かして、こういったベリー類を使った肥育、和牛肥育が可能かどうか

を、現在、県民局と協力しながら検討を始めているところです。 もしこれが可能となれば、下北の特徴も出せて、他のブランドとの差別化にも繋がって、む

つ市に新たな特産品が誕生することになると思っています。現在、下北には東通牛、大間の陸

マグロ大間牛というブランド牛ができています。むつ市にも新たなブランド牛ができれば、下

北半島に3つの和牛ブランドが存在することになる。となれば、三国志で諸葛孔明が魏・蜀・

呉の中国大陸を3つの国に作ろうといった「天下三分の計」になぞらえて「下北半島和牛天下

三分の計」と銘打ったイベントを開催できれば、下北半島の観光にも貢献できるし、歴史ある

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下北の農業とか畜産業のPRにも繋がるのではないかと思っています。 また、県ではいろいろな農業セミナーや研修会を開催されているのですが、青森市や弘前

市、八戸市で開催されることが多く、下北から行くのはなかなか時間的に難しい部分があるの

で、是非、下北でもそういった講習会を開催して欲しいなと思っています。 次に、農業に携わる中で疑問が生じることがあるのですが、そういったものを大学や研究機

関に研究テーマとして取り上げてもらって、その結果を農家にフィードバックしてもらうとい

う体制ができれば、もっともっと早い改良が進んでいくのではないかと考えています。 牛が病気にならないとか、米の収穫量を上げるためにはどうしたらいいか、りんごに蜜を入

れるためにはどうしたらいいかという、そういった問題に対して自分で調べて対応していくと

いう姿勢は必要です。農家というのは科学者だと僕は思っているので、研究成果をいただけれ

ば、課題解決がより進むと思います。 ここ数年で一番「目からウロコ」だったのが、以前から、弱く産まれる牛っていうのはたま

に出てきて、結局はすぐ死んじゃうのですが、昔の人たちは「種が合わなかったんだ」とか

「弱く産まれてきたものはしょうがねえ」という感じで、諦めるしかなかったわけです。です

が、研究が進んできて、虚弱で生まれた子牛というのは、免疫機能をつかさどっている「胸

腺」が小さいということが分かり、それはお母さん牛に亜鉛が欠乏していることが原因だと分

かったのです。 そこで、子牛が産まれる前にお母さん牛に亜鉛を投与してあげれば、虚弱な牛が産まれなく

なるということが分かってきました。 更に研究が進み、遺伝子が解析され、虚弱になる遺伝子が発見されました。その遺伝子がホ

モ化した時に虚弱な子牛が産まれるというのも分かってきたので、虚弱な子牛を産ませないよ

うにすることもできるし、虚弱にならないようなこともできるという、非常に農家にとっては

有益な情報になります。この辺の研究テーマに関しての検討も是非していただきたいなと思い

ます。 最後に担い手対策についてなんですが、高校とか大学、営農大などで、就職、就業までの流

れとか、実際に必要な資格やその取り方とか、働いた時の収入とか、要は知らないところでは

働きたくないわけなので、その辺をもっとオープンにして分かりやすく、就職ガイダンスや就

職相談会を実施してくれれば、担い手の対策に繋がるのではないかなと思います。 いつも知事から「攻めの農林水産業」と応援していただいているのですが、高齢化によって

農家戸数がどんどん減っているのは事実で、僕からしたら年金問題以上に深刻だと思っていま

す。このままだと、青森県の農業は破たんするのではないかという不安も感じています。です

ので、攻撃は最大の防御とも言いますので、担い手対策についても、攻めの姿勢でお願いした

いところです。 (知事)

ありがとうございます。 この下北半島は、もちろん良い海がありますが、陸も悪くなくて、東の方では放牧などいろ

いろできる仕組みをやっています。

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今、青森県では、野菜と畜産がとても伸びているわ

けですが、この畜産の可能性が非常に良いと思ってい

るんですね。そういった中で、Uターンしてきてくだ

さったということを私は嬉しく思います。 聞いてみたら大学含めて本業だったんですね。そう

いったプロフェッショナルが帰ってきてくれて地域を

リードしてくださるということを嬉しく思います。 お話いただいた「牛は正直」という言葉はグッとき

ました。当たり前にちゃんとやっていると、ちゃんと返ってくる。これは農業の全ての基本だ

と思い、徹底して水路のネットワークを作って、土壌改良あるいは健康な土づくりをやり、そ

の上で技術を持った人間を集めようと取り組んできました。 どの作物もそうですが、もちろん、天候不順とかいろいろなことがあるものの、畑作でも田

んぼでも果樹でも正直にやれば正直に返ってくる。まさにこの「青森の正直」ということが、

我々のこの農業、第一次産業の特徴で、それを遺憾なく発揮してくれているんだなと思ったと

ころです。 それと、“気持ちよく働いて楽して儲ける”。これは、さぼっているという意味ではなくて、

きちんとやっていると、きちんと返ってくるんだと。そのことだと思っています。 今、いろんなアイデアを提案していただきました。面白いなと思ったのはベリーです。十和

田はにんにくを豚に食べさせてみたらガーリックポークという形になりました。りんごを食べ

させてみたりとかそれぞれの地域にあるのですが、牛にベリーというのもなかなか合うんじゃ

ないかと思います。食べさせた後で成分分析してみて、うまみ成分が増えるのかとか、臭みが

減るとか、色がよく出るのではないかとか、本当に期待するところです。 また今、ICТ、IoTを使って、牛の疾病を早く、集団のどこで、どの牛がどういう状態

かということをチップを入れて分かるようなシステムとか、いろんなことを研究しています。

ベリーの件もそうですが、どうしたらより良く、経験と勘だけでなく学術的に進めていくかと

いうことが非常に重要だと思っています。 我々も結構、この方面を真剣にやっているんです。今は、(子牛が)お腹にいる時期を短くす

るとか、双子ができないかとか。種牛も、第1花国の後、広清(ひろきよ)、春待白清(はるま

ちしらきよ)と良い種牛も作っていまして、様々な研究開発を本気でやっています。 それから、担い手の確保ですが、青森県の産業全部の中で農業分野だけが、全体としては減

っているものの、UIJターンも含め若手が伸びてきているというのが事実です。 今、お話いただいたように農業の魅力とか、財務、マーケティング、要するに採算が取れて

いくとか、お話いただいたことは非常に重要だと思っています。この農業関係、第一次産業の

方がどんぶり勘定ではなく、利益がどうで、どこにどんな経費がかかるのかが見える仕組みづ

くりも進めさせています。 (畜産課)

まず、繁殖成績の向上による経営体力の強化ということですが、県では、繁殖成績向上のた

め平成29年度から牛ごとの生産履歴や分娩間隔などを取りまとめた繁殖カルテを各農家に配

布しています。また、昨年度からは、各地域県民局に専門チームを設置し、受胎率の向上に向

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けた栄養管理等の指導を実施しているところです。 お話の中にありました雇用創出、あるいは担い手の確保については、知事からもあったIo

Т、ICТ、あるいはAIの活用もありますが、県では、千葉さんのお話の中にあった気持ち

よく仕事ができる、働けるという、ゆとりある事業経営となるよう、千葉さんにも御協力いた

だいて、下北地域において農家が休暇を取る際に、代わりに飼育管理を行うヘルパーの需要調

査、あるいは今後の組織化に向けての採算性の検証にも取り組んでいます。 畜産業のPRについてですが、関係団体と連携しながら、将来の担い手となる小学生に向け

て、畜産を知ってもらおうということで出前授業や農場見学を実施しています。まだまだ県内

でも行っていない地域はありますが、全県的に実施していきたいと思っています。また、小学

生向けに「畜産って何?」という冊子を作成しまして、認知度の向上にも努めています。 即戦力となる農業高校生には、就職先として畜産を選択するきっかけとなるよう、共進会の

審査であるとか、畜産研究所の牛に実際に触ってもらうといったことを経験してもらっていま

す。また、肉用牛ではないんですが、酪農の搾乳ロボット等がある先進的な施設に農業高校生

を連れて行って、実地研修も行っています。 先ほどのベリーのお話ですが、ベリーやブルーベリーのかすを使った牛については、まだ知

識が不十分です。ただ、肉用牛ではありませんが、りんごかすは、酪農では結構使っています

ので、ベリーについても検討させていただきたいと思います。 ブランドについては、県産和牛のブランド向上のために、今年5月に、あおもり牛販売促進

協議会と連携して、県産和牛を「あおもり和牛」の統一した名称で出荷、販売する取組を強化

しています。千葉さんが一貫経営をやるのであれば、地域のブランドを阻害するわけではあり

ませんので、「あおもり和牛」という名称で是非出荷していただければと思います。 (構造政策課)

私からは担い手についてお答えします。 今、畜産課からありましたベリーの件ですが、今日は夏秋いちごの農家の阿部さんがいらっ

しゃってます。阿部さんのところではジュースを絞ったかすが出ていますので、是非、コラボ

してやられたらいかがかなと思います。 (千葉さん)

実は、このベリーの案も阿部さんから、ワインを作るんだという話を聞いて、絞りかすがた

くさん出るんですよと言うので、何か上手く使えないかなと。 県民局の人に調べていただいたら、栃木の方で「とちおとめ」をパウダー化したものを牛に

やって「とちおとめ牛」という牛を作っている農家があるというのは分かったのですが、実

際、どういうふうにやっているかまでは、ちょっとまだ分かっていないんです。 (構造政策課)

是非、やってみてください。 新規就農の件ですが、青森県では、最近250人以上の新規就農者を確保しておりまして、

非常に好調です。 この状況を続けていくために、まず1つは、営農大学校でオープンキャンパスをやって、一

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般の方、高校生含めて家族で来ていただいて、営農大学校でどういう資格が取れるか、営農大

学校に行ったらどういう経営ができるか、どういう就職があるのか、そういったことを説明し

た上で入学してもらって、就農してもらうという形をやっています。 その他に畜産課でもありましたけども、農業高校中心ですが高等学校に活躍している農業者

を派遣して、こういう成功している経営があるという夢を持ってもらおうということで出前講

座をやっています。是非、千葉さんも阿部さんも、お声がけさせていただきますので、講師と

して参加していただければと思います。 昔は、農業者の息子って、やっても先がないよとか、駄目だ、駄目だと言われていたんです

が、今、稼いでいる農家がたくさんいますので、そういう良いところを若い人に見てもらいた

いということで、活躍されている農家の方を派遣していますので、是非、御協力をお願いしま

す。 (知事)

今、農家の実所得が2.4倍に伸びたんですよ。いわゆる兼業も入れてですが。 品質の良いものは、海のものも陸のものも、確実に我々青森はブランドとして、良いものを

真面目に作っているということが伝わったと思っています。 というのは、売る方も生真面目に一生懸命売っていて、お客さんがそれにちゃんと反応して

くれる、ということで力を合わせていきたいと思っています。 (農林水産政策課)

私から研究開発関係についてお話します。 研究機関である県産業技術センターでは、研究テーマの設定にあたっては、生産者の方をは

じめとした現場のニーズを何より大切にしておりますので、このような研究をして欲しいとい

う要望は、直接、各研究所へでもよろしいですし、地元の市役所、県民局等を通じてでもお寄

せいただければと思います。 研究テーマとしての設定のほかに、生産者の抱えている課題を直接解決できる制度として、

研究所の研究員が現場に出向いて、課題をどのように解決するか一緒に考えて、解決していこ

うという制度もありますので、畜産関係であれば畜産研究所に、このような課題を一緒に解決

したいというお話をしていただければと思います。 また、畜産関係の最近の研究成果として、先ほど、知事からもありましたように、いろいろ

な基幹種雄牛が出ています。今年もまた、広清という新しい基幹種雄牛が出ていますし、黒毛

和種にビタミンAを定期投与した場合の効果等の研究成果も出していますので、是非、御活用

いただければと思います。 (下北地域県民局地域連携部)

千葉さん、どうもありがとうございました。 それでは、佐井村牛滝地区の漁師、大畑さん夫妻、よろしくお願いします。

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(大畑隆道氏)

佐井村牛滝地区で漁業をやっています大畑です。 漁業に従事し約18年、両親と共に小規模家族経営

漁業で生計を立てて参りました。 2016年からは、佐井村と佐井村漁協が取り組む

定置網漁の協業化を目指す事業として、地元漁師が設

立した合同会社海成漁業の一員としても漁を行ってい

ます。 2017年からは、村が全国から漁師志望者を募り

育成する「漁師縁組事業」の移住者の指導にも携わりました。 また、母は、牛滝地区の産直施設「まだぁ~る」で水産加工品や手芸品を販売してきまし

た。自分自身もお客さんの反応を実際に見てみたいと思いまして、今年7月のむつ市で開催さ

れました「しもきたマルシェ」に初めて出店させていただきました。 今日は母が作った「むしり鱈」を用意していますので、どうぞ御試食ください。これは、1

月中に獲れたマダラの内臓を取り除き、塩水に少し漬けて、紐で吊るして寒風を与えて、3月

の末頃まで乾燥させます。しっかり乾燥したら冷凍庫で保管して、商品販売前に解凍後、ハン

マーで叩いて柔らかくして食べやすいようにむしってから袋詰めして出荷しています。噛めば

噛むほど素材の味が出るよう、薄味で加工しています。 (知事)

ありがとう。今、減塩を進めているので。 (大畑隆道さん)

これらの活動を通じて感じたことは、現在、父親と2人で小型定置漁やタラ漁、あと採貝類

などを行っていますが、父親が高齢であり、私が1人になった時には、人手が必要な定置網や

タラ漁ができなくなるという不安です。そこで、村の事業の合同会社に参加しました。 合同会社へ参加した他の社員も同様に将来への不安を抱いており、現在は、合同会社と自分

の家の漁業経営を掛け持ちしながら働いているため、合同会社の漁は軌道に乗っているとは正

直言いにくいのですが、将来的には合同会社に専念して、父親の引退後も村で漁業に携わって

いきたいと思っています。 「漁師縁組事業」で村に移住した若者に対しては、後輩ができたようで嬉しいです。地元で

漁師の家に生まれた自分たちでも、将来漁業で食べていくことに不安を感じていますので、移

住者が独立するということは大変なことだと思うのですが、移住者を自分なりにこれからも応

援していきたいなと思っています。 そして、「しもきたマルシェ」では、直接、消費者の顔を見ることができ、貴重な経験をさせ

ていただきました。獲った魚や海藻をどのように工夫すれば売れるのか、これからちょっと考

えていきたいと思うきっかけになりました。 新しいアイデアとして取り組みたいことは、個人として「マルシェ」で加工品を販売してみ

たのですが、将来的には、合同会社としても鮮魚を含めた販売を模索したいと思います。牛滝

で小さなブランドづくりも目指していきたいと思いました。

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県と一緒に取り組みたいことは、農業や養殖業と違い、目標や計画を立てて取り組むのが難

しい面はあるのですが、経営や販売戦略について学びたいので、そのようなセミナーが開催さ

れれば、是非、参加したいと思います。 (大畑彩美氏)

私は、2016年4月に東奥日報の記者としてむつ

に赴任しました。まさか自分が佐井の方と結婚するこ

とになるとは、その当時、思っていませんでしたが、

佐井村の漁業政策などを取材する中で夫と知り合いま

して、昨年結婚しました。 佐井村も牛滝も過疎地域で課題が沢山あるなと思う

んですが、その課題がある過疎だからこそ、ある意

味、先進地と呼べる部分もあるんじゃないかと考えて

いまして、そこで、自分ができることを探ってみたいなと思い、会社を辞めて今年5月から牛

滝に住んでいます。 移住後は、一緒に漁業に関わることを様々体験中で、ひじきを採って加工するとか、釣りに

出るとか、朝4時に起きて刺し網漁に出るとか、ウニの時期は殻むきをするとか、いろいろと

勉強させていただいています。 また、先ほどちょっと話があった「しもきたマルシェ」では、自分自身がひじきを採ってみ

て「ひじきって、海に生えている時に緑なんだ」というのに非常に驚いたので、そのひじきを

食べられるようになるまでを紙芝居にして、食育ということで子どもたちにお話させていただ

いたりしました。 移住して、漁業を体験したり生活する中で、これまでの生活にはなかったワクワク、ドキド

キ、驚き、発見、感動が沢山あって、移住して良かったなと思っています。1個1個は小さな

ことで、「ひじきは黒じゃなくてオリーブ色なんだ」ということだったり、見たことのない魚が

かかっていて、図鑑で調べるのが楽しみだったり、空の色と海の色が毎日違う、朝と夕方でも

違うということに感動したり、小さいことですが、日常だけで非日常を味わえるということが

すごいなと思っています。 そういった体験をふまえて、これからは、消費者だった自分が生産者側に立って気付いたこ

と、発見したことを発信していく、産地の物語のような、手間暇がかかっているという苦労だ

ったり工夫だったり、そういったことをきちんと消費者の方に知ってもらえるようにすること

で、産地のファンになって応援してくださる消費者の方が増えることに繋がるような活動がで

きないかなと考えています。 具体的な形として、いろんな教室がやれたらなと思っています。「しもきたマルシェ」では、

今召し上がっていただいた「むしり鱈」のようにすぐに食べれるものの方が売れ行きがよく、

調理が必要なものは売れ残ってしまう傾向があったので、販売戦略として、一緒に料理をして

「こんな簡単に作れて美味しいよ」という料理教室とセットにした、販売狙いの教室みたいな

ものがあってもいいかなと思います。 また、暮らしの中では、やっぱりこの小さな集落の中だからこそ、あそこのお婆ちゃんが引

き継いでいるこういう料理があるよとか、そういうものを皆で学んだり継承したりするような

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教室もあってもいいかなと思います。 牛滝の場合、観光船に乗りにきた観光客が「まだぁ~る」で買い物をして帰ってしまうとい

う状況なんですが、滞在時間を延ばして思い出を増やしてもらえるように、例えば「シーグラ

ス」という海でガラスが削れて綺麗な石のようになったもので写真立てを作るといった、観光

客向けのプログラムのようなこともできたらなと考えています。 また、漁師さんを見ていてすごいなと思うのが、何でもどんどん自分で手作りするんです

ね。手仕事というものの格好よさ、すごさだなと思っています。また、ロープや網を結ぶ時の

結び方をまとめた結束標本というのがあるんですが、花のモチーフだったり、若い方から見て

もポップだな、可愛いなと思うものもあるので、そういうものを取り入れた化粧ポーチのよう

なお土産品も、冬の間や閑散期のお仕事としてできないかなと考え中です。 最後に、是非、県と一緒に何か情報発信するような場がありましたら、協力させていただき

たいと思います。 (知事)

まずは一言、一緒になれて良かったね。おめでと

う。 牛滝、好きになってくれて嬉しいです。すごく静か

な夏の牛滝は、いわゆる避暑地として上手い形でPR

したら、長期滞在にすごくいい場所だなと感じまし

た。 牛滝は、海上交通的には行き来が簡単な場所です

が、陸上交通とかいろいろ考えた場合、牛滝で皆が暮

らし続けてくれるということが、ずっと言っている「ゆりかごが残る、集落が残る」というこ

とに繋がるので、是非、2人でしっかり暮らしてくれたらすごく嬉しいです。 合同会社をいかにして繋いでいくかについては、今の時代、獲れるものが変わってきている

のと、牛滝の場合どうしても流通システムに辛いところがあるので、課題であり大きなテーマ

だと思います。 漁港、漁場は下北の場合、集落を残したいので相当作りました。地先に船が着けられるとこ

ろ、漁港なり船溜まりがあることによって、3世代あるいは4世代、お爺ちゃんお婆ちゃんか

らお孫さんまでそこで暮らしていけるし、それで集落としての仕組みが残せます。 そういう意味においては「漁港を作った」のではなくて「生業の基本を作った」と思ってい

ます。暮らしていると分かると思いますが、地先と潮の時間帯が違うんだから。東の方でも、

尻労と尻屋のほうでは潮の時間が違うわけだから、それに合わせて漁港がなければいけない。

ただ、その場合、集出荷というのかな、いかにして経済に変えるような集め方ができて売れる

か。これが本当に大きなテーマなんです。 そういったことも含めて、一緒に悩んでいかなきゃいけないと思うし、だからこそ、その場

面においての加工のあり方だとか、合同会社のように皆で組んで出荷できる仕組みはないかと

か、そういうことが必要になってくるだろうと思っています。 それから、このところ、東京に出て行った県出身者に戻ってきてもらうためにかなり本気で

部局連携して、移住というか、還流のフェアをやっています。青森県の場合、カップルで相談

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に来て戻って来るというケースが多くて、東京に行っ

て5年、6年経つと、何となく疲れたなと。あるい

は、子どもが産まれた頃になると親御さんがそれなり

の歳になっていて、やっぱり戻らなきゃ、帰ろうかな

という方々が増えてきました。そういった層を狙っ

て、今、還流のイベントなどをやっているんですが、

彩美さんには、そういったところにも是非来ていただ

きたいです。 (総合販売戦略課)

食品加工ということで、私の方から商品づくりの関係と販売に関してのセミナーの2点につ

いてお話いたします。 まず、商品づくりの方ですが、「しもきたマルシェ」に参加されて、直接消費者の声を聴いて

いるのは、非常に良い経験だと思います。県の方では、やはり商品づくりの基本的な考え方に

「作ったものを売る」ということではなくて「売れるものを作る」という「マーケットイン」

という発想のもとに商品づくりの施策を展開しています。 その商品づくりの具体的な支援策の1つとして、「あおもりビジネスチャレンジ相談会」略し

て「ABC相談会」をむつ市を含む県内10か所で毎月1回開催しています。今月であれば、

10月15日に下北地域県民局でやることになっています。毎月やっていますので、都合の合

う月日で県の方に応募するなりしていただければと思います。そこには専門家も入っています

し、商品企画、開発から加工技術に関しては下北ブランド研究所などが入っていますし、ま

た、ウェブの専門家もいますので、いろいろと活用して連携できればと思います。 それと、セミナーですが、県の方でも経営、販売に関するセミナーをいろいろと開催してい

ます。ひとつ御紹介したいのは、6次産業化に取り組む人材育成ということで、今年の11月

から年4回程度、いろいろな経営、販売に関する関係、例えば、加工であればHACCPとか

衛生品質管理、ブランド戦略や権利関係といったテーマで座学を。また、カリキュラムに販売

の演習も考えており、具体的な日程が決まりましたら御案内しますので、是非、参加していた

だければと思います。 (地域活力振興課)

今後取り組みたいことということで、田舎暮らしの面白さや豊かさを発信し、移住促進にも

協力できたらとお話いただきました。 県としては、オールあおもりということで、ここ3年、東京で県最大の移住イベントを実施

しています。今年は8月25日に開催しました。 先ほど知事からも人財還流、部局連携支援ということで、当然、暮らしていくためには仕事

も必要になってきますので、関係する農林水産部、商工労働部、健康福祉部から仕事の情報を

持ってきてもらったりしています。また、県は、どうしても地域の暮らしぶりが分からないの

で、市町村の皆さんに出展してもらって、オール青森での移住相談会などを行っています。 先ほどお話しした8月25日の移住イベントでは、知事からも、青森では色々な暮らし方が

できるんだよ、楽しく豊かに暮らしていけるんだよ、というプレゼンテーションを行い、具体

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的に幾らぐらいのお金で暮らしているか、例えば、青森県内で水産業を生業として暮らしてい

る方は月に収入がどのくらいあり、どのぐらいの支出があるかや、こういう感じで暮らしてい

ますよといった資料をまとめました。 また、移住パンフレットに掲載している移住者の方のインタビューは、ウェブでも発信して

いますが、そういった部分で、是非大畑さんに御協力いただければと思います。 (知事)

このほかにも、今年、ドボジョとか林業女子とかの青森女子とのトークをやったので、彩美

さんもIターンのようなものだから、来年、一次産業の漁業者代表として来てもらうとか、担

当課で検討してもらえればありがたい。 また、A!プレミアムの産地訪問でやって来る飲食店の方と大畑さんご夫妻は意気投合しそ

うな気がするので、上手く繋いでもらえればと思います。 (水産振興課)

水産振興課では、青森県の魚の魅力を発信するために、青森県の美味しい地酒と魚を組み合

わせてPRするという取組をやっています。こういった取組の中で、日本酒の会などで解体シ

ョーをやってPRしていて、今月も神戸の三宮にある青森ねぶたワールドでマグロ解体ショー

をやってくるのですが、そちらでも是非、漁師の方と一緒に行って地元の魚のPRをやりたい

と思っていますので、相談させていただければと思います。 (下北地域県民局長)

佐井村の新規就漁者の方に対して、大畑さんが中心となって指導していただいているそうで

す。こういうような良い事例、あるいは、経営というものを見える化して、引き続き大畑さん

の御協力も得ながら県民局でも進めていきたいと考えています。 (知事)

下北地域の漁師さんたち皆のためだということで協力いただければと思います。 我々、変な形のPRじゃなくて、本当に海の、漁業の素晴らしさとか、これで生きていくこ

との厳しさもあるけども、ここで生きて良かったということを伝えたいんですよ。 県では部局連携して取り組んでいますし、いろんな応援団がいますので、是非御協力いただ

きたいと思います。 (下北地域県民局地域連携部)

A-berry の阿部さん、お願いします。 (阿部伸義氏)

株式会社 A-berry(アベリー)代表取締役社長の阿部伸義と申します。 今年の3月22日に株式会社として登記したばかりの会社になります。それ以前は、大畑で

阿部ファームという、いちごの農家を経営していました。 今でも私自身は、いちご農家ということで、日々収獲や選別をやっているんですけど。そも

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そも私が農家になるきっかけになったのは、むつ市の

次世代人材投資資金という補助金の存在を知って、農

業に転向することになりました。研修期間も併せると

今年で4年目になります。 日々の作業の中で、農家の皆さんはどこでもそうな

のかなと思うのですが、例えば、規格A品、B品、規

格外とある中で、キャベツや葉物野菜が規格外になっ

て相場が下がったりすると、取らないでそのまま埋め

ちゃうとか、もったいない話を聞くと思います。いちごの業界でも、C品、規格外と呼ばれる

ものは、毎日廃棄されています。どういったものかというと、基本的に形が小さい、重さでい

うと5g以下、形が悪いとか。普通に食べられる物ではあるのですが、かなりの量が廃棄され

ています。 農業の先輩方が「もったいねえって言っても、毎日出てしまうものは仕方ない。なげで(捨

てて)しまえ」と言うのですが、今までサラリーマンをやっていた私には、どうしてもそう思

うことができなくて、それを世に出したいなという思いから興したのが、今の株式会社 A-berry です。実際、夏場はいちごの収獲といった仕事があるのですが、冬場の閑散期には、ど

うしても仕事がないという状況に立たされており、廃棄いちごの問題と冬場の雇用の問題への

対策を取る必要があり、会社を立ち上げました。 会社で行っているのは、廃棄されている規格外のいちごを下北管内のいちご農家から買い取

ります。農家の方に手間がかからないように自社で回収に伺って、回収したものを選別し、選

別したものを水洗いして冷凍保存します。その冷凍保存したいちごは、主に冬場に搾汁して、

その搾汁したいちご果汁からワインを作りたいなと思っています。まだ、ワインは作ってはい

ないのですが、現在は、いちごを回収して搾汁する段階まできています。 他には、今日持参した「いちごサイダー」という商品を作ったり、このサイダーの製作過程

で出る「いちごシロップ」だったり、こういった商品の開発や販売を行っています。また、い

ちごはヘタを取った状態になりますので、冷凍した果肉も中間材料として販売できるのではな

いかと考えています。 活動を通じて思ったこととしては、ビジネスプラン的な説明になりますが、まず、新規性・

優位性です。下北のいちご農家などには、いちごを搾汁している農家・企業はありません。全

国的にもいちごを搾汁しているところは、あまり例がないことから、下北地方では新規性があ

り、元々規格外で捨てられていたものですので、仕入れコストがほとんどかからないという優

位性もあります。搾汁率もりんご並みに良くて、大体75%以上果汁を搾ることができて、汎

用性が高いいちごの果汁というのは、中間材料としてもそのまま商品として使えるのではない

かと考えています。 地域の貢献性としては、今まで相当量廃棄されていたいちごをリユースすることで、食品ロ

スをゼロにすることができるのではないかと考えています。実際、この下北管内でいちご農家

が大体20軒ぐらいあるのですが、そのいちご農家が廃棄するいちごの量について1年間統計

をとってみたところ、ざっと10トンを超えています。厳密にいうと毎年16トンぐらい廃棄

するいちごが出る試算になっています。 これをゼロにするということで、原価率が低いものができるのではないかと思います。同時

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に、選別をする過程の中で、ヘタ取りと搾汁、冷凍保存という作業が発生し、新たな作業者が

必要になりますので、地域の雇用拡大に貢献できるのではないかと考えています。 あとは、できた商品が新たな下北ブランドに繋がってくれればと期待しているところです。 市場性や成長性の部分ですが、夏秋いちごはすごく収益が高い作物です。いちご農家として

新規起業する人が、平成26年頃からむつ市でも毎年2人から3人あり、若い新規就農者の方

が増えています。 下北地域でのいちご市場の拡大に伴って、廃棄量もどんどん増えてくるので、今後、原材料

不足の心配がないのが良いところかなと思います。また、安定して果汁の供給ができることか

ら、ワインの醸造の他にも中間材料として様々な需要に対応できるのではないかと考えていま

す。 新しいアイデアとして、下北ブランド研究所や下北地域県民局農業普及振興室の協力を得

て、「下北夏秋いちごサイダー」の製品開発に取り組んでいます。先日、サイダーができました

ので、試飲してみてください。 サイダーの製造過程でできるいちごシロップも汎用性があって、シロップ自体で紅茶を割っ

たりとか、お酒を飲まれる方であればいちごサワーとか。あとは、紅茶にも合います。かき氷

がモチーフなんですが、汎用性が高いので、いろいろな分野で活躍できるのではないかなと考

えています。 完成した「下北夏秋いちごサイダー」ですが、むつ市初のご当地ノンアルコールドリンクに

なります。子どもから大人まで飲みやすいように、また、下北の旅のお土産や贈答品としても

活躍できるように、多方面のリサーチをして改良を重ねていきたいと考えています。 いちごワインに関してですが、酒類製造業免許の取得に向けて弘前で研修を始めまして、早

ければ2021年からむつ市大畑町で醸造を開始できるように取り組んでいきたいと考えてい

ます。 今後、製品開発や企画等は、下北ブランド研究所ですとか下北地域県民局農業普及振興室の

協力を得ながら進めていきたいと考えています。 商品の販売や経営規模の拡大に伴う資金調達、国や県からの補助金の有無についての情報な

ど、また、各種申請に関することなどは、まだまだ私自身も知識不足だなと感じておりますの

で、各方面の方々から知恵を借りながら、共に下北を盛り上げていきたいと考えています。 また、この活動により農業の担い手不足解消のきっかけになるように、県と共に取り組んで

いきたいなと考えています。 先ほど、千葉さんのお話にあったいちごの搾りかすの件ですが、搾りかすの成分分析をする

中で、その成分が牛とってどういった良い効果があるのかということも一緒に研究していけれ

ばと思っています。 (知事)

次々とアイデアが出て面白いですね。しかも「もったいない」ということを考えながら、県

内でもいろんなサイダーがあったけども、ワインという方向も考えてみたりとか。さすが、「若

手農業トップランナー塾」に入っているだけあります。 私自身も30年前に「おっぱいいちご」を世に出したので詳しいんですが、御存知のとお

り、いちごは、労働はきついが丁寧にやるとかなり収益が良いわけです。下北で夏秋いちごを

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やりたいと言った時には皆で応援しました。今、この

下北にいちご時代ができて嬉しく思っています。いち

ごのハウスは労働がきつい中、昔は高齢者が作業して

いましたが、今は若い作り手が増えているのでまだま

だいけると思っています。 次々とアイデアがありましたが、実現する際には、

出口と品質を相当考えていかないと。6次産業化とい

うと、ジュースとジャム、サイダーやワインがよく出

てくるわけですが、出口を考えて、どういう層向けの商品にするかとか、品質の問題というの

は必ず出てきますので、そこを丁寧にやればいいと思います。 (総合販売戦略課)

出口対策ということで、やはり商品を売っていく上では、物の品質が一番ということです

が、品質については今、下北ブランド研究所と取り組んでいるということですので、あとは、

どこをターゲットにして売っていくかというところです。それには、生産量とか商品の強み、

特徴とか、そういうのがいろいろ関わってきます。 阿部さんに御紹介したいのは、先ほどABC相談会のお話をしましたが、ちょっとステップ

アップしてもらって、6次産業化を更に進めるに当たり、国の6次産業化法の計画の認定を受

ければ、様々な国の支援を受けられるということです。 県では「6次産業化サポートセンター」を設置しています。そこにはいろんなアドバイザー

が十数名いますので、自分の課題に合ったアドバイザーを選んでいただいて、一緒に商品開発

に取り組む、あるいは設備投資するといった相談をしていただければと思います。 もう一点。中間素材の話がありましたが、今、県の方でも業務用向けの商品に取り組んでお

り、首都圏の食品メーカーや飲食業界も中間加工の原料を非常に欲しがっています。今後、販

路の部分でこちらからもお声掛けさせてもらいますので、一緒に取り組んでいければと思いま

す。 (構造政策課)

トップランナー塾を受講していただきありがとうございます。 冬場に経営の詳しいセミナーもやります。阿部さんは、夏場は忙しいと思いますので、冬場

は是非参加していただければと思います。 (知事)

是非、冬場で。アップルサイダーの成功例を見ながら、どこまでできるかやっていただければ。 (構造政策課)

私の方からのお願いですが、是非、阿部さんが次の世代を育てていくような仕組み、地域就

農者を育成するためのハウスを支援するような県の補助金もありますので、将来を見据えて、

その辺も考えていただければと思います。

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(下北地域県民局地域連携部)

それでは、海峡ロデオ大畑 佐藤さん、よろしくお願いします。 (佐藤敏美氏)

私は、大畑で小型定置網漁業をしている株式会社金

亀水産の佐藤敏美です。 今回は、海峡ロデオ大畑の活動内容などを紹介した

いと思います。 我々の地元大畑は、かつてイカの町として栄えてき

ました。昭和40年代、浜全体でイカが面白いほど獲

れていました。しかし、平成になる頃にはイカが全く

獲れなくなりました。大畑は漁業で成り立ってきた町

です。漁業が振るわなければ、様々な業種の仕事も振るわなくなってきています。そして、人

もどんどん居なくなってきています。つまり、漁業の衰退は町の衰退でした。 大畑の衰退が続く中、それを何とかしようと平成30年2月に我々の団体が設立されまし

た。私佐藤と、大畑で定置網漁をしている濱田、大安寺副住職の長岡、むつ市役所勤務の鈴

木。この4人が中心になり、民間と行政、観光と水産、皆で大畑を盛り上げよう。大畑で何か

楽しいことをやるべし。我々の考えや危機感に理解を示した人たちが、様々なところから集ま

ってきてくれました。これが、海峡ロデオ大畑という団体です。 我々海峡ロデオ大畑は、むつ市大畑地区の漁業振興などを目的としています。海峡ロデオ大

畑の活動を紹介したいと思います。 まずは、メインの活動である網おこし体験ツアーです。参加者には、それぞれ金亀水産、金

城水産の漁船に乗ってもらいます。出港すると、途中、下北ジオサイトを見学しながら、定置

網に向かい、参加者に実際に網を起こしてもらいます。この網起こし体験は春と秋に行われ、

春にはマス、秋にはサケが獲れます。 その他、網起こし以外にも、いろんな企画をしています。毎回欠かさず参加してくれる人や

親子で参加してくれる人もいて、漁業に関心を向けてもらっています。今後は、漁業を担う若

い世代へ働きかける取組も大切になってくると感じています。 他の団体の主催するイベントに協力したこともあります。むつ青年会議所が主催した子ども

向けイベントでは、小型の生け簀を借りてきて、我々が獲った魚を生かしておき、子どもたち

にその生け簀の網を引いてもらいました。その後、引き揚げた魚を触ったりといった体験をし

てもらいました。また、陸に上がったら、先ほどの魚を海峡ロデオ大畑のメンバーが捌いて、

その様子も見学してもらいました。 同時に情報発信も行っています。フェイスブックなど、大畑のイベントや海峡ロデオ大畑の

活動などを掲載しています。また、メディアの取材や講演に呼んでいただいたりもしました。 収益や海峡ロデオ大畑の知名度アップに向けてグッズ販売も行っています。「ロデT」と呼ん

でいる海峡ロデオ大畑オリジナルTシャツの販売も行っています。1年ほどで500枚以上売

れています。今日は知事にもプレゼントで持ってきました。

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(知事)

ありがとうございます。 すぐ失礼して遠慮なく。(Tシャツ着用)

(佐藤さん)

また、数は多くないですが、「烏賊ロデオ珍味」として、アタリメ、サキイカを作って大畑の

イベントなどで販売しています。他にも、大畑の冬の魚介類を使った一日限定レストランを検

討中です。 今後は、網おこし体験ツアーでむつ市以外からの参加者も増えるよう、PRの支援や知恵を

県にお願いしたいと思います。また、「青森の肴フェア」は、第1回目から参加しているので、

是非継続していきたいと思います。 先の話になると思いますが、空き家を整備して漁師になりたい人を大畑に受け入れる、こう

いう仕組みづくりをしたいと思っています。 併せて、大畑産サケ・マスのブランド化も目指しておりますので、御支援よろしくお願いし

ます。サケやマスは、網おこし体験ツアーの昼食、夕食で提供していますが、こちらも大変好

評です。皆が認める大畑産のサケとマスです。知事が認める「青天の霹靂」を使ったおにぎり

や弁当などの加工品にも県と一緒に取り組みたいと思っています。今日は試食を持ってきてい

ますので、この後お出しします。 海峡ロデオ大畑は、これからも様々な活動を通して、大畑、青森県を盛り上げていきたいと

思っています。 (知事)

ありがとうございました。 大畑がこんなに元気になって嬉しいです。 イカが獲れていた時代を知っているものですから、本当に急激にイカが獲れなくなってしま

ったなと。 (佐藤さん)

こんなにもイカが獲れなくなるとは予想してなかったので、こういう加工品や大畑の魚を使

ったことをやりたいなと。 (知事)

そういった中で、海峡サーモンもそうですけど、新しい工夫をしてくれて、大畑の漁師の方

たちは絶対へこたれないし、中型いか釣り部会も踏んばり続けてくれていて、感謝します。 (水産振興課)

佐藤さんには、肴フェアに第1回目から出ていただきましてありがとうございます。 1回目からお客さんの評判も本当に良くて、お客さんがついて、お店側でも辞めるに辞めら

れないイベントになりました。今では、毎月1回以上、複数のお店でやっています。 また、佐藤さんには、12月に定置組合として肴フェアに出てもらえるよう検討してもらっ

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ています。その時も良い魚を持ってきてくれると思いますので、よろしくお願いします。

(知事)

(鮭・イクラ丼を試食し)美味い。臭みがなく美味

くなるね。 (佐藤さん)

昨日獲ってきたばかりの鮭のイクラとほぐし身で

す。うちのお袋が作ったものは間違いないです。

(観光企画課)

漁獲体験ツアーなど、いろいろやっていただいてありがとうございます。 また、冬季のイベントも考えているということで、本県、下北に限らず、冬季観光が非常に

重要です。冬季にお客さんが減るというのもあるんですね。なので、通年で雇用などを考えた

時には、やはり冬季観光が非常に重要ですので、そういう取組をやっていただいて非常にあり

がたいなと思います。 先ほど、大畑さんからもお話があったのですが、「体験する」というのは、首都圏、県外の

方々からすると、非日常を味わえる貴重な機会だと思います。漁獲体験もそうですし、さっき

のシーグラスアートもそうですが、普段できないことがそこに行くとできる、漁業体験がそこ

でできる、ということは非常に良いことですし、最近は「見る観光」から「体験する観光」へ

とシフトしていますので、我々も非常にありがたいなと思います。 我々、まるごとあおもり情報発信グループですので、その辺に関してのPRの支援、情報発

信に関するお手伝いもしますし、観光コンテンツ開発ということで、それをちゃんと観光客の

皆さんに喜んでもらえるようにコンテンツ開発をするための支援、補助金の制度もあります。

また専門家、プロの方にアドバイザーとして現地に実際行ってもらう、専門家を派遣するとい

うお手伝いもできますので、御活用いただければと思います。 情報発信の方も、今年からウェブ、SNSに力を入れていまして、さっき海峡ロデオ大畑で

フェイスブックをやっているということでしたが、我々もフェイスブックの他にツイッター、

インスタグラム、また16年前からブログもやっています。そういったことで情報発信のお手

伝いもできると思いますので、引き続き一緒にやっていければと思います。 (知事)

来週、観光フェアを首都圏でも行うのですが、首都圏のお客様だけではなく、例えば台湾便

が5便に増えるということで、体験できる冬のコンテンツが求められています。 下北の冬は寒いんじゃなくて、温まるじゃないですか。期待しています。

(佐藤さん)

下北の冬は、食べ物が一番いいんで。

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(知事)

下北地域のコンテンツはたくさんあるけれど、どう売り出すかは観光企画課の仕事なので、

頑張ろう。 (構造政策課)

当課ではグリーン・ツーリズムをやっておりまして、下北は海あり山ありで非常にポテンシ

ャルが高いので、昨年からモニターツアーをやっています。阿部さんのいちご園の体験ですと

か、牛滝での漁業体験を漁協に協力いただいて開発しています。あとは、ウニの殻むきですと

か、ヒバの木工とか、いろいろありますので、それを組み合わせて有識者を呼んでモニターツ

アーをやって、今、評価してもらっているところで、じきに商品化されることになっていま

す。 国内向けと海外向け、両方、開発していますので、また御協力をお願いすることがあります

のでよろしくお願いします。 (知事)

本当に、海峡ロデオ大畑の皆さんに御協力いただかないと。よろしくお願いします。 (下北地域県民局地域連携部)

これで、皆さんの発表が終わりました。 知事、いかがでしたか。

(知事)

すごく楽しかったです。 今日は本当に天気がよくて稼ぐのにいい日だったのにもかかわらず、こうして時間を割いて

くださってありがとうございました。 県があれやれこれやれと言うのではなく、この下北で我々もこういう元気を出すから一緒に

やろうよと。今日は一緒にやるのが好きなメンバーばかりです。 自分たちで地域の元気と生業に結びつけていく。暮

らしていくために、きちんと経済を回しながらも、や

っぱり住んで楽しいよね、ここで生きたいよね、とい

う下北をこうして作って、進めてくださっていること

を嬉しく思っています。 県は常に皆さんと一緒に行動しますので、是非、こ

れからもよろしくお願いします。 本来は局長にまとめてもらうところだけど、今日は

進行役から。

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(下北地域県民局地域連携部)

皆さんのお話を伺いまして、本当に元気で意欲的

で、御自身の経営だけじゃなくて、地域を何とかしよ

うという高い志を持って実践されていることに対し

て、素晴らしいと思いました。 今回のお話を聞いて、PRなどを通じて皆さんを御

支援させていただければと思いますので、また足を運

ばせていただいて情報共有していきたいと思います。 皆さん、本当にありがとうございました。 (知事)

どうもありがとうございました。