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日本のビジネスと社会の謎 ~なぜ日本は負けるのか~ 折田 賢児 (日系企業半導体研究者、スタンフォード大学客員研究員) 勉強会トーク 2014年11月3日(月) 1

勉強会トーク ビジネスと日本の謎

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Mystery of Japan: Business & Society

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Page 1: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

日本のビジネスと社会の謎

~なぜ日本は負けるのか~

折田 賢児

(日系企業半導体研究者、スタンフォード大学客員研究員)

勉強会トーク 2014年11月3日(月)

1

Page 2: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

アーキテクチャー論① モジュラー/インテグラル

製品アーキテクチャにより産業構造が異なる

2

http://monoist.atmarkit.co.jp/fpro/articles/wwplm/02/images/2.gif

http://livedoor.blogimg.jp/ uii57002/imgs/0/4/04c0b7b4.jpg

Page 3: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

なぜ日系メーカが光学機器系で強いのか

光と電気の違い:摺合せが必要(Integral)

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システム内部が複雑な構造で切り分けが困難

⇒上流下流(垂直分業)/パートナー(水平分業)/顧客との

密接なコミュニケーションが不可欠

Page 4: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

なぜ日系メーカが部品で強いのか

部品内部は摺合せが必要(Integral) 。

部品外部の商品全体の設計(顧客創造)は考慮する必要が低い。

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高性能がキーとなる部品であることが、利益確保に必須。

顧客創造者側からすれば、システム構成要素として代替を狙われ、

低利益率に落とされる(生かさず、殺さず)

Page 5: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

技術優位論:技術と業績

技術が「模倣されず」継続的に業績に結び付くには

①技術者の学習、②製造設備の独自改良、③摺合せ能力の高さ

5 半導体では何故この「勝利の方程式」が敗れたのか?

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/rd/026.html

大型薄型テレビの画像処理技術や高速無線通信技術などの調査

Page 6: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

アーキテクチャー論②商品システム×産業システム

自社の商品のアーキテクチャを理解していますか?

6 企業を超えた連結を意識できていますか?

http://www.isit.or.jp/project8/files/2014/02/02.png

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アーキテクチャー論③ モジュラー製品での戦略

Appleは変動型モジュラー戦略

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http://www.rieti.go.jp/jp/papers/journal/0507/bs01.html

アーキテクチャ変革に対応できない/主導できない日系メーカ

①製品メーカは没落 ②部品メーカは「トレンド」に隷属

Page 8: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

アーキテクチャー論④ ポジショニング

奴隷状態(A)から如何に脱却するか?

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http://retz.seesaa.net/article/111144814.html http://www.porterprize.org/news/data/news_020711_2.pdf

Page 9: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

アーキテクチャー論⑤ 顧客ニーズとの関係

顧客ニーズを超えた技術進化は、無意味

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http://retz.seesaa.net/article/111144814.html

Page 10: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

アーキテクチャー論⑥ 半導体ビジネス

お客さんへの対応、開発費の違いが、ビジネスモデルの違いを生む

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http://www.ssis.or.jp/pdf/encore/encore85.pdf

FPGA(Field-Programmable Gate Array) 製造後に購入者が変更できるLSI ASIC(Application Specific Integrated Circuit) 特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめたLSI ASSP(Application-Specific Standard Product) 顧客を限定せず、複数の顧客に汎用部品として提供するLSI MCU(Micro Control Unit) 電子機器の制御用コンピュータを1つに組込んだLSI

Page 11: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

アーキテクチャー論⑦ 日系メーカの低収益率

百貨店経営のため、戦略的な対応が困難

11 http://www.ssis.or.jp/pdf/encore/encore85.pdf

売り上げに対する研究開発費の比率

売り上げに対する販売管理費の比率

~60% ~60% ~20%

カスタム&開発要 粗利>50%が必要

~30%

~60%

>60%

~50%

~60%

~45%

~30%

~45%

~30%

汎用&開発要 特定市場向けの高度なシステムノウハウ

日系「稼働率維持のために赤字覚悟で ASIC 受注」

<25%?

カスタム& 開発それほど不要

~50%

~45%

~40%

<35%

~20%

~45% ~40%

汎用&低開発 設備投資を継続的に行う必要

Page 12: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

アーキテクチャー論⑧ 組織能力、協調環境

製品アーキテクチャと組織能力、協調環境の相性

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http://apsom.org/docs/T054_summit-01.pdf

組織能力が不適合な戦略は実行が困難

内部構造の複雑化 (電子化、外部通信etc)

<従来> <現状>

Page 13: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

経営戦略論

日系企業は未だに「資源アプローチ」に終始

13 http://thinkweb.co.jp/blog/wp-content/uploads/2013/05/1305164.jpg

Page 14: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

【余談】日台連携が日本が生き残る道だったが

①インテグラルにも対応

14 中台の政治的緊張緩和・接近により、中台が企業連携

http://www.jetro.go.jp/jetro/japan/yamaguchi/magazine/pdf/vol18.pdf

②中華圏ネットワーク

国瑞自動車 「トヨタ・システム」の「進化能力」 (トヨタ・ウェイ)が日本本社レベル

file:///C:/Users/Kenji/Desktop/AMR5-3-3.pdf

Page 15: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

日本社会の謎

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~社会学的な分析~

Page 16: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

社会の平和戦略①:異なる生活様式が衝突した時

①欧米、中東の文化:一方の生活様式に従う(改宗、征服)

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②日本の文化:生活様式を折衷

「毎日3回、 お祈り」

「毎日3回、 お祈り」

「毎日3回、 お祈り」 神様1

「土曜日は安息日」 神様2

「毎日3回、 お祈り」

「毎日3回、 お祈り」

「毎日3回、 お祈り」 神様1

「土曜日は安息日」 神様2

お祈りは 正月だけ

お祈りは 正月だけ

お祈りは 正月だけ

お祈りは 正月だけ

Page 17: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

社会の平和戦略②

①欧米、中東の文化:空間的に分離し共存

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②日本の文化:共生を強制

「毎日3回、 お祈り」

「毎日3回、 お祈り」

「毎日3回、 お祈り」 神様1

「土曜日は安息日」

「土曜日は安息日」

「土曜日は安息日」 神様2

神様A

どうする?

どうしよう?

神様A

どうする?

どうしよう?

Page 18: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

社会の平和戦略③

①一方の生活様式に従う

(欧米、中東の文化)

1) 生活様式(個性)を重視

2) 生活様式の違いを調整するために、

共通理念を明確化

(共通理念以外は自由)

3) 共通理念を担保する「神」

・人々から比較的隔離

=>言葉が自律的

・あまり人の願いは聞かない

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日本社会: 視野が自分が生きる「共同体」から脱出できない

(脱出するための自律的な言葉を維持できない)

②生活様式を折衷する

(太平洋、伝統社会の文化)

1) 協調性を最重要

「個性」を内面に限定

2) 生活様式の違いは、

問題発生の原因

3) 仲介するための「神」

・人々と共に生きる

=>言葉が状況依存性

・かなり人の願いを聞いてくれる

Page 19: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

日本人は、なぜ前例や物まねをするのか?

判断基準の「主義」「原理」に無原則に従わない⇒行動様式が未確定

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神様A

どうする?

どうしよう?

神様A

どうする?

どうしよう?

神様A 昔/他のサークルの風習1

昔/他のサークルの風習1

神様A

昔/他のサークルの風習1

行動様式の確定のために、前例や物まね(権力者の出現を回避)

Page 20: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

日本人は、なぜ「主義」「原則」が嫌われるのか?

日本人にとって、行動様式の違いによる非共生=敵対だから

(共生により潜在的敵対関係を解消しようとするから)

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神様A

土曜も働く

神様A

土曜も働く

「土曜日は安息日」 神様B

「土曜日は安息日」

非共生 =「敵対」

非共生 =「敵対」

「土曜日は安息日」

Page 21: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

日本人は、どうやって「柔軟」に暮らしているのか?

人間が神様を操作する(神様が願いを叶えてくれる)

<=「神様は共生を願っている」という信仰

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神様A

土曜も働く

神様A+B

勤勉は 美徳

「土曜日は安息日」 神様B

非共生 =「敵対」

Page 22: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

皆で 仲良く

日本人は、「個性」「価値観」をどう捉えるのか? 「内面」「こころ」を重視(外形的行動は軽視)

<=仏教の有/無の二重言語戦略が、「論理矛盾」を隠す

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買春反対

本当は 嫌だ

買春反対

買春は嫌だ

Page 23: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

神様が与える「抽象思考」

神様=時空間や状況に依存しない=社会を超越する視野

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買春反対 買春反対 買春反対 神様1

買春反対 買春反対 買春反対

Page 24: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

M. ウェバー: プロテスタンティズムと資本主義

「神様は誰を救ってくれるか予めきめている」(予定説)

「人間の努力では、救済は変更されない(できない)」 ⇒

①完全に神様が社会から隔離=高度の抽象性

②救済されるかどうか不明な、極度の不安

③教えに従うことが、(ひょっとしたら)自分が救済される証かも

④商売収入は教えに従うことができている証かも。

お金に溺れて無駄使いせず、次の商売に使わなければ。

⇒現状の時空間を超えた思考

⇒伝統社会からの資本主義の誕生、イノベーション(新結合)の基礎

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商売に専念 お金は投資

商売に専念 お金は投資

商売に専念 お金は投資 救済 予定

神様

Page 25: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

資本主義=イノベーションとは:常に新結合

モノの蓄積により常に変化する社会/顧客のニーズに対応し、

自分や自分の会社を超えて、顧客に貢献できるためには

抽象思考(現実を脱出する道具)が不可欠

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モノ

モノ

新結合

モノ

モノ

モノ

モノ

抽象思考

Page 26: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

日本を元気にするための提案

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~罠に掛からないために~

Page 27: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

とりあえずの処方箋①

①日本の社会全体の変革をめざす必要はない

(実質的に不可能であり、不必要)

・アントレプレナーとして生まれていた人が生きやすい領域を

社会の中に部分的に確保するだけでよい

「まあ、そんな人がいてもいいかなあ」

「いざという時に、役立つかも」

*日本が「摺合せ」により高度な素材・部品を開発し、

世界に提供することは、人類にとっての宝

(持続可能なように、もう少し利益率を上げるだけで十分)

*日本のそういう良さを殺してはいけない

*アントレプレーは持って生まれた資質に依存する人間類型。

彼らを、芸術家やスポーツ選手のように扱えばよい。 27

Page 28: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

とりあえずの処方箋②

②資本主義の精神を確立すること

「他の人・世の中に役立つとお金が儲かる」

「お金が儲かるだけでは、役立っている証ではない」

「ルールに従わないと証にならない」

*「お金」への態度が、日本では依然として伝統社会的。

「お金=汚い」という態度が却って資本主義を歪ませている

*「お金持ち」「リーダー」への嫉妬をどう処理するかは、

個人の価値観の問題ではなく、社会的な価値観の課題

*「お金」の正体について、キチンと考えたことがありますか?

今までの議論は、日本での資本主義発動に効果がない (実存哲学的あるいはウェバー的社会学の視点がない)

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Page 29: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

とりあえずの処方箋③

③個人の能力開発に拘らず、「政治」が上手になること

・自分のしたいこと=>他の人・世の中に役立たせる、

という政治的な処世術の訓練をすること

*アントレプレー=個人の能力、という捉え方が、

彼らを社会的に孤立させる(ポイントは、社会の受容)

・「個人の能力」という捉え方=奴隷の分離統治

*異質の社会的受容は、今まで妥協(実質的には彼らの抹殺)

・自分/家族/友人/友人外の社会、という価値観の階層

・「友人外の社会」まで「友人」間の価値観を伸ばして、

社会的な結合を生み出そうとする

(日本の会社の密着性、お歳暮などのプレゼント交換など)

・発明者に「友人」と同じように人格を求める 29

Page 30: 勉強会トーク ビジネスと日本の謎

お疲れ様でした

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