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1S 標準 H008-1 担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected] テーラー展開 作成日 : June 18, 2010 Updated : June 21, 2010 実施日 : June 28, 2010 今週の目標: , . ,1 ライマ . , x k (k =0, 1, 2, ··· ) , , 2 . . . テーラー展開 [有限テーラー展開] f (x) I (n + 1) . I a , x I f (x)= n X k=0 f (k) (a) k! (x - a) k | {z } (i) + f (n+1) (a + θ(x - a)) (n + 1)! (x - a) n+1 | {z } (ii) θ (0 <θ< 1) . , x = a . (i) n (Taylor) , (ii) (remainder term, R n+1 (x) ) . [ランダウの記号] g(x) lim xa g(x) (x - a) n =0 x a g(x)= o((x - a) n ) . , : f (x)= n X k=0 f (k) (a) k! (x - a) k + o((x - a) n ) [一意性] . f (x)= a 0 + a 1 x + a 2 x 2 + a 3 x 3 + ··· = b 0 + b 1 x + b 2 x 2 + b 3 x 3 + ··· a 0 = b 0 , a 1 = b 1 , a 2 = b 2 , ... . 標準 H0-1S10-08 難易度 :C 名古屋大学・理学部・数理学科

浜中真志 研究室 : A327 E …hamanaka/hamanaka-1S10-08.pdf1S 標準H008-5 担当教員: 浜中真志 研究室: A327 E-mail:[email protected] 今週のボーナス問題(提出期限は7月6

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1S 標準 H008-1担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected]

テーラー展開作成日 : June 18, 2010 Updated : June 21, 2010 実施日 : June 28, 2010

今週の目標: さて今日から気分一新, 話題を大きく変えます. まずは, 1年前期 微分・積分のクライマックスとも言えるテーラー展開です. これは, 一言でいうと「関数をべき関数 xk (k = 0, 1, 2, · · · ) の和で表す」というものですが, 大きく分けて,

• 有限テーラー展開

• 無限テーラー展開

の 2 つのバージョンがあります. 後者は無限和での表現で収束性の議論も必要となります. 前者は関数をべき関数の有限和部分と残り部分で書き表す方法を教えてくれます.

テーラー展開

[有限テーラー展開] 関数 f(x) が開区間 I において (n + 1) 回微分可能とする. I の点 a を固定すると, 各 x ∈ I に対して

f(x) =n∑

k=0

f (k)(a)

k!(x− a)k

︸ ︷︷ ︸(i)

+f (n+1)(a + θ(x− a))

(n + 1)!(x− a)n+1

︸ ︷︷ ︸(ii)

を満たす θ (0 < θ < 1)が存在する. この右辺を, x = aにおける有限テーラー展開という. (i) の部分を n 次のテーラー (Taylor)多項式, (ii) の部分を剰余項 (remainder

term, Rn+1(x)と書く) という.

[ランダウの記号] 関数 g(x) が limx→a

g(x)

(x− a)n= 0 を満たすとき,x → a のもと

g(x) = o((x− a)n) と書く.

ランダウの記号を用いると, 有限テーラー展開は次のようにも書ける:

f(x) =n∑

k=0

f (k)(a)

k!(x− a)k + o((x− a)n)

[一意性] テーラー展開は一意的である. すなわち

f(x) = a0 + a1x + a2x2 + a3x

3 + · · ·= b0 + b1x + b2x

2 + b3x3 + · · ·

ならば a0 = b0, a1 = b1, a2 = b2, . . .である.

標準H0-1S10-08 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科

1S 標準 H008-2担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected]

(例) 三角関数 f(x) = sin x を x = 0 のまわりでテーラー展開してみると,

f(x) = sin x = x− x3

3!+

x5

5!− x7

7!+ · · ·+ (−1)n−1 x2n−1

(2n− 1)!+ o(x2n−1).

のようになる. sin x の場合は, 剰余項が n →∞ で 0 に収束することが知られており, 展開の次数を上げれば上げるほどテーラー多項式の部分が, もとの関数 sin x に近づく. このような意味で, テーラー展開とは関数をべき関数 xk (k = 0, 1, 2, · · · ) の和で近似する方法であるとも言える. その近似は x の値が展開点 (今の場合は x = 0) に近づけば近づくほど精度が上がる. 実際, 下のグラフ (図 1) は, 元の関数 sin x とその n 次テーラー多項式 (n = 1, 3, 5 · · · , 25)をプロットしたものであるが, テーラー多項式の次数が上がるほど,

もとの関数に近づいていることが一目瞭然である.

-8 0 8

-8

8

図 1: sin xとその n次テーラー多項式のグラフ (n = 1が紫, n = 3がライトブルー, n = 5

が青, · · · , n = 23 が橙, n = 25 が赤)

したがって, 関数の特殊値に対応する数の近似値や複雑な関数の極限を求めるのに威力を発揮することがある. 以下の問題でそれを実体験しよう.

問題 1. (一意性) 次の関数 f(x) の, 与えられた点のまわりでのテーラー展開を求めよ. (x

の 5 次まででよい.)

(1) x3 (x = 1) (2)1

1− x(x = 0) (3)

( 1

1− x

)2

(x = 0)

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1S 標準 H008-3担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected]

問題 2. (有限テーラー展開) 次の関数 f(x) の, 与えられた点のまわりでのテーラー展開を求めよ. (x の 5 次まででよい.)

(1) cos x (x = 0) (2) ex (x = 0) (3) log(1− x) (x = 0) (4) log(1− x) (x = −1)

問題 3. (有限テーラー展開と関数の諸性質) 以下において x = 0 のまわりで 5 次まで計算して 4 次まで ((3) は 5 次まで) 比較せよ. またそれより高次の項は無視してよい.

(1) ex のテーラー展開を微分すると, もとと一致することを確認せよ. (dex

dx= ex であ

ることが再確認できる.)

(2) sin xのテーラー展開を微分すると, cos xのテーラー展開と一致することを確認せよ.

(3) ex のテーラー展開に log(1− x) のテーラー展開を代入したら 1− x になることを確認せよ.

問題 4. (対数の近似値)

f(x) = log1 + x

1− xの x = 0 におけるテーラー展開を利用して log 2 の近似値を求めよ.

また誤差 (剰余項の大きさ) も簡単に求めよ. (x の 3 次までの展開でよい. 小数点第 2 位までの値でよい.)

問題 5. (極限値への応用) 次の極限を x = 0 まわりでのテーラー展開を用いて求めよ.

(1) limx→0

log(1− x) + sin x

x2(2) lim

x→0

ex2 − cos x

x sin x

問題 6. (オイラーの公式) i を虚数単位とし, θ ∈ R とする.

eiθ = cos θ + i sin θ

をオイラー (Euler) の公式という.

ex を x = 0 のまわりで x の 5 次まで展開した式に x = iθ を代入し, オイラーの公式が θ の 5 次まで展開した範囲で成り立っていることを示せ. (x が実数か複素数かはとりあえず気にせず, テーラー展開の公式を適用してよい.)

問題 7. (質量とエネルギーの等価性) アインシュタインの相対性理論によれば, ある物体が速さ v で等速直線運動しているとき, そのエネルギーは

E =mc2

√1− v2

c2

で与えられる. ただし c は光速, m は物体の静止質量を表し, 共に v によらない定数である. 速さ v が光速 c に比べて十分小さいとき, エネルギー E を v の 2 次までテーラー展開し, 各項の物理的意味を解釈せよ.

標準H0-1S10-08 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科

1S 標準 H008-4担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected]

問題 8. (無限テーラー展開と π の無限和展開) f(x) = arctan x とする.

(1) f ′(x) を求めよ.

(2) (1 + x2)f ′(x) = 1 の両辺を n 回微分することにより, 次の式が成り立つことを示せ:

(1 + x2)f (n+1)(x) + 2nxf (n)(x) + n(n− 1)f (n−1)(x) = 0.

(3) (1) (2) の式を用いて f (n)(0) を求めよ.

(4) |x| < 1 とし, f(x) = arctan x を x = 0 のまわりで無限テーラー展開せよ. (無限和の収束性はここではとりあえず気にしなくてもよい. 今週の宿題参照.)

(5) 次の等式を示せ.

π

6=

1√3

(1− 1

3 · 3 +1

5 · 32− 1

7 · 33+ · · ·

)=

1√3

∞∑n=0

(−1)n

(2n + 1) · 3n.

今週の宿題 (提出期限は 7 月 6 日 (月) の演習開始時厳守です)

問題 9. 次の極限をテーラー展開を用いて求めよ.

(1) limx→0

x− 1

2x2 − log(1 + x)

x3(2) lim

x→0

ex + log(1− x)− 1

x− arctan x

問題 10. 問題 8 (4) の正当化をしよう. そのために

f(t) :=1

1 + t2− (1− t2 + t4 − t6 + · · ·+ (−t2)n)

を考える.

(1) まず, この式の第 2 項を等比数列の有限和として計算し,

f(t) =(−t2)n+1

1 + t2

となることを示せ.

(2) もとの式とまとめた式を 0 から x (0 < x ≤ 1) まで積分し,

∣∣∣arctan x−(x− x3

3+

x5

5− x7

7+ · · ·+ (−1)n x2n+1

2n + 1

)∣∣∣ <1

2n + 3x2n+3

を示せ. (ヒント:∣∣∣∫ b

a

f(x)dx∣∣∣ ≤

∫ b

a

|f(x)|dx に注意.)

これにより, 両辺, n →∞ 極限を取ることで, 問題 8 (4) の無限テーラー展開の式が正当化される.

標準H0-1S10-08 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科

1S 標準 H008-5担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected]

今週のボーナス問題 (提出期限は 7月 6 日 (月) の演習開始時厳守です)

問題 11. (ex のテーラー展開と応用)

e が無理数であることを背理法により証明したい. e が有理数だと仮定すると, 互いに素な (正の) 整数 m,n を用いて, e =

m

nと書ける. 一方, ex の x = 0 における n 次まで

のテーラー展開は以下のようになる:

ex = 1 +x

1!+

x2

2!+

x3

3!+ · · ·+ xn

n!+ Rn+1(x).

(1) 剰余項 Rn+1(x) を, ある 0 < θ < 1 を用いて表せ.

(2) 上のテーラー展開において x = 1 を代入したものを考える:

e = 1 + 1 +1

2!+

1

3!+ · · ·+ 1

n!+ Rn+1(1).

n!Rn+1(1) は正の整数であることを示せ.

(3) e < 3 を用いて n!Rn+1(1) の上限を評価し, 1 ≤ n!Rn+1(1) と合わせて可能な n の範囲を求めよ. またこれと 2 < e < 3 を見比べ, 矛盾を導け.

補足

プリントの最初に, sin x とその n 次テーラー多項式 (x = 0 のまわりで展開) のグラフを掲載したが, この場合は, 剰余項が n →∞ 極限のもと任意の x でゼロになるため, テーラー多項式の次数が上がれば上がるほど, 任意の x でもとの関数 sin x に近づいていった.

しかし, x の値によっては剰余項が n → ∞ 極限で発散する場合もあり, この場合は,

テーラー多項式の次数を上がれば上がるほど, もとの関数から遠ざかっていく.

その例として, 以下の関数を取り上げてみよう.

f(x) = log(1− x) = log 2− 1

2(x + 1)− 1

2 · 22(x + 1)2 − 1

3 · 23(x + 1)3

− 1

4 · 24(x + 1)4 − 1

5 · 25(x + 1)5 + o((x + 1)5)

g(x) =1

1− x= 1 + x + x2 + x3 + x4 + x5 + o(x5)

これらの関数に対して同じようなプロットをしたものが, それぞれ図 2と図 3である.

図 2では x < −3 の領域で, 図 3では x < −1 の領域で, テーラー多項式の次数が上がれば上がるほど, もとの関数から遠ざかっていることが顕著に見てとれる. このことは, これらの領域ではテーラー展開の剰余項が n → ∞ の極限で発散していることと対応している.

標準H0-1S10-08 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科

1S 標準 H008-6担当教員 : 浜中 真志 研究室 : A327 E-mail:[email protected]

-5 -2.5 0 2.5

-2.5

2.5

図 2: f(x) = log(1 − x)とその n次テーラー多項式 (x = −1のまわりで展開)のグラフ(n = 1が紫, n = 2が青, n = 3がライトブルー, · · · , n = 9が橙, n = 10が赤)

-2 -1 0 1

1

2

図 3: g(x) = 11−xとその n次テーラー多項式 (x = 0のまわりで展開)のグラフ (n = 1が

紫, n = 2が青, n = 3がライトブルー, · · · , n = 9が橙, n = 10が赤)

標準H0-1S10-08 難易度 : C 名古屋大学・理学部・数理学科