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「排水処理における余剰汚泥の減容化技術開発」
評価用資料
平成21年11月19日
経済産業省製造産業局繊維課
東海染工株式会社
第1回繊維分野における
エネルギー使用合理化技術開発補助金
プロジェクト事後評価検討会
資料6-1
1
目次
1. 事業の目的・政策的位置付け
1-1 事業目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1-2 国の関与の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
1-3 政策的位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2. 研究開発目標
2-1-1 全体の目標設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
2-1-2 個別要素技術の目標設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3. 成果、目標の達成度
3-1 成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
3-1-1 全体成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
3-1-2 個別要素技術成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
3-1-3 特許出願状況等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
3-2 目標の達成度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
4. 事業化、波及効果
4-1 事業化の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
4-2 波及効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
5. 研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等
5-1 研究開発計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
5-2 研究開発実施者の実施体制・運営・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
5-3 資金配分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
5-4 費用対効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
5-5 変化への対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
2
1.事業の目的・政策的位置付け
1-1 事業目的
(1)事業の目的
経済産業省において、平成18年5月に策定された「新・国家エネルギー戦略」では、
2030年に向けて官民で共有すべき数値目標が設定され、エネルギー使用合理化の一
層の推進を行い、30%以上の最終エネルギー使用効率の改善を行うことなどが盛り込
まれている。省エネルギーの技術開発は多分野にわたる問題ではあるが、環境分野にお
いては、排水の再利用や余剰汚泥*1 の削減などもひとつの方法であり、環境問題との一
体的解決が望まれるところである。
余剰汚泥の削減に関しては、「技術戦略マップ2009」においても3R分野の基本的
な考えやロードマップは変わっておらず、「国土が狭いわが国においては、最終処分場の
逼迫が廃棄物問題の重要な課題となっており、このような課題解決に向けた対策として、
最終処分量削減に繋がる技術開発が重要となっている。」と最終処分量削減の重要性を指
摘しており、平成32年には平成22年比で最終処分量25%減の目標設定がなされて
いる。
産業廃棄物最終処分場の残余年数については、平成16年度で7.2年、平成17年
度で7.7年である。また、全国の産業廃棄物の排出量で、汚泥の排出量は、平成17
年度で約1億8,769万トン、平成18年度で約1億8,533万トンである。これ
は総排出量の44.5%及び44.3%に相当する(図1)。
*1 汚泥とは、工場等の排水中で浮遊している懸濁物質(生分解可または不可の有機物・無機物から成り立つ。以下
「SS」と言う。)の一種であり、微生物である。汚泥は、排水中のSSのうち生分解可能な有機物(BOD成分)
を捕食し分解・処理する。
この排水の分解・処理過程において、BOD成分を栄養源として汚泥は増殖する。排水設備の維持のためには、
この増殖した汚泥を系外へ引き抜く必要があるが、この増殖した汚泥を「余剰汚泥」という。ここで、BOD(生
物的酸素要求量)とは、微生物によって代謝されやすい有機物の量(BOD成分)を表す指標である。
図1. 産業廃棄物の種類別排出量
(環境省報道発表資料(平成20年12月18日)より)
3
排水処理設備の維持管理費用の50%以上は汚泥処分費用であるため、汚泥の排出量
を削減することは、省エネルギーの観点からも、社会的にも経済的にも大きな意味を持
つ事業である。
また、生物処理法による排水処理設備から排出される余剰汚泥*1 は総排出量の1/1
0の約1,900万トン/年程度と推定される。
これらの有機物を対象とした生物処理法の排水処理設備としては、活性汚泥法が多く
使用されているが、これはBOD汚泥転換率が*240%~50%と非常に高いために、
余剰汚泥が多く排出されてしまう結果となっている。
*2 微生物によって分解処理されたBOD成分がSSに変わる割合をいう。
一般的な活性汚泥法では、BOD汚泥転換率が40~50%になるので、この分(余
剰汚泥や生分解不可の無機物等のSS)を絶えず系外へ取り出して処分しなければなら
ず、多くのエネルギーと処分費用がかかることになる。そのため、汚泥転換率ゼロが理
想である。
本研究開発では、BOD成分を分解するのに必要な細菌類等の微生物を高濃度に保持
できる微生物固定化担体を用いることにより、余剰汚泥が発生しない排水処理法を開発
し、余剰汚泥の処理に係るエネルギーやコストを抑え、環境負荷も低減する。
(2)事業の科学的・技術的意義
汚泥を削減するために、発生した汚泥を可溶化して再度生物処理する可溶化法が商品
化されているが、可溶化の手段として、オゾン、高熱細菌、薬剤、粉砕機などが必要な
ため、装置費用やランニングコストが高く、広く活用されていないのが現状である。
このような状況を打開するため、本研究開発では、余剰汚泥を微生物の自己酸化作用
を利用して減容させるシステムを提案し、実証する。これは、上記の可溶化法と原理が
異なるため、オゾンや薬液、エネルギーなどを必要としない。
具体的には、微生物固定化担体「クラゲール」(以後、ゲルと称す)を用いる方法であ
る。ゲルは、生物親和性の高いポリビニルアルコール樹脂(PVA)を原料とし、約2
0ミクロンというごく細かな網目状の構造をもつ。この網目構造の中は、アメーバなど
の原生動物類が生息困難な環境であり、排水を浄化するバクテリア等の微生物が優先的
に生息できる。したがって直径4ミリメートルのビーズ状のゲル1粒に10億個という
高濃度で微生物が存在する。
システムは、クラゲール槽(以後、ゲル槽と称す)+汚泥減容槽+固液分離装置からな
る構成である。ゲル槽は高濃度のバクテリアを保持できるので、従来の活性汚泥法の1
/5程度の小スペース化が図れる。また汚泥減容槽では微生物の餌であるBOD成分濃
度を低く制御し、微生物の自己酸化作用(=共食い)を利用し、自然の理にかなった原
理で汚泥の発生を抑えるというものである。
このように本研究開発は、エネルギー負荷をかけずに、自然の力で汚泥の発生を抑制
するシステムについて実証検討し、最終処分場の問題解決に寄与するものである。従っ
て、科学的・技術的意義は大きい。
4
(3)事業の社会的、経済的意義
本研究開発の実用化の結果、余剰汚泥の減容化が図れるようになれば、汚泥脱水機の
使用電力、汚泥運搬車両のガソリンの削減等多くの要素において省エネルギーが実現で
きるとともに、最終処分場の問題解決にも寄与する。
また、新たな処理設備を導入することなく、既存設備の改造により達成可能なもので
あり、この観点からも省エネルギーを推進できる。
このように本研究開発を推進する事は、省エネルギーと並行して汚泥の削減という環
境対策に寄与するものであり、社会的、経済的意義は高い。
1-2 国の関与の必要性
循環型経済社会システムの構築及び地球温暖化防止対策は世界的な問題であり、それに
密接な関係のある省エネルギー対策は、早急に取り組まなければならない課題でもある。
これに関する施策のひとつとして、環境分野における余剰汚泥の削減がある。最終処分場
の確保が年々困難になり、輸送や処理・処分にかかる費用が増大していく現状において、
省エネルギー対策につながる汚泥の減量化や有効利用は、官民を問わず取り組んでいかな
ければならない課題でもある。
汚泥の減量という問題は、発生後の対策に加えて、「汚泥そのものの発生を抑える」とい
う基本の技術開発と事業化が必要である。
汚泥は、民間の工場よりも公共下水処理場からの排出量が多いことからも、国の事業と
して、官民一体となって積極的に取組まなければならない課題と考えられる。
自然の力で汚泥の発生を抑制するシステムについては、技術的なハードルが高く、民間
の市場原理に基づいた開発では、その達成可否に不確定さを含んでおり、その実施には、
多額の開発費用を要し民間単独ではリスクが大きく困難であることから、国の支援が必要
不可欠である。
1-3 政策的位置付け
「エネルギー基本計画」(2007年3月閣議決定)、「新・国家エネルギー戦略」(200
6年5月)、「第3期科学技術基本計画」(2006年7月財政・経済一体改革会議)、「京都
議定書目標達成計画」(2005年4月閣議決定)において、推進すべき技術開発としてエ
ネルギーに係る分野が示されている。
本研究開発は、これらに基づき、二酸化炭素(温室効果ガス)の排出削減による地球温
暖化の抑制に貢献することを目的として、経済産業省において取りまとめた「省エネルギ
ー研究開発プログラム」に位置付けられる「エネルギー使用合理化繊維関連次世代技術開
発」のテーマの一つとして実施されたものである。なお、平成20年4月に経済産業省の
研究開発プログラムが再編され、「エネルギー使用合理化繊維関連次世代技術開発」は、現
在「エネルギーイノベーションプログラム」の「4-Ⅰ 総合エネルギー効率の向上/超
燃焼システム技術」に位置付けられている(図2)。
5
図2.イノベーションプログラム
また、経済産業省「技術戦略マップ2009」の「ファイバー分野」マテリアルセキュ
リティ分野における「環境対策等」の項目の「繊維製造関連の環境負荷の低減」「排水処理
装置」に位置づけられる(図3)とともに、3R分野の「3R分野の技術マップ」におい
て、「最終処分量削減」に位置づけられる(図4)。
さらに、本研究開発は経済産業省の「省エネルギー技術戦略2009」の、「超燃焼シス
テム技術の技術戦略マップ」に、重要技術として「常温に近い条件を使う」方法の「生物
機能を利用した省エネ型循環産業の構築に資することを目的とした技術」として位置づけ
られる(図5)。
6
図3.経済産業省「技術戦略マップ2009」(ファイバー分野)より
図4.経済産業省「技術戦略マップ2009」(3R分野技術)より
7
図5.経済産業省「省エネルギー技術戦略マップ2009」 (超燃焼システム)より
8
2.研究開発目標
2-1 研究開発目標
2-1-1 全体の目標設定
現在、生物処理槽から排出され、産業廃棄物となっている余剰汚泥量は、約1900万
t/年と推定され、余剰汚泥減容技術に関する潜在市場規模は、およそ2兆円*3 と考えら
れる。汚泥の処分方法としては、焼却や埋立て処理等の方法があるが、焼却は燃料費が嵩
むことや、最終処分場が減尐していることから、年々汚泥処分費が高くなってきている。
特に工場や下水処理場で使用されている活性汚泥処理法などの生物処理においては、排出
汚泥量が多いために汚泥量を減容したいのが現状であり、汚泥減容技術の需要が増えてい
る。しかし、汚泥の減容化システムとして、幾つか装置が商品化されているが、装置費用
やランニングコストが高いために広く活用されていないのが現状である。
既存の処理方法として活性汚泥法が多く使用されているが、これはBOD汚泥転換率が
40%~50%と非常に高く、余剰汚泥が多く排出され、ランニングコストの約半分を汚
泥処分費が占めており多額の費用(35,000円/トン:産業廃棄物処理事業者の現状
分析2003)がかかる。
汚泥減容法としては、余剰汚泥をオゾンで一部酸化させ可溶化するシステムや薬品を用
いて可溶化するシステム等があるが、可溶化した汚泥を活性汚泥槽等の生物処理槽に流入
させ微生物の餌にするため生物処理槽にかかるBOD負荷が高くなり、生物処理槽の能力
をアップさせる必要がある(図6)。また、汚泥を可溶化する装置に加えて生物処理設備の
能力をアップさせる必要があり、これらのシステムはイニシャルコストが高く、オゾンや
薬品を連続的に使用するためランニングコストも高い。
図6.オゾン処理などの汚泥減容システム
本研究開発で実施する汚泥減容システムは、高効率にBOD成分を除去するゲル槽と微
生物の自己酸化を利用した汚泥減容槽とを組み合わせたシステムであり、既存の生物処理
設備を一部改造することで汚泥減容ができ、連続的に薬品を使用しないためイニシャル・
ランニングコストとも低い。
9
従来、排水処理設備を持たない工場に新規に排水処理設備を設置した場合、本汚泥減容
システムは、オゾン処理システムと比較して、イニシャルコストは3/5、ランニングコ
ストは1/2となり、安いコストで余剰汚泥の排出量を抑えることができる。また、生物
処理槽を増設することなく既存の活性汚泥設備を改造することで余剰汚泥の減容化ができ
る。
本研究開発は、余剰汚泥の発生量の多い染色排水においてゲルを用いた汚泥減容システ
ムが適用出来るか否かを検証するものである。具体的には、運転条件を変えることなく単
に本汚泥減容システムを組み込むことで、汚泥減容の目標を達成できるかを確認し、達成
できない場合は運転条件等を見直し、目標を達成できる運転条件等を新たに確立する。
*3汚泥減容設備の潜在市場規模の算出根拠
国内における標準活性汚泥処理設備の推定値:17000設備
ブロワー等酸素供給設備の増強費、ゲル分離装置製作および設置工事費等設備改造費を1.2億円とすると
17000×1.2億円 ≒2兆円
図7.実証設備の概念
10
本研究開発に際して、具体的な全体目標・指標、設定理由は表1のとおりとした。
表1.全体目標
研究開発項目 目標・指標 設定理由・根拠等
(1)実設備における余剰
汚泥の減容
実設備のBOD汚泥転換率
1%以下を目指す。
汚泥はBOD成分をエサと
して増殖し、余剰汚泥となる。
本研究開発によるシステム
は、余剰汚泥を減容させるこ
とが目的であり、その度合い
をBOD汚泥転換率で評価す
ることとする。
従来の活性汚泥法では、B
OD汚泥転換率が40~5
0%であるため、それを限り
なくゼロ近づけることを目標
とした。
(2)実設備における処理
水質の改善(固液分
離性の向上)
実設備の処理水のBOD・S
S濃度とも20mg/L以下
を目指す。
放流規制値は、BOD平均
濃度30(最大40)mg/
L以下、SS平均濃度30(最
大40)mg/L以下であり、
BOD・SS濃度ともに東海
染工株式会社内基準である2
0 mg/L以下を目標とし
た。
11
2-1-2 個別要素技術の目標設定
本研究開発の推進について、表2のとおり個別要素技術の詳細な目標を設定した。
表2 個別要素技術の目標
要素技術 目標・指標 設定理由・根拠等
1 パイロットスケール
による汚泥減容の検
証
パイロットスケールでのB
OD汚泥転換率1%以下、処
理水BOD・SS濃度20m
g/L以下、ゲル槽のBOD
除去率95%以上を目指す。
従来の活性汚泥法ではBOD
汚泥転換率が40~50%であ
り、それを限りなくゼロに近づ
けることを目標とした。
実設備の放流規制値をクリアー
するために処理水BOD・SS
濃度20mg/L以下、ゲル槽
BOD除去率95%以上とし
た。
パイロットスケールの結果を
基に、実設備への改造設計を行
う。
2 パイロットスケール
で検証した本汚泥減
容システムを東海染
工株式会社実設備へ
導入した後のゲル槽
性能
実設備でのゲル槽における
BOD除去率*495%以上を
達成する。
ゲルを使用することで、槽内
の菌体濃度を高めることがで
き、高効率で高負荷運転出来る
ことを化学・食品等の排水にて
は実証できている。ゲル槽の後
段の汚泥減容槽への負荷を低減
させるためにBOD除去率9
5%以上を目標とした。
3 パイロットスケール
及び実設備における
システムとしての運
転管理技術の確立
汚泥の特別な管理が不要で
薬品の連続的注入、調整を不
要とする、容易な運転条件の
確立を目指す。
余剰汚泥減容ができ、かつ放
流水質も社内基準をクリアーす
る状態で、難しい技術や専門知
識を必要としない、容易な運転
管理の確立を目標とした。
*4 BOD除去率とはゲル槽に流入したBOD成分(kg/日)が何%処理されたかを示す指標
12
3.成果、目標の達成度
3-1 成果
3-1-1 全体成果
(1)実設備における余剰汚泥の減容
平成19年夏から汚泥減容設備を導入し、一年半汚泥減容効果を検証した。時間帯によ
りBOD成分濃度が大きく変動するため、1日の平均BOD負荷を示しやすい工場の生産
数量を用いて汚泥の減容効果を汚泥減容システム導入前後で比較した。具体的には、BO
D汚泥転換率に代わり[汚泥引き抜き量(kg)/工場の生産数量(1000m―布)]で
評価することとした。その月別の値を図8・表3に示す。
設備導入前の[汚泥引き抜き量/工場の生産数量]は平均約60[Kg/1000m]であ
ったが、導入後は平均約42[kg/1000m]であり従来の実績に対して30%の汚泥
減容効果が確認できた。
エラー!
図8.汚泥引き抜き量/生産数量の月別グラフ
表3.汚泥引抜量/生産数量の推移
汚泥引抜量/生産数量
(kg/1000m)
平均値
汚泥減容効果
(%)
ゲル槽導入前(H18.5~H19.6) 60 -
ゲル槽導入後(H19.7~H21.2) 42 30
月別 汚泥引抜き量/生産数量
0
10
20
30
40
50
60
70
80
1 3 5 7 9 11
月
汚泥引抜き量/生産数量[kg/1000m]
H19年ゲル投入後H20年
ゲル投入前H18年ゲル投入後H21年
ゲル投入後H19年
13
(経過と考察)
東海染工浜松事業所内排水処理設備の遊休槽を平成19年4月にゲル槽へ改造し、従来
の活性汚泥槽へかかるBOD負荷を低減し、汚泥の発生量低減を目的とした運転を実施し
た。平成19年度及び平成20年度の生産数量あたりの汚泥処理量を改善工事前のそれと
比較すると、改善前=60(kg/月・1000m)に対し、42(kg/月・1000
m)であった。ゲル槽を導入することで以前に比べ汚泥減容効果は出ているが、目標とす
るBOD汚泥転換率=1%以下に対しては未達である。このままでは目標を達成すること
は困難と判断し、目標未達要因を抽出し、実施可能な項目についてアクションをとった。
汚泥発生量低減対策
汚泥発生量を低減させるために何が必要かを検討した結果、ゲル槽のHRT安定化、酸
素供給量のアップ、ゲルの追加、原水のSS除去の4項目が挙げられる。なかでもゲル槽
におけるHRT*5 が短く、且つ原水流入量の変動が大きいことが特に影響していると判断
し重点的に検討した。
平成20年に実施した改善項目を下記に示す。
*5 HRT…下水や汚泥が生物反応槽や沈殿池に流入してから流出するまでの平均的な時間。一般的に、HRTが長い程、
各槽での処理される時間が長いことを意味する。
① ゲル槽のHRT安定化
東海染工株式会社の既設遊休槽は700m3であり、同槽をゲル槽に改造した場合、H
RTは3時間程度になる。HRTが短くなると生物処理が不完全となり処理能力が低下す
るため、先行試験でHRTと処理性能の関係を確認した(図9)。HRTを約2.5~8時
間程度まで変化させ処理性の変化を確認したが何れのHRTにおいてもゲル槽内BODは
概ね40mg/L以下を推移しており、HRTが3時間以下であっても安定していれば処
理性も安定することを確認した。
図9.HRTとゲル槽処理性の関係(ラボスケール先行試験)
0
50
100
150
200
H18.5.23
H18.6.12
H18.7.2
H18.7.22
H18.8.11
H18.8.31
H18.9.20
H18.10.10
日付
BOD(m
g/L)
0.0
2.5
5.0
7.5
10.0
HRT(hr)
ゲル槽内BOD
HRT
14
上記結果を踏まえて運転を実施したが、通常の排水処理設備には原水の流量変動を抑え
るための原水調整槽が設けられているが、東海染工株式会社の設備にはそれが無いため、
生産状況により流入量が変動し、ゲル槽のHRTが3時間以下になることに加え、流量変
動が大きいことが判明した。図11に示すようにゲル槽におけるHRTは3時間以下であ
り、変動が大きい。
そのため、ゲル槽における処理性が安定せず後段の活性汚泥槽への負荷が上昇して通常
の活性汚泥槽の状態となり汚泥の引き抜き量がアップしていると推察される。
ゲル槽における処理を安定化させるためには、原水供給量の変動を抑える必要があるが、
その方策として①原水調整槽*6 を設置しゲル槽への原水供給量を安定化させる、②生産工
程排水を分流し高濃度排水のみゲル槽へ供給することで原水流量変動を抑える、などが考
えられる。前者は4000 m3程度の大きな槽が必要となり設置場所がなく現実性がない。
後者については、高濃度排水と低濃度排水が工程内に存在するためゲル槽への供給を高濃
度排水主体とし、同槽のHRTを安定化させることが実現できる。そのため、工場の排水
経路に立ち返って、高濃度排水と低濃度排水との分流工事を実施した(図10)。
分流工事は平成20年12月に実施したが、図8の生産数量あたりの汚泥引抜き量に示
すように平成21年1月、2月は生産数量あたりの汚泥引抜き量が減尐傾向にあり、HR
Tを3時間以上に安定させた効果が出てきている。
*6 排水量あるいは排水濃度変動を抑えるため生物処理槽前段に設けるバッファータンクのこと。
図10.ゲル槽のHRT安定化検討
(従来)
生産工程排水4200~8000m3/d
HRT=2~4hr
(改善案1)原水調整槽を設置する
生産工程排水4200~8000m3/d
HRT=3hr
(改善案2)生産工程排水を分留する
生産工程排水4200~8000m3/d
HRT=3~4hr
ゲル槽700m3
ゲル槽700m3 原水調整槽 4000m3
ゲル槽700m3 高濃度排水4200~5600m3/d
低濃度排水 0~2400m3/d
汚泥減容槽 2700m3
汚泥減容槽 2700m3
汚泥減容槽 2700m3
15
エラー!
図11.ゲル槽におけるHRTの推移
② 酸素供給量アップ
ゲル槽におけるBOD除去量(TOC*7 からの換算)とゲル槽で残留するTOCの関
係を図に示す。結果、BOD除去量=2000kg/日以上の領域は、供給酸素量が不
足しているため残留TOC濃度が上昇している。ゲル槽への酸素供給は水中エアレータ
及びブロワーで構成されるが、通常の運転はブロワーを2台稼働している。
この場合ゲル槽で処理可能なBOD負荷量は2000kg/日となる。従って、それ
を超えた負荷分は理論的には処理不可能であった。残留負荷を低減させるために予備と
して保管していた3台目のブロワーを稼動させ、酸素量(500kg/日)を追加供給
し、トータル2500kg/日とした。
*7 TOCは全有機炭素の意で水中に含まれる有機物中の炭素の総量を測定することにより、水の汚れの度合いを知ろ
うとする指標のひとつ。本システムはゲル槽でTOCを大幅に除去することで汚泥減容槽に流入するTOCを低減
し汚泥減容槽における汚泥減容槽増殖を抑えることが運転のポイントである。
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
H19.11.14 H20.1.3 H20.2.22 H20.4.12 H20.6.1 H20.7.21 H20.9.9 H20.10.29 H20.12.18 H21.2.6 H21.3.28
月日
HR
T [
hr]
16
③ ゲルの追加
微生物の棲家であるゲルを16m3追加することで、ゲルの充填率を10.3%から
12.6%まで引き上げ、槽内の微生物量を増やしゲル槽の処理能力アップを図った。
④ SS除去スクリーン設置(高SS濃度排水)
平成19年度の試験結果から、原水のSS成分の内80%が有機性であることを確認
した(表4:確認①)。次に、この有機性のSSが生物処理出来るか否かを確認したとこ
ろ、生分解され難いものであることが判明した(表4:確認②)。
表4 原水の水質データ(採取日:平成19年11月17日)
確認 項目 (mg/L)
① SS
VSS(*8)
177
② BOD5
(*9)
T 308
S 293
*8 SSのうち有機分を指す。
*9 5日間に微生物が消費する酸素量を測定したものである(測定方法はJIS規格に準ずる)。
Tは全体の略で原水のろ過操作を行わずSSを含んだ全てのサンプルを測定した結果(SSを含んだ原
水)、Sは溶解性成分の略で原水のろ過操作を行った後に測定した結果(SSを含まない原水)である。
TとSの差が原水中SSによるBODとなる。TとSに差がないことは、原水中のSSは生物分解されに
くいものであると言える。
エアー配管径アップによる効果(想定)
0
50
100
150
200
250
300
350
400
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
BOD 除去量(kg/d)
残留 TOC(mg/l)
BOD 除去量
図12.酸素供給量アップによるBOD除去量向上試算
17
当初は、原水中のSSを除去せずに汚泥減容効果を確認しようとしたが、上記結果から
分解されないSSを多く含んでいたため、原水SSを排除することを検討することにした。
しかし、全排水量が8000m3/日もあり、全量を対象にSSを排除するのは不可能で
あるため、のり抜き(生地に付着した糊)排水、精練(生地に付着した不純物の除去)排
水、バイオ(酵素処理)排水、分散/スレン(ポリエステル/綿の染色)排水のそれぞれ
の排水について下記調査を実施した。
・工程別排水のSS存在状況調査
・前処理によるSS排除の検討
表5.工程別排水のSS存在状況 採取日:平成20年1月11日
項目 排水の種類
のり抜き 精練 バイオ 分散/スレン
SS (mg/L) 2370 470 80 140
BOD(20)
(mg/L)
T 8360 3770 1000 515
S 8120 3640 951 470
BOD(5)
(mg/L)
T 2050 2310 663 112
S 1830 1740 621 88
工程別排水のSS状況を調査した結果、のり抜き排水が最もSS濃度が高く、影響が大
きいことが分かった。同排水のBOD(5)及びBOD(20)共にTとSで差が無く、
殆ど生物分解不可能なSSであることが分かった(表5)。この点が汚泥引抜量の減らない
要因のひとつと考えられる。
表5の結果からのり抜き排水にSSを多く含むことが分かったため、のり抜き排水を対
象にSSを図13に示す条件で可溶化させて排除させる方法を検討した。精練、バイオ、
分散/スレン排水はSS濃度が低く、影響が尐ないと判断し対象から除外した。
18
処理条件:①熱処理、②アルカリ熱処理、③濃硫酸処理
図13.のり抜き排水の可溶化試験
結果
・①熱処理及び②アルカリ熱処理ではのり抜き排水中のSSは溶解しなかった。
・③濃硫酸処理は溶解したが実設備へ前処理として導入するのは現実性がないと判断し
た。
これらの結果を踏まえSSが多く含まれているのり抜き排水に東海染工株式会社経費
にてスクリーンを設置した。
なお、スクリーンの設置効果については、現在も引き続き調査中である。
汚泥減容効果の確認
平成19年4月にゲル槽を導入したが、目標とする汚泥減容効果が見出せないため、要
因を抽出し、ゲル槽での処理効率アップを目的とし下記アクションを実施した。
①工程排水の分流工事: ゲル槽への原水供給量安定化(HRT=3hr以上確保)
②酸素供給量アップ : ブロワー稼働台数アップ
①熱処理(120℃×15 分)
③濃硫酸処理 ②アルカリ処理
のり抜き排水SS
19
③担体の追加 : 有用菌の棲息エリアの拡張
④スクリーン設置 : 原水中の生分解不可なSSの排除
これらの対策をとった成果として、生産数量あたりの汚泥処理量は26(kg/月・1
000m)まで低減し、BOD汚泥転換率は約10%であった。ゲル槽導入前の活性汚泥
法時はBOD汚泥転換率=24%であり、汚泥発生率低減効果は57%であった(表6)。
上記に示すゲル槽における対策工事を実施した成果は確実に発現しているようであり、
汚泥発生率も低減している。どこまで汚泥が減容されるかについてはもう暫くデータリン
グし検証する必要がある。
表6.システム導入による汚泥減容効果
(2)実設備における処理水質の改善(固液分離性の向上)
原水のBOD成分濃度は約100~400 mg/Lまで変動しているため(図14)、本
システム導入前の処理水質はかなり不安定であり、既設設備の前段にゲル槽を設けてゲル
槽の処理能力を獲得し始めると処理水質が非常に安定した(図15)。また、処理水のBO
D成分濃度は、システム導入前は平均27 mg/Lに対し、導入後には13 mg/Lまで
低下しているため水質も向上している(表7)。
処理水のSSは改造前が平均30mg/Lに対し、改造後は平均約20mg/Lで、改
善されている(図16)。
エラー!
20
図14. 原水BOD成分濃度グラフ
図9. 処理水BOD成分濃度グラフ
図15.処理水BOD成分濃度グラフ
原水
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
H18.6.15
H18.9.21
H18.11.16
H19.2.22
H19.4.26
H19.6.14
H19.8.7
H19.9.20
H19.11.1
H19.12.20
H20.2.14
H20.3.27
H20.5.8
H20.6.25
H20.8.28
H20.10.16
H20.12.4
H21.1.22
BOD
濃度
[mg/L]
処理水
0
10
20
30
40
50
60
70
H18.5.31
H18.9.8
H18.10.26
H19.1.18
H19.3.8
H19.5.10
H19.6.14
H19.7.26
H19.9.6
H19.10.11
H19.11.22
H20.1.10
H20.2.21
H20.3.27
H20.4.23
H20.6.12
H20.7.30
H20.9.18
H20.10.30
H20.12.11
BOD
濃度
[mg/L]
ゲル槽導入前 ゲル槽導入後(処理能力安定後)
ゲル槽導入直後
21
表7.処理水BOD成分濃度の推移
処理水BOD成分濃度
システム導入前 システム導入後
(能力安定後)
平均 27 mg/L 13 mg/L
最小 10 mg/L 4.1 mg/L
最大 45 mg/L 23 mg/L
図16. 処理水SS濃度グラフ
処理水
0
10
20
30
40
50
60
H18.5.31
H18.9.8
H18.10.26
H19.1.18
H19.3.8
H19.5.10
H19.6.14
H19.7.26
H19.9.6
H19.10.11
H19.11.22
H20.1.10
H20.2.21
H20.3.27
H20.4.23
H20.6.12
H20.7.30
H20.9.18
H20.10.30
H20.12.11
H21.1.22
SS
濃度
[mg/L]
ゲル槽導入前 ゲル槽導入後(処理能力安定後)
ゲル槽導入直後
22
3-1-2 個別要素技術成果
(1)パイロットスケールによる汚泥減容の検証
平成18年度において、既設処理設備に本汚泥減容システムを導入することを想定して
東海染工株式会社実設備の1/3000のパイロットプラントを作製し、汚泥減容の実証
実験を実施した。パイロットプラントのフローを図17に示す。ゲル槽、汚泥減容槽、固
液分離槽で構成しており、実設備の槽にほぼ合わせてゲル槽は2槽、汚泥減容槽は3槽に
分割した。
※1:ゲル槽分離メッシュ詰まり防止
ゲル槽にはゲルを分離するための分離器を設置している。この分離器に原水中SSが付着し槽内水位が上
昇するトラブルが発生。原水中のSSを排除する目的で実設備同様に原水受入へスクリーンを設置した。
※2:固液分離槽での汚泥浮上対策
汚泥減容で窒素酸化物(NOx)が生成し、NOxが固液分離槽へ流入すると残留するBOD成分と接触
し窒素ガスが生成する。汚泥のガス浮上を抑制するため、前段槽へ循環しNOxの低減を図る。
図17.パイロットプラントフロー
返送汚泥 144L/h
※2 循環 288L/h
処理水 工場排水 144L/h
汚 泥 減 容 槽
(1000L)
※1 フィルター
固 液 分 離 槽
(675L)
ゲル槽
23
図18.パイロットプラント全景
(各槽の役割)
ゲル槽
ゲルを投入することで、ゲル槽内にBOD成分を除去する微生物を高濃度に保持す
ることが可能となる。そのため活性汚泥法に比べて、槽のコンパクト化が可能である。
汚泥減容槽
ゲル槽から流入してきた微生物を自己酸化作用により減容させる。ゲル槽における
原水の分解処理工程で発生する微生物は、微細で沈降し難い。このままでは、処理水
中に汚泥が流出してしまい、処理水質としては不良となってします。そこで、汚泥減
容槽内に存在する汚泥に結合させ固液分離槽で良好に分離(自然沈降)することがポ
イントとなる。
②評価方法
生物処理性については原水及び各槽のBOD成分濃度をスポット的に分析し、日々
の水質分析は結果が迅速に確認できることからTOCを測定し生物処理能力を確認し
た。
測定機器はデータの互換性を得るために、協力会社である株式会社クラレが使用して
いるものと同様のTOC自動測定機(島津製、TOC-5000)により分析した。
24
③結果
処理能力
原水のBOD成分濃度を図19に示す。成分濃度は130~600mg/Lと非常
に変動が大きいため、ゲル槽の処理性が懸念されたがゲル槽におけるBOD除去率は
85%以上を推移(図20)し、処理水は平均BOD成分濃度11mg/L、除去率
95%以上であり安定的に良好な処理水が得られた。
図19.原水BOD成分濃度の推移(H18年パイロットプラント)
図20.BOD除去率の推移(H18年パイロットプラント)
BOD処理状況
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
500
550
600
650
3/9 4/28 6/17 8/6 9/25 11/14
BO
D(m
g/L)
原水
ゲル槽
処理水
BOD除去率推移
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
3/9 4/28 6/17 8/6 9/25 11/14
除去
率(%
)
ゲル槽
処理水
25
TOCは原水濃度100~650mg/LとBODと同様に変動幅が大きいが、ゲル
槽では平均170mg/L程度を保持し、最終処理水は概ね30~50mg/Lを推移
した(全体での除去率は81%)。原水濃度の変動が大きいにも係らず、処理水濃度の変
動幅が小さく良好な処理水が得られた(図21)。
図21.TOC濃度の推移(H18年パイロットプラント)
SS濃度はゲル槽で200~400mg/L、処理水では平均10mg/Lであり、良
好に推移した。
ゲル槽で発生する汚泥は非常に微細であり沈降性が悪いため汚泥減容槽内汚泥に吸着さ
せ固液分離槽で分離させる必要がある。ゲル槽内SSに対し、処理水SSが大幅に低減し
ているため、ゲル槽で発生する汚泥は汚泥減容槽で良好に吸着し沈降性が改善されている。
TOC濃度
0
100
200
300
400
500
600
700
10/17
10/2611/6
11/14
11/2312/5
12/191/16 2/
12/13
2/22 3/
63/15
3/27
4/10
4/19 5/
85/22
5/31
6/12
6/21 7/
57/19 8/
78/23 9/
49/13
9/27
TO
C濃
度
[mg/
L]
原水TOC濃度
ゲル槽出口TOC濃度
放流水
■原水TOC濃度
○ゲル槽出口TOC濃度
△処理水
26
図22.SS濃度の推移(H18年パイロットプラント)
問題点及び改善対策
汚泥減容槽を低負荷で運転することにより、固液分離槽で汚泥が浮上する問題が
発生した。固液分離槽で汚泥が浮上すると汚泥も有機物であるため処理水のBOD及び
SS濃度が高くなり、処理水質の悪化に繋がる。原因としては下記が考えられる。
汚泥浮上の原因推察
① 難分解性物質の易分解化(BOD成分の生成)
排水中に含まれているPVA(ポリビニルアルコール)は通常は難分解性のためBO
D成分として検出されない。そのためPVAは分解されず放流されていた。通常、微生
物とエサの量のバランスにより、易分解性物質のみ分解され、難分解性物質は分解され
ず、処理水とともに放流される。
しかし、ゲル槽を導入することで、易分解性物質は、ゲル槽で処理され、後段の汚泥
減容槽が飢餓状態となっており、難分解性物質であるPVAも分解され始め、易分解物
質となりBOD成分として検出されるようになった。中途半端なPVA分解性能の発現
は、以下の②のとおり脱窒反応を引き起こし、汚泥浮上の原因となる。
② 硝化反応によるNOxの生成
汚泥減容槽で硝化反応が進み固液分離槽へNOxが流入し、BOD成分とNOxによ
り固液分離槽内で脱窒反応*10を起こし窒素ガスを生成し、汚泥が窒素ガスを抱え込み浮
上したものと考えられる。
*10 脱窒反応: 有機物+NOx→N2+CO2+H2O
『対策』
固液分離槽で汚泥が浮上し、処理水質の悪化に繋がる上記原因を排除する為に下記の
内容を実施した。
処理水SS
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
7/27 8/6 8/16 8/26 9/5 9/15 9/25 10/5 10/15 10/25 11/4
MLSS
(mg/
L)
ゲル槽
沈殿槽処理水
◆ゲル槽
●処理水
27
① PVA分解能力獲得
汚泥減容槽にPVA分解菌を投入し、PVAを分解して固液分離槽へのBOD流入を
低減させた。汚泥減容槽の最後の槽でPVAの分解能力を獲得し、固液分離槽のPVA
濃度は50~450mg/Lから10mg/L以下まで下がった(図23)。
図23.PVA濃度の推移(H18年パイロットプラント)
② 泥減容槽での硝化反応抑制及びNOx低減
パイロットプラントフローに示す汚泥減容槽の最初の槽を間欠曝気運転し、また、汚
泥減容槽最後の槽内液を汚泥減容槽最初の槽へ循環させることで、硝化反応を抑制する
とともに、脱窒反応により発生するN2を汚大気中へ放出し、NOxを低減させた。こ
れらを実施することにより、固液分離槽での汚泥浮上が改善された(図17)。
汚泥減容効果
平成18年年7月末から11月まで汚泥引抜き無しでの運転が可能であり、BOD
汚泥転換率は0%であった。汚泥減容槽のSSは約6000mg/Lで安定していた
(図24)。パイロットプラントにおいて、染色排水で汚泥減容可能であることが確認
できた。
PVA濃度推移
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
500
4/28 5/8 5/18 5/28 6/7 6/17 6/27 7/7 7/17 7/27 8/6
PV
A(m
g/L)
原水
ゲル槽
沈殿槽処理水
◆原水
◇ゲル槽
●固液分離槽処理水
28
図24.汚泥減容状況の推移(H18年パイロットプラント)
(2)パイロットスケールで検証した本汚泥減容システムを東海染工株式会社実設備へ導
入した後のゲル性能
パイロットプラントの結果から、実設備の1/3000スケールのシステムで汚泥
減容出来ることを確認した。それを基に平成19年4月に既設遊休槽をゲル槽に改造
し、ゲル槽の立上げ運転を実施した。
ゲル槽における生物処理性は当初、BOD除去率=95%以上としたが図に示すよ
うに、常時95%以上は未達であったが概ね90%以上の高除去率を推移した(図2
5)。BOD除去率95%以上未達の要因は原水の流量変動が大きく、且つ、ゲル槽に
おけるHRTが平均3時間以下を推移しており、生物処理に要する反応時間が尐ない
ためと推察した。
そのため、流入原水を高濃度排水と低濃度排水に分流する工事を実施し、高濃度排
水を主体にゲル槽へ流入させることにより、ゲル槽のHRTを3時間以上に安定化さ
せた(図26)。分流させたことによりゲル槽処理水BOD濃度が低下傾向にあり、H
RTを延ばした効果が出てきている(図25)。
汚泥量推移
0
10
20
30
40
50
60
7/17 8/6 8/26 9/15 10/5 10/25 11/14
汚泥
量(k
g)
流入汚泥量積算値
全汚泥量
線形 (全汚泥量)
線形 (流入汚泥量積算値)
日付
汚泥減容分
29
図25.ゲル槽におけるBOD処理性の推移
図26.ゲル槽におけるHRTの変動調査結果
H19 年 H21 年
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
H19.11.14 H20.1.3 H20.2.22 H20.4.12 H20.6.1 H20.7.21 H20.9.9 H20.10.29 H20.12.18 H21.2.6 H21.3.28
月日
HR
T [
hr] ゲル槽必要
最低HRT=3hr
担体槽におけるBOD処理性
0
100
200
300
400
500
4/28 8/6 11/14 2/22 6/1 9/9 12/18 3/28 7/6
日付
BOD(mg/L)
0
20
40
60
80
100
BO
D除
去率
(%)
原水
ゲル槽処理水
除去率
2007年 2008年 2009年
ゲル槽
30
(3)パイロットスケール及び実設備におけるシステムとしての運転管理技術の確立
パイロットスケールでは、汚泥減容を実現するために下記運転技術を確立し、平成1
8年7月から11月までの4ヶ月間、BOD汚泥転換率0%を達成し、処理水のBOD・
SS濃度ともに20mg/L以下を達成した。
① ゲル分離器でのSS目詰まりを防止するため、原水受入槽にSS除去のスクリーン
を設置した。
② 泥減容槽では槽内の負荷が低いため窒素酸化物(NOx)が発生する。そのNOx
は沈殿槽で脱窒反応を起こし、窒素ガス(N2)として汚泥とともに浮上する。沈殿
槽での汚泥浮上を防止するため、汚泥減容槽の最初の槽を間欠曝気運転するととも
に、汚泥減容槽の最後の槽から最初の槽に処理水を循環させNOxの削減又はN2の
大気中への放出を行い、沈殿槽での汚泥浮上を抑制させた。
実設備では、パイロットスケールで確立した運転技術を用いて、平成19年にゲル槽
を設け、汚泥減容を目的とした運転を行ったが原水の負荷変動(特に水量変動)が著し
く、ゲル槽においてBOD除去率が目標の95%以上が達成されず、後段の汚泥減容槽
への負荷が上昇した。また、ゲル槽設置の効果としては易分解成分がゲル槽で処理され
ることで難分解性物質であるPVAが活性汚泥槽で処理されている。
結果、処理水TOCがゲル槽導入前に比べ改善されている。本システムは汚泥減容を
目的とし、ゲル槽でBOD成分を分解し、後段の汚泥減容槽を微生物の自己酸化作用に
より飢餓状態に追い込むことで汚泥の減量(菌体の共食い)を図ることを特長としてい
る。
しかし、BOD汚泥転換率10%までは減容できたが、1%以下の目標は達成できな
かった。そのため、運転管理技術の確立については達成できなかった。現在、ゲル槽の
HRT安定化対策を実施し、汚泥引抜き量が以前に比べ低減しており、運転管理技術の
確立については今後とも検討を継続する。
31
3-1-3 特許出願状況等
論文、投稿、発表、特許は無い。
3-2 目標の達成度
3-2-1 全体目標の達成度
全体目標に対する成果・達成度については、以下のとおり。
表8.全体目標の達成度
目標・指標 成果 達成度
実設備のBOD汚泥転換率
1%以下を目指す。
システム導入前のBOD汚泥転換率24%か
ら、導入後は約10%まで減容でき、汚泥処分
に要する燃料等のエネルギー及び汚泥処分費は
2/5まで下げることが出来た。しかし目標の
1%以下には到達できなかったため継続して汚
泥減容対策を検討していく。
一部達成
実設備の処理水質のBO
D・SS濃度とも20mg
/L以下を目指す。
BODは平均13mg/Lで放流目標値の2
0mg/L以下を達成。
SS濃度は、システム導入前に比べて平均20
mg/Lと改善されているが、一部20mg/
Lを越えることがあり、常時推移には至ってい
ない。
一部達成
3-2-2 個別要素技術
個別要素技術に対する成果・達成度については、以下のとおり。
表9.個別要素技術の達成度
要素技術 目標・指標 成果 達成度
1 パイロットスケー
ルによる汚泥減容
の検証
パイロットスケール
でのBOD汚泥転換
率1%以下、処理水B
OD・SS濃度20m
g/L以下、ゲル槽の
BOD除去率95%
以上を目指す。
平成18年7月末から1
1月までの約4ヶ月間余剰
汚泥を引き抜かずに汚泥減
容槽のSS約6,000mg
/Lを安定的に推移した状
態で運転可能であり、BOD
汚泥転換率は0%だった。従
って、4ヶ月間はBOD汚泥
転換率1%以下を達成した。
処理水BOD・SS濃度は平
均約10mg/Lで、20m
g/L以下を達成、ゲル槽B
達成
32
OD除去率は平均95%以
上でいずれも目標を達成し
た。
2 パイロットスケー
ルで検証した本汚
泥減容システムを
東海染工株式会社
実設備へ導入した
後のゲル性能
実設備でのゲル槽に
おけるBOD除去率
95%以上を達成す
る。
ゲル槽での除去率は80
~98%で95%以上は常
時達成することは出来なか
った。目標未達の要因は、原
水の流量変動が大きいこと
に加え、ゲル槽でのHRTが
3時間以下で反応時間が尐
ないことが考えられる。
ゲル槽のHRTの確保及
び安定化を図るために、高濃
度排水と低濃度排水を分流
させ、ゲル槽のHRTを3時
間以上に安定化させた。この
対策により処理水のBOD
濃度が低下している傾向が
見られた(20mg/L→1
0mg/L以下)。引き続き
その効果を確認していく。
一部達成
3 パイロットスケー
ル及び実設備にお
けるシステムとし
ての運転管理技術
の確立
汚泥の特別な管理が
不要で薬品の連続的
注入、調整を不要とす
る、容易な運転条件の
確立を目指す。
パイロットスケールでは、
ゲル分離器でのSS目詰ま
り及び沈殿槽での汚泥浮上
の対策を行い、BOD汚泥転
換率0%を達成するととも
に、処理水BOD・SS濃度
20mg/L以下を達成し
た。
しかし、実設備では原水の
流入負荷変動の影響により、
ゲル槽の除去率が常時9
5%以上を達成できず、BO
D汚泥転換率は10%に留
まったため、完全な汚泥減容
のシステムとして、運転する
ことが出来なかった。
未達成
33
4.事業化、波及効果についての妥当性
4-1 事業化の見通し
(1)市場規模
現在、生物処理槽から排出され、産業廃棄物となっている余剰汚泥量は、約1,9
00万トン/年と推定され、予想されるマーケットは、およそ2兆円と考えられる。
(2)競合が想定される他社の開発動向とそれに対する優位性の根拠
余剰汚泥減容法としては、オゾン、高熱細菌、薬剤、粉砕機などによる可溶化技術
がある。いずれも可溶化した汚泥を活性汚泥槽に戻すために、活性汚泥槽への負担が
大きくなり、場合によっては増設する必要がある。その場合、設置スペースの確保が
問題となる。また、可溶化するための維持費が高いことや、沈殿離槽で汚泥の沈降性
が悪くなるといった問題が生じている。
これに対し、本研究開発で実証したシステムは、ゲル槽を設けることで、生物処理
槽を独立させることが可能であることから、生物処理工程でのトラブルはない。しか
も通常のエアレーションのみで減容するため、エネルギー消費を大幅に抑えられ、運
転管理も容易である。
(3)価格競争力
本研究開発で実証したシステムは、例えばオゾン処理法と比較すると、排水処理設
備を新設した場合、建設費は3/5、ランニングコストは1/2となる。また、微生
物を高濃度に保持できるゲル槽を設けるため、設備全体に余力ができる。排水負荷の
ほとんどをゲル槽で処理し、残りの槽で汚泥減容を行う。例えば、BOD負荷=60
kg/日の排水を100m3の活性汚泥槽で処理している場合、25m3をゲル槽、7
5m3を汚泥減容槽に改造することで本システムが成立する。
このようにケースによっては既存の設備を改造することで余剰汚泥の目標達成がで
き、敷地に制約がある場合にも対応可能である。
(4)売上見通し
(A) 売上見通し(数値は装置販売費)
2011~2020年度累計 : 10,000百万円
2021~2030年度累計 : 20,000百万円
上述したように、オゾン法、高熱細菌法、粉砕法等に比べ、コストパフォーマンス
は充分あるが、実績に乏しい。従って、売上見通しは初期10年間は潜在市場の0.
5%とし、次の10年間は潜在市場の1%とした。
(B) 売上見通し設定の考え方
国内における標準活性汚泥処理設備の推定値 :17,000設備
初期10年間で潜在市場の0.5%、次の10年間で1%に普及させることを目標
34
とする。
目標数: 2011~2020年 85設備
2021~2030年 170設備
販売価格 : 120百万円
売上目標:2011~2020年 85×120≒10,000百万円
2021~2030年 170×120 ≒20,000百万円
しかし、汚泥減容効果がまだ目標に到達できておらず、平成23年を目処に今後も
検討を継続する。
(今後の検討課題及びスケジュール)
今後の検討課題及びその実施スケジュールを表10に示す。
①汚泥減容効果の確認
ゲル槽のHRT安定化によるゲル槽の処理性及び汚泥発生量低減効果確認
②省エネ効果
汚泥減容効果の確認と平行し、汚泥引抜き量低減による汚泥処分費(電力費)
の削減効果を明確にする。
③運転管理技術の確立
従来の活性汚泥では汚泥濃度、汚泥の沈降性、原生動物の存在等、
日常的に汚泥の性状を管理する必要がある。本システムでは汚泥の管理を殆ど
必要としない運転技術を確立する。
表10.検討課題の実施スケジュール
H21 H22 H23
①汚泥減容効果の確認
②省エネ効果
③運転管理技術
事業化
4-2 波及効果
本研究開発で実証した汚泥減容システムは、汚泥発生量低減による汚泥処分エネルギー
の削減(汚泥の脱水、汚泥の運搬、焼却、埋立等の省エネ)や、最終処分場の確保が困難
という観点から、活性汚泥法で対応している排水処理設備の全てに波及効果が期待される。
狭義的には、多量の余剰汚泥発生に苦慮している当染色業界に対しての波及効果であるが、
とりわけ多量の余剰汚泥を排出している公共下水場に展開できれば省エネ効果も大きい。
また本システムは、オゾンや薬品などを使用せず、自然の理にかなった微生物の自己酸
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化作用を利用しているので、地球温暖化対策としても評価される。
さらに、間接的ではあるが、汚泥処分場までの運搬量も減ることになり、車両減によるC
O2の排出抑制にも貢献できる。
また、汚泥減容槽では微生物が飢餓状態になることから、従来の活性汚泥法では処理が
困難であった難分解性CODを餌とする微生物が増殖し、分解処理できる可能性もあり、
環境負荷低減に寄与できるものと期待される。
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5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等
5-1 研究開発計画
実設備の1/3000スケールでパイロットプラントを製作し、余剰汚泥の減容・
処理水質の改善確認を実施し、この結果を基に実設備の改造を実施した。
研究開発は、下記に示すように、3年計画で実施した。
表7.研究開発計画
実施年度
研究開発項目
平成18
年度
平成19
年度
平成20
年度
1. パイロットテスト
(1)パイロットプラント設計
(2)パイロットプラント製作
(3)余剰汚泥の減容確認
(4)処理水質の改善確認
(5)実設備改造設計
2. 実設備
(1)改造工事
(2)余剰汚泥の減容確認Ⅰ
(3)処理水質の改善確認Ⅰ
(4)追加改造工事設計
(5)追加改造工事
(6)余剰汚泥の減容確認Ⅱ
(7)処理水質の改善確認Ⅱ
① 平成18年度は、本研究開発を遂行する上で、ベースとなる技術を確認する
ため実設備の1/3000スケールのパイロットプラントを製作し、実証実
験を行った。その結果を基に実機の改造設計を行い、一部の改造工事に着手
した。
② 平成19年度は、実設備の改造工事を実施し、7月より確認作業に入った。
② 平成20年度は、目標に到達するための検討を行い、実設備に対し追加改造
工事を実施し、検証作業を行った。
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5-2 研究開発実施者の実施体制・運営
本研究開発は、東海染工株式会社が経済産業省からの補助金(補助率2/3)を受け
て実施した。また、協力企業として株式会社クラレが参加した。
図20. 研究開発体制
東海染工株式会社の主力工場である浜松事業所にて、排水処理に携わっている
メンバーと本社で事業所のユーティリティを担当する研究者によりプロジェクト
グループを作り、主任研究者である塩川を中心として本研究開発を行った。
また、ゲルの開発会社である株式会社クラレが協力企業として参加した。株式会社
クラレは、技術面でのサポートならびに市場調査を行った。
月に1~2回程度関係者が集まり、本研究開発の進捗及び課題検討会議を行い
進め方について議論を行った。
5-3 資金配分
本研究開発において、資金の過不足は無く、配分も妥当であった。
本研究開発に要した資金の約2/3は排水処理設備の改造工事である。処理水質の確認
とは、平成18年度はパイロットプラントにおける水質分析費用、平成19年度平成20
年度は主に実設備における水質分析費用のことである。
染色加工事業部
浜松事業所 工場長
主任研究者 塩川 株式会社クラレ
榛葉 荻窪 佐野 研究員
実験担当
当
実験担当 実験担当
実施場所責任者
協力企業
経理担当 管理部長
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表8.研究開発に要した資金の配分内訳
(単位:百万円)
年度
研究開発項目
平成18
年度
平成19
年度
平成20
年度
合計
パイロットプラント製作
実設備改造工事
実設備改造追加工事
処理水質の確認
その他
15
58
-
3.5
6.6
-
27.7
-
3.2
10.7
-
-
18.3
2
7.4
15
85.7
18.3
8.7
24.7
合計 83.1 41.6 27.7 152.4
(うち補助金総額 99.8百万円)
5-4 費用対効果
本研究開発の結果、放流水質を規制値以下に維持し余剰汚泥の発生を抑えることができ、
排水処理における使用電力量の削減、運搬車両が使用するガソリンの削減等、省エネルギ
ーに寄与する。また、最終処分場の問題解決にも寄与する。
(原油節約量の予測)
通常の「活性汚泥処理」と「余剰汚泥減容処理」のランニングコスト(曝気ブロワーの
使用電力量)は、ほぼ同じ。従って、発生した余剰汚泥の処理に消費されるエネルギーが
削減されることになる。
標準活性汚泥処理における発生した余剰汚泥の処理に消費されるエネルギーは、以下の
①、②の合計をした値となる。
①脱水機の運転エネルギー
72千Kwh/年・施設 (2003年度東海染工株式会社浜松事業所実績値)
電力の原油換算値を 2.54KL-原油/10,000KWh(省エネ法施行規則より)
従って、72,000×2.54÷10,000 となり、
一施設当たり、原油換算 18KL/年 となる。
②処分(運搬・焼却・埋め立て)に要するエネルギー
余剰汚泥の処分費の1/3を処分に要するエネルギー費と推定する。
現状の余剰汚泥の処分費は、35,000円/トン
(工業調査研究所:産業廃棄物処理事業者の現状分析2003 より)なので、
エネルギー費は、35,000/3≒11,600円/トンと推定する。
余剰汚泥発生量を1,120トン/年・施設とすると
1,120×11,600=12,992千円/年・施設となる。
C重油単価=35千円/Kl (2003年度購入単価)
原油換算値=1.08 KL-原油/KL-C重油(省エネ法施行規則より)
とすると処分に要するエネルギー費を原油に換算すると
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(12,992÷35)×1.08となり、
1施設当たり、原油換算 401KL/年 となる。
従って、①及び②を合計すると、
原油換算 419KL/年・施設のエネルギー削減となる。
(削減費用)
電力単価 15円/Kwh とし、
上記①を金額換算すると 72×15=1,080千円/年・施設
同じく②は、上に示した 12,992千円/年・施設 なので
金額換算では 1,080+12,992=14,072千円/年・施設の費用削減と
なる。
本研究開発が波及することを予測すれば、本研究開発の予算規模(補助金額100百万
円)に対する、成果の費用対効果は十分なものであると考える。
(上記の計算は、BOD汚泥転換率1%を達成した際の試算であり、現状の達成度では上記金額の約1/2となる。)
5-5 変化への対応
本研究開発では、3年間の研究開発期間において、開発に影響を及ぼす社会的・技術的
情勢の変化はなかったが、情勢変化が起こった場合に対応できるよう、株式会社クラレと
共に、排水処理市場の情報収集等を行い、1~2回/月の情報交換会議を行った。