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最小のキズで治す内視鏡外科手術~手術治療の最前線~
2015.02.21 NTT東日本札幌病院健康セミナー
外科 山田 秀久
手術
手術(しゅじゅつ、英: Surgery, Operation)は、
用手的に創傷あるいは疾患を制御する治療法で、
生体に侵襲を加えるものをいう。(Wikipediaより)
手術の目的
切除:病巣を切って取り除く手術が、局所の炎症や腫瘍に対して行われる。虫垂切除術や胃切除術など。
形成:組織や器官の形を整える手術が、障害部位の
機能を改善するために行われる。冠動脈バイパス術やヘルニア根治術など。
移植:自己もしくは他人から採取した組織・器官を移植する手術が、障害された機能を回復するために行われる。腎移植術や植皮術など。
検査:内視鏡や画像診断などの非侵襲的方法で診断が確定できない場合に行われる。
手術の種類
1.開腹手術
2.内視鏡外科手術
開腹手術
医療技術の発達に伴い、周術期管理は格段の進歩を遂げ、侵襲の大きい手術を比較的安全に行うことが可能になってきた。術後生活の質が重要視され、拡大手術は行われなくなっています。
開腹手術の問題点
• キズが大きい• 痛みが強い• なかなか起き上がれない• 術後の回復が遅れる• 食事が進まない• 腸閉塞の危険性が高い• 入院期間が長くなる• 高齢者や体力の落ちている方には危険性が高い
内視鏡治療
従来よりも侵襲の少ない手術方法内視鏡治療(胃カメラ、大腸カメラ)血管内治療(脳動脈瘤、腹部大動脈瘤、狭心症等)内視鏡手術、鏡視下手術(胸腔鏡、腹腔鏡)
ESD 脳神経外科
内視鏡外科手術
腹腔鏡手術お腹を炭酸ガスで膨らませて、カメラで観察しながら細長い鉗子などを用いて行う手術
鉗子 カメラ
内視鏡外科手術のメリット
• 傷口が小さく、目立たない
• 痛みが少ない
• 術後の回復が早い
• 社会復帰までの回復が早い
• 高齢者の身体への影響が小さくなる
• カメラで拡大して見えるので細かい操
作が可能
内視鏡の低侵襲性
体腔内操作 鉗子操作 拡大視効果 エネルギー機器
体腔内環境維持
臓器の触知↓
体壁損傷↓
除痛
剥離面積↓出血・浸出液↓
早期離床
腸管運動・呼吸の早期回復
炎症所見↓ 免疫への影響↓
低侵襲
腹腔鏡手術の歴史
1987 Mouret 腹腔鏡下胆嚢摘出術
1991 Jacob 腹腔鏡下大腸切除術
1992 Pelosi 単孔式腹腔鏡下虫垂切除術
1994 北野 腹腔鏡補助下胃切除術
1997 Navarra 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術
腹腔鏡手術開発からようやく20年単孔式手術はさらに新しい手術方法です。
腹腔鏡下胆嚢摘出術
約20年前、胆石の手術はメスで大きくおなかを切るため3週間入院しなければならなかった。
海外で腹腔鏡手術が開発された当初、医師の関心は低かったが、患者の強い希望に押されて広がった。
1992年9月8日読売新聞医療ルネサンス
腹腔鏡手術をする婦人科の病気
子宮筋腫 筋腫摘出子宮全摘術
子宮内膜症卵巣のう腫 など
いずれも保険適用良性の病気で、罹患者が多いため当院でも数か月待ち
がん治療でも広がる内視鏡手術
食道がん胃がん肝臓がん大腸がん肺がん乳がん腎臓がん前立腺がん子宮がん
胃がん
内視鏡治療
胃カメラを飲んで、胃の内側からがんを削り取ります。胃の粘膜に留まっていて、2cm以下の場合などの早期がんに行われます。
腹腔鏡手術
徐々に増えてきていますが、技術的には難易度の高い手術。病院によって実施割合に差があります。
大腸がん
内視鏡治療
肛門からカメラを入れて、大腸の内側から切除します。ポリープがんや粘膜までのがんに行われている。
腹腔鏡手術
多くの病院で広く行われるようになっています。大型のがんや進行したがんの場合は従来通り開腹手術が行われます。
肺がん
胸腔鏡手術胸、わき腹に数か所の穴を開けて行います。従来の開胸手術に替わって主流となっています。回復が早く、痛みが少ない事が特徴です。
乳がん
内視鏡手術
キズ跡が目立ちにくくより美しい乳房を残すために行われます。
狭い範囲の手術のため、技術的に難しく実施病院は多くありません。
肝臓がん
腹腔鏡手術新しい手術方法です。
肝臓の機能が非常に落ちている方や高度の肝硬変になっている場合でも回復が早い利点があります。
部分切除、左側の部分を切除する方法のみ保険適用されています。
注意
肝臓の半分を切除するような大きな手術は先進医療あるいは研究段階の治療です。保険適用はありません。
最近の報道
前立腺がん
腹腔鏡手術
前立腺は狭い骨盤の中で膀胱のさらに奥に位置しているため、非常に難しい手術です。
過去に大きく報道された事故がありました。2003年9月25日報道
手術侵襲比較
手術関連死亡率 低い~同じ △合併症 低い~同じ △手術時間 40分長い ×出血量 少ない ○輸血頻度 同じ再手術頻度 同じ排ガス 1.2日早い ○腸蠕動 1.3日早い ○創痛スコア 12.6%軽減 ○鎮痛薬使用 30.7%減量 ○在院日数 短い ○長期成績 同じ~良好 △手術費用 高価 ×
腹腔鏡手術成績 (大腸癌メタアナリシス)
内視鏡外科手術の追求
1.合併症軽減 より低侵襲な方法2.手術時間短縮 技術力向上3.費用低減 手術費用減額はできないが、合併
症を減らせれば入院期間を短くし入院費用を抑えることは可能
単孔式腹腔鏡手術
すでに腹腔鏡手術は4~6箇所の小さいキズで行っているが、さらにキズを縮小
単孔式腹腔鏡手術
単孔式腹腔鏡手術とは従来、複数箇所で行っていた腹腔鏡手術をへそ1箇所のキズで行う手術です。
最小のキズで行う内視鏡外科手術
単孔式腹腔鏡手術の創部
胆石+直腸癌 S状結腸癌
胆石
単孔式腹腔鏡手術
臍一箇所のキズから行う手術方法です。
美容的に優れています。
低侵襲手術であり合併症の低いことが期待されます。
現在、胆石症をはじめ虫垂炎、ヘルニア、大腸、脾臓、
肝臓、膵臓などに対して広く行っています。
内視鏡外科手術の問題点
• 技術的に難しい
• 手術の時間が長くなる
• 専門医の養成に時間がかかる
• がんの進み具合によっては出来ない
• 一部に保険が適用されないものがある
• 絶対に有利な点はキズが小さいことだけ?
内視鏡外科手術の将来
遠隔手術
ロボット手術
触感センサー
3D化(立体化)
ロボット手術
前立腺がんに対する腹腔鏡手術をより安全に行うために開発された全く新しい手術方法アメリカでは前立腺がん手術の殆どを占めます。日本でも前立腺がんにのみ保険適用されています。
3D化(立体化)
次世代手術の問題点
遠隔手術 → 通信、手術の設備
ロボット手術 → 前立腺手術のみ
触感センサー → 開発途上
3D化(立体化) → 設備、ストレス
内視鏡外科手術を提案されたら
• 先ずは、手術以外の治療方法があるか
• 内視鏡手術と従来の開腹手術の違いは
• 保険が適用されているか
• 一般的に行われているか
• 専門医、技術認定医の下、手術が実行されているか
• 手術数ランキング本は参考程度に
• インターネットの知識も参考程度に
ご清聴ありがとうございました。