北海道オホーツク海側の河川に遡上したサケの魚体サイズの特徴

誌名誌名北海道水産試験場研究報告 = Scientific reports of Hokkaido FisheriesResearch Institutes

ISSNISSN 21853290

著者著者

宮腰, 靖之安藤, 大成藤原, 真虎尾, 充隼野, 寛史卜部, 浩一

巻/号巻/号 84号

掲載ページ掲載ページ p. 21-29

発行年月発行年月 2013年9月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

北水試研報 84， 21-29 (2013)

Sci. Rep. Hokkaido Fish. Res. Insl

北海道オホーツク海側の河川に遡上したサケの魚体サイズの特徴

宮腰靖之.安藤大成，藤原真，虎尾 充，隼野寛史， 卜部浩一

北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場

Characteristics of body size of chum salmon retuming to Okhotsk rivers in Hokkaido

YASUYUKI MIYAKOSHI*， DAISEI ANDO， MAKOTO FUJIWARA， MITSURU TORAO， HIROFUMI HAYANO AND

HIROKAZU URABE

Hokkaido Research Organization， Salmon and Freshwater Fisheries Research Institute， Eniwa， Hokkaido， 061-1433，

Japan

Fork length， body weight， and age of chum salmon Oncorhynchus keta re回mingto 7 rivers in the Okhotsk Sea region were

measured， 2010-2012. Mean fork lengths of chum salmon were larger in the westem region than those in the central or the eastem

regions. Also， in many rivers， fork lengths were different among run timings; larger for fish capωred in巴arliertiming (August and

September) and smaller for fish captured in the later timing (November and December). When fork lengths of chum salmon of the

same ages (age-4 and age-5) captured in October were compared， the difference of fork lengths among rivers was smaller， but was

significant. In 2012， body sizes of chum salmon r巴tumingto Hokkaido were small， and the differences of fork lengths among rivers

were not significant for all ages and sexes. When body sizes of chum salmon retuming to rivers were compared， age and run timing

should be taken into account.

キーワード.オホーツク海，魚体サイズ，サケ，親魚

北海道へのサケOncorhynchusketαの回帰数は1970年代

以降，急速に増加し， 1990年代以降は変動しながらも歴史

的に高い資源水準を維持している。最近では北海道内の

海区間で来遊数変動の傾向に違いがみられ，来遊数が低迷

している海区があるものの，オホーツク海では高い資源水

準が保たれている (Miyakoshiet al.， 2013)。サケの来遊数

の増加には北太平洋の良好な海洋環境(帰山， 2004) とふ

化放流技術の向上(小林， 2009) が大きく寄与しているも

のと考えられ，ふ化放流にあたっては健康な稚魚を環境が

良好な時期に放流すること，いわゆる健苗の適期放流が重

要であると考えられている。

北海道のサケ増殖では全道を5海区(オホーツク，根室，

えりも以東太平洋，えりも以西太平洋，日本海) 14地区

(それぞれの海区を2~4地区に区分)に分けて親魚捕獲や

ふ化放流計画が策定され，ふ化放流事業が行われている

(Fig. 1)。過去には大規模な種卵の移殖による資源、造成も

行われたが，最近では各海区で種卵の確保ができるように

なったことや地域集団の重要性が理解されるようになっ

報文番号A495(2013年6月10日受理)

たことから，現在は原則として海区間の移殖は行わず，海

区内に回帰した親魚から卵を確保する努力が払われてい

る。ただし，河川|ごとに定められた捕獲計画に満たない時

には，同じ海区内の河川聞の卵の移殖は頻繁に行われてい

る。

北海道のサケには5つの地域集団があるとされており

(Beacham etσ1.，2008; Beacham et al.， 2009)，それらの地理

的分布域と増殖事業上の海区の区分はほぼ一致している。

しかし，これまでの遺伝的集団解析では長年にわたり捕獲

や放流が行われてきた河川や移殖の履歴が少ない河川を

中心に調査河川が選定されており，必ずしも海区内あるい

は地区内の多くの河川のサケの遺伝的集団解析が行われ

ているわけではない。詳細な生物学的情報に基づいた増

殖事業の地区の区域分けを考える上で，遺伝形質の情報に

加えて河川ごとのサケの表現形質に関する情報を収集す

ることは重要である。

そこで，本研究では北海道オホーツク海側の7河川に遡

上したサケの魚体サイズを測定し，河川間で、の比較を行っ

*Te1: 0123-32-2135. Fax: 0123-34-7233. Email: miyakoshi-yasuyuki@hro.or.j

22 宮腰靖之，安藤大成，藤原、 真，虎尾 充，隼里子寛史， 卜部浩一

A Northem re!!lOn

Sea of Japan -

Southem reglOn

U reglOn

Osh…λ~ i~~~la I Westem Pacific

Okhotsk Sea

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1. Shari River 2. Abashiri River

Eastem region 3. Tokoro River 4. Yubetsu River 5. Horonai River 6. Tokushibetsu River 7. Tonbetsu River

Eastem Pacific

o 2550 100 150 200

・・・・・・ ・・・・km

F i g. 1 Geographic regions for chum salmon enhancement program in Hokkaido. Locations of rivers wh巴rebody siz巴sof chum

salmon were measured are indicated.

た。

試料および方法

調査河川 北海道オホーツク海区(知床岬~宗谷岬)での

サケの増殖は，東部(知床岬~網走市)，中部(北見市常

日~雄武町)，西部(枝幸町~宗谷岬)の3地区に分けて事

業が行われている (Fig.1)。さけます・内水面水産試験場

では，当海区において東部地区の斜里川，網走川，中部地

区の常呂}11，湧別川，西部地区の徳志別川，頓別川の6河

川でサケの年齢組成および魚体サイズ(尾叉長および体

重)のモニタリング調査を実施している(さけます・内水

面水産試験場， 2012-2013)。これらの河川ではウライ(河

川を横断して設置される捕獲施設)で捕獲された採卵用親

魚のうち，毎旬1回，雌雄各50尾から鱗を採取し，年齢を

査定している。本研究では2010年から2012年の3ヵ年に

捕獲したサケを対象として，上記の河川|に加えて，中部地

区の最北端に位置する幌内川でも尾叉長の測定および年

齢を調べ，言十7河川の測定結果について分析を行った。

年齢査定と年齢別捕獲数の推定 各河川で採取した鱗は，

実験室で採鱗用紙から剥してシャーレに移して蒸留水に

浸し，表面の粘膜，ゴミなどを取り除いた後，ガム(水貼

り)テープに貼り付けた。室温で乾燥後，ガムテープの鱗

を添付した面と透明塩化ビ、ニル板 (60xI20xO.5mm) を重

ね合わせて，ヒーター付プレス機を用いて鱗のレプリカ標

本を作製した。レプリカ標本作成時のプレス機のプレー

トの温度は約700

CIこ設定し，圧力8トンで3分間加圧した後，

圧力を10トンに増してさらに2分間加圧した。出来上が

った鱗のレプリカを万能投影機で50倍に拡大して年齢を

査定した。年齢査定の基準は小林(1961)に従った。年齢

査定は2者が独立して行い，結果を照合して査定ミスを防

ぐようにした。

得られた年齢組成をそれぞれ河川ごとに旬別，雌雄別に

捕獲尾数に乗じて，各河川での旬別，年齢別捕獲尾数を推

定した。

魚体サイズの比較 河川別，年別，年齢別に尾叉長および

体重のデータをとりまとめた。平均尾叉長の比較のため

次の順序で，それぞ、れ二元配置の分散分析を行った。

分析1) すべての年齢のデータを用い，雌雄別に，河川

および年を因子として平均尾文長を比較

分析2) 4年魚のデータを用い，雌雄別に，河川および

年を因子として平均尾文長を比較

分析3) 5年魚のデータを用い，雌雄別に，河川および

年を因子として平均尾叉長を比較

分析4) 各河川の4年魚のデータを用い，雌雄別に，捕

獲句および年を因子として平均尾叉長を比較

分析5) 各河川の5年魚のデータを用い，雌雄別に，捕

獲旬および年を因子として平均尾又長を比較

分析6) 10月に捕獲した4年魚のデータを用い，雌雄別に，

河川および年を因子として平均尾叉長を比較

23 オホーツク海側河川のサケの魚体サイズ

Numbers and age composition of chum salmon captured in the rivers in the Okhotsk region of Hokkaido， 2010-2012 Number of fish captured Estimated number of fish by age Estimated age composition (%)

Fema1e Ma1e Tota1 Age-2 Age-3 Age-4 Age-5 A田 6 A田ー7 A畏e-2 Age-3 Age-4 Age-5 Age-6 Age-7 Tota1

Table 1

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0.3 100.0

0.0 100.0

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9，134 3，261 5，832

307，070 182，968 369，215

76，738 186，895 321，436

378，414 262，203 216，012

214，402 366，866 336，175

14，263 9，009

14，067

28，430 20，469 16，219

0

0

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743，716 488，397 607，663

328，832 578，950 679，663

359，430 244，912 321，109

168，827 295，366 366，830

384，286 243，485 286，554

160，005 283，584 312，833

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2010

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2010

2011

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1，018

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848

48，262 37，983 63，855

26，793 11，167 17，420

22，832

6，073

23，412

77，002 92，674 132，754

50，870 19，717 39，153

6，628

2，925

7，029

11，824 17，362 4，207

4，162 2，636 1，466

404

225

339

138 0

0

0

0

0

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149，364 150，123 203，950

86，425 34，021 59，058

30，378

9，941

31，628

72，998 73，057 104，950

42，972 16，934 30，492

15，365

5，172

16，612

76，366 77，066 99，000

43，453 17，087 28，566

15，013

4，769

15，016

2010

2011

2012

2010

2011

2012

2010

2011

2012

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41.1 11.4

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34.1

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55.8

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42.2

1.6 5.1 3.8

1.8 6.0

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28，893 12，033

92，614

51，591 40，060 165，242

39，180 86，272

72，117

2，395 4，879 10，643

1，290 6，328 3，888

0

8

0

0

0

0

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151，273 95，286

277，802

70，225 105，797

170，836

76，077 47，439 135，100

37，366 59，705 79，927

75，196 47，847 142，702

32，859 46，092

90，909

2010

2011

2012

2010

2011

2012

HoronaiR

Tokushibetsu R

Westem Region

TonbetsuR

の3河川(幌内)11，徳志別川，頓53IJ)11)のサケの尾叉長が

湧別川以東の4河川(湧別)11，常日川，網走川，斜里)11)

よりも大きい傾向がみられた (Table2およびPig.3)。年齢

聞で魚体サイズを比較すると3年魚が最も小さく， 4年魚， 5

年魚と年齢が高くなるにつれて大型化する傾向がいずれ

の河川でもみられた (Table2)。平均体重にも同様の傾向

がみられた。年間で比較すると， 2010年， 2011年， 2012年

の順に小さくなり， 2012年はいずれの河川でも魚体サイズ

が特に小型であった。

次に，分散分析の結果をみると，各河川のすべての年齢

をプールして得られた平均尾叉長は雌雄ともに，河川聞や

年間で有意に異なった(分析1:pく0.01)。雌雄別，年齢別

に平均尾叉長を比較した場合でも， 4年魚および5年魚とも

に河川間，年間で有意に異なった(分析2および3:pく0.01)。

次に，各河川での捕獲旬間および年間の平均尾叉長を比

較した結果，ほとんどの河川，年齢で平均尾叉長は有意に

異なり，同じ河川に遡上したサケでも平均尾又長は捕獲時

期により有意に異なる結果となった(分析4および5:

pく0.05)。例外は，頓別川の雌の4年魚，雌および雄の5年魚，

幌内川の雌および雄の5年魚，常呂川の雄の5年魚のみであ

った。この分析では(分析4および5)，年間の差がみられ

ない河川が多く，年による差が有意で、あったのは，徳志別

川と湧別川のみであった。句別の平均尾叉長の推移をみ

ると，早期に遡上するサケが大型で，捕獲時期が遅くなる

につれて徐々に小型となる河川が多くみられた (Pigs.4a

~4d)。しかし，頓別川や幌内川では捕獲期間を通してサ

イズがあまり変化しなかった。旬を追うごとにサケの尾

叉長が小さくなる傾向は東に位置する河川ほど顕著にみ

10月に捕獲した5年魚のデータを用い，雌雄別に，

河川および年を因子として平均尾叉長を比較

河川遡上数と遡上時期 サケの捕獲数は河川間で大きな

違いがみられ，捕獲数の多い斜里川と網走川では60万尾を

超える年もみられた (Table1)。年間の変動も大き

く， 2012年には捕獲数が大幅に増加した河川が多くみられ

た。ただし，この年の11月以降は大規模な増水のために捕

獲体制が整わない河川もあり，捕獲時期後半は急激に捕獲

数が減少した河川もみられた (Pig.2)。捕獲時期にも河川

間で違いがみられ，捕獲時期のピークが早いのは， 8月下

旬から捕獲が始まり9月下旬から10月上旬にピークを迎え

る徳志別川と 10月上中旬にピークがみられる網走川であ

った。その他の河川では概ね10月中下旬に捕獲数が多く

分析7)

果金士山日

なっている。

年齢組成には河川聞で大きな違いがみられ，隣接する河

川で似通った組成となるような傾向は必ずしもみられな

い。中部地区の3河川(常呂川，湧別川，幌内)11) には顕

著な違いがみられ，常日川と湧別川は3カ年とも4年魚

が50%以上を占めていたが，オホーツク中部の最北に位置

する幌内川ではいずれの年も4年魚が30%に満たず， 5年魚

が全体の60%以上と高い比率を占めていた。西部地区

の2河)11の年齢組成にも大きな違いがみられる (Table1)。

魚体サイズの比較結果 各河川で測定した年齢別，雌雄別

の平均尾叉長と平均体重をそれぞれTable2および

Table 3にまとめて示した。魚体サイズは，幌内川以北

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オホーツク海側河川のサケの魚体サイズ 25

T ab I e 2 Mean and standard deviation of fork length of chum salmon captured in the rivers in the Okhotsk Sea region of

Hokkaido，2010-2012

Female

Year Age Shari R. Abashiri R. Tokoro R. Yubetsu R. Horonai R. Tokushibetsu R. Tonbetsu R

no mean 土 SO no mean 土 SD no mean 土 SD no mean :!:: SO 00 mean 土 SO no mean 土 SO no mean 土 SD

Age-3 6 56.9 '" 3.5 29 58.6 土 4.8 35 58.2 '" 4.7 13 58.5 土 4.8 3 52.3 土 2.1 1 61.0 '" 0.0 21 61.5 土 2.6Age-4 281 63.9 土 4.0 283 64.2 土 3.7 236 63.9 土 4.2 204 63.6 土 4.1 69 66.1 '" 3.8 134 66.3 土 3.2 185 67.3 土 3.4

2010 Age-5 236 68.3 土 3.7 120 68.3 土 3.9 174 67.7 土 3.7 135 67.7 土 3.8 265 70.1 土 3.8 248 69.3 '" 3.3 136 69.4 土 3.7Age-6 23 70五 土 3.8 12 68.0 土 3.6 50 69.8 土 3.1 41 70.6 土 3.3 5 70.8 土 3.2 7 69.9 '" 5.2 5 70.8 土 4.3Age-7 2 66.9 土 1.2

Total 546 66.0 土 4.6 444 65.1 土 4.6 497 65.4 '" 4.9 393 65.6 土 4.9 342 69.8 土 4.4 390 68.2 土 3.6 347 67.8 土 4.0

Age-3 5 55.4 土 1.2 13 57.2 土 2.6 46 56.5 土 3.1 20 57.7 '" 2.6 2 59.5 土 2.5 17 58.9 士 3.3 26 63.9 土 2.5

Age-4 224 62.7 '" 3.8 311 62.3 土 3.9 297 62.0 土 3.4 173 62.2 土 3.7 42 64.2 土 3.1 214 63.8 '" 3.6 279 65.7 土 3.7

2011 Age-5 219 68.2 '" 3.6 166 68.6 土 3.8 136 66.5 '" 3.9 101 66.7 土 3.6 89 68.8 '" 3.1 283 68.2 '" 3.5 42 70.3 土 3.3Age-6 46 69.3 '" 3.2 5 64.1 土 2.4 15 68.1 土 2.4 5 69.6 土 3.0 10 67.5 土 4.2 24 70.1 土 3.1 1 71.5 '" 0.0 Age-7 2 68.8 土 2.8 土 2 70.0 '" 0.0

Total 496 65.7 士 4.7 495 64.3 土 4.9 494 62.9 土 4.6 299 63.5 土 4.5 143 67.3 '" 4.1 540 66.3 '" 4.3 348 66.1 '" 3.9

Age-3 27 55.6 土 3.2 8 55.4 '" 3.0 27 55.8 土 2.7 23 55.7 土 2.6 3 58.0 土 2.9 23 58.1 '" 3.8 6 61.3 土 2.7Age-4 165 61.8 土 3.0 224 61.7 土 3.7 341 61.1 土 3.3 240 62.0 土 2.9 82 62.3 土 3.0 266 62.2 土 3.2 135 63.1 土 3.3

2012 Age-5 288 65.1 土 3.3 162 65.0 土 3.9 172 64.7 土 3.4 124 64.9 土 3.4 56 66.5 土 3.4 246 66.1 土 3.3 202 66.5 土 3.3

Age-6 19 67.9 土 4.1 2 66.9 土 1.9 4 66.2 '" 0.8 8 66.0 土 2.4 6 67.7 土 2.6 13 70.1 土 2.8 6 66.8 土 1.6Age-7 1 64.9 土 0.0

Total 499 63.6 '" 4.1 396 63.0 '" 4.3 545 62.0 土 4.0 395 62.6 土 3.8 147 64.1 土 3.9 548 64.0 土 4.1 349 65.1 '" 3.7

Year Age

Male

Shari R. Abashiri R. Tokoro R. Yubetsu R. Horonai R. Tokushibetsu R. Tonbetsu R.

no mean 土 SO no mean 土 SO no mean 土 SD no mean 土 SO no mean 土 SO no mean 土 SO no mean 土 SD

Age-2 1 46.5 土 0.0

Age-3 30 55.7 土 3.5 52 59.1 土 4.6 54 57.7 土 4.9 33 58.0 土 3.8 7 57.1 土 3.7 10 61.9 土 6.4 19 65.9 '" 3.3

2010 Age-4 264 66.5 土 5.8 265 66.7 土 4.7 248 66.3 土 5.3 194 67.0 土 4.8 93 70.3 土 4.3 140 69.7 土 3.7 210 70.4 土 3.1

Age-5 228 71.9 土 4.5 107 71.2 土 5.5 156 72.4 '" 4.2 136 71.4 土 4.6 229 73.7 '" 4.9 234 74.1 土 4.4 112 72.3 土 3.5

Age-6 23 74.3 '" 4.3 15 72.1 土 4.3 39 72.3 '" 5.2 31 73.7 土 3.5 9 76.3 土 4.9 8 71.8 土 1.8 5 72.2 土 2.3Age-7 3 73.3 土 11 1 Ms 土 0.0

Total 545 68.5 土 6.6 442 67.1 土 6.1 498 67.7 土 6.7 395 68.3 '" 6.0 338 72.5 土 5.5 392 72.1 土 5.0 346 70.8 '" 3.5

Age-2 1 53.0 土 0.0

Age-3 17 56.9 '" 4.3 29 57.4 '" 3.3 82 57.7 土 3.3 30 60.7 土 3.3 10 58.6 土 4.5 33 61.3 土 5.3 41 62.4 土 4.1

20 II Age-4 244 65.4 土 4.8 310 64.7 土 4.9 264 64.0 土 4.5 183 65.0 土 4.9 66 65.7 土 4.4 214 67.0 土 4.2 261 67.5 土 4.3

Age-5 184 72.3 土 5.0 152 71.7 土 5.3 136 69.7 土 4.7 81 70.6 土 5.4 95 70.7 土 4.4 223 72.1 '" 3.8 39 71.8 '" 5.1

Age-6 45 75.3 土 3.9 3 66.8 土 0.7 13 71.4 土 2.7 3 67.7 土 1.9 13 72.5 土 2.2 23 70.9 '" 3.0 8 70.4 '" 4.0 Age-7 2 74.5 0.5 1 74.0 土 0.0 土

Total 492 68.6 土 6.4 495 66.4 土 6.3 495 64.7 '" 5.9 297 66.1 土 5.8 184 68.4 '" 5.5 494 69.1 土 5.2 349 67.4 土 4.9

Age-2

Age-3 77 55.2 土 3.2 23 56.5 土 3.5 42 55.6 土 3.5 27 56.3 '" 3.1 12 56.2 土 3.8 44 58.4 土 3.4 19 61.6 玄 4.3

2012 Age-4 157 64.2 '" 5.0 214 64.3 土 4.6 348 63.2 '" 4.7 237 64.9 土 3.7 80 64.3 土 4.0 238 64.7 土 4.0 171 64.9 土 4.0

Age-5 244 68.8 '" 4.2 153 68.1 土 5.5 142 67.9 土 5.6 128 67.2 土 3.7 56 67.9 士 4.8 203 69.3 土 3.9 154 68.3 土 4.1Age-6 18 72.3 土 5.8 4 72.2 土 4.9 13 70.6 土 3.3 7 67.9 土 4.0 6 67.2 土 4.0 12 72.7 土 2.9 3 67.7 土 5.2

A電車斗

Total 496 65.4 土 6.6 394 65.4 土 5.7 545 M.O 土 5.9 399 65.1 土 4.5 154 65.1 土 5.3 497 66.2 '" 5.1 347 66.2 '" 4.5

Female 76

74

宮 72

270 268

言66民

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62

60 仏、

人目

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仏、〉

4

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-<r2010 -<r2011 -・-2012

Male 76

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270 268

ゼ 660 民喝

64

62

60

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F i g. 3 Mean fork lengths of chUI11 sall110n captured in seven rivers in the Okhotsk Sea region frol11 2010 to 2012.

-<r2010 -<r2011 -・-2012

80 Shari River ベ>-2010 80 Abashiri River ベト2010 Tokoro River ベ>-2010..0...2011 "0..2011 --0・.2011

75 ー.-2012 75 ー・-2012 75 一・-2012a吋)Ag巴-4 Female

る[70

1芭t65 同誌 均百 265 坊にhoi:;| 》哉、通-~.EA4 60 ~ 60 55 55 55

Yubetsu River ベト2010 80 Horonai River -0-2010 80 Tokushibetsu Riverベ>-2010 80 Tonbetsu River -0-2010 ..0...2011 目。2011 --0・-2011 --0・-2011

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ー・-2012 75 一.-2012 75 一・-2012

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& 60 ~ 60 3ω

55 55 55

80 Shari River ベ>-2010 80 Abashiri River ベ>-2010 80 Tokoro River 一。-22001101 ー-0..2011 --0・-201175 ー・-2012 75 一・-2012 75 一・-2012

b) Age-4 Male 570

出向lfFVEm M -k、?・-・4-ト-ー-04ZF'ご当..-;曹:>..三a」 570 点ぬ~，Qz Zzb 65 ~ 65 主主 65

& 60 J主E60 。 A60

55 55 55

80 Yubetsu River -0-2010 80 Horonai River --0-2010 80 Tokushibetsu Rivelベ>-2010 80 Tonbetsu River ー←2010..0..2011 --0・2011 "0..2011 --0・2011

75 ー・-2012 75 一・-2012 75 一咽トー2012 75 -.-2012

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55 55 55 55

80 Shari River ベ〉ー2010 80 Abashiri River ベ>-2010 Tokoro River 一。-22001101 "0..2011 "00..2011 75 ー・-2012 75 一ー-2012 一・-2012

c) Age-5 Female E. 70

ぽ誌 社h斗 "-70

570

z 2Eゐ65 壬.r 65 J2C 65 与なまもはlAa 60 360 360

55 55 55

26 宮腰靖之，安藤大成， Ji葉原 真，JfE尾 充，隼里子寛史， 卜部浩一

80

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570

565 a 60

55

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& 60

Yubetsu River ベト2010 80 ー。 2011-・2012 75

Horonai River -0--2010 80 。2011ー・-2012 75

Tokushibetsu Riverベ>-2010 80 。2011-・-2012 75

~ と立3宇:事、事570

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55 55

d) Age-5 Male

80

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Shari River ベト2010 80 。2011-・-2012 75 (

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Abashiri River ベ>-2010 80 。201[ -・-2012 75

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Horona山 ver :7ti;1180。、4〆〆Y~ヘ ー・-2012

:-353〉(EU)

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55 55 55

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Tokoro River -O-- ~9 1 0 2011 -・-2012

55

80 lTonbetsu River ，ベ〉ー2010

75 1 λ-1 --0_ ・-2012}…一 、l

35il --14JT & 60

55

F i g. 4 Mean and standard e町 orsof fork lengths of chum salmol1 by run timing capωred in 7 rivers in the Okhotsk Sea regiol1

from 2010 to 2012

27 オホーツク海側河川のサケの魚体サイ ズ

Male

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Age-4

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i ::l L4干ユ+イy i:: イ 62

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F i g. 5 Mean and standard errors of fork lengths of chum salmon cap加問:din seven rivers in the Okhotsk Sea region in October

Age-5

Mean and standard deviation of body weight of chum salmon captured in the rivers in the Okhotsk Sea region of

Hokkaido， 2010-2012

Fcmale

Ycar Age

Tab I e 3

Tonbetsu R no mean土 so21 2.7 '" 0.3 185 3.6 土 0.6

136 4.0 '" 0.7 5 4.0 土 0.7

Yubetsu R. Horonai R. Tokushibetsu R no mcan土 SO no m回 n 土 SO no meaD土 so13 2.2 土 0.6 1 2.6 士 0.0

204 2.9 '" 0.6 not 134 3.5 士 0.6135 3.4 土 0.6 measured 248 4.0 士 0.741 3.9 土 0.6 7 4.0 土 0.9

347 3.7 '" 0.7

26 2.9 土 0.4

279 3.3 士 0.642 4.0 土 0.61 4.2 土 0.0

348 3.3 土 0.7

6 2.6 士 0.4135 2.9 士 0.5202 3.3 土 0.5

6 3.2 士 0.4

390 3.8 士 0.7

17 2.4 土 0.4

214 3.0 士 0.5

283 3.7 士 0.6

24 4.0 '" 0.5 2 3.7 土 0.1

540 3.4土日7

23 2.3士 0.5266 2.7 土 0.5

246 3.3 '" 0.5 13 3.8 土 0.5

393 3.2 '" 0.7

20 2.2 '" 0.3 173 2.7 土 0.5

101 3.3 土 0.65 3.9 土 0.9

Tokoro R no mcnn土 so35 2.2 '" 0.5 236 2.8 '" 0.6 174 3.5 土 0.6

50 3.8 '" 0.6 2 3.1 土 0.5

497 3.1 土 0.8

46 2.0 '" 0.4 297 2.6 土 0.5136 3.2 土 0.715 3.5 土 0.4

Abashiri R no mcan土 so29 2.1 '" 且7283 2.8 土 0.6

120 3.4 '" 0.6 12 3.4 土 0.7

Shari R no mcan土 so6 2.0 土 0.4

281 2.9 '" 0.6 236 3.6 '" 0.7 23 3.9 '" 0.7

not measured

299 2.9 '" 0.7

23 1.9 土 0.3

240 2.7 '" 0.4 124 3.1 土 0.68 3.3 ;， 0.4

494 2.8 土 0.7

27 1.8 土 0.4341 2.5 土 0.5172 2.9 土 0.54 2.9 土 0.01 2.6 土 0.0

545 2.6 土 0.6

444 2.9 ;， 0.7

13 2.0 ;， 0.3 311 2.5 土 0.6166 3.4 ;， 0.6 5 2.8 土 0.5

土

495 2.8 土 0.7

8 1.7 土 0.3224 2.4 土 0.5

162 2.8 土 0.62 2.8 土 0.1

546 3.2 土 0.8

5 1.8 ;， 0.2 224 2.7 ;， 0.5 219 3.5 ;， 0.6 46 3.6 ;， 0.5 2 3.8 ;， 0.3

496 3.1 土 0.7

27 1.9 ;， 0.4

165 2.5 ;， 0.4 288 2.9 ;， 0.5 19 3.2 ;， 0.7

oot measured

E五玩I頁 AbashiriR. Tokoro R. Yubetsu R. Horonai R. Tokushibetsu R. Tonbe回uRno menn土 SD no mcan土 SD no mean土 SD no mean土 SO no mean土 SO no mean ::f:: SO no m田 n土 so

1 1.2 土 0.054 2.0 土 0.5248 3.1 ;， 0.8 156 4.2 ;， 0.8

39 4.1 '" 1.0

346 4.0 土 0.7

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Age-3 Age-4

2010 Age-5 Age-6

主足三Total

Age-3 Age-4

2011 Age-5 Age-6

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Age-4 2012 Age-5

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52 2.2 ま 0.6265 3.2 ;， 0.8 107 3.9 土 1.015 4.0 土 0.73 4.0 土 0.6

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1 .1.5 土 0.033 2.7 ;， 0.8 214 3.4 ;， 0.7

223 4.2 土 0.823 4.0 土 0.7

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495 3.1 土 1.0

545 3.5 土 1.1

17 2.3 土 1.3

244 3.0 土 0.8184 4.1 ;， 0.9 45 4.7 土 0.92 4.3 土 0.0

492 3.6 土 1.1 494 3.7 '" 0.9

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28 宮腰靖之，安藤大成，藤原真，虎尾充，隼野寛史， 卜部浩一

られたが，北に位置する河川でははっきりとした傾向はみ

られなかった。

時期ごとのサイズの違いの影響を除くため，いずれの河

川|でも測定数が多い10月に捕獲された親魚の平均尾叉長

を比較した分析でも，河川間，年聞の差は有意であった

(分析6および7 :pく0.01)。捕獲時期をそろえた結果，河

川聞のサイズ差は小さくなったものの，全体のデータをプ

ールした時 (Pig.3) と同様，北に行くほど尾叉長が大き

くなる傾向がみられだ (Pig.5)。

考察

本研究では北海道オホーツク海側に位置する河川のう

ち， 7河川に遡上するサケの年齢組成を調べ，平均尾叉長

を比較した。年齢や捕獲時期で分けずに全体を合計する

と (Pig.3)，幌内川以北の河川の魚体サイズが大きい傾向

がみられたが，年齢や捕獲の時期を揃えて比較すると，河

川聞の差は小さくなった (Pig.5)。このため，河川聞に見

られるサケの魚体の違いは捕獲時期や年齢による影響が

大きいものと考えられた。ただし，同ーの捕獲時期 (10月)

のサケの平均尾又長を年齢別に比較した場合でも河川聞

の差は有意となったことから(分析6および7)，現在，北

海道オホーツク海側の河川に遡上するサケでは魚体サイ

ズに河川間で差異があるものと考えられた。

北米に遡上するサケでは緯度によって魚体サイズが異

なることが報告されている (Solo，1991)。北海道でもサケ

の地域系群が存在することは古くから認識されており(佐

野， 1951)，オホーツク海でも常呂川群と網走川群では魚体

サイズ，鱗径など特徴が異なることが調べられている(久

保， 1949)。久保 (1949)は常呂)11と比べて網走川のサケは

小型であることを記しているが，年によって異なるものの

本研究ではそれとは必ずしも同じ結果とはなっていない。

北海道ではこれまでのサケ増殖事業において移殖放流が

数多く行われ(小林， 2009)，現在も地区内での移殖は行わ

れていることから，各河川に固有の系群が維持されている

とは言えない状況にある。それにも関らず，魚体サイズを

比較すると幌内川以北と湧別川|以南では若干ではあるが

差異が認められる。一般に魚体サイズは量的形質と考え

られており，遺伝的要因だけでなく環境要因によっても影

響を受けることから，この差が河川系群による違いとは断

言できないが，河川聞の違いが見られるので，ふ化放流事

業においても可能な限り河川系群の保全に配慮をするこ

とが重要であると考えられる。

本研究で河川別，年齢別，捕獲時期別，年別に魚体サイ

ズを比較すると様々な傾向がみられており，北海道のサケ

の魚体サイズに関してさらに分析をする必要がある。た

とえば，捕獲時期によって魚体サイズに差があり，早い時

期の遡上魚が大きく，時期が遅くなるにつれて小型となる

河川が多かった。同様の現象は古くから観察されている

(久保， 1949)。同一河川内に遡上時期の異なる繁殖集団が

存在する河川のあることが知られているが (Beacham，

1984; Yokotani et al.， 2009)，本研究で観察された魚体サイ

ズの違いが遡上時期別の個体群の持つ特性によるものか

ははっきりしない。頓別川と幌内川のように捕獲旬によ

る魚体サイズに差がみられない河川があることも興味深

し、。

地理的に近隣に位置する徳志別川と頓別川では魚体サ

イズにも違いがみられるが，徳志別川の捕獲場は河口から

数百mの地点で、あるのに対して，頓別)11の捕獲場は河口か

ら7km以上も上流に位置しており，捕獲場の位置が大きく

異なる。その他の河川でも河口からの捕獲場までの距離

はそれぞれ異なり，サケが海から河川に遡上した後，捕獲

されるまでの時間や行動が河川によって異なるものと考

えられる。このことが捕獲時期別の魚体サイズに影響し

ている可能性も否定はできない。

本研究での調査河川のうち，幌内川は， Beacham et al.

(2009)によるマ/(クロサテライトDNAによる系群解析に

おいて，斜里川，網走川，常呂川が構成したクラスターで

はなく，隣接する根室海区の河川のクラスターに位置して

いる。本研究でも幌内川は隣接する河川やオホーツク東

部あるいは中部の河川とは魚体サイズが異なる結果とな

っている。この現象について本研究では深く考察できる

データはないものの，今後，様々な研究アプローチで解析

すべき興味深い課題と言える。

また，魚体が顕著に小型であった2012年は河川聞の差も

小さかった CTab1e2)。北太平洋のサケでは1970年代以降

に小型化の傾向がみられ CIshidaet al.， 1993)，北海道で

1990年代にサケの来遊数が増加し始めた頃には成熟年齢

の高齢化と魚体の小型化が認められた(帰山，2000)02012年

に斜里川に回帰した雌の4年魚の平均尾叉長は61cm台と

なっており，小型化が最も顕著となった年代とほぼ同程度

となっている(帰山， 1999 ; Pig. 5)。河川別や時期別の魚

体サイズの差も含めたサケの成長については今後のサケ

の資源変動や資源管理を検討する上での重要な研究課題

となるものと考えられる。魚体サイズの変化を年聞や河

川間で比較する際には，本研究でみられたように同一河川

内でも捕獲時期によって魚体サイズが異なる傾向がみら

れるので，そのような影響を考慮した解析が必要となるも

のと考えられる。

謝辞

本研究におけるサケの魚体測定や採鱗，年齢査定の作業

は，一般社団法人北見管内さけ・ます増殖事業協会の皆様，

独立行政法人水産総合研究センター北海道区水産研究所

の各事業所の皆様，さけます・内水面水産試験場の多くの

職員と共同で実施しました。これらの皆様に厚くお礼申

し上げます。なお，本調査はさけます・内水面水産試験場

の経常研究「さけ・ます増殖事業安定化特別対策調査Jな

らびに一般社団法人北見管内さけ・ます増殖事業協会との

共同研究「オホーツク沿岸の海洋環境とサケ資源管理に関

する研究」の一環として実施した。

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62 和文要旨

北海道北部沿岸域におけるなまこけた網の漁獲効率の推

定

佐野稔，前田圭司，高柳志朗，和田雅昭，

畑中勝守，菊池肇，宮下和士

北海道北部沿岸域において，マナマコに対するなまこ

けた網の漁獲効率を推定した。漁船の操業日誌とGPSデ

ータから面積密度法により，グリッド別に漁期初めと漁

期終わりのCPUE(kg/m2)から資源量指数を求め，この差

を漁期中の延べ漁獲量で除して漁獲効率を算出した。こ

のグリッド別の漁獲効率のばらつきは，初期の資源量指

数に対する漁獲量の割合が大きくなれば小さくなった。

漁獲効率の分布図と海底地形の空間情報と重ね合わせて，

回帰木により精度の高い漁獲効率を抽出した。漁獲効率

は海底地形別で0.09~0.53，平均で0.29 となった。本手法

では，海底地形を考慮、してなまこけた網の漁獲効率を推

定することが可能である。

A493 北水試研報 84 1 -9 2013

北海道オホーツク海側の河川に遡上したサケの魚体サイ

ズの特徴

宮腰靖之，安藤大成，藤原真，

虎尾 充，隼野寛史， 卜部浩一

2010~2012年に北海道オホーツク海側の7河川に遡上

したサケの尾文長，体重および年齢を調べた。サケの魚

体サイズは北部の河川ほど大きい傾向がみられた。また

捕獲旬によっても魚体サイズは異なり，早い時期に捕獲

されたサケほど大きく，遅い時期に捕獲されたサケほど

小さい河川が多かった。捕獲時期を揃えて10月に捕獲さ

れたサケのサイズを比較すると差は小さくなったものの，

河川|差は有意で、あった。ただし， 2012年はいずれの河川

のサケも小型で、あり，年齢別，雌雄別に比較すると河川

差が見られない場合もあった。サケの魚体サイズの河川

聞や年による違いを比較する際には，年齢や捕獲時期を

考慮する必要があるものと考えられた。

A495 北水試研報 84 21-29 2013

異なる保存処理およびその後のホルマリン・ヱタノール

固定がサケ幼稚魚の魚体サイズに及ぼす影響

春日井潔

サケ Oncorhynchusketa幼稚魚の保存処理(冷凍・解

凍，冷蔵，冷蔵+冷凍・解凍)，および、その後のホルマリ

ン・エタノール固定が体サイズ(体長，体重) に与え

る影響を，異なる3サイズ群で検討した。体サイズは，保

存処理後では冷蔵した場合に増加した標本が見られたが，

大部分の標本では減少した。固定により体サイズはほと

んどの標本が保存後から減少した。生時と比較した固定

後の体サイズの減少は冷凍を経た場合に冷蔵後の固定，

もしくは固定のみより大きかった。保存または固定によ

る体サイズの変化の程度は魚体サイズにより異なった。

A494 北水試研報 84 11-19 2013

鵡川沿岸におけるシシャモ仔稚魚の分布と魚体の生化学

的性状

虎尾充，工 藤 智

2004~2006年の5~7月に鵡川河口沿岸においてソリネ

ット底層曳きでシシャモ仔稚魚の採集を行い，分布特性

と生化学指標の変化を調べた。シシャモ仔稚魚の出現時

期は5月中旬ないし6月中旬で，水温12~140Cで最も高い

CPUEを示した。採集されたシシャモの全長は9.3~

42.4mmの範囲にあり，体長組成は単峰型を示した。

RNAlDNA比は全長15~20mmで、4~12と比較的高い値を

示したが全長25mm程度にかけて急激に低下し，全

長30mm以上で2~6の範囲で安定した。 TGIPL比

は0.14~0.85の範囲で， 3年間とも全長とともに直線的に

増加する傾向があった。生化学指標は同一年級内でも一

定ではなく，サイズクラスによって変動した。

A496 北水試研報 84 31-38 2013