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東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について(建議)
-具体的取組及び検討状況、平成26年度概算要求への反映状況-
Ⅰ 東日本大震災についての科学技術・学術の観点からの検証(総論)
東日本大震災下において、機能した面、機能しなかった面等の検証は、参考資料7のとお
りである。東日本大震災は、我が国が内在的に抱えていた様々な課題を顕在化させた。また、
科学技術・学術に従事する者が、東日本大震災下において、国民の期待に十分に応えること
ができたとは言い難い。科学技術政策研究所の調査によると、東日本大震災により、科学者
や技術者に対する国民の信頼は低下している。これらの検証や調査結果を踏まえ、今後、政
策を進めるに当たっては、以下の3点(1.~3.)が重要である。
もとより、大学及び公的研究機関における研究は、知識の発見から技術的展開、社会実装
への段階に応じて、おおむね、基礎研究(basic research)、応用研究(applied research)、
開発研究(development research)の3段階の研究に分類される。そのいずれの段階におい
ても、
①個々の研究者の内在的動機に基づき、自己責任の下で進められ、真理の探究や課題解決と
ともに新しい課題の発見が重視される学術研究(academic research)、
②政府が設定する目標や分野に基づき、選択と集中の理念と立案者(政府)と実行者(研究
者)の協同による目標管理の下で進められ、課題解決が重視される研究(strategic
research)(以下「戦略研究」という)、
③政府からの要請に基づき、定められた研究目的や研究内容の下で、社会的実践効果の確保
のために進められる研究(commissioned research)(以下「要請研究」という)
の3つの方法により行われる。また、研究目標に応じて、個人研究、組織としての研究、組
織間共同研究、さらに社会総がかりの研究や国際共同研究を行う必要がある。今後、政策を
進めるに当たっては、それぞれの研究段階や研究方法、研究機関の特性を踏まえ、資金配分
や評価の手法を最適なものとし、成果の最大化を図るべきである。
なお、戦略研究の課題には、必ずしも社会的課題に限らず、基礎科学や技術開発に関わる
特に重要な課題も含まれることに留意が必要である。
1.社会要請の十分な認識の必要性
【研究者等の「社会リテラシー」※の向上】
① 東日本大震災により低下した研究者や技術者への国民の信頼を回復するとともに、科学技
術に対する国民の期待に応えていくため、国民との相互理解を基に政策を形成していくこと
が必要である。しかし、現状では、国民や社会と、研究者、技術者、政策立案担当者など科
学技術・学術に従事する者(以下「研究者等」という)との対話が不足しているため、研究
者等が、社会の要請を十分に認識しているとは言い難い。
研究者等は、学術の深化と科学技術の進展に努めるにとどまらず、社会との対話など多様
な手段により、自ら積極的に社会から学ぶことで、「社会リテラシー」を向上させ、社会の
要請を十分に認識するとともに、自らの研究と社会との関わりの重要性について認識する必
要がある。その際、学協会などの研究者コミュニティと連携して取り組むことが必要である。
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国は、研究者等の「社会リテラシー」向上のための支援方策を検討すべきである。
A.具体的取組及び検討状況
○大学等の機関リポジトリの整備・普及、国立情報学研究所(NII)が提供する共用リポジ
トリの積極的な展開等を継続的に推進する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【国立情報学研究所】※ 運営費交付金の内数
<新しいステージに向けた学術情報ネットワーク(SINET)整備>
・大学等の機関リポジトリの整備・普及、国立情報学研究所(NII)が提供する共用リポ
ジトリの積極的な展開等を継続的に推進。
※「研究者等の『社会リテラシー』」の定義については、様々な捉え方があり得るが、本報告書においては、
「一般国民が、科学技術・学術に対し何を求めているのか、また、科学技術・学術に関する情報をどのよ
うに受けとめるのかを、一般国民の価値観や知識の多様性を踏まえつつ、適切に推測し、理解する能力。
また、こうした多様性に配慮しつつ、科学技術・学術に関する情報を適切に発信できる能力。」とする。
【公的資金を得て研究を行う意義】
① 国民の負託を受け公的資金を得て研究を行う政府、研究機関、研究者は、その意味を十分
に認識するとともに、国民や社会に対し、自らの政策や研究の意義、成果を説明する責任を
負う。
② 研究者等は、多様な社会的活動に参画するとともに、社会に研究への参加を求めることで、
社会の要請を認識するとともに、社会に対して積極的な応答を試みる必要がある。また、国
は、公的資金を投入して行う研究事業について、国民への説明責任を一層果たすための方策
を検討すべきである。
A.具体的取組及び検討状況
①②関係
○論文指標の分析結果等に基づき検討したところ、科研費が我が国の論文産出において量及
び質の両面で大きな役割を果たしており、それらが予算額の増加に対応して増大傾向にあ
ることなどが明らかになった。今後、研究種目や分野と論文指標の関係や分野ごとの特性
を踏まえた成果の評価の在り方等について詳細な検討を行い、その検討結果も踏まえて、
科研費の制度・運用に関する改善を引き続き実施する。
【学術研究の特性】
① 学術研究に従事する者が、自らの内在的動機に基づき行う研究は尊重されるべきであり、
これにより全体として研究の多様性が確保されるのであるが、同時に、学術研究に従事する
者には、課題解決とともに、長期的視点に立って自ら研究課題を探索し発見する行動も当然
求められる。
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【社会の要請を踏まえた人材育成】
① 国際情勢は激動しており、我が国は、時々刻々と変化している状況において、たくましく、
しなやかに生きていかなければならない。このためには、人材育成段階から柔軟な取組を行
っていくことが必要である。国は、産業界をはじめ社会がどのような人材を必要としている
のかを常に把握し、これらの要請を踏まえ、初等中等教育段階や高等教育段階での取組も重
視して、我が国の将来を支える多様な人材を育成していくことが必要である。特に、複雑化、
高度化する課題の解決のためには、社会に対する洞察力や、柔軟な発想、俯瞰的視点、国際
感覚とともに、個々人の総合的な取組能力や対応能力を身に付けた、創造性豊かな科学技術
イノベーション人材の養成に努めることが必要である。そのためには、高等教育政策(特に
大学院政策)と科学技術イノベーション政策の整合的な推進が必要である。
② また、国の意思で推進する戦略研究については、関係する人材の育成及び確保の重要性を
踏まえ、プロジェクト終了後においても当該分野を担う人材への継続的な配慮が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
①②関係
○現在科学技術・学術審議会人材委員会において、科学技術イノベーションを担う人材の
育成・確保に資する方策について検討を行っているところ。また、「我が国の研究開発力
の抜本的強化のための基本方針」において、「我が国の研究開発力強化の観点から、初等
中等教育、学部教育、とりわけ大学院教育の在り方や各教育段階の円滑な接続、連携の
強化について、中央教育審議会と連携した早急な検討の実施」との記述が盛り込まれた
ことを踏まえ、同方針の「3.世界最高水準の運営や人材育成システムの改革 (2)研
究人材育成システムの改革」に掲げられた論点を中心に、「中教審科学審意見交換会」に
おいて議論を行っているところ。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【科学技術人材育成のコンソーシアムの構築】2,700,000千円
・「創造性豊かな科学技術イノベーション人材の養成」や人材の育成・確保のため、大学等
でコンソーシアムを形成し、企業等とも連携して、若手研究人材や研究支援人材の流動
性を高めつつ、キャリアアップを図る新たな仕組みを構築。 【イノベーション創出人材の育成】2,500,000千円
・「創造性豊かな科学技術イノベーション人材の養成」のため、海外の大学や企業等と連携
しつつ、イノベーションを指向する人材養成プログラムを開発・実施する大学等を支援。
2.科学技術の課題解決のためのシステム化の必要性
【管理運用体制を含めたシステム化】
① 東日本大震災により、これまで多くの投資をしてきた我が国の研究開発の成果が、災害や
事故に際して必ずしも十分に機能しなかった面があったことが判明するなど、我が国の科学
技術に内在する課題が顕在化した。
例えば、今回の原子力発電所事故現場で、当初、計測のために投入されたのは日本製では
なく海外製のロボットであり、非常時を想定して開発されてきた日本のロボット技術がほと
んど活用されなかったことは遺憾である。これは、実際の災害現場での活用を想定した研究
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開発や管理運用体制の構築までを含めたシステム化が十分に行われていなかったことが原
因である。
② このように、我が国の研究開発は、新たな知識の獲得と要素技術の開発に偏りがちで、社
会における実際の運用までを総合的に考慮したシステム化が行われない傾向があり、研究開
発の成果が、縦割り構造により、現実の課題の解決や社会実装に結びつかない場合があると
考えられる。
A.具体的取組及び検討状況
①②関係
○大規模災害発生時には、被災地に多数の航空機が集結し、離着陸や給油・整備の集中、待
機時間の増加のほか、空中衝突の危険性が増大する。このため、災害救助機の最適な飛行
計画を割り当てる情報共有ネットワークの構築に関する研究開発を防災機関と協調して
実施する必要性がある。
B.平成26年度概算要求への反映状況
①②関係
【航空関連経費】
・建議の指摘事項を、災害救援機運用および安全性向上技術の研究開発の最終年度である平
成26年度の概算要求に反映。
【多様な専門知の結集によるシステム化】
① 課題解決のためには、多様な専門知の結集が必要であるが、東日本大震災により、例えば、
地震研究のように、異なる分野間の連携や融合、学際研究といった取組が我が国において活
発には行われていない実態が顕在化した。
このため、我が国に、多様な専門知の結集による実用化や社会実装までを考慮した課題解
決のためのシステムを定着させることが必要である。そのためには、まず、異なる分野間の
連携や融合等の重要性がこれまでも指摘されてきたにもかかわらず、十分に実行されてこな
かった原因を点検した上で、人文・社会科学も含めた幅広い分野の研究者や技術者、産業界、
金融機関等の関係機関、他省庁との連携を図り、現場のニーズや実際の運用上の課題を把握
するとともに、新たな社会的ニーズを発掘することが重要である。その上で、組織や分野を
超えた連携体制により、実用化、社会実装までの将来展望や出口戦略を作成し、それを基に、
基礎研究から実用化、社会実装までの全段階を通じて科学技術イノベーション創出に取り組
む仕組みが必要である。この際、関係する他省庁との連携による課題解決に向けた環境整備
が特に重要である。また、課題解決のためのシステム化を促進するため、施策や研究機関の
評価について、知の創造のみならず、成果の受け渡しなど、社会実装に至る全段階を通じた
取組を的確に評価するなど、新たな評価方法の確立が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○COI(センター・オブ・イノベーション)拠点に多様な関係者による「研究推進機構
(仮称)」を設置し、COI拠点としての基本戦略の策定、研究企画の立案、各研究課題
の運営管理等、構想段階から事業化に至るまでの拠点における活動全体のマネジメント
を行うとともに、対話型ワークショップの場として、新たなシーズ・ニーズ、アイディ
ア等について発掘するなど、COI拠点における戦略的研究開発と非顕在化シーズ・ニ
ーズのマッチング等を一体的に運営する。
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○平成24年度から、我が国の産業競争力強化に不可欠である希少元素の革新的な代替材料
を開発するため、物質中の元素機能の理論的解明から新材料の創製、特性評価までを密
接な連携・協働の下で一体的に推進する。文部科学省・経済産業省間で設置する「ガバ
ニングボード」で、両省のプロジェクト間の緊密な連携を確保し、基礎から実用化まで
一気通貫の研究開発を推進する。
○本建議の論点等を踏まえ、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」を見直
し改定する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【大学等シーズ・ニーズ創出強化支援事業】26,480,965千円の内数
・COI(センター・オブ・イノベーション)拠点に多様な関係者による「研究推進機構」
を設置し、COI拠点における研究開発活動の運営統括・マネジメントを行うとともに、
COI拠点の多様性を確保するために、拠点のビジョンやイメージに関する新たなシー
ズ・ニーズ・アイディア等をオープンイノベーションにより発掘するといった拠点の活
動を支援し、更なる高度化を図るために拡充。
【元素戦略プロジェクト】2,251,709千円
・関係する他省庁との連携による課題解決について、元素戦略プロジェクトにおいては、
経済産業省との間にガバニングボードを設置し、基礎から実用化まで一気通貫の研究開
発を推進する。
【研究及び開発の向上に関する評価環境の戦略的構築】27,648千円
・新たな評価システムの構築にあたり、「研究及び開発の向上に関する評価環境の戦略的構
築」において、必要な調査・検討・研修等を行う。
【「フューチャー・アース」構想の推進】800,000千円
※ JST運営費交付金の一部
・異なる分野間の連携や融合等の重要性、関係する他省庁との連携による課題解決に向け
た環境整備等について対応するために、「フューチャー・アース」構想の推進を平成 26
年度より新たに開始。
3.研究活動の前提としての公正性の確保
① 研究活動におけるデータ等の捏造や改ざん、不適切なオーサーシップ等の不正行為は、科
学技術・学術そのものに対する背信行為であり、国民の信頼を損ない、科学技術・学術の発
展を妨げるものであることから絶対に許されない。研究者の厳格な自己規律や研究者コミュ
ニティによる自浄作用が求められることは言をまたないが、大学、公的研究機関等において
は、研究者倫理の教育・研修を実施する等その周知徹底が求められる。研究費を配分する機
関において、不正行為防止の取組についてのチェックをより適切に行うなど、不正行為をな
くすための取組を強化すべきである。
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② また、公的研究費の不正使用等についても、大学、公的研究機関等においては、研究者へ
の周知徹底を図るとともに、抑止機能のある公的研究費の管理及び監査体制の構築が求めら
れる。
A.具体的取組及び検討状況
①②関係
○9月26日に文部科学省の「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフ
ォース」において中間とりまとめを公表。今後、ここで打ち出された方向性を踏まえ、
現行のガイドラインの見直し・運用改善を行うため、下記の通り検討を進めているとこ
ろ。この他、倫理教育の強化を図るため、大学や研究機関等における体制整備や倫理教
育プログラムの開発などについても引き続き検討していく予定。
・「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」(平成18年8月 科学技術・学術審議会
研究活動の不正行為に関する特別委員会決定)について、有識者の協力を得て見直し・
運用改善を行い、実効性を高める方向で検討中。検討に当たっては、日本学術会議とも
連携を図る予定。
・「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」(平成19年2月
文部科学大臣決定)について、有識者会議における議論も踏まえ、大学、研究機関等に
おける公的研究費の不正使用防止のための管理・監査体制の主体的改善・充実をより一
層推進していく予定。
B.平成26年度概算要求への反映状況
①②関係
【研究不正の防止に向けた取組】61,071千円
うち、「研究倫理教育プログラムの開発の支援」 56,250千円
・研究者としての行動規範を身につけるためのe-learningによる研究倫理教育プログラ
ムの開発、教材作りを行う。 うち、「研究倫理に関する調査研究」 4,821千円
・研究不正事案の収集・分析、事前防止の仕組みを含めた外国の事例や先進的取組の調査
など、研究倫理に関する調査研究を実施。
【競争的資金調整経費】8,992千円
・「公的研究費の管理監査のガイドラインの実施等に関する履行状況調査」においてフォロ
ーアップ調査などを実施し、大学、研究機関等における公的研究費の不正使用防止のた
めの管理・監査体制の主体的改善・充実を一層促進する。
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Ⅱ 地震及び防災に関する検証、復興、再生及び安全性への貢献
東日本大震災発生の可能性等を事前に国民に十分伝えられなかったこと及び発生後に適切
な措置が十分に取られなかったことが、被害の深刻化を招いたことに鑑み、地震及び防災に
関する従来の取組を十分検証する必要がある。また、安全・安心な社会の実現や防災力向上
のための研究開発について、政府全体として責任を持った対応が必要である。
1.地震及び防災に関する従来の取組方針の検証
【地震研究等の抜本的見直し】
① 今般の大地震発生やそれに伴う巨大な津波の発生の可能性を事前に国民に十分伝えられ
なかったことが、被害の深刻化を招くこととなった。その理由を検証したところ、特定のモ
デルにとらわれすぎていたことなど、日本海溝軸付近で発生する地震がマグニチュード 9
に達する可能性を評価する取組が不足していたことや、このような地震や津波に対する観測、
情報発表の体制が不十分であったことが判明した。
このため、地震、火山、防災に関わる自然科学のみならず、社会学、考古学、歴史学等の
人文・社会科学も含めた研究体制を構築し、歴史資料を含めあらゆる情報を収集するととも
に、他の地震多発国とも一層連携を図ることにより、総合的かつ学際的に研究を推進する必
要がある。また、今般の大地震に代表されるような低頻度で大規模な自然現象を正しく評価
するとともに、防災や減災に十分に貢献できるよう、研究手法や研究体制の抜本的見直しを
早急に行う必要がある。さらに、地震学や火山学などの現状を国民に対して丁寧に説明する
とともに、科学的見地から、自然災害に対して地方自治体が適切な防災対策を取ることがで
きるよう、助言を行う取組が必要である。また、大学等の知見については、その専門性の高
さや成果が散逸している等の理由により、地方自治体が防災対策に十分に活用できていない
状況にあるため改善が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○地震研究にあたり、人文・社会科学分野の研究者や、外国の研究者との連携を強化し、総
合的かつ学際的に研究を推進する。また、東北地方太平洋沖地震のような低頻度大規模自
然現象を対象とした研究を推進する。特に、今後の地震防災にとって極めて重要で、かつ
緊急に開始しなければ現象を取り逃すおそれのある以下の事項について推進する。
(1)海溝付近で起こる超巨大地震の発生機構の解明
(2)超巨大地震の発生による日本列島規模の応力場の変化に伴う地震活動及び火山活動
に関する研究 ○平成26年度からの次期研究計画において、地震・火山噴火予知のみではなく、防災や減
災に幅広く貢献できるように災害誘因(ハザード)の研究を行う。その際、理学だけでは
なく工学、人文・社会科学等の関連研究分野との連携を図る。このために、実施計画の立
案、実施、成果報告の各段階で、関係研究分野の研究者の参画の仕組みを構築する。 ○防災の専門家と連携し,住民や行政機関とこれまで以上に真摯に向き合い,地震や火山の
研究の現状を分かりやすく継続的に説明するとともに,地震や火山噴火の仕組み,それに
よる災害,防災・減災の知識について一層のアウトリーチ活動を推進する。 ○地域における重点的な地震防災研究で得た最新の科学的知見を、自治体の防災対策に資す
るため、地域研究会等を介して助言を行う取組を引き続き推進する。
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○地域の防災力向上のための研究開発として、既知の研究成果が専門性の高さや散逸してい
る等の理由により、防災対策に十分に活用されていない状況を克服するための取組を引き
続き推進する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【日本海地震・津波調査プロジェクト及び南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト】
1,080,031千円
・日本海地震・津波調査プロジェクト及び南海トラフ広域地震防災研究プロジェクトにお
いて、地域における重点的な地震防災研究で得た最新の科学的知見を、地域研究会等によ
り地域に展開する。
【地域防災対策支援研究プロジェクト】50,000千円
・地域防災対策支援研究プロジェクトにおいて、地域の防災力向上のため、既知の研究成
果の防災対策への活用を促進する。
② これらを踏まえ、地震及び火山に関する新たな研究計画を策定すべきである。
A.具体的取組及び検討状況
○人文・社会科学や防災等の他分野との連携を強化するとともに,低頻度大規模現象も対象
に加えた新たな地震・火山噴火の観測研究計画を策定する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
①②関係
【災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(仮称)】
※ 国立大学法人の運営費交付金等の内数
・平成26年度からの地震・火山研究の計画において、地震・火山噴火予知のみではなく、
防災や減災に幅広く貢献できるように災害誘因(ハザード)の研究を行う。その際、理学
だけではなく工学、人文・社会科学等の関連研究分野との連携を図る。このために、実施
計画の立案、実施、成果報告の各段階で、関係研究分野の研究者の参画の仕組みを構築す
る。
・超巨大地震に関する研究計画は平成24年11月28日に関係大臣に建議した際に見直し計
画に追加したが、平成26年度からの計画においても引き続き推進する。
【環境変化に強い基盤の構築】
① 東日本大震災により、防災の重要性が改めて認識された。研究者等は、社会との対話によ
り、国民の声を十分取り入れた上で、国民の生命や財産を守るために何が必要かを専門的見
地から追求する必要がある。その際、研究者等には、「ムラ」意識からの脱却が求められ、
分野横断的な幅広い見地からの検討が求められる。また、専門家としての立場で出来ること
と出来ないことの区別を明確に示し、能力、役割を越えることについては、関係機関等と密
接な連携を図るべきである。
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② 現状では、災害発生直後の対策は講じられてきているが、災害発生から回復までの間はほ
とんど考慮されていない。今後は、災害後に生活を速やかに回復するための、総合的、学際
的な、社会の復元力を考慮した復興対策が重要である。
例えば、減災対策も含めた各種災害からの復旧、復興に係る課題を対象とする新たな研究
領域を確立し、理工系のみならず医学系や人文・社会科学系などの分野や組織を超えた連携
により、時間軸も含め組織的かつ体系的な研究推進体制を整備し、世界中の災害への対策と
迅速かつ効率的な復旧、復興に寄与すべきである。
A.具体的取組及び検討状況
○都市の早期復旧や事業継続を図るために、地震後の建物の安全性を速やかに判断して継続
利用を行うシステムを開発するとともに、地域の人口変動などの社会情勢を考慮した、都
市計画的な立場での統合的な震災前復興計画の策定に資する議論や研究への取組を引き
続き推進する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト及び南海トラフ広域地震防災
研究プロジェクト】980,480千円
・都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト及び南海トラフ広域地震防災研
究プロジェクトにおいて、都市の早期復旧や事業継続を図るために、地震後の建物の安全
性を速やかに判断して継続利用を行うシステムの開発や統合的な震災前復興計画の策定
に資する研究等に取り組む。 【「フューチャー・アース」構想の推進】(再掲) 800,000千円
※ JST運営費交付金の一部
・理工系のみならず人文・社会科学系などの分野や組織を超えた連携により、時間軸も含め
組織的かつ体系的な研究推進体制を整備し、世界中の災害への対策と迅速かつ効率的な復
旧、復興への寄与ついて対応するために、「フューチャー・アース」構想の推進を平成26
年度より新たに開始。
③ 東日本大震災発生直後に、事故関連の情報が不足し、離日する外国人研究者が続出したこ
とを踏まえ、災害時に、迅速かつ正確に外国人研究者に対しても情報を提供するための仕組
みが必要である。
④ また、災害時において、研究への影響を最小限にし、研究が継続できる体制を構築するこ
とが必要であり、研究資源の分散管理、別機関での研究者等の受入れ体制の整備、研究基盤
間のネットワーク構築等のリスク分散に向けた取組を推進することが有効である。
A.具体的取組及び検討状況
○産学官が共用可能な研究施設・設備の拡大を進めるため、共用施設・設備の適切な利用料
金の考え方(海外企業による利用の取扱いなど)の明確化の検討を実施。更に研究施設・
設備のネットワークなどによる研究開発プラットフォームの構築に必要となる具体的取
組について引き続き検討を進める。 ○平成24年度から、情報基盤について、耐災害性強化、データ処理能力の向上、低消費電
力化を進めるため、最適なシステム構成やデバイス及びその制御手法等について研究開発
を実施している。
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○平成25年度から耐災害性の強化等の観点から、大学間でクラウド基盤を連携、共有する
アカデミッククラウド環境構築の在り方について検討を行っている。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【未来社会実現のためのICT基盤技術の研究開発】1,676,000千円の内数
・「災害時において、研究への影響を最小限にし、研究が継続できる体制を構築することが
必要」について、「未来社会実現のためのICT基盤技術の研究開発」のうち、「ビッグデー
タ利活用のための研究開発と人材育成」において、スピントロニクス技術や高機能高可用
性ストレージ基盤技術により、システムを超低消費電力、耐災害性に優れたものとするデ
バイスの開発等を推進。
【先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業】1,563,178千円
・「研究基盤間のネットワーク構築等のリスク分散に向けた取組推進」について、先端研究
基盤共用・プラットフォーム形成事業において、大学・独法等が所有する先端研究施設・
設備の産学官への共用を促進するとともに、これらの研究施設・設備間の機能別ネットワ
ーク化等により、多様な利用ニーズに効果的に対応するプラットフォーム形成を推進。
【ナノテクノロジープラットフォーム】2,299,021千円
・「研究基盤間のネットワーク構築」について、ナノテクノロジープラットフォームにおい
て、ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が協
力して、全国的な共用体制を構築することで、産学官の利用者に対し、最先端設備の利用
機会と高度な技術支援の提供を推進。
2.安全・安心な社会の実現や防災力向上のための研究開発の在り方
① 災害や環境変化に強い、より安全・安心な社会を構築していくため、原子力発電所事故の
みならず、今回の地震や津波によってもたらされた様々な被害の状況や対応、復興過程を体
系的かつ科学的に調査、検証し、得られた課題や教訓を踏まえ、これまでの「想定」を見直
し、必要な対策を講じることが必要である。調査、検証には、自然科学と人文・社会科学の
専門的知見を結集する枠組みを構築することが必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○大学・法人等をはじめとした放射線医科学に係る総合的な研究開発に関する方策の策定に
ついて調査検討を行っている。
② また、科学技術の限界を踏まえ、「想定外」の事象が起こり得ることも認識した上で、事
前にこうしたリスクに対応する必要がある。特に、確率的に発生頻度が低いと評価される事
象でも、発生した場合に被害規模が大きくなると予想されるものについては、それを無視し
たり、先送りしたりすることなく、必要なリスク管理のための対策を講じていくことが必要
である。この際、リスク管理の在り方について、国民と認識を共有し、合意形成を図ること
が必要である。
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③ また、これまでのハード主体の予防的手法や対症療法的アプローチのみならず、防災・危
機管理教育、災害経験の伝承、災害時の情報システムや医療システムの強化等のソフト面で
の対策の充実を図るとともに、リスクコミュニケーション等により、国民一人一人が、被害
を最小限にとどめるための備えを身に付けておくようにするなど、ハードとソフトが連携し
た総合的な研究開発を推進すべきである。
A.具体的取組及び検討状況
○平成24年度から、今後発生しうる災害等に備え、社会における具体的な問題の解決に向
けて、自然科学と人文・社会科学の双方にまたがる知見を活用し、大学、地域、市民、行
政・自治体、産業など、様々な関与者との協働により、社会実装を目指したハード・ソフ
ト両面からの総合的な研究開発を実施している。
○帰宅困難者や避難者、災害対応従事者等の円滑な応急・復旧対応を支援するためのシステ
ムと災害対応従事者の能力と一般市民の自助力・共助力を育成するためのシステムをそれ
ぞれ開発する取組を引き続き推進する。
○平成24年度から、情報基盤について、耐災害性強化、データ処理能力の向上、低消費電
力化を進めるため、最適なシステム構成やデバイス及びその制御手法等について研究開発
を実施している。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト】505,449千円
・都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクトにおいて、帰宅困難者や避難者、
災害対応従事者等の円滑な応急・復旧対応を支援するためのシステムと災害対応従事者の
能力と一般市民の自助力・共助力を育成するためのシステムをそれぞれ開発する。
【未来社会実現のためのICT基盤技術の研究開発】(再掲) 1,676,000千円の内数
・「ハードとソフトが連携した総合的な研究開発を推進すべき」について、「未来社会実現の
ためのICT基盤技術の研究開発」のうち、「ビッグデータ利活用のための研究開発と人材
育成」において、スピントロニクス技術や高機能高可用性ストレージ基盤技術により、シ
ステムを超低消費電力、耐災害性に優れたものとするデバイスの開発等を推進。
④ 多様化、複雑化する脅威に対応するため、府省の枠を越えた分野横断的な研究開発が必要
であり、分野を超えたネットワークの構築が必要である。具体的には、関係府省との連携の
下、地域の大学等が核となり、産学官が一体となった体制を構築するとともに、総合的な防
災研究開発を推進し、その成果を当該地域で実践することによって地域の防災力を強化すべ
きである。また、短期的な必要性のみにとらわれることなく、科学技術の発展の方向性に関
する中長期的視点も踏まえた継続的な研究開発が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○地域の大学等が核となり、産学官が一体となった体制を構築し、理学・工学・社会科学の
総合的防災研究開発を推進し、その成果を地域で実践することにより、地域の防災力を強
化する取組を引き続き推進する。
- 12 -
B.平成26年度概算要求への反映状況
【地域防災対策支援研究プロジェクト】50,000千円
・地域防災対策支援研究プロジェクトにおいて、地域の大学等が核となり、産学官が一体と
なった体制を構築し、理学・工学・社会科学の研究成果を地域に展開することにより、地
域の防災力の強化に貢献する取組を行う。
⑤ 災害対応研究は世界の共有知としての活用が見込まれるため、国が成果情報を取りまとめ
て発信することにより、国際的な研究交流の端緒とすべきである。
3.大学及び公的研究機関の復興支援
① 大学及び公的研究機関の成果や人材を、更に被災地の復興に役立てるため、様々な分野の
研究者等が、被災者の生活再建等に現場で関与していく体制作りが必要である。
② また、被災地の単なる復旧ではなく復興を目指すことが必要である。被災地は、関係者の
多大な尽力と取組により徐々に復旧し始めているが、引き続き、被災地自治体主導による、
地域の強みを生かした科学技術駆動型の地域発展モデル構築のための支援を行うとともに、
被災地の大学を含め全国の大学等の革新的技術シーズを被災地企業において実用化する取
組を支援し、被災地復興に貢献することが必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○東日本大震災の地震・津波により多量の瓦礫の堆積や藻場の喪失など東北太平洋沖の海洋
生態系が破壊された。また、地元の基幹産業であった水産加工業も甚大な被害を受けた。
これらに対応するため、以下の2つの取り組みを推進する。
① 洋生態系の調査研究
震災前から東北地方に拠点を有していた東北大学や東京大学及び沖合域の調査に強み
を持つ(独)海洋研究開発機構を中核機関として、女川湾や大槌湾などをモデル海域
として、東北地方の主要海域の調査研究を実施。得られたデータを地元漁協や自治体
等に提供し、養殖場の設定や漁業計画の策定に貢献している。
② 新たな産業の創成につながる技術開発
東北の海の資源を有効に活用した新たな産業を東北地方で創出するため、全国の研
究者が持つ技術シーズの中から産業化が特に有望な8課題を採択。有用魚種の養殖技
術の高度化や水産加工技術の高度化等の課題を実施。
○地域の強みを活かした科学技術駆動型の地域発展モデル構築のための支援(地域イノベー
ション戦略支援プログラム(東日本大震災復興支援型))を行うとともに、東北経済連合
会を始めとする産業・経済団体や自治体と連携のもと、マッチングプランナーによる被災
地産学共同研究支援及び被災地域の産業界が望む課題の解決に資する基礎研究への支援
(復興促進プログラム)を実施することで、被災地復興に貢献する
○「東日本大震災からの復興の基本方針」に基づき、東北の大学や製造業が強みを有するナ
ノテクノロジー・材料分野において、産学官の協働によるナノテクノロジー研究開発拠点
を東北大学に形成し、世界最先端の技術を活用した先端材料を開発することにより、東北
素材産業の発展を牽引し、東日本大震災からの復興に資する。
- 13 -
B.平成26年度概算要求への反映状況
【地域イノベーション戦略支援プログラム(東日本大震災復興支援型)】
1,504,882千円
・地域の強みを活かした科学技術駆動型の地域発展モデル構築のための支援(地域イノベー
ション戦略支援プログラム(東日本大震災復興支援型))を行い、被災地復興に貢献する
ために引き続き取組を実施。 【復興促進プログラム】1,608,273千円
・東北経済連合会を始めとする産業・経済団体や自治体と連携のもと、マッチングプランナ
ーによる被災地産学共同研究支援及び被災地域の産業界が望む課題の解決に資する基礎
研究への支援(復興促進プログラム)を実施することで被災地復興に貢献するために引き
続き取組を実施。 【東北マリンサイエンス拠点形成事業】1,523,376千円
・東日本大震災の地震・津波により多量の瓦礫の堆積や藻場の喪失など東北太平洋沖の海洋
生態系が破壊された。また、地元の基幹産業であった水産加工業も甚大な被害を受けた。
これらに対応するため、以下の2つの取り組みを推進する。 ①海洋生態系の調査研究
震災前から東北地方に拠点を有していた東北大学や東京大学及び沖合域の調査に強み
を持つ(独)海洋研究開発機構を中核機関として、女川湾や大槌湾などをモデル海域と
して、東北地方の主要海域の調査研究を実施。得られたデータを地元漁協や自治体等に
提供し、養殖場の設定や漁業計画の策定に貢献している。 ②新たな産業の創成につながる技術開発 東北の海の資源を有効に活用した新たな産業を東北地方で創出するため、全国の研究者
が持つ技術シーズの中から産業化が特に有望な8課題を採択。有用魚種の養殖技術の高
度化や水産加工技術の高度化等の課題を実施。 【東北発 素材技術先導プロジェクト】1,455,073千円
・被災地の大学を含め全国の大学等の革新的技術シーズを実用化する取組の支援として、東
北発 素材技術先導プロジェクトにおいては、東北地方の大学や製造業が強みを有するナ
ノテク・材料分野において、産学官協働によるナノテク研究開発拠点を形成し、東北産業
の発展を牽引。 【革新的エネルギー研究開発拠点形成】1,305,000千円
・地域の強みを生かした科学技術駆動型の地域発展モデル構築を支援し、被災地復興へ貢献
するため、引き続き革新的エネルギー研究開発拠点形成の事業を推進。 【東北復興のためのクリーンエネルギー研究開発推進】814,000千円
・地域の強みを生かした科学技術駆動型の地域発展モデル構築を支援し、被災地復興へ貢献
するため、引き続き東北復興のためのクリーンエネルギー研究開発推進の事業を推進。
- 14 -
Ⅲ 課題解決のための分野間連携・融合や学際研究
東日本大震災により、特に地震研究において、社会学、考古学、歴史学等の人文・社会科学
も含めた幅広い分野の知見を統合した研究が不足していたことが顕在化した。また、我が国で
は、伝統的な学問分野の体系に即した研究が多く行われており、学際領域の研究に臨機応変に
取り組むといった仕組みが不十分であると考えられる。高度化、複雑化する課題の発見、同定、
解決のためには、分野間連携・融合や学際研究が必要であり、こうした取組を促進することに
より、我が国に課題解決のためのシステムを定着させる必要がある。一方、科学技術政策研究
所の調査によると、社会の課題解決のために分野間連携・融合や学際研究が「なされている」
と考える専門家は、自然科学内については5割、自然科学と人文・社会科学間については2割
強にとどまっている。こうした現状を踏まえ、課題解決のための分野間連携・融合や学際研究
を促進し、課題解決のためのシステムを定着させるための取組として、特に以下の2点が重要
である。
1.課題解決のための政策誘導の必要性
① 課題解決のためには、課題の構成要素を明確にし、政策的に示さねばならない。一方、研
究者等は、現存する個別の知識、技術を結集した上で解決に向かうが、その際、個人で達成
できることは限定的であり、他者との連携による不足部分の充足など、目的達成のためのマ
ネジメントが必要である。
② Ⅰで述べたとおり、研究の目的や体制は多様であり、それぞれについて最も適切なマネジ
メントがなされるべきである。その重要な要素の一つが評価であり、研究者個人のみならず、
研究グループや研究プロジェクトの長、研究機関の長もその対象に含まれることは当然であ
る。
③ 我が国の財政状況が厳しい中、投入予算に対し最大の成果を上げることが重要であり、課
題解決につなげるための包括的な政策誘導が必要である。
【新たな評価システムの構築】
① 一般的に課題解決には多様な研究者等の参画が必要であるが、価値観がしばしば異なるた
め、研究プログラムの執行担当者、研究グループや研究プロジェクトの長が研究者に適切な
インセンティブを与える必要がある。特に論文主義に偏する研究者コミュニティの意識改革
を促す必要がある。このため、政府や大学、公的研究機関は、分野間連携・融合や学際研究
など、科学技術イノベーション政策の推進に資する研究を奨励し、ひいては、被評価者の能
力向上につなげるための新たな研究者評価システムを構築すべきである。例えば、
・分野間連携・融合や学際研究、国際連携といった横断的取組を行っているか、
・研究開始段階において、幅広い分野の関係者との協力に基づく、国際水準をも踏まえた課
題設定や出口戦略の作成といった取組を行っているか、
・産業構造の変化に対応した取組を行っているか、
・国民や社会に対し自らの研究の意義や成果を説明しているか、
といった課題解決に資する取組の観点を積極的に評価すべきである。一方で、研究の多様
性に配慮しつつも、こうした点を考慮していない研究については、的確に問題点を分析す
べきである。
② その上で、新たな考え方に基づく評価結果を、高い評価を得た研究者の処遇や資金配分に
積極的に反映させるなど、研究者の意識を課題解決に向け誘導していくことが重要である。
- 15 -
③ 新たに開発すべき評価システムは、多方面からの評価軸を設定するなど評価の多様性に配
慮したものであり、かつ、被評価者の能力向上につながるものとして肯定的に受け入れられ、
研究開発活動の改革、進展を促進するものでなければならない。評価システムの検討に当た
っては、国内外での優良な事例から学ぶことが重要である。また、いわゆる「評価疲れ」へ
の十分な配慮が必要である。
④ 大学において主流となる学術研究については、学問分野の特性に配慮しつつ、自ら研究課
題を探索し発見する取組を評価することが必要である。また、戦略研究のうちの特定の技術
開発研究や、要請研究、新しい融合領域を開拓する研究のように、論文作成が短期間では難
しい研究もあるため、こうした研究については、発表論文数や論文引用数に限った評価を行
わないよう配慮が必要である。応用研究、開発研究については、その目的に応じ、論文以外
の取組について積極的に評価することが必要である。
⑤ 戦略研究の目標達成はしばしばマネジメントの成否が鍵を握るため、個々の研究者のみな
らず、研究グループや研究プロジェクトの長や研究機関に対する適切な評価が不可欠である。
⑥ 研究活動を人材育成に活かしているかを評価の観点に加えるべきである。
⑦ 研究機関評価の際には、研究効率の更なる向上のため、例えば、研究者評価を踏まえた成
果最大化のための研究体制作りや、多様な専門知の結集による実用化や社会実装までを考慮
した取組などを積極的に評価するとともに、こうした観点についての評価結果を資金配分や
組織運営などに反映する取組が必要である。
⑧ また、施策の評価の際にも、我が国に課題解決のための研究開発システムを定着させると
いう視点が必要であり、成果を社会実装する産業界を含め様々な立場の専門家による評価が
必要である。
⑨ これらを踏まえ、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」を早急に改定す
べきである。
A.具体的取組及び検討状況
①~⑨関係
○本建議の論点等を踏まえ、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」を見直
し改定する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
①~⑨関係
【研究及び開発の向上に関する評価環境の戦略的構築】27,648千円
・新たな評価システムの構築について、「研究及び開発の向上に関する評価環境の戦略的構
築」において、必要な調査・検討・研修等を行う。
【研究者の能力が最大限発揮される環境の整備】
① 社会の変化に伴って生じる新たな課題に対応するためには、しばしば価値観の転換が求め
られる。
国際的な頭脳循環(ブレインサーキュレーション)が進み、人材獲得競争が激化する中、
我が国はその循環から取り残された状況にあるが、新たな研究の推進、研究効率の向上のた
め、研究体制を構築する際は、最適な研究者を、広く国内外から招聘することが必要である。
また、それを可能にするためには、若手研究者の広範な国際人脈網(ネットワーク)作りが
不可欠であり、その強化が必要である。
- 16 -
A.具体的取組及び検討状況
○「大規模学術フロンティア促進事業」により、国際的競争と協調による、国内外の研究者
が多数参画する学術の大規模プロジェクトを、ロードマップで示された優先度に基づき、
戦略的・計画的に推進する。 ○研究環境基盤部会の「大学共同利用機関法人及び大学共同利用機関の今後の在り方につい
て」(審議のまとめ)における、各種シンポジウム・セミナー等を通じた国外の若手研究
者・大学院生の受入の拡充や、国際共同研究の国内大学の取りまとめや海外の研究機関へ
の窓口としての機能の強化に関する提言を踏まえた、大学共同利用機関法人及び大学共同
利用機関の取組を推進する。 ○国際戦略委員会において、国際的な科学技術・学術関連施策の全体像及び課題を踏まえ、
我が国の科学技術・学術の国際戦略の在り方について検討予定。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【大規模学術フロンティア促進事業】※ 国立大学法人運営費交付金等の内数
・「大規模学術フロンティア促進事業」において、新規事業として「日本語の歴史的典籍の
国際共同研究ネットワーク構築計画」の事前評価を行い概算要求するなど、国内外の多数
の研究者が参画する学術の大規模プロジェクトを着実に推進。 【頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進事業】2,062,117千円
・「若手研究者の広範な国際人脈網(ネットワーク)の強化」について、「頭脳循環を加速す
る戦略的国際研究ネットワーク推進事業」において、我が国の高いポテンシャルを有する
研究グループが特定の研究領域で研究ネットワークを戦略的に形成できるよう事業を見
直し、海外のトップクラスの研究機関と研究者の派遣・受入れも行う大学等研究機関を重
点的に支援していくことで、「最適な研究者の国内外からの招聘」に資する。 【海外特別研究員事業】2,494,934千円
・「若手研究者の広範な国際人脈網(ネットワーク)の強化」について、「海外特別研究員事
業」において、海外派遣者数を拡充・充実させ、より多くの若手研究者に、多様な人材と
切磋琢磨でき、また世界第一線で活躍等できる環境を提供。 【外国人特別研究員事業】3,758,724千円
・「最適な研究者の国内外からの招聘」について、「外国人特別研究員事業」において、新規
採用者数を拡充させ、我が国の研究者と外国人研究者との研究協力関係を通じ、国際化の
進展を図っていくことで我が国における学術研究を推進。
② 異なる知識や方法論を持つ多種多様な人材が集い、チームとして力を最大限発揮すること
が重要であるため、研究現場において多様な視点や発想が取り入れられる体制作りや、研究
現場の原動力となっている若手研究者が活躍できる仕組み作りが必要である。また、依然と
して低水準にとどまっている女性研究者の割合を高める必要がある。
③ さらに、日本が世界をリードするためには、若手研究者をできるだけ早く、研究機関の適
切な支援の下で、孤立させることなく独立させるとともに、ハイリスクな研究にも挑戦し、
研究に打ち込める環境を整えていく必要がある。また、高度な専門性を持つ研究支援者等を
確保することが必要である。
- 17 -
A.具体的取組及び検討状況
②③関係
○科研費において、「若手研究」等により、若手研究者の自立を支援するとともに、「新学術
領域研究」により、多様な研究者の連携による共同研究や若手の人材育成等を通じた新た
な学問領域の形成等を支援する。
○科研費において、優れた若手研究者を支援するため、平成26年度公募から、日本学術振
興会の特別研究員(PD)の「特別研究員奨励費」以外の科研費への応募・受給を可能と
した。
○研究環境基盤部会の「大学共同利用機関法人及び大学共同利用機関の今後の在り方につい
て」(審議のまとめ)における若手研究者の育成に関する提言を踏まえた、大学共同利用
機関法人及び大学共同利用機関の取組を推進する。
○優秀な若手研究者が主体的に研究に専念できるよう研究奨励金を支給する「特別研究員事
業」を引き続き推進。
○若手研究者が自立して研究に専念できる整備するとともに、公正で透明性の高い人事制度
を構築し、研究リーダーとなる教員・研究者へと育成するため、「テニュアトラック普及・
定着事業」を引き続き推進。
○女性研究者が研究と出産・育児・介護等との両立を図り、その能力を最大限発揮すること
ができるよう、研究サポート体制の整備等を行う大学や公的研究機関を支援する「女性研
究者研究活動支援事業」を引き続き推進。
B.平成26年度概算要求への反映状況
②③関係
【科学研究費助成事業】234,884,000千円
・研究現場の原動力となっている若手研究者が活躍できる仕組みを作り、研究に打ち込める
環境を整えるとともに、若手研究者の創造性を育み、社会の多様な視点や柔軟な発想力を
有し、分野横断的、国際的なプロジェクトでリーダーシップを発揮できるような優れた人
材を育成し、活躍の場を与えることに資するため、科研費において以下の取り組みを拡充。 *優れた若手研究者の自立支援
(「若手研究(A)」の採択率の向上)
*日本学術振興会特別研究員(PD)の受入環境の整備
(「特別研究員奨励費」の一部に間接経費を措置)
*優れた若手研究者や外国人研究者のスムーズな研究活動のスタートを支援
(「研究活動スタート支援」の採択率の向上)
【科学技術人材育成のコンソーシアムの構築】2,700,000千円
・「高度な専門性を持つ研究支援者等を確保する」ため、大学等でコンソーシアムを形成し、
企業等とも連携して、若手研究人材や研究支援人材の流動性を高めつつ、キャリアアップ
を図る新たな仕組みを構築。
- 18 -
【テニュアトラック普及・定着事業】6,080,659千円
・「若手研究者が活躍できる仕組み」を作るため、テニュアトラック制(公正に選抜された若手
研究者が、安定的な職を得る前に、任期付きの雇用形態で自立した研究者として経験を積む仕組み)を実施
する大学等を支援。特に優秀な若手研究者を支援する「個人選抜型」を拡充。 【女性研究者研究活動支援事業】1,285,343千円
・女性研究者の割合を高め、研究力の向上を図る取組を大学等が連携して実施する「コンソ
ーシアム型」を新設。また、新たに、若手研究者夫婦の同居支援を実施。 【特別研究員事業】21,047,750千円
・我が国の学術研究の将来を担う優秀な若手研究者に対して研究奨励金を支給する特別研究
員(PD,SPD,RPD)制度の拡充。支給対象者数の増、支援期間の延長(3年→4年)、その他研
究費への応募制限を緩和。
④ 研究機関の長は、こうした観点も踏まえ、成果の最大化のための研究体制作りや国際水準
を踏まえた研究環境の整備を行うべきである。また、国は、研究機関における、こうした成
果最大化のための積極的な取組を支援すべきである。
A.具体的取組及び検討状況
○平成25年度から、世界水準の優れた研究大学群を増強するために、「研究大学強化促進費」
を創設し、大学等が行う、研究戦略や知的財産等を担う研究マネジメント人材(リサーチ・
アドミニストレーター)群の確保・活用や、競争力のある研究の加速化促進、先駆的な研
究分野の創出、国際水準の研究環境の整備などの集中的な研究環境改革を効果的に組み合
わせた取組を実施することを支援することとしており、平成25年度には22機関を採
択。【再掲】 ○研究環境基盤部会の「大学共同利用機関法人及び大学共同利用機関の今後の在り方につい
て」(審議のまとめ)における機構長のイニシアティブの下での複数の研究所の取組の融
合による新分野の創成に関する提言を踏まえた、大学共同利用機関法人及び大学共同利用
機関の取組を推進する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
①④関係
【研究大学強化促進費】8,800,000千円
・ 研究大学強化促進事業により、研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレータ
ー)群の確保・活用や、集中的な研究環境改革を効果的に組み合わせた取組を支援。
平成25年度からの10年間、研究に関する総合力の高い機関を選定し支援を行うこと
としており、平成26年度からはそれに加えて、研究に関して、特定の面で突出した力の
ある機関を追加選定し支援。
⑤ また、国及び資金配分機関は、PD(プログラムディレクター)、PO(プログラムオフ
ィサー)の権限と役割を明確化するなどにより、資金の投入効果が最大化されるようにすべ
きである。
- 19 -
⑥ さらに、我が国全体として、科学技術イノベーションを支える研究施設・設備等を俯瞰し
た上で、研究施設・設備の共用、高度化の推進、研究開発プロジェクトにおける共用施設・
設備の効果的利用促進、施設・設備間の連携促進といった取組を効果的に進めていくための
システム(研究開発プラットフォーム)の構築が必要である。加えて、今後戦略的に整備す
べき大型研究施設の検討に着手していくことが求められる。
A.具体的取組及び検討状況
○ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が緊密
に連携して、全国的な設備の共用体制を共同で構築。産学官の多様な利用者による設備
の共同利用を促進し、産業界や研究現場が有する技術的課題の解決への最短アプローチ
を提供するとともに、産学官連携や異分野融合を推進する。
○スーパーコンピュータ「京」を中核とし、国内の大学等のスパコンやストレージを高速
ネットワークでつなぎ、多様な利用者のニーズに応える革新的ハイパフォーマンス・コ
ンピューティング・インフラ(HPCI)を構築するとともに、科学的・社会的課題の解決
に資する画期的な成果創出に向けて利用・高度化を推進する。また、2020年頃までに「京」
の100倍の計算性能を有するエクサスケール※のスーパーコンピュータの実現を目指し、
ハードウェア等の設計・開発及びその性能を最大限に引き出すアプリケーションの開発
を行う。(平成26年度よりプロジェクト開始)
※1秒間に1エクサ回(=100万兆回=1,000ペタ回)以上の計算ができる能力。
(「京」は1秒間に1京回(=10ペタ回)の計算が可能)
○産学官が共用可能な研究施設・設備の拡大を進めるため、共用施設・設備の適切な利用
料金の考え方(海外企業による利用の取扱いなど)の明確化の検討を実施。更に研究施
設・設備のネットワークなどによる研究開発プラットフォームの構築に必要となる具体
的取組について引き続き検討を進める。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【ナノテクノロジープラットフォーム】2,299,021千円
・研究設備の共用について、ナノテクノロジープラットフォームにおいては、ナノテクノ
ロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が協力して、全国
的な共用体制を構築することで、産学官の利用者に対し、最先端設備の利用機会と高度
な技術支援の提供を推進。
【革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築】
<特定高速電子計算機施設の運営、特定先端大型研究施設利用促進、高機能演算研究基盤
構築のための研究開発、高機能演算研究基盤の高度利用事業>
15,749,885千円
・「研究施設・設備の共用、高度化の推進、研究開発プロジェクトにおける共用施設・設備
の効果的利用促進」について、スーパーコンピュータ「京」を含むHPCI(※)の構
築を引き続き進めるとともに、地震・津波の被害軽減や創薬プロセスの高度化等の画期
的な成果の創出に向けて、その利用・高度化を推進。
※「京」を中核とし、国内の大学等のスパコンやストレージを高速ネットワークでつなぎ、
多様な利用者ニーズに応える革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ
- 20 -
【ポスト「京」(エクサスケール・スーパーコンピュータ)の開発】
<次世代超高速電子計算機システムの開発・整備等、次世代超高速電子計算機システム利
用技術の研究開発>
3,000,000千円
・「建議」において指摘された「今後戦略的に整備すべき大型研究施設の検討に着手して
いくことが求められる」について、2020 年頃までに「京」の 100 倍の計算性能を有す
るエクサスケールのスーパーコンピュータの実現を目指し、ハードウェア等の設計・開
発及びその性能を最大限に引き出すアプリケーションの開発を行う。(平成26年度より
プロジェクト開始)。
【先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業】(再掲) 1,563,178千円
・「研究開発プラットフォーム構築」について、先端研究基盤共用・プラットフォーム形成
事業において、大学・独法等が所有する先端研究施設・設備の産学官への共用を促進す
るとともに、これらの研究施設・設備間の機能別ネットワーク化等により、多様な利用
ニーズに効果的に対応するプラットフォーム形成を推進。
⑦ また、大学共同利用機関や共同利用・共同研究拠点のような個々の大学の枠を越えて研究
者が共同で研究を行う体制を整備するとともに、大学や公的研究機関等の連携を促進するな
ど、研究手法や研究対象への視点を異にする複数の研究者の取組が融合することで、新たな
学問領域の創成や社会的な課題の解決への方途を拓くことが重要である。
A.具体的取組及び検討状況
○研究環境基盤部会の「大学共同利用機関法人及び大学共同利用機関の今後の在り方につい
て」(審議のまとめ)を踏まえた、大学共同利用機関法人及び大学共同利用機関の取組を
推進する。 ○「特色ある共同研究拠点の整備の推進事業」により、研究ポテンシャルのある公私立大学
の特色ある研究分野の研究所を学外の研究者の共同利用・共同研究に活用する取組を促進
する。また、事業の実施状況や成果を踏まえ、特色ある共同研究拠点の整備の今後の在り
方について検討する。 ○共同利用・共同研究拠点におけるこれまでの成果や研究者コミュニティの意向を踏まえた
取組等について中間評価を行うとともに、当該評価結果等を踏まえ、共同利用・共同研究
拠点の今後の在り方等について検討する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【特色ある共同研究拠点の整備の推進事業】320,906千円
・「特色ある共同研究拠点の整備の推進事業」により、研究ポテンシャルのある公私立大学
の特色ある研究分野の研究所を学外の研究者の共同利用・共同研究に活用する取組を促
進。 【国立大学法人運営費交付金】※ 国立大学法人運営費交付金の内数
・「国立大学法人運営費交付金」により、国立大学の共同利用・共同研究拠点の取組を推進。
- 21 -
①から④、⑦関係
【国立大学法人運営費交付金】※ 国立大学法人運営費交付金の内数
・国内外からの研究者の招聘や、共同研究体制の整備、若手研究者の育成等について、「国
立大学法人運営費交付金」により、研究環境基盤部会の「大学共同利用機関法人及び大学
共同利用機関の今後の在り方について」(審議のまとめ)を踏まえた大学共同利用機関法
人及び大学共同利用機関の取組を推進。
【基礎研究段階における政策誘導メカニズム】
① 基礎研究の段階においても、学際研究や分野間連携・融合を進めるための政策誘導的な
メカニズムの構築が必要である。内在的動機に基づく学術研究に最大限の敬意を払うべき
であるが、熾烈な国際競争の中、また国際共同が不可欠な状況において、分散的な個人研
究には限度がある。このため、社会の要請を踏まえつつ、科学技術コミュニティとの連携
によって課題を設定するとともに、学際的、国際的に専門知を結集した研究体制を構築し、
目標管理を行うといった、課題解決のための特別プログラムの創設が望ましい。
② 本審議会における基本方針や議論を踏まえて、推進すべき共同研究の課題を定めることに
より、政策の実現性を高めていく課題設定プロセスも必要である。その際、海外の学術動向
を継続的に把握することも重要である。
A.具体的取組及び検討状況
○平成25年度から、(独)日本学術振興会において、領域開拓、実社会対応、グローバル化
への視点を踏まえつつ、共同研究推進の事業・制度を安定的・継続的に運営するための仕組
を構築すべく、「課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業」を実施している。
○都市災害に対する被害軽減や早期復旧を課題とした3分野(理学、工学、社会科学)の研
究を、地震防災研究に関する国際的な交流を図りながら実施する取組を引き続き推進す
る。
B.平成26年度概算要求への反映状況
①②関係
【課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業】218,288千円
・「建議」や平成24年7月25日学術分科会報告(リスク社会の克服と知的社会の成熟に向
けた人文学及び社会科学の振興について)を踏まえ、(独)日本学術振興会において、領
域開拓、実社会対応、グローバル化への視点を踏まえつつ、共同研究推進の事業・制度を
安定的・継続的に運営するため「課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業」を
実施。(平成26年度は領域開拓プログラムを新規公募するため増額要求を行った。)
【都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト】(再掲)505,449千円
・都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクトにおいて、都市災害に対する被
害軽減や早期復旧を課題とした3分野(理学、工学、社会科学)の研究を実施する。
- 22 -
【自然科学と人文・社会科学の連携促進】
① 課題設定を自然科学に従事する者と人文・社会科学に従事する者が連携して行うとともに、
人文・社会科学に従事する者の一定以上の参加が採択要件として求められるプログラムや、
人文・社会科学に従事する者が主導する課題解決型プログラムの創設が必要である。その際、
研究活動自体が目的化することのないよう、課題解決の実現に向けたアクションプランが求
められる。
A.具体的取組及び検討状況
○地震防災研究戦略プロジェクトでは、人文・社会科学に従事する者が主導する課題解決型
プログラムを行い、システム開発にあたっての課題抽出から社会実装支援に向けた取組を
引き続き推進する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト】(再掲) 505,449千円
・都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクトにおいて、人文・社会科学に従
事する者が主導する課題解決型プログラムを実施する。
【「フューチャー・アース」構想の推進】(再掲) 800,000千円
※JST運営費交付金の一部
・課題設定を自然科学に従事する者と人文・社会科学に従事する者が連携して行うことへの
対応として、「フューチャー・アース」構想の推進を平成26年度より新たに開始。
② 基礎的な共同研究の成果を社会実装のレベルにまで引き上げていくには、自然科学中心の
プロジェクトの中にも人文・社会科学に従事する者の参画を採択要件として取り入れること
が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○平成26年度から、(独)日本学術振興会の「課題設定による先導的人文・社会科学研究推
進事業」において、諸学の密接な連携によるブレークスルーを目指した研究方法の革新を
目指すプログラムを実施する。
③ また、人文・社会科学が中心となった共同研究プロジェクトにおいて、その成果が自然科
学に裨益する場合には、社会的課題の解決に向け、様々な分野の知見を活用するより実装段
階に近い共同研究と連携を図ることも有益である。このためには、事業や制度の枠組みを越
えた展開が必要であり、展開方策を検討すべきである。
A.具体的取組及び検討状況
○平成25年度から、(独)日本学術振興会の「課題設定による先導的人文・社会科学研究推
進事業」において、研究成果と実務の橋渡しに重点を置いたプログラムを実施している。
- 23 -
B.平成26年度概算要求への反映状況
②③関係
【課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業】(再掲) 218,288千円
・「建議」や平成24年7月25日学術分科会報告(リスク社会の克服と知的社会の成熟に向
けた人文学及び社会科学の振興について)を踏まえ、(独)日本学術振興会において、領
域開拓、実社会対応、グローバル化への視点を踏まえつつ、共同研究推進の事業・制度を
安定的・継続的に運営するため「課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業」を
実施。(平成26年度は領域開拓プログラムを新規公募するため増額要求を行った。)
④ 人文・社会科学は、人間、文化、社会を研究対象とし、知的社会の推進に向けて重要な役
割を担っている。我が国における人文・社会科学の進展は、研究者個人の発想に委ねられる
傾向があるが、国内外に膨大な社会的基礎データや資料が蓄積していることから、新たな方
向への発展に向けた取組の可能性を検討すべきである。
⑤ また、これまで、大学等において、自然科学と人文・社会科学の連携促進のための取組が
行われてきているが、必ずしもうまくいっている状況ではない。このため、国は、これらの
取組の中で、優れた成果を上げているものがある場合は、広く情報提供し、普及させ、連携
促進のための取組を奨励すべきである。
2.分野間連携・融合や学際研究を支える人材育成
【学生や若手研究者の創造性の向上】
① 我が国に課題解決のためのシステムを定着させるためには、政策的に分野間連携・融合や
学際研究などの取組を促進するとともに、これらの新しい領域に挑戦する科学技術イノベー
ション人材を育成することが重要である。このため、学生や若手研究者の創造性を育むこと
が重要であり、社会の多様な視点や柔軟な発想力を有し、分野横断的、国際的なプロジェク
トでリーダーシップを発揮できるような優れた人材を育成し、活躍の場を与えるための取組
が必要である。この際、学生や若手研究者の主体性の確保が鍵であり、留意が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○研究環境基盤部会の「大学共同利用機関法人及び大学共同利用機関の今後の在り方につい
て」(審議のまとめ)における大学院教育への協力に対する能動的な対応や、若手研究者
の育成に関する提言を踏まえた、大学共同利用機関法人及び大学共同利用機関等の取組を
推進する。
○科研費において、「若手研究」等により、若手研究者の自立を支援するとともに、「新学術
領域研究」により、多様な研究者の連携による共同研究や若手の人材育成等を通じた新た
な学問領域の形成等を支援する。【再掲】
○科研費において、優れた若手研究者を支援するため、平成26年度公募から、日本学術振
興会の特別研究員(PD)の「特別研究員奨励費」以外の科研費への応募・受給を可能と
した。【再掲】
○専門分野の枠を超えた俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍する
リーダーを養成する「リーディング大学院」の構築を支援(「博士課程教育リーディング
プログラム」
- 24 -
○優秀な若手研究者が主体的に研究に専念できるよう研究奨励金を支給する「特別研究員事
業」を引き続き推進。 ○若手研究者が自立して研究に専念できる整備するとともに、公正で透明性の高い人事制度
を構築し、研究リーダーとなる教員・研究者へと育成するため、「テニュアトラック普及・
定着事業」を引き続き推進。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【国立大学法人運営費交付金】(再掲) ※ 国立大学法人運営費交付金の内数
・国内外からの研究者の招聘や、共同研究体制の整備、若手研究者の育成等について、「国
立大学法人運営費交付金」により、研究環境基盤部会の「大学共同利用機関法人及び大学
共同利用機関の今後の在り方について」(審議のまとめ)を踏まえた大学共同利用機関法
人及び大学共同利用機関の取組を推進。 【科学研究費助成事業】(再掲) 234,884,000千円
・研究現場の原動力となっている若手研究者が活躍できる仕組みを作り、研究に打ち込める
環境を整えるとともに、若手研究者の創造性を育み、社会の多様な視点や柔軟な発想力を
有し、分野横断的、国際的なプロジェクトでリーダーシップを発揮できるような優れた人
材を育成し、活躍の場を与えることに資するため、科研費において以下の取り組みを拡充。 *優れた若手研究者の自立支援
(「若手研究(A)」の採択率の向上)
*日本学術振興会特別研究員(PD)の受入環境の整備
(「特別研究員奨励費」の一部に間接経費を措置)
*優れた若手研究者や外国人研究者のスムーズな研究活動のスタートを支援
(「研究活動スタート支援」の採択率の向上) 【テニュアトラック普及・定着事業】(再掲)6,080,659千円
・「若手研究者の主体性の確保」を図るため、テニュアトラック制(公正に選抜された若手研究
者が、安定的な職を得る前に、任期付きの雇用形態で自立した研究者として経験を積む仕組み)を実施す
る大学等を支援。特に優秀な若手研究者を支援する「個人選抜型」を拡充。 【特別研究員事業】(再掲)21,047,750千円
・「若手研究者の主体性の確保」を図るため、我が国の学術研究の将来を担う優秀な若手研
究者に対して研究奨励金を支給する特別研究員(PD,SPD,RPD)制度の拡充。支給対象者数の
増、支援期間の延長(3年→4年)、その他研究費への応募制限を緩和。 【科学技術人材育成のコンソーシアムの構築】(再掲)2,700,000千円
・「実践的な教育と研究の一体的な振興に向けて組織的活動を強化する大学等の取組を積極
的に支援」するため、大学等でコンソーシアムを形成し、企業等とも連携して、若手研究
人材や研究支援人材の流動性を高めつつ、キャリアアップを図る新たな仕組みを構築。 【イノベーション創出人材の育成】2,500,000千円
・産学連携して「社会的課題の解決に資する人材育成を行う」ため、海外の大学や企業等と
連携しつつ、イノベーションを指向する人材養成プログラムを開発・実施する大学等を支
援。
- 25 -
【若手研究者の交流促進、教育プログラムの実施等】
① 研究機関や研究代表者が、若手研究者に、異分野を含めた研究活動や企業との共同研究等
へ主体的に参加することを推奨する仕組みや、若手研究者に対し新しい融合領域を開拓する
インセンティブを付与する仕組み等が必要である。また、異分野の若手研究者が集い、横断
的なプロジェクトを主体的に、共同で推進できるような支援枠の導入の検討が必要である。
② 大学等において、学部横断的、研究科横断的な履修や実社会との関連性を追求する教育プ
ログラムを実施するとともに、広く社会の人々と対話し、分野間連携・融合の実践を重ねる
研究者を評価することが重要である。また、キャリア開発のためのセミナー、長期インター
ンシップなど、若手研究者の多様なキャリアパス確立に向けた組織的な取組が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○企業等と連携してインターンシップを行うなど、若手研究者の多様なキャリアパスを確保
するシステムの構築を支援する「ポストドクター・キャリア開発事業」を実施。
○専門分野の枠を超えた俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍する
リーダーを養成する「リーディング大学院」の構築を支援(「博士課程教育リーディング
プログラム」
③ 我が国は、分野間連携・融合や科学技術イノベーションを牽引する人材の育成機能が必ず
しも十分とは言えない。このような人材の育成が大学・大学院教育の重要な使命であるとの
認識の下、大学は産業界と連携し、社会的課題の解決に資する人材育成を行う必要がある。
その際、実践的な教育と研究の一体的な振興を図る必要があり、国は、この実践に向けて組
織的活動を強化する大学等の取組を積極的に支援すべきである。また、我が国においては、
必ずしも博士課程修了者に対する評価が適切に行われていない場合もあり、優秀な学生が進
路選択をためらい、人材が育成されないといった悪循環も見られるため、改善に向けた一層
の対応が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○専門分野の枠を超えた俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍する
リーダーを養成する「リーディング大学院」の構築を支援。
(「博士課程教育リーディングプログラム」)
○優れた研究基盤を活かし高度な教育と研究を融合する卓越した拠点を有する大学に対し、
博士課程学生が学修研究に専念する環境を整備するために必要な経費を支援。
(「卓越した大学院拠点形成支援補助金」)
B.平成26年度概算要求への反映状況
②③関係
【イノベーション創出人材の育成】2,500,000千円
・「若手研究者の多様なキャリアパス確立に向け」て、海外の大学や企業等と連携しつつ、
イノベーションを指向する人材養成プログラムを開発・実施する大学等を支援。
- 26 -
【科学技術人材育成のコンソーシアムの構築】2,700,000千円
・「若手研究者の多様なキャリアパスの確立に向けた組織的な取組」として、大学等でコン
ソーシアムを形成し、企業等とも連携して、若手研究人材や研究支援人材の流動性を高め
つつ、キャリアアップを図る新たな仕組みを構築。 【博士課程教育リーディングプログラム】20,850,300千円
・優秀な学生を俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダー
へと導くため、国内外の第一級の教員・学生を結集し、産・学・官の参画を得つつ、専
門分野の枠を超えて博士課程前期・後期一貫した世界に通用する質の保証された学位プ
ログラムを構築・展開する大学院教育の抜本的改革を支援。 ③関係
【スーパーグローバル大学事業】15,600,000千円
・我が国の世界に冠たる教育研究レベルを誇るトップレベル大学のグローバル化に対して、
制度改革と組み合わせ制度と予算を総動員して支援し、これら大学の取組の中でグローバ
ルに活躍できる博士課程学生の育成を図る。
④ また、学会活動が分野縦割りで閉鎖的にならないようにするため、複数学会による共同シ
ンポジウムの開催や顕彰等の取組を積極的に推進する仕組みが必要である。
⑤ 平成24年度全国学力・学習状況調査の結果として、理科については、観察、実験の結果
などを整理、分析した上で、解釈、考察し、説明することなどに課題が見られること、「理
科の授業の内容はよく分かる」と回答した小学生の割合(86%)と中学生の割合(65%)
の差(21%)が他教科より大きいこと、といった課題が指摘されている。こうした課題に
対応するため、理数分野に関する素質や意欲を持つ生徒等が互いに切磋琢磨する機会を設け
るとともに、観察、実験や課題研究を通じ、科学技術と社会との関わりを学ぶことや、問題
解決的な学習を支援するなど、初等中等教育段階や高等教育段階を通じて、創造性豊かな科
学技術人材の育成に資する取組をより一層推進する必要がある。
A.具体的取組及び検討状況
○大学学部段階の「サイエンス・インカレ」、高校段階の「スーパーサイエンスハイスクー
ル」や「科学の甲子園」、中学段階の「科学の甲子園ジュニア」を実施し、創造性豊かな
科学技術人材の育成を総合的に推進する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
*【スーパーサイエンスハイスクール支援事業】2,874,000千円 *【サイエンス・チャレンジ・サポート】3,061,000千円
<「科学の甲子園」、「科学の甲子園ジュニア」、「グローバルサイエンスキャンパス」、「課
題探究型理数教育実践高校支援」を含む)> *【サイエンス・インカレ】66,893千円
・大学学部段階の「サイエンス・インカレ」、高校段階の「スーパーサイエンスハイスクー
ル」や「科学の甲子園」、中学段階の「科学の甲子園ジュニア」を実施し、創造性豊かな
科学技術人材の育成を総合的に推進するとともに、スーパーサイエンスハイスクール支援
- 27 -
事業と連携しつつ、高校段階の次世代人材育成の高度化等を推進するため、新たに「グロ
ーバルサイエンスキャンパス」や「課題探究型理数教育実践高校支援」を要求。
⑥ 創造性豊かな科学技術人材の育成のため、初等中等教育段階から高等教育段階まで、各教
育段階において、学習内容と社会との関連を理解できるよう、教育振興と科学技術振興を有
機的な連携の下で進めることが重要であり、その取組の強化が求められる。
⑦ 優れた研究成果を上げるためには、研究支援者や技術者等の存在が不可欠である。研究者
の研究活動の活性化や、研究開発マネジメントの強化による研究推進体制の充実強化等のた
め、研究支援者の育成、とりわけ研究企画や研究支援体制の核となるリサーチ・アドミニス
トレーターを育成、確保し、専門性が高く、かつ、安定的な職種として定着を図ることが重
要である。さらに、研究施設・設備の運転や技術の高度化、利活用に必要となる技術者等の
不足を解消することも求められている。このため、大学や公的研究機関における研究支援者
や技術者等の能力の適切な評価や位置づけの見直しも含めた研究基盤を支える人材の育成、
確保のための取組の促進や、これらの人材のキャリアパスに関する検討が必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○研究基盤を支える人材(研究者、研究支援者、技術者等)に要求されるスキルの明確化、
研究基盤を支える人材の養成確保策や活躍の場の拡大の検討を進める。 ○平成25年度から、世界水準の優れた研究大学群を増強するために、「研究大学強化促進費」
を創設し、大学等が行う、研究戦略や知的財産等を担う研究マネジメント人材(リサーチ・
アドミニストレーター)群の確保・活用や、競争力のある研究の加速化促進、先駆的な研
究分野の創出、国際水準の研究環境の整備などの集中的な研究環境改革を効果的に組み合
わせた取組を実施することを支援することとしており、平成25年度には22機関を採
択。【再掲】 ○リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備については、スキル標
準の策定、研修・教育プログラムの整備などを通じて、リサーチ・アドミニストレーター
(URA)を育成し、定着させるための全国的なシステムの整備を図るとともに、研究開発
に知見のある人材を大学等がURAとして活用・育成することを支援し、専門性の高い職種
としての定着を図っている。 ○「研究人材キャリア情報活用支援事業」において、JREC-IN(JST において運営している
研究人材の求職・求人等の情報システム)に、研究支援人材の情報システムをあわせて整
備する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【科学技術人材育成のコンソーシアムの構築】2,700,000千円
・「研究支援者の育成」のため、大学等でコンソーシアムを形成し、企業等とも連携して、
若手研究人材や研究支援人材の流動性を高めつつ、キャリアアップを図る新たな仕組みを
構築。 【リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備】867,335千円
・スキル標準や研修・教育プログラム等により、リサーチ・アドミニストレーター(URA)
を育成し、定着させるための全国的なシステムの整備を図るとともに、研究開発に知見の
- 28 -
ある人材を大学等がURAとして活用・育成することを支援し、専門性の高い職種としての
定着を図るための取組を引き続き実施。特に平成26年度においては、研修・教育プログ
ラム等の活用による研修等の実施や全国的なネットワークの構築に資する取組を実施す
ることにより、URAシステムの更なる定着を図る。 【研究大学強化促進費】(再掲) 8,800,000千円
・研究大学強化促進事業により、研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレータ
ー)群の確保・活用や、集中的な研究環境改革を効果的に組み合わせた取組を支援。
平成25年度からの10年間、研究に関する総合力の高い機関を選定し支援を行うこと
としており、平成26年度からはそれに加えて、研究に関して、特定の面で突出した力の
ある機関を追加選定し支援。 【先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業】(再掲) 1,563,178千円
・「研究基盤を支える人材の育成、確保」について、先端研究基盤共用・プラットフォーム
形成事業において、大学・独法等が所有する先端研究施設・設備の産学官への共用を促進
するために必要となる研究支援者や技術者等の人材の育成、確保を支援。 【ナノテクノロジープラットフォーム】(再掲)2,299,021千円
・「研究基盤を支える人材の育成、確保」について、ナノテクノロジープラットフォームに
おいて、大学・研究機関等が所有する最先端の研究設備の産学官への共用を促進するため
に必要となる研究支援者や技術者等の人件費を支援。
【中長期の海外派遣の促進等】
① 若手研究者の中長期の海外派遣を支援するため、海外での日本人研究者のネットワーク化
や帰国後の活躍の場の拡充等を含めた環境整備を推進することが必要である。また、研究推
進事業における審査や評価に、外国の研究機関への若手研究者の中長期派遣を積極的に評価
する視点を導入することが考えられる。また、日本滞在経験を持つ外国人研究者や知日派外
国人の協力も仰ぐべきである。さらに、科学技術政策の立案に携わる政府や大学、公的研究
機関の職員がグローバル化に対応していくことが必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○国際戦略委員会において、国際的な科学技術・学術関連施策の全体像及び課題を踏まえ、
我が国の科学技術・学術の国際戦略の在り方について検討予定。 ○国際戦略委員会における議論に、外国人有識者 1 名にアドバイザーとして参画を得てい
る。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進事業】(再掲)
2,062,117千円
・「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進事業」において、我が国の高いポ
テンシャルを有する研究グループが特定の研究領域で研究ネットワークを戦略的に形成
できるよう事業を見直し、海外のトップクラスの研究機関と研究者の派遣・受入れも行う
大学等研究機関を重点的に支援していくことで、「海外での日本人研究者のネットワーク
化や帰国後の活躍の場の拡充等を含めた環境整備」に資する。
- 29 -
【海外特別研究員事業】(再掲) 2,494,934千円
・「海外での日本人研究者のネットワーク化や帰国後の活躍の場の拡充等を含めた環境整備」
について、「海外特別研究員事業」において、海外派遣者数を拡充・充実させ、より多く
の若手研究者に、多様な人材と切磋琢磨でき、また世界第一線で活躍等できる環境を提供。
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Ⅳ 研究開発の成果の適切かつ効果的な活用
東日本大震災においては、ロボット技術のように、多くの投資をした我が国の研究開発の
成果が、災害や事故に際して必ずしも十分に機能しなかった面もあった。科学技術政策研究
所の調査によると、現状では、半数の専門家が、研究開発の成果が社会の抱える課題の解決
に「あまり結びついていない」と考えている。政策立案担当者を含め、科学技術・学術に従
事する者は、こうした現状を猛省する必要がある。現状を打破し、研究開発の成果が、課題
解決のために適切かつ効果的に活用されるための取組として、以下の2点が重要である。
1.社会的ニーズの把握と研究課題への反映
① 国民は、研究開発成果の社会への還元を求めている。成果が社会的課題解決のために有効
活用されるためには、研究課題を設定する段階で、幅広い分野の研究者、産業界、金融機関
等の関係機関、他省庁等との組織や分野を超えた連携体制の構築等により、縦割りの弊害を
なくし、様々な観点から実社会の現状を捉え、積極的に社会的ニーズを掘り起こすことが望
まれる。また、こうした連携体制の構築によって、新しい知識が技術化され、社会に役立つ
ことも想定される。いかに創造的な知見といえども、実用化、社会実装までの将来展望や出
口戦略、ビジネスモデルなくして社会に実装されることはない。国全体として、社会的ニー
ズを適切に課題に反映するための取組の促進が必要である。特に、政府が戦略研究の目標や
分野を設定する際には、短期的な必要性のみにとらわれることなく、科学技術の発展の方向
性に関する中長期的視点も踏まえた、実効性のある取組が求められる。
A.具体的取組及び検討状況
○地球観測分野において、広範な宇宙利用関係者のニーズ反映に向けて、関係する府省、
大学、産業界やJAXA等が参画するコミュニティ構築を検討中。
② また、産学官の連携により、科学技術の成果を、課題解決、社会実装に結びつける一方
で、社会のニーズが絶えず基礎研究の現場につながるネットワークの構築が必要であり、
全体的に責任をもって統括する司令塔と、その牽引エンジンとなる人材の育成の強化が必
要となる。その際、研究成果が放置されないようなマネジメントが重要である。
A.具体的取組及び検討状況
○COI(センター・オブ・イノベーション)拠点に多様な関係者による「研究推進機構
(仮称)」を設置し、COI拠点としての基本戦略の策定、研究企画の立案、各研究課題
の運営管理等、構想段階から事業化に至るまでの拠点における活動全体のマネジメント
を行うとともに、対話型ワークショップの場として、新たなシーズ・ニーズ、アイディ
ア等について発掘するなど、COI拠点における戦略的研究開発と非顕在化シーズ・ニ
ーズのマッチング等を一体的に運営する。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【大学等シーズ・ニーズ創出強化支援事業】(再掲)26,480,965千円の内数
・COI(センター・オブ・イノベーション)拠点に多様な関係者による「研究推進機構」
を設置し、COI拠点における研究開発活動の運営統括・マネジメントを行うとともに、
- 31 -
COI拠点の多様性を確保するために、拠点のビジョンやイメージに関する新たなシー
ズ・ニーズ・アイディア等をオープンイノベーションにより発掘するといった拠点の活
動を支援し、更なる高度化を図るために拡充。
③ 国の存立基盤はもとより多様である。我が国が主権国家として存続するため、いかなる
科学技術が必要かについて、常に考えることが重要である。このため、客観的な根拠に基
づく合理的なプロセスによる政策形成を目指して、経済、社会等の状況を多面的な視点か
ら把握、分析するための研究を更に推進することが重要である。また、政策決定プロセス
における透明性の確保や国民への説明責任に資する取組を行うことが重要であり、国は、
これらの取組を推進していく必要がある。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【科学技術イノベーション政策における政策のための科学の推進】698,793千円 【科学技術イノベーション政策の科学の推進に資する基盤的調査研究】50,810千円
・建議において指摘された、「経済、社会等の状況を多面的な視点から把握、分析するため
の研究を更に推進することが重要」、「政策決定プロセスにおける透明性の確保や国民へ
の説明責任に資する取組を行うことが重要」、について、「科学技術イノベーション政策
における政策のための科学」において具体的な政策オプションの立案の中核的拠点機能
の整備、データ情報基盤の整備等を推進。
2.研究開発成果を課題解決に結びつけるための方策
① 科学技術イノベーションを創出するためには、社会総がかりの仕組みが必要である。革
新的な課題設定の下、異分野の研究者等の結集や、我が国が有する卓越した先端研究基盤
の戦略的活用により、基礎研究から実用化までの全段階を通じて、戦略的な運営の下で研
究開発を進め、科学技術イノベーション創出に取り組むことが必要である。国家戦略に必
要な目標実現のため、国は実効性あるプロジェクトを創設すべきである。
② まず、国が主導して、各地域、各機関、各府省にとどまっている成果を、社会や市場の
要請に基づき、戦略的、効果的に集約するとともに、国が選定した人材による一貫した戦
略的マネジメントの下で、社会実装に至るまで取り組むことが重要である。
③ 欧米と比較すると、我が国の産学共同研究は規模が小さく、社会的インパクトの大きな
成果が生まれにくいことや、社会の要請に基づく産学連携拠点の整備が遅れているという
課題がある。このため、ハイリスクではあるが期待される効果が大きい研究テーマに対し、
研究フェーズに応じた産業界の関与、貢献を求めつつ、研究開発の推進、最先端の研究設
備の整備と戦略的活用、産学官が一体となった運営体制の構築、高度研究人材の招聘・養
成などのための支援を、国が重層的かつ集中的に行うなど、既存分野・組織の壁を取り払
い、研究開発の「死の谷」を克服する、世界と戦える大規模産学連携研究開発拠点(セン
ター・オブ・イノベーション)を構築する取組が重要である。その際、世界の潮流といえ
る、イノベーション創出のための研究と人材育成との一体的な制度設計が重要である。
A.具体的取組及び検討状況
○センター・オブ・イノベーション(COI)プログラムに関して、現在潜在している将来社
会のニーズから導き出されるあるべき社会の姿や暮らしのあり方(以下、「ビジョン」と
- 32 -
いう。)を設定し、このビジョンを基に 10 年後を見通した革新的な研究開発課題を特定
した上で、既存分野・組織の壁を取り払い、基礎研究段階から実用化を目指した産学連
携による研究開発を集中的に支援するため、COI拠点を選定し、拠点への支援を行う。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム】26,480,965千円の内数
・センター・オブ・イノベーション(COI)プログラムに関して、現在潜在している将来社
会のニーズから導き出されるあるべき社会の姿や暮らしのあり方(以下、「ビジョン」と
いう。)を設定し、このビジョンを基に 10 年後を見通した革新的な研究開発課題を特定
した上で、既存分野・組織の壁を取り払い、基礎研究段階から実用化を目指した産学連
携による研究開発を集中的に支援するため、COI拠点を選定し、拠点への支援をより一層
推進するための拡充。
④ 我が国が有する科学技術イノベーションを支える多様な研究基盤を、俯瞰的、包括的に
捉えることのできるシステムを構築し、ユーザーニーズに基づく基盤技術や機器の開発と
その効果的利用を図るため、当該システムの中核的機関を中心にユーザー側と技術や機器
の開発側との連携を促進する等の取組を行うことで、我が国が保有する研究基盤の力を最
大化していくことが必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○国産の研究機器が研究現場で積極的に整備導入されるための開発及び調達・普及方策の
検討を進める。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【先端計測分析技術・機器開発プログラム】5,585,178千円
・「ユーザーニーズに基づく基盤技術や機器の開発とその効果的利用を図る」について、先
端計測分析技術・機器開発プログラムにおいて、先端的な計測分析技術・機器・システ
ムの開発を産学連携で推進する。特に、新しいサイエンスの潮流を創りうる最先端の開
発成果について、ユーザー等と連携した高度化、デファクトスタンダード等を推進。
⑤ 戦略研究を主に担う研究開発法人については、研究開発成果の最大化と研究効率の向上
の観点から新たな法人制度を創設するとともに、研究開発の特性に配慮した制度運用の改
善を行うことにより、投入予算に対し、研究開発法人が、課題解決に最大限貢献し得る環
境を整備すべきである。
- 33 -
Ⅴ 社会への発信と対話
東日本大震災では、科学技術コミュニティから政府や社会に対し、その専門知を結集した
科学的知見が適切に提供されなかった。一方、メディアを通じ、様々な立場の専門家から異
なった見解が国民に示され、判断に迷う場面が多々あったと考えられる。また、政府や専門
家が、社会に対して、科学技術の限界や不確実性を踏まえた適時的確な情報を発信せず、リ
スクに関する社会との対話を進めてこなかったことも課題である。科学技術政策研究所の調
査によると、6割の専門家が、科学者、技術者や学協会などは、情報を受け取る立場に立っ
た適切な表現や方法では情報発信を行っていないと考えている。
これらを踏まえ、社会への発信や対話を一層促進するため、特に以下の2点が重要である。
1.科学的助言の在り方
① 現代社会の政策課題は高度化、複雑化しており、科学的知見は、政府の政策形成過程にお
ける不可欠な判断根拠である。このため、政府は、科学技術に関する顧問を設置するなど、
平常時や緊急時において、政府が適切な科学的助言を迅速に得るための仕組みを整備すべき
である。
② 政府への科学的助言は、明確な根拠を持って提示されることが大前提であり、科学的助言
の客観性や質の確保が必須である。このため、当該事案の検討を行うために必要な専門分野
の研究者を確保するとともに、互いの科学的知見に対し、建設的、客観的な観点から議論を
交わし、検証を行うことが必要である。研究者の意見の多様性を尊重し、結果として見解が
分かれる場合は、複数の選択肢として整理し、提示することが求められる。また、科学的知
見に不確実性がある場合はその旨を適切に提示することが求められる。
③ 政府は、科学的助言者の活動に政治的介入を加えてはならない。また、政府には、入手し
た科学的助言を公正に取り扱うことが求められる。政府は、科学的助言の公正な使用を担保
するため、先入観を持った判断や誤った解釈の付加、歪めた形での公表等をしてはならない
こと、科学的助言と相反する決定を行う場合はその根拠の説明が必要であること、利益相反
の扱いを厳格にすべきことなどに留意が必要である。
2.リスクコミュニケーションの在り方
① 科学技術には限界や不確実性があり、想定外の事象が起こり得ることも含め、リスクにつ
いて、地方自治体や地域の利害関係者、メディア等を含めた社会一般と、真摯な双方向の対
話と議論の積み上げを行い、合意形成を図ることが必要である。その際、例えば、すぐに「地
震予知」ができるとか、「ゼロリスク」が可能などと誤解されぬよう、リスクや安全性等に
関して、科学的、客観的な情報を、受け取る立場に立った適切な表現や方法で発信すること
が必要である。ただし、そもそも不確実な可能性のあるデータを、社会にどのように提示す
るかについては、その考え方をあらかじめ整理、検討しておく必要がある。
A.具体的取組及び検討状況
○安全・安心科学技術及び社会連携委員会において、リスクコミュニケーションの推進方策
を検討中。
○各分野の専門家がリスクに関わる際に、社会への責任を全うするため、専門家集団や組織
としてリスクコミュニケーションを行う取組を支援し、モデル化することを検討中。
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○3.11 後のリスクを含む科学コミュニケーションの在り方について、東日本震災における
リスクコミュニケーションのアクターにヒアリング、アンケート等による調査研究を実
施、文献調査とあわせ教訓集を作成しているところ(JST)。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【リスクを含む科学技術コミュニケーションの推進(JST)】39,900千円
・3.11 後のリスクを含む科学コミュニケーションの在り方について、東日本震災における
リスクコミュニケーションのアクターにヒアリング、アンケート等による調査研究を実
施、文献調査とあわせ教訓集を作成・共有化をはかる。また、平時のリスクコミュニケー
ションのためにリスク情報を集約化した一般向けのプラットフォームの構築を行う。
② 合理的なリスク管理政策は、科学的な見地から算出されるリスク評価結果を基に、費用対
効果をはじめとした様々な社会的、経済的視点を加味して検討される必要があるが、どのよ
うな社会的、経済的視点を、どう加味するか等、リスク管理についての考え方を、社会との
間で共有することが必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○安全・安心科学技術及び社会連携委員会において、リスクコミュニケーションの推進方策
を検討中。
③ 社会との合意形成は、国民と認識の共有化を図った上で適切に行わなければならない。こ
のため、国民の科学技術リテラシーやリスクリテラシーと、研究者等の社会リテラシーの双
方を向上させる必要がある。また、双方向の対話と議論の積み上げを通じて、国民との間で、
科学技術の社会的得失(リスクとベネフィット)を共有するとともに、国民が「個人の価値」
と「社会全体の価値」また、「個人の安全」と「社会全体の安全」を同じ次元で捉え、価値
判断を行うことができる環境を整えることが必要である。その際、国民のリスクの捉え方は、
科学的事実に加えて心理的影響も加味されることから、リスクの特性を的確に把握し、その
特性を踏まえてコミュニケーションを行う必要がある。
A.具体的取組及び検討状況
○安全・安心科学技術及び社会連携委員会において、リスクコミュニケーションの推進方策
を検討中。 ○3.11 後の科学リテラシーの向上を図るため、科学の暫定性、不確実性、答えのない問題
への対処につき特に考慮しながら、「生活の中のリスクにかかわる科学リテラシーの向上
に関する調査・研究」を含む「国民の科学リテラシーの向上に関する調査・研究」を進め
ているところ(JST)。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【リスクコミュニケーションのモデル形成事業】51,179千円
※ 科学技術に関する人材の育成・活躍促進及び理解増進の一部
・「建議」において指摘された研究者等の社会リテラシーの向上について、リスクコミュニ
ケーションのモデル形成事業において、専門家集団である学協会や大学等研究機関のリス
クコミュニケーションの取組を支援し、好事例のモデル化を行う。
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【リスクを含む科学技術コミュニケーションの推進(JST)】(再掲) 39,900千円
・社会の理解や信頼のもと科学技術を発展させていくため、リスクコミュニケーション、テ
クノロジーアセスメント等の取組強化が必要であることから、科学技術をめぐる議論の場
が日本社会に不断に創出される仕組みの研究開発を進めているところ。また、科学技術リ
テラシー向上にかかる教材等の科学館、学校等への普及・展開をはかる。
④ 科学技術への信頼を回復するためにも、社会とのコミュニケーションの強化が必要である。
具体的には、地方自治体職員、地域の利害関係者、メディア等との継続的な勉強会の開催や、
研究開発への参画を促すといった取組、研究者や技術士をはじめとした技術者の専門的能力
を生かした自発的な活動などが必要である。また、初等中等教育段階や高等教育段階での取
組も含め、国民の科学技術リテラシー向上を組織的に進める仕組みを構築し、科学技術の魅
力やその可能性を伝えるとともに、現時点における科学技術の実力(限界)についても、丁
寧に分かりやすく説明することが重要である。
A.具体的取組及び検討状況
○安全・安心科学技術及び社会連携委員会において、リスクコミュニケーションの推進方策
を検討中。
○各分野の専門家がリスクに関わる際に、社会への責任を全うするため、専門家集団や組織
としてリスクコミュニケーションを行う取組を支援し、モデル化することを検討中。
○社会の理解や信頼のもと科学技術を発展させていくため、リスクコミュニケーション、テ
クノロジーアセスメント等の取組強化が必要であることから、科学技術をめぐる議論の場
が日本社会に不断に創出される仕組みの研究開発を進めているところ。(科学館、大学等
の教育研究機関を拠点とした科学技術をめぐる参加型の議論の場、対話手法等の分析・調
査等)(JST)
B.平成26年度概算要求への反映状況
【リスクを含む科学技術コミュニケーションの推進(JST)】(再掲) 39,900千円
・3.11 後の科学リテラシーの向上を図るため、科学の暫定性、不確実性、答えのない問題
への対処につき特に考慮しながら、国民の科学リテラシーの向上に関する調査・研究を進
めているところ。また、研究者等に対するメディア対応研修、プレゼンテーション研修等
の研修を開発・実施する。
⑤ 国民との間でリスクを共有するためのコミュニケーションや国民の価値判断に資するコ
ミュニケーションの重要性がこれまでも指摘されてきたにもかかわらず、十分に実行されて
こなかった原因を点検し、社会実験を行い、具体的なコミュニケーション手法を、失敗事例
を含めて蓄積することが重要である。また、国は、その成果を広く共有し、国民とのコミュ
ニケーションを改善していく取組が重要である。
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A.具体的取組及び検討状況
○安全・安心科学技術及び社会連携委員会において、リスクコミュニケーションの推進方策
を検討中。
○3.11 後のリスクを含む科学コミュニケーションの在り方について、東日本震災における
リスクコミュニケーションのアクターにヒアリング、アンケート等による調査研究を実
施、文献調査とあわせ教訓集を作成しているところ(JST)。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【リスクを含む科学技術コミュニケーションの推進(JST)】(再掲) 39,900千円
・3.11 後のリスクを含む科学コミュニケーションの在り方について、東日本震災における
リスクコミュニケーションのアクターにヒアリング、アンケート等による調査研究を実
施、文献調査とあわせ教訓集を作成・共有化をはかる。
⑥ 科学技術分野における社会とのコミュニケーションの接点となる専門家の育成に努める
ことが必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○安全・安心科学技術及び社会連携委員会において、リスクコミュニケーションの推進方策
を検討中。
○各分野の専門家がリスクに関わる際に、社会への責任を全うするため、専門家集団や組織
としてリスクコミュニケーションを行う取組を支援し、モデル化することを検討中。
B.平成26年度概算要求への反映状況
【リスクコミュニケーションのモデル形成事業】(再掲) 51,179千円
※ 科学技術に関する人材の育成・活躍促進及び理解増進の一部
・「建議」において指摘された科学技術分野における社会とのコミュニケーションの接点と
なる専門家の育成について、リスクコミュニケーションのモデル形成事業において、専門
家集団である学協会や大学等研究機関のリスクコミュニケーションの取組を支援するこ
とを通して、専門家を育成。
⑦ 国は、これらを踏まえ、リスクコミュニケーションを推進するための効果的な科学技術コ
ミュニケーションの在り方について、検討を実施することが必要である。
A.具体的取組及び検討状況
○安全・安心科学技術及び社会連携委員会において、リスクコミュニケーションの推進方策
を検討中。