19
わが国のエネルギー 需給展望レビュー 東洋大学 経済学部 2006年1月19

わが国のエネルギー 需給展望レビューy-ogawa/Kouen_PDF/Kouen20060119.pdf · 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 (石油換算億トン) DOE-Ref DOE-High DOE-Low

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

わが国のエネルギー需給展望レビュー

東洋大学 経済学部

小 川 芳 樹

2006年1月19日

報 告 内 容

1.スタートおよびプロブレム:4つの問題

2.ゴール:世界とわが国の長期エネ需給展望

3.長期の将来像と道筋(ロードマップにかえて)

4.ドリーム:消費地としてのアジアの強みを

スタートおよびプロブレム:4つの問題

1.地球環境問題の台頭と環境制約- 第1約束期間(2008~2012年)の京都議定書目標

- 長期的な温室効果ガス大気濃度安定化の取り組み

2.原油価格の乱高下とアジア・プレミアム- 2000年以降の原油価格高騰と乱高下 2005年55ドル

- 90年代初めから続くアジアのエネルギー価格割高問題

3.アジアのエネ需要拡大とエネ安全保障- 中国、インド中心の堅調な経済成長とエネ需要拡大

- アジアの石油中東依存増大と今後も続く中東情勢の不安定

4.わが国の景気低迷長期化と構造改革- 失われた10年と90年代半ばからの規制緩和計画

- スーパーメジャーズへの統合とエネ・ボーダーレス化1‐1

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7 1 7

85 86 90898887 999897969594939291 00 01 02 03 04

(ドル/バレル)

湾岸危機 イラク戦争

ドバイ

ブレント

WTI

9.11テロ

価格大暴落

アジア経済危機

05

1996年以降の原油価格の乱高下

1‐2

世界とアジア途上国のエネ需給の推移と見通し

(出所)IEA, “World Energy Outlook 2004” のデータから作成

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

1971 1980 1990 2002 2010 2020 2030

(石油換算10億トン)

実 績 見通し

石炭

石油

ガス

水力他

原子力

世 界

0

1

2

3

4

5

1971 1980 1990 2002 2010 2020 2030

(石油換算10億トン)

実 績 見通し水力他

原子力

ガス

石油

石炭14%

15%

19%

23%

26%

28%

30%アジア途上

1‐3

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030

OECDアジア

中国

東アジア

南アジア

(100万バレル/日)

2.0

4.5

18.7

26.5

33.4

アジアにおける石油輸入の増大

(出所) BP 統計およびIEA, “World Energy Outlook 2004”のデータから作成 1‐4

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030

(石油換算億トン)

DOE-Ref

DOE-High

DOE-Low

IEAIEEJ

実績

世 界

アジア

18.8%

33.6%

36.2%

EC

ゴール:世界の長期エネ需給展望

(出所)

IEA: World Energy Outlook 2004, DOE: International Energy Outlook 2005IEEJ: Asian Energy Outlook 2004EC: World Energy, Technology and Climate Policy Outlook 2003

2‐1

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

1971 1986 2002 2010 2020 2030 2010 2020 2025 2010 2020 2030

(%)

実  績 IEA見通し 米DOE見通し EU見通し

石油

石炭

ガス

原子力

水力他

各長期見通しにおけるエネ源構成

2‐2(出所)IEA2004, US.DOE2005, EU2003のデータから作成

ゴール:わが国の長期エネ需給展望

5‐1

2‐3

ケースによるCO2排出量の変化

2‐4

2030年までのCO2排出量と京都目標

2‐5(出所)総合エネ調査会、「2030年のエネルギー需給展望」、2005年3月

エネ需給・産業構造の将来イメージ10 20 40 50化石燃料中心時代 化石・非化石共存時代

2000年 2030年 2060年

石油資源エネ価格

環境対応の進展

輸送部門の対応

技術革新の進展

エネ産業の形態

・ガソリン、軽油の内燃機関が中心

・10~15年まで自動車排ガス対策に力点

・20年までハイブリッドなど燃費改善中心

・20年までに化石起源の水素によるFC車が

 市場参入、30年へ向け部分普及

・非在来型も含め石油の資源問題なし

・石油、天然ガス、石炭の化石燃料中心

・天然ガス・シフトが穏やかに進展

・実質 20~25 $/B 水準で横這い推移

・NOx、PMなど大気汚染対策にも力点

・先進国を中心にCO2規制を段階的に強化

・途上国はCO2規制に緩やかに関与

・資源制約で石油のシェアが減少

・石油は輸送、石化のノーブルユースへ

・石炭、天然ガスからのGTL製造が活発化

・実質 30 $/B 水準から右肩上がりの推移

・濃度安定化に向けCO2規制の厳しい強化

・経済発展した途上国が本格参加するグ

ローバルなCO2規制の実施

・石油+GTLで液体燃料の内燃機関も共存

・FC、ハイブリッドなど多様技術の組合せ

・バイオマスからの液体燃料も利用拡大

・40年までに再生エネ起源の水素による燃

 料電池車が市場参入、60年へ向け普及

・トップランナーによる省エネ技術開発

・定置型燃料電池など小型分散電源の工夫

・CO2貯留技術の開発と実用化

・風力など再生可能エネの技術開発に注力

・次世代の小型安全原子炉の商業化

・CO2固定化、CO2リサイクル技術の開発

・再生可能エネのコスト低減と利用本格化

・水素社会の実現へ向けた技術革新本格化

・規制緩和による統合・再編で競争力強化

・ESCOなど顧客向けサービスに力点

・電力、ガス、石油の総合エネ産業化

・分散電源などを生かす地域のマルチユー

 ティリティ産業へ

・多様技術の登場で一層の総合エネ産業化

・水素社会、CO2リサイクル社会の基盤

・一段と効率的な地域エネ供給の実現

・水素供給インフラの拡大整備がエネ産業

 の課題に

2‐6

長期の将来像と道筋(ロードマッ

プにかえて)

3‐1

①現状趨勢シナリオ自然体でどのような道を進むか

②自律発展的シナリオイノベーションと環境意識は高まるか

③環境制約顕在化シナリオエネ消費が増大する中で環境制約は顕在化するか

④危機シナリオ資源を巡る国際的緊張が生ずることはあるか

将来展開の不確実性の幅を示すパス

ドリーム:消費地としてのアジアの強みを

①緊急時用石油備蓄の整備と協調利用システムの構築

②石油市場の整備

③消費地における燃料転換のフレキシビリティの強化

④消費者レベルの石油在庫の整備

⑤旧ソ連の石油ガス資源の開発と供給網の整備

⑥域内資源である石炭の有効利用技術の開発

⑦省エネルギー、環境保全技術の開発と普及

⑧競争力ある再生可能エネルギー、新エネルギー技術の開発

4‐1

石油市場のグローバルリンク

石油製品価格のリンク

原油価格のリンク原油の流れ

4‐2

最新の石炭火力発電所

バース

閉鎖系ベルトコンベアー

サイロ

4‐3

エネルギーのボーダーレス化と総合エネルギー産業

一次エネルギー

採掘権市場

一次エネルギー

市場

二次エネルギー

卸売市場

二次エネルギー

小売市場

エネルギー

最終需要

上流部門 下流部門 需要端

原油

LPG

LNG

パイプライン天然ガス

石炭

液体燃料販売

ガス販売

電力販売

石油化学

Gas to Liquid

石油精製

ガス化技術

発電

ハイブリッド自動車

燃料電池

ESCO

マイクロガス・タービン

4‐4

ガス化プロセスの利用

天然ガス

随伴ガス

重質残渣油

石炭・コークス

バイオマス

産業廃棄物

合成ガス製造工程

液体燃料合成工程 液体燃料精製工程

メタノール合 成

メタノール蒸 留

DME合 成

蒸 留 DME

FT合 成

ナフサ

ワックス

蒸 留

水素化分解 蒸 留

改 質 ガソリン

中間留分

GTL以外の利用

ガス化合成ガス

CO + H2

発 電 電 力

工業ガス

化学原料

GTLとしての利用

4‐5

消費地の強みを発揮するには技術開発とエネルギー・ミックス

• 消費地におけるフレキシビリティの追求⇒ これまでは個別のエネ需要を固定し供給面の対策を工夫⇒ これからは消費地における需要面のフレキシビリティも重要⇒ 原油と製品のミックス、燃料転換フレキシビリティ等

• 技術開発による強みの創造⇒ エネ消費を不用意に拡大しない省エネ技術の高度化⇒ 多様なエネ源の有効活用技術 クリーンコール、ガス化炉など⇒ 消費地の強さを高める技術開発の工夫でアジアの優位性を

• エネミックスの追求と総合エネ産業の確立⇒ 規制緩和でエネ産業間のしきいが外れボーダーレス化⇒ エネ源選択は消費地の強みを出す源泉 多様な選択肢必要⇒ 各エネ産業が強みを生かして総合エネ産業への脱皮が重要

4‐6