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「シーソーヒーティング法」を用いた高圧力中における熱電能測定 仲村大,辺土正人,高江洲義尚,内間清晴,矢ヶ崎克馬,仲間隆男,藤原哲也,繁岡透 Department of Physics and Earth Sciences, Faculty of Science, University of the Ryukyus Nishihara, Okinawa 903-0213, Japan Reprinted from the Bulletin of the Faculty of Science University of the Ryukyus No.91 March,2011

「シーソーヒーティング法」を用いた高圧力中にお …petit.lib.yamaguchi-u.ac.jp/G0000006y2j2/file/19506/...Bull. Fac, Sci。, Uni砿Ryukyus, N(エ91:1・8(2011)

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「シーソーヒーティング法」を用いた高圧力中における熱電能測定

仲村大,辺土正人,高江洲義尚,内間清晴,矢ヶ崎克馬,仲間隆男,藤原哲也,繁岡透

 Department of Physics and Earth Sciences,

Faculty of Science, University of the Ryukyus

  Nishihara, Okinawa 903-0213, Japan

    Reprinted from the

Bulletin of the Faculty of Science

  University of the Ryukyus

        No.91

      March,2011

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Bull. Fac, Sci。, Uni砿Ryukyus, N(エ91:1・8(2011) 1

「シーソーヒーティング法」を用いた高圧力中における熱電能測定

仲村大妹,辺土正人1, 高江洲義尚1・2,内間清晴2,矢ヶ崎克馬1,仲間隆男1,

         繁岡透3

藤原哲也3,

      1琉球大学理学部物質地球科学科

2沖縄キリスト教短期大学総合教育系,3山口大学理学部

       Experimental set-up fbr thermopower measurement under hlgh pressure

                   using“seesaw heating method”

      Dai Nakamura】,Masato Hed♂,Ybshinao Takaesu1・2, K圭yoharu Uchima2,

       Katsuma Yagasaki1, T翫kao Na㎞na 1,Tetsuya Fujiwara2,望oru Shigeok歌2

LDepartment of P hysics and Earth Sciences, Facu茎ty of Sclence, University of the Ryukyus, Nishihar裁Oki11翫wa

                        9◎3-◎213,Japan

    2General E(iucatめn, Ok量nawa Chr圭stian Junior CoUege, Mshihara Okillawa 903-0207, Japan

      3Facu】ty◎f Scie数ce, Yam亀guc嬉U丑iversity, Yamaguchi, Yam邑guchi 753-8512, J apan

Abstruct

Wb have developed a set-up with modi且ed“seesaw heating method”fbr the simultaneous measllrement of ther-

m◎p◎wer 3 and e三ectrlca茎resistivityρunder hydrostatic pressures P up to 3 GPa at the temLperature range

between玉.5 K and 300 K. By using this set-up,3andρof single crystalline YbMn2 Ge2 and EuCo2P2 under

high pressure were measured with enough accuracy, The temperature depelldences of 3 anδρshow drastic

changes at the critical pressure 1ゐin both compounds. The measurement results indicate that the simultaneous

measurement of 3 andρis a usuful tool to study the pressure-lnduced phaseもransltions.

1 はじめに

 電気抵抗率および熱電能等の輸送特性は,不純物,

格子欠陥および結晶構造はもとより,フェルミ面,伝

導電子と格子および磁気モーメントとの相互作用に

非常に敏感で,これらの特性を解明するには非常に

重要な物理量である,熱電能5は,電子状態と散乱

機構に非常に敏感な物理量で,フェルミレベル近傍

の電子状態のわずかな変化を観測するのに有効な手

段である.これまでに様々な物質の熱電能が測定さ

れているが,最近は固体物性で注目されている重い

電子系や強相関物質についても盛んに測定されてい

る.重い電子系では,低温における熱電能の温度係数

5/Tは電子比熱係数7との間に,1〈adowaki-Woods

の関係オ(xツ211]とよく似た,5/T(xツの関係があ

ることが知られている図.ここで,Aは電気抵抗率

の温度係数である(ρ=ρo+AT2).8/T,ッおよび

.4の値は,フェルミレベルの電子状態密度の大きさ

に比例する.

 重い電子系や強相関電子系では原子間,電子問距

離のわずかな違いよって超伝導や新たな磁気相の出

現,価数転移など多様な変化を示すため,電気抵抗

率,磁化率,X線國折,中性子回折など多くの物理

量の高圧力中における灘定が盛んに行われている.

 Received:January 28,2011

*Email:dai◎sci.u-ryukyu.ac.3P

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2 仲村 大

高圧力中における熱電能測定は,安定性と精度に問

題があり,一般にはあまり測定されていない.しか

しながら,熱電能は上述したとおリフェルミエネル

ギー近傍の電子状態および電子散乱のエネルギー依

存にきわめて敏感な量であるため,電気抵抗率と併

用することで物性解明のための多くの情報を得るこ

とができる。今回我々は,~3GPaまでの高圧力中

での電気抵抗率および熱電能を,1.5K~300 Kの

温度範囲で肩時測定する方法を開発した.この方法

の特徴としては,(1>熱電能を精度よく測定できる

「シーソーヒーティング法」を用いた圖,(2)熱電対

に圧力依存が少ないクロメルーコンスタンタン線を用

いた圏,ことが挙げられる.

 今回,価数転移が圧力により誘起され,その前後で

フェルミエネルギー近傍の電子状態が大きく変化す

ることが期待される,YbMn2 Ge2およびEuCo2P2

について3GPaまでの高圧力中における3とρを

1.5K~300 Kの温度範囲で測定した.

2 高圧力中における熱電能測定法

 図1に,高圧力中の熱電能測定に用いた二層式ピ

ストンシリンダー型のクランプ式圧力装置を示す.

ピストンシリンダー型高圧力セルはネジ機構によっ

て圧力を保持する方法であり,この装置の利点とし

ては以下のことが挙げられる.

●装置が小型であり,極低温,高磁場といった

 多重極限下の測定が容易に行える.

●試料空間が広いため輸送現象,交流帯磁率,

 NMR等の物性測定が可能

しかしながら,圧力媒体と圧力セルの熱膨張のため

温度変化によって圧力弛緩が生じる欠点があり,こ

れを防ぐため適当な圧力媒体を選択するなどの対策

が必要である.圧力は,シリンダーを二重円筒方式

にし,用いる材料を選択することで0~4GPaまで

到達可能である[5,6〕.

 「シーソーヒーティング法」は,試料の両側に2つ

の温度勾配用ヒーターを用いて温度勾配を反転させ

ることにより,熱起電力以外の余分な起電力を取り

除くことができる高精度な灘定法で,高磁場中で安

定した精度の高い熱電能灘定を行うために開発され

た[3,71.高圧力中における測定では,試料室容積に

制限があるため温度勾配用ヒーターをグラスエポキ

シの試料ホルダー板の片側だけに取り付けたヂシー

ソーヒーティング法」を採用した.図2に,試料ホル

ダー板の様式図を示す.温度勾配用ヒーター(1)と

試料(2)をグラスエポキシ板上(3)のCu薄膜(4)に

貼り付ける.板の反対側をコールドエンド〈5)(アー

チ状のCu線)にしっかりはりつけ熱がプラグを通

して圧力容器のヒートシンク(熱浴)に流入するよう

にした.温度差瀾定には,圧力依存が少ないクロメ

ルーコンスタンタン熱電対(φ0.02mm)を用いた[4】.

熱電対の接合点はスポットウェルドで溶接した後,

銀ペーストを使用してサンプルに直接固定した。ま

た,正確な温度差△Tを測定するためには熱電対と

圧力セル側の導線との接合点を同じ温度乃にする必

要があるため,熱容量が大きく熱伝導が良いコール

ドエンドに熱電対と導線の接合点を巻き付け固定し

た.クロメル1一試料一クロメル2(クロメル回路),

コンスタンタン1一試料一コンスタンタン2(コンス

タンタン回路)で測定される起電力%h.および%。、

は,それぞれ以下で与えられる.

賑一ズ㌔一貼)姻段貼)△丁

隔∬汗㌔一妬幽鼻妬)△T

ここで,5x,5chおよび8c。はそれぞれ試料,クロメ

ルおよびコンスタンタンの絶対熱電能である.図3

に,室温における玖h、および%。xの時間依存を示

す.測定では,ヒーターON, OFFの切り替え時間

(modulation time)を100秒に設定した.%hxおよ

び%。xは,約20秒後にはほぼ一定電圧になり,温度

差一定の定常状態に達していることが分かる.実際

に測定する際のmodula宅ion timeは,室温付近では

45秒,20K以下の低温では25秒に設定している.

温度差△Tは,全温度範囲で0.15K~0.25 Kにな

るように制御した.熱浴の温度乃は圧力プラグの

外に設置された抵抗温度計(CERNOX)によって測

定し,試料温度簸は簸篇7b+砦[として求めた、

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「シーソーヒーティング法」を用いた高圧力中における熱電能測定 3

Upper Lock nut

(Cu-Be)

Outer Cylmder

(Cu-Be)

Inner Shell

倒1-Cr-A且)

Lower Lock nut

(Cu-Be)

o

o

Piston bac㎞P

 (W-C)

Piston

(W。C)

Seal hng(Cu-Be)

Teflon tube

Sea且hng(Cu-Be)

Plug(Cu-Be)

図1二層式ピストンシリンダー型のクランプ式圧力装置.

lmm

  I

(4)Cu layer

     「一■(3)glass epoxy l

 chr㎝e[1

 chr㎝el2

(5)arch-I ike

 Cu wire

(6)plug

(1)heater

(2)sample

 constantan1

Vc。x

constantan2

1~2mm

図2 高圧力中における熱電能測定の模式図.

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4 仲村 大

ジ三〉

10

5

0

5

一10

0

Kh.

砿。.

100 200 300  400 500 600

廿me[secl

図3 室温での%h.および脇hxの時間依存.

0

一5

露一lo醇

三り .15

一20

一25

0     50    100    150    200    250    300

τ[K]

図4 Niの3の温度依存.(●)は常圧での測定

データ.(×)は文献値18].

10

5

iZo誹

三り .5

一10

一15

0 50    塁00    匪50    200   250    300

ア[K]

図5TbCo2の5の温度依存.(●)は常圧での

測定データ.(×)は文献値[9].

 作製した装置を用いた熱電能測定の精度を確認す

るため,標準試料としてNiおよびTbCo2を用いて

測定を行った.図4および5に示すとおり,Niと

TbCo2の熱電能は文献値とほぼ同様な温度依存を示

した[8,91.Niの8は,全温度領域で文献値より約

2μV/K程小さくなっており誤差は約14%~30%

となった.装置の構造上の計測誤差は,端子間距離

が短いほど大きくなり,電位差測定をする熱電対端

子間距離が1mm程で熱電対の直径がφ0.02 mm

だとすると誤差は2~3%程度になる.10%以上の

誤差が生じる原因としては,電位差測定における銀

ペーストの寄与および圧力媒体中での温度差測定の

誤差等が考えられる.また,試料の純度の違いによ

る3の値の違いの可能性もある.TbCo2は,室温か

ら180K付近までは文献値と良い一致を示し,それ

以下の温度領域では文献値と最大~2.5μV/Kの違

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「シーソーヒーティング法」を用いた高圧力中における熱電能測定 5

いを示した.7b舘230Kでの磁気転移点は文献値

のデータと同じ温度で明鐙に確認でき,恥以下の温

度領域ではほぼ同じ振る舞いをしている.以上の結

果より,文献値と最大±2.5μV/K程度の誤差が生

じているが,今回作製した装置を用いて熱電能の測

定が相対的に十分な精度でできることがわかった.

3 測定結果

 作製した装置を用いて,ThCr2Si2型体心正方晶の

YbMn2 Ge2およびEuCo2P2の単結晶試料について

高圧力中の熱電能8および電気抵抗率ρの測定を

行った.両試料とも,圧力誘起の価数転移を示し,そ

れに伴い磁性が変化することが知られている.バン

ド計算の結果,両化合物ともに3d電子バンドの大き

な状態密度(DOS)がフェルミエネルギー近傍に存

在することが報告されている[10,1鳳これは,ρお

よび5等の輸送特性がこの3d電子状態、に密接に関

連することを示している.しかしながら,これまで

高圧力中における8の詳細な振る舞いは報告されて

いない.

 単結晶試料は,YbMn2 Ge2はIn一フラックス法,

EuCo2P2はSn一フラックス法を用いて作製した.

測定試料サイズは,~0.05×1×2mm3で,温度勾

配▽Tと電流¢は,c一軸に垂直方向に加えた.圧力

媒体には,ダフニ7373オイルを使用した[12】.

 図 6に,YbMn2 Ge2の磁気相図を示す.

YbMn2 Ge2は,ネール温度職1舘400 Kで反強磁

性(AFM-1)に転移し,さらにTN2舘165 K(AFM-

II)で反強磁姓転移を示す.この試料は,室温,常

圧においてYbイオンが2価と3価の混合原子価

状態(Yb2糾)にあり,圧力を加えると臨界圧力

瓦=1.25GPaでYb2・4+からYb2・8+へ価数転

移を示すことが報告されている{13,14,15].図7

に,2G肱までの圧力中におけるYbMn2Ge2の8

とρの温度依存を示す.図中に矢印で示したように,

常圧のρ(T)および5(T)ともに丁斜1651〈で折れ

曲がりを示す.この温度は,低温の磁気相転移温度

TN2と一致する.圧力を加えると,恥2は上昇し臨

界圧力瓦で最大値を示した後,それ以上の圧力で

は低温側ヘシフトする。纒7に示したように,3と

ρの温度依存も瓦で大きく変化していることがわか

る.3(T)では,全圧力範囲で磁気相転移点で特徴的

な振る舞いを示すが,1)〉具のρ(T>ではAFM-III

からAFMJVへの磁気相転移ははっきりと観測さ

れない.図6に示した8(T>およびρ(T)から得た

磁気転移点疇2(×)および鴫(△)は,3(T)および

ρ(T)の温度微分係数がそれぞれ極大値を示す温度で

定義した.7縛2と鴫ともに,文献値と良く一致し

ていることがわかる[13,14L

 EuCo2P2は,常圧で7N篇66.5 Kの反強磁性体で

ある.中性子回折の結果,この系の磁性はEu2+の副

格子が担い,Co 3d電子はモーメントを持たないこ

とが報告されている{16!.圧力を加えると,臨界圧

力瓦舘3GPaで約8%の体積減少を伴う慧u2牽か

らEu3+への価数転移を示す.それに伴い, Euの4f

局在磁気モーメントは消失し,Co 3d遍歴磁気モーメ

ントが磁気秩序(職罵260K)を示すことが知られ

ている[17].函8,9およびその挿入図に,EuC◎2P2

の3GPaまでの圧力中におけるρと5の温度依存を

示す.図中の矢印は,常圧における磁気転移温度TN

である.ρと5とも報告されている温度とほぼ同じ

職膨66Kで折れ懸がりを示している. P≦2GPa

の圧力範囲では,圧力の増加とともに職が高温側に

シフトする変化が見られるが,全体的なρと5の温

度依存はほとんど変化せず,OGPaとほぼ同様な温

度依存を示している.しかしながら,図8および9

の挿入図に示したように,P鴬2.5 GPaまで加圧す

るとρおよび8の変化の大きさと温度依存性は大き

く変化している.それに伴い,60K付近にみられた

TNは消失し,ρでは丁旬260 Kで折れ曲がりが見

られる.この折れ麟がりの温度は,報告されている

Co 3d遍歴磁気モーメントの反強磁姓転移温度鱗

とよく一致している.一方,3(T)では踏における

振る舞いの変化は見られない.ρと3のデータより,

臨界圧力瓦は2.0<瓦く2.5GPaであることがわ

かる.図10にEuCo2P2のTNの圧力依存を示す.

0~2.O GPaでd7》dP駕6K/GPaで直線的に増

加し,臨界圧力瓦で不連続な飛びを示し,高圧相の

磁気転移温度踏は圧力増加とともにわずかに増加

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6 仲村 大

露ζ

400

200

へ豆 ParaYbMn2Ge2

0.0

へ,、/炉\一

05 1.0

ρ[GPa]

15

図6 YbMn2Ge2の7h1, Tk2の圧力依存.

(×)および(△)は,各々51(T)およびρ(T)

より得た値.τN1(□),丁短(○))は文献値[13].

80

60

冒り

α  40三

α

20

0

2.0

0 100

7[K]

EuCo2P2

一●一ノ)‘0.O GPa

-Cト0.5

→」-1.0

-△一一1.5

-◆-2.0

200

図8 各圧力中におけるEuCo2P2のρの温度依存.

300

゜\…冨タ ー20

三Qり

一40

.60

7・・1

0

  1)=OGPa      寸YbMn2Ge2

100

T[K]

クフ4°°

200

  冒  〇

  三200 α

 0300

図7各圧力中におけるYbMn2Ge2のρおよび3の温度依存.矢印は,常圧中における磁気

転移点TN2を示す.

20

15

冒 10タ

硫   5

0

一5

0 100

τ[K]

200

図9 各圧力中におけるEuCo2P2のθの温度依存.

300

している.これはEu2+のみが反強磁性秩序を示す

低圧相から価数転移に伴い非磁性となったEu3+に

代わりCoが磁気秩序を持つ高圧相へと1次転移し

たことを示している.また,瓦でのρと5の劇的な

変化は,圧力誘起による価数転移およびそれに伴う

構造相転移によりフェルミレベル近傍に大きな状態

密度を持つ3d電子状態が大きく変化したことを示

している.

4 まとめ

 今回我々は,熱電能と電気抵抗率を3GPaまで

の高圧力中において高精度で同時測定できる装置を

開発した.NiおよびTbCo2について,標準試料と

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「シーソーヒーティング法」を用いた高圧力中における熱電能測定 7

冒一

300

200

100

0

EuCo2P2

1 2 3

P[GPa]

図10 EuCo2P2の磁気相転移温度7N(低圧相),7満(高圧相)の圧力依存.低圧相の(・)と(×)は,それ

ぞれρ(T)と3(T)から得た.高圧相の(■)は,ρ(T)から得た値.

して熱電能を測定した結果,両試料とも文献値との

誤差は土2.5μV/K以内であった.誤差の原因とし

ては,試料サイズ,温度差測定の精度および試料純

度が考えられるが,得られた測定結果は非常に安定

しており相対的に十分な精度で測定できることがわ

かった.

 この装置を用いて,圧力誘起の価数転移を示す

YbMn2Ge2およびEuCo2P2の単結晶試料につい

て,電気抵抗率と熱電能を3GPaまでの圧力中で測

定した.両化合物ともに,価数転移臨界圧力の前後

で,電気抵抗率および熱電能の大きさおよび温度依

存性に大きな変化が見られた.YbMn2Ge2の3(T)

は,全圧力範囲で磁気相転移にともなう異常が観測

できたが,ρ(T)ではP>具の圧力中では磁気相転

移による変化は観測できなかった.一方,EuCo2P2

ではρ(T)で磁気相転移が全測定圧力中で観測され

たにもかかわらず,3(T)ではP>鑑で明瞭な変化

は観測できなかった.このことは,高圧力中で電気

抵抗率および熱電能の同時測定が,フェルミエネル

ギー近傍の電子状態の変化を理解する上で有効な手

法であることを示している.

謝辞

 本論文を査読して下さった物質地球科学科物理系

の二木治雄教授に感謝いたします.

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