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潜在クラス分析を用いたマーケットBセグメンテーション 守口 剛 · 潜在クラス分析を用いたマーケット・セグメンテーション 2-2定 式化

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Page 1: 潜在クラス分析を用いたマーケットBセグメンテーション 守口 剛 · 潜在クラス分析を用いたマーケット・セグメンテーション 2-2定 式化

潜 在 ク ラ ス 分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ンテ ー シ ョ ン

潜在 クラス分析 を用 いたマーケットBセ グメンテーション

守口 剛

目 次

1.は じめ に

2.潜 在 ク ラ ス分 析 の 特 徴

3.潜 在 ク ラ ス分 析 の 拡 張

4,モ デ ル

.5.実 証 分 析

6,ま とめ

1.は じ め に

近 年 の マ ー ケ テ ィング 環 境 の 大 き な変 化 の1つ は 、.顧客 の 行 動 履 歴 デ ー タの 利 用 可 能 性 が

大 き くひ ろが っ て きた こ とで あ る。 今 日で は 、 .多くの 企 業 が 顧 客 デ ー タ琴 一 ス を保 持 す る よ

う に な っ て き た。 顧 客 との 直 接 的 な 接 点 を 持 つ サ ー ビス 業 者 は、 ブ リ ク ェ ン シ ー ・プ ロ グ ラ

ム(frequencyprogram>な ど の仕 組 み に よ っ て 、顧 客 別 の 利 用 履 歴 を捕 捉 す る こ とが で き る。

例 え.ば、 多 くの 小 売 業 者 は 、 ブ リ ク ェ ン ト ・シ ョ ッパ ー プ ロ グ ラ ム(FSP:frequent

shopperprogram)を 利 用 し、POSシ ス テ ム と会 員 カ ー ドを組 み合 わ せ る こ と に よ っ て 顧 客

別 の 購 買 履 歴 を捕 捉 して い る。 ま た、 オ ン ラ イ ン小 売 業 者 の 場 合 に は 、顧 客 の 購 買 履 歴 だ け

で は な く、webサ イ トへ の 接 触 履 歴 や ペ ー ジ閲 覧 履 歴 も捕 捉 す る こ とが で き る。

流 通 業 者 を介 して 製 品 を販 売 して い る製 造 業 者 に と っ て は 、 最 終 顧 客 で あ る消 費 者 の 行 動

履 歴 デ ー タ を取 得 す る こ とは難 しい が、 それ で もデ ー タ活 用 の た め の さ.まざ ま な試 み が 行 わ

れ て い るQ/。 そ の う ち の1つ の 方 法 は 、 小 売 業 者 と協 働 して顧 客 デ ー タ を活 用 す る こ とで あ

る 。上 述 の よ うに 、近 年 さ ま ざ ま な小 売 業 者 がFSPを 利 用 して 顧 客 デ ー タ を 蓄 積 して い るが 、

小 売 業 者 単 独 で は これ らの デ ー タ を十 分 に 活 用 で きて い な い..そ こで 、 小 売 業 者 と メ ー カ ー

との 協 働 に よ っ て デ ー タ を活 用 して い こ う とい う動 き が活 発 化 して い る。 この よ う な 、顧 客

別 購 買 履 歴 デ ー タ を基 に した メ ー カ ー と小 売 業 者 との.協同 め取 り組 み は、 コ ラボ レ ー テ ィ プ

CRMと 呼 ば れ て い る。

一1一

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潜 在 ク ラ ス 分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

さ らに、 近 年 に な っ て 多 くの 製 造 業 者 が消 費 者 直:販に 乗 り出 して き て い る。 例 え ば、 パ マ

ソナ ル ・コ ン ピ ュ.一タの 分 野 で は 、 デ ル コ ンピ ュ ー タの成 功 を 追 随 す る か た ちで 、.多 くの メ

ー カ ー がBTO(buildtoorder)方1¥に よ る消 費 者 直 販 を手 が けて お り、 この 方 法 が 定 着 し

て い る。 また 、 日用 消 費 財 の 領 域 で も、 美 容 ・健 康 関連 な どの 商 品 を中 心 と して 多 くの メ ー

カ.一が消 費 者 直 販 を 手 が けて き て い る。 メ ー カ ー が消 費 者 直 販 を 行 う場 合 に は 、顧 客 デ ー.タ

ベ ー スが 必 然 的 に構 築 され る こ と に な る。

顧 客 の 行 動 履 歴 を 詳 細 に把 握 す る こ と は、 マ ー ケ テ.イン グの 方 法 を大 き く変 え る原 動 力 と

な り得 る。例 え ば 、 オ ン ラ イ ン小 売 業 の 代 表 的 な存 在 で あ るAlnazon,comは 、Webサ イ ト

やEメ ー ル を利 用 した リコ メ ンデ ー シ ョン を/7っ て お り、 これ は 重 要 な販 売促 進 手 段 とな っ

て い る。Amazon.comの リコ メ ンデ ー シ ョン は、 顧 客 の購 買 や ペ ー ジ閲 覧 な どの 行 動 履 歴 に

基 づ い た もの で あ り、 顧 客 個 人 別 に カ ス タ マ イ ズ され て い る。

近 年 大 き く業 績 を伸 ば して い る小 売 業 に英 国 の ス ーパ ー マ ー ケ ッ トの テ ス コ が あ る が 、 そ

の 成 長 を支 え て い るの は、顧 客 の 行 動 に基 づ い た 的 確 な マ ー ケ テ ィ ン グ の実 践 で あ る(Humby

etal,2003、 南2006)。 テ ス コ は1995年 にFSPを 本 格 的 に 導 入 し、 この 仕 組 み を さま ざ まな

マ ー ケ テ ィ ン グ施 策 に 活 用 して い る。 そ れ らの 施 策 の 土 台 に な っ て い るの が 、 顧 客 の購 買 デ

ー タ を利 用 し た綿 密 な セ グ メ ンテ ー シ ョン で あ る。 例 えば 、 テ ス コで は9.半 期 に1回 、 カ ー

ド会 員 向 け に冊 子 や ク ー ポ ン な ど を 送 付 して い る が、 そ の 内容 は 顧 客 セ グ メ ン トの特 徴 に 応

じて カ ス タマ イ.ズされ て い る 。

行 動 履 歴 に基 づ く施 策 を個 人 別 に行 うべ きか 、 それ と も セ グ メ ン ト別 に 実 施 す べ きか は、

商 品 の 特 性 や ア プ ロ ー チ の 方 法 に よ っ て異 な るだ ろ う。Amazon.comの よ うに、 シ ス テ ム 化

され た リコ メ ンデ ー シ ョ ンの 仕 組 み を も と に イ ン タ ー ネ ッ トを 通 じて 顧 客 に ア プ ロ ー チ す る

の で あれ ば、 個 人 別 ア プ ロ ー チ の効 果 が 活 か され る と考 え られ る。 しか し、 テ ス コ の よ うに

.冊子 や ク ーtン を送 付 す る とい うよ うな 場 合 に は、 セ グ メ ン ト別 ア プ ロ ーチ の 方 が は るか に

効 率 的 だ ろ う。

た だ し、 同 じセ グ メ ン ト別 ア プ ロ ー チ で も、 顧 客 を 数 種 類 の セ グ メ ン トに分 割 す る場 合 も

あ れ ば 、 数 百 、 数 千 に分 け る場 合 もあ る。 その 意 味 で は 、 セ グ メ ン ト別 か個 人 別 か とい う ア

プ ロ ーチ の 相 違 は質 的 に2分 され る もの で は な く、 セ グ.メ ンテ ー シ ョ ンの 分 割 度 を 向 上 させ

.てい っ た 究 極 の か た ちが 個 人 別 ア プ ロ ーチ で あ る と解 釈 す る こ と もで き る〔2〕。

い ず れ に して も、 今 日で は 、 顧 客 の 行 動 履 歴 デ ー タ を企 業 の マ ー ケ テ ィ ング活 動 に 活 用 で

き る可 能 性 が大 き く広 が っ て い る ζ とは 間 違 い な い し、 活 用 の 仕 方 の 巧 拙 が マ ー ケ テ ィ ング

活 動 の成 果 を大 き く左 右 す る よ うに な っ て き た と言 っ て も過 言 で は な い だ ろ う。 そ して 、 そ

の た め の1つ の鍵 は、 顧 客 の 行 動 履 歴 を基 礎 と した セ グ メ ンテ ー シ ョン を、 い か に効 果 的 に

突 施 で き るの か とい う こ と に な る だ ろ う。

上 記 の 議 論 を勘 案 し、 本 稿 で は行 動 履 歴 デ ー タ を基 礎 と した セ グ メ ン テ ー シ ョ ンの方 法 に

一a一

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潜 在 ク ラ ス 分 析 を用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

ついて検討を行 う。行動履歴データをベースにセグメンテーションを行うための分析手法に

は多くの方法があるが、 ここでは潜在クラス分析に焦点を当てる。

マーケティングの分野では、特に消費者行動 を分析する際に、観測変数の背後に潜在変数

が存在することを仮定 しt分 析手法が非常 に多く活用されている。潜在 クラ:ス分析もその

1つ であり、母集団が異質な複数の集団の混合によって構成 されていることを想定する。 そ

の上で、観測 されたデータを用いて分析対象を複数の潜在クラスに分Ailし、各クラ.スの特徴

を把握するという手法である。潜在クラス分析の利点はい くつかあげられ るが、その1つ は

各セグメン トの購買行動の特徴を確率モデルとして表現できる点にある。この利点によって、

後に議論するような、モデルの さまざまな拡張が可能となっている.

2.潜 在 クラス分析 の特徴

2-1基 本的 な考 え方

例 えば、次のようなケースを考えてみよう。ある店舗では複数の種類の商品カテゴリーを

扱 っている。 さまざまな消費者が来店するが、消費者によって購入するカテゴリーは異なっ

ている。来店客全体で集計すれば、各カテゴリーの購人確率を算出することができるが、ど

うも顧客セグメン トによって買い方がfdる ように考 えられ る。顧客セグメン トごとに、各

.カテゴ リーの購入率を算出することができれば、品揃えやプロモーションに関する有用な示

唆が得 られると思われる。では、こうしたケースでは、 どのような方法で顧客をセグメン ト

化することが考 えられるだろうか。

マーケティングでよく利用 される方法は、顧客の性別や年齢などのデモグラフィック属性

によってセグメンテーションを行い、.セグメン トごとの購入傾向を分析するというものであ

る。例えば、 コンビニ土ンス ・ス トアで4#,店 員の見た目による顧客属性 を、 レジのキーを

利用 して精算時にインプットしている。この方法によって、POSデ ータから、どのような属

性の顧客は何を買 っているのかを捕捉することができる。

これに対 し、デモグラフィック.スのような属性ではなく、購入の結果から顧客のグループ

化を行 う方法 も考 えられる。例えば、クラスター分析 を利用 して、購入する商品が類似して

いるい くつかのグループに顧客を分類することは......般的に行われてい る方法である。潜在ク

ラス分析 を利用す る場合 も、購入の結果から顧客をグループ化することができる。この点は

クラスター分析 と同様である。ただ し、潜在 クラス分析の場合は、顧客の購入の状況を確率

モデル として表現す る点でクラスター分析 とは異なってい盗、この特徴は、他の分析モデル

と組み合わせて拡張 しやすいことや、分析対象の各クラスへの振 り分けをクラスへの所属確

率として把握できること、などの利y'iにつながっている。

一3一

田曳

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潜 在 ク ラ ス 分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

2-2定 式 化

上 述 した ケ ー ス に お い て 、 顧 客 の セ グ メ ン テ ー シ ョン に潜 在 ク ラ ス分 析 を適 用 す る こ と を

考 えて み よ う。 ま ず 、Cを 顧 客 ク ラ ス と し1~mま で の ク ラ ス が あ る と考 え る。 さ ら に 、

η種 類 の 商 品 カ テ ゴ リー(X,_'X)を 想 定 す る。 顧 客 ク ラ.スiが カ テ ゴ リーXノ を購 入 す る

確率 をPaと す ると、クラス1に 属 している輝客が勾 を購人す るか否かの確率を(1>式 の

よ う に表 現 で き る。

P・(X、 ・ ・、1.C・ ゴ ・ パ(1-Poi)1一 絢 (i;

こ こで 、x;は1か0を と る2値 変 数 で 、 商 品 カ テ ゴ リー ノの 購 入 の 有 無 を表 す 。 さ ら に、

各 ク ラ ス 内 で.はそ れ ぞ れ の 商 品 カ テ ゴ リー の 購 入 は 独 立 だ と仮 定 す る と、 顧 客 ク ラス'に 属

す る顧 客 の 商 品 購 入 パ ター ンの確 率 を(2)式 の よ うに表 す こ とが で き る。

Pr(XI=x,._, .X。=ズJC=の=nρ なπ'(1-P.;)1一 ㍉

.ノ=1

(z`

上 述 した、 ク ラ ス内 で は観 測 され た変 数 問 が 互 い に 独 立 で あ る とい う仮 定 は、 局 所 独 立 の

仮 定 と呼 ば れ る 。 この 仮 定 に よ って 、.(2)式 の よ うな 定 式 化 が可 能 とな る。 こ こ で 、 各 顧 客

ク ラ スの 相 対 規 模(ク ラ スサ イズ)を π、と し、E"1,、=1と す る と、 任 意 に選 択 され た顧

客 の 商 品 購 入 パ タ ー ンの確 率 を(3)式 の よ うに表 す こ と が で き る。

  れPr(X,=Xl,,,,Xn=Xn)=Σ π、HPヴ 渥1(トPび>1一.ど'

1=1ノ;1

(3)

こ こ で 、P.;お よ び π互が推 定 す べ きパ ラ メ ー タで あ る 。 こ の よ う に、 潜 在 ク ラ ス分 析 を利

用 して 消 費者 行 動 をモ デル 化 す る場 合 に は 、 母 集 団 が 複 数 の異 質 な消 費 者 ク ラ.スの 混 合 か ら

な る と考 え、 局 所 独 立 の 仮 定 を利 用 して確 率 モ デル と して 表 現 す る こ とに な る。

潜 在 ク ラス 分 析 に お け るパ ラ メ ー タの 推 定 に は、EMア ル ゴ リズ ム に よ る最 尤 推 定 が 良 く

利 用 され る。EMア ル ゴ リズ ム は 、(3>式 の パ ラメ ー タ 傷 と π1を 交.互に 探 索 す る ア プ ロ ー

チ で あ り、E-Step(expectationStep>とM-Step(MaximizationStep)の2つ プ ロセ ス の繰

り返 しに よ っ て最 尤 推 定 を行 うた め、 この 名 前 が つ け られ て い る⑧。

潜 在 ク ラ ス分 析 に お け る ク ラ ス 数 の 決 定 は 、 パ ラ メ ー タの 推 定 と は別 に 行 う必 要 が あ る。

通 常 は 、 い くつ か の 異 な る ク ラ ス数 の モ デ ル につ い て 推 定 を行 い 、AIC、BICな どの 情 報 量

基 準 を利 用 して デ ー タへ の フ ィ ッ トを確 認 した..上で ク ラ ス 数 を決 定 す る。

...ヒ述 した よ う に 、(3>式 のn,は ク ラ ス'の 相 対 規 模 を表 し、P;,は 、 ク ラス'の カ テ ゴ リ

ー ノ0)購 入 確 率 を 表 す 。Lた が っ て 、 潜 在 ク ラ ス 分 析 を#1J用 して セ グ メ ンテ ー シ ョン を 行 う

一4一

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潜 在 ク ラ ス分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョン

場 合 に は 、π1に よ っ て セ グ メ ン トの 規 模 を把 握 し、ppの 値 に よ っ て 各 セ グ メ ン トの 特 徴 を

捕 捉 す る こ と に な る。

to在 ク ラ ス分 析 で は 、 各 顧 客 が ど の ク ラス に所 属 す る か は 確 率 的 に判 断 す る。 特 定 の 購 買

パ タ ー ン、X,=κ1 ,_,X.ニx.を 有 す る顧 客 の ク ラ ス1の 所 属 確 率 は 、 ④ 式 の よ う に ベ イ

ズ の 公 式 を利 用 して 算 出す る こ とが で き る。

Pr(C=tlx,=x,,.X,,=xn)漏P・(C一 ∫)P・(X,・ ・。_,&・ 蛋rC・ ピ

ΣPr(C=j)Pr(X,ニx1,.,.,X,、=x,lC=ノ)

(4)

3.潜 在 クラス分析の拡張

3-1ブ ラ ン ド選 択 モ デ ル へ の 拡 張

こ こで は 、 特 に マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ント の 活 用 を念 頭 に お い た、 潜 在 ク ラ ス 分

析 の 拡 張 の 方 向 に つ い て 検 討 す る(4;。先 述 した よ うに 、 潜 在 ク ラ.ス分 析 を利 用 す る こ とに よ

っ て 、 消 費 者 行 動 を確 率 モ デル と して 表 現 した 上 で 、 潜 在 的 な ク ラス を抽 出 す る こ とが.可能

と な る。 こ の た め 、 潜 在 ク ラ ス分 析 は 、 消 費 者 行 動 に 関 す る他 の数 理 モ デ ル と組 み 合 わ せ る

こ とが 行 い や す く、 さ ま ざ ま な拡 張 が 行 わ れ て い る。 マ ー ケ テ ィ ング領 域 に お け る主 要 な 拡

張 の 方 向 の 一 つ は、 ブ ラ ン ド選 択 モ デ ル へ のbetfilで あ る。

消 費 者 の ブ ラ ン ド選 択 行 動 の モ デル 化 に お い て 最 も多 く利 用 され て きた 手 法 は、 多 項 ロ ジ

ッ ト ・モ デ ル で あ る。 多項 ロ ジ ッ ト ・モ デ ル は 、 計 量 経 済 学 者 のMcFaddenに よ っ て 開 発 さ

れ た手 法 で あ るが(McFadden1973)、 マ ー ケ テ ィ ング 領 域 で は 、GuadagniandLittle(1983)

を は じめ と して 広 範 に利 用 され て きた 。

多項 ロ ジ ッ ト ・モ デ ル をベ ー ス と して 、 潜 在 ク ラ ス分 析 の枠 組 み で プ ラ ン.ド選 択 行 動 を モ

デ ル 化 し た最 初 の 試 み が、KamakuraandRusse11(1989)で あ る.彼 らは まず 、 ロ ジ ッ ト ・

モ デ ル を利 用 して 、 潜 在 ク ラ ス ∫に属 す る消 費 者hの 七 回 目の 購 買 機 会 に お け るブ ラ ン ドk

の 選 択 確 率 を(5)式 の よ うに 定 式 化 し た。

・ま・鎌 識,…

i

こ こで 、a,`は ク ラス ∫の ブ ラ ン ドkに 対 す る選 好 度 、Q:は ク ラス どの価 格 反応 度 、X虚 は 、

ク ラ ス1に 属 す る消 費 者hのr回 目の 購 買 機 会 に お け る ブ ラ ン ドkの 価 格 を表 す。 さ らに 、

ク ラスiの 相 対 規 模 をn;と す る と、任 意 の 消 費 者 の'期 に お け る ブ ラ ン ドkの 選 択 確 率 を、(6>

式 の よ う に定 式 化 で き る。

一5一

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潜 在 ク ラ ス 分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

 

Pltl'・・Σ π、礁

1=]

(6)

こ こ で 、 Σ 臨 π,=iで あ る.こ の よ うに消 費 者 の ブ ラ ン ド選 択 確 率 を定 式 化 した..r.で、

彼 ら は消 費者 の購 買 履 歴 デ ー タ を利 用 し実 証 分 析 を行 っ た。 こ の 結 果 、 ブ ラ ン ド選 好 度 と価

格 反 応 度 が異 な る5つ の 潜 在 ク ラ.スを抽 出 して い る。

2,で 説 明 した方 法 で は、 消 費 者 の購.買結 果 に よ っ て潜 在 ク ラ ス を抽 出 した。 この 方 法 を利

用 す る場 合 に は、 「どの 商 品 を 買 い や す い の か 」 と い う視 点 で セ グ メ ン テ ー シ ョ ンを 実 施 し

る こ と に な る。 購 買 デ ー タ を利 用 し、 潜 在 ク ラ ス分 析 に よ って セ グ メ ン テ ー シ ョ ン を行 う場

合 は 、 こ う した方 法 が...・般 的 だ と考 え ら れ る。 こ れ に 対.し、KamakuraandRassell(1989)

の方 法 で は、 購 買 結 果 に影 響 す る消 費 者 の ブ ラ ン ド選 好 度 や マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 へ の 反 応 度

の相 違 を基 準 と して 潜 在 ク ラス を抽 出 す る こ とが で き る。 この 方 法 を セ グ メ ンテ ー シ ョ ンに

活 用 す れ ば、 セ グ メ ン トご と の マ ー ケ テ ィ ング 計 画 を立 案 す る上 で の 、.よ り具 体 的 な 示 唆 を

得 る こ とが 可 能 だ ろ う。

KamakuraandRussell以 来 、 潜 在 ク ラス を考 慮 した ブ ラ ン ド選 択 モ デル に 関 す る研 究 が 数

多 く行 わ れ て き た。 そ れ らの 多 く は、.プラ ン ド選 好 や マ ー ケ テ ィ ング 変 数 へ の 反 応 の 異 質性

に焦 点 を 当 て た もの で あ る が 、 選 好 や 反 応 の相 違 を.形成 す る メ カ ニ ズ ムの 異 質 性 に 焦 点 を 当

て た研 究 もみ られ る。 例 え ば 、MazumdarandPapatla(2000)は 、 消 費 者 の 内 的 参 照 価 格 と

外 的参 照 価 格 それ ぞ れ の 重 視 度 の 異 質 性 に よ る潜 在 ク ラス を考 慮 し、 価 格 反 応 の異 質 性 を 説

明 して い る。 また 、BellandLaUin(2000)は 、参 照 効 果 の相 違 に 焦 点 を あ て,Gain(販 売 価

格 が 消 費 者 の参 照 価 格 を下 回 って い る場 合)とLoss(販 売 価 格 が 参 照 価 格 を 上 回 って い る場

合 〉 の 効 果 の異 質 性 に よ る潜 在 ク ラ ス を考 慮 し、 モ デ ル 化 を行 っ て い る。

3一.2そ の 他 の 拡 張

潜 在 ク ラ.ス分 析 を利 用 した セ グ メ ン テ ー シ ョ;ンの 方法 の う ち、 実 務 的 に も有 用性 の 高 い も

の の1つ に ジ ョイ ン ト ・セ グ.メン テ ー シ ョンが あ る 。 これ は 、 尽amaswamyetal..(1996>に

よ って 提 示 され た もの で あ り、2種 類 の 異 な る タ イ ブ の基 準 変 数 に よ っ て セ グ メ シテ ー シ ョ

ンを行 う方 法 で あ る。 この .方法 に よ っ て 、 例 え ば 店 舗 選 択 パ タ ー ン と商 吊 選 択 パ タ ー ン とい

う2つ の 基 準 変 数 を想 定 し、 両 者 を 組 み 合 わせ て ジ ョイ ン ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン を行 う こ

とがuj能 とな る。

潜 在 ク ラス 分析 を セ グ.メン テ ー シ ョン に利 用 す る た め の..一般 的 な 方 法 は、 分 析 結 果 か ら潜

在 ク ラ ス の特 徴 を読 み 取 り、 セ グ メ ンテ ー シ ョンの 基 準 を抽 出 す る とい う もの で あ る。 こ れ

に 対 し守 口(2004)は 、 セ グ メ ン トの特 徴 を 予 め規 定 した う えで 、 潜 在 ク ラ ス 分 析 の 枠 組 み

で消 費 者 の ブ ラ ン ド選 択 行 動 を モ デ ル 化 す る方 法 を提 示 して い る。 この 方 法 は 、 ブ ラ ン ド選、.r

.r

一6一

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潜 在 ク ラ.ス分 析 を 用 い た マ ー ケ.ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

択確率を規定する効用関数に制約を導入することによって、予め想定 したセグメン トの特徴

をモデルの中に組み込んで しまうというものである。守口(2004)は この考 え方 を利用 し、

分析対象 となる複数のブランドのそれぞれに対するロイヤルティをキーとしたセグメンテー

シ ョンの方法を提示 し、実証分析によってその有効性を確認 してい.る。

この方法は、分析者が予め想 定 したセグメン トの特徴を把握できるという意味で、実務的

にも応用可能性の高い方法であるが、ブラン ド・ロイヤルティという1つ の側面によるセグ

〆ンテーションでは、消費者行動の特徴 を十分に捉えきれないという問題も有 している。

そこで以下では、守[(2004))の モデルを土台として、上述 したジョイン ト・セグメンテ

ーシ ョンの考えを取 り入れた拡張を行い、実証的な分析を試みる。

4.モ デ ル.

4-1ア プ ロ ー チ の 方 法.

こ こ で は 、2つ の 基 準 の 組 み 合 わ せ か ら な る消 費 者 ク ラ ス を想 定 し、 消 費 者 の ブ ラ ン ド選

択 行 動 を モ デ ル化 す る、 ク ラ ス分 け の2つ の基 準 は ア ・プ リオ リに規 定 す る こ と と し、 第1

の 基 準 と して ブ ラ ン ド ・ロ.イヤ ル テ ィを、 第2の 基 準 と して 価 格 反 応 度 を採 用 す る。

ブ ラ ン ド・ロ イヤ ル テ ィは 、セ グ メ ン テ ー シ ョ ンの 基 準 と して 良 く利 用 され て い る。...般に 、

どの ブ ラ ン ドに対 して ロイ ヤ ル テ.イを有 して い る.のか は 、消 費者 に よ って 大 き く異 な る た め 、

ロ イヤ ル テ ィを基 準 とす る こ と に よ って消 費 者 を 分 か りや す く分 割 す る こ とが で き る。ま た 、

ロ.イヤ ル テ ィを 基準 と した各 セ グ.メン トの 特 徴 を把 握 す る こ と に よ っ て 、 企 業 の競 争 戦 略 上

有 用 な 示 唆 が得 られ る と考 え られ る。

多 くの 商 品 で 、店 頭価 格 は消 費 者 の購 買 意 思 決 定 に 最 も大 き な影 響 を及 ぼ す 要 因 の1つ で

あ る。 一 方 で は、 すべ て の 消 費 者 が店 頭 価 格 を チ ェ ッ ク し検 討 した.上で 購 入 の 判 断 を して い

る 分 け で は な い と され て い る(G)。そ こで 、 ク ラ ヌ分 けの 第2の 基 準 と して 、 価 格 反応 度 の 相

違 を 考 慮 す る こ と と し、 価 格 反 応 セ グ メ ン トと価 格 非 反 応 セ グ.メン トの 両 者 を 想 定 しモ デル

化 を行 う。

以 上 の よ うに、 ク ラ ス 分 類(bた め の2つ の 軸 と して ブ ラ ン ド ・ロ イ ヤ ル テ ィと価 格 反 応 度

を.予め 想 定 す る。 した が っ.て この モ デ ル は 、 表 ユの よ うな ジ ョイ ン ト ・セ グ メ ンテ ー シ ョン

を基 礎 とす る こ と に な る 。 な お、 以 下 で は ア ・プ リオ リに 想 定 す るibク.ラ ス を セ グ メ ン

トと い う用 語 に統 一 して 説 明 す る。

一7一

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潜 在 ク ラ ス 分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

表1ジ ョ イ ン ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョン の イ メ ー ジ

4-2定 式 化

上 述 した よ うに 、 こ こで は ブ ラ ン ド ・ロ イ ヤ ル テ ィを基 準 と した セ グ メ ン ト(ロ イ ヤ ル テ

ィ ・セ グ メ ン ト)と 価 格 反 応 度 を基 準 と した セ グ メ ン ト(価 格 セ グ メ ン ト)と い う2つ の タ

イ プの セ グ メ ン トを考 慮 す る。 ロ ジ ッ ト・モ デ ル を利 用 す る と、 ロ イヤ ル テ.イ・セ グ.メン トi、

価 格 セ グ メ ン トノ に属 す る消 費 者hの 、 す期 に お け る ブ ラ ン ドkの 選 択 確 率 を(7)式 の よ

うに 表 す こ とが で き る.

Pkehij一鑑 鵠

(7)式 .のVkeGijは確 定 効 用 で あ り、 ⑧ 式 の よ うに 定 式 化 す る。

(7)

膿 ノ=βノ,協1+Pろ β2PR詩}+β35D島 (s)

こ こで 、B(k.は ブ ラ ン ドkが セ グ メ ン ト1の ロ イ ヤ ル .・ブ ラ ン ドで あ る と き1、 そ れ 以 外

は0を と る指 標 変 数(indicatorvariable)で あ り、 同様 にPろ は セグ メ ン トJが 価 格 反 応 セ グ

メ ン トで あ る と き1、 それ 以 外 は0を と る指 標 変 数 で あ る 。.PR島 、5D轟 は そ れ ぞ れ 、 ブ ラ

ン ド ・セ グ メ ン トi,価 格 セ グ メ ン トノに属 す る消 費 者hの'期 に お け るkブ ラ ン ドの 販 売

価 格 と特 別 陳 列 の 有 無(あ り=1、 な し=o)を 表 す 。β1~ β3は 、 推 定 され るパ ラ メ ー タで

あ る。(8)式 のBI;とPIEに よ って 、 セ グ メ ン トご と の確 定 効 用 が そ の セ グ メ ン トの 特 徴 に

した が っ て規 定 され る こ とに な る。

⑧ 式 の β1は ブ ラ ン ド ・ロ イ ヤル テ ィの高 さ を 表 す パ ラ メ ー タ で あ り、 各 セ グ メ ン ト共

通 の 値 を想 定 す る。 した が って 、 ロ イヤ ル テ ィ を基 準 と し た セ グ メ ン トは、 ロ イヤ ル テ ィの

高 さで は な く、 ど の ブ ラ ン ドに ロ イヤ ル テ.イを 持 っ て い るの か とい う要 因 だ け で規 定 され る

こ と に な る。 ロ イ ヤル テ ィ ・セ グ メ ン トご と に ブ ラ ン ド ・ロ イ ヤ ル テ ィの.高 さが 異 な る こ と

一$一

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潜 在 ク ラ ス分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ンテ ー シ ョ.ン

を想 定 し た モ デル 化 も可 能 だ が 、 こ こで は モ デル の シ ン プル さを優 先 し、 上 記 を仮 定 す る。

同 様 に 、価 格 効 果 を表 すQ.も 、 す べ て 同 一…・の 値 を と る こ と とす る。 これ に よ り、 価 格 反

応 セ グ メ ン トに属 す る消 費 者 は 、 どの ロ イヤ ル テ ィ ・セ グ メ ン トに属 しzい て も共 通 の価 格

反 応 度 を有 す る こ と を仮 定 した こ とに な る。 最 後 に 、 特 別 陳 列 の 効 果 を表 す β3も 、 す べ て

の セ グ メ ン トで 同 一 の値 を と る と仮 定 す る。

以 上 の よ うな仮 定 を お き、 ロ イ ヤ ル テ ィ ・セ グ メ ン トが'で あ り、 か つ 価 格 セ グ メ ン トが

ノで あ る セ グ メ ン トの 相 対 規 模 をmilと す る と、 任 意 の 消 費 者hのt期 に お け る ブ ラ ン ドk

の 選 択確 率 を ⑨ 式 の よ うに表 す こ とが で き る。

P浮㌧ ΣΣπびP轟1.∫

(9)

4-3推 定方法

(10)式 の対数尤度 を最大化す るパラメータを求める。実際の推定の際には、EMア ルゴ

リズムを利用する。ここで、瞭 は消費者hのt期 におけるブランドkの 購入.有無を表す2値

変数である。

LL・ 写1・9[写写・ij叩(姻 (10)

5.実 証 分析

5-1テ ー タ

実 証 分 析 の た め の デ ー タ に は,ス キ ャナ ー ・パ.ネル ・デ ー タ を利 用 しf(s:。 デ ー タの概 要 は,

表2の 通 りで あ る。 対 象 カテ ゴ リ門 は イ ンス タ ン.トコ ー ヒー で あ り,27ヶ 月 に渡 る世 帯 別 の

購 買履 歴 を捕 捉 して い る,対 象 ブ ラ ン ドは カ テ ゴ リー 内 の...ヒ位5ブ ラ ン ド.および 「そ の 他 ブ

ラ ン ド」 で あ る.「 そ の 他 ブ ラ ン ド」 は,..r.位5ブ ラ ン ド以 外 の す べ て の ブ ラ ン ドか ら な っ

て い る。 な お、 利 用 した デ ー タ に お け る..ヒ位.5ブ ラ ン ド合 計 の 数 量 ベ ー ス で の シ ェ ア は約

67%で あ る。 ま た 、 各 ブ ラ ン ドは それ ぞれ 異 な るサ イ.ズの 製 品 を有 して い るが 、 こ こで は す

べ て の サ イズ を統 合 し、 ブ ラ ン ド単 位 で の購 入 を捕 捉 して い る。

一9一

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潜 在 ク ラ ス 分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

表2デ ータの概要

店舗:首 都 圏 に立 地 す る大 手 ス ーパ ー

対 象 カ テゴ リー=イ ンス タ ン トコー ヒ ー

期 間:2002年1月 ~2004年3月

対 象 世 帯;2152世 帯

対 象 ブ ラン ド:イ ン ス タ ン トコー ヒー の上 位5 .ブラ ン ド(A~E>

お よ び 「その 他 ブラ ン ド」

分析上.考慮 したマーケティング変数は、(8)式 で示 されている価格と特別陳列の2つ であ

る。ただし、価格は実際の販売価格ではなく、価格掛け率を利用 した。これは通常価格を1と

したときの販売価格の掛け率であり、10%引 .きの販売であれば0.9な る。上述 したよ うに、

それぞれのブラン ドはサイズの異なる複難の製品を有しており、サイズによって販売価格が

異 なる。このため、価格の変数として販売価格 そのものではなく価格掛け率 を利用 しだ7)。

特別陳列は,当 該 日における当該ブランドの特別陳列の有無(2値 変数)に よって捉えた〔呂}。

5-2推 定 結 果

推 定 結 果 は 表3-Aお よ び 表3-Bに 示 され る 。 ロ イ ヤ ル テ ィ効 果 と価 格 効 果 を 表 す パ

ラ メ ー タ で あ る 、β[と β2の 値 を比 較 す る と、

β1≒ 一 〇.164× β2

とい う関 係 に な っ て い る。(8>式 のBj,kが1.0の2値 を と る指 標 変 数 、ktPRATが 通 常 価 格

を1と す る 価 格 掛 け率 で あ る こ と か ら、 上 記 の 関 係 は ブ ラ ン ド ・ロ イ ヤ ル テ.イの 効 果 が

16.4%の 値 引 き と ほ ぼ 等 しい とい う こ と を示 して い る。 この よ うに 、推 定 され た ロ イ ヤ ル テ

ィ効 果 を 、 価 格 の 効 果 パ ラ メ ー タ と比 較 す る こ とに よ っ て価 格 換 算 尺 度 と して 捉 え る こ と

も可 能 で あ る。 さ ら に.uえ ば,③ 式 に お け るQをQzの 関 数 と して 定 式 化 す る こ と に よ

っ て 、 任 意 の 水 準 の 価 格 換 算 尺 度 と して プ ラ ン.ド ・ロ イヤ ル テ ィを 操 作 的 に規 定 す る こ と

も 可 能 で あ る 。 この 場 合 に は 、例 えば 、 値 引 き率30%に 相 当 す る強 さを もっ た 特 定 ブ ラ ン

ドへ の 選 好 を ブ ラ ン ド.・ロ イヤ ル テ ィ と定 義 し、 そ.の基 準 に よ る ロ イヤ ル テ ィ ・セ グ メ ン

テ ー シ ョ ンを行 う こ と がで き る。

表3-Aβ1Q,の 推 定 結 果

パ ラ メ ー タ

R.(ロ イ ヤ ル テ.イ)

Pz(価 格)

β3(特 別 陳 列 〉

推 定 値

2.722

-16.626

2.217

一ie一

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潜 在 ク ラ ス 分 析 を用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テrシ ョ ン

表3-B各 セグメントの構成比の推定結果

表4は 、価格反応セグメン ト.と価格非反応 セグメン トの双方 を含む、各ブランドのロイヤ

ルテ ィ ・セグメン トの構成比 と、それぞれのブランドの実際のシェア(数 量ベース)と を比

較 している。両者の数値は概ね リンクしているが、乖離がみ られるブラン ドも存在する。例

えば、ブラン ドEは セグメン ト構成比よりも実際のシェアがかなり低い。こうした乖離は、

セグメン トを構成する消費者の購買特性 と、当該ブラン ドの販売特性の双方が影響 した結果

生じている。

なお、上記の点も含めて、各セグメン トの購買の特徴を詳細に分析することによって、実

務上有用な示唆が多く得 られると考.えられる.が、本稿の目的からはややはずれるため、こう

した観点か らの分析については、稿を改めて議論 したい。

表4ロ イヤルティ ・セグメン トの構成比 と翼際のシェアとの比較

ブラ ン ド セグメン ト構成比 実際のシェア

A 0.160io.164

B o.15310,162

C 0

.159iO.140

D 0,133 aria

E 0,140 o.oas

その他 0,254 0,334

計 1.OOC r.ooa

6.ま と め

本稿では、消費者の行動履歴データの活用の巧拙が、企業のマーケティング活動の成果 を

左右する大きな要因になってきたとい う問題意識のもと、行動履歴データを用いたセグ.メン

テーシ ョンについて議論を行った。セグメンテーシ ョンのための具体的な手法として潜在ク

一--一

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潜 在 ク ラ ス分 析 を 用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

ラス分析に焦点 を当て、分析手法.の特徴 を説明 した上で、セグメンテーションに活用するた

めの拡張の方向を整理 した。 さらに、分析者がア ・プリオリにセグメン トの特徴を規定 した

上で、潜在クラス分析の枠組みでジョイン ト・セグメンテーションを実施するためのモデル

を提案し、実証分析を行った。

この領域における重要な研究課題の1つ として、セグメントのプロファイリングがあげら

れる。セグメン トのプロファイ リシグとは、潜在クラスの特徴 を観測可能な属性と結びつけ

て把握することを指 している。直接的には観測で きない潜在クラスの特徴を、消費者のデモ

グラフィックスなどの観測可能な消費者属性に結びつけることができれば、分析結果か ら得

られたセグメンテーション基準を、より一般化 して活用することが可能 となる。

行動履歴データの利用可能姓が高まったといって も、すべての消費者の行動履歴が捕捉出

来るわけではない。例えば、メーカーが特定の小売業者 との協働によって行動履歴データを

利用したセグメンテーションを実施 したとしても、その結果 を直接活用できるのは待定の小

売業者の顧客の範囲に限定 される。ところが、それぞれのセグメントの特徴を観測可能な消

費者属性に結び付けて把握することができれば、他の一般的な市場でのマーケティング活動

に活かすことが可能となる。

セグメントのプロファイリングについては、潜在クラス分析によって抽出されたセグメン

トとデモ.グラフ.イク属性 との結びつきが弱いことなどが指摘 されているが,そ れを克服する

ための試み も行われて きている(s;。潜在クラス分析から得 られた結果 を.JPJR化してセグメン

テーションに活用するために、今後の発展が望まれる研究領域である。

本稿では、潜在クラス分析のセグメンテーションへの活用に焦点 を当てて、その応用可能

性について議論 して きた。実務において行動履歴データ活用の重要性に関する認識が高まっ

てくるなかで、潜在 クラス分析のセグメンテーションへの応用は、研究成果 と実務的応用とを

密接に結び付けられ る研究テーマとなってきている。今後の研究の一層の発展を期待 したい。

【注 】

(1)消 費 財 メー カ ー によ る顧 客 デ ー タの取 得 と活 用 につ い て は 、守[..1(2QO3)で 詳 しく議論 され て い る。

(z;例 えば 、 内 田(1998)は 、 セ グ.メンテ ー シ ョ ンの 究極 の か た ち と して の個 別 ア プ ローチ をセ グ メ ン トワ

ン戦 略 と して 位置 づ け、 論 じて い る。

(3;EMア ル ゴ リ.ズム につ いて は 、渡 辺 ・山 口(2000)に 詳 細 な 解 説 が あ る。

(4}マ ー ケテ ィ ング に お け る潜 在 ク ラ ス分析 の応 用 につ い て は、 渡 辺(2000)、 阿 部 ・近藤(zoos;な ど で

詳 し く紹 介 されて い る。

(5)例 えば、DicksonandSawyer(1990)は 、.スーバ ー マ ーケ ッ トで の 買 物 客 が 商 品 をカ ゴに 入れ た直 後 に、

そ の 商品 の価 格 を知 って い た人 が約 半 数 で あ る こ とを調 査 に よ っ て明 らか に して い る.

(s)実 証分 析 の た めの デ ー タは(財)流 通経 済 研 究 所か ら提 供 を受 け た。 記 して感 謝 す る.

一12一

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潜 在 ク ラ ス 分 析 を用 い た マ ー ケ ッ ト ・セ グ メ ン テ ー シ ョ ン

〔z同 じブ ラ ン ドで 同.・期 間 にお け る各 サ イ.ズの価 格 掛 け率 が 異 な る場合 に は,次 の 方 法 に よ って 代 表値 を

設 定 した。 まず,あ る世 帯 が 対 象 ブ ラ ン ドの い ず れか の サ イ ズ を購 入 した場 合 には,購 入 した サ イズ の

価 格 掛 け率 を適 用す る.そ の 世 帯 が他 ブ ラ ン ドを購 人 した 場合 には,そ の ブ ラ ン ドの 各 サ イズ の うち 最

も.低い価 格 掛 け率 を適 用 す る.

(8;特 別 陳 列 につ い て も,価 格 掛 け 率 と同様 に同 一 ブ ラ ン ドの 複数 の サ イズ ご と に特 別 陳列 の有 無 が.異な る

場 合 が あ る.こ こで は,次 σ)方法 に よ って 代表 値 を設 定 した,ま ず,あ る1世帯 が 対 象 ブ ラ ン ドの い ず れ

か の サ イ ズ を購入 した場.合に は,購 人 したサ イ ズ の特 別 陳 列の 有 無 を採 用す る,そ の世 帯 が他 ブ ラ ン ド

を購 入 した 場合 には,そ の ブ ラ ン ドの いず れ か の サ イズ の特 別 陳列 が あれ ば1.そ れ 以 外 は0と した

(91例 えば 、WedelandDesarbo(2002)は,抽 出 され た 潜在 ク ラ.スと消 費 者 の 属 性 変 数(デ モ グ ラ フ ィ ッ

クス な ど)と の 問 に,ど の よ うな 関係 を仮 定 す る こ とが 妥 当 か を テ ス トす る方 法 を提 案 し,実 証 分 析 に

よ って その 方 法の 有 効riを 検 証 して い る.

惨 考 文 献 】

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一13一