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42 POINT ネット販売とリアル店舗の双方で、輸入壁紙の提案を通じた需要の掘り起こし、 付加価値型の事業を創出 国内の糊メーカーと共同で何度でも貼れる糊を開発することで、壁紙リフォーム の普及促進を図っている 壁紙の貼り方教室などセルフリフォームという文化を訴求し、潜在的な需要を喚 代表者は元壁紙職人で、仕事を通じて、ユーザー が壁紙の色、柄を選び、自分で張り替えてインテリ アを楽しむ文化が日本にはないことに気付いたこと が、創業の契機となっている。セルフリフォームの 専門店として平成 12 年に WEB サイト「壁紙屋本舗」 をスタートさせた。平成 24 年には実店舗「輸入壁紙 専門店 WALPA STORE」を立ち上げ、恵比寿、銀座、 大阪、名古屋、福岡の 5 店舗で展開しており、今後、 直営店をさら拡大していく。 事業を始めたもう一つの理由は、建築業界におい て壁紙は「一番安い仕上げ材」としてしか認知され ておらず、同業他社との価格競争にさらされている 業界構造にあった。 この状況を打破するために、消費者に選ばれる壁 紙業界でなければ業界の未来はないとの思いから、 楽しく、魅力ある壁紙だけを扱う小売業への業態変 更を行った。壁紙が魅力的に思えるウェブサイト、 実店舗づくりに注力し、ビジネスモデルをイノベー ションすることで、年間 20 万件受注に繋げることが できている。 また、地方の内装工事店との連携を深めることで、 壁紙自体の価値を高め、それに見合う工事単価を対 価として受け取れるスキームを地方にも広げ、築い ていくため、DIY 小売店への卸売を行い、壁紙を張 り替えることの楽しさの普及も併せて行っている。 輸入壁紙は、「紙素材のものが多く、水を含むと破 れやすくクレームになりやすい」、「単価が高いのに貼 りにくい」と施工事業者から敬遠されていた。このた め、輸入壁紙の流通は進まず、商社やハウスビルダー が事前に選択する無難な壁紙の中から、ユーザーが選 ぶのが一般的であった。そこで、消費者が今まで触れ ることのなかった海外の面白い壁紙や日本に流通して いない壁紙を世界中から探し出し、現在、海外の壁紙 輸入壁紙に特化した専門店を展開し、自ら壁紙を 貼り替えるセルフリノベーションの文化を啓発 株式会社フィル ネット販売とリアル店舗の双方で、 輸入 壁紙の提案を通じた需要の掘り起こし、 付加価値型の事業を創出 POINT

POINT - Minister of Economy, Trade and Industry · ネット販売とリアル店舗の双方で、輸入壁紙の提案を通じた需要の掘り起こし、 付加価値型の事業を創出

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ルフリフォームのマーケット拡大が期待されている。また、元々の下地の壁紙を保護することにもなるため、賃貸住宅などで原状回復が可能な商品としてリフォーム需要の拡大に繋がると考えている。人材不足が深刻化している現在の建築業界において、ユーザーが自分でリフォームできる範囲を増やすことで、職人技術が必要な工事への人材確保が期待できる。

壁紙リフォームの普及促進として、各店舗で IT 技術を駆使し、壁紙の魅力が最大限伝えられる提案を行っている。①張り替えの疑似体験ができるプロジェクトマッピ

ング(銀座店)②ヘッドマウントディスプレイを利用し、実際

に 施 工 し た 部 屋 を 360 度 体 験 で き る ア プ リ、「WALPA360」( 銀座店に設置、今後は全店に設置予定 )

③ AR( 拡張現実 ) 技術を利用し、スマートフォンで壁紙張替え疑似体験できるスマートフォンアプリ

「WALPA AR」(iTunes のアップルストアでダウン

メーカー 100 社から輸入し、販売している。今後は、日本のインテリア業界、住宅業界に壁紙

デザインを提供できるように、さらには、日本の若者がデザインしたメイド・イン・ジャパンの壁紙を、海外に輸出できる企業へと発展させていきたいと考えている。このため、「WALLTS(ワルツ)」というブランドを立ち上げ、初の壁紙コンテストを開催し、日本人デザイナーの発掘にも取り組んでいる。

セルフリフォームのマーケット拡大に向けて、国内の糊メーカーと共同で付箋のように何度でも貼ったり剥がしたりできる「マタハルくん」の開発を行い、住宅においても、壁紙を気軽に貼れることから、セ

国内の糊メーカーと共同で何度でも貼れる糊を開発することで、壁紙リフォームの普及促進を図っている

POINT■ ネット販売とリアル店舗の双方で、輸入壁紙の提案を通じた需要の掘り起こし、

付加価値型の事業を創出

■国内の糊メーカーと共同で何度でも貼れる糊を開発することで、壁紙リフォームの普及促進を図っている

■壁紙の貼り方教室などセルフリフォームという文化を訴求し、潜在的な需要を喚起

代表者は元壁紙職人で、仕事を通じて、ユーザーが壁紙の色、柄を選び、自分で張り替えてインテリアを楽しむ文化が日本にはないことに気付いたことが、創業の契機となっている。セルフリフォームの専門店として平成 12 年に WEB サイト「壁紙屋本舗」をスタートさせた。平成 24 年には実店舗「輸入壁紙専門店 WALPA STORE」を立ち上げ、恵比寿、銀座、大阪、名古屋、福岡の 5 店舗で展開しており、今後、直営店をさら拡大していく。

事業を始めたもう一つの理由は、建築業界において壁紙は「一番安い仕上げ材」としてしか認知されておらず、同業他社との価格競争にさらされている業界構造にあった。

この状況を打破するために、消費者に選ばれる壁

紙業界でなければ業界の未来はないとの思いから、楽しく、魅力ある壁紙だけを扱う小売業への業態変更を行った。壁紙が魅力的に思えるウェブサイト、実店舗づくりに注力し、ビジネスモデルをイノベーションすることで、年間 20 万件受注に繋げることができている。

また、地方の内装工事店との連携を深めることで、壁紙自体の価値を高め、それに見合う工事単価を対価として受け取れるスキームを地方にも広げ、築いていくため、DIY 小売店への卸売を行い、壁紙を張り替えることの楽しさの普及も併せて行っている。

輸入壁紙は、「紙素材のものが多く、水を含むと破れやすくクレームになりやすい」、「単価が高いのに貼りにくい」と施工事業者から敬遠されていた。このため、輸入壁紙の流通は進まず、商社やハウスビルダーが事前に選択する無難な壁紙の中から、ユーザーが選ぶのが一般的であった。そこで、消費者が今まで触れることのなかった海外の面白い壁紙や日本に流通していない壁紙を世界中から探し出し、現在、海外の壁紙

輸入壁紙に特化した専門店を展開し、自ら壁紙を貼り替えるセルフリノベーションの文化を啓発

株式会社フィル

ネット販売とリアル店舗の双方で、輸入壁紙の提案を通じた需要の掘り起こし、付加価値型の事業を創出

POINT

【輸入壁紙卸先一覧】

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ルフリフォームのマーケット拡大が期待されている。また、元々の下地の壁紙を保護することにもなるため、賃貸住宅などで原状回復が可能な商品としてリフォーム需要の拡大に繋がると考えている。人材不足が深刻化している現在の建築業界において、ユーザーが自分でリフォームできる範囲を増やすことで、職人技術が必要な工事への人材確保が期待できる。

壁紙リフォームの普及促進として、各店舗で IT 技術を駆使し、壁紙の魅力が最大限伝えられる提案を行っている。①張り替えの疑似体験ができるプロジェクトマッピ

ング(銀座店)②ヘッドマウントディスプレイを利用し、実際

に 施 工 し た 部 屋 を 360 度 体 験 で き る ア プ リ、「WALPA360」( 銀座店に設置、今後は全店に設置予定 )

③ AR( 拡張現実 ) 技術を利用し、スマートフォンで壁紙張替え疑似体験できるスマートフォンアプリ

「WALPA AR」(iTunes のアップルストアでダウン

メーカー 100 社から輸入し、販売している。今後は、日本のインテリア業界、住宅業界に壁紙

デザインを提供できるように、さらには、日本の若者がデザインしたメイド・イン・ジャパンの壁紙を、海外に輸出できる企業へと発展させていきたいと考えている。このため、「WALLTS(ワルツ)」というブランドを立ち上げ、初の壁紙コンテストを開催し、日本人デザイナーの発掘にも取り組んでいる。

セルフリフォームのマーケット拡大に向けて、国内の糊メーカーと共同で付箋のように何度でも貼ったり剥がしたりできる「マタハルくん」の開発を行い、住宅においても、壁紙を気軽に貼れることから、セ

国内の糊メーカーと共同で何度でも貼れる糊を開発することで、壁紙リフォームの普及促進を図っている

POINT■ ネット販売とリアル店舗の双方で、輸入壁紙の提案を通じた需要の掘り起こし、

付加価値型の事業を創出

■国内の糊メーカーと共同で何度でも貼れる糊を開発することで、壁紙リフォームの普及促進を図っている

■壁紙の貼り方教室などセルフリフォームという文化を訴求し、潜在的な需要を喚起

代表者は元壁紙職人で、仕事を通じて、ユーザーが壁紙の色、柄を選び、自分で張り替えてインテリアを楽しむ文化が日本にはないことに気付いたことが、創業の契機となっている。セルフリフォームの専門店として平成 12 年に WEB サイト「壁紙屋本舗」をスタートさせた。平成 24 年には実店舗「輸入壁紙専門店 WALPA STORE」を立ち上げ、恵比寿、銀座、大阪、名古屋、福岡の 5 店舗で展開しており、今後、直営店をさら拡大していく。

事業を始めたもう一つの理由は、建築業界において壁紙は「一番安い仕上げ材」としてしか認知されておらず、同業他社との価格競争にさらされている業界構造にあった。

この状況を打破するために、消費者に選ばれる壁

紙業界でなければ業界の未来はないとの思いから、楽しく、魅力ある壁紙だけを扱う小売業への業態変更を行った。壁紙が魅力的に思えるウェブサイト、実店舗づくりに注力し、ビジネスモデルをイノベーションすることで、年間 20 万件受注に繋げることができている。

また、地方の内装工事店との連携を深めることで、壁紙自体の価値を高め、それに見合う工事単価を対価として受け取れるスキームを地方にも広げ、築いていくため、DIY 小売店への卸売を行い、壁紙を張り替えることの楽しさの普及も併せて行っている。

輸入壁紙は、「紙素材のものが多く、水を含むと破れやすくクレームになりやすい」、「単価が高いのに貼りにくい」と施工事業者から敬遠されていた。このため、輸入壁紙の流通は進まず、商社やハウスビルダーが事前に選択する無難な壁紙の中から、ユーザーが選ぶのが一般的であった。そこで、消費者が今まで触れることのなかった海外の面白い壁紙や日本に流通していない壁紙を世界中から探し出し、現在、海外の壁紙

輸入壁紙に特化した専門店を展開し、自ら壁紙を貼り替えるセルフリノベーションの文化を啓発

株式会社フィル

ネット販売とリアル店舗の双方で、輸入壁紙の提案を通じた需要の掘り起こし、付加価値型の事業を創出

POINT

【輸入壁紙卸先一覧】

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POINT■リフォームの「総合展示場」として、ショールーム型の大型店舗で出店を拡大。消費者をアシストできる現場や営業の経験者、有資格者を配置

■新たな顧客層の発掘

■「内見同行・見積りサービス」として、中古住宅選びからサポートし、その後のリフォームも提案

新築を検討する場合には、消費者が安心して住宅を比較検討できる場所として「住宅展示場」がある。これに対し消費者にとってリフォームの敷居を下げることを目的に国内主要メーカーの水回り設備機器や建材類を一堂に展示し、初めてリフォームに触れる消費者でも構造・機能・性能をその場で比較検討できるリフォームショップを開設し、明るく開放的な店舗づくりを行っている。

平成 18 年 6 月、東京都八王子市に総合リフォームショップ「リフォームプライス」1 号店 (1,090㎡ )をオープン。システムキッチン 36 台、システムバス11 台、室内ドア 46 本等を一堂に展示し、その後、東京・多摩地区を中心に 200 ~ 350 坪の大型店を

7 店舗展開している。店舗内の価格表示は「商品代・工事費・経費・税」

を総額表示で行い、リフォーム価格を透明化し、消費者が納得してリフォームサービスを選択できる環境を作り出している。「リフォームプライス」では、施工現場や営業等の

経験者でリフォームの一連の流れが分かるスタッフが常駐している。住居全体のリフォームといった大型の工事であっても、建築士がすぐに各店舗で対応できる体制を整えている。

店舗のエリア戦略は、60 万人商圏に対して大型店を1店舗配置、それを補完する形でサテライト店2 店舗、水回り専門店 2 店舗を展開、「車で 30 分圏内に 1 店舗」を基準としている。どの店舗も幹線道路沿いもしくは最寄り駅から徒歩圏内とすることで、消費者に身近であることの安心感を提供し、利用しやすさを重視している。

リフォームは、新築に比べて工事内容や価格がわかりにくく、実施の意思決定がしづらいケースが多

リフォーム施工店から、ショールーム型大型店による多店舗展開に。地域の「リフォームパートナー」へ

ホームテック株式会社ロード可能 )【プロジェクトマッピングの例】

【ヘッドマウントディスプレイ】

ユーザーが壁紙を楽しく貼り、自分で仕上げて空間を作り出せるよう、愛着のある住まい方を提案して新市場を拡大させるため、各店舗で定期的な壁紙の貼り方教室等を開催している。中古住宅を購入してリノベーションを行う消費者が増加する中、マンションなどリノベーションしたユーザーに壁紙の貼り方を教え、セルフリフォームマーケットへの訴求も行っている。「WALPA STORE」を利用するユーザーの 65%

が女性であり、なかでも 20 代~ 30 代半ばの日本の消費を担っていく世代に支持されている。各店舗で定期的に開催している各種教室も参加者のほとんどが女性で、自分が暮らす空間づくり楽しみながら壁紙の貼り方を学ぶ機会を提供している。

DATA本社所在地 〒 550-0015 大阪府大阪市西区南堀江 4-30-21

商圏(エリア) 全国

企業HP http://walpa.jp/

代表者 濱本 廣一

資本金 11,000 千円

業種 卸売業、小売業

設立 平成 12 年 5 月 8 日

従業員数 60 名

壁紙の貼り方教室などセルフリフォームという文化を訴求し、潜在的な需要を喚起

リフォームの「総合展示場」として、ショールーム型の大型店舗で出店を拡大。消費者をアシストできる現場や営業の経験者、有資格者を配置

DATA

POINT

【壁紙の貼り方教室】