終夜睡眠ポリグラフィー検査（PolySomnoGraphy:PSG）

2015/3/13

沖縄脳波研究会

日本光電工業㈱ 医療機器事業本部 企画部 中村 利宏

目次

１．終夜睡眠ポリグラフィー検査について ２．PSG検査装置で出来ること・判ること

１．終夜睡眠ポリグラフィー検査について

PSG検査とは

• 終夜睡眠ポリグラフ検査（ＰＳＧ検査）とは、夜間睡眠中の身体の状態を装着した電極を通して測定する検査で睡眠障害や睡眠呼吸障害などの確定診断検査と位置付けられています。

• 脳波、眼球運動、筋電図の動きなどを測定することで、睡眠の深さ（睡眠段階）や質、中途覚醒の有無を判定し、呼吸やいびき、酸素飽和度等により呼吸障害の有無・程度が分かります。

PSG検査で測定する項目と内容 測定項目 測定する内容・目的 測定センサー

睡眠、覚醒、睡眠深度 睡眠深度、覚醒反応 脳波（EEG）

REM睡眠の有無 眼球運動（EOG）

REM睡眠の有無 頤筋電図（EMG）

呼吸の状態 無呼吸の評価 鼻および口に装着した温度センサー

低呼吸の評価 鼻圧センサー（カニューレセンサー）

胸部および腹部の換気運動 胸部、腹部に装着したセンサー

食道内圧（胸腔内圧） 食道バルーン

動脈血酸素飽和度 SpO2値の変化 パルスオキシメータ

呼気終末炭酸ガス EtCO2 呼気終末炭酸ガスモニタ

循環機能 不整脈や心拍数変化 心電図（ECG)

血圧変動 非侵襲的血圧モニター

その他 いびき（気道の狭窄の有無） いびきモニター

CPAP圧 CPAP装置

四脚の動き 前頚骨筋筋電図

体位・体動 体位センサー・アクチグラフ

終夜睡眠ポリグラフィーの算定必須検査項目

各種センサ類の装着

脳波・眼球運動 ・頤筋筋電図

気流センサ（熱） 気道音（いびき） 酸素飽和度

呼吸努力（胸・腹） 体位（身体の向き）

脚の筋電図

全体像

PSG検査の流れ 来院・受付

着替え・シャワー

検査準備・センサ装着

PSG検査開始

PSG検査終了・センサ取外し

シャワー後、着替え

退院

17：00-18：00

18：00-19：00

19：30-20：30

21：00-

- 6：00

6：00- 7：00

7：00- 8：00

※通常、PSG検査前に外来受診、スクリーニング検査を経て、異常が疑われるケースに対し予約を取ってから実施される ※施設によって各項目の時間帯は異なります

※最低8時間の記録が必要。

※通常の入院とは異なる形で対応するケースが多い

※専用検査部屋で行う場合や病棟で行う場合もある

PSG検査の実際

• PSG検査は終夜行うため入院して検査を実施することになります。

• 睡眠を評価する検査なので、個室、防音設備、空調、暗視カメラ、大きめなベッド、照明等への工夫が施されています。

• 専門の検査技師が終夜アテンドしているケースもあります。

監視＆解析室 防音扉

調光型の間接照明 遮光カーテン

表示チャンネル

波形表示領域

脳波関連、呼吸関連項目で表示レンジ変更可能 脳波：30秒/画面 呼吸：2～5分/画面

呼吸が止まっている

SpO2値の低下

睡眠段階（ヒプノグラム） 検査中のコメント

睡眠ステージ

体位情報

どのような疾患が診断出来るのか？

• 終夜睡眠ポリグラフィー検査では、主に睡眠時無呼吸症候群をはじめとした睡眠呼吸障害や睡眠障害の鑑別診断に用いられます。

睡眠呼吸障害

過眠症

概日リズム睡眠障害

睡眠時随伴症

ナルコレプシー

レム睡眠行動障害

睡眠時遊行症（夢遊病） 時差ぼけ

周期性四肢運動障害

突発性過眠症

睡眠時無呼吸症候群

上気道抵抗症候群

シフトワーク睡眠障害

睡眠相後退症候群

PSG検査における注意点

• 脳波、眼球運動の入力インピーダンスは５kΩ以下にすることが望ましい。皮膚の汚れ・脂肪分を取り除き、接触抵抗をしっかりと下げます。

• 長時間の測定（最低8時間以上の記録が必要）となるため、電極、センサー類の装着・固定は重要。ケーブル類は束ねておくと良い。

• レム睡眠行動異常症をはじめとする睡眠時随伴症の鑑別例では、常時監視体制とビデオモニタリングが望ましい

• 常時監視体制が厳しい場合、看護師との連携は必須。検査中のトイレ補助等のサポートや、定期的な確認が必要となります。

• スコアリングでは自動解析だけでなく、目視による判読が必要。

PSGだから得られる情報

• 実際の睡眠時間、睡眠効率

• 実質睡眠時間で換算したAI AHI ODI

• 睡眠の質（睡眠段階等）

• 覚醒回数

• 覚醒の原因が呼吸障害によるものか否か

• 診察で予測できなかったエピソード – （周期性四肢運動障害・REM睡眠行動障害・不整脈・睡眠時てんかん等）

PSGスコアリングに必要な知識

• R&Kの睡眠段階判定マニュアル（1968年）

• ASDAのArousal(微小覚醒反応）判定基準（1992年）

• AASMの勧告（1999年）

• ASDAのPLM（周期性四肢運動）判定基準（1993年）

• AASMによる睡眠判定マニュアル（2007年）

– 現在はVer2.1（2014/7）が最新バージョン

睡眠段階

覚醒反応

呼吸イベント

周期性四肢運動

その他の睡眠検査

• 反復睡眠潜時検査（MSLT：Multiple sleep latency test）

– 覚醒につながる要因を除いたうえで、眠りにつく能力・眠り易さを客観的に評価する検査

– ナルコレプシーや突発性過眠症が強く疑われる患者に対し、PSG検査の翌日に概ね２時間間隔で４回以上の検査を実施

• 覚醒維持検査（MWT：Maintenance of wakefullness test)

– 眠気を誘う環境の元、定められた時間における覚醒を維持する能力を客観的に測定・評価する検査

– 通常４回試験、４０分法が推奨される。運転適性の参考指標となる。

診療報酬 終夜睡眠ポリグラフィー （3） 「3 1及び2以外の場合」 ・・・・3,300点

– ア 他の検査により睡眠中無呼吸発作の明らかな患者に対して睡眠時無呼吸症候群の診断を目的として行っ

た場合及び睡眠中多発するてんかん発作の患者又はうつ病若しくはナルコレプシーであって、重篤な睡眠、覚醒リズムの障害を伴うものの患者に対して行った場合に、1月に1回を限度として算定する。

– なお、区分番号「C107－2」在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料を算定している患者については、治療の効果を判定するため、初回月に限り2回、翌月以後は1月に1回を限度として算定できる。

– 当該検査を実施するに当たっては、下記（イ）から（ニ）に掲げる検査の全て（睡眠時呼吸障害の疑われない患者については（イ）のみ）を当該患者の睡眠中8時間以上連続して測定し、記録する。 • （イ） 脳波、眼球運動及びおとがい筋筋電図 • （ロ） 鼻又は口における気流の検知 • （ハ） 胸壁及び腹壁の換気運動記録 • （ニ） パルスオキシメーターによる動脈血酸素飽和度連続測定

– イ 脳波等の記録速度は、毎秒1.5センチメートル以上のものを標準とする。

– ウ 同時に行った検査のうち、区分番号「D200」スパイログラフィー等検査から本区分「2」までに掲げるもの及び

区分番号「D239」筋電図検査については、併せて算定できない。

– エ 測定を開始した後、患者の覚醒等やむを得ない事情により、当該検査を途中で中絶した場合には、当該中絶までに施行した検査に類似する検査項目によって算定する。

終夜睡眠ポリグラフィーの算定について

• 平成26年の診療報酬改定

• 病院内で実施するPSG検査については原則、「A400 短期滞在手術等基本料」の適用となります。 – 終夜睡眠ポリグラフィー３ 9,638点

• 有床診療所等でのPSG検査については、従来の診療報酬の算定が可能です。 – 終夜睡眠ポリグラフィー３ 3,300点

ただし、それぞれの点数に対応する手術又は検査について、手術においては入院５日以内に当該手術とは別の手術を行った場合、検査においては入院５日以内に手術を行った場合については、短期滞在手術等基本料３を算定しない。

２． PSG検査装置で出来ること・判ること

PSG検査装置とは

レポート

解析ソフト

LAN接続 ヘッドボックス メインユニット

専用ケーブル

測定部・アンプ 表示装置

各種センサ類

使用するセンサー類 脳波皿電極 胸壁腹部バンドセンサ 体位センサ エアフロ―センサー

カニューレセンサ ディスポプローブ（小児） リユーザブルプローブ

ネイザルアダプタ CO2センサーキット

生体信号の入力部

• 脳波計同等の高性能アンプを搭載 – 微弱な脳波信号を忠実に再現できる

– 弁別比：105db以上、入力抵抗：100MΩ以上、内部雑音：1.5μVp-p以下

• ALL in One 構造 – 多くのパラメータを記録するPSG検査なので、出来るだけセンサ-類はヘッドボックスに集約できた方が良い

脳波 25ch 眼球運動 2ch おとがい筋 3ch 心電図 4ch 呼吸 3ペア いびき 1ペア 脚筋電図 2ペア その他 2ペア

呼吸圧 エアフロー／いびき／CPAP （値・波形） 体位 1ch SpO２ SpO2値・脈波波形CO2 ETCO2値・CO2波形

脳波関連

呼吸・いびき・脚の筋電図関連

ECG、EMG 呼吸圧

体位

• その場でインピーダンス確認が可能 – インピーダンスチェックキーを押すと、入力箱に配列されたLEDにてインピーダンスを確認可能。ディスプレイ上にも表示。

• ワンタッチ着脱 – 検査中にベッドを離れる場合も、ワンタッチで接続ケーブルの着脱が可能。

– 電極、センサを装着したまま移動が可能。測定画面では、ヘッドボックスの着脱をメッセージでお知らせ。

• PSG記録特性 – 各測定チャンネルのアンプコンディション、フィルター処理の設定が可能なこと

– EEGパラメータ、呼吸イベントを強調して表示できる

• 解析設定

多様な拡張性

• 複数ベッド構成/検査環境に併せたレイアウトにも対応

• デジタルビデオファイリング

– 波形とビデオ画像の同時取込機能

カラーカメラセット

1BED 2BED

LANケーブル

MSLT/MWT検査

• PSGのみならず、日中の過度の眠気（EDS）を評価する各種検査にも対応できる機能があるとなお良い。 ※MSLT：Multiple Sleep Latency Test ※MWT：Maintenance Wakefulness Test

結果レポートについて • AASM規定の指標（抜粋）

– 消灯・点灯、TST、TRT、入眠潜時、入眠後覚醒、睡眠効率、個々のStage時間、TST中の各Stage割合、Arousal Index、無呼吸数、低呼吸数、AHI等

• AASMではPSGで報告すべきパラメータを規定しており、PSG装置よりそれぞれの指標が出力されることが望ましい。

ご静聴ありがとうございました。