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タイトル � : 著者 �, �; Ikuma, Katsumi 引用 �, 16(1): 11-23 発行日 2018-06-25

大学生の睡眠と健康に関する研究 : 睡眠障害の現状 …hokuga.hgu.jp/dspace/bitstream/123456789/3560/1/02_伊熊...タイトル 大学生の睡眠と健康に関する研究

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タイトル大学生の睡眠と健康に関する研究 睡眠障害の現状

に着目して

著者 伊熊 克己 Ikuma Katsumi

引用 北海学園大学経営論集 16(1) 11-23

発行日 2018-06-25

大学生の睡眠と健康に関する研究―睡眠障害の現状に着目して―

伊 熊 克 己

緒 言

現代社会は 24 時間社会と称されてすでに久しいが我が国はまさしくその言葉が反映されているかのように近年益々国民生活の夜型化が進行し国民の睡眠時間は減少しており様々な睡眠に関する健康問題が顕在化してきているちなみに2015 年 NHK 全国調査1)データによれば国民全体の平日における日の平均睡眠時間は時間 15 分を示し1995 年の時間 27 分より 12 分間減少していることをまた同年の厚労省国民健康調査2)では睡眠で休養が十分に取れていないとする者の割合が 200を占め人に人が何らかの問題を抱えているという現状が報告されている一般に睡眠の問題には睡眠障害として不眠症があげられその症状には入眠困難中途覚醒早期覚醒等が該当しており今日大学生もこれらの症状を抱えて悩んでいる者が多いものと思われるとりわけ大学生は高校までの偏差値教育を主体とした過密な学業スケジュールの生活から解放され時間的規制のない自由奔放な生活を送っておりまた特に大学入学を契機に初めて親元を離れ一人で生活する者においては日々の生活が乱れやすく夜型の生活パターンの継続者が多く健康的な睡眠習慣の欠如から睡眠障害に陥る者が出現する

ものと考える坂本は3)大学生はそれまでの規則正しい生活から離れ自ら決めた時間割やサークルアルバイト等の領域で自由度の大きい生活スタイルが可能になる世代でありまた最先端の機器や流行に敏感でありそうしたスタイルを追って生活リズムを崩し睡眠の不規則化や夜型化が進行しやすい状況におかれていることをまた中村は4)大学生は現代社会で生活する人々のなかで生活時間に最も規制がなく不規則でリズムのない生活を送りがちであり比較的規制のある生活を送る社会人中学生高等学校生に比べ特に睡眠の環境睡眠の質睡眠時間に関して意識を払うものも少なく質のいい睡眠が粗野にされていることが想定できると述べている以上このような国民の睡眠に関する状況や大学生の生活や睡眠に関する背景を踏まえて本研究は大学生の睡眠障害の現状や睡眠習慣を明らかにするためにWHO が中心となって設立した睡眠と健康に関する世界プロジェクト作成による不眠症判定に基づくアテネ不眠尺度5)の質問と睡眠とその他の生活や健康状態に関するアンケート調査を行い今後における学生の睡眠問題の解決方途を見出すための基礎資料を得ることが目的である

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研究方法

調査は一般教育科目の健康とスポーツの科学講義履修学生を対象に講義終了時に無記名による質問紙法調査を実施した調査期日は2016 年月 26 日2017 年月 12日であった調査の倫理的配慮については実施日に研究目的個人情報保護の厳守データの厳正管理等についての口頭説明を行い調査協力の同意を得られた者からのみ回収した回収標本は記入不備の調査票を除外した205 名から回答を得た分析対象者の基本属性は男子学生 152 名(741)女子学生 53名(259)であった調査内容はアテネ不眠尺度による質問

入眠困難中途覚醒早期覚醒睡眠時間の充足度睡眠の質の満足度日中の気分日中の身体的精神的活動状態日中の眠気の項目と睡眠習慣に関する調査就寝時刻起床時刻平均睡眠時間の項目その他の生活習慣と健康関連朝食摂取朝食欠食理由自覚的ストレス健康感項目および健康に関する自覚症状 18項目6)(回答カテゴリーをいつもある時々あるまったくないの項目から選択させた)であったなおそれぞれ項目間における差の検定は

1108530検定で行い有意差の危険率は未満を有意とした

結 果

アテネ不眠尺度の結果まずここからは学生のアテネ不眠尺度判定結果について報告していくこととする)総得点による評価(表 1-総合評価参照)アテネ不眠尺度における項目(表1-A~H)の総合計得点では睡眠に問題はなし(0~3点)の者が 443若干不眠症

の疑いあり(4~5点)の者が 298不眠症の可能性大(点以上)の者が 259の順であった以上の結果より多少なりとも不眠症の可能性がある者は睡眠に問題はない(0~3点)443を除く 557であったなお性別では有意差は認められなかった)入眠困難(表 1-A 参照)入眠困難は入床より入眠に要する時間について回答させたものであるこれによれば全体ではいつもより寝つきは良いが590を占め最も多く次いでいつもより時間がかかった268いつもよりかなり時間がかかった93いつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかった49の順であった以上の結果より多少なりとも入眠困難を認める者の割合はいつもより寝つきは良い590を除く 410であったなお性別では有意差は認められなかった)中途覚醒(表 1-B 参照)中途覚醒は夜間睡眠途中における覚醒の有無について回答させたものであるこれによれば全体では問題になるほどのことはなかったが 907を占め最も多く次いで少し困ることがあった83かなり困っている10等の順であった以上の結果より多少なりとも中途覚醒を認める者は問題になるほどのことはかった907を除く 93であったなお性別では有意差は認められなかった)早期覚醒(表 1-C 参照)早期覚醒は希望する起床時刻よりも早期に覚醒が起こり覚醒以降に入眠困難な状況が有ったか否かについて回答させたものであるこれによれば全体ではそのようなことは無かったが 790を占め最も多く次いで少し早かった180かなり早かった20非常に早かったかあるいは全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも早期覚醒を認める

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 1 アテネ不眠尺度による質問項目の結果一覧 ()

属性項目

性 別全体

(n205)男子(n152)

女子(n53) 1108530

総合評価

睡眠に問題はなし (0~3点) 434 472

ns

443

若干不眠症の疑いあり(4~5点) 276 358 298

不眠症の可能性大 (6点以上) 289 170 259

A寝つき(布団に入ってから眠るまで要する時間)はどうでしたか

いつもより寝つきは良い 579 623

ns

590

いつもより時間がかかった 276 245 268

いつもよりかなり時間がかかった 79 132 93

いつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかった 66 00 49

B 夜間睡眠の途中で目が覚めましたか

問題になるほどのことはなかった 895 943

ns

907

少し困ることがあった 92 57 83

かなり困っている 13 00 10

深刻な状態かあるいは全く眠れなかった 00 00 00

C希望する起床時刻より早く目覚めそれ以上眠れないことはありましたか

そのようなことは無かった 770 849

ns

790

少し早かった 204 113 180

かなり早かった 13 38 20

非常に早かったかあるいは全く眠れなかった 13 00 10

D あなたの総睡眠時間はどうでしたか

十分である 355 340

ns

351

少し足りない 493 547 507

かなり足りない 138 113 132

全く足りないか全く眠れなかった 13 00 10

E あなたの全体的な睡眠の質はどうでしたか

満足している 408 528

ns

439

少し不満 467 434 459

かなり不満 112 38 92

非常に不満か全く眠れなかった 13 00 10

F 日中の気分はどうでしたか

いつも通り 676 742

ns

691

少しめいった 257 226 250

かなりめいった 57 32 52

非常にめいった 10 00 07

G日中の身体的および精神的活動の状態についてはいかがでしたか

いつも通り 724 755

ns

732

少し低下した 230 208 224

かなり低下した 39 38 39

非常に低下した 07 00 05

H 日中の眠気はありましたか

全くなかった 191 132

ns

176

少しあった 592 566 585

かなりあった 178 283 205

激しかった 39 19 34

者はそのようなことは無かった790を除く 210であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠時間の充足度(表 1-D 参照)睡眠時間の充足度は全体では少し足りないが 507を占め最も多く次いで十分である351かなり足りない132全く足りないか全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠時間を不足と認める者は十分である351を除く 649であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠の質の満足度(表 1-E 参照)睡眠の質における満足度は全体では少し不満が 459を占め最も多く次いで満足している439かなり不満92非常に不満か全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠に不満感を認める者は満足している439を除く 561であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の気分(表 1-F 参照)日中の気分は全体ではいつも通りが691を占め最も多く次いで少しめいった250かなりめいった52非常にめいった07の順であった以上の結果より多少なりとも日中に気分の低下を認める者はいつも通り691を除く 309であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の身体的精神的活動状態(表 1-G参照)日中の身体的精神的活動状態は全体ではいつも通りが 732を占め最も多く次いで少し低下した224かなり低下した39非常に低下した05の順であった以上の結果より多少なりとも日中身体的精神的活動の低下を認める者はいつも通り732を除く 268であったなお性別では有意差は認められなかった

)日中の眠気(表 1-H参照)日中の眠気は全体では少しあったが585を占め最も多く次いでかなりあった205全くなかった176激しかった34の順であった以上の結果より多少なりとも日中に眠気を認める者は全くなかった176を除く 824であったなお性別では有意差は認められなかった

睡眠および生活習慣健康関連項目の結果次にここからは睡眠とその他の生活習慣項目の結果について報告することとする10)就寝時刻(図Ⅰ参照)就寝時刻は全体では午前時以降が537を占め最も多く次いで午前時~午前時332午後 11 時~午前時97午後 10 時~午後 11 時20午後 10 時前14の順であった午前時以降の就寝者は午前時~午前時332と午前時以降537を合算した 869を占めていたなお性別では有意差は認められなかった11)起床時刻(図Ⅱ参照)起床時刻は全体では7~8時が 329を占め最も多く次いで8~9時2396~7時234時以降180時前20の順であったなお性別では有意差は認められなかった12)平均睡眠時間(図Ⅲ参照)平均睡眠時間は全体では5~7 時間未満が 571を占め最も多く次いで3~5時間未満2047~8 時間未満176時間以上29時間未満20の順であったなお性別では有意差は認められなかった13)朝食摂取と朝食欠食の理由(図ⅣⅤ

参照)朝食摂取は全体ではほぼ毎日摂っている542を占め最も多く次いで時々摂

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

らない307まったく摂らない151の順であった時々摂らないまったく摂らないを合算すると 458の者が規則的朝食習慣を有していなかったなお性別では有意差は認められなかったまた朝食の欠食理由は起床時刻が遅く食べる時間がないからが 702で最も多く次いで朝は食欲がないから309普段から朝食は摂らないから138等であった

性別では女子より男子に高率であった項目は普段から朝食は摂らないからお金がないからの項目であり他方男子より女子に高率であった項目は起床時刻が遅く食べる時間がないから朝は食欲がないからの項目であった14)自覚的ストレス(図Ⅵ参照)自覚的ストレスは全体では多少あるが 683を占め最も多く次いでほとんど

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅰ就寝時刻

図Ⅱ起床時刻

ない171非常に多い146の順であった多少ある非常に多いを合算すると 829の者がストレスを自覚していたなお性別では有意差は認められなかった15)健康感(図Ⅶ参照)健康感は全体ではまあ健康であるが

594を占め最も多く次いで非常に健康である215あまり健康でない171健康でない20の順であったあまり健康でない健康でないを合算すると191の者が望ましい健康感を有していなかったなお性別では有意差は認められな

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅲ平均睡眠時間

図Ⅳ朝食摂取

かった

健康に関する自覚症状結果(表 2-AB参照)ここからは学生の健康に関する自覚症状について全体と性別の結果について報告していく表 2-A は自覚症状 18 項目についていつもある時々あるまったくないのつのカテゴリー別に全体のデータを集計し一覧に表示したものであるこれによればいつもあると回答された自覚症状の上位項目は(17)朝起きるのがつらい

546(3)疲れやすい385(1)疲れている376でありまた時々あると回答された自覚症状の上位項目は(1)疲れている439(13)集中できない405(14)頭がさえない371であったまた表 2-B は自覚症状つのカテゴリー項目の内いつもあるおよび時々あるを合算した数値をあると表記しそれを全体と性別で示したものである全体では(1)疲れている815と最も多く次いで(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅴ朝食欠食理由(MA)

図Ⅵ自覚的ストレス

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

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12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

大学生の睡眠と健康に関する研究―睡眠障害の現状に着目して―

伊 熊 克 己

緒 言

現代社会は 24 時間社会と称されてすでに久しいが我が国はまさしくその言葉が反映されているかのように近年益々国民生活の夜型化が進行し国民の睡眠時間は減少しており様々な睡眠に関する健康問題が顕在化してきているちなみに2015 年 NHK 全国調査1)データによれば国民全体の平日における日の平均睡眠時間は時間 15 分を示し1995 年の時間 27 分より 12 分間減少していることをまた同年の厚労省国民健康調査2)では睡眠で休養が十分に取れていないとする者の割合が 200を占め人に人が何らかの問題を抱えているという現状が報告されている一般に睡眠の問題には睡眠障害として不眠症があげられその症状には入眠困難中途覚醒早期覚醒等が該当しており今日大学生もこれらの症状を抱えて悩んでいる者が多いものと思われるとりわけ大学生は高校までの偏差値教育を主体とした過密な学業スケジュールの生活から解放され時間的規制のない自由奔放な生活を送っておりまた特に大学入学を契機に初めて親元を離れ一人で生活する者においては日々の生活が乱れやすく夜型の生活パターンの継続者が多く健康的な睡眠習慣の欠如から睡眠障害に陥る者が出現する

ものと考える坂本は3)大学生はそれまでの規則正しい生活から離れ自ら決めた時間割やサークルアルバイト等の領域で自由度の大きい生活スタイルが可能になる世代でありまた最先端の機器や流行に敏感でありそうしたスタイルを追って生活リズムを崩し睡眠の不規則化や夜型化が進行しやすい状況におかれていることをまた中村は4)大学生は現代社会で生活する人々のなかで生活時間に最も規制がなく不規則でリズムのない生活を送りがちであり比較的規制のある生活を送る社会人中学生高等学校生に比べ特に睡眠の環境睡眠の質睡眠時間に関して意識を払うものも少なく質のいい睡眠が粗野にされていることが想定できると述べている以上このような国民の睡眠に関する状況や大学生の生活や睡眠に関する背景を踏まえて本研究は大学生の睡眠障害の現状や睡眠習慣を明らかにするためにWHO が中心となって設立した睡眠と健康に関する世界プロジェクト作成による不眠症判定に基づくアテネ不眠尺度5)の質問と睡眠とその他の生活や健康状態に関するアンケート調査を行い今後における学生の睡眠問題の解決方途を見出すための基礎資料を得ることが目的である

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研究方法

調査は一般教育科目の健康とスポーツの科学講義履修学生を対象に講義終了時に無記名による質問紙法調査を実施した調査期日は2016 年月 26 日2017 年月 12日であった調査の倫理的配慮については実施日に研究目的個人情報保護の厳守データの厳正管理等についての口頭説明を行い調査協力の同意を得られた者からのみ回収した回収標本は記入不備の調査票を除外した205 名から回答を得た分析対象者の基本属性は男子学生 152 名(741)女子学生 53名(259)であった調査内容はアテネ不眠尺度による質問

入眠困難中途覚醒早期覚醒睡眠時間の充足度睡眠の質の満足度日中の気分日中の身体的精神的活動状態日中の眠気の項目と睡眠習慣に関する調査就寝時刻起床時刻平均睡眠時間の項目その他の生活習慣と健康関連朝食摂取朝食欠食理由自覚的ストレス健康感項目および健康に関する自覚症状 18項目6)(回答カテゴリーをいつもある時々あるまったくないの項目から選択させた)であったなおそれぞれ項目間における差の検定は

1108530検定で行い有意差の危険率は未満を有意とした

結 果

アテネ不眠尺度の結果まずここからは学生のアテネ不眠尺度判定結果について報告していくこととする)総得点による評価(表 1-総合評価参照)アテネ不眠尺度における項目(表1-A~H)の総合計得点では睡眠に問題はなし(0~3点)の者が 443若干不眠症

の疑いあり(4~5点)の者が 298不眠症の可能性大(点以上)の者が 259の順であった以上の結果より多少なりとも不眠症の可能性がある者は睡眠に問題はない(0~3点)443を除く 557であったなお性別では有意差は認められなかった)入眠困難(表 1-A 参照)入眠困難は入床より入眠に要する時間について回答させたものであるこれによれば全体ではいつもより寝つきは良いが590を占め最も多く次いでいつもより時間がかかった268いつもよりかなり時間がかかった93いつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかった49の順であった以上の結果より多少なりとも入眠困難を認める者の割合はいつもより寝つきは良い590を除く 410であったなお性別では有意差は認められなかった)中途覚醒(表 1-B 参照)中途覚醒は夜間睡眠途中における覚醒の有無について回答させたものであるこれによれば全体では問題になるほどのことはなかったが 907を占め最も多く次いで少し困ることがあった83かなり困っている10等の順であった以上の結果より多少なりとも中途覚醒を認める者は問題になるほどのことはかった907を除く 93であったなお性別では有意差は認められなかった)早期覚醒(表 1-C 参照)早期覚醒は希望する起床時刻よりも早期に覚醒が起こり覚醒以降に入眠困難な状況が有ったか否かについて回答させたものであるこれによれば全体ではそのようなことは無かったが 790を占め最も多く次いで少し早かった180かなり早かった20非常に早かったかあるいは全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも早期覚醒を認める

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 1 アテネ不眠尺度による質問項目の結果一覧 ()

属性項目

性 別全体

(n205)男子(n152)

女子(n53) 1108530

総合評価

睡眠に問題はなし (0~3点) 434 472

ns

443

若干不眠症の疑いあり(4~5点) 276 358 298

不眠症の可能性大 (6点以上) 289 170 259

A寝つき(布団に入ってから眠るまで要する時間)はどうでしたか

いつもより寝つきは良い 579 623

ns

590

いつもより時間がかかった 276 245 268

いつもよりかなり時間がかかった 79 132 93

いつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかった 66 00 49

B 夜間睡眠の途中で目が覚めましたか

問題になるほどのことはなかった 895 943

ns

907

少し困ることがあった 92 57 83

かなり困っている 13 00 10

深刻な状態かあるいは全く眠れなかった 00 00 00

C希望する起床時刻より早く目覚めそれ以上眠れないことはありましたか

そのようなことは無かった 770 849

ns

790

少し早かった 204 113 180

かなり早かった 13 38 20

非常に早かったかあるいは全く眠れなかった 13 00 10

D あなたの総睡眠時間はどうでしたか

十分である 355 340

ns

351

少し足りない 493 547 507

かなり足りない 138 113 132

全く足りないか全く眠れなかった 13 00 10

E あなたの全体的な睡眠の質はどうでしたか

満足している 408 528

ns

439

少し不満 467 434 459

かなり不満 112 38 92

非常に不満か全く眠れなかった 13 00 10

F 日中の気分はどうでしたか

いつも通り 676 742

ns

691

少しめいった 257 226 250

かなりめいった 57 32 52

非常にめいった 10 00 07

G日中の身体的および精神的活動の状態についてはいかがでしたか

いつも通り 724 755

ns

732

少し低下した 230 208 224

かなり低下した 39 38 39

非常に低下した 07 00 05

H 日中の眠気はありましたか

全くなかった 191 132

ns

176

少しあった 592 566 585

かなりあった 178 283 205

激しかった 39 19 34

者はそのようなことは無かった790を除く 210であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠時間の充足度(表 1-D 参照)睡眠時間の充足度は全体では少し足りないが 507を占め最も多く次いで十分である351かなり足りない132全く足りないか全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠時間を不足と認める者は十分である351を除く 649であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠の質の満足度(表 1-E 参照)睡眠の質における満足度は全体では少し不満が 459を占め最も多く次いで満足している439かなり不満92非常に不満か全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠に不満感を認める者は満足している439を除く 561であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の気分(表 1-F 参照)日中の気分は全体ではいつも通りが691を占め最も多く次いで少しめいった250かなりめいった52非常にめいった07の順であった以上の結果より多少なりとも日中に気分の低下を認める者はいつも通り691を除く 309であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の身体的精神的活動状態(表 1-G参照)日中の身体的精神的活動状態は全体ではいつも通りが 732を占め最も多く次いで少し低下した224かなり低下した39非常に低下した05の順であった以上の結果より多少なりとも日中身体的精神的活動の低下を認める者はいつも通り732を除く 268であったなお性別では有意差は認められなかった

)日中の眠気(表 1-H参照)日中の眠気は全体では少しあったが585を占め最も多く次いでかなりあった205全くなかった176激しかった34の順であった以上の結果より多少なりとも日中に眠気を認める者は全くなかった176を除く 824であったなお性別では有意差は認められなかった

睡眠および生活習慣健康関連項目の結果次にここからは睡眠とその他の生活習慣項目の結果について報告することとする10)就寝時刻(図Ⅰ参照)就寝時刻は全体では午前時以降が537を占め最も多く次いで午前時~午前時332午後 11 時~午前時97午後 10 時~午後 11 時20午後 10 時前14の順であった午前時以降の就寝者は午前時~午前時332と午前時以降537を合算した 869を占めていたなお性別では有意差は認められなかった11)起床時刻(図Ⅱ参照)起床時刻は全体では7~8時が 329を占め最も多く次いで8~9時2396~7時234時以降180時前20の順であったなお性別では有意差は認められなかった12)平均睡眠時間(図Ⅲ参照)平均睡眠時間は全体では5~7 時間未満が 571を占め最も多く次いで3~5時間未満2047~8 時間未満176時間以上29時間未満20の順であったなお性別では有意差は認められなかった13)朝食摂取と朝食欠食の理由(図ⅣⅤ

参照)朝食摂取は全体ではほぼ毎日摂っている542を占め最も多く次いで時々摂

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

らない307まったく摂らない151の順であった時々摂らないまったく摂らないを合算すると 458の者が規則的朝食習慣を有していなかったなお性別では有意差は認められなかったまた朝食の欠食理由は起床時刻が遅く食べる時間がないからが 702で最も多く次いで朝は食欲がないから309普段から朝食は摂らないから138等であった

性別では女子より男子に高率であった項目は普段から朝食は摂らないからお金がないからの項目であり他方男子より女子に高率であった項目は起床時刻が遅く食べる時間がないから朝は食欲がないからの項目であった14)自覚的ストレス(図Ⅵ参照)自覚的ストレスは全体では多少あるが 683を占め最も多く次いでほとんど

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅰ就寝時刻

図Ⅱ起床時刻

ない171非常に多い146の順であった多少ある非常に多いを合算すると 829の者がストレスを自覚していたなお性別では有意差は認められなかった15)健康感(図Ⅶ参照)健康感は全体ではまあ健康であるが

594を占め最も多く次いで非常に健康である215あまり健康でない171健康でない20の順であったあまり健康でない健康でないを合算すると191の者が望ましい健康感を有していなかったなお性別では有意差は認められな

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅲ平均睡眠時間

図Ⅳ朝食摂取

かった

健康に関する自覚症状結果(表 2-AB参照)ここからは学生の健康に関する自覚症状について全体と性別の結果について報告していく表 2-A は自覚症状 18 項目についていつもある時々あるまったくないのつのカテゴリー別に全体のデータを集計し一覧に表示したものであるこれによればいつもあると回答された自覚症状の上位項目は(17)朝起きるのがつらい

546(3)疲れやすい385(1)疲れている376でありまた時々あると回答された自覚症状の上位項目は(1)疲れている439(13)集中できない405(14)頭がさえない371であったまた表 2-B は自覚症状つのカテゴリー項目の内いつもあるおよび時々あるを合算した数値をあると表記しそれを全体と性別で示したものである全体では(1)疲れている815と最も多く次いで(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅴ朝食欠食理由(MA)

図Ⅵ自覚的ストレス

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

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10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

研究方法

調査は一般教育科目の健康とスポーツの科学講義履修学生を対象に講義終了時に無記名による質問紙法調査を実施した調査期日は2016 年月 26 日2017 年月 12日であった調査の倫理的配慮については実施日に研究目的個人情報保護の厳守データの厳正管理等についての口頭説明を行い調査協力の同意を得られた者からのみ回収した回収標本は記入不備の調査票を除外した205 名から回答を得た分析対象者の基本属性は男子学生 152 名(741)女子学生 53名(259)であった調査内容はアテネ不眠尺度による質問

入眠困難中途覚醒早期覚醒睡眠時間の充足度睡眠の質の満足度日中の気分日中の身体的精神的活動状態日中の眠気の項目と睡眠習慣に関する調査就寝時刻起床時刻平均睡眠時間の項目その他の生活習慣と健康関連朝食摂取朝食欠食理由自覚的ストレス健康感項目および健康に関する自覚症状 18項目6)(回答カテゴリーをいつもある時々あるまったくないの項目から選択させた)であったなおそれぞれ項目間における差の検定は

1108530検定で行い有意差の危険率は未満を有意とした

結 果

アテネ不眠尺度の結果まずここからは学生のアテネ不眠尺度判定結果について報告していくこととする)総得点による評価(表 1-総合評価参照)アテネ不眠尺度における項目(表1-A~H)の総合計得点では睡眠に問題はなし(0~3点)の者が 443若干不眠症

の疑いあり(4~5点)の者が 298不眠症の可能性大(点以上)の者が 259の順であった以上の結果より多少なりとも不眠症の可能性がある者は睡眠に問題はない(0~3点)443を除く 557であったなお性別では有意差は認められなかった)入眠困難(表 1-A 参照)入眠困難は入床より入眠に要する時間について回答させたものであるこれによれば全体ではいつもより寝つきは良いが590を占め最も多く次いでいつもより時間がかかった268いつもよりかなり時間がかかった93いつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかった49の順であった以上の結果より多少なりとも入眠困難を認める者の割合はいつもより寝つきは良い590を除く 410であったなお性別では有意差は認められなかった)中途覚醒(表 1-B 参照)中途覚醒は夜間睡眠途中における覚醒の有無について回答させたものであるこれによれば全体では問題になるほどのことはなかったが 907を占め最も多く次いで少し困ることがあった83かなり困っている10等の順であった以上の結果より多少なりとも中途覚醒を認める者は問題になるほどのことはかった907を除く 93であったなお性別では有意差は認められなかった)早期覚醒(表 1-C 参照)早期覚醒は希望する起床時刻よりも早期に覚醒が起こり覚醒以降に入眠困難な状況が有ったか否かについて回答させたものであるこれによれば全体ではそのようなことは無かったが 790を占め最も多く次いで少し早かった180かなり早かった20非常に早かったかあるいは全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも早期覚醒を認める

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 1 アテネ不眠尺度による質問項目の結果一覧 ()

属性項目

性 別全体

(n205)男子(n152)

女子(n53) 1108530

総合評価

睡眠に問題はなし (0~3点) 434 472

ns

443

若干不眠症の疑いあり(4~5点) 276 358 298

不眠症の可能性大 (6点以上) 289 170 259

A寝つき(布団に入ってから眠るまで要する時間)はどうでしたか

いつもより寝つきは良い 579 623

ns

590

いつもより時間がかかった 276 245 268

いつもよりかなり時間がかかった 79 132 93

いつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかった 66 00 49

B 夜間睡眠の途中で目が覚めましたか

問題になるほどのことはなかった 895 943

ns

907

少し困ることがあった 92 57 83

かなり困っている 13 00 10

深刻な状態かあるいは全く眠れなかった 00 00 00

C希望する起床時刻より早く目覚めそれ以上眠れないことはありましたか

そのようなことは無かった 770 849

ns

790

少し早かった 204 113 180

かなり早かった 13 38 20

非常に早かったかあるいは全く眠れなかった 13 00 10

D あなたの総睡眠時間はどうでしたか

十分である 355 340

ns

351

少し足りない 493 547 507

かなり足りない 138 113 132

全く足りないか全く眠れなかった 13 00 10

E あなたの全体的な睡眠の質はどうでしたか

満足している 408 528

ns

439

少し不満 467 434 459

かなり不満 112 38 92

非常に不満か全く眠れなかった 13 00 10

F 日中の気分はどうでしたか

いつも通り 676 742

ns

691

少しめいった 257 226 250

かなりめいった 57 32 52

非常にめいった 10 00 07

G日中の身体的および精神的活動の状態についてはいかがでしたか

いつも通り 724 755

ns

732

少し低下した 230 208 224

かなり低下した 39 38 39

非常に低下した 07 00 05

H 日中の眠気はありましたか

全くなかった 191 132

ns

176

少しあった 592 566 585

かなりあった 178 283 205

激しかった 39 19 34

者はそのようなことは無かった790を除く 210であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠時間の充足度(表 1-D 参照)睡眠時間の充足度は全体では少し足りないが 507を占め最も多く次いで十分である351かなり足りない132全く足りないか全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠時間を不足と認める者は十分である351を除く 649であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠の質の満足度(表 1-E 参照)睡眠の質における満足度は全体では少し不満が 459を占め最も多く次いで満足している439かなり不満92非常に不満か全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠に不満感を認める者は満足している439を除く 561であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の気分(表 1-F 参照)日中の気分は全体ではいつも通りが691を占め最も多く次いで少しめいった250かなりめいった52非常にめいった07の順であった以上の結果より多少なりとも日中に気分の低下を認める者はいつも通り691を除く 309であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の身体的精神的活動状態(表 1-G参照)日中の身体的精神的活動状態は全体ではいつも通りが 732を占め最も多く次いで少し低下した224かなり低下した39非常に低下した05の順であった以上の結果より多少なりとも日中身体的精神的活動の低下を認める者はいつも通り732を除く 268であったなお性別では有意差は認められなかった

)日中の眠気(表 1-H参照)日中の眠気は全体では少しあったが585を占め最も多く次いでかなりあった205全くなかった176激しかった34の順であった以上の結果より多少なりとも日中に眠気を認める者は全くなかった176を除く 824であったなお性別では有意差は認められなかった

睡眠および生活習慣健康関連項目の結果次にここからは睡眠とその他の生活習慣項目の結果について報告することとする10)就寝時刻(図Ⅰ参照)就寝時刻は全体では午前時以降が537を占め最も多く次いで午前時~午前時332午後 11 時~午前時97午後 10 時~午後 11 時20午後 10 時前14の順であった午前時以降の就寝者は午前時~午前時332と午前時以降537を合算した 869を占めていたなお性別では有意差は認められなかった11)起床時刻(図Ⅱ参照)起床時刻は全体では7~8時が 329を占め最も多く次いで8~9時2396~7時234時以降180時前20の順であったなお性別では有意差は認められなかった12)平均睡眠時間(図Ⅲ参照)平均睡眠時間は全体では5~7 時間未満が 571を占め最も多く次いで3~5時間未満2047~8 時間未満176時間以上29時間未満20の順であったなお性別では有意差は認められなかった13)朝食摂取と朝食欠食の理由(図ⅣⅤ

参照)朝食摂取は全体ではほぼ毎日摂っている542を占め最も多く次いで時々摂

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

らない307まったく摂らない151の順であった時々摂らないまったく摂らないを合算すると 458の者が規則的朝食習慣を有していなかったなお性別では有意差は認められなかったまた朝食の欠食理由は起床時刻が遅く食べる時間がないからが 702で最も多く次いで朝は食欲がないから309普段から朝食は摂らないから138等であった

性別では女子より男子に高率であった項目は普段から朝食は摂らないからお金がないからの項目であり他方男子より女子に高率であった項目は起床時刻が遅く食べる時間がないから朝は食欲がないからの項目であった14)自覚的ストレス(図Ⅵ参照)自覚的ストレスは全体では多少あるが 683を占め最も多く次いでほとんど

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅰ就寝時刻

図Ⅱ起床時刻

ない171非常に多い146の順であった多少ある非常に多いを合算すると 829の者がストレスを自覚していたなお性別では有意差は認められなかった15)健康感(図Ⅶ参照)健康感は全体ではまあ健康であるが

594を占め最も多く次いで非常に健康である215あまり健康でない171健康でない20の順であったあまり健康でない健康でないを合算すると191の者が望ましい健康感を有していなかったなお性別では有意差は認められな

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅲ平均睡眠時間

図Ⅳ朝食摂取

かった

健康に関する自覚症状結果(表 2-AB参照)ここからは学生の健康に関する自覚症状について全体と性別の結果について報告していく表 2-A は自覚症状 18 項目についていつもある時々あるまったくないのつのカテゴリー別に全体のデータを集計し一覧に表示したものであるこれによればいつもあると回答された自覚症状の上位項目は(17)朝起きるのがつらい

546(3)疲れやすい385(1)疲れている376でありまた時々あると回答された自覚症状の上位項目は(1)疲れている439(13)集中できない405(14)頭がさえない371であったまた表 2-B は自覚症状つのカテゴリー項目の内いつもあるおよび時々あるを合算した数値をあると表記しそれを全体と性別で示したものである全体では(1)疲れている815と最も多く次いで(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅴ朝食欠食理由(MA)

図Ⅵ自覚的ストレス

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

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10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 1 アテネ不眠尺度による質問項目の結果一覧 ()

属性項目

性 別全体

(n205)男子(n152)

女子(n53) 1108530

総合評価

睡眠に問題はなし (0~3点) 434 472

ns

443

若干不眠症の疑いあり(4~5点) 276 358 298

不眠症の可能性大 (6点以上) 289 170 259

A寝つき(布団に入ってから眠るまで要する時間)はどうでしたか

いつもより寝つきは良い 579 623

ns

590

いつもより時間がかかった 276 245 268

いつもよりかなり時間がかかった 79 132 93

いつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかった 66 00 49

B 夜間睡眠の途中で目が覚めましたか

問題になるほどのことはなかった 895 943

ns

907

少し困ることがあった 92 57 83

かなり困っている 13 00 10

深刻な状態かあるいは全く眠れなかった 00 00 00

C希望する起床時刻より早く目覚めそれ以上眠れないことはありましたか

そのようなことは無かった 770 849

ns

790

少し早かった 204 113 180

かなり早かった 13 38 20

非常に早かったかあるいは全く眠れなかった 13 00 10

D あなたの総睡眠時間はどうでしたか

十分である 355 340

ns

351

少し足りない 493 547 507

かなり足りない 138 113 132

全く足りないか全く眠れなかった 13 00 10

E あなたの全体的な睡眠の質はどうでしたか

満足している 408 528

ns

439

少し不満 467 434 459

かなり不満 112 38 92

非常に不満か全く眠れなかった 13 00 10

F 日中の気分はどうでしたか

いつも通り 676 742

ns

691

少しめいった 257 226 250

かなりめいった 57 32 52

非常にめいった 10 00 07

G日中の身体的および精神的活動の状態についてはいかがでしたか

いつも通り 724 755

ns

732

少し低下した 230 208 224

かなり低下した 39 38 39

非常に低下した 07 00 05

H 日中の眠気はありましたか

全くなかった 191 132

ns

176

少しあった 592 566 585

かなりあった 178 283 205

激しかった 39 19 34

者はそのようなことは無かった790を除く 210であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠時間の充足度(表 1-D 参照)睡眠時間の充足度は全体では少し足りないが 507を占め最も多く次いで十分である351かなり足りない132全く足りないか全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠時間を不足と認める者は十分である351を除く 649であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠の質の満足度(表 1-E 参照)睡眠の質における満足度は全体では少し不満が 459を占め最も多く次いで満足している439かなり不満92非常に不満か全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠に不満感を認める者は満足している439を除く 561であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の気分(表 1-F 参照)日中の気分は全体ではいつも通りが691を占め最も多く次いで少しめいった250かなりめいった52非常にめいった07の順であった以上の結果より多少なりとも日中に気分の低下を認める者はいつも通り691を除く 309であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の身体的精神的活動状態(表 1-G参照)日中の身体的精神的活動状態は全体ではいつも通りが 732を占め最も多く次いで少し低下した224かなり低下した39非常に低下した05の順であった以上の結果より多少なりとも日中身体的精神的活動の低下を認める者はいつも通り732を除く 268であったなお性別では有意差は認められなかった

)日中の眠気(表 1-H参照)日中の眠気は全体では少しあったが585を占め最も多く次いでかなりあった205全くなかった176激しかった34の順であった以上の結果より多少なりとも日中に眠気を認める者は全くなかった176を除く 824であったなお性別では有意差は認められなかった

睡眠および生活習慣健康関連項目の結果次にここからは睡眠とその他の生活習慣項目の結果について報告することとする10)就寝時刻(図Ⅰ参照)就寝時刻は全体では午前時以降が537を占め最も多く次いで午前時~午前時332午後 11 時~午前時97午後 10 時~午後 11 時20午後 10 時前14の順であった午前時以降の就寝者は午前時~午前時332と午前時以降537を合算した 869を占めていたなお性別では有意差は認められなかった11)起床時刻(図Ⅱ参照)起床時刻は全体では7~8時が 329を占め最も多く次いで8~9時2396~7時234時以降180時前20の順であったなお性別では有意差は認められなかった12)平均睡眠時間(図Ⅲ参照)平均睡眠時間は全体では5~7 時間未満が 571を占め最も多く次いで3~5時間未満2047~8 時間未満176時間以上29時間未満20の順であったなお性別では有意差は認められなかった13)朝食摂取と朝食欠食の理由(図ⅣⅤ

参照)朝食摂取は全体ではほぼ毎日摂っている542を占め最も多く次いで時々摂

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

らない307まったく摂らない151の順であった時々摂らないまったく摂らないを合算すると 458の者が規則的朝食習慣を有していなかったなお性別では有意差は認められなかったまた朝食の欠食理由は起床時刻が遅く食べる時間がないからが 702で最も多く次いで朝は食欲がないから309普段から朝食は摂らないから138等であった

性別では女子より男子に高率であった項目は普段から朝食は摂らないからお金がないからの項目であり他方男子より女子に高率であった項目は起床時刻が遅く食べる時間がないから朝は食欲がないからの項目であった14)自覚的ストレス(図Ⅵ参照)自覚的ストレスは全体では多少あるが 683を占め最も多く次いでほとんど

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅰ就寝時刻

図Ⅱ起床時刻

ない171非常に多い146の順であった多少ある非常に多いを合算すると 829の者がストレスを自覚していたなお性別では有意差は認められなかった15)健康感(図Ⅶ参照)健康感は全体ではまあ健康であるが

594を占め最も多く次いで非常に健康である215あまり健康でない171健康でない20の順であったあまり健康でない健康でないを合算すると191の者が望ましい健康感を有していなかったなお性別では有意差は認められな

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅲ平均睡眠時間

図Ⅳ朝食摂取

かった

健康に関する自覚症状結果(表 2-AB参照)ここからは学生の健康に関する自覚症状について全体と性別の結果について報告していく表 2-A は自覚症状 18 項目についていつもある時々あるまったくないのつのカテゴリー別に全体のデータを集計し一覧に表示したものであるこれによればいつもあると回答された自覚症状の上位項目は(17)朝起きるのがつらい

546(3)疲れやすい385(1)疲れている376でありまた時々あると回答された自覚症状の上位項目は(1)疲れている439(13)集中できない405(14)頭がさえない371であったまた表 2-B は自覚症状つのカテゴリー項目の内いつもあるおよび時々あるを合算した数値をあると表記しそれを全体と性別で示したものである全体では(1)疲れている815と最も多く次いで(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅴ朝食欠食理由(MA)

図Ⅵ自覚的ストレス

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

者はそのようなことは無かった790を除く 210であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠時間の充足度(表 1-D 参照)睡眠時間の充足度は全体では少し足りないが 507を占め最も多く次いで十分である351かなり足りない132全く足りないか全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠時間を不足と認める者は十分である351を除く 649であったなお性別では有意差は認められなかった)睡眠の質の満足度(表 1-E 参照)睡眠の質における満足度は全体では少し不満が 459を占め最も多く次いで満足している439かなり不満92非常に不満か全く眠れなかった10の順であった以上の結果より多少なりとも自己の睡眠に不満感を認める者は満足している439を除く 561であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の気分(表 1-F 参照)日中の気分は全体ではいつも通りが691を占め最も多く次いで少しめいった250かなりめいった52非常にめいった07の順であった以上の結果より多少なりとも日中に気分の低下を認める者はいつも通り691を除く 309であったなお性別では有意差は認められなかった)日中の身体的精神的活動状態(表 1-G参照)日中の身体的精神的活動状態は全体ではいつも通りが 732を占め最も多く次いで少し低下した224かなり低下した39非常に低下した05の順であった以上の結果より多少なりとも日中身体的精神的活動の低下を認める者はいつも通り732を除く 268であったなお性別では有意差は認められなかった

)日中の眠気(表 1-H参照)日中の眠気は全体では少しあったが585を占め最も多く次いでかなりあった205全くなかった176激しかった34の順であった以上の結果より多少なりとも日中に眠気を認める者は全くなかった176を除く 824であったなお性別では有意差は認められなかった

睡眠および生活習慣健康関連項目の結果次にここからは睡眠とその他の生活習慣項目の結果について報告することとする10)就寝時刻(図Ⅰ参照)就寝時刻は全体では午前時以降が537を占め最も多く次いで午前時~午前時332午後 11 時~午前時97午後 10 時~午後 11 時20午後 10 時前14の順であった午前時以降の就寝者は午前時~午前時332と午前時以降537を合算した 869を占めていたなお性別では有意差は認められなかった11)起床時刻(図Ⅱ参照)起床時刻は全体では7~8時が 329を占め最も多く次いで8~9時2396~7時234時以降180時前20の順であったなお性別では有意差は認められなかった12)平均睡眠時間(図Ⅲ参照)平均睡眠時間は全体では5~7 時間未満が 571を占め最も多く次いで3~5時間未満2047~8 時間未満176時間以上29時間未満20の順であったなお性別では有意差は認められなかった13)朝食摂取と朝食欠食の理由(図ⅣⅤ

参照)朝食摂取は全体ではほぼ毎日摂っている542を占め最も多く次いで時々摂

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らない307まったく摂らない151の順であった時々摂らないまったく摂らないを合算すると 458の者が規則的朝食習慣を有していなかったなお性別では有意差は認められなかったまた朝食の欠食理由は起床時刻が遅く食べる時間がないからが 702で最も多く次いで朝は食欲がないから309普段から朝食は摂らないから138等であった

性別では女子より男子に高率であった項目は普段から朝食は摂らないからお金がないからの項目であり他方男子より女子に高率であった項目は起床時刻が遅く食べる時間がないから朝は食欲がないからの項目であった14)自覚的ストレス(図Ⅵ参照)自覚的ストレスは全体では多少あるが 683を占め最も多く次いでほとんど

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅰ就寝時刻

図Ⅱ起床時刻

ない171非常に多い146の順であった多少ある非常に多いを合算すると 829の者がストレスを自覚していたなお性別では有意差は認められなかった15)健康感(図Ⅶ参照)健康感は全体ではまあ健康であるが

594を占め最も多く次いで非常に健康である215あまり健康でない171健康でない20の順であったあまり健康でない健康でないを合算すると191の者が望ましい健康感を有していなかったなお性別では有意差は認められな

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅲ平均睡眠時間

図Ⅳ朝食摂取

かった

健康に関する自覚症状結果(表 2-AB参照)ここからは学生の健康に関する自覚症状について全体と性別の結果について報告していく表 2-A は自覚症状 18 項目についていつもある時々あるまったくないのつのカテゴリー別に全体のデータを集計し一覧に表示したものであるこれによればいつもあると回答された自覚症状の上位項目は(17)朝起きるのがつらい

546(3)疲れやすい385(1)疲れている376でありまた時々あると回答された自覚症状の上位項目は(1)疲れている439(13)集中できない405(14)頭がさえない371であったまた表 2-B は自覚症状つのカテゴリー項目の内いつもあるおよび時々あるを合算した数値をあると表記しそれを全体と性別で示したものである全体では(1)疲れている815と最も多く次いで(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感

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図Ⅴ朝食欠食理由(MA)

図Ⅵ自覚的ストレス

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

らない307まったく摂らない151の順であった時々摂らないまったく摂らないを合算すると 458の者が規則的朝食習慣を有していなかったなお性別では有意差は認められなかったまた朝食の欠食理由は起床時刻が遅く食べる時間がないからが 702で最も多く次いで朝は食欲がないから309普段から朝食は摂らないから138等であった

性別では女子より男子に高率であった項目は普段から朝食は摂らないからお金がないからの項目であり他方男子より女子に高率であった項目は起床時刻が遅く食べる時間がないから朝は食欲がないからの項目であった14)自覚的ストレス(図Ⅵ参照)自覚的ストレスは全体では多少あるが 683を占め最も多く次いでほとんど

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図Ⅰ就寝時刻

図Ⅱ起床時刻

ない171非常に多い146の順であった多少ある非常に多いを合算すると 829の者がストレスを自覚していたなお性別では有意差は認められなかった15)健康感(図Ⅶ参照)健康感は全体ではまあ健康であるが

594を占め最も多く次いで非常に健康である215あまり健康でない171健康でない20の順であったあまり健康でない健康でないを合算すると191の者が望ましい健康感を有していなかったなお性別では有意差は認められな

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図Ⅲ平均睡眠時間

図Ⅳ朝食摂取

かった

健康に関する自覚症状結果(表 2-AB参照)ここからは学生の健康に関する自覚症状について全体と性別の結果について報告していく表 2-A は自覚症状 18 項目についていつもある時々あるまったくないのつのカテゴリー別に全体のデータを集計し一覧に表示したものであるこれによればいつもあると回答された自覚症状の上位項目は(17)朝起きるのがつらい

546(3)疲れやすい385(1)疲れている376でありまた時々あると回答された自覚症状の上位項目は(1)疲れている439(13)集中できない405(14)頭がさえない371であったまた表 2-B は自覚症状つのカテゴリー項目の内いつもあるおよび時々あるを合算した数値をあると表記しそれを全体と性別で示したものである全体では(1)疲れている815と最も多く次いで(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感

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図Ⅴ朝食欠食理由(MA)

図Ⅵ自覚的ストレス

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

ない171非常に多い146の順であった多少ある非常に多いを合算すると 829の者がストレスを自覚していたなお性別では有意差は認められなかった15)健康感(図Ⅶ参照)健康感は全体ではまあ健康であるが

594を占め最も多く次いで非常に健康である215あまり健康でない171健康でない20の順であったあまり健康でない健康でないを合算すると191の者が望ましい健康感を有していなかったなお性別では有意差は認められな

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅲ平均睡眠時間

図Ⅳ朝食摂取

かった

健康に関する自覚症状結果(表 2-AB参照)ここからは学生の健康に関する自覚症状について全体と性別の結果について報告していく表 2-A は自覚症状 18 項目についていつもある時々あるまったくないのつのカテゴリー別に全体のデータを集計し一覧に表示したものであるこれによればいつもあると回答された自覚症状の上位項目は(17)朝起きるのがつらい

546(3)疲れやすい385(1)疲れている376でありまた時々あると回答された自覚症状の上位項目は(1)疲れている439(13)集中できない405(14)頭がさえない371であったまた表 2-B は自覚症状つのカテゴリー項目の内いつもあるおよび時々あるを合算した数値をあると表記しそれを全体と性別で示したものである全体では(1)疲れている815と最も多く次いで(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅴ朝食欠食理由(MA)

図Ⅵ自覚的ストレス

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

かった

健康に関する自覚症状結果(表 2-AB参照)ここからは学生の健康に関する自覚症状について全体と性別の結果について報告していく表 2-A は自覚症状 18 項目についていつもある時々あるまったくないのつのカテゴリー別に全体のデータを集計し一覧に表示したものであるこれによればいつもあると回答された自覚症状の上位項目は(17)朝起きるのがつらい

546(3)疲れやすい385(1)疲れている376でありまた時々あると回答された自覚症状の上位項目は(1)疲れている439(13)集中できない405(14)頭がさえない371であったまた表 2-B は自覚症状つのカテゴリー項目の内いつもあるおよび時々あるを合算した数値をあると表記しそれを全体と性別で示したものである全体では(1)疲れている815と最も多く次いで(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

図Ⅴ朝食欠食理由(MA)

図Ⅵ自覚的ストレス

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

と起床困難に関する回答が高率を占めていたこれを性別でみると女子が男子より有意に高率を占めた項目は(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がな

い792の項目であった(P<005P<001)他方男子が女子より高率を占めた項目は皆無であった

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

図Ⅶ健康感

表 2-A 自覚症状 18項目 一覧 n205()項 目自覚症状 いつもある 時々ある まったくない

1 疲れている 376 439 1852 めまいがする 49 229 7223 疲れやすい 385 332 2834 眠りが浅い 146 244 6105 風邪をひきやすい 93 234 6736 足が重ぐるしい 107 185 7077 首と肩がこる 351 229 4208 便秘しやすい 117 112 7719 頭が痛い 117 351 53210 腹が痛い 171 288 54111 下痢をしやすい 132 224 64412 食欲がない 44 210 74613 集中できない 220 405 37614 頭がさえない 215 371 41515 何もやる気がない 283 337 38016 身体がだるい 239 317 44417 朝起きるのがつらい 546 229 22418 ゆううつになる 205 234 561

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

考 察

不眠症とは夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より時間以上かかる入眠障害一旦寝ついても夜中に目が醒める中間覚醒朝起きた時にぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害普段よりも時間以上早く目が覚めてしまう早期覚醒等のどれかがあることこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週回以上)かつ少なくともヶ月間は持続すること不眠のため自らが苦痛を感じるか社会生活または職業的機能が妨げられることなどのすべてを満たすことが必要である7)と定義されている本研究で採用したアテネ不眠尺度調査は被験者に不眠症の症状である入眠障害中間覚醒(中途覚醒)熟眠障害早期覚醒等に関する設問を回答することにより不眠症に該

当するか否かの判定を行うものであるまずここからはアテネ不眠尺度ならび睡眠習慣項目の調査結果を概観し考察していくこととする本調査の大学生 205 名のうち多少なりとも不眠症に該当すると推察される者が約割を占めていたこの結果は 2015 年厚労省国民健康調査8)における睡眠に何らかの問題を抱える者が 200という数値をはるかに凌駕する割合を占めており日常の睡眠に問題を抱える学生の多さを理解することができるまた不眠の症状別では入眠困難を認める者が割と最も多く次いで早期覚醒を認める者が割中途覚醒を認める者が割弱を占めていた入眠困難の原因については厚労省の健康づくりのための睡眠指針 20149)第条において若年世代の夜更かしの習慣化による体内

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

表 2-B 自覚症状あるの性別比較と全体 ()

属 性項 目

性 別全 体

(n205)男 子(n152)

女 子(n53)

1 疲れている 776 925 8152 めまいがする 243 377 2783 疲れやすい 697 774 7174 眠りが浅い 401 358 3905 風邪をひきやすい 342 283 3276 足が重ぐるしい 257 396 2937 首と肩がこる 526 736 5808 便秘しやすい 164 415 2299 頭が痛い 441 547 46810 腹が痛い 421 566 45911 下痢をしやすい 362 340 35612 食欲がない 243 283 25413 集中できない 612 660 62414 頭がさえない 559 660 58515 何もやる気がない 559 792 62016 身体がだるい 513 679 55617 朝起きるのがつらい 743 868 77618 ゆううつになる 401 547 439注 1) 印は残差分析により有意差が認められ有意に高率を示した項目である注 2) P<005 P<001

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

時計のずれ睡眠時間帯の不規則化や夜型化についての文章記述があり寝床に入ってからの携帯電話メールやゲーム等の熱中によって目が覚めてしまうことさらに就寝後長時間の光の刺激が覚醒を助長することになるとともに夜更かしの原因になるという指摘がある本調査では彼らの夜間入床でのスマートフォン等の電子メディア機器の使用や生活状況等についての現状は詳細調査を実施していないので今後の課題としていきたいちなみに筆者は先に学生のスマートフォンの使用と健康に関する研究報告10)の中で学生がスマートフォンを一番利用する生活場面が自宅の自由時間に次いで就寝時布団やベッドの中でとする回答が多かったことまた午前時以降の就寝者が割強と多数を占めていたことさらにスマートフォン利用によって減少したと自覚する生活時間のうち最も多い回答が睡眠時間であること等について合わせて報告しており就寝時の寝床でのスマートフォン使用が健康的な入眠を阻害する一因と考えられることについての言及をしている特筆すべきは49の者がいつもより非常に時間がかかったか全く眠れなかったと回答していたことである重度な継続的入眠困難の状態は健康障害に陥ることも危惧されることから今後早急に原因の究明と専門的治療等を考慮する必要があるだろう睡眠習慣項目の就寝時刻では午前時~時が 332午前時以降が 537を占め合算すると約割の者が午前時以降の就寝者であり健康的な睡眠習慣を欠如する夜更かし生活者が多数を占めていた起床時刻では時以降の者が 180を占めていたこの結果より約割の者は大学の始業時間以降に起床していることが明らかとなった杉田11)は大学生における睡眠

問題の高校生までとは異なる点として大学生においては履修科目の選択によって一時限から授業がない日が生じる出席しなくても単位が取得できるという情報を得て朝に起きるモチベーションがでず結果的にダラダラと布団の中で過ごすことなどが不規則な生活リズムになる要因と述べている本調査の時以降起床者も同様の理由に該当する者がいるのではないかと推察される睡眠時間に着目すると5~7時間未満が5713~5時間未満が 204時間未満が 20であり過去Breslow12)が提唱した適正睡眠時間である日~時間の確保を下回る者が約割を占めていたこのような好ましくない睡眠習慣の現状が反映されているかのようにアテネ不眠尺度における睡眠時間の充足度の自己評価では自己の睡眠時間を不足と認める者が割強また睡眠の満足度では睡眠の質に不満感を認める者が約割を占めていたさらに精神面の影響を示す日中の気分では日中の気分低下を認める者が割また日中の身体的精神的活動状態では日中身体的精神的活動の低下を認める者が約割を占めていた特筆すべきは日中の眠気である眠気が

少しあったが 585かなりあったが205激しかったが 34とそれぞれ占めこれらを合算すると多少なりとも眠気を有する者が割を超えていた日中の眠気は学生の講義の集中力欠如を引き起こすのみならず眠気によるモチベーションや行動力の低下に繋がるものと推察されることから看過できない問題と言えるだろう我々の身体精神行動のそれぞれに悪影響を与えまた不眠の元凶とも推察される夜更かし生活について神山は13)夜更かしでは睡眠時間が減るそして睡眠不足では脳機能も身体機能も低下し太り生活習慣病のリスクは増し意欲も低下し生存の質が

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

低下する睡眠不足は心身のリスクで万病のもとであると述べているしたがって今後学生の健全な睡眠習慣構築のために早寝早起きの生活を喚起する改善指導が肝要である次にここからは睡眠習慣が影響を与えると推察される生活習慣項目の朝食摂取やストレス健康感について考察していくこととする規則正しい朝食摂取は健康上意義深いものである朝食摂取には起床後すぐ太陽光を浴びることと同様人間が本来持っている日 25 時間周期の覚醒と睡眠のリズムを24 時間周期に調整する作用がある一方朝食欠食は身体面精神面に悪影響がありまた体力低下や倦怠感感染症等の抵抗力低下も指摘されている14)調査学生の朝食摂取の状況は時々摂らないが 307まったく摂らないが 151を占め約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如しておりまた欠食理由では起床時刻が遅く食べる時間がないからの回答が 702と最も多かったこの結果から就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食の生活へと移行させるという悪影響を推察することができようまた欠食理由に朝は食欲がないからが 309を占めていたが不眠症や睡眠習慣の乱れによる夜更かし生活が原因となり深夜まで起きている生活が夜食摂取に繋がりその結果翌朝の食欲不振を引き起こし朝食欠食が余儀なくされるという悪影響が推察できる先に筆者は大学生の食生活習慣に対する調査研究15)において夜食摂取と朝食欠食の関わりについて朝食欠食者は夜食摂取に高率を占め夜食摂取と朝食摂取には有意な関連があることについて指摘している本調査では夜食摂取の状況については調査していないので両者の関連を断定することはできないがおそらく同様の関連が指摘できるものと推察する

ストレスに対する反応には個人差がありストレス耐性の強い者に比べ弱い者の方がストレスをすぐに重圧として受け取ってしまい結果的に自律神経失調症等になってしまうまた体調が悪い際にストレス耐性が低下する場合があり過労や睡眠不足手術後等において低下しがちである16)本調査における自覚的ストレスの現状は多少あるが683非常に多いが 146を占め両者を合算すると割強と多くの者がストレスを有していることが明らかとなった従って今後彼らのストレス耐性を低下させないためにも良好な睡眠習慣の継続を強調した生活指導が必要である以上のような不眠症や健康的な睡眠習慣を欠如する生活状況下にある学生の健康感はあまり健康でないが 171健康でないが 20を占め約割の者は望ましい健康感を有していなかった最後に学生が日常の生活で感じる自覚症状について考察していくこととする自覚症状の内いつもある時々あるを合算した割合で特に高率を占めた項目は(1)疲れている815(17)朝起きるのがつらい776(3)疲れやすい717等の疲労感と起床困難に関する回答が高率を占めていた男女別の比較では(1)疲れている925(7)首と肩がこる736(8)便秘しやすい415(15)何もやる気がない792の項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)特に(17)朝起きるのがつらいは学生の睡眠状況を端的に示す自覚症状項目であるいつもあるとする回答の中で 546と最も高率を占めていた点は注目に値する結果であるすなわち夜更かしの生活による継続的な就寝時間遅延等の睡眠習慣の乱れが彼らの恒常的な起床困難を発現させていることを推察できる証左の一つと考える

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

森本は17)身体的な不定愁訴は睡眠時間が長ければ長いほど顕著に減少し不安や不眠ならびに社会的活動障害の尺度と異なった変化を示すこのことから身体化した不定愁訴症状のある場合は十分な睡眠をとることが重要であることを述べている本調査の疲れている疲れやすいは身体的疲労に対して我々が感じる不定愁訴すなわち自覚症状を示しているしたがって今後これらの自覚症状を軽減させていくために適正な睡眠時間確保の必要性が示唆されたものと言えよう

総 括

本研究から学生の睡眠状況は質的にも量的にも問題を抱え睡眠障害である不眠症を有する者が多くその原因を裏づけるかのように睡眠習慣の規則性を欠如する者の多いことが明らかとなった睡眠習慣の乱れは朝食欠食や日中の眠気に繋がるこれらの悪影響が日常生活の行動力やモチベーションの低下を招き身体的精神的活動低下を引き起こす要因となることが推察される以上のことから今後より良い睡眠習慣の継続を意識させることが肝要と思われる今日個人のライフタイルは多様化しており特に生活の自由度が高い大学生においては日々不規則で乱れがちな生活を送っているしたがって健康的な睡眠習慣確保のために学生の生活を全般的に見直しさせるとともに生活改善の意識を促す健康教育と保健指導を実施することが緊要の課題である

要 約

本研究は大学生の睡眠習慣や睡眠障害の現況を明らかにするためにアテネ不眠尺度の質問と睡眠とその他の生活習慣や健康状態

に関する調査を行うことにより今後における本学学生の睡眠問題解決の方途を見出す基礎資料を得ることが目的であった結果を要約すると以下のようにまとめることができる)アテネ不眠尺度の総合評価において多少なりとも不眠症と考えられる者が約割を占めていることが明らかとなった症状別では入眠困難者が割早期覚醒者が割中途覚醒者が割弱を占めていた)就寝時刻では午前時以降の就寝者が約割を占め多数の者が夜更かし生活を送っておりまた睡眠時間では約割の者は Breslow が提唱した適正睡眠時間の日 7~8 時間確保を下回っていた今後の保健指導注意喚起が肝要である)約割の者が規則的な朝食摂取習慣を欠如していた欠食理由において起床が遅く食べる時間がないから702と最も多いことから就寝時刻の遅延が起床時刻の遅延を招き朝食欠食を余儀なくされていることが推察できよう)割強の者がストレスを自覚していたまた約割の者が望ましい健康感を有していなかった)健康に関する自覚症状 18 項目ではいつもある時々あるを合算した割合で高率を占めた項目は疲れている815朝起きるのがつらい776疲れやすい717等であった性別では疲れている首と肩がこる便秘しやすい何もやる気がないの項目は女子が男子より有意に高率を占めていた(P<005P<001)

本研究結果の一部は北海道体育学会第57 回大会(2017 年 12 月日帯広畜産大学)において報告したものである

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経営論集(北海学園大学)第 16 巻第 1号

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)

引用参考文献

)NHK放送文化研究所(2016)2015 年国民生活時間調査報告書P47https www nhk or jpbunkenresearchyoronpdf20160217_1pdf

)平成 26 年国民健康栄養調査結果の概要 第章 身体活動運動及び睡眠に関する状況 p22http www mhlw go jpfile04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka0000117311pdf

)坂本玲子(2009)大学生の睡眠傾向について新入生の睡眠調査を通して山梨県立大学人間福祉学部紀要 Vol4pp51~58

)中村万理子(2004)大学生の心身健康状態と睡眠状況の臨床的研究臨床心理研究 Vol30 No1pp107~122

)Soldatos CR Dikeos DG Paparriqopoulos TJAthens Insomnia Scale validation of an instrumentbased on ICD_10 criteria JPsychosom Res 48 555-560 2000httpsleep-medgrarticlesFilesAthens20Insomnia20Scale20validation20of20an20instrument20based20on20ICD-1020criteriapdf

)宗像恒次(1995)ストレス解消学小学館p211

)本田 裕睡眠障害の基礎知識日本睡眠学会httpwwwjssrjpkisosyogaisyogaihtml

)前掲 ))厚生労働省健康局(2014)健康づくりのための睡眠指針 2014http www saitama-u ac jphokenhoken2014-07-no1pdf

10)伊熊克己(2016)学生のスマートフォン使用状況と健康に関する調査研究北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp29~42

11)杉田善郎(2011)大学生の生活リズムと睡眠問題大学と学生独立行政法人日本学生支援機構第 89 号通巻 563 号pp17~23

12)Belloc N B Breslow L (1972) Relationship ofPhysical Health Status and Health PracticePreventive Medicine 1 409-421

13)神山 潤(2011)発達睡眠生理学子どもと発育発達 Vol8 No4p251

14)戎 利光戎 弘志(2001)ライフスタイルと健康の科学不昧堂出版pp161~169

15)伊熊克己(2015)大学生のライフスタイルと健康に関する研究 食生活習慣の現状に着目して 北海学園大学経営論集 第 13 巻第号pp23~39

16)前掲書 14)pp37~5217)森本兼曩(2001)ストレス危機の予防医学 ライフスタイルの視点からNHK 放送出版協会pp129~138

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大学生の睡眠と健康に関する研究(伊熊)