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物理学入門
松本浩典
(現象解析研究センター)
第一回目 (2016年4月11日)
成績評価
•出席など
–講義中の質問など
•レポート
Web page
スライド置き場 http://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/~matumoto /teaching/FY2016/physintro/index.html
ログイン名 physintro 毎回同じ
パスワード 講義最後に通知 講義ごと
通常の天文学 (乙女座銀河団)
X線でみると…
目で見る世界とX線の世界
銀河の集団 数千万度の火の玉
©SDSS ©RASS
宇宙の異なる顔
講義の狙い
•X線で見た宇宙=X線天文学入門
•物理学の一つとして理解
–単なる「お話」より高度。
–数式も使用。
•+−×÷で済むようなもの。
今日の話題
•X線で見た宇宙
–X線とは
–銀河団、超新星爆発、ブラックホール
本講義のダイジェスト
X線というと…
透過力が強い人体も通過医療用写真
X線の発見: レントゲン(1895年)
奥さんの手の写真 Roentgen(1845-1923)
1901年第一回ノーベル物理学賞
当時の実験装置:クルックス管
＋の電圧
－の電圧
電子
(見えない)
電子と金属 が衝突 X線発生
現代のX線発生装置も本質は同じ。
中は真空
島津源蔵=二代目島津製作所社長
•レントゲンの発見から、10ヶ月後! •1897年、教育用X線発生装置の販売
©島津製作所
X線とは？ •発見当初: 正体不明の「X」
•現代的な見方: 光(=電磁波)の一種
–光の種類: 「色」
プリズム実験 虹: 天然のプリズム実験
光＝波 (電磁波)
“場” (電磁場) の波 水の場の波
波の特徴
速度
波長
振幅
X線=波長の短い光
X線波長<0.001μm 可視光: 0.4~0.8μm, 原子~0.001μm
X線=青すぎる光
携帯電話、テレビ リモコン、こたつ お肌の敵 癌治療
光の色とエネルギー 赤い光 青い光
物体の温度=エネルギーが高いほど、出る光は青い
温度低い (~600℃) 温度高い(～数万度)
X線=エネルギー高い光 X線 = 青すぎる光 = エネルギーの高い光
だから人体を貫通。
X線を出す物体の温度: 1000万度以上。
(普通の星の表面温度: 6000度~数万度)
X線で宇宙を見る
極端にエネルギーの高い(変わった)
世界ばかりが見える。
宇宙の階層構造: 星(恒星) 目で見る太陽 X線で見た太陽
宇宙の階層構造: 星(恒星) 目で見る太陽 X線で見た太陽
• 恒星: 自ら光輝く星。高温度なので気体の塊。
• 代表例: 太陽。
• 太陽半径～7×108m (70万km)
•「～」は「だいたい等しい」という意味です。
• 太陽質量～2×1030kg
• 普通は「星」というと、「恒星」のこと。
数値の表記
105 = 100000
ゼロ5つ
10−5 = 0.00001
ゼロ5つ
宇宙の階層構造:惑星
宇宙の階層構造:惑星
惑星: 自らは輝かない。
固体(地球など)や液体(木星など)。
地球半径~6000km (太陽の1/100)
地球質量~6×1024 kg (太陽の30万分の1)
宇宙の階層構造:太陽系
• 太陽+惑星(+小惑星など)
• 太陽~地球の距離: 1.5×108 km (光で500秒)
• 太陽~海王星の距離: 4.5×1010 km(光で42時間)
光の速度: 秒速30万km
宇宙の階層構造: 星団 球状星団M80
恒星の集まり。恒星100~100万個。
半径: 10光年~200光年
宇宙の階層構造: 銀河 天の川銀河(想像図) アンドロメダ銀河(M31)
宇宙の階層構造: 銀河 天の川銀河(想像図) アンドロメダ銀河(M31)
• 恒星・星団の集まり (もちろん惑星もたくさん含まれる。)
• 我々の住む銀河=天の川銀河
• 恒星の数: ~2000億個
• 直径: ～7×1017 km = 8万光年
宇宙の階層構造: 銀河団
• 銀河の集合。数十個から数千個程度。
• 直径: 平均的に1023 m~100万光年
宇宙の階層構造: 大規模構造
銀河団の集合のようなもの
宇宙の階層構造
1 10 100 1000 1万 10万 100万 1000万 1億
太陽系
銀河
銀河団
大規模構造
星団
どの階層もX線天文学と関連がある。
光年
銀河団
X線画像 可視光画像
Abell2029の例
©CXC
X線スペクトル=成分グラフ
X線のエネルギー(keV)
X線の強度
乙女座銀河団
（すざく衛星)
どんなエネルギーのX線がどれだけやってきたか
銀河団を満たす高温ガスからのX線
銀河団ガスの温度測定 なめらかにつながる成分(連続成分)に着目。
X線のエネルギー(keV)
X線強度
原子とは？
＋ ー 電子
原子核
ー + +
原子核(プラス電荷)の周囲を 電子(マイナス電荷)がとび回る
陽子 中性子
原子核拡大図
原子の種類=陽子の数
原子が壊れる
プラズマ
原子核
電子
39
連続成分=電子の熱運動
+
+
+
+
-
-
-
-
原子核
X線
電子
電子が原子核で曲げられてX線
40
なめらか(連続)成分の起源=電子の熱運動
•電子が、原子核によって曲げられて連続成分放出 –連続成分で、電子の運動=温度がわかる。
乙女座銀河団ガスの温度 連続成分の曲がり方から、約2千万度
X線のエネルギー
X線到来数
銀河団ガスの温度は、
一般に2千万度~1億度
連続成分から、ガスの量もわかる
連続成分の強度(密度)2×(体積)
X線のエネルギー
X線到来数
連続成分=電子と原子核のすれ違い
すれ違い回数…密度と体積が関係
銀河団高温ガスの密度 •なめらか成分の強度から
(密度)×(密度)×(体積)
～2×1068cm-3
•画像から
体積:(6×1024cm)3
～ 2.2×1074cm3
密度～原子0.001個/cc
ものすごく希薄!
比較
地上の空気:
～原子3×1019 個/CC
人間が作れる最高の真空度:
～原子105個/CC
銀河団高温ガスの総質量
• ガスの総量
=(密度)×(体積)
～(0.001個/CC) × (2×1074 cm 3)
～ 2×1071個
• 銀河団ガスは、ほとんど水素:
1個2×10-27 kg
(他にはヘリウム:水素の1/10ぐらい)
銀河団高温ガスの総質量
• 銀河団ガスの質量
～2×1071個×2×10-27 kg
～4×1044 kg
～太陽2×1014個(太陽1個=2×1030kg)
～銀河1千個分
(銀河1個~太陽2000億個)
銀河団の真の姿: 巨大な火の玉
• 銀河団ガスの質量
～銀河1千個分
(銀河1個~太陽2000億個)
• 銀河団に含まれる銀河の数
～数十~千個
銀河団ガス > 銀河の数
銀河団は、銀河の集合というより、
高温ガスの塊。つまり、巨大な火の玉。
なぜ銀河団ガスは散らばらない？
熱い気体は、ふつうは飛び散ってしまう
銀河団ガスは、銀河団の重力に捕まっている。
銀河団の質量
重力=万有引力=𝐺𝑀𝑚
𝑟2
求めた銀河団質量 >(銀河団ガス+銀河)の数倍
ガスでも銀河でもない、目に見えない、しかし重力は作り出す”何か”がいる。
暗黒物質~洞穴 銀河団ガス~溜まった水
銀河団ガス分布
暗黒物質分布
暗黒物質正体
