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THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
PWRプラントにおけるスケール付着事象
平成25年6月27日
原子力学会
水化学部会
定例研究会
関西電力株式会社
寺地
巧
22
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
主要なスケール付着問題
①1次系スケール中のコバルト
→被ばく低減の観点から問題
②SG2次側に持ち込まれる鉄のスケール付着
→伝熱管性能低下や材料健全性などの観点から問題
①コバルト
付着
②鉄スケール
スケール付着は、本定例研究
会でも過去に取り扱われてい
るため、プラントパラメータ
を中心に紹介
33
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
1次系
水処理の変遷
↑SGR
↑SGR
↑SGR
↑SGR
↑SGR
↑SGR
↑SGR
↑Zn
↑Zn
↑ Zn
↑ Zn
↑Zn
↑Zn
↑Zn
↑Zn
↑Zn
↑Zn
1980年代 1990年代 2000年代 2010年代1970年代
高浜4号機
大飯3号機
大飯4号機
美浜3号機
大飯1号機
大飯2号機
高浜3号機
美浜1号機
美浜2号機
高浜1号機
高浜2号機
pH管理(改良前)Modified pH (Li<2.2ppm)Modified pH (Li<3.5ppm)外層クラッド除去満水酸化
運転中
停止時
44
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
1次系の腐食生成物
2層(または3層)の腐食生成物。
外層のクラッド主要組成はニッケルフェライト(NiFe2O4)スピネル構造で内層側はクロム濃度が高い
コバルトは内層側で特に安定
コバルト
外層
NiFe2 O4 ,Fe3 O4正スピネル型
の腐食生成物
内層FeCr2 O4逆スピネル型
の微細粒
出典:Terachi et al., Nuclear Science and Technology Vol.45, 10(2008)
模擬皮膜のTEM断面観察結果(316SS,PWR模擬条件,340時間浸漬)
55
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
1次系
線量率の長期トレンド変化
プラント間での差は大きいが、全体的に低下傾向
0
20
40
60
80
100
120
140
0 10 20 30定検回数
SG
水室
平均
(H
ot,C
old
)線量
率(m
Sv/
h)
11プラントにおけるSG水質線量率の変化
66
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
SGR前後における線量率変化(関西電力の7PWR)
① 継続的な低下
②一時的な増加
③再び低下を開始
④プラトーを形成
⑤低下の再開
平均値には以下の傾向が
認められた。
詳細評価が必要
SGR0
20
40
60
80
100
120
140
-20 -10 0 10 20
定検回数(SGR定検基準)
SG
水室
平均
線量
率(m
Sv/
h)
SGRプラントの平均
① ② ③ ④ ⑤
77
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
線量率低下の要因に関する考察
線量率変化の要因腐食量の変化
皮膜形成による溶出量の低下(Ni溶出抑制→Co58生成抑制)
設備保全による溶出の増加(Co溶出増加→Co60生成要因)
SGRなど材料の改善600合金→690合金高Cr化によるNi溶出量低下
水処理の高度化高pH化、起動停止時の水処理改善による溶出析出挙動の管理亜鉛注入による析出抑制 など
線源発生移行の概念1)SG,主要系統からのNi,Coの溶出
2)燃料表面での放射化Ni58→Co58Co59 →Co60
3)系統設備への析出
Co58/Co60比率の低下により、Niの溶出抑制が把握可能
88
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
SG使用年数とCo58/Co60比率の関係
TT600プラントは、TT690プラントよりCo58の比率が高い。
母材中のNi濃度が高い
Co58比率はSG使用初期に高く、
その後低下する。
使用初期はNi溶出が多い
Ni58→Co58が生成
Co60は半減期が長く蓄積さ
れる。SG水室表面の各種分析結果よりCo58/Co60比率を算出
TT600
TT690
0
5
10
15
20
25
30
0 10 20 30
SG使用開始後
定検回数
コー
ルド
レグ
、ホ
ット
レグ
配管
の平
均C
o58/C
o60比
率
TT600
TT690
(半減期
Co60:5.27年, Co58:71日)
99
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
SGR前後における線量率変化(関西電力の7PWR)
① 継続的な低下
保護皮膜形成によりNi溶出量が低下:
Co58が減少
②一時的な増加
Ni溶出量増加によりCo58が増加
③再び低下を開始
Ni溶出量が再度減少し、Co58が低下
④プラトー
Co58の低下に伴い、相対的にCo60 の影響が顕著になっている。
⑤低下の再開
順次亜鉛注入を開始定検回数(SGR定検基準)
SGR0
20
40
60
80
100
120
140
-20 -10 0 10 20
SG
水室
平均
線量
率(m
Sv/
h)
SG水室線量平均値Co60寄与分(評価値)Co58寄与分(評価値)
① ② ③ ④ ⑤
1010
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
亜鉛注入前後における線量率変化(関西電力10プラント)
亜鉛注入、減少傾向が明瞭に。
EPRI報告式と類似の低下傾向
Co60の半減期と相関あり(減衰による低下と一致)
定検回数(Zn注入前を基準)
SG
水室
平均
線量
減少
r率(Z
n注
入直
前を
1と
して
規格
化)
M2M3T1
T2T3
T4O1O2O3O4averageA0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5
平均値
5±3ppbのZn注
入を開始
(出典:D. Perkins et al., NPC, 2008, Berlin)
Co60半減期(定検間
隔15月として概算)
EPRI報告式(5ppb,1サイクル13月)
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
0 1 2 3 4 5
定検回数(Zn注入前を基準)線
量減
少率
1111
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
1次系におけるスケール問題(SG水質線量率)まとめ
プラント線量率は連続的に低下傾向SG伝熱管からのNi溶出量低下に伴い、線量率(Co58)が低下
水処理高度化(運転中、起動停止時の水質管理)が寄与
材料変更(SGR)などは、一時的に線量率増加要因として影響
→事前皮膜処理が有効と考えられる。
被ばく低減に関する取り組み亜鉛注入はCo取り込み抑制に顕著な効果を発揮(5年で半減)高経年化プラントはCo60への対策が重要
1212
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
2次系における主要なスケール付着問題
SG2次側に持ち込まれる鉄を主体としたスケールの付着
伝熱性能低下、SG健全性の観点から持ち込み抑制を実施
FAC(2次系配管の減肉)の観点からも重要
鉄スケール
1313
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
管支持板BEC穴へのスケール付着・水位振動の発生による出力抑制問題・腐食環境の形成問(IGAの発生懸念)・デンティング
直管部へのスケール付着・伝熱効率の低下
管板上へのスラッジ堆積・腐食環境の形成問題(IGA発生懸念)
SGへの鉄持込による不具合
主な対策
運転中:鉄の持ち込み抑制(pH制御、アミン種の選定)
定検中:スラッジランシング、BEC洗浄、ASCA洗浄
本講演ではプラント実績を紹介
(技術項目はMHI殿により情報提供)
1414
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
2次系
水処理の変遷
▼ 営業運転開始
■ リン酸塩処理
■ AVT処理(ヒドラジン-アンモニア)
■ほう酸注入
■ 微量ETA(ETA0.1~0.2ppm)
■ ETA注入(ETA3ppm)
■ 高ETA注入(pH9.8)
■ 高アンモニア注入(>pH9,8)
○
全量コンデミ設置
☆ SGR
▼
ETA排水処理設置
▼ ○ ☆
▼ ○ ☆
▼ ○ ☆
▼ ○ ☆
▼ ○ ☆ ▼
▼ ○ ☆ ▼
▼ ○ ☆ ▼
○▼ ▼
○▼ ▼
○▼ ▼
○▼ ▼
70年代 80年代 90年代 2000年代美浜1号機
美浜2号機
高浜1号機
高浜2号機
美浜3号機
大飯1号機
大飯2号機
高浜3号機
高浜4号機
大飯3号機
大飯4号機
リン酸処理 AVT処理 ほう酸注入
微量ETA
ETA注入 高ETA注入
高アンモニア
SG健全性確保、鉄持ち込み抑制を主たる目
的に水質を継続的に改善
各プラントの設備に適した水質管理を実施
1515
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
2次系
スラッジランシングでの鉄除去量 (関西電力のPWR 11プラント)
スラッジランシング時のスラッジ除去量は低下傾向にある
AVTからETAへの変更、高pH化により継続的に低下
1
10
100
1000
1982 1987 1993 1998 2004 2009 2014
年
スラ
ッジ
ラン
シン
グス
ラッ
ジ除
去量
(kg)
SGR前
SGR後
SGR後(BEC洗浄)
AVTETA 高pH化
スラッジランシング:管板部
に堆積した鉄(主にマグネタ
イト)を水圧により除去
1616
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
給水鉄濃度、pHの変遷 (SGR以降の関西電力11プラントにおけるサイクル平均)
高pH化は銅の溶出増加となるため、銅系材料(復水器・給水過熱器伝熱管)の排除と合わせ段階的に高pH化を推進
pH増加に伴い、給水鉄濃度は低下傾向
給水
pH
(25℃
) 給水
鉄濃
度(ppb)
AVTETA 高pH化
7.5
8
8.5
9
9.5
10
1993 1998 2004 2009 2014
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
鉄スケール
1717
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
給水鉄濃度とpHの関係
0
2
4
6
8
10
9 9.5
給水pH
サイ
クル
平均
給水
鉄濃
度(p
pb)
10
0.1
1
10
9 9.5 10
給水pH
サイ
クル
平均
給水
鉄濃
度(p
pb)
EPRI公開データと関西電力プラントの比較Beznau NPPと関西電力プラントの比較
データ出典:Fruzzetti et. al., NPC2012 データ出典:Mailand et. al., NPC2012 (Beznau NPP)
同pHでは、海外プラントより僅かに低い給水鉄濃度低減を達成
pH9.5~9.9程度で、給水鉄濃度2~1ppb(目標1ppb)までの低減が見込まれる
Beznau
Kepco
Kepco
1818
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
2次系
pH最適化の概念
給水鉄濃度低減には高pH化が有効
高pH化の弊害(例)アミン使用量増加によるコンデミ(復水処理装置)の負荷増加
→コンデミのバイパス運転→不純物量の増加懸念
銅系材料の溶出(対策:復水器やヒータなどから銅系材料の排除が必要)
ETA排水処理
低圧タービン
低圧ヒータ
高圧ヒータ
高圧タービン
復水処理装置
MSH
蒸気
発生
器
PWR2次系主要系統
設備健全性、経済性など
を考慮し、各プラントに最適
なアミン種(アンモニア、ETA、
モルフォリンなど)選定、pH 管理を実施
参考:ETAは気液分配係数の差により、アンモニ
アと比べて抽気系統での溶出抑制効果が高い
1919
THE KANSAI ELECTRIC POWER CO., INC.
2次系におけるスケール問題(SG鉄持込)まとめ
SGへの鉄および不純物持ち込み抑制、FAC抑制の観点から、2次系の水化学管理改善が進められている。
ETA採用、高pH化により,SGへ持ち込まれる鉄は継続的に
低下している。
pH9.5~9.9程度で、給水鉄濃度2~1ppbまでの低減が見込
まれる。