12
-1- Keyword;廃棄物処理法改正 感染性廃棄物処理マニュアル改訂 産業廃棄物廃棄物管理票 多量 排出事業者 電子マニフェスト義務化 感染と感染性廃棄物の ABC 第 97 回 最新トピックス 廃棄物処理法の改正と廃棄物 処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル 平成 29 年 3 月改訂の解説 その 1 前々回は、排出事業者責任のマニフェストについての解説をしました。ここでは、マニ フェストの流れを示し、マニフェストの制度は、排出事業者責任の根幹の1つであり、適 正処理のいくつかの処理が確実になされたかどうかを排出事業者である企業なり、医療機 関が、確かめるための唯一の方法ともいえます。 今回は、このマニフェストの回付期限(各処理過程から返戻されてくるマニフェストの 締切)などに触れる予定でしたが、平成 29 年 3 月に、廃棄物処理法の改正、環境省の 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」の改訂の公表と相次ぎました。 トピックスが続きますが、これらの解説が遅れておりましたので、この内容を2回に亘 り、優先して行います。 1.廃棄物処理法の改正 今回の廃棄物処理法の改正は、ダイコーの食品横流し事件が平成 28 年 1 月に起き、こ れを受けて、どのような改正がされるか興味あるところでした。 表1 廃棄物処理法 改正案の概要 一 廃棄物の不適正処理への対応の強化 1 廃棄物処理法;廃棄物の処理及び清掃に関する法律 改正案の概要;廃棄物の不適正処理への対応の強化 医療関係機関等で感染性廃棄物を年間50トン以上排出は対象 マニフェスト罰則強化;懲役1年以下または罰金 100 万円以下 法第5章罰則 第27条の2 新設 従来の懲役6か 月以下または 罰金50万円以 下が、2倍とな りました。

Q B K ü ¸ ¥ µ Q B K · ü ¸ Ï ¼ H ´ Ù ¢ Ô ¥ · Ë & · r µ Q B K · g ... K ë "@ #. 2 b 5 G c « _&g M \ > ~ ¤ $× ^ P'Ç \ 8 : E _ c 8 ? N ¨ C b û $ª µ6õ _6õ4

  • Upload
    lenhu

  • View
    219

  • Download
    3

Embed Size (px)

Citation preview

-1-

Keyword;廃棄物処理法改正 感染性廃棄物処理マニュアル改訂 産業廃棄物廃棄物管理票 多量

排出事業者 電子マニフェスト義務化

感染と感染性廃棄物の ABC 第 97 回 最新トピックス 廃棄物処理法の改正と廃棄物

処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル 平成 29 年 3 月改訂の解説 その 1

前々回は、排出事業者責任のマニフェストについての解説をしました。ここでは、マニ

フェストの流れを示し、マニフェストの制度は、排出事業者責任の根幹の1つであり、適

正処理のいくつかの処理が確実になされたかどうかを排出事業者である企業なり、医療機

関が、確かめるための唯一の方法ともいえます。

今回は、このマニフェストの回付期限(各処理過程から返戻されてくるマニフェストの

締切)などに触れる予定でしたが、平成 29 年 3 月に、廃棄物処理法の改正、環境省の

「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」の改訂の公表と相次ぎました。

トピックスが続きますが、これらの解説が遅れておりましたので、この内容を2回に亘

り、優先して行います。

1.廃棄物処理法の改正

今回の廃棄物処理法の改正は、ダイコーの食品横流し事件が平成 28 年 1 月に起き、こ

れを受けて、どのような改正がされるか興味あるところでした。

表1 廃棄物処理法 改正案の概要 一 廃棄物の不適正処理への対応の強化

表1 廃棄物処理法;廃棄物の処理及び清掃に関する法律改正案の概要;廃棄物の不適正処理への対応の強化

医療関係機関等で感染性廃棄物を年間50トン以上排出は対象

マニフェスト罰則強化;懲役1年以下または罰金100万円以下

法第5章罰則 第27条の2 新設

従来の懲役6か月以下または罰金50万円以下が、2倍となりました。

-2-

しかし廃棄物処理法の改正は、表1に示すとおり抜本的な対策というわけにはいかず、

多くの企業、医療機関に関連あるところは、マニフェスト関連の罰則が懲役、罰金が2倍

に強化されたことと多量の特定の産業廃棄物を排出する企業、医療機関は、3年以内に電

子マニフェスト使用の義務付けの2点に尽きるといえます。

① マニフェスト関連の違反に対する罰則を2倍に

電子マニフェストを利用していた廃棄物処理業者のダイコーが、昨年1月に廃棄物を商

品として転売するという不適正処理事件を起こしました。このため平成 29 年の廃棄物処

理法改正は、抜本的な防止策をとの期待もありましたが、改正の内容は、単にマニフェス

ト関連の罰則を懲役、罰金を2倍にするというものに留まりました。詳細は後述します。

電子マニフェストであっても使用に関して、排出事業者側、処理者側双方が、適正処理

に関して排出事業者責任を自発的に持っていない限りは、防げないものと考えます。

このように廃棄物に関した事件が起きれば起きるだけ、排出事業者責任は、自らの企

業、医療機関を守るためのものという考え方から離れて、違反に対して罰則強化という悪

のスパイラル、イタチごっこというような、根絶にはまだまだ程遠い対策といえます。

ダイコー事件については、ここでは略しますが、詳しい解説・検討は別の機会があれば

と思います。排出事業者側の責任も大きいと思われ、環境省の一部サイトでは、排出事業

者責任の指摘がありましたが、結果的には、この委託を依頼した排出者側には余り目を向

けられず、ダイコーのみが悪役となり罰を受けました。

確かに、廃棄された冷凍食品を有価物としてのルートで勝手に流すなど、衛生上からみ

ても前代未聞の事件といえます。

しかし価格面をみれば1kg で 10 数円から 20 円など運搬代にもならないことは、素人

目から見てもわかります。

この冷凍食品の廃棄物は、焼却などの処分をすればとてもこの費用ではできません。

食品残渣などの食品廃棄物は、一部リサイクルされているものもあるため、排出事業者

は、このような価格で委託したのでしょうが、この始まりがまず大きな過ちといえます。

環境省の一部サイトでは、排出事業者責任についても触れていたましたが、余りに不適

切な価格での委託は注意義務違反に抵触されることも今後は知らしめるべきと考えます。

このようなことで今回の廃棄物処理法の改正は、マニフェストの違反については、

次々回(第 99 回)以降で詳細は解説予定ですが、罰則は、表1に示すように、廃棄物処

理法 第 27 条の2として新設された、「6ヶ月未満の懲役、または、100 万円以下の罰

金」と、一律従来の罰則の2倍と重いものになりました。

② 特定の産業廃棄物についての多量排出事業者の電子マニフェストの使用義務付け

一方罰則ではなく、特定の産業廃棄物について、多量排出事業者は、3年以内に電子マ

ニフェスト使用の義務化がされることも法改正に含まれています。

一見医療機関には関係ないようですが、多量排出事業者は、下記の表2ように定義され

ており医療機関の一部は、すでにこの対象となっているはずです。

廃棄物処理法に従い、法第 12 条Ⅸ にあるように「多量の産業廃棄物を排出する事業

者は、この廃棄物についての減量その他の処理に関する計画を作成し都道府県知事に報告

-3-

する。」となっています。そして同、法第 12 条Ⅹ では、「計画の実施状況を都道府県知

事に報告する。」と計画と実施の報告がセットになっています。これは、産業廃棄物

1,000 トン以上を前年度1年間で排出した場合に該当します。同様に感染性廃棄物など特

別管理産業廃棄物については、前年度1年間に 50 トン以上排出した場合に該当します。

医療機関の場合は、病院の特性などでバラツキはありますが、感染性廃棄物で年間排出

50 トン以上は、病床数 150 床を超えてくると該当してくるかと思います。当該感染性廃

棄物についての減量など処理状況についての計画の提出と翌年度その計画に基づいて行う

実施状況の報告を都道府県知事に提出が義務付けられています。これを怠れば、法第 33

条の罰則で罰金 30 万円が科せられます。

今回の廃棄物処理法改正では、先の罰則を強化するだけに留まらず、特定の産業廃棄物

を排出する、これらの多量排出事業者には、電子マニフェストを用いることを義務づける

というもので、具体的実施は、3年以内に政令を定めるとなっています。(表1参照)

早ければ環境省の担当者の交代時期の年度末までに方針が決まるかと思います。

また微妙なニュアンスの「特定の産業廃棄物」は、特別管理産業廃棄物とはなっており

ません。具体的には何を指しているかは、現段階では分かりません。しかし、感染性廃棄

物が外れることはないかと予想されます。

表2 廃棄物処理法による多量排出事業者の定義と改正による新規定

(産業廃棄物の多量排出事業者) 令第6条の3 (廃棄物処理法施行令)法第12条Ⅸの政令で定める事業者は、前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上である事業場を設置している事業者とする。

(特別管理産業廃棄物の多量排出事業者) 令第6条の7法第12条の2第10項の政令で定める事業者は、前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者とする。

法第12条Ⅸ その事業活動に伴い多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者として政令で定めるもの(次項において「多量排出事業者」という。)は、環境省令で定める基準に従い、当該事業場に係る産業廃棄物の減量その他その処理に関する計画を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。

法第12条Ⅹ 多量排出事業者は、前項の計画の実施の状況について、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に報告しなければならない。

廃棄物処理法 事業者の処理 第12条

表2 廃棄物処理法による多量排出事業者の定義と改正による新規定

廃棄物処理法 改正による多量排出事業者の新規定 — 電子マニフェストの義務化

(電子情報処理組織の利用/電子マニフェストの利用) 法第12条の5特定の産業廃棄物を排出する 多量排出事業者は、紙マニフェスト(産業廃棄物管理票)の

使用に代えて、電子マニフェストの使用を義務付けることとする。

※ 3年以内に詳細は政令で定めることとなっています。

-4-

廃棄物処理法の改正のその他の項目としては、表1の通りで、一部の人には関係があり

ますが、医療機関には余り関係がないかもしれません。

マニュアルの改訂 — 廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル

マニュアルが、約5年振りに改訂となりました。マニュアルに余り馴染みもない方もい

らっしゃると思いますので、少しマニュアルについても触れておきます。正しくは、環境

省作成の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」が、正式名で、感染性廃

棄物に関係する方たちは、通常、単に「マニュアル」と略して呼んでいます。(以下 マニ

ュアルと略します。)

そもそも廃棄物処理法は、刑法などと同様に、法律レベルとして、全ての国民に適用さ

れるものです。当然全ての産業分野について共通です。

廃棄物処理法では、医療関係の廃棄物である感染性廃棄物は、一般の業務から発生する

産業廃棄物より、さらに危険性の高い、特別管理産業廃棄物に属しており、当然、特別な

扱いどころか、縛りはきついものとして扱われております。

「医療廃棄物ガイドライン」から「感染性廃棄物処理マニュアル」へ

マニュアルの前身は、「医療廃棄物ガイドライン」というものがありました。これは、

医療廃棄物が、産業廃棄物の範疇として存在していた時代のものです。

1989(平成元)年に厚生省(現厚生労働省)は、三重大学医学部附属病院での針刺し事

故による研修医の死亡事故を機に、産業廃棄物から、爆発性、毒性、感染性という、さら

に危険性の高いものを特別管理産業廃棄物という新たな概念として設け、そしてこの特別

管理産業廃棄物の中から、感染性、その他の人の健康、または生活環境に係る被害を生ず

るおそれがある性状を有するものを「感染性廃棄物」という新たな概念として取り出し、

1991(平成3)年廃棄物処理法の改正により法制化しました。

特に「感染性廃棄物」は、他の廃棄物以上に、危険であり、取扱い上の適正処理の推進

という配慮の基に、従来までの「医療廃棄物ガイドライン」は、打ち切り、この法律であ

る「廃棄物処理法に基づく」と付して、「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュ

アル」という新らたな考え方で、詳細に記述された形での「マニュアル」が生まれ、スタ

ートすることになりました。これは、平成4年8月 13 日付 衛環第 234 号 厚生省水道

環境部長通知「感染性廃棄物の適正処理について」の別添報告書別紙二「廃棄物処理法に

基づく感染性廃棄物処理マニュアル」によって位置づけられています。そしてこの文書

は、日本医師会他、関係各所に発出されました。対象は、医療関係機関等の排出事業者の

みならず、処理業者、清掃業者等の関係者を全て含むものとなっています。

現在は、このマニュアルに基づいて処理・処分が行われていますので、感染性廃棄物に

携わる人が、感染性廃棄物のみではなく、医療機関全体から排出される廃棄物と感染性廃

棄物の関係、分別、梱包など適正な取扱を示すものであって欲しいと思います。

そのような観点から見ると、ここで挙げているような、いくつかの混乱を招きやすい、

曖昧な表現、取扱が気になってきます。

-5-

このような経緯があり、廃棄物処理法の大きな改正、あるいは関連の感染症法などで改

正があると感染性廃棄物にも影響のある場合には、マニュアルの改訂がされております。

そして、平成 16 年3月のマニュアル改訂で、感染性廃棄物の判断フローチャートが加

わり、また紙おむつの扱いができ、この紙おむつの感染性の有無には、感染症法による感

染症の分類に従うことになっているため、感染症法の改正にも連携する形となっておりま

す。その後は、平成 21 年の改訂を経て、前回のマニュアルの改訂は、平成 24 年で今回

は、5年振りといえます。

平成 29 年 3 月改訂のマニュアル — 改訂のポイント

以下に今回の改訂の主なポイントを解説します。

従来から、廃棄物処理法の改正に呼応して、マニュアルも改訂してきましたが、今回の

改訂では、廃棄物処理法の改正はあまり反映していないといえます。

感染症法による感染症分類の追加は、マニュアルのサイトがありますので、参照してく

ださい。マニュアル https://www.env.go.jp/recycle/misc/kansen-manual.pdf

今回のマニュアルの改訂で高く評価される2点

筆者から見ると内容的に非常に評価されるもので、それは2点あります。

これは、多分今までもマニュアルをつぶさに見ていない方には、余り気づかないところ

かもしれません。しかし、もし常日頃から、疑問に思っていた方がいらしたら、それは正

しい解釈をされていたと考えます。

表 3

種 類 例

燃 え 殻 焼却灰

汚 泥 血液(凝固したものに限る。)、検査室・実験室等の排水処理施設から発生する汚泥、その他の汚泥

廃 油 アルコール、キシロール、クロロホルム等の有機溶剤、灯油、ガソリン等の燃料油、入院患者の給食に使った食料油、冷凍機やポンプ等の潤滑油、その他の油

廃 酸 レントゲン定着液、ホルマリン、クロム硫酸、その他の酸性の廃液

廃 ア ル カ リ レントゲン現像廃液、血液検査廃液、廃血液(凝固していない状態のもの)、その他のアルカリ性の液

廃プラスチック類 合成樹脂製の器具、レントゲンフィルム、ビニルチューブ、その他の合成樹脂製

のもの

ゴ ム く ず 天然ゴムの器具類、ディスポーザブルの手袋等

金 属 く ず 金属製機械器具、注射針、金属製ベッド、その他の金属製のもの

ガラスくず、コ ンクリートくず 及び陶磁器くず

アンプル、ガラス製の器具、びん、その他のガラス製のもの、ギブス用石膏、陶磁器の器具、その他の陶磁器製のもの

ば い じ ん 大気汚染防止法第2条第2項のばい煙発生施設及び汚泥、廃油等の産業廃棄物の焼却施設の集じん施設で回収したもの

紙くず類、厨芥、繊維くず(包帯、ガーゼ、脱脂綿、リネン類)、木くず、皮革類、実験動物の死体、これらの一般廃棄物を焼却した「燃え殻」等

表 3 医 療 関 係 機 関 等 か ら 発 生 す る 主 な 廃 棄 物

一 般 廃 棄 物

◎ 今回の改訂で加わった注釈 ※上表は産業廃棄物と一般廃棄物の区分の表であり、感染性廃棄物の該否につい ては、「1.4 感染性廃棄物の判断基準」により判断すること。

〔マニュアル本文 p8 参照〕

-6-

マニュアルp8 表「医療関係機関等から発生する主な廃棄物」の可否について

マニュアルp8 の表(本稿 表3)は、どのように解釈できるでしょうか?

日本医師会に在職中は、よく会員医療機関の先生や職員の方から質問を受けました。

みていただければお分かりの通り、もしこの表が何の断りもなく出されていて、このま

ま用いるのなら、例えば注射針は、産業廃棄物の金属くずで良いことになります。廃血液

は、産業廃棄物の廃アルカリで排出できることになります。これはどうみてもおかしくな

いでしょうか?

実は、今回の改訂までは、この表がこのままでまかり通っていました。

筆者は、この表をこのまま出すのは、「感染性廃棄物」という概念ができたので、混乱

を招くだけなので削除して欲しいことを再三環境省に言ってきました。

それでも 10 数年間、感染性廃棄物処理マニュアルであるにも関わらず、この表が、感

染性廃棄物の分別の上からも非常に紛らわしく、単純には過去の産業廃棄物の中に医療廃

棄物が存在していた医療ガイドラインの時代のものであり、新たに感染性廃棄物の概念が

できたにもかかわらず掲載しているということは、適正処理推進の上からは、ブレーキと

なると主張していました。

今般、矛盾に対してようやく対処し、削除ではなく注の一文を入れました。

これは筆者の憶測ですが、去る平成 29 年 3 月 11 日に第2回のアダモスセミナーに招か

れた講演の機会に感染性廃棄物適正処理の分別の際に紛らわしいこの表と後述の計2点に

触れました。会場には、マニュアルの改訂に関係している公財 日本産業廃棄物処理振興

センターの部長がご多忙の折に聴講されていました。

今回のマニュアル改訂の際には、会合は開催されなかったようですので、これらの意見

が、そのまま反映されたかと思えます。

その後お会いしておらず、環境省の担当者も異動しており、真実は分かりませんが、少

しでも正しい方向に進むのであれば、とても素晴らしいことと思っています。

筆者の考え方からするなら、医療ガイドラインから感染性廃棄物処理マニュアルに替わ

った際に、新たに感染性廃棄物の概念ができたのですから、産業廃棄物の金属くずに「注

射針」があり、医療関係機関から発生する主な廃棄物で「産業廃棄物」ということはあり

得ない、したがって、この表は、紛らわしいだけで、削除すべきと考えました。

「医療関係機関等を対象とした特別管理産業廃棄物管理責任者講習会」のテキストに

は、初版の平成 20 年当時のものであっても、環境省のマニュアルにあるこの表を掲載

し、感染性廃棄物となったものには、★印を付けて区別するなどして、その旨の注を付け

て作成しました。中々講演などでは、時間も足りなくマニュアルのこれらの点にまで触れ

る機会がありませんでした。もし改訂前のマニュアルなり、ご覧いただいた際には、この

ような意味を持った表であることをご理解いただけばと思います。

そして遠回りになりましたが、結果としては、今回の改訂では、この表3の下段にあり

ますように、今更この表を落とせないので、下記のような※の注釈の 1項を付けました。

「※上表は産業廃棄物と一般廃棄物の区分の表であり、感染性廃棄物の該否について

は、「1.4 感染性廃棄物の判断基準」により判断すること。」 これが入ることで、混乱

は回避されたと思います。

-7-

「感染性廃棄物にその他の非感染性廃棄物を混入して良い」というマニュアルの記述

表4は、マニュアルのp16 の4.1分別の1.、2.の部分の抜粋です。この表題のよ

うな誤解を招いているのは、マニュアル自身のこの部分であるということです。この意味

するところは、冒頭の4.1 内で、「他の廃棄物と分別して排出する」としてお

きながら、最下段2行目の他の廃棄物を感染性廃棄物と同じ扱い(処理)するなら、一緒

にしても(混入しても)良いとしています。しかし環境省の担当の方は、次々と2年間で

交代していくために、先の表3と同様、誰もこの混入の危険に気が付きませんでした。

今回唐突にとはいえ、これに対して、別途1項目が追加されることとなり注意を促しま

した。(本稿p10 表 7 項目7. 参照)本質的な点での間違いは気がついているかどうか

までは、分かりかねますが、内容的には、大変重要なことで、高く評価されるものです。

これは有害・医療廃棄物研究会の平成 24 年度の助成研究として、感染性廃棄物の分別

について研究しました。その際にマニュアルの記述について、1言1句つぶさに調べまし

たが、それは表 4 の下から2行目のただし書きの部分があります。

これは、多分診療所などの小規模医療機関のための一文ともいえます。しかしこれは、

親切に、感染性廃棄物でないもの(非感染性廃棄物もの)も、もし上位の感染性廃棄物の

扱いで廃棄するのなら、一緒にしても良いということです。

その伏線は、本稿のp7 の表4(2)非感染性廃棄物があります。「医療行為等に伴っ

て生ずる廃棄物のうち、感染性廃棄物以外の廃棄物」と定義されています。

感染性廃棄物以外の廃棄物は、次頁の表5でみるなら、 色以外の部分にある産業

廃棄物、特別管理産業廃棄物も該当してきます。そして「医療行為に伴って生ずる廃棄

物」は、医療行為は、主として医療機関で行われるもので、医療機関から排出される大部

分の廃棄物は該当します。

表4 第4章 医療関係機関等の施設内における感染性廃棄物の処理

4.1 分別

感染性廃棄物は、発生時点において、他の廃棄物と分別して排出するものとする。

【解説】

1.医療関係機関等から発生する廃棄物は、一般に次のように区分できる。

(1) 感染性廃棄物(医療行為等に伴って生ずる感染性廃棄物)

(2) 非感染性廃棄物(医療行為等に伴って生ずる廃棄物のうち感染性廃棄物以外の廃棄物)

(3) 上記以外の廃棄物(紙くず、厨芥等)

2.感染性廃棄物は、公衆衛生の保持及び病原微生物の拡散防止の徹底の観点から、 より安

全に配慮した取扱いを要するものであり、このため廃棄物の発生時点において他の廃棄物と

分別するものとする。ただし、感染性廃棄物と同時に生ずる他の廃棄物を感染性廃棄物と

同等の取扱いをする場合は、この限りでない。 〔本稿p9 の表 7 に続く〕

-8-

表5 感染性廃棄物処理マニュアルによる分類 〔説明、感染性廃棄物等は筆者が加筆〕

大変わかりにくいですが、感染性廃棄物以外といえば、正確には、感染性廃棄物より下

位の廃棄物だけではありません。感染性廃棄物以外には、上記表5のように、産業廃棄

物、感染性廃棄物以外の特別管理産業廃棄物も含まれてきます。このことは、考えていな

いようです。

下記表6でいえば、感染性廃棄物の下にある、感染性廃棄物以外の特別管理産業廃棄

物、すなわち爆発性、毒性など感染性以外で逆に危険度が高い廃棄物が該当してきます。

マニュアルの考え方は、危険度の最上位にあるのは、感染性廃棄物であり、他の廃棄物

は、これより下位にあるものと決め込み、上位の感染性廃棄物と一緒に処理するなら良い

と大きな誤りをしています。表6の説明の通り、感染性廃棄物と感染性廃棄物以外の特別

管理産業廃棄物は、全く別物です。

医療行為の正確な定義がありませんので、臨床検査類は、医療行為であり、検査試薬、

あるいは病理検査で用いる有機溶剤なども医療行為により生ずるといえます。

この結果、感染性廃棄物とは別の性状であり、処理も焼却などでない特別管理産業廃棄

物が感染性廃棄物以外の他の廃棄物として、感染性廃棄物に混入することを許しています

し、また、混入しても良いと解釈する人も多いと思います。

今回の改訂により、次頁 表7の項目7として、注釈の1項目が新たに入りました。し

かし抜本的に概念の異なることをあたかも一緒にすることは、表6の分類表を見ていただ

ければ、一目瞭然で、混在がいかに危険なものであるかがお判りいただければと思いま

す。

廃 棄 物

特別管理産業廃棄物

特別管理一般廃棄物

一般廃棄物

産 業 廃 棄 物

感染性産業廃棄物

感染性一般廃棄物

表5 感染性廃棄物処理マニュアルによる分類

〔マニュアルp7〕

マニュアルによればこの2つ以外は、非感染性廃棄物です。

マニュアルに記載ない。筆者が参考に追加したもの。感染性産業廃棄物

ただし、感染性廃棄物と同時に生ずる他の廃棄物を感染性廃棄物と同等の取扱いをする場合は、この限りでない。

⇒ 感染性廃棄物と一緒に排出して良い。その他には、産業廃棄物、特別管理産業廃棄物もある

爆発性、毒性/具体的には、強酸、強アルカリ、引火点70℃未満の廃油(ガソリン)など水銀など PCB、廃石綿、ベンゼンなど特定有害物質

マニュアルに記載ない。筆者が参考に追加したもの。医療機関から排出のみ感染性廃棄物/家庭からの排出はない。

一緒にして良いか?

-9-

表6 感染性廃棄物とそれ以外の特別管理産業廃棄物

この理由は、2点あります。

1.廃棄物は、すべて同じ素材、性状ではありません。

感染性廃棄物同士が一緒になっても、特に爆発性、毒性などが出るようなものはありま

せん。しかし先のように、他の廃棄物には、産業廃棄物、特別管理産業廃棄物が含まれて

います。したがって廃棄物によっては、混在すれば化学変化を起こすというものもありま

す。特に液状物は、危険です。

酸・アルカリの場合、あるいはナトリウムやリチウム電池のように水と反応し発熱す

る、さらに爆発を起こすような物質もあり、処理会社での火災原因の大きな原因となって

います。

2.廃棄物の中間処理の面からみるならば、感染性廃棄物については、原則、全て焼却と

いう処理で滅菌が可能です。

したがって滅菌の方法として委託処理で認められているオートレーブ(高圧蒸気滅菌)

処理、マイクロウェーブ(高周波)処理などでも感染性廃棄物が全ての滅菌が可能である

ということです。ですから先の診療所の例としては、一項目「同じ中間処理で行うことが

可能であるなら」という前提条件がなければ困るわけです。

このことを忘れて感染性廃棄物にこれらの滅菌方法が異なる感染性廃棄物以外の特別管

理産業廃棄物などを混入すると、爆発、火災などの事故に繋がりかねません。

4

廃棄物

(事業活動に伴って生じた廃棄物で20種類:廃プラ等)

特別管理産業廃棄物

特別管理一般廃棄物

一般廃棄物 事業系一般廃棄物

家庭廃棄物

産業廃棄物

(一般家庭の廃棄物)

感染性産業廃棄物

感染性一般廃棄物

在宅医療廃棄物

(産業廃棄物以外の廃棄物)

(感染性+一般廃棄物:ガーゼ、紙等)

(廃プラ、廃金属、ガーゼ、紙等)

感染性産業廃棄物以外の特別管理産業廃棄物

爆発性・毒性、感染性、人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの

キシレン、強酸・強アルカリ、特管廃油、砒素等薬剤、検査試薬、病理有機溶剤等個々に対応

医療に用いるが感染性廃棄物とは物性等全く別物との認識が無い。

感染性廃棄物とそれ以外の特別管理産業廃棄物

感染性廃棄物以外の特別管理産業廃棄物があり、これも非感染性廃棄物

責任:事業者

責任:市町村

不法行為 民法709条、業務上過失致死罪刑法211条、債務不履行 民415条

-10-

そして感染性廃棄物以外の特別管理産業廃棄物は、感染性廃棄物に比べて、すべて焼却

などというわけにはいかず、その物性、性状などから、その廃棄物の品目ごとで中間処理

が異なってくる場合が多いといえます。

今回のマニュアルに誤植があるようです。項目7の最下行の

誤 「容器内に混入しないようにの分別を徹底しなければならない。」 のを削除

正 「容器内に混入しないように分別を徹底しなければならない。」

を修正してください。

2番目の項目もほぼ1.と同様です。

そして基本的に特別管理産業廃棄物は、産業廃棄物から爆発性、毒性、感染性廃棄物と

いう3つの危険な性状の要素を持ったものを取り出して新たに設置したものです。

したがって現在の廃棄物処理法では、筆者の表6の分別表に示してある通り、特別管理

産業廃棄物は、感染性廃棄物と感染性廃棄物以外の特別管理産業廃棄物との2つに分けて

考えるべきです。感染性廃棄物と感染性廃棄物以外の特別管理産業廃棄物は、性状、処理

なども全く異なる廃棄物である点は、十分ご理解いただきたいと思います。

表7 〔本稿p7 の表 5 4.1 分別 項目 1、2 の続き〕

第4章 医療関係機関等の施設内における感染性廃棄物の処理

4.1 分別 1.、2 の続き

4 感染性廃棄物は、「4.2梱包」による梱包が容易にできるよう、排出時点で次のとおり分

別して適切な容器に入れることが望ましい。

(1) 液状又は泥状のものと固形状のものは分別する。

(2) 鋭利なものは他の廃棄物と分別する。

5 診療所等において、分別の必要のない方法により処分する場合であって、分別の結果長期

間にわたる保管が必要となる等の理由により分別排出することが困難な場合は、鋭利なもの

にも泥状のものにも対応する容器を用いる等安全に配慮する。

6 感染性産業廃棄物の収集運搬又は処分を業として行うことができる者は、感染性一般廃棄

物の収集運搬又は処分を行うことができる。

〔今回の改訂で追加された新規項目〕

7 排出事業者は、感染性廃棄物を適正に処理する責任があり、処理過程での事故防止のため

に、引火性、爆発性のある廃棄物、医療行為等に伴う放射性物質を含む廃棄物、混合による

化学変化や単体でも危険性を有する物質、水銀等の有害物質を含む廃棄物が、感染性廃棄物

容器内に混入しないように分別を徹底しなければならない。

-11-

ところがマニュアルの分別表では、表 5 のように、特別管理産業廃棄物の下に、単に感

染性廃棄物があり、感染性廃棄物として扱うなら、その他の廃棄物を一緒にしても良いと

あれば、感染性廃棄物の中に混入することは良いと理解しても無理はないと思います。

この点も注意してください。

廃棄物処理法の改正で、影響あるのはマニフェスト罰則が強化されたことと、特定の産

業廃棄物を多量に排出する事業者には、電子マニフェストの使用を義務付けることなどが

あります。感染性廃棄物処理マニュアルの改訂では、通常見過ごすような点で、今回の開

設でも分かりにくいかと思いますが、実務を行っていく上では、重要な事項ですので、ぜ

ひご理解ただければと思います。

これらの記述は、4.1 分別に続く、4.2 梱包でも触れています。これらの問題点

は、この機会にマニュアルの第4章医療関係機関等の施設内における感染性廃棄物の処理

4.1~4.4 までは、医療機関にとって重要な基礎が収載されているので、本稿の続き、

次々回(第 99 回)で解説予定です。

診療所など小規模医療機関のために配慮したマニュアルの記述の不備のために、返って

混乱が起きていましたが、これらをカバーするために、今回のマニュアル改訂でこの注釈

の項目を用意したものと思われます。

筆者としては、感染性廃棄物に限りませんが、これらの分別による事故が最も身近で発

生しているともいえ、危惧している点です。

これらは、WDS(Waste Data Sheet;廃棄物データ内容シート)の不備ともいえ、

処理業者で収集した廃棄物を保管している際、あるいは処理の際に火災、小爆発などの不

測の事態が起きており、表7の項目7は、この防止のためと思われます。

次回(第 98 回)は、最新トピックス 今なぜ、水銀なのか? まとめ 2 水銀の使用と

毒性、水俣病の発生のしくみ、医療と水銀、生活と水銀など を予定しています。

第 97 回 セルフアセスメント

第 97 回の解説の中から設問を用意しました。もしご興味がおありでしたら、お答えく

ださい。解答は次回といたします。

1.廃棄物は、すべて同じ素材、(① )ではありません。

感染性廃棄物同士が一緒になっても、特に(② )、毒性などが出るようなもの

はありません。しかし先のように、他の廃棄物には、産業廃棄物、(③

)が含まれています。したがって廃棄物によっては、混在すれば化学変化を起こすと

いうものもあります。特に(④ )は、危険です。

第 96 回 解答

1. 世界における水銀需要量は、(① 小規模金採掘 )が第1位で 21%、ほぼ同数に近く

( ② 塩化ビニルモノマー )製造工程が 20%、塩素アルカリ 13%といずれも( ③ 発

展途上国 )での利用が中心となっています。これを合わせるだけで、ほぼ半数を上回

る約 54%となります。

-12-

[引用・参考文献]

1.総務省行政管理局政管理局、法令データ提供システム

廃棄物の処理及び清掃に関する法律、

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO137.html

2.廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46SE300.html

3.廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46F03601000035.html

4.環境省、廃棄物処理法上の排出事業者責任の概要、

http://www.env.go.jp/recycle/misc/wds/ref01.pdf

5.環境省監修、日本医師会・日本産業廃棄物処理振興センター、平成 20 年度 医療関係

機関等を対象にした特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会テキスト、第3章

および資料編 原田担当部分、日本医師会・日本産業廃棄物処理振興センター、2008.9

6.環境省大臣官房 廃棄物・リサイクル対策部、廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処

理マニュアル 平成16年3月改訂、平成21

年改訂、平成24年改訂

7.環境省大臣官房 廃棄物・リサイクル対策部、廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処

理マニュアル 平成29年3月改訂

https://www.env.go.jp/recycle/misc/kansen-manual.pdf

8.原田 優、医療機関から排出される廃棄物の分別のあり方について(平成24年度助成

研究)、特集第32回研究講演会 2013.7 有害・医療廃棄物研究会誌 26(1・2),13-36

(2014)

9.一社 医療廃棄物適正処理推進機構 アダモス、第2回基礎から分かるアダモス医療廃

棄物適正処理セミナー「法的にみた排出事業者責任と分別の実務」予稿集 2017.3.9

原田 優、知らないとコワイ 排出事業者責任と分別のポイント