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神経放射線領域におけるコンピュータ支援診断 システムの研究開発 有村秀孝 九州大学大学院医学研究院保健学部門医用量子線科学分野 Research and Development of Computer-aided Diagnostic System in the Field of Neuroradiology Hidetaka Arimura Division of Medical Quantum Radiation Sciences Department of Health Sciences, Faculty of Medical Sciences, Kyushu University 1.はじめに 近年,脳卒中や認知症の予防への高い関心と,CT (computer tomography) MRI (magnetic resonance imaging), PET (positron emission CT)などの高度な診断装置の普及に伴い,脳ドックが 多くの施設で実施されるようになってきました.脳ドックでは,症状が現れる前に脳の病変部を早期 発見し,脳の疾患を予防することを目的としています[脳ドックのガイドライン 2003,日本脳ドック 学会].例えば,脳卒中の場合,脳梗塞を予防するために無症候性脳梗塞(ラクナ梗塞)を,くも膜 下出血を予防するために未破裂脳動脈瘤を見つける必要があります.また,平均寿命の延びに伴い高 齢化社会となった日本では,認知症の患者数が増加し,大きな社会問題となっています.主な認知症 として,アルツハイマー病(約50%)と血管性認知症(約25%)があります.アルツハイマー病 の早期発見のために,画像を使った診断として,側頭葉,海馬,嗅内野などの皮質の厚み,側脳室の 拡大を主観的に評価し,診断を行っています.以上のことから,脳ドックの主な目的には,未破裂脳 動脈瘤,無症候性脳梗塞(ラクナ梗塞),認知症(アルツハイマー病,血管性認知症等)などの早期 発見があります.一方,若い世代で発症する重要な脳神経疾患の一つとして,多発性硬化症がありま す.髄鞘の破壊,損傷に起因する中枢神経疾患であり,症状や重篤度は,病変部の発生部位とその形 態により異なります.また,個々の発病状況や進行状況は様々で診断が難しい疾患の一つです. しかし,非常に多くの健常者の画像の中から病変部を見つけることはとても難しく,見落としが起 こる可能性があり,多くのトレーニングと経験が必要となります.また,多発性硬化症では,新たに 出現した病巣,増大した病巣,縮小した病巣,さらには消失した病巣が一人の患者の中にしばしば混 在し,正確に読影するには多くの時間と労力が必要です.医用画像の解像度が向上し,撮像方法が2 次元から3次元になることにより,診断画像枚数が膨大な量になっています.そのため,医師の大き な負担となり,医師の診断を支援するコンピュータ支援診断システム(computer aided diagnosis: CAD)の需要が高まっていました. MRI では,様々な撮像方法が存在するため,画質が変化し, CAD システムの構築が難しいと言われてきましたが,近年になって,神経放射線(本稿では脳神経放射線 だけ取り扱います)の領域で,MR 画像, CT 画像, PET 画像を用いて,CAD の研究開発が行われる ようになってきました. 『コンピュータ支援診断(CAD)』の概念は,シカゴ大学の土井邦雄教授が提唱されました 1-3) .コ ンピュータ支援診断とは,コンピュータの解析結果を“セカンドオピニオン(第二の意見)”として 利用して診断を行う「医師による画像診断」です.CAD システムを用いた場合,医師とコンピュー タの共同作業によって,医師の集中力低下を軽減でき,見落としを減らせる可能性があります.これ まで CAD の概念は,いろいろなモダリティにおいて様々な疾患に応用されてきました.代表的な例 としては,胸部 X 線写真,CT の肺がん検出,マンモグラフィーの乳がん検出,大腸 CT 画像の大腸

Research and Development of Computer-aided …web.shs.kyushu-u.ac.jp/~arimura/CADforBrainDiseases.pdf神経放射線領域におけるコンピュータ支援診断 システムの研究開発

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神経放射線領域におけるコンピュータ支援診断 システムの研究開発

有村秀孝 九州大学大学院医学研究院保健学部門医用量子線科学分野

Research and Development of Computer-aided Diagnostic System

in the Field of Neuroradiology Hidetaka Arimura

Division of Medical Quantum Radiation Sciences

Department of Health Sciences, Faculty of Medical Sciences, Kyushu University

1.はじめに

近年,脳卒中や認知症の予防への高い関心と,CT (computer tomography),MRI (magnetic resonance imaging), PET (positron emission CT)などの高度な診断装置の普及に伴い,脳ドックが多くの施設で実施されるようになってきました.脳ドックでは,症状が現れる前に脳の病変部を早期

発見し,脳の疾患を予防することを目的としています[脳ドックのガイドライン 2003,日本脳ドック

学会].例えば,脳卒中の場合,脳梗塞を予防するために無症候性脳梗塞(ラクナ梗塞)を,くも膜

下出血を予防するために未破裂脳動脈瘤を見つける必要があります.また,平均寿命の延びに伴い高

齢化社会となった日本では,認知症の患者数が増加し,大きな社会問題となっています.主な認知症

として,アルツハイマー病(約50%)と血管性認知症(約25%)があります.アルツハイマー病

の早期発見のために,画像を使った診断として,側頭葉,海馬,嗅内野などの皮質の厚み,側脳室の

拡大を主観的に評価し,診断を行っています.以上のことから,脳ドックの主な目的には,未破裂脳

動脈瘤,無症候性脳梗塞(ラクナ梗塞),認知症(アルツハイマー病,血管性認知症等)などの早期

発見があります.一方,若い世代で発症する重要な脳神経疾患の一つとして,多発性硬化症がありま

す.髄鞘の破壊,損傷に起因する中枢神経疾患であり,症状や重篤度は,病変部の発生部位とその形

態により異なります.また,個々の発病状況や進行状況は様々で診断が難しい疾患の一つです.

しかし,非常に多くの健常者の画像の中から病変部を見つけることはとても難しく,見落としが起

こる可能性があり,多くのトレーニングと経験が必要となります.また,多発性硬化症では,新たに

出現した病巣,増大した病巣,縮小した病巣,さらには消失した病巣が一人の患者の中にしばしば混

在し,正確に読影するには多くの時間と労力が必要です.医用画像の解像度が向上し,撮像方法が2

次元から3次元になることにより,診断画像枚数が膨大な量になっています.そのため,医師の大き

な負担となり,医師の診断を支援するコンピュータ支援診断システム(computer aided diagnosis: CAD)の需要が高まっていました.MRIでは,様々な撮像方法が存在するため,画質が変化し,CADシステムの構築が難しいと言われてきましたが,近年になって,神経放射線(本稿では脳神経放射線

だけ取り扱います)の領域で,MR画像, CT画像, PET画像を用いて,CADの研究開発が行われるようになってきました.

『コンピュータ支援診断(CAD)』の概念は,シカゴ大学の土井邦雄教授が提唱されました 1-3).コ

ンピュータ支援診断とは,コンピュータの解析結果を“セカンドオピニオン(第二の意見)”として

利用して診断を行う「医師による画像診断」です.CAD システムを用いた場合,医師とコンピュータの共同作業によって,医師の集中力低下を軽減でき,見落としを減らせる可能性があります.これ

まで CAD の概念は,いろいろなモダリティにおいて様々な疾患に応用されてきました.代表的な例としては,胸部 X線写真,CTの肺がん検出,マンモグラフィーの乳がん検出,大腸 CT画像の大腸

がん検出などがあります.CAD に期待されるものは,医師の画像診断の正確度の向上,医師と医師の間における診断結果のバラツキの減少,診断時間の短縮による生産性の向上などであり,大きな期

待が寄せられています.そして,医師自身が持つ高い診断能力とコンピュータの画像解析結果の相乗

効果によって,診断の精度が向上すると考えられています.例えば,我々が開発した CAD システムでは,MRA の臨床画像を CAD のソフトウエアが処理し,診断に有用な情報を“セカンドオピニオン”として示してくれます.診断に有用な情報とは,病気と思われる箇所,悪性と思われる程度と考

えています.図1に脳動脈瘤検出のコンピュータ支援診断システムの結果の例を示します.MIP (maximum intensity projection)画像では,血管と重なって見えにくい脳動脈瘤の候補を自動的に検出しています.本稿では,神経放射線領域の CAD の研究開発について我々の研究を中心に次の順序で紹介します.まず,2章では,コンピュータ支援診断システムの基本を概説し,3章では,応用例

として,(1)脳動脈瘤検出のためのCAD,(2)血管性認知症のための虚血病変部検出のためのCAD,(3)多発性硬化症のための CAD,(4)脳腫瘍鑑別診断のための CAD,(4)アルツハイマー病検出のための CADを説明したいと思います.最後,4章でまとめを述べたいと思います.

図1 脳動脈瘤検出のコンピュータ支援診断システムの結果の例.

2.コンピュータ支援診断システムの基本

2.1 CAD とパターン認識 放射線科医が行う診断方法では,目で画像を見て,自分の経験,知識,知恵を使って,画像の中から

診断に有効な情報を得て,診断を行っていると思います.したがって,放射線科医は高度で,柔軟な

学習能力とパターン認識能力を持っていると言えます.そこで,放射線科医には全く及ばないのです

が,CAD にも,高度なパターン認識の技術が必要です.パターン認識とは観測されたパターンをあらかじめ定められた複数のカテゴリー(またはクラス)のうちの一つに対応させる処理です 4,5).例

えば,CAD の場合,二つの場合が考えられます.一つ目の場合は,あるパターン(病変部,部位など)を検出する場合で,対象となるパターンが1種類となり,対象パターンとパターン以外で,2つ

のカテゴリー分類の問題となります.対象パターンが true positiveで,パターン以外は false positiveとなります.例えば,脳動脈瘤の検出の CAD では,対象パターンが脳動脈瘤となります.二つ目の場合は,鑑別診断の場合で,対象となるパターンの種類が複数あり,2つ以上のカテゴリー分類の問

題となります.例としては,脳腫瘍の鑑別診断を行う CAD で,脳腫瘍には high grade glioma,metastatic brain tumor,low grade glioma,malignant lymphomaなどがあり,これらを分類する問題に対応します. 一般的なパターン認識システムの構成を図2に示します. 多くの CAD システムも同様の構成に

なります.最初に,前処理部では,入力パターンである生データに対してノイズ除去や値の正規化な

どを行います.次に,特徴抽出部では,入力データからパターン認識に必要な特徴量を算出します.

最後に,識別部ではそれぞれの入力パターンについて求めた特徴量を用いて,その入力パターンがど

のカテゴリーに属するかを判断し,カテゴリー(またはその程度)を出力します.

図2 一般的なパターン認識システムの構成 2.2 前処理 医用画像の場合,特にMR画像の場合,患者ごとまたは撮像シーケンスごとにピクセル値,画質などが変化することが多いので,前処理は非常に重要な処理です.前処理では,特徴量抽出を行い易くす

るために必要な処理を行います.前処理として以下の処理が考えられます. (1) ノイズ低減処理 対象となるパターンに含まれる信号とはほとんど関係の無いノイズ(撮像過程で生じる統計的なノイ

ズなど)を低減する目的で,平均化フィルタ,メディアンフィルタ,ガウシアンフィルタ,エッジ保

存平滑化フィルタなどが用いられています 6). (2) 鮮鋭化処理,エッジ強調処理 領域抽出の処理で,領域の境界をできるだけ正確に抽出するための処理で,ラプラシアンフィルタ処

理,アンシャープマスキングフィルタ処理,ソーベルフィルタなどのフィルタ処理があります 6). (3) ピクセル値の正規化 医用画像の場合,患者ごとまたは撮像プロトコルごとにピクセル値,画質が変化することが多いので,

ピクセル値の正規化を行うことがあります.単純な方法としては,線形な濃度階調変換があります. (4) 画像の幾何学的変換 画像のサイズを変更したい場合,画像中で傾いた人体を回転補正する場合,画像が歪んでいる場合な

どに幾何学的な変換が行われます.例えば,MRI の画像サイズは装置によって異なる場合がありますので,統一する必要があります.または,3次元画像の場合,スライス厚がxy平面のピクセルサ

イズと異なる場合があり,その場合,等方ボクセルに変換した3次元画像の処理の方が容易になりま

す.この際重要なことは,変換後のピクセルの座標が実数になる場合があるということです.この場

合,周りのピクセル値から補間を行う必要があります.ただし,変換後の処理画像の座標は整数しか

扱えないので,変換後の画像の座標から変換前の画像における座標を求め,周りのピクセル値から求

める方法が使われます.主な補間の方法としては最近傍法,線形補間法,3次補間法などがあります

6). (5) 関心領域の領域抽出 対象パターンが関心領域だけに存在すると仮定した場合,または特徴量を抽出するための領域を限定

したいときに行う処理です.例えば,脳動脈瘤の検出の CAD では,脳動脈瘤の探索領域を限定するために,血管とその近傍だけを抽出する処理を行います.図3に脳動脈瘤の検出のために抽出した関

心領域の例を示します.または,アルツハイマー病の検出の CAD では,脳領域から特徴量を求めるので,まず頭部領域を求め,関心領域を限定していきます.具体的には,我々は判別分析法に基づく

大津の自動しきい値処理方法 6,7)を用いて,おおまかに関心領域を抽出し,それから,モーフォロジ

カルフィルタ(膨張処理と収縮処理)6)を用いて整形し,さらに領域拡張法,レベルセット法などを

用いて,より正確な領域を求めます.

図3 脳動脈瘤の検出のために抽出した関心領域の例: (a) MRA画像, (b) 大津の自動しきい値処理による大まかな血管抽出,(c) 10 mm膨張処理して得られた脳動脈瘤候補の探索領域. 2.3 特徴抽出処理 特徴抽出処理は,最も重要な処理ですが,王道は無く,多くの手法が開発されています.言い換える

と,最も研究者のオリジナリティが出る処理でもあります.図 4に特徴抽出処理の流れの一例を示します.まず,最初に対象となるパターンを強調し,検出を行い易くします.さらに,求めた初期候補

領域からより正確な候補領域を求めます.最後に,求めた領域から特徴量を算出します.以下にはそ

れぞれの処理をもう少し詳しく説明します.

図4 特徴抽出処理の流れの例.

(1) 対象パターンの強調処理 対象パターンの形状がある程度,既知の場合,その形状を強調するようなフィルタを用いる場合があ

ります.例えば,脳動脈瘤の場合,球形に近い形状ですので,3次元ガウス分布となるパターンを強

調するようなフィルタを用いれば,動脈瘤を強調することができます.Liらは肺がんなどの球形パターンを選択的に強調する目的で,各ボクセルに関する二次微分から構成されるヘッセ行列に基づいて

ドット強調フィルタを開発しました 8,9).図5にドット強調フィルタの効果を示しました.脳動脈瘤

が丸く強調されていることがわかります.

図5 脳動脈瘤(破線)に対するドット強調フィルタの効果:(a) MRA画像,(b) ドット強調画像.

また,MRI検査では1人の患者に対して,3種類の画像,つまり T1強調画像, T2強調画像, FLAIR

(fluid attenuated inversion recovery)画像を撮像するプロトコルを用いる場合があります.その場合,それらの画像間で画像処理を行うことによって,対象パターンを強調することができます.例えば,

我々のグループでは,虚血領域,多発性硬化症の病変部を強調するために,FLAIR画像と T1強調画像との差分像から高信号の病変部を検出する手法の開発を行っています 10−12).図6に示しますよう

に,白線で示した多発性硬化症の病変部が差分画像でより強調されていることがわかります.

図6 多発性硬化症の病変部(白線)に対する差分画像の効果:(a) FLAIR画像,(b) T1画像, (c) 差分画像. (2) 初期候補領域の検出 初期候補領域の抽出には多くの方法がありますが,ピクセル値またはフィルタ出力値に対するしきい

値処理が多いように思います.例えば,CT画像ならば,対象になるパターンの CT値が既知ならば,しきい値処理が有効に働きます.また,確率アトラス(確率マップ)に基づく手法も開発されていま

す 13,14).確率アトラスは,多くの患者の対象パターンから求められた対象パターンの空間的な存在確

率分布です.我々は,主に多重しきい値処理 9,15)という処理を用いており,その基本的な考えは,多

値画像において,ピクセル値の高いほうからしきい値処理を何回も繰り返す行うことによって,ピク

セル値の局所的なピークを検出することです.図7に多発性硬化症における初期候補検出の例を示し

ます.

図7 多発性硬化症における初期候補検出の例:(a) FLAIR画像,(b) 差分画像で多重しきい値処理によって検出した初期候補点,(c) 初期候補点から領域拡張した結果.

図8 虚血病変部検出の CAD の出力結果: (a) オリジナル FLAIR 画像,(b) 領域抽出結果(白線)の画像. (3) 候補の領域抽出 特徴量を求める目的や特定の領域(病変部,臓器など)を抽出するなどの目的で,様々な領域抽出の

手法が開発されています.代表的な手法としては,ピクセル値に基づく領域拡張法,Watershedアルゴリズム,snakeアルゴリズム,レベルセット法などがあります.我々が用いている領域抽出法の一つは,ピクセル値と特徴量に基づく領域拡張法です.例えば,血管性認知症検出のための虚血病変検

出のための CAD システムでは,多重しきい値処理を用いて検出した初期候補点を開始点として,ピクセル値に基づく領域拡張処理を行い,特徴量を終了条件に用いて候補領域を求めました.用いた特

徴量は実効直径と,候補領域の差分画像の平均ピクセル値とその周囲を囲む領域の差分画像の平均ピ

クセル値の差の値としました.虚血病変部を領域拡張して求めた結果を図8に示します.また,図7

(c)にMS病変部の初期候補点から領域拡張した結果を示します。 もう一つはレベルセット法 16−18)で,この手法はトポロジーの変化に対応できるなどの特徴があり,

ロバストな領域抽出の手法の一つです.初期抽出した領域の表面を距離値=0とし,これをフロント

と呼び,距離画像を作成します.これをレベルセット関数φとし,速度関数 Fを使った微分方程式によって変化させます.

ここで,φt はレベルセット関数の時間微分です.図9にレベルセット法を用いて,白質領域を抽出

した例を示します 19).

図9 レベルセット法を用いた白質領域の抽出:(a) 脳実質領域,(b) 抽出した白質領域(白線).

(4) 特徴量算出 抽出した候補領域から主に2種類の特徴量,つまり形状とピクセル値に関係する特徴量を求めます.

形状に関係する特徴量は,実効直径,円形度(球形度),不規則度,細さなどです 9−12,15).脳動脈瘤

のCADでは,抽出した血管から求めた距離画像を用いて血管径に関係する特徴量を用いています 9).

ピクセル値に関係する特徴量は,領域内の平均値,標準偏差,コントラストなどです 9).この他にも

多くの特徴量が開発されています 20). ただし,対象パターンによって,有効な特徴量は異なります.そこで,結局は試行錯誤またはいろい

ろな手法 21)を用いて,対象としているパターン認識問題に有効な特徴量を探すことになります.例え

ば,脳動脈瘤の CADでは,最後の候補を決定するための識別器として判別分析法を用いていますが,Wilksのλに基づいて有効な特徴量を選択しています 9).また,アルツハイマー病検出のための CADでは,脳領域を32個の小領域に分割し,それぞれの領域で皮質の厚みの平均値を求めていますが,

有効な小領域を選択するために,Golub統計量を用いました 22−24). 2.4 識別処理 識別処理は識別器で行われ,識別演算部と識別辞書から構成されています.識別処理は未知のパター

ンに対して複数のカテゴリーのうちの一つを対応づけることによって行われます.あらかじめ学習過

程によって識別辞書を作成し,未知のパターンから抽出した特徴量をこの識別辞書と照合することに

よって未知のパターンに対応するカテゴリーまたはその程度を出力します.識別器としてはルールベ

ース法,k-NN(k-nearest neighbor)法,ベイズの決定則,判別分析法,ANN(artificial neural network),SVM(support vector machine)などがあります 4,20,21).識別辞書の例として,ANNでは,重み係数となります.本稿では,ルールベース法,判別分析法,ANN,SVMを説明します. (1) ルールベース法 特徴量から求められる簡単なしきい値によって,アウトライヤー(外れ値)を削除するために用い

られます.我々が研究している多発性硬化症(MS)の検出の CADでは,それぞれの特徴量に対し,平均値と標準偏差(SD)を求め,平均値‐2SD より大きい真陽性の中で,最小の特徴量をしきい値とし,このしきい値より候補領域の特徴量が小さければ,偽陽性領域として削除しています(図 10)12).

図10 偽陽性削除のために,多発性硬化症の CADで用いたルールの一例.

(2) 判別分析法 統計学の多変量解析の手法の一つで,様々な特徴量の平均値と分散の値を使って求めた線形識別関数

(超平面)を用いて,二つのグループに分類する手法です.学習データを用いて,線形判別関数を決

定し,その関数を用いて,未知のパターンを分類します.複数の識別関数を用いて,複数のカテゴリ

ーに分類する方法も考案されています 4).例として,脳動脈瘤の検出の CAD では,4つの血管の局所的構造に従って分類したグループで,それぞれ識別関数を作成し,脳動脈瘤と偽陽性候補(血管な

ど)を分類しました 9). (3) 人工ニューラルネットワーク (artificial neural network; ANN)4) 人間の脳の神経細胞をモデルとして考え出された,学習を得意とする識別器です.病変部または画像

全体などから求めた特徴量を学習し,非線形な超曲面で分類することができます.ANN は入力層,中間層,出力層から構成されており,入力層のニューロンの数は特徴量の数と一致し,出力層のニュ

ーロンの数は分類したいカテゴリーの数と一致します.それぞれの層は1つ以上のニューロンから成

り,各層のそれぞれのニューロンは次の層のそれぞれのニューロンと繋がっています.ANN では,学習データ(入力パターンと教師信号のセット)を用いて,バックプロパゲーションの方法に従って,

神経回路網の重み係数を変えていき,入力パターンと教師信号(答)の関係を学習させます.その結

果,未知のパターンに対して,正しく分類できるようになると予想されます.中間層の数は(入力層

の数+出力層の数)/2などの経験式を使って,実験的に決定します.学習係数,最大繰り返し回数,

誤差二乗和などのパラメータは経験的に決定します.脳腫瘍鑑別診断のための CAD システムでは,脳腫瘍を4つの疾患(high grade glioma,low glade glioma,metastatic brain tumor,malignant lymphoma)に分類するための鑑別診断を目的とし,15個の特徴量をMR画像と臨床情報から放射線科医が求め,それらを ANNに対する入力とし,出力層の数を4つとしました(図 11)25).

図11 脳腫瘍鑑別診断のための人工ニューラルネットワーク 25).

(4) サポートベクターマシーン(support vector machine; SVM)26,27) SVM はロバストな識別器として,いろいろな分野で用いられており,非線形カーネル関数を用いて

高次元の空間に写像することによって,ANNと同様な非線形な識別を行うことができます.SVMには次のような主な特徴があります.(1)汎化能力(未知のパターンに対してロバストである能力)

が高いと考えられています.(2)ANN とは異なり,局所解に陥らないと言われています.(3)次元の呪い(必要とされる学習パターンの数は特徴量の数の増加とともに指数関数的に増加すると言わ

れています)が無いと言われています.このような長所は学習データが少ない場合に有効に働くこと

が予想されます.我々はアルツハイマー病の CAD で,アルツハイマー病の症例と非アルツハイマー病の症例を分類するための識別器として用いました.写像カーネルとしてガウシアン関数を用いまし

た. 2.5 CAD の評価方法 CAD システムの性能評価のためのテスト方法には,パターン認識のシステムの評価と同様のテスト方法が使われ,症例データをレトロスペクティブに収集し,resubstitution test,leave-one-out cross-validation test,k-fold cross-validation test,split-half test などテストを行います 21).

Resubstituion testは学習データとテストデータが同じ場合です.k-fold cross-validation testでは,データベースをランダムにk個のグループに分け,一つのグループを除いたk‐1個のグループで

CADシステムを学習し(パラメータを決定する),1つのグループをテストします.テストをk回繰り返します.kがデータベースの症例の数と一致するときが leave-one-out cross-validation testとなります.split-half test では1つのデータベースをランダムに二つのグループに分割し,それぞれ学習とテストに用い,その逆も行います.このような分割を何回か行います.さらに,実践的なテスト

として,臨床においてプロスペクティブスタディなどを行います. 通常,CADシステム自体の評価は FROC(free-response receiver operating characteristic)または

ROC(receiver operating characteristic) 曲線を用いて行います.これは,横軸に平均の偽陽性数,縦軸に真陽性率をとり,左上に曲線があれば,CADの性能が高いと言えます.図12に FROCの例を示します 28).SBDI( shape-based difference image)から得られた特徴量を用いた場合と用いない場合の FROC曲線の比較を行っています. さらに,臨床応用に近い評価として,放射線科医による観察者実験に基づく CAD の評価も行いま

す.ROC 解析に基づいて,限られた症例数を用いて,実験室における臨床に近い観察者実験を行います.例えば,脳動脈瘤の CAD システムの性能評価のための観察者実験では,以下のような方法で行いました. (1)異常症例と正常症例の数を決め,実験用の画像データベースを作成する. (2)放射線科医の人数を決め,経験のある医師と研修医,専門医と一般放射線科の割合を決める. (3)画像の表示方法,CAD 出力の方法などを決め,実験手順を決定する.それに従って,実験に用いるインターフェースプログラムを設計する. (4)実験手順に従って,観察者実験のためのインストラクションを作成する. (5)実験を行い,ROC解析を行う. 図13に一般放射線科医が脳動脈瘤の CAD システムを用いた場合と用いない場合の ROC 曲線の結果を示しています 29). CADを用いた場合,有意差に一般放射線科医の診断能が向上していることがわかります. CAD システムの開発では領域抽出が非常に重要な場合があります.その場合,真の領域との一致度を計算し,領域抽出方法の精度を評価する必要があります.その場合,通常,以下の一致度(overlap measure)を用います 30).

ここで Tは放射線科医によって抽出された truth領域であり,Cは開発した手法で抽出した領域です.

図12 脳動脈瘤の CADにおける FROC曲線の比較 28).SBDIは shape-based difference imageの略で,突出部分を抽出するための技術です.SBDI特徴量は,その突出から得られた特徴量です.

図13 ROC曲線を用いた一般放射線科医に対する脳動脈瘤の CADシステムの効果 29).

2.6 CAD の研究開発の方法 筆者はシカゴ大学で CAD研究を始めましたので,シカゴ大学の手順と同様だと思いますが 31) ,我々

が行っている研究開発の手順を以下に示します. (1) 比較的検出が容易な,5例から10例程度の異常症例を放射線科医に収集して頂きます. 症

例収集は研究開発と平行して行います. (2) 放射線科医の指導を受けながら,対象となる病変部または疾患の特徴を,画像を観察するこ

とによって学び,具体的に計算する特徴量を決めていきます.例えば,小さい脳動脈瘤では

中心のピクセル値は高くなりますが,大きな瘤では血液の乱流の影響で信号が低くなり,血

管壁に近いほうが高くなります.アルツハイマー病では,皮質の厚みが薄くなりますが,そ

れは側頭葉と頭頂葉などで特に薄くなります. (3) 病変部または症例の truthを決定します.例えば,脳動脈瘤の CADでは,脳動脈瘤の3次元

座標を一つ一つ決定しました.また,多発性硬化症の CADでは,MSの座標だけでなく,領域も決定しています.また,アルツハイマー病では,精神科の医師が臨床テストと画像診断

などによって,総合的に診断確定した結果を基に,truthを決定しています.注意すべきことは,CADの性能評価を正しく行うために,truthの決定は非常に重要です.

(4) 初期候補を検出するための手法を開発します.この段階の結果は,最終的な感度,偽陽性の数に影響を及ぼしますので,できるだけ,高い感度とできるだけ少ない偽陽性になるように

手法を開発します.ただし,初期候補を検出する段階で,すべての候補は,truth によって,真陽性か偽陽性に分類され,ラベリングされます.例えば,脳動脈瘤の CADでは,truthからある一定距離以内に候補領域の最大のピクセル値の座標があれば,真陽性とし,それ以外

は偽陽性としています. (5) 特徴量を求める手法を開発します.特徴量はシステムの性能を左右しますので,注意深く検

討する必要があります.つまり,特徴量をグラフにプロットし,対象パターンの性質などを

理解します. (6) 適切な識別器を選び,学習と同じデータをテスト(resubstitution test)します.結果の評価を

行い,もし,何か問題があれば,原因を追究し改良を行います.この段階ではできるだけ初

期候補検出の手法から改良する方が望ましいと思います. (7) テスト症例を20から30程度まで増やします. (8) leave-one-out test を行い,最初の段階のバリデーションテストを行います.結果の評価を

行い,もし,何か問題があれば,原因を追究し,改良を行う. (9) ROC解析に基づいた観察者実験を行う. (10)厳しいバリデーションテスト,レトロスペクティブスタディを行う. 3. 脳神経放射線領域のコンピュータ支援診断の応用例

3.1 頭部MRA画像における脳動脈瘤の検出の CAD

脳ドックの重要な目的の一つに,非侵襲的な MRA(磁気共鳴血管撮影)を用いて無症候性未破裂動脈瘤を破裂前に発見することが挙げられます.近年,MRA の画質は顕著に向上しており,最新の装置を使って熟練した読影者が読影すれば,小さな脳動脈瘤においても検出率は 100%に近いと考えられます.その一方で頭部MRAの読影にはトレーニングが必要であり,特に動脈瘤が小さい場合,血管と重なっている場合,一般的でない箇所に発生した場合などには,読影が難しくなります.このよ

うな動脈瘤を見逃さず読影することは,専門医においても多くの時間と労力を要する作業です.さら

に専門医不足と MR 検査数の増加が相まって多くの脳動脈瘤が見落とされる可能性も指摘されています.したがって,CADの意義は,MRA上で脳動脈瘤候補を確実に検出して医師の診断を支援することにあります.そこで,脳動脈瘤を検出するための多くの手法が開発されてきました 9,28,32-36). われわれの開発した脳動脈瘤の CAD の手法 最初に,元画像を等方ボクセルの画像に変換し,ドット強調フィルタ 8)を適用しました.ドット強調

画像で多重しきい値処理と領域拡張を行い,動脈瘤候補領域を検出しました 9).さらに,形状差分像

技術を使って,血管の太さが局所的に変化した領域(形状差分画像)を求めました 28).形状差分像技

術はオリジナルの血管と局所的な太さの変化を減弱した血管との形状差分に基づいています.その概

要を図14に示します.最後に,特徴量解析を行い,ルールベース法と判別分析法を用いてフォール

スポジティブ(FP)を取り除きました.開発した手法を 61 個の動脈瘤のある 53 症例と動脈瘤の無い 62症例,合計 115症例に適用しました.その結果,97%の感度で,FPの数は 3.8個となり,MRAを用いた脳動脈瘤検出において,我々の手法の有効性を示唆する結果を示すことができました.

図14 形状差分像技術の概要 28):(a) 抽出した血管像,(b) 距離変換像,(c) 細線化した像(スケルトン像),(d) スケルトン像と距離画像の AND,(e) 距離値を平滑化した像,(f) 逆距離変換して求めた突出を減弱した像. CAD システムの有効性実験 29)

脳動脈瘤が存在する 22例と動脈瘤が無い 28例の合計 50例のMRA画像を用い,15名の放射線科医(神経放射線診断を専門とする 8名,一般の放射線診断を専門とする 7名)にて読影実験を行いました.MRAは 1.5TのMRI装置で 3D TOF法で撮像されました.読影実験は専用のコンピューターを用い,まず CAD を用いずに動脈瘤の有無と部位を読影し,次に CAD を参考にして最終診断を行いました.ROC 解析に基づいて CAD の効果を解析しました.15 名の全読影者の平均 Az 値は,CADを参考にすることで 0.931から 0.983に有意に増加しました.神経放射線診断を専門とする読影者のAz値は 0.894から 0.983に有意に増加し,一般の放射線診断を専門とする読影者は 0.963から 0.984に有意に改善しました.脳動脈瘤の MRA による検出において CAD を用いることで,神経放射線診断医,一般の放射線診断医ともに診断能が向上し得ることが証明できたと思います. 診断精度と読影時間における検討37)

この CAD システムでは,読影医師の見落とし防止と読影時間の短縮,読影医師間での診断精度の均等化などが期待されます.そこで,脳動脈瘤検出 CAD システムの有用性を,診断精度と読影時間について検討しました.脳動脈瘤を有す16例と正常例の34例の計50例を対象に,読影医師16名

(神経放射線科医8名,経験の浅い放射線科医8名)で,independent testによる読影実験を行いまし

た.それぞれの読影者に対して各症例での読影時間を計測しました.神経放射線科医においては,CADを用いることで診断精度(Az)が僅かに低下し(0.914 vs 0.895),読影時間はほとんど変化しませんでした.一方,経験の浅い放射線科医においては,CAD を用いることで Az は統計学的有意に改善しました(0.787 vs 0.911,p < 0.05).さらに,動脈瘤がある症例における読影時間は 59.3から 39.8 sec/症例(p < 0.05),動脈瘤の無い症例では,78.4から 40.2 sec/症例(p < 0.05)となり,有意に短縮しました.今回用いた CAD システムは,神経放射線科医の診断精度向上・読影時間短縮に貢献しませんが,経験の浅い放射線科医の診断精度を神経放射線科医とほぼ同等のレベルに向上させ,かつ読影

時間を有意に短縮できる可能性を示しました.

3.2 脳血管性認知症診断のための虚血病変部検出の CAD

脳血管性認知症は,日本において2番目に患者数の多い認知症疾患です 38).その脳血管性認知症は,

脳梗塞や脳出血によって起こる虚血が原因で発症します.脳血管性認知症における虚血病変は,T2強調像や FLAIR 像において高信号領域となります.また,脳血管性認知症では,虚血病変領域と正常脳実質領域との面積比である虚血病変面積比が,その症状に相関があることが確認されています

39-43).したがって,虚血病変面積比を正確に求めることは,治療方針の決定や病状の把握のために非

常に重要です.そこで,我々は FLAIR 像と T1 強調像の差分画像に基づいて,虚血病変領域を検出し,虚血病変面積比を算出する CADシステムを開発しました 10, 44,45).開発した CADシステムでは,まず FLAIR 像と T1 強調画像を差分することにより,虚血領域を強調しました.次に,多重しきい値処理を用いて,虚血領域の初期候補点を抽出し,初期候補点を基に領域拡張処理を行いました.最

後に,人工ニューラルネットワークを用いて,偽陽性領域を削減しました.しかし,その従来法を用

いて自動的に求めた虚血病変候補には,偽陽性領域,偽陰性領域,過小評価領域,過大評価領域,過

大過小混在領域が存在し,その虚血病変領域抽出の放射線科医との一致度は 58.1%となりました.さらに,正常脳実質領域の面積を自動で求める手法の開発と,前述の従来法によって求めた虚血病変候

補画像を用いて,半自動で虚血病変領域の再抽出を行い,虚血病変領域をより正確に検出する手法の

開発を試みました 46).その結果,一致度の平均値は 71.7%となり,平均で 13.5%向上しました.そのため従来手法と本手法を組み合わせた手法は,脳血管性認知症における虚血病変面積比を求めるため

に有用である可能性を示しました.図15に虚血病変部の再抽出の効果を示しています.この症例で

は,一致度が 11%向上しました.

図15 脳血管性認知症診断のための虚血病変部検出の CAD における虚血病変部の再抽出の効果:(a) 従来法で自動抽出した虚血病変,(b) 提案手法で半自動的に再抽出した虚血病変.

3.3 多発性硬化症のための CAD 若年者に多く見られる多発性硬化症(multiple sclerosis ; MS)は,髄鞘の破壊,損傷に起因する中枢神経疾患であり,その原因は解明されていません.現在のところ根本的な治療法は発見されておらず,

再発予防と対症療法が治療の主目的です.MSの症状や重篤度は,病変部の発生部位とその形態により異なるため,個々の発病状況は様々であり,さらに進行状況も様々です 47-50).また,MSには,病変が多発し,かつ発生部位や形態が経時的に変化するという特徴があるため(時間的空間的多発性)

51-54),定期的な MRI検査が重要です.MRIで経時的に観察すると,新たに出現した病巣,増大した病巣,縮小した病巣,さらには消失した病巣が一人の患者の中にしばしば混在し,正確に読影するに

は多くの時間と労力が必要です.また,日常診療で用いられる信頼できる定量評価システムがないた

め,医師は視覚評価のみで MS の病勢を診断しているのが現状です.そこで,MS の CAD における一つ目の目的は,T1 強調画像と T2 強調画像,FLAIR 画像を用いて,多発性硬化症の病変部候補領域を自動検出する手法を開発することです 11,12).提案手法は,T1強調画像と FLAIR画像の差分画像における,多重しきい値処理と領域拡張法に基づいています.ピクセル値による領域拡張に対する特

徴量の変化量をモニターすることによって病変候補領域を求めました.また, それぞれの候補領域で,

ピクセル値の平均値とその標準偏差,コントラスト,円形度,実行直径,不規則度,周囲長,細長さ

の合計8つの特徴量を求め, 基本統計量を用いたルールベース法によって明らかな偽陽性候補を削

除しました.その後, サポートベクターマシーンを用いることによって,病変部候補と偽陽性候補に

分類しました.学習およびテストには,leave-one-out testを用いました.提案手法を, 多発性硬化症と臨床的に診断された 3症例の 49スライス画像(168個の MS領域を含む)に適応した結果,偽陽性は検出されず,81.3%のMS領域を検出しました.また,神経放射線科医が決定したMS病変領域と提案手法により求めた候補領域との一致度を求めた結果,平均の一致度は 53.1%となりました.

図16に多発性硬化症の CADの検出結果の1例を示します.

図16 多発性硬化症の CADの検出結果:(a) truth領域(赤線),(b) 自動的に検出されたMS病変部候補領域.

さらに,多発性硬化症では,その進行と脳萎縮の相関が報告されています.そこで,MS の CADにおける二つ目の目的は, MR 画像から白質領域,灰白質領域,脳実質領域を抽出し,その面積を

自動測定する手法を開発することです 19).我々の領域抽出の手法は T2強調画像におけるレベルセット法に基づいており,白質領域と灰白質領域の境界付近のグラディエントが局所的に高くなることを

利用し,3 つの脳領域を抽出しました.図17からわかるように,T2強調画像が最も白質領域と灰白質領域のピークにおけるピクセル値の差が大きく,コントラストが高くなるので,T2 強調画像を用いました.提案手法を,4 名の多発性硬化症患者(年齢:21−66, 平均年齢:36, M=0, F=4)のMR画像に適応しました.抽出結果の1例を図18に示しています.脳実質領域に対する白質領域・灰白質

領域の面積比はそれぞれ平均で 45(44−51)%,55(49−57)%となりました.また,医師によって抽出された白質領域(中心灰白質を含む)と提案手法を用いて抽出した白質領域の一致度を 3 症例で

求めた結果,平均で 0.74(0.68−0.81)となりました.以上の結果から,提案手法が脳の領域の面積を自動測定するために有用である可能性を示しました.

図17 FLAIR画像,T1強調画像,T2強調画像のヒストグラム,WM: white matter,GM: gray matter.

図18 脳領域の抽出結果画像:(a)T2 強調画像,(b)脳実質領域,(c)白質領域,(d)灰白質領域.

3.4 ANN を用いた脳腫瘍の鑑別診断の CAD25) 非侵襲的(特にMRI)に脳腫瘍を正しく評価する事は治療方針の決定において重要です.現在,個々の脳腫瘍の特徴的な画像所見については一般的に知られていますが,判定困難な境界症例も多く存在

WM + GM

FLAIR

T1WI

T2WI

WM

GM

WM

GM

します.本研究の目的は,ANN を用いて,MRI 所見によるテント上脳腫瘍の鑑別を行い,ANN 出力を用いることによって,放射線科医の診断能が向上するかどうかを評価することです.126例のテント上脳腫瘍患者を頻度の高い 4 つの疾患(high grade glioma:58,low grade glioma:37,metastatic tumor:19,malignant lymphoma:12)に分類し,Levenberg Marquardt algorithm を用いた

feed-forward 型の三層 ANN を構築しました.4 疾患を鑑別するために,2 つの臨床的なパラメータおよび 13 個のMRI所見を用いて ANNの学習を行いました.13 個のMRI所見に対する ratingは 2名の放射線科医が別々に行いました.126 症例は全て,leave-one-out-by-case 法に基づいて,ANNの学習とテストに用いました.観察者試験では,放射線科医が,まず単独で読影を行い,それから

ANN出力を参考にして読影しました.9 名の放射線科医の診断能は連続確信度法に基づいた receiver operating characteristic (ROC) 解析を用いて評価しました.ANN 単独の ROC 曲線下面積(AUC)値は 0.949 となり,9 名の放射線科医の診断能(平均値)に関しては,ANN 出力を参考にすることによって,0.899 から 0.946 に上昇しました.テント上脳腫瘍の鑑別において,ANN 出力は放射線科医の診断能を向上させるための “second opinion”として有用な情報を提供しました.

3.5 アルツハイマー病検出のための CAD

日本では,平均寿命の延びに伴い高齢化社会が到来し,認知症の患者数が増加しています.認知症の

疾患の中で,アルツハイマー病(AD)の患者数が最も多く全体の約 50%くらいであり,およそ 130 万人と推計されています 55). アルツハイマー病の原因は不明ですが,患者の脳では,同年代の脳と比較して多くの神経細胞が死滅し,大脳皮質の萎縮または側脳室の拡大が起こると言われています.そ

して,初期段階では,萎縮は海馬や嗅内野で起こり 56),そのような重要部位で脳血流が低下すると言

われています.しかし,初期段階のアルツハイマー病の程度を客観的に評価することは医師にとって

非常に難しく,時間のかかる作業です.Ashburnerと Friston57)は,脳の萎縮を評価するために,MRI画像で求めた脳の体積をボクセル単位でコンピュータ解析する画像統計解析法の VBM(voxel based morphometry)に基づいたSPM(statistical parametric mapping)を開発しました.松田ら 58,59)はSPMを利用して,Voxel-Based Specific Regional Analysis System for Alzheimer’s Disease (VSRAD)というアルツハイマー病のための CAD システムを開発しました.そこで,我々は,アルツハイマー病の診断支援を目的とし,MR(magnetic resonance)画像から萎縮の画像特徴量を求めることによって,アルツハイマー病を検出するコンピュータ支援診断システムを開発することを試みています.萎縮の

画像特徴量は,脳体積に対する白質,皮質,脳脊髄液の体積比と皮質の厚みです.

手法の概要 22,60−65) まず,元画像において自動しきい値処理を適用し,頭部領域を抽出しました.次に,多重しきい値処

理を用いて,頭部領域を頭蓋領域と脳領域に分離します.さらに,より正確な脳領域を求めるために,

レベルセット法を適用しました.脳領域に対して自動しきい値処理を適用することによって大まかに

白質領域(ただし,側脳質の灰白質領域を含む)を抽出しました.そして,その領域の表面をゼロレ

ベルセットとし,レベルセット法を用いて,より正確な白質領域の抽出を行いました(図19,20).

脳領域から白質領域を除いた領域を皮質領域としました.白質領域の表面ボクセルから灰白質領域の

表面まで法線ベクトルを延ばすことによって,距離が計測され,それを皮質厚としました.脳溝と脳

室の CSF 領域を,レベルセット法で決定した伝播表面で脳領域をタイトに包み込むことによって抽出し,それぞれの CSF 領域の体積を求めました.最後に,萎縮の画像特徴量を学習したサポートベクターマシン(SVM)を用いることによって,AD 患者を識別しました. その結果,ROC 曲線下の面積は 0.909となり,提案手法が AD患者を識別するために有用である可能性があることを示しました.

図19 アルツハイマー病患者の大脳抽出の結果:(a) 皮質表面,(b) 白質表面.

図20 アルツハイマー病患者の大脳皮質と白質の抽出結果.外側の白線:大脳皮質,内側の白線:

白質

4.まとめ 本稿では,脳神経放射線領域の CAD の研究開発の基礎から応用までを我々の研究グループの成果を中心に解説しました.注意してほしいことは,我々が研究している対象疾患はほんの一部だというこ

とです.脳神経放射線の領域はそれだけで医学の一つの分野ですので,今後,この分野の CAD はますます重要になると思います.重要なことは,臨床の神経放射線科医がとても困っているが,現場で

は解決できそうにない問題を研究することだと思います.これから,この分野で CAD の研究を始めようと思っている研究者にとって少しでも参考になれば幸いです.さらに,ほんの少しでも放射線医

学に貢献できればと願っています. 謝辞 私のような若輩者に教育講演の貴重な機会を与えていただきました医学物理学会の会長である放射

線医学総合研究所の金井達明先生,第 95 回医学物理学会の大会長である放射線医学総合研究所の村山秀雄先生に心より感謝申し上げます.また,本稿で紹介しました研究は,多くの共同研究者のご指

導,ご協力のおかげです.ここに心より感謝申し上げます.さらに,いろいろな学会で有益な討論を

していただいた先生方に感謝致します.最後に,原稿を丁寧に推敲していただいた九州大学の吉浦敬

先生,熊澤誠志先生,産業医科大学の興梠征典先生に心より感謝申し上げます. 文献 1) Doi K, “Current status and future potential of computer-aided diagnosis in medical imaging,” The British Journal of Radiology,

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