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講 義
Rumpf式 の新 たな解釈 とその応用
椿 淳 一 郎*
Jun-ichiroTSUBAKI
は じ め に
粉体層 の挙動 を力学的に解析 す る場合,実 際 に測定 で
き るのは応 力であ り,粒 子接触 点に働 く力 の測定 はほ と
ん どの場 合不 可能で ある。 しか し,粒 子接触点に働 く力
を求 めた くな る場合が少 なか らず ある し,ま た求め るこ
とがで きれば粉体層 の力学的挙動 の解 明に対 して有効 な
武 器 とな る。そ のため,粉 体層 に作用す る応 力 と粒子接
触 点に働 く力 の関係式が,こ れ までい くつか提 案 され て
きた。その中で も,粉 体層引張 り強 さと接触点 に働 く付
着 力の関係を求めたRumpf式 は有名 であ る。
ここでは,こ れ まで提 案 されてい る関係式 を詳 し く紹
介す るとともに,Rumpf式 に対 して新たな意味 づけを
行 ない,そ の応 用例をい くつか紹介す る。
1.応 力 と力 の 関 係 を 表 す 理 論 式
(1)式に示すRumpf式4)は,粉 体層の引張 り強 さに関
す る理論式 として広 く知 られ てい る。
(1)
一方,応 力 と力の関 係式 がい くつ か3,5,6)理論的に誘 導
されてい る。本章においては,そ れ らのいずれ もが(1)式
に一致 し,し たが ってRumpf式 は引張 り強 さに 関す る
式 でな く,応 力 と力の関係を表す一般式で あるこ とを示
す 。
1.1Rumpf1,2),Molerus3)の 考え方
ここでは,Molerusの 論文に沿 って説 明す る。
まず,粉 体層,応 力に対 して次 の仮定 を置 く。
1)粉 体層 は,半 径r(直 径 の の均一球に よって ラ ン
ダムに充てん されてい る。
ii)応 力は静水圧 の ように等方的に作用 してい る。
粉体層 に作 用す る応力を求 めるためには,粉 体層 中に
平 面を考 えなけれ ばな らない。 いまその平 面を,Fig.1
Fig.1粉 体 層の 中の平 面
Fig.2静 水圧の応力と圧縮力の分布
に2次 元 的に示す よ うに,gg'と す る。 しか し,実 際 の
応 力伝達 は,Fig.1に 太線 で示 した 曲面gg'上 の接 触
点にお いて行なわ れ,こ れ らの接触 点 はす べて平 面gg'
が;横切 る球(以 下切 断球 と略 称)上 に あ る。 し た が っ
て,次 の よ うに考 えれば,応 力 と力を 関係づ け る こ とが
で きる。
(2)
(2)式を実 際に計算す るた めに,粉 体層 を次 の よ うに平
均 化 して考 え る。切断球 は,Fig.1か らも明 らかな よ う
に,様 々な位置 で他 の球 と接触 し,そ の接触 球 の数 も ま
ち まちで ある。 しか し,切 断球 をすべ て重ね 合 れ せ れ
ば,ラ ンダム充 てんを仮 定 してい る の で,接 触 球 は
Fig.2に 示す ように,切 断球 の回 りに一 様に分 布 して い
る ことにな る。 この よ うに粉体層 を統計 的に平 均化 して
考 えれば,応 力が等方的 に作用す るとき,各 接 触点 に 働
く力 も等方的に な り,切 断球 の 中心 に 向 つて 同 じ大 き さ
で働 くと考 え られ る。
昭和58年10.月5日受付
*名 古屋大学工学部化学工学科(〒464名 古屋市千種区不老町)
TEL052781-5111
30(30)粉 体工 学会 誌
Fig.3均 一球で充てんされた粉体層の切断面
Fig.4切 断 された球 粒子
まず,(2)式 右辺 第1項,単 位面積 当 りの切 断球 の個数
を 求 め る。平 面gg'に よる切断面 は,Fig.3の よ うに
得 られ る。球 の半径 はrで 一 定で あ るが,切 断 され る位
置 に よって切 断面 に表 れ る円の半径 は,0か らrま で変
化 す る。い ま,Fig.4に 示す よ うに,中 心か らzの 位置
で球 を切 った とす ると,そ の切 断円 の面 積Sは 次式で与
え られ る。
(3)
した が って,Fig.3に 示 した平面gg'上 の切断 円 の 平
均 面 積Sは 次式 で与 え られ る。
(4)
.一方,均 一 球 の ラン ダム充て んにおい ては,3次 元空
隙 率 と2次 元空隙率 は等 しいので,平 面gg'上 の 単 位
面 積 中の切断 円面積 の総和 は1-ε にな る。 よって,切
断 面 単位面積 当 りの球の数nは 次式で与 え られ る。
(5)
次 に,(2)式 右辺第2項,切 断球1個 に働 く応 力方向 の
力 は 次の よ うに考 え るこ とに よって求め られ る。
(a)(b)
Fig.5力 の働 き方
Fig.6切 断球 に働 くz方 向 の力
(6)
(6)式を求 め る前に,次 の ことを考慮 しな けれ ばな らな
い。Fig.5に 改め て示 した よ うに,曲 面gg'上 の 接触
点 に働 く力に は2通 りあ ることで ある。一つは,接 触球
か ら切断球に働 く力で あ り,も う一つ は逆に切断 球か ら
接触球 に働 く力であ る。前者 の場合,切 断球 の中心は平
面gg'の 下に あ り,後 者 の場 合は上に あ る。 し か し両
者の存在 割合は,ラ ン ダム充 てんを仮定 してい るので ま
った く等 しい,ま た力が切断球 か ら接触 球に働 く場合で
もその逆 の場 合で も,作 用反作 用の法則 か らそ の大 きさ
は まった く一 致す る。 したが って,Fig.5(a),(b)に 示す
どち らか一方 では切 断球 と接触 球の力学 的関係 は代表で
き ることに な る。以下 では,Fig.5の(a)の 場合で説 明を
進 め る。
切 断 され る球 は平面gg'に 対 して0か らrま で の 距
離 を と りうるが,い まFig.6に 示 す よ うに ∠の 距 離 の
切断球 を考 え,こ の球 で平面gg'の 上方 に ある球 冠(曲
面99'に 接 す る部分)の 平均接 触点数 を求 め る。 球 冠
上にFig.6示 す よ うな帯 を考 え る と,そ の面積 Δ0は
次式 で与 え られ る。
(7)
平均 配位数 をkと すれ ば,Δ お上 の接触 点数 Δkoは 次式
で与 え られ る。
Vol.21No.1(1984)(31)31
(8)
また,帯 ΔO上 に働 く力 の応 力方向す なわ ちz方 向成 分
は,次 式で与 え られ る。
(9)
よって帯 ΔO上 に働 く力のz方 向の総和dFは,(8),(9)
式 の積 で与 え られ るので 次式 とな る。
(10)
さらに,Fig.6か ら明 らかな とう り,θ は 曲面gg'の 範
囲 内で 変化す るので,0≦ θ≦δ(た だ しcosδ=z/r)と
な る。 した が って,平 面gg'か らZの 距離 にあ る 球 に
働 くz方 向の力Fは,(10)式 を0か ら δまで積分 す れ ば
得 られ る ことにな る。
(11)
また,zは0か らrま で と りうるので,Fのzに 対す る
平 均Fを 求 めれば,切 断球1個 に作 用す るz方 向 の 力
の平均,す なわち(6)式を求めた ことにな る。
(12)
以上で,(2)式 右辺の各項は求め られ たので,(5),(12)式
を(2)式に代入すれば,次 の結果 を得 る。
(13)
(13)式で,Pを 接 触点に働 く付着 力Hで 置 き換え,σz
を粉体 層引張 り強 さとした の がRumpf式 で あ る。
Rumpfは,1958年 と1967年 に この考 え方 に基 ずいた誘
導を試 みてい る。(1)式は最初の論文1)に おいて提案 され
て いるが,誘 導過程にい くつか誤 りが含 まれていた。2
番 目の論文2)に おいて訂正を試み ているが,完 全に訂正
されず に,(1)式 の右辺に9/8の 係数 の掛 った式を提案 し
て いる。Ruanpfら が最 終的に(1)式を導出 した考 え方 は,
次 に紹介 す るように実に簡潔な ものであ った。
1.2FRumpf4)の 考え方
Rumpfは1970年 に,以 下 の考 え方 に よって最終的に
Rumpf式 を導 出 したのであ るが,意 外に も国 内に おい
て はRumpf式 の紹 介や解説は,1967年 の誤 りを 含 ん
だ 論文21に 基ずい て行 なわれていた よ うで ある。
この考 え方にお いても,均 一球に よって充 てん された
粉 体層を仮定 し,応 力は等方的で ある とし て い る。 ま
た,Fig.6に 示 した切 断球 に着 目 して解析 を進 めてい る
点 も,1.1で 紹介 した考 え方 と同様で あ る。
Fig.7に 示す ように,切 断球 の表 面に帯 ΔOを 考 える
と,図 か ら明 らか な とお り,こ の ΔOの 平 面gg'上 への
投 影面積 ΔSは,
Fig.7z方 向か ら切断球 と平 面に働 く力
(14)
で与 え られ る。一方,帯 ΔO上 の平 均 接触 点数 Δkoは,
(8)式と同様 に,
(15)
で与 え られ る。 また,帯 ΔO上 に働 く力のz方 向成 分 の
総和 ΔFは,(10)式 同様次式 で与 え られ る。
(16)
こ こで,(14)式 の 関 係 を 用 い て(16)式のcosθ ΔOを 消 去 す
れ ば,
(17)
が得 られ る。 この(17)式は,平 面gg'上 に働 く力 が切断 球
の切断面積 に比 例す るこ とを表 してい る。 した が って(17)
式 の右 辺を平面gg'上 の単位面積 中 に 占め る切 断 球 の
面積1-ε まで積 分すれ ば,左 辺 の力 ΔFは 単位面 積 に
働 く力 とな るので応 力 σzと 書 き改 め るこ と が で き,
Rumpf式(18)式 を求 め るこ とがで き る。
(18)
もち ろんRumpfの 論文 におい ては圧 縮力 は想定 して
お らず,接 触点に働 く力 と しては 付着 力,応 力 と して は
引張 り強 さのみを 想定 してい る。
1.3長 尾5)の考え方
これ まで紹介 して きた考 え方 におい ては,粉 体層 に 勢
断応 力が作用 しない等方応 力に限 定 され て いた のに対 し
て,長 尾の考 え方 は勢断応 力 も含 め応 力一般 が扱 え る点
です ぐれてい る。
長 尾の考 え方 におい ては,粉 体 層 はやは り均一 球 に よ
って ラン ダムに 充て ん され てい るが,等 方応 力 とい う仮
32(32)粉 体 工学会 誌
Fig.8応 力 と力の 関係
定はとりのぞかれている。まず長尾の基本的な考え方を
説明する。一般i軸 に垂直な平面 苑7上 でj方 向 に作
用す る応 力 σijは,曲 面gg'上 の接触 点に 働 く力 のj
方 向成分P5の 総和 として表 され る。 い ま平面gg'の 面
積 を δSiと すれ ば,次 式 で表 され る。
(19)
この(19)式を,Fig.8に 示 した よ うな2次 元粉体 層を例 に
とって説 明す る。い ま,粉 体 層中に1軸 に垂 直 な 平 面
gg'を 考 え,こ の平面 に作用 す る応 力 と接触 点に働 く力
の関係 を求め る。平面gg'に 作用す る応力 としては,垂
直 応 力であ るa11と 勢 断応 力で ある σ12がある。 この と
き長 さ δl1の粉 体層 に働 く垂 直 力 σ11δl1は,長 さ δl1内
にあ る接 触点 に働 く力の1方 向成分 の総和 ΣP三 に等 し
く,勇 断力 σ12δl1は接触 点に働 く力の2方 向成分 の総
和 ΣP2に 等 しい とい うのが,(19)式の意味す る所で ある。
この(19)式を具体 的に解 くわ けで あるが,こ れ まで紹介
して きた考 え方 では切 断球 に着 目 して きたが,長 尾 の考
え方 では,接 触 点を形 成す る球対 に着 目してい る。
い ま,Fig.9に 示す よ うにi軸 に対 して ξiだ け傾 い
た球対 を考え,平 面99'よ り下側 の球をk,上 側 の 球
をlと す る。Fig.9に 示 した傾 き&の 球対 は粉 体層中
に数多 くあ るが,平 面gg'が 切断 で きるのは,:Fig.10
に示す よ うに球kが 平 面99'上 に あ る場合 と球lが 平
面99'上 に ある場合 の間に あ る球対 であ り,そ の 範 囲
は2rcosξiと な る。い ま δSiの 面積 を基準 に して考 え
て いるので,平 面99'が 切 断で きる傾 き ξiの球 対は,
体積 δSi2rcosξiの 中に 含 まれ ることに な る。 したが
って,単 位体積 中に含 まれ る接触点 数を Δ とすれば,曲
面99'上 に傾 き ξiの 球対 に よって形 成 され る接触点数
Nは 次式 で与 え られ る。
(20)
一方 ,球 対 が傾 き ξiを とる確率Pは,ξiは0か ら π
/2ま で変化す るので,Fig.11か ら明 らかな ように,半
Fig.9接 触球対
Fig.10球 対 の在存 範囲
Fig.11球 対の在存確率
球 の表面 積 と(7)式で求め た ΔOの 比 で与 え られ,次 式 で
表 され る。
(21)
したが って,傾 き ξiの接触 点に おいて伝達 され る 力 の
j方 向成分 の総和 は,次 式 で与 え られ る。
(22)
よって,(19)式の右 辺 は(22)式を0か ら π/2ま で積分 す れ
Vol.21No.1(1984)(33)33
Fig.12代 表球回 りの 力の分 布
ば 求め られ る。
(23)
(19),(23)式よ りi軸 に垂直な面 でj方 向に作用 す る 応 力
σijは,結 局接触点に働 く力のj方 向成分pjに よ っ て
次 の ように求め られ ることにこなる。
(24)
この(24)式を,い かな る面で も勢 断応力は作 用 しない等
方 応力 とい う仮定の もとで導 かれた結果 と比 較 す る た
め,勢 断力の作用 しない面,す なわ ち主応 力面で考 えて
み る。(24)式中のPjは 接触点位置 の関数 とな るため,こ
の ままで は(24)式を計 算す ることは で きない。そ こで,長
尾は球面上 に働 く力 も応力 と同 じよ うに楕 円分布 を して
い るとい う仮定 を導入 している。 この仮定 は,Fig.2に
示 した よ うに,等 方応 力 の場合 には球面上 に働 く力が一
様 に球の中心に 向 って働 くとい う仮 定 と,同 じ考え方 と
いえ る。 この仮定 を導入す る と,Fig.12に2次 元的に
示 した よ うに,主 応力軸J軸(J=Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ)か ら ξJ
の角 度をなす接触点に働 く力PのJ方 向成 分P」 は次
式で与え られ る。
(25)
こ こでPJは 主軸方 向に働 く力で,球 面上 に働 く力 の主
値 であ る。
これで(24)式中のPjを 位置 の関数 として与 え るこ とが
で きたので,(24)式右辺 の積分 は可能 とな る。 い ま,座 標
軸 を主応力軸に とっているので,(24)式は次 の ように書 き
改 め られ る。
(26)
(26)式右辺の積分は容易 に行 な うことがで き,次 式 を 得
る。
(27)
Fig.13一 般座標系
これが長 尾の最終 結果で あ るが,Rumpf式 と比 較す る
ために次 の よ うな変形 を行 な う。Λ は単位体 積 中の接 触
点数で あ るか ら,次 式 に よって空 隙率 εと配 位 数kの
関係 で次の よ うに与 え られ る。
(28)
こ の式を(27)式に代入す れば,Rumpf式 とまった く同 じ
次式が得 られ る。
(29)
また(24)式とは逆 に,Fig.13に 示 す よ うな一般 座 標系
で,各 軸 か ら角 ξi(i=1,2,3)の 位置 にあ る接触 点 に
働 く力のj方 向成分は,j方 向に作用す る応 力 σij(i=
1,2,3)に よって次式 で与 え られ る。
(30)
1.4金 谷6)の考 え方
金 谷は,こ こで は誘導 を省略 す るが,仮 想 仕事 の原 理
を用 いそ(30)式に一致す る関係式 を導 出 してい る。 い ま,
主応 力軸を座標 軸 とす ると,座 標軸 に垂 直 な面で は勢 断
力 は作 用 しないのでI≠Jな ら σIJ=0と な る。 した
が って,(30)式は次式 とな る。
(31)
(31)式の左 辺を(25)式で書 き改め,整 理すれ ば(27)式に,し た
が ってRumpf式 に一致 す る次式 を得 る。
(32)
さ らに,こ れ まで のいず れの考 え方に おい て も,球 面
上 の接触点 分布 は一 様 と してあつ か って き た が,金 谷
は,接 触点 分布は主応 力方 向に,そ の主応 力 の大 き さに
ほぼ比例 して増大 す る傾 向が ある7,8)い う実験 事実 よ り,
34(34)粉 体工学会誌誌
Fig.14接 触面に働 く力の法線方向成分
平 均 接触 点分布 密度 がFig.14に 示 す よ うに,接 触点に
接する単位面積に働 く力Pの 法線方向成分Pnに 比例
するとして,接 触点分布を考慮している。接触点の分布
を考慮すると(32)式は次のようになる。
(33)
2.Rumpf式 の 新 た な解 釈
Rumpf式 は これ まで引張 り破断 に関す る狸論 と し て
知 られて きたが,上 述の よ うに,様 々な考 え.方に よって
誘 導 され て きた応 力 と力の関係式 がRumpf式 に 一 致
す る ことよ り,Rumpf式 は応力 と力の関係 を表 す一般
式 で あ ると結 論で き る。
Rumpf式 の物理 的意味 は,(29)式 に よって 明 らかに さ
れ て い る。す なわ ち,(29)式は球表面 に働 く力 の分布 が応
力楕 円 と相似 な楕 円で表 され ることを示 して い る。 この
こ とは,球 表面 に働 く力 も また テン ソル とな り,応 力 テ
ン ソル と線形 に 関係づけ られ ることを示 してい る。 した
が って主軸 で得 られた(29)式は,一 般座標系 で も成立 す る
こ とに な り次式 の よ うに よ り一般 化 され る。
(34)
Fig.15に 示す よ うに,図 式を 用いればi軸 方 向の 接 触
Fig.15Rumpf式 の物理 的意味
Fig.16Rumpf式 の勢断試験 への応用
Fig.17Rumpf式 の勢断試験への応用
点に働 く力 の3方 向成分Pii,Pij,Pikが,i軸 に垂直
な平面 に作用す る3つ の応 力 σii,σij,σikか ら求 め ら
れ る ことにな る。
3.Rumpf式 の 応 用
Rumpf式 は,応 力 と力の関係 を表す一般 式で あ るこ
とがわ か ったた め,極 め て応 用範 囲の広 い実用価値 の高
い理論式 とな った。 ここでは,粉 体層 の力学的特性 を調
べ る代表 的な試験 法であ る,勢 断,圧 密 引張 り試 験に
対 して,ど の よ うにRumpf式 の適用が可 能か を 紹 介
す る。
3.1勢 断試験 へ の応用
Fig.16に 示 す よ うに,勢 断面 に接す る 粒子接 触点 に
働 く圧 縮力 Σ と勢断 力Tが,'岡 式を 用いれば,垂 直 応
Vol.21No.1(1984(35)35
力 σと勢 断応 力 τか ら次 の よ うに求め られ る。
(35)
(36)
また,Fig.17(b)に 示す よ うに,応 力 のモ ール円 を 描
くこ とがで きれ ば,主 軸 を決定 す ることがで き るので,
Fig.17(a)に 示す よ うに,粒 子 表面 の任 意の位 置に働 く
力 も求め ちれ るこ とにな る。具体 的には次 の手順に よれ
ば よい。 まず,モ ール円が決 まれば主応 力 σJ(J=Ⅰ,
Ⅱ)は 求め られ るので(29)式に よって力 の主値PJは 求 め
られ る。次に 力Pも テ ン ソルであ るか ら,主 軸 か ら 任
意 に θだけ傾 いた接触 点に働 く力の主軸方 向成分PJは
次式に よって求 め られ る。
(37)
このよ うに,Rumpf式 を用 いれ ば,簡 単に粒子表 面
に働 く力を応力か ら計 算で きるので,構 成 粒子に着 目し
た勢 断機構 の ミク ロな解 析には,極 めて有 効な武器 にな
る と思われ る。
3.2圧 密試験 への応用
圧 密試験の場合に も勢 断試験 の場 合 と同様に,応 力か
ら粒子表面に働 く力 を計 算で きるこ とは当然で あ る。
圧 密実験の結果は,空 隙率 と圧 密応 力の関係 で表 され
る。 この圧密特性 の解析にお いて も,Rumpf式 が非 常
に有効で あるこ とを紹介す る。
Rumpf式 は,Kε=π を仮定す ると次 のよ うに書 き換
え られ る。
(38)
(38)式中 の空隙 率関数は,Fig.18に 示 す よ うに かな り広
い範囲 において,次 式で近似 され る9)。
(39)
したが って,(38)式は次 の ようなあつかいやす い式 に書 き
改め るこ とがで きる。
(40)
この式 を圧 密試験に適 用す る場合 は,圧 密応力Pと 圧
密応 力方向に働 く力Pの 関係 にな るか ら次式 とな る。
一方,圧 密特性 であ る圧密応 力Pと 空隙率 εの 関 係
は,Fig.199)に 示す よ うに,片 対 数紙 上で直線 関係にな
る場合 が多い。そ こで,い ま圧密応力Pを 増大 し て も
接 触 点にかか る力Pが 増 大 しない場 合を考え てみ る と,
Fig.18空 隙率関数の近似式
Fig.19圧 密特性のRumpf式 による解析
(41)式か ら明 らかな とお り圧密特 性 の傾 き ∂ε/∂lnPは
一1/4 .5と な る。 こめ 一1/4.5と い う傾 きの値 を うま く
使 うと,Fig.19に 示 した よ うに,圧 密応 力の増大 に よ
る空 隙率 の減 少 と接触 点に働 く力 の増 大を,定 量的 に区
別す る ことが で きる。Fig.19に お いて,任 意 の基準圧 密
応 力p0か ら傾 き 一1/4.5の 直 線を 引 くと,こ の直線 は,
圧 密応 力のPoか らの増 大分 は,接 触 点数 の増 加(空 隙
率 の減 少)の みに よって伝 達 され るこ とを意味 す る。い
まあ る空隙率 におい て,接 触点 数 の増 加 のみに よって伝
達 加能 な圧 密応力をp1'と し,実 測値 をpと す れ ば,
P1'-P0はi接 触点数 の増 加の みに よって増大 した圧 密応
力を表 し,p1-P1'は 接触点 にかか る力 の増大 に よる圧
密応 力増 加分を表 してい る。
これ を数 式に よって表現す れば 次の よ うにな る。 ここ
で想定 してい るのは,圧 密実 験結果 が次 の実験式 で整理
され る場合で あ る。
36(36)粉 体工 学会誌
(42)
た だ し,ki,cは 実験 定数 であ る。 この式か ら明 らかな
'よ うに,空 隙 率を さ らに Δεだけ減 少 させ るた めに必要
な圧 密応 力 の増 加割 合 ΔlnP(=Δp/p)は,次 式 で与 え
られ る。
(43)
一方 ,接 触点 に働 く力Pが 一定 の まま圧密 され る と し
た 場 合 は,(41)式を εで偏微 分 して,
(14)
が 得 られ る。 ここで(43),(44)式の比 を とれば,
(45)
を得 る。 この(45)式は,空 隙 率を Δεだけ減 小 させ るのに
必 要 とされ た圧 密応 力 の増加 割合は,接 触 点に働 く力を
一 定 に して圧 密 した場 合の圧 密応力 増加割 合の何倍 にな
るか を表 わ してい る。 このこ とをFig。19と 対比 させれ
ば,次 の よ うに な る。
(46)
したが って,圧 密試験 の結果 を空 隙率 のみな らず接触
点 に かか る力に よって も,定 量 的に 解析で きることにな
る。
3.3引 張 り試 験へ の応用
引 張 り破 断試験 は,Rumpf式 のいわ ば"発 祥 の地"で
あ るが,Rumpf式 の新 た な解釈 に よ って,従 来 よりは
るか に有 効な利 用が可能 に な る。す なわ ち,粉 体層 の引
張 り強 さに対す る,空 隙率(接 触点 数)と1接 触点 当 り
の 付 着力 の寄与 を,分 離 して定 量的 に解析 評価で きる こ
とで あ る。そ の解 析は,圧 密試 験 の場合 と同様に,次 の
よ うに して行 なわれ る。
引 張 り試 験 の場 合,一 般式 であ る(40)式は,引 張 り強 さ
σzと1接 触 点 当 りの付 着力Hの 関 係式 として,次 の よ
うに 書 き改め られ る。
(47)
ここで,付 着 力Hが 空隙 率 εに よ って変化 しない と 仮
定 す る と,引 張 り強 さ σzと空 隙率 εの関 係は,:Fig.20
に 示 す よ うに,片 対数 紙上 で傾 き-4.5の 直線 とな る。'
一 方,数 多 くの実 験結果9~12)は,引 張 り強 さ σzと空隙 ε
の 関 係 が,次 の実験式 で整理 され る ことを示 してい る。
(48)
ただ し,k2,bは 定数 であ る。 した が って,実 測値 も片
対 数 紙上 に プ ロッ トす るな ら,Fig.20に 示 した ように,
傾 き"1/bの 直線 で よ く相関 きれ る。℃
ここで,空 隙率が ε0で引張 り強 さカミσzo,1接 触 点
当 りの付着 力がHoの 粉 体層 を,空 隙率 ε1まで 圧 密 し
Fig.20引 張 り強 さのRumpf式 による解析
た時の引張 り強 さにつ いて考 えてみ る。い ま,ε0か ら ε1
までの圧密 に よって も,付 着 力はH0で 一 定で ある と考
え ると,Fig.20か ら明 らか な よ うに,引 張 り強 さ は
σz0から σz1'まで増 大す る。 つ ま り,σz1-σz0は 空隙 率
の減少(接 触点数 の増大)の みに よる,引 張 り強 さの増
加を表 わ して いる。それ に対 して実 測値 で は,σz0か ら
σz1まで増大 して い るので,σz1-σz1'は 付着力 の増 加
に よる引張 り強 さの増大 を表 わ してい ることにな る。
した が って,圧 密試験 の場 合 と同様 に,
(49)
を求 め るこ とに よって,空 隙率 の変化 に よる引張 り強 さ
1の変化 割合を,接 触点数 の増加に よる もの と,1接 触 点
当 りの付着力 の増 加に よる ものに分離 して,定 量 的に解
析評 価で きる ことにな る。
4.具 体 的 応 用 例13}
わ れわれは,3.2,3.3で 紹介 した解析法 を,粉 体 層の
引張 り破断試験 に適用 して,興 味 深い結果 を得 てい るの
で,要 約 して紹 介す る。
粉体 層の引張 り強 さを 測定す る場合,空 隙率は予圧 密
に よって調整 され るの で,引 張 り破断試験 で得 られ る1測
定 デー タには,圧 密特性 も含 まれ てお り,圧 密特 性,引
張 り強 さにつ いて の解 析,ま た 両者 の関係につ いて の解
析 も可能 とな る。
わ れわれ の研究室で得 られた22の 測定 デ ータが,Fig.
21,22に その1例 を示 した ように,圧 密特 性 お よび 引張
り強 さに関す る実験式(42),(48)式で相関 され る こ と を 確
め,(4.5b)-1,(4.5c)-1の 値 を求め てみた。 その結果
をFig.23に 示 した が,引 張 り試 験 の場 合(4.5b)一1の
値 は約3か ら7で,空 隙率 の変 化に よる引張 り強 さの変
化割 合に対 しては,1接 触点 当 りの付 着力 の増 大が,極
めて大 きな役 割を果 してい る ことがわ か る。
Vol.21No.1(1984)(37)37
Fig.21圧 密特 性
Fig.22引 張 り強 さ
Fig.23粒 子接触点に働 く力の重要性
Fig.24引 張 り強 さと予圧 密応 力
一方,.圧 密試 験の場 合(4.5c)-1の 値 は 約6か ら19で,
圧 密応 力の変化 割合に 及ぼす空 隙率 の変化 の寄与 はほ ん
のわず かで,圧 密応力 の変化 は,ほ とん ど粒子 接触点 に
働 く圧 縮力 の変 化に よって生 じて いる ことがわ か る。
次に,圧 密特 性 と引張 り強 さの関 係につ い て若 干考察
してみ る。 引張 り強 さ σzと予圧 密応 力 φの 関 係 は,
Fig.24に そ の1例 を示 した ように,次 の実 験式 で 表 わ
され る。
(50)
ただ し,k3,mは 定数 。 さ らに理論 的考 察か ら,(50)式
は次式 の よ うに接触点 に働 く力関係 を表 わす こ とも,明
らか に して い る。
(51)
(50)式の予圧密応 力pを ある近似 の も とに,t38)式 に よ っ
て接触 点に働 く圧 縮 力Pに 書 き改 め る と,引 張 り強 さ
に関す る次 の半 理論式 を得 る。
(52)
Fig.23に 示 した結 果 と,半 理論 式(52)式に よって,予
圧 密 と引張 り強 さの関 係を,次 の よ うに考 え る ことが で
きる。粉 体層 を予圧密 すれば,空 隙 率は減 少 し接触点数
は増大 す るが,Fig.23の(4.5c)-1の 値 は,そ れに も
増 して粒子接触 点に働 く圧 縮 力Pが 増大 す る こ と を 示
してい る。 圧 縮力Pと 付着 力Hは(51)式 で関係 づけ られ
るか ら,圧 縮 力Pの 増大 はす なわ ち付着 力Hの 増大 を
意 味 し,Fig.23の(4.5b)-1の 値 が1よ りは るか に 大
き くな るので ある。
この解 析結果 は,粉 体層 の空隙 率調整 を 目的 に して行
な う予圧 密が,空 隙率 を減 少 させ るだ けでな く,粒 子接
触 点に働 く圧縮 力を も増大 させ てい る こと,そ して粉 体
層 の引張 り強 さに対 しては,空 隙 率 よ りも圧縮 力 の方 が
38(38)粉 体工学 会誌
極めて重要な因子であることを示している。 この こと
は,空 隙率が等しくともその調整法が異なっていれば,
粉体層はまったく異なる引張り強さを持つこ とを意味
し,空 隙率のみによって粉体層の引張り強さを整理する
ことには,問 題があることを示している。
より一般的にいえば,現 在粉体層の力学的特性を表わ
すパラメータとして空隙率が広 く用いられているが,粉
体層の力学的特性は,空 隙率によつて代表されるもので
はまったくなく,粒 子接触点に働く力によっても評価さ
れるべきであるといえる。この粒子接触点に働 く力を考
慮に入れた現象の解析と,そ の評価法の確立が粉体層力
学の今後の重要な課題であると思われる。
お わ り に
以上Rumpf式 と,粉 体層の応力と粒子接触点に働く
力を関係づけるいくつかの理論式を詳細に紹 介 しなが
ら,Rumpf式 は従来考え.られていたような引張り強さ
に関する理論式ではなく,単 に粉体層に作用する応力と
接触点に働 く力の関係式であることを明らかにした。
しかし,Rurnpf式 の適用範囲が,従 来考えられてい
た引張り応力から,圧 縮応力や勢断応力を含めた応カー
般に拡張されるため,Rumpf式 は極めて応用範囲が広
く,実 用価値 の高い理論式 で ある ことを 明 らか に した。
ま た,Rumpf式 が様 々な考 え方 に よっで誘導 され た
理論 式 と完全 に一 致す る ことか ら,均 一球 にご よ っ て ラ
ン ダムに充 てん された粉 体層 とい う仮定 の も と で は,
Rumpf式 は ゆる ぎな い理 論式 であ るとい うことがで き
る。
したが ってRumpf式 は,実 測 可能 であ るマ ク ロ な
情 報を基礎に して,ミ クロな視 点か ら粉 体層の 力学的挙
動 を解 析す る上 で,強 力な武器 とな るものであ る。 ここ
では,粉 体層 の力学的特性 の代表 的試験 法に対 して,い
くつか応用法 を例示 し,引 張 り試 験結果 の解析 に具 体的
に適 用 した例 に よって,そ の威 力の一端 を紹介 した。
粉 体層力学 が他か らの借 りもの でな く.独 自の力学 体
系 を持つ ためには,粉 体 の不連 続性 とその不連続面 での
現象が定量的 に と りあつ かわな ければ な ら な い。 こ の
「不 連続 」の問題解決 に対 して,Rumpf式 が いかんな
くその実 力を発 揮 して くれ るこ とを期待 したい。
謝 辞
ここで紹介 した内容 は,本 学会 「粉体操作 に伴 う諸 現
象に関す る勉強 会」で の伊 ケ崎文和 氏の資料 に負 う所 が
大 きい。伊 ケ崎氏始め勉 強会 メンバ ーの諸 氏に,厚 くお
礼 申 し上 げ る。
引 用 文 献
1)Rumpf, H.:Chem. Ing. Tech.,3p, x.44(1958)
2)Rietsch, W. and H. Rumpf:ibid,39,885(1967)
3}Molerus, O.:Powder Technology,12,259(1975}
4)Rumpf, H.:Ch ern. Ing. Tech.,42,5380.970)
5)長 尾 高 明:機 械 学 会 論 文 集,43,4038(1977)
6)金 谷 健 一:粉 体 工 学 誌,17,504(1980)
7)Oda, M.:Solids and Foundations,12,1(1972)
8)Oda, M. and J. Kanishi:ibid,14,25(1974)
9)Jimbo, G. and R. Yama2aki:European Symposium
Particle Technology, B,1064(19$O Amsterdam)
10)大 塚 昭 信,檀 上 和 美:粉 体 工 学 会 誌18s 591(1981)
11)椿 淳 一 郎,加 藤 啓 一,神 保 元 二. 体 工 学 会 誌,1,873
(1980)
12)Jirnbo, G. and S. Hatano:the Ii'ine Particle Society
Pacific Region Meeting(1983 Hawaii)
13)Tsubaki, J. and G. Jimbo:Powder Tecknology,37,
219 (1984
Vol.21No.1(1984)(39)39