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2000年のメタ解析の報告以来(Lancet)、ステロイド性抗ア ンドロゲン(SAA)剤併用によるCAB療法は非ステロイド性抗ア ンドロゲン(NSAA)剤併用より劣るとの認識が一般化された。 以降、NSAAを組み合わせたCABが選択されることが多い。 本邦ではSAAとして酢酸クロルマジノン(CMA)、 NSAAとし てビカルタミド(BCA)、フルタミド(FLU)を使用してきたが、 近年はBCAを併用することが主流である。しかし、本邦におい CAB療法におけるこの3種の抗アンドロゲン剤( AA剤)の効 果を詳細に比較したデータは未だない。 そこで、 J-CaPJapan study group of Prostate Cancer研究会での登録データを用いて、本邦における初期治療として CAB療法におけるBCAFLUCMAの各抗アンドロゲン剤別の効 果の比較検討を行った。

SAA CAB NSAA CAB SAA CMA NSAA BCA (FLU) BCA AA CAB …j-cap.jp/presentation/pdf/slide7.pdf · 2012-04-19 · 目 的 2000年のメタ解析の報告以来(Lancet)、ステロイド性抗ア

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目 的

2000年のメタ解析の報告以来(Lancet)、ステロイド性抗アンドロゲン(SAA)剤併用によるCAB療法は非ステロイド性抗アンドロゲン(NSAA)剤併用より劣るとの認識が一般化された。以降、NSAAを組み合わせたCABが選択されることが多い。 本邦ではSAAとして酢酸クロルマジノン(CMA)、 NSAAとしてビカルタミド(BCA)、フルタミド(FLU)を使用してきたが、近年はBCAを併用することが主流である。しかし、本邦においてCAB療法におけるこの3種の抗アンドロゲン剤(�AA剤)の効

果を詳細に比較したデータは未だない。 そこで、 J-CaP(Japan study group of Prostate Cancer)研究会での登録データを用いて、本邦における初期治療としてのCAB療法におけるBCA、FLU、CMAの各抗アンドロゲン剤別の効果の比較検討を行った。

対 象

J-CaP(Japan study group of Prostate Cancer)研究会において2001年から「前立腺癌内分泌療法実態調査」に登録され初期治療としてMAB療法が選択された症例を対象とした。 全症例数は10499例、うち初期治療に用いられた抗アンドロゲン剤はビカルタミド群7305例、フルタミド群1204例、CMA群1990例であった。平均年齢74.7歳、平均PSA 310.9ng/ml、観察期間の中央値は922日であった。

Patient characteristics of ALL

CMA Flutamide Bicaltamide (N=1990) (N=1204) (N=7305)

Age (years) 75.2 73.8 74.7

Stage

B 788 (39.6) 415 (34.5) 3012 (41.2)

C 340 (17.1) 213 (17.7) 1341 (18.4)

D 601 (30.2) 502 (41.7) 2447 (34.5)

unknown 261 (13.1) 74 (6.1) 505 (6.9)

PSA (ng/ml) 294.46 373.44 305.09

<4 59 (3.0) 41 (3.4) 239 (3.3)

4 to < 10 374 (18.8) 178 (17.8) 1406 (19.2)

10 to < 20 394 (19.8) 181 (15.0) 1307 (17.9)

> 20 1159 (58.2) 802 (66.6) 4343 (54.5)

Gleason score

<8 1087 (54.6) 597 (49.6) 3820 (52.3)

8≦ 642 (32.2) 450 (37.3) 2474 (33.9)

unknown 261 (13.1) 157 (13.0) 1010 (13.8)

Progression-free survival of all P

FS

of

all (

%)

days Number at risk

BCA

FLU

CMA

7302

1204

1990

2835

507

743

944

220

224

56

28

30

46.81

5y survival (%)

50.37

47.43

Log-rank test : BCA v.s. FLU P=0.0326

BCA v.s. CMA P=0.0616

FLU v.s. CMA P=0.6908

Overall survival of all

OA

S o

f all (

%)

days

Log-rank test : BCA v.s. FLU P=0.9328

BCA v.s. CMA P=0.0109

FLU v.s. CMA P=0.0698

Number at risk

BCA

FLU

CMA

7302

1204

1990

3363

642

880

1100

289

259

70

37

36

71.43

5y survival (%)

72.25

73.59

結 果

全患者におけるOASではCMA群と比較してBCA群が良好であった。PFSでは3群間で有意差はなかったが、BCA群が5年生存率は最も良好であった。

*各群のstageのばらつきが反映した可能性がある。

*BCA群ではPSA>20ng/mlの割合がやや少な く、これが良好な生存率に寄与した可能性がある。

*初期治療としての薬剤選択であるため、一度Failure

したあとの後治療の影響も含まれている。

おおむねBCA群が良好

Patient characteristics of Stage D

CMA Flutamide Bicaltamide (N=601) (N=502) (N=2448)

Age (years) 73.6 72.3 73.2

PSA (ng/ml) 780 772.4 793.2

<20 79 (13.1) 55 (11.0) 339 (13.8)

20≦ 522 (86.9) 447 (89.0) 2109 (86.2)

Gleason score

<8 196 (32.6) 165 (32.9) 867 (35.4)

8≦ 325 (54.1) 282 (56.2) 1213 (49.6)

unknown 65 (10.8) 55 (11.0) 368 (15.0)

Overall survival of Stage D O

AS

of

sta

ge D

(%

)

days Number at risk

BCA

FLU

CMA

2445

502

601

1012

224

212

287

95

58

10

10

8

50.28

5y survival (%)

56.33

55.81

Log-rank test : BCA v.s. FLU P=0.986

BCA v.s. CMA P=0.0003

FLU v.s. CMA P=0.0048

多変量解析 (OAS of Stage D)

項目 リスク比 p値

AA drug Bicalutamide 1.00 0.003

CMA 1.31

Bicalutamide 1.00 0.645

Flutamide 1.05

Flutamide 1.00 0.047

CMA 1.26

PSA <=20 1.00 0.123

>20 1.18

年齢 <75 1.00 0.0001

>=75 1.31

グリソンスコア 2-7 1.00 <0.0001

8-10 1.64

Progression-free survival of Stage D P

FS

of

sta

ge D

(%

)

days Number at risk

BCA

FLU

CMA

2445

502

601

667

126

138

166

51

34

7

7

5

22.80

5y survival (%)

26.44

24.66

Log-rank test : BCA v.s. FLU P=0.281

BCA v.s. CMA P=0.977

FLU v.s. CMA P=0.152

多変量解析 (PFS of Stage D)

項目 リスク比 p値

AA drug Bicalutamide 1.00 0.50

CMA 1.04

Bicalutamide 1.00 0.44

Flutamide 1.05

Flutamide 1.00 0.92

CMA 0.99

PSA <=20 1.00 <0.0001

>20 1.45

年齢 <75 1.00 0.76

>=75 1.01

グリソンスコア 2-7 1.00 <0.0001

8-10 1.57

結 果

<OAS>

Stage D症例ではCMA群が他の2剤に比べて生存率が若干

劣っていた。

<PFS>

3種類のAA剤間での有意な差は見られなかった。

多変量解析ではinitial PSAがOAS、PFSともに高度に有意な

因子であり、OASにおいては年齢とグリソンスコアをあわせて

調整したリスク比では、CMA群は他の2剤に比べて約1.3倍

上昇していた。

考 察

<Stage D症例のOASでCMAのみが劣勢であったのは?>

・ CMAの弱い抗腫瘍効果のため。

欧米でのメタ解析のSAA剤(酢酸シプロテロン)がNSAA

剤と比較して劣勢であるとの結果と同様。

・ CMA群の年齢がやや高めであったため。

・ 再燃後の治療方法の違いのため。

可能性はあるが詳細不明。

・ 致命的な副作用の発生頻度の違いのため。

CMAはFLUと比較して肝機能障害の頻度はむしろ低い。

血栓症などの心血管系の副作用?(比較データなし。)

CABでのAA剤を比較した報告

SAA剤(酢酸シプロテイン)併用によるCABはNSAA剤併用より劣る。 Prostate Cancer Trialsts’Collaborative Group. 2000

病期B-D2を対象とした短期(24週)奏功率ではNSAAであるFLT併用CABとCMA併用のCABの間に有意差がない。

Ozono et al. 2000

病期D2を対象とした95週の追跡調査の結果、OASでFLT併用とBCA併用のCABの間に有意差がない。

Soloway M.S et al. 1996

結 語

・ 今回用いたデータにおいては、初期治療にBCAを用いたMAB が多く行われていた。 ・ OASおよびPFSいずれの解析においてもBCA群は比較的予後 良好であった。 ・ CMA併用群がStage D症例でOASで若干生存率の低下を認め た。今後詳細な原因の解析が必要と思われた。