51
東京大学 総長 Society 5.0(知識集約型社会)への 社会変革と大学の役割 財政制度等審議会 財政制度分科会 (2017.10.4) 1 資料3

Society 5.0(知識集約型社会)への 社会変革と大学 …東京大学総長 五神 真 Society 5.0(知識集約型社会)への 社会変革と大学の役割 財政制度等審議会財政制度分科会

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東京大学 総長

五 神 真

Society 5.0(知識集約型社会)への

社会変革と大学の役割

財政制度等審議会 財政制度分科会(2017.10.4)

1

資料3

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2

アウトライン

1. 産業・社会構造のパラダイムシフトと官民のシナジーを活かすための未来投資

2. Society 5.0 の実現に向けた大学の役割と改革

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3

東京大学140年

1877.4 創立

1886.3 帝国大学に改組

1897.6 東京帝国大学に改称

1947.9 東京大学(新制)に改称

2004.4 国立大学法人 東京大学

・学部卒業者数(1876-2015の140年間)

・課程博士授与者数(1957-2015年度の59年間)

276,803人

33,003人※ 国土総面積の約1000分の1

・学部学生 14,116人

・大学院学生 13,419人(修士・専門職

(博士7,600人)

5,819人)

・教員数 3,931人特任研究員 903人

(外数)

・職員数 3,934人

・収入予算額 2,608億円(運営費交付金

(授業料等(附属病院等

805億円)184億円)459億円) 他

・土地面積 326k㎡

東京大学

1877 20151945

創立

終戦

殖産興業失われた

20年

法人化

日 本

70年 70年 70年

北里柴三郎 長岡半太郎 高楠順次郎 鈴木梅太郎 南部陽一郎 小柴昌俊 梶田隆章

成長

高度経済

大隅良典

2004

世 界

開国

新制大学

バブル

崩壊

帝国主義

1億人

日本の人口推移0.7億人

0.4億人

1.3億人

冷戦終結WW II

UTokyo 3.0

社会・経済を駆動させる新たな仕組みが必要

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4

デジタル革命と社会の変化

技術革新 インターネットの普及(スマホ)

SNSの普及

ブロックチェーン技術

ネットを介した情報伝達(グローバル、瞬時)

マルチメディア双方向コミュニケーション

サイバーテロ ポストトゥルース ポピュリズムの台頭 世界同時不況

日本のインターネット平均トラヒックの推移 (推定)

新たな社会・経済の仕組みが必要

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ストック(知・技・人材・情報インフラ)を活用してパラダイムシフトを先導

労働集約型 資本集約型 知識集約型

第一次産業(農林水産業)

第二次産業(ものづくり)

第三次産業(サービス)

Knowledge Intensive 経済・社会のゲームチェンジ

・大量生産・大量消費・環境負荷の増大・都市への集約化・格差

知恵が価値を生み個を活かす社会

インクルーシブ、総活躍社会

高速インターネット網

(SINET)欧州線

米国線

アジア線

データを 集め、つなぎ、活用するデータ活用型社会の鍵

・生産性向上と高付加価値化・都市・地方間の利便性の逆転

回線(100Gbps)

回線(10Gbps)

ノード

大 学

サーバ

スマート農林業

スマート製造

デジタル革命と産業・社会構造のパラダイムシフト

日本の強み

工業立国

戦後の復興

• インテリジェントマテリアル

• AIチップ• 光・量子技術

5大学を起点として知識集約型

の産業集積拠点を形成

Society 5.0

アカデミックディスカウントで構築した高度インフラ

スマート化によるあらゆる産業の高付加価値化

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6

課題例: 超高齢社会の到来

0 200 400 600

0200400600

0~45~910~1415~1920~2425~2930~3435~3940~4445~4950~5455~5960~6465~6970~7475~7980~8485~8990~9495~99100歳~

0 200 400 600

0200400600

0~45~910~1415~1920~2425~2930~3435~3940~4445~4950~5455~5960~6465~6970~7475~7980~8485~8990~9495~99100歳~

団塊世代

団塊Jr.世代

団塊世代が80歳超

団塊Jr.世代の介護離職?

出典 : 総務省資料、国立社会保障・人口問題研究所資料、厚生労働省資料 に基づき、東京大学作成

生産年齢人口(15-64歳)に占める要支援・要介護者の割合

7.7 % (2016)→ 13.2 % (2030)

男性 (要支援・要介護)

男性

女性 (要支援・要介護)

女性

0 5,000 10,000

05,00010,000

0~45~910~1415~1920~2425~2930~3435~3940~4445~4950~5455~5960~6465~6970~7475~7980~8485~8990~9495~99100歳~

中国 (2015年)

中国の人口ピークは日本の15~20年遅れ

2016年 2030年

健康長寿社会のためのイノベーションと社会システム改革が急務

医療・社会保障制度の破綻

[万人]

健康・医療

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7

課題例: 第一次産業の生産性向上農業

日本の独特の土地文化

耕地集約化の遅れ

スマート化への期待

神奈川県三浦市

分散する畑 センサー データ集約・結合、AI解析

第6回未来投資会議 山森氏提出資料より

日本の農業の課題:

従来の生産性向上モデル

農地の集約化 大規模耕作地の開拓 大型機械の導入

小規模耕地でも高い生産性を達成

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8

未来投資会議

平成28年9月以降、11回開催

ドローンによる3次元測量

建機にセンサーを付け、熟練土木技師の“技”をデータ化、AI解析→ ロボット運転

小規模な畑に温度・湿度・雨量・風速センサーを設置しデータ収集

AI解析、病気予防、収穫管理

タブレット端末に介護データをリアルタイム入力

支援ロボットによる介護

予測型見守りセンサー

GPS、クラウドを活用した口述データ化

遠隔医療

Society 5.0に向けたデータ利活用の事例首相官邸ウェブサイトより

i-Construction

スマート農業

スマート医療

鍵は分散・遠隔・結合: インクルーシブな社会へ

耕地を大規模集約化せずに高生産を達成

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国家戦略の時間軸(短・中・長期)

1.短期的視点

既存の資源(資金や人材)を動かす(特に産業界)。

公的資金の投入はその呼び水とすべき。効果を重視して選別。例: 産業界の投資を引き出す

2.中期的視点

産業界や民間の自由な活動を基本としつつ、未来の社会を予測して産学官民の協調領域を拡大。そこに戦略的な先行投資を行う。

3.長期的視点

100年スケールで、在るべき国家の形を設計(国の役割)。(実学=短期、基礎・文化=長期 とは単純に区別できない)

その設計に基づく持続的な投資を行う。

学を活用して短・中・長期を結び付け、効果的・戦略的投資を実現

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今なにをすべきか、開発投資ターゲット例1

日本の強みスマート化により• あらゆる産業の高付加

価値化• インクルーシブ社会• ものづくり

• 半導体• 材料、素材• 基礎科学力

データを集め、つなぎ活用する:IoT、BigData、CPS、AI

• 全ての車、全ての工作機械をインターネットに繋がり、遠隔・分散・結合

• 全てのモノにCPS・AIが搭載

半導体デバイスやセンサーが鍵• CPSやAIの低コスト化• 高機能センサーの開発

直近のターゲット:• 半導体リソグラフィー技術(DUV・EUV)• 先端パッケージング技術• レーザーなどの光・量子技術を用いた先進も

のづくり(3Dプリント、非熱レーザー加工etc.)• 3Dセンシングデバイス• インテリジェントマテリアルなどの機能性材料

短期: 世界の半導体投資の果実を拾う(人・知・設備等ストックの活用)

• 製造設備、マスク・レジスト等の材料、パッケージング技術等勝てる分野へ投資

短中期: 産業基盤(設計生産・材料)を官民連携で• シングルナノメーターデバイスに向けた設計技術• アト秒光源施設、放射光源施設など共用施設整備

中長期: 未来技術への仕込み• インテリジェントマテリアル、量子コンピューター等

日本の強みとストックを活かし、Society 5.0 のプラットフォームを横断的に支える技術群

Society 5.0 への基盤技術の大きな流れ

世界の半導体市場規模は2017年過去 高へ (予測: $378 Billion)

※ 半導体市場 日本のシェア50%超 (1988) → 11% (2016)

出典:SIA 2017 Factbook

ターゲット

※ CPS:サイバー・フィジカル・システム

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中長期戦略につながる短期技術開発ターゲット

① 国際・国内情報通信ネットワークの拡充

② ユーザーとSINETとのラストワンマイルの接続の支援

③ データプラットフォームの構築(利用者が様々なデータベースのデータと自らのデータとを組み合わせて新しい価値を創造できるプラットフォーム機能)

④ つくば-柏-本郷イノベーションコリドー内における運用拠点整備(東大プラン)

⑤ 運営主体となる国立情報学研究所(NII)の組織体制の増強

850以上の大学等をつなぎ、全都道府県を100Gbpsの超高速通信速度でネットワーク化(日本 高)

全都道府県にアクセスポイント

産学連携により、地方に知識集約型の産業集積拠点形成

学術情報ネットワーク(SINET)

Society5.0 を支える情報ハイウェイ

今なにをすべきか、開発投資ターゲット例2

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アウトライン

1. 産業・社会構造のパラダイムシフトと官民のシナジーを活かすための未来投資

2. Society 5.0 の実現に向けた大学の役割と改革

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Society 5.0(超スマート社会)の実現に向けた大学への期待

未来投資戦略2017 (平成29年6月9日閣議決定)

「知・人材が集積する大学はイノベーション創出の拠点」

大学・研究開発法人等への企業の投資額を2025年までに3倍に(対2014年比)

大学等の有する優れた基礎研究力の強化・活用

大学等における産学官連携体制の抜本的な強化

ベンチャーの自発的・連続的創出

大学等への土地・株式寄附の活発化に向けた方策の検討

AI開発やビッグデータ処理を加速できる学術情報通信基盤の強化の検討 など

経済財政運営と改革の基本方針2017 (平成29年6月9日閣議決定)

官民を挙げて研究開発等を推進

基礎科学力・基盤技術の強化

企業・大学・国立研究開発法人等におけるオープンイノベーションの推進や機能強化 など

科学技術イノベーション総合戦略2017 (平成29年6月2日閣議決定)

大学や国研が改革(戦略的経営等)を断行し、民間とパートナーシップを築いて基礎研究に投資を呼び込む取組の加速

知識型社会を支えるビックデータ活用のプラットフォーム構築

外部資金獲得の強化による資金源の多様化 など

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課題① ‐ 博士人材

博士課程進学率の激減

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500(人)

2001年進学者1,017人

2016年進学者776人

2001年進学率41.9%

2016年進学率26.0%

修士課程修了者数

うち博士課程修了者数

進学率

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15

0 50 100 150 200 250050100150200250

(歳)

(人)

25

35

45

55

65

教員数 (東京大学・2006→2012年)

3,055人

2,519人

2,310人

3,830人

(43%)

(60%超)

2006

2012

2006

2012

任期付 任期なし

若手研究者雇用の不安定化

15

903

775687

588532 519 482

442 431 411 383

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

▲520人

40歳未満の任期なし教員数の推移(東京大学)

未来の学術資源の喪失、国際競争力の低下

課題② ‐ 若手研究者

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0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

H8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28

16

国立大学法人化 (2004.4)運営費交付金は、国立大学校費(生活費)と承継教職員人件費相当分

法人化による責任増に伴う必須の管理コスト経費は追加されず

若手雇用の不安定化国際競争力低下

運営費交付金の漸減年金受給年齢引き上げ電気代高騰 etc.

例) 施設整備費の課題※ 全国立大学の建物 2,508万㎡ (法人化時)

建物更新の必要経費(改築・改修等の費用から推計)

・・・ 2,600億円 / 年「次期国立大学法人等施設整備5か年計画策定に向けた 終報告」より

財政投融資資金+寄付等自己収入・・・ 900億円

差額 約1,700億円が必要※ 実際の措置額 410億円 (2017国立大学等施設整備費補助金) ▲1,300億円

老朽、環境劣化(危険)基盤経費を直撃

マイナスからの経営“負担”から“活用”へ: 経営の転換が不可欠

THE大学ランキング12位(2004) → 46位(2017)

課題③ ‐ 基盤財源不足

国立大学法人等施設整備費予算額の推移(一般会計・施設整備費補助金)(億円)

法人化

1,700億円

当初

補正

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大学改革の要諦 -社会との重なりを大きくする-

17+ 経営力強化

1. 短期戦略 – 既にあるストックの 大限の活用 組織対組織による協創 ー 産学連携から産学協創へ

(大学、企業・国立研究開発法人・地方自治体・民間組織の人材ストック活用)

全世代がゲームチェンジに参加する「場」(リカレント教育等)

アカデミアのインフラを知識集約型社会への転換に活用(SINET、先端的データ活用基盤の整備、大型共用施設)

大学キャンパス周辺を知識集約型の産業集積拠点化

起業家マインドを持った若手人材やベンチャーの育成、新産業の開拓

インクルーシブ&オープンな社会モデルを実践し未来ビジョンを社会と共有

2. 中期戦略 – 産学官民が連携し、芽が出ているものを強化 新たな価値創造に挑む「知のプロフェッショナル」の育成

若手研究人材への先行投資

3. 長期戦略 – 基礎科学力への投資 国際ステータスに寄与する基礎科学力への投資

多様な知を維持し、世界に伝え、人類社会の持続的安定的発展に貢献

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これまでの東京大学の産学連携

産学連携から産学協創へ

共同研究数は国内トップ

規模は小さい(総事業費の2%弱)

共願特許の実施数はほとんどない

大学が企業の「本気の投資先」になる

共同研究の実績 (民間企業のみ) :1,371件 / 51億円 (2015年)

※ 文部科学省「大学等における産学連携等実施状況について」に掲載

200以下

200~500

500~

1000

1000~

2000

2000~

5000

5000~

(万円)

1600

1200

800

400

(件数)

ごく少数

小規模な産学共同研究が主体

0

未来ビジョンを共有し解くべき問いから共に検討

研究開発に留まらず事業化領域まで協働

大学のベンチャー育成機能を利用

日立東大ラボ(2016.6~)

NEC・東京大学パートナーシップ協定(2016.7~)

(株)日立製作所 取締役会長 代表執行役

中西 宏明 氏

「日立東大ラボでは、社会課題の解決にどう取り組むのか、テーマのディスカッションから始める。我々からすると、それが事業目標になっていく。これは大いに期待している。」

※ 第6回未来投資会議(2017.3.24)にて

組織と組織による「産学協創」

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19

研究開発部門(企業研究所)

産学連携から産学協創へ産業界が維持できなくなってきた中・長期のための投資の受け皿を大学につくる

旧来の産学共同研究

研究開発部門(企業研究所)

○○課

企業 大学

○○研究室

△△研究室

個別課題の解決200万円/年以下

□□研究室

• 専門家弁護士を配置

• 雛形にとらわれない契約を提案・策定

• 質の高い単願特許出願のための財源強化

• 利益相反マネジメントシステムの整備

大学と企業が未来ビジョン(〝解くべき問い″)

から一緒に検討

○○研究室

△△研究室

□□研究室

解くべき問い

研究開発部門A

研究開発部門B

事業部

東京大学

オープンディスカッションラウンドテーブル

事業化領域まで幅広く協創

事業部門

製造部門(工場)

研究開発部門(企業研究所)

産学協創の場(プラットフォーム)○○研究室

△△研究室

□□研究室

企 業

企 業

価値のプロデュース

機能

産学協創のマネジメント

東京大学

大学発ベンチャー

大学発ベンチャー

大学発ベンチャー

New

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リカレント教育: ゲームチェンジを全世代で

20

東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)

社会人・幹部候補の40代を対象

半年間(20週)、金・土の集中コース

本学のスター講師

修了生(400名超)、縦横のアラムナイ組織

開 設2008年10月(以降年2回開講)

定 員 25名

受講料 約600万円

その他、大規模公開オンライン講座(MOOC)、東京大学公開講座等

技術者・研究者対象(20代~30代) グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム): ベンチャーや新事業を創出する人材育成

社会人新能力構築支援プログラム(NExTプログラム): 新産業分野を創成する人材育成

ものづくりインストラクター養成スクール: 「ものづくり知識を教えるプロ」の育成

地方自治体職員対象 テクノロジー・リエゾン・フェロー(TLF): 産学官民連携に必要な知識・スキルの習得

専門領域を有する法人派遣者対象 グレーター東大塾: 現代社会における先端的テーマの講義

産学協創や学内ジョブなどを拡充して全世代にキャンパスを解放

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21

東京大学とベンチャー育成

プレシード シード アーリー ミドル

起業促進活動起業促進活動 ファンド(間接)投資ファンド(間接)投資 VCと共同の直接投資VCと共同の直接投資3月: Spring Funders Program (107人応募)3月: Todai to Texas (SXSW) (6チーム派遣)6月: UTokyo 1000K (57チーム応募)9月: 起業支援プログラム (64チーム応募)

及び事業開発案件多数

提携VC:1社→5社(年度内6社)提携VCによる直接投資: 10社

検討 10社投資決定 2社

1号ファンド(250億円)認可後の9ヶ月(2016.12~)で有望案件12社への投資実行・・・ 順調なスタート

東京大学が創出したベンチャー企業数うちIPOした企業

時価総額合計

約300社17社

1.4兆~1.5兆円

10年以上の実績 (東京大学エッジキャピタル: 2004年~)

(2017年9月現在)

0

100

200

300

400

2012 2013 2014 2015 2016

関連ベンチャーの累計起業数

出資者

関連教員数

40社以上

延べ270人以上

次のステップへ

国際的にも高レベルの実績とポテンシャル

シーズの種まきと掘り起し

事業コンセプトづくりと経営チーム編成

テストマーケティングを経て本格的事業計画へ

成長や事業計画の変更のための投資

ポートフォリオコントロールのための間接投資(次頁)

総合エコシステム (プレシード・シード・アーリー・ミドル)の形成→ 東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 (2012年補正予算・官民ファンド事業)

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22

バイオ系

○○系領域

ロボット系

○○系領域

情報系

東 京 大 学

協創プラットフォーム開発株式会社

投資ファンドビジョンに基づくポートフォリオコントロール

分野ごとに

特化したVC バイオバイオバイオ I TI TI T機械システム機械システム機械システム ○○分野○○分野○○分野 ・・・・・・・

投資家

特徴あるポートフォリオコントロールの仕組み

大学の学術成果等

様々な領域の

ベンチャー

民間企業間接投資(ファンドオブファンズ)

※ ファンド(間接)投資のほかにVCと共同の直接投資方式がある このモデルを世界に発信していく

東大ビジョン2020

新たな取組

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インキュベーション機能の強化

集中的サポート体制でグローバルトップ10レベルのベンチャー育成環境を目指す

柏地区 約2,000㎡(柏Ⅱキャンパス内に整備)

本郷地区約7,200㎡(アントレプレナープラザ及び

病院南研究棟改修)

目白台地区 約1,700㎡(国際宿舎内に整備)

駒場IIキャンパス190㎡(連携研究棟内に設置)

日本 大の大学発インキュベーション施設整備(4地域合計で1ヘクタール以上)

起業やスタートアップについて初歩から体系的に学ぶプログラム

第1期(2005年)以降、2,300名以上の学生が受講し、100名近くの卒業生が起業

現状: 0.36ヘクタール

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24

東大 柏の葉駅前キャンパス

東大 柏Ⅰキャンパス

つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅つくばエクスプレス

柏の葉キャンパス駅

東大 柏Ⅱキャンパス

国立がん研究センター国立がん研究センター常磐自動車道常磐自動車道

【産業技術総合研究所】グローバルAI研究拠点(仮称)データセンター【東京大学】産学協創プラットフォーム拠点

以上 整備中

【東京大学】×【産業技術総合研究所】先端計測技術オープンイノベーションラボラトリ

【東京大学】×【物質・材料研究機構】マテリアルイノベーション研究センター

【東京大学】×【国立情報学研究所】学術高速大容量ネットワーク拠点整備 構想

柏インターチェンジ柏インターチェンジ

科学警察研究所千葉県警察第三機動隊科学警察研究所千葉県警察第三機動隊

サイバーフィジカルシステムを支える次世代AIチップ、センサー、インテリジェントマテリアル等の開発と社会実装への橋渡し

つくば‐柏‐本郷イノベーションコリドー@柏キャンパス~ 柏におけるトップ研究機関連携と情報ネットワーク整備構想 ~

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25狭い日本を広く使う

大学を活用した地域活性化

工学部特有の強固な部門・分野間縦割り組織を見直し、エネルギー・第一次産業を重視した2学科に再編

DIAS地球環境情報プラットフォームの一部(サーバ・ディスクアレイ)を設置

知識集約型へのゲームチェンジを駆動するため、地方のハブ拠点が必要

北見工業大学・髙橋信夫学長を訪問(2017年8月)

第8期 環境エネルギー科学技術委員会(第8回) 配付資料より抜粋

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26

国際ステータスに寄与する基礎科学力

00.51

1.52

Biochemistry, Genetics and Molecular Biology

Chemistry

Economics, Econometrics and 

Finance

EngineeringMathematics

Medicine

Physics and Astronomy

National University of Singapore Peking UniversitySeoul National University University of California at BerkeleyUniversity of Cambridge University of Tokyo

海外大学との分野別論文数比較(2015年) ※6大学の平均を1とした場合

東京大学の強み:物理学・天文学分野工学分野の論文数も比較的多い

SciVal データ取得日:2017/05/8Documents Type: Articles, reviews and conference papers

カミオカンデ(3千トン/1983~1996)

2002年ノーベル物理学賞「天体ニュートリノの観測」(小柴昌俊名誉教授)

2015年ノーベル物理学賞「ニュートリノ質量の発見」(梶田隆章教授)

スーパーカミオカンデ(5万トン/1996~)

ハイパーカミオカンデ(26万トン)

ハイパーカミオカンデ(600億円事業)

青写真は完成したが予算の仕組みがない 人と技術が中国・米国に流出する危険

21世紀、ノーベル賞を受賞した日本人は16名に上る (敬称略)

化学賞

野依 良治田中 耕一下村 脩根岸 英一鈴木 章

物理学賞

小柴 昌俊南部 陽一郎小林 誠益川 敏英赤﨑 勇天野 浩中村 修二梶田 隆章

生理学・医学賞

山中 伸弥大村 智大隅 良典

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27

先行投資: 若手研究人材の安定化

7名採択 (平成28年度、東京大学)

600万円上限×2年間支援 (研究費)

300万円上限×5年間支援 (研究環境整備費)

20名採択 (平成28年度)

300万円×2年間支援(当該研究に関連するものであれば使途自由)

903

775687

588532519482442431411 383 385

474

0100200300400500600700800900

1000

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

40歳未満の任期なし教員数の推移(東京大学)

若手研究者の雇用安定化施策により、40歳未満の任期なし雇用を89人回復

2006年 → 2016年

▲520人

文部科学省卓越研究員事業

東京大学卓越研究員

研究室を主宰、または独立して研究テーマを設定・遂行する若手PI を東京大学卓越研究員に認定して支援

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28

国際卓越大学院

日本の将来を支える国際卓越大学院

海外共同研究や産学協創でグローバルに活躍する

「知のプロフェッショナル」

質保証 (Qualifying Exam、学位審査のさらなる厳格化)

入学者選抜の国際化

分野横断型の修士・博士一貫コース

優秀な社会人の博士取得

学生の経済支援 (奨学金、ティーチングフェロー制度)

全博士課程学生の1割規模、

各研究科に拡大

先行事例: 理学系研究科GSGC (2016.9~)

2017年入学者9人 入学者の成績 【平均点/満点】

• GRE, Subject Test ‐ Physics  【968/990】• GRE, Quantitative Reasoning (数学)  【167/170】• GPA 【2.97/3.0】

日本人学生にも好影響が出ている。 一般の外国人特別選考入試も、応募者数・レベルが向上。

世界から優秀人材を受け入れ

World‐leading INnovative Graduate Study‐ WINGS ‐

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29

インクルーシブな社会の実現に向け、全世代が活躍する社会モデルをキャンパスで先行実施

学生支援の発想転換: 大学院の例

オンキャンパスジョブ: 生活と研究の両立 博士課程学生の高度な専門性を活かす学内ジョブ(学術資産のデジタルアーカイブなど)

学内での職域を提供することで、経済的な不安を解消しつつ研究活動時間を確保

シニア教員・職員によるジョブマネジメント

子育て中の大学院学生も学位取得と両立(2018.4.1 保育園増設 176→221名(45名増))

発想転換

• プロの高度人材として活用• 社会変革に参画• 自立できる環境づくり

従来の大学院学生支援

知のプロフェッショナルとして自立できる環境へ

学外のプロジェクト補助金事業教員の研究費等

・・・財源は不安定

• 日本学術振興会特別研究員• 奨学金受給者• TA・RA等

平均 8万5,000円/人 (東京大学)※ 総支援額を博士課程学生数で除算

従来の支援に加えることで、安定的な経済支援を向上

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30

東京大学とUCBerkeley の財務構造比較

指定国立大学法人制度の活用へ

東京大学 UC Berkeley資産合計 1兆4,083億円 資産合計 1兆711億円

資産の9割弱が有形・無形固定資産

(全体資産額の6割が土地)

※1 東京大学の基金は「投資」に分類※2 東京大学の基金運用実績(2016年度) : 110億円を運用し、9,400万円の運用益(0.85%)※3 UCBの平均運用利率 : 直近1年間△2.3%,直近3年間+5.2%,直近5年間+5.3%,直近10年間+5.2%

(カリフォルニア大学 ANNUAL  ENDOWMENT REPORT  FISCAL YEAR ENDED JUNE 30,2016 より)※4 新日本有限責任監査法人の情報提供資料より作成

資産の比較(2016年度)

有形・無形固定資産

87 %(1兆2,327億円)

その他9 %(1,306億円)

投資 3 %(450億円)

有形・無形固定資産

40 %(4,358億円)

投 資

51 %(5,525億円)

その他7 %(828億円)

有価証券、投資有価証券

など

現金、預金など

土地、建物、特許権など

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31

東京大学の改革取組(まとめ) 産学官民連携強化 【p.18~20】

産学連携から産学協創へ リカレント教育 ゲームチェンジを全世代で プロデュース機能の強化

ベンチャー育成機能の強化 【p.21~24】 総合エコシステム構築 インキュベーション機能強化 イノベーションコリドーと地域活性

若手人材への先行投資 【p.27】 東京大学卓越研究員 若手研究者雇用安定化支援

国際卓越大学院(WINGS) 【p.28, 29】 卓越した人材の育成(博士課程学生の1割) 学振特別研究員(DC)相当の経済支援

発想転換による経営力強化 【p.45~48】 予算配分の透明化 施設マネジメント改革、戦略的リノベーション プロパティマネジメント(土地活用等) プロフェッショナルな職員の育成人事給与制度改革と近隣大学とのアライアンス

指定国立大学法人制度の活用、「運営から経営へ」

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32

好循環の確立による自律的な大学経営の実現

① ビジョンを明確化し研究・教育活動への先行投資

② 成果の価値を可視化して社会に発信

③ 社会からの支持・支援の増大

④ 運営から経営へ

競争的資金

運営費交付金

基盤的教育・研究経費 出口指向型基盤的

学術研究

民間資金運営費交付金 競争的資金

競争的資金 民間資金成果の価値を

可視化・積極発信

財源多様化財源構築

研究・教育に先行投資

価値創造基盤的学術研究

知・技・人

未来に貢献

資源の効率化 運営から経営へ

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以下参考

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研究開発エコシステム形成(10年補助事業の役割)応用研究を空回りさせずにビジネスまで繋げる戦略 ~光科学分野での経験より

中長期戦略に繋がった短期ターゲットの設定

「先端光量子科学アライアンス」 光量子科学研究拠点の形成に向けた基盤技術開発事業(H20.8-H30.3)

• 光波の究極的制御を実現する光源・材料とそれを活用する計測・利用の科学と技術の開拓を推進

• 4大学、1研究所のアライアンスによる、ネットワーク型拠点事業により組織間連携基盤を整備

• 10年間という期間を活かした人材育成(若手研究者、博士人材)

• 光科学分野の科学的進展から予測した技術的必然性に基づく「伸びしろのある分野」の抽出

• 長期的視座での基礎科学的研究、技術開発の立案(初期:学術界内の対話中心)

⇒ 先端光源、 先端計測など研究基盤整備事業へ展開

• 産業的インパクトのある、技術的に「難しい」課題の抽出(中期ー後期:産業界との対話中心)

⇒COI等、産学協創基盤の構築事業へ展開

⇒NEDOプロ等、特定の課題についての産学連携事業へ展開

• 産業界との対話に基づき、「その先」を目指す基礎科学・応用科学の課題を抽出(後期)

⇒CREST,AMED、科研費等、次のアカデミックな基礎・応用研究事業へ展開

長期的視座に基づき卓越した人材の育成と基盤的な研究を推進。

科学技術の進展の学理的判断に基づく伸びしろの評価と、社会のニーズからのバックキャストに基づく課題抽出の両立。

光科学を横串とする広く横断的な領域で産学官の対話を続ける体制を整備。

シナジー効果の高い研究開発エコシステムの基盤を確立。

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学術情報ネットワークの強化と大学を中核としたSociety5.0 社会の実現Society 5.0社会の実現に向けたプランの⽬的と概要

プランの具体的内容

⼤学等

・米回線(100Gbps+10Gbps)と比較して脆弱な欧州線(20Gbps)とアジア線(10Gbps)を増強

・移動体通信システム利用体制を整備

世界では超高齢化、資源の偏在と枯渇、地域間、世代間格差など人類共通の様々な課題が顕在化。一方、AI、IoT技術の急激な進展、

ネットワーク環境の整備により、多種多様なビッグデータを集め、つなぎ、活用するデータ活用型社会へとゲームチェンジが起ころうとしている。

データ活用型社会は、地域格差などの課題を解消し、人々が効率的で質の高いライフスタイルの実現と地域の特色を活かした多様な産業の活性化に貢献するSociety 5.0が目指す社会に繫がる。日本が先頭に立ってこの社会を実現すべき。

我が国には、全ての都道府県に毎秒100Gバイトの大容量データ通信をセキュアで超高速に行う大容量学術情報ネットワーク網「SINET」が整備され、全国850以上の大学等研究機関が活用。

SINETの強化に加え移動体通信システムの利用体制を整備するとともに、地域の大学が産業界、自治体等と連携し、様々なデータを集め、つなぎ、活用することによる人々のライフスタイルの変革、農業、漁業を含めた産業の効率化、高度化に向けた取組を全国的に後押しする。

さらに、ネットワークを通じて収集されるビッグデータを蓄積する高速ストレージ、それらを全国どこからでも解析して利用できるクラウド型解析システム、ビッグデータ解析のためのスパコン等を装備した大容量クラウド型解析基盤拠点を整備する。

アジア線

欧州線

⽶国線

1.SINET等の強化 2. 大学等を核としたデータ活用実証事業研究

・地域の大学等が自治体、企業等と連携し、IoT、ビッグデータを活用した地域産業の効率化・高度化、地域のライフスタイルの変革を推進するための実証研究を支援

・SINETや移動体通信を積極活用

3. 大容量クラウド型解析基盤拠点の整備

スマートものづくり

スマート農業

スマート漁業

リアルタイム防災対策

スマート健康医療⼤容量クラウド型解析基盤拠点

・ビッグデータ貯蔵し、全国からアクセスしてデータ解析を可能とするクラウド型データ解析基盤拠点を整備

etc.

高速インターネット網(SINET)

回線 (100Gbps)

回線 (10Gbps)

ノード

35

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リアルタイムデータ収集によるSINET活用の可能性

インフラの効率的管理のための研究

• インフラ維持管理• エネルギー基盤管理

農産物の⽣産性向上に向けた研究の促進

• 障がい者⾃⽴⽀援• 医療画像診断・診断DB• 遠隔診療・救急医療• 医療・介護サービスの効率化• 投薬の効果把握• ウェアラブルセンサによる健康管理

• 省⼒・⼤規模⽣産• 農地⼟質マップ• ⾼収穫農法• 病害⾍・⽔害・天候リスク診断• 農耕従事者の効率向上• 新規参⼊者への⽀援• IoT農場• ⽣産・流通・販売の効率化

競技⼒向上に向けた研究の促進

医療・ヘルスケア分野におけるICT化の推進

• ⽣体情報・環境情報・パフォーマンス情報の分析・活⽤

• 選⼿スキル向上• スタミナ調整• 障がい者スポーツ⽀援• ヨット等広域競技

⾃然環境調査・解析に向けた研究の促進

• 遠隔地⾃然環境における⽣物多様性

• 動物装着センサによる⽣態・環境調査

• センシングロボットによる環境調査

• 動物⽣息地調査• 縄張り・⾏動測定• ⿃獣被害縮減

• ゲリラ豪⾬などの防災情報可視化

• 災害状況把握・伝達

防災・減災に関する研究

モバイル網

各⼤学/データセンター

VPN

L2VPN

地域コミュニティ

×学術

コミュニティ

⼤学LANの隙間をモバイル

が補完×

安⼼・安全な研究活動

36

広域データ収集基盤︓増⼤するIoTデバイスからのデータ

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リアルタイムビッグデータ活用事例: 農業(十勝・更別)

作物は環境の影響を受けて成長する

気温、湿度、日射量、二酸化炭素濃度等のデータをリアルタイムかつ長期的に収集

複雑系現象として解析・評価・制御

食料供給のキーとなるハイスペックな品種・栽培技術を開発

ドローンで空撮し、作物の生育状況を確認

【勘と経験が頼り】

平藤雅之教授(東大・農学生命科学研究科)

【高度化・効率化】

3G/LTE

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リアルタイムビッグデータ活用事例: 防災(洪水時のダム制御)

データ統合・解析システムDIAS(Data Integration and Analysis System)

河川テレメトリデータ

全国の480水系、約15,000観測地点、10分毎のテレメトリデータ(現在は124水系4,365地点)

雨量、流量、水質等をリアルタイム把握

地上観測データ

衛星観測データ

・水蒸気の流れ・雲の動き・降雨分布etc.

洪水流出予測とダム 適操作によって洪水流量を低減

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リアルタイムビッグデータ活用事例: 防災(スリランカ)

Kalu流域の6地点の雨量計データ2017年5月に発生したスリランカ大洪水(死者・行方不明者300名超)

気象衛星ひまわり8号のデータ

・大雨が発生する気象条件の組み合わせを解析→ 今後の大雨・洪水予測に活用

・スリランカ政府の要請に基づき、洪水対策を高度化する取り組みを支援

・日本の高度な科学技術を活かしたリアルタイムの防災情報を積極的に活用

データ統合・解析システムDIAS(Data Integration and Analysis System) 39

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SINET活用事例: 医療(感染症対策)

国内全保険レセプトの解析基盤保険レセプトデータベース

(国)

国内全保険レセプトの解析基盤

解析によって得られる知見・生活習慣病の患者数の地域分布差・感染症や流行性疾患の発生・収束動向・地域ごとの通院患者の外来動態 etc.

保険者を経由して収集(匿名化)

超⾼速解析基盤

例)⼿⾜⼝病における都道府県ごとの患者数の推移(⽉毎の変遷)

4⽉5⽉

6⽉7⽉

10⽉

9⽉

8⽉

年間約16億件、370億レコード(6年分2000億レコード以上)

効果的・効率的な医療施策

将来は、感染症や流行性疾患についてリアルタイムにデータを取得し、より迅速な対応を可能とする 東⼤+医療経済研究機構

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データ活用型社会に向けた教育の現代化、及び普及発信

• 数理統計情報教育、情報リテラシー教育の裾野拡大と現代化• 標準カリキュラムの構築と国際展開• 産学連携ニーズ対応型実践的リカレント教育

数理・情報教育研究センター (2017.2~)

• 先鋭的人工知能研究と文理の 先端学理を統合• 独自の次世代知能科学体系の構築

先端知能科学の融合研究の推進

次世代知能科学研究センター (2016.10~)

知識集約型社会に向けた基盤整備@東京大学

先進的データ活用基盤の整備

• 日本の独自のAI技術と、日本の強みであるものづくりを融合し、新たな価値を創出

グローバルAI研究拠点(仮称)

• データ駆動型社会に備え、全国を縦断する高度情報インフラの拠点整備

学術高速大容量ネットワーク拠点整備構想 • 超並列クラスタ型計算機

Oakforest-PACS の 導 入(「京」コンピュータの記録を5年ぶりに塗り替える)

先端共同 HPC 基盤施設

Oakforest-PACS

産業技術総合研究所と連携 国立情報学研究所と連携 筑波大学、富士通(株)と連携

*データプラットフォームとの連結

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東京大学が社会変革を駆動する仕組み

アクション (指定国立大学認定 2017.6)

未来社会ビジョンを学内外で共有 (SDGsを活用) 学際融合分野、新分野の創出 グローバル化の戦略的推進 多様なセクターとの協働、価値創出の場を提供

運営から経営へ (安定的かつ自律的な経営基盤の獲得)

研究・教育や人材育成・獲得に先行投資

社会貢献・地域貢献社会連携・国際協働の推進

基金や産学協創の拡大、法改正を活かした資産運用、財源多様化による財務強化

研究教育の価値を可視化し国内外に積極発信

未来社会協創推進本部 (2017.7発足)

戦略ビジョンの策定と国際発信

学内ネットワーク形成と未来社会協創プロジェクト組成

国際機関や企業等との提携

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学術知の多様な時間軸を活かし、より良い未来社会づくりに貢献する。

産学官民の変革を駆動する役割を果たす。【2015.10 「東京大学ビジョン2020」】

財源の多様化により、大学という公共財を支える新たな仕組みをつくる。

大学

企業は、それぞれの中核的な事業を通じて、SDGsに貢献することができる。【2015.9 潘基文国連事務総長】

GPIF: ESG投資を通じて持続的な企業価値向上を目指す方針を表明。ESG指数を公募・選定。【2017.7】

経団連: SDGsの観点から「企業行動憲章」と「実行の手引き」を改定。【2017.11予定】

産業界

人類共通の課題を克服する新たな経済・社会の駆動モデルの提示

[日本の動き]

SDGs推進による産学官民の同時改革

(未来社会ビジョン)

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日本の国立大学の経営事情

163億円

(7%)767億円

(28%)333億円

(13%)316億円

(14%)

571億円

(23%)

372億円

(16%)

学生納付金等投資収入(基金運用等) 出版事業収入

海外大学の戦略的経営のための財源

487億円

(21%)

受託研究等

国立大学法人の経営における制約× 収益を目的とした業務 (教育研究活動が前提)

× 資産運用 (例えば、株式購入は不可)

× 管理経費の確保 (受託研究費のオーバーヘッド比率が低い(10~30%))

UTokyoFinancial Report 2015

(2,358億円※

National U of SingaporeFinancial report 2015

(2,479億円)

CambridgeAnnual Report 2015

(2,293億円)

UC BerkeleyAnnual Financial Report 2014‐15

(2,700億円)

※ 2015年度末経常収益総額による比較

経営力強化

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45

予算配分の透明化

予算配分額と仕組みの透明化

スケールメリットの活用

他部局の予算額は見えない

予算の硬直化

予算委員会での審議

制度改革

東京大学

予算委員会(H28.4設置)

委員長: 総長委員:各理事、副学長、各研究科長及び各大学院教育部の部長、各附置研究所長、附属図書館長、医学部附属病院長、全学センターの長

国立大学法人化後 (2004-2015)

文部科学省

A部局

C部局

・・・

全学経費

東京大学

B部局

国立大学時代(-2003)

文部科学省

A部局

C部局

・・・

全学経費

B部局

A部局

C部局

・・・

全学経費

B部局

2016以降

文部科学省

経営力強化

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46

施設マネジメント

老朽化に伴い維持管理費が増大10年で倍増(約42億円増)

光熱水費が29億円増

外部資金増加(=研究活性化)とともに生じた研究スペースへのニーズ建物面積が法人化後27万㎡増

16.1 39.6 

24.6 

34.5 5.7 

11.9 

1.0 

3.3 

0

20

40

60

80

100

2004 2014(億円)

その他委託費

雑役務費

保守費

修繕費

89.3億

47.4億

東京大学における状況 維持管理費の推移

施設維持管理システム改革へ

建物毎に現況を可視化・透明化(建物・スペースの効率的な利用と再配分)

学外と連携した施設整備、財源の多様化(未利用箇所の経営資源としての活用)

建物履歴・現況技術的評価個別劣化箇所

本来116億円必要(私大レベルでの推計)

利用状況、KPI劣化度改修費用

新たな「施設保全カルテ」

経営力強化

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プロパティマネジメントの構想例 目白台国際キャンパス(21,842㎡)の整備計画を見直し、戦略的活用

のスペースを捻出 (2015年)

改正法を活用した貸付等、投資戦略としての整備を計画中

(当初の整備計画)

敷地全面に建築 目白台国際キャンパス(2019年供用開始)

戦略的活用のスペース確保

(見直し後)

経営力強化

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東大

(人件費差額分は東大と調整)

他大学等

プロフェッショナルな職員の育成

法人業務の強化、優秀人材の確保、スケールメリットを活かした育成が可能

近隣大学と職員相互活用アライアンス構築

ライアン

G国立研究開発法人

C大

E大学共同利用機関

法人

東大

F国立研究開発法人

プロフェッショナル人材

D大学共同利用機関

法人

B大

A大

※ 大学間連携によるスケールメリットを活用東大独自採用 250人(2005年~)統一試験採用 110人(2004年~)

優秀な人材の獲得に成功

法人化後の職員採用

人事給与制度改革

教職員の責任と権限の明確化 処遇とキャリアパスの改善 人員構成・世代間バランス是正

『新たな価値創造に挑む「プロフェッショナル」人材の育成・確保』『教員の研究時間劣化の改善』

に向けた職員人事制度の再構築プラン(2016.12)

近隣大学と協議開始

※人事制度は公務員時代のまま

人材交流

経営力強化

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ポストの帰属: 機関 研究者個人

期待される効果

・ 研究者の雇用の安定化と流動性の両立

・ 優秀研究者の適材適所配置

・ 優秀研究人材の確保

・ 優秀な研究者獲得を通じた組織の改革促進

卓越研究員制度 日本版CNRS 私案(2013年7月)

機関を越えたオールジャパンの研究員雇用制度

年俸制無期雇用、研究場所を自由に選択

※ 卓越研究員制度検討委員会(2015.2.9~3.27)

主査 五神 真 (東京大学理学系研究科長(当時))

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学外・海外有識者との議論STS Forum 2017  ‐ The University Presidents’ Meeting (2017.10.1) in Kyoto

世界23か国、総勢45名の学長等が参加ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、オーストラリア国立大、スイス連邦工科大チューリッヒ校、香港科技大、カリフォルニア大サンディエゴ校、シンガポール国立大、京大、阪大、早大等

1.知識集約型社会におけるテクノロジーの発展に求められる研究(基礎・応用)とは

データサイエンス 人とコンピューター間のインターフェース 人文社会系の学知を活用した社会システムの

構築(倫理、プライバシー、人権、テクノロジーの制御等)

2.知識集約型社会へのスピーディな転換に必要な人材育成分野とは

短期: リカレント教育(データ活用等)社会的責任と倫理の構築に関する教育

中長期: 多様性に寛容で変化に柔軟な若者の育成

3.インクルーシブな社会実現のための異分野融合加速の方策とは

大学、政府、企業による戦略的な予算措置→ ただし、プロジェクト的な予算だけではなく、

長い目で基礎研究を発展させる投資を行うべき

複数の専門を持った学生の育成

4.インクルーシブな社会実現を目指した連携(大学間、社会、政府、企業)と、そのためのプラットフォーム構築

全世代に広く開かれたリカレント教育の推進(MOOCs等の活用)

学生の国際流動性向上 産学連携の推進、政府との緊密な連携

「知識集約型の世界に向けて―インクルーシブな社会の実現における大学の役割―」(五神共同座長)

参加学長等との議論の概要

2017 STSフォーラムより

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地球と人類社会の未来に貢献する「知の協創の世界拠点」の形成 指定国立大学法人構想