14
Title 尿膠質の研究 第II篇:主として尿石患者尿のムコ蛋白に就 Author(s) 杉山, 喜一 Citation 泌尿器科紀要 (1958), 4(10): 539-551 Issue Date 1958-10 URL http://hdl.handle.net/2433/111672 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

Title 尿膠質の研究 第II篇:主として尿石患者尿のムコ蛋白に就 …repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/...である. 0.001M.Luteo塩 十 INH40H混

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Title 尿膠質の研究 第II篇:主として尿石患者尿のムコ蛋白に就て

Author(s) 杉山, 喜一

Citation 泌尿器科紀要 (1958), 4(10): 539-551

Issue Date 1958-10

URL http://hdl.handle.net/2433/111672

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

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539

【泌尿紀要4巻10号

昭和33年10月

尿 膠 質 の 研 究

第II篇 主 として尿石患者尿の ムコ蛋 白に就て

京都大学医学部泌尿器科教室(主任 稲田 務教授)

杉 山 喜 一

Studies on Urinary Colloids

Report II : Mucoprotein in Urine of Urolithiasis

Kiichi SUGIYAMA.

From the Department of Urology, Faculty of Medicine, Kyoto University.

(Director : Prof. T. Inada)

Mucoprotein, one of the urinary colloids, has been studied on the urine of patients

with urological diseases particularly with urolithiasis by means of polarography.

Materials. 0.5cc. of urine was added to 5.0cc. of the following mixed solution : 0.001 M..

CO (NH3) 6C13, 0.1 M. NH4C12 and 0.8 M. NH4OH.

Results.

1) It was found that mucoprotein in urine up to the concentration of 0.00625 per

cent had a protection ability against precipitation of electrolytes in urine from the Ogawa

colloid reaction.

2) In most of the cases, mucoprotein concentration in the bladder urine of urolithiasis

was higher than in normal urine. It seems, however, that such high mucoprotein concen-tration is due to the inflammation of urogenital system as a complication of urolithiasis,

not due to the urinary stone itself.

3) In upper urinary calculus, the ureteral urine was collected on each side and

examined respectively, and it was found that mucoprotein concentration in the urine from

lesion was moderately higher than in the urine from normal side, and also found that

even in the ureteral urine from normal side of patients with urolithiasis mucoprotein

concentration was considerably higher than in the urine of normal adults.

4) Within about a month after the removal of urinary stone, mucoprotein in the ureteral urine from both lesion and normal side has been still increased.

5) In the case without having very long duration of urinary calculus, mucoprotein.

concentration in the urine was rather lower than in normal urine.

6) Mucoprotein concentration in the urine of patients with malignant tumore was

much higher than in normal.

, Discussion. From the results described above, the following hypothesis may be raised on the relationship between urolithiasis and urinary mucoprotein concentration. An urinary

calculus is produced primarily in lower urinary mucoprotein concentration. After a

production of stone, pathological changes such as inflammation will occur and mucoprote-

in concentration of ureteral urine from lesion is increased C--urinary mucoprotein.

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1540 杉 山「尿 膠 質 の 研 究(第 皿篇)

originates from urinary tract secretion). Besides, pathological changes of kidney and/or

ureter possibly cause a systematic change followed by an increase of serum mucoprotein.

An excretion of such in-creased serum mucoprotein from both kidneys leads to high

urinary mucoprotein concentration from both lesion and normal side (--urinary

mucoprotein originates from blood serum).

Although a local lesion will recover soon after the removal of calculus, systematic 'changes do not recover at the same time of treatment . Therefore, the mucoprotein

concentration of both ureteral urine will keep high level for some periods after the

removal of stone. After recovering to normal general conditions, the urinary mucoprotein

becomes below normal. In other words, urinary mucoprotein originates from urinary

tract secretion becomes normal, but urinary mucoprotein originates from serum mucopro-

tein does not recover to normal level for some periods after the removal of calculus.

This is also suspected from the fact that Ogawa colloid reaction of urine is within normal

in most of the cases with increased urinary mucoprotein.

In malignant tumores, much higher concentration of urinary mucoprotein is recognized

than that is suspected from the effect of inflammation as a complication. This might be

flue to the increased serum mucoprotein caused by pathological protein metabolism in

the body/or tumore itself.

緒 言

尿路 結 石症 に於 け る尿 中膠 質 の問 題 に 就 い て

献 諸 家 の研 究 が あ り,私 も 「尿 膠 質 の研 究」 第

1篇 に 於 い て,そ の 消長 の詳 細 を述 べ た が,今

回 更 に 尿 膠 質 の一 部,或 は大 部 分を 占め るの で

・・は ない か と思 われ る ム コ蛋 白に就 い て,ポ ー ラ

ログ ラ フ蛋 白 波 に よ り,そ の詳 細 を 検討 して見

'.た.

ポ ー ログ ラ フ蛋 白 波(以 下 「ポ蛋 白 波」 と略

す)は 最 初癌 疾 患 や 炎症 等 の時 に血 液 中 に ズル

フォ サ ル チ ル酸 で 落 ち ない 一種 の蛋 白体 が 増 加

して来 る事 か ら,此 れ を ポ蛋 白 波 に よ り検 査 し

て癌 疾 患 の診 断 の一助 と して利 用 さ れ た も の

'で,「 プ ラー ク」 癌 反応 と呼 ばれ て来 た が,最

,近 の研 究 に よれ ば此 の蛋 白波 を生 ず る物 質 は ム

コ蛋 白で あ る事 が大 体確 実 視 され る様 に なつ て

来 た.此 の血 清 ポ 蛋 白 波 と同様 に して,尿 ポ 蛋

伯 波 を測 定 した 場 合 は,そ の定 性 は 勿論,一 定

膿 度 間 に於 い ては 定 量 も可 能 で あ り,Kalous

'はポ ー ラ ログ ラ フを応 用 して そ の分 劃 の研 究 を

・行 つ て居 り,又Boyceの 分 劃 研 究報 告 が あ

・・る.

本 邦 に て も笹 井 等 に よ り,そ の基礎 実 験 及 び

.各種 疾 患 に於 け る尿 の ポ 蛋 白波 の追 求 が 行 わ 乳

'て来 て居 り,又 上 月,宮 沢 等 は 尿 石 症 患者 の尿

中 ム コ蛋 白 に 就 い て,昭 和33年 日本 泌 尿 器 科 学

会 総 会 に て報 告 して居 る.

私 は主 と して尿 石 症 患者 に就 い てポ 蛋 白波 を

測 定 し,そ の種 女 の場 合 に於 け る 尿 ム コ蛋 白量

を比 較 検討 し,更 に 同 時 に小 川膠 質 反 応 を も併

用 して尿 中膠 質 状 態 を調 べ た.又 少 数 例 な が ら

尿路 腫 瘍 に於 け る尿 ポ蛋 白波 に も特 異 な結 果 を

得 た ので 蕪 に報 告 す る.

街 両 側 腎 採 尿 を主 と した 本 実 験 で は,そ の濃

度 定 量 の み で,24時 間 全 尿 の定 量 は,全 尿 採 取

不 能 の 為 に行 わ な か つ た.

実 験 方 法

ポ蛋 白波の検査には二価 の コバル ト塩 と三価の コパ

ル ト塩 を使用す る方法 があ るが,尿 のポ蛋 白波1こ就い

て種 々試みた結果,三 価の コバル ト塩 を用い る事 とし

た.即 ち三価 の コパル ト塩であるLuteo塩(Hexa-

minecoba!ticchloride,Co(NH3)6cls),塩 化ア ソ

モソ,ア ソモ ニア水 のそれぞれの成分 を厳密 に一定 に

した溶液 を基礎試験液 とし,之 れに一定量の被検尿 を

加えて 「t:'一ラログラム」 を感度o.1μA/mm,抵 抗

3で 撮 る方法であ り,試 験液 の最終濃度は勿論一定 で

なければ定量的比較が 出来ない.尚 感度は 主 として

0.1μA/mmを 用いたが,被 検尿が高濃 度の為め測定

不能 となつた数例では,必 要 に慰 じてo.2μA/mmを

用いた.但 しo.04μA/mmの 感度を要す る程,低 濃

度 の尿は無かった.使 用 した試験液濃度は下記の組成

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で あ る.

0.001M.Luteo塩 十

INH40H混 合液

杉 山一尿 膠 質 の研 究(第 皿篇)

0。1M.NH4c12十 〇.8M.

本試験液5.Occに 被検 尿0.5ccを 加えて原法通

りにポi蛋白波を撮った.

得 られる蛋 白波 々形は第1及 び第H極 大波があ り,

原則 として第 皿極 大波の方が高い値を 示すが,時 には ・

両 波が融合 し,或 は第1極 大波 とコパル ト波 が融合 し

て単一の波を示す こともあ る.但 しム コ蛋白 の定量的

意義か らは波形 の如阿を問わず,そ の最高波高,即 ち

第E極 大波が重要 な意昧 を持 ち,波 形は他 の介在する

非 透折性 の膠質に より変形 され る様である.

波高の測定は コバル ト波 を生ずる部分 の高 さを基 準

として,そ の高 さを0と して測定 しmmで 表 わす,但

しコバル ト波 は試験液のみを ポーラログラフに撮っ た

場 合は明らかに判 るが,被 検尿を加 えた場含は コパル

ト波は低下 しやや不鮮明 となる為,試 験液 の コバル ト

波出現の電圧に注意す る必要 がある.以 上簡単に述べ

たが測定法の詳細は血清の濟液 反応 を調べ る方法 と全

く同様であるか ら文献を上 げるに止める.

先に述べ た如 くム コ蛋 白の定量 に関 しては最 高波高

の記載のみで 良いが,オ 篇 にては ムコ蛋白以外の尿 中

に介在する膠質の多 少を推定す る一助 ともなる為 に特

に,第1,第 皿極 大波共 にその波高を記載 した.

実 験 成 績

1)尿 ム コ蛋白の分離 とポ蛋白波検査(ム コ蛋 白の

性状 と定量実験)

ポ蛋白波 の定量標準曲線 を得 る為 の尿 ムコ蛋 白の抽

拙 は笹井の原法に依った,

即ち健康人尿800ccを 遠 心沈 澱1こよ り浮游物 を除

去 し,此 れをセロ ファ ソ膜 を用いて流水中で24時 間透

・折 し,更 に60℃ にて全量が80ccと なる迄濃縮 し

た.次 に純 エチルアル コール400ccを 加 えて,そ の

沈 澱物 を再度24時 聞流 水中で透折 し,再 び純 エチルア

ルコールを5倍 量加 えて沈殿せ しめた.此 の沈澱物を

冷凍乾燥 して灰 白色 の粉末約250mgを 得 た.捧 物

質は笹井 に依れば1.Tammの 分離 したものと一致

寸 るムコ蛋白であ るとされ,更 に種 々の検査を行 つて

:確認され て居 る.又 捧物 質を以 つてDonaggio反 応

も試み られ10mg/d1.以 上の濃度で有効な保護 作用

を示 したと述べ て居 る。

私 の得た此 の物質 の0.1%溶 液を作製 し,此 の溶液

の小川膠 質反応 に対す る態度は,次 の 如 く な つ て居

る.

541

Y1-2YR3YYR4R5一 レ(1の 濃度は

0,05%)

即ち0.0125%の 濃 蔓で も明 らかな保護作用を有 し,

0.00625%に て も保護 作用の存在する 享 を 示 して居

る.保 護作用消失 のはっ き りして居 るのは試験寳本数

5以 下,即 ちO.003%以 下である.

次 に本簗作1こよつて得 た粉末 によ りO,Ol%か ら0.1

%に 到 る間の10段 階の溶液 を作 り,此 の各0.5cc宛

を試験液5.Occに 加 え,尿 のポ蛋 白波を撮 るの と全

く同一躁 作lcよ り,感 度o.1μA/mmで 各濃度のポ蛋

白波を測定 し,第 皿極 大波を目標に とって,そ の各波

高 と濃度 の関係を見 ると第1表 の如 くであ り,此 れ よ

り標1隼曲線を作成すると第1図 の如 くなる.即 ち0.02

%よ りO.1%に 到る間の定 量が可能である.

又先に述 べた如 く各蛋 白波の融合及び変形は本調製

溶液 にては認め られず,原 尿の非 透折成分 を加えた場

合 に又現れる,而 し第 ∬極大波高 には変 化がない為 に

原尿 のままポ蛋 白波 を撮れば,そ の波形 の変動 よりム

コ蛋 白以 外の尿膠質 の多少が椎定 出来,更 に第H極 大

波に よつて ムコ蛋 白量 を知 る事 が出来 る(第1表 及び

第1図)

2)各 種膀胱 尿ポ蛋 白波に就いて

健 康人尿6例(表1)に 就 いてポ蛋 白波を測定する

と,極 大波平均彼高 は20.5mmで あ り,最 高 は第1

例 の28mln,最 低は第3例 の12mmで あった.此

の各尿に就ての小 川膠質反応は(表 皿)必 ず しも波高

と平行は して居ないが,此 れはム コ蛋 白以外に尿膠質

として介在する物 質及びそ の他の本反応陽 性物質 の影

響 の為 と考 えられ る.

次に尿石 症以 外の泌尿器疾患に於けるポ蛋 白波測定

を8例 に就いて施 行 した.但 し悪 匪鍾瘍 は別 に後述す

る 。そのポ蛋白波 々高は第 皿表に示す 如 くで,嚢 腫腎

2例 平均15mm,膀 胱炎2例 平均45mmで,尿 管

第1表 ポ蛋白漉濃度表

濃 度1鵬(mm)1徽 ・A/mm

Q.Ol%

0.02%

O.03%

O.04%

0.05%

0.06%

0.07%

O.08%

0.09%

0.1%

4

16

31

52

64

80

108

132

149

O.1

0.1

0.1

0.I

o.1

0.1

0。1

0.l

Q.1

0.1

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542 杉 山一尿 膠 質 の 研 究(第 旺篇)

第1図 ポ蛋白波標準曲線

40

↑3。

高20

0020030040050060070080090/Z一→濃 度`%)

痙 攣症 及 び 尿管 狭窄 兼 水 腎症 で は そ の病 変 存 在 側 が

32.5mm及 び46mmと 夫 々高 い値 を示 した が,健

側 は28mrn,8mmで あった.又 乳 康尿では1例 で

はあったが第1極 大波の方が第 皿極大波 よ り高い値 を

示 した,此 の様な波形 を見たのは本 例 のみである.腎 ・

下垂 では大体正常値 の範囲内であつた.以 上 より見 る

と炎症 の存在す る時は第1篇 に述べた小川反応 と同様

に ポ蛋白波 々高 も高 くな り,ム コ蛋 白の増 加 して居 る

のが認め られ,又 各腎採尿例 にて も炎 症存在側 に著賑

に高値 が認 め られ る.又 逆に嚢腫腎 にては正常尿 よ り

やや低い値 を示 した(第 皿表及び第 皿表)

更に尿石症患者(下 部尿石症4例,上 部尿 石 症9

例)に 就 いて,そ のポ蛋 白波を測定 したが,そ の各 々

第皿表 正 常 入 尿 値

1

2

3

4

5

6

ポ 蛋 白 波姓翻 簿皿臨 詳

新d12.。 』8,。 。.1

○野14.0

後 。1,.。

iO森

1io・O

酒d18.O

25.00.1

12.0

15.0

26.O

・ 山 レ,・17.・

0.1

0.1

O.1

P・1

小 川 反 応

・iyyRlyRiRRylR

1~21-

1~31-

11~31-

tI~2[-L

1~・卜

1

13~4脚 一

4~5

4~5

3~5

4~5

2~4

5→

6→ ・

6→

6→ 一

6→ ・

5→ 一

第皿表 他 疾 患 膀 胱 尿 値

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

姓ポ 蛋 白 波 小 川 反 応

i第1蜘 咽 髭/調 ・1YYRI・RiRR・!・

江○

○沢

二〇

○井

平○

○沢

北○

○田

辻○

○内

31.0

8.0

12.5

40.5

28.0

1LO

6.0

19,0

16,0

8.0

36.0

44.0

51.0

23.O

14.0

O.1

0.1

16.0

46.5

44.0

18.0

O.11-1

・・11

0.1

0.1

9・OlO・1

32.5

28.0

8.O

46.0

113.0

99.0

O.11~2

0.1ト1~2

o.■

0.1

0.1

0。1

3~4

3~4

5

5

6→

6→

採尿側

膀胱

ノ 〃

〃 〃

〃 〃

〃 〃

右側

左 〃

右 〃

左 〃

右 ノ

左 〃

膀胱

疾 息 名

乳 康 尿

嚢 腫 腎

膀 胱 炎

右 腎 下 垂

右 尿管痙攣症

左 尿 管 狭 窄

左 水 腎 症

腎 結 核

前立腺肥 大症

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杉 山 一尿 膠 質o研 究(第 豆篇)

の波高は第IV表 に於 げる如 くで,そ の殆ん ど大多数は

正常入波高 より明 らかに高直を示 して居 り(第2例 の

みが正常人尿 より低い値を示 したに過 ぎない),そ の

平均値は46.Ornmで あつた.特 に第3例 及び第13例

は膀胱炎症状が強 く,又 症例第7-9,10,11例 は腎

孟炎症状が著明であった.第2例 は右腎 の小 なる結石

であっ て,何 ら炎 庄々状を認 めなかった例であ る.

以上 よ り尿 ポ蛋 白波 々高は尿石 症に於 ても,そ の炎

症の存在の程度 に応 じて増 加す る様であ り,そ の他1こ

は部位的に尿石存在都が上部,或 は下都であるか と云

う様 な位置的差 位 に よる波 高の変 化は認 め得 なかつ

た.此 の蛋白波 々高 の増加,即 ち尿 ム コ蛋 白の増量は

直接尿石存在 の為 の影響 と考 えられ るものではな く,

543

第1篇1こ 於て述 べた と同様尿路 の炎症による為 の病的

産物(尿 路 の分 泌物 及び全身 の病的変 化に よる血中ム

コ蛋 白の増 加)の 影響 と考 え られ,此 の点に於 いては

尿膠質 の増 加 と同様 に平行 した考 え方で良いだろ うと

思われ る,

叉小 川反応 との関係を求 める と症例第7,9,10,

11例 に於 げる如 く,特 にポ蛋 白波 の増強せる場 合は比

較的平 行 して来 るのが認 め られ,又 症例第5,6,8例

でも比 狡的}こ平行 した値を示すが,炎 症々状がな く蛋

白波 の低い第2例 の 如 く平行 しない 場合 も生 じて来

る.即 ち尿 中ムコ蛋 白は炎症 によってその増減が現れ

る事が明 らかに認 め られ る(第W表)

第IV表 尿 石 症 膀 胱 尿 値

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

滝○

○島

梅0

○笠

伊○

○村

宮○

○井

平○

○谷

古C

○代

浅○

ポ 蛋 白 波

第1波i第ll波1μ 路 蓋

15.0

7.O

33.0

33。0

28.5

41.5

14.O

33.0

40。5

36.0

24.5

24.5

8.5

50.0

40.5

36.5

30.5

79.5

37.0

66.0

64,5

66.0

39.0

55.0

0.1

O.1

0.1

0.1

Q。1

O.1

0.1

0.1

o.1

0.1

0.1

0.1

0.1

小 川 反 応

・1… YRIRRYI・

1~3

1

1~3

1~2

1

1~3

1~2

1~2

4~5

3

4

2~5

4~5

4~6

2~4

5~6

3~5

3~5

6

7

5

7

6~7

6

7→

6→

6→

8→

6→

8→

8→

7→

尿 石 存 在 部

尿

右 尿 管

右 腎

右 腎左 尿 管

右腎,尿 管

尿

3)上 部 尿石症に於 け る両側 腎尿 のポ蛋 白波の比較

一側の腎又は尿管結石症,更 に両側腎叉は両側尿管

結石症,或 は此れ らの複合 した もの全 ての症 例17例 に

就いてポ蛋 白波を検 した.此 の中小川膠質反応 を険し

た13・例中11例lz,小 川反応に於いて両側差 に変fヒの少

ない症例である,

以上17例 中両側採尿 の可能な症例に就 いてはそ の各

分尿 に就 き,又 一側のみ採尿可能な症例に就 いては一

側尿 と膀胱尿 との間にその差 を比較 して見た.そ の結

果は第V表}こ 示す如 くである,

即ち一側のみ に尿石 の存在す る14例 中患側が健側 よ

り増 量を 示して居 るのは,症 例3,5,7,10,11,

12,14,15,16の9例 であ り,反 対 に患側の減少を認

め るものは,症 例2,4,9,13の4例iこ 過 ぎない.残

る症例1は 全 く両側差を認めなかつた例であ る,而 し

なが ら患側減少 と云 つても,夫 々の波高値は第13例 の

13.Ommを 除いて,他 の症例2,4,9は 何れも37

mm以 上の高値 を示 して居 り,正 常人尿 よりは高い

値 であ り,健 側が比較的に高い値 を示した為(採 尿時

出血そ の他 の因子 による)の 比較的 な減少である.叉

第1例 に於いて も30.5mmと 正常人尿 よ りは高値 を

示 して居 る.即 ち患側尿 のポ蛋 白波は症例13,14,17

の3例 を除いて,他 の14例(両 側に尿石を有す るもの

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544 杉 山一泉 膠 質 の 硬 究(第 丑篇)

を含めて)は 何れ も正常 人尿値 より高い値 を示 した.

叉症例1,2,3,9,10,13の6例 は小川反応に両側

差 を認 めなかつたが,ボ 蛋 白波にては症例3,10に 於

いて患側増 加を認め,症 例2,9,13で は健側 、こ比 し

て低い値 を示 して居 り,症 例1は ポ蛋 白波 も両側差iを

認 めなかった.又 小川反応 の両側差が1で ある所 の症

例4,5,7,15の4例 の中,症 例4,5,15の3

例 はポ蛋 白波及び小川反応 の増滅方向が一致 して居る

が,症 例7の みは小川反応で息側低下を示し,ポ 蛋白

波 では患側 の方が高値 を矛 して居 る.叉 症例11,12は

小川反応 にて夫 々3及 び2の 両側差を認 めたが,ポ 蛋

白波に も22mm以 上 の判然とした差が認め られ,そ

の増加側 も一致 して居 る.

両側に尿石 を有す る症例6,8,17に 於いては,症

例17を 除いて,何 れ も正常人値 より高値を示し,病 的

変化の強い側が他側 よ り高い値を示 して居 り,叉 小川

膠質反応 の態度 も略 々此れ と平行 して居 る.症 例17は

正 常 人範囲 の蛋白波 々高を示 した.

正常 人.同様,或 はそれ以 下と思われる蛋 白波高 を示

す尿石側尿 としては,症 例13,14,17の3例 が上げ ら

れ るが,第13例 は左腎結石再発例で,未 だ尿石 も小 さ

く,尿 所見 に殆ん ど病的変化 を認 めず,患 者が術後1

年 目の精密検査の為 に来院 した時に始めてその再 発を

発 見した例で,尿 石 による影響は局所的全身的共 に全

く認 め られず,第1篇 に述べ た如 ぎ尿 石発 生前の状態

に近い ものではないかと推定され る、第14例 も同様 に

尿所見に殆ん ど変化を認めず,第17例 は左側は殆ん ど

変化 を認めなかったが,右 側 に軽度の尿所.見の変 化を

認め た,

症例13,14及 び症例17の 左側は何れも尿に病的所見

が少 な く,ム コ蛋 白の減少よ りして尿石発生前 の状態

が考'えられるが,更 に症例17の 右側 に於ては軽度の病

的変化を認めたので,此 れに平 行す るムコ蛋 白の増 強

があ ると仮定 しても,此 の場 合は全 く炎症 のない正 常

入尿 と大差が ない事か ら,尿 石症患者尿に於 いては炎

症発生前 には,そ のム コ蛋白量 も第1篇 に述べた膠質

量 と同様,尿 石発生 初期又は発生前には正常値以下しこ

低 下 して居 るのではないか と考 えられ る.即 ち尿石 発

生 前は尿膠質,ム コ蛋 白共 こ正常値以下であ り,そ の

為 に保護作 用の低下が原因 となつて尿石 の発生を来 た

し,そ の尿石 の影響 によって尿路iこ炎症を発生する と

共 に,更 にその病的変化の強 くなるにつれて,ム コ蛋

白量は正常値以下 よ り→正常値へ,更 に正常値以上へ

と移行 して来 るのではないだ ろ うか,而 して此 のムコ

蛋 白の増 加によつて,結 石発生前 低下して居 た尿膠質

全体 としての量 も増加を見 る様 になるのでは ないか と

想像 される.

次 に健側 のポ蛋白波に就 いては,症 例10,13,14,

15の4例 は正常尿 に等 しいか或は それ以下の値 を示 し

て居 るが,此 れ らは何れも患側値 も正常入に近い値を

持つて居 り,患 側 の病的変化 も少な く,そ の為 に健側

にその影響が及んで居ない為であ ろ うと考 え られ る.

他 の症例1,2,3,4,5,7,9,11,12,16の10例 は

正 常人尿よ り高値を示 し,特 に症例2,3,4,7,9,

11,12の7例 は40mm以 上 の高値を示 して居 る.

此 の中特に高い症例3は 左 腎巨大結 石 で 膿 腫 腎をな

し,患 側の尿変 化も強 く,全 身的な代謝異状 を或 る程

度来 たして居 る為 にムコ蛋 白の排泄が患側腎のみなら

ず,健 側腎か らも多量 に排泄 され るのであろ うと考 え

られる.此 の事 は症例4,9,12に も認め られ るが,

此 の中症例9,12は 症例3と 同様 に全身的変調 よ りの

j血液中 のム コ蛋 白の増加 が,尿 ム コ蛋 白の増加 の原因

と考え られるが,症 例4の み は採尿時睡側に多量 の出

血を認 めた為 その影響 が大 ぎい のではないか と考 え

られる.以 上 の中症例11は 患側尿 と膀胱尿 なる為 に,

正確 な健側尿ではな く,そ の混入程 度も不明 の為,上

記 の何れ の範 囲に入 るものかは確定 出来 ない.

更 に健側 のノJ・川反応 に就ては,症 例2,3,4,5,

7,9,10,11,12,13,15共 に正 常人範囲内にあ

り,症 例2,7,12の3例 が正常人値 よ り や や 高

く,症 例1の みが特に高値を示すに過 ぎない.即 ちポ

蛋 白波に於け る程正常人値 との差 を明確には示して居

ない,此 の事は患側の場合 と同様に,ム ゴ蛋 白量が正

常値に帰 った時㌃こは,尿 石症患者の尿申膠質総量は,

減少したムコ蛋 白量だけ正常 入よ り低下す るのでは な

いか と考え られ る.

概してポ蛋 白波に於 ける方が,明 らかに正常 人値 に

比 して健側 も増加傾 向にあ り,此 れは先?,・1二述べ た様に

局所病変 と共に全 身的 な変調に よってム コ蛋 白が鋭敏

に動揺す るのではないか と考え る.即 ち採尿 時の局所

の出thlの尿中混 入等 の人為的 な条件を除外すれば,患

側 ではそ の局所 の炎症 による増加(尿 路 自身 よりす る

分泌物 の増加等)に 更 に加わ るに,此 れ らの疾患 の局

所 の刺戟 よ り生ずる全身的 の変化 て代謝異状 等)に よ

つ て血中 ムコ蛋 白の増加を棄 たし,此 れが尿 中に排泄

され る為 の増加 と云 う2つ の条件が加 わ り,健 側 では

後者 の条件のみ の影響 によつ て増加 して来 るので あろ

う.そ の為に健側 と患側 とを比較す ると患側 の方が 局

所的条件が加わるだけ高値を示すのであ り,叉 健側で

はその疾 患の全 身に及ぼす影響 の程度1こよつて正常尿

よ り増加 するのであ ろ う(第V蓑)

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杉 山一尿 膠 質 の 研 究(第ll篇)

4)上 部尿石症に於 け る尿石 除去後 の両側腎尿の蛋

白波の比較

腎又は尿管結石 症にて,術 後に採尿 し得 た ものは少

数例ではあるが,第VI表 に示した5例 であつて,何 れ

545

も尿石 除去後1ケ 月以内 の退院前 こ測定せるもので,

尿 中に炎症性の変 化は,健 側は勿論認 めなかつたが,

患側に於いて も又殆 ん ど確認す る程 の炎 症性 の変化は

認め なかつた.而 し第1篇1こ 記載 した様 な,尿 石除去

後長年月を経た患者 は残念 なが ら測定す る機会を得 な

第V表 上 部 尿 石 症 に 於 け る 分 離 尿 値

症!1

姓例

1

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

向○

○村

今○

○本:

岩○

○ 口

酒○

○谷

小○

○村

古○

○西

駒O

○池

ポ 蛋 白 波 小 川 反 応

第1波 蘭 波 鷹調 ・jyYRIyRiRRyl・11採 尿側

28.5

27.O

30.5

30.5

O.1

O.1

23.541.00.1

 35・039・QlO・1

70.573。5

74.5

25.3

31.5

23.5

52.O

91.0

37.0

67,5

36.5

61.5

0.1

0.1

0.1

0.1

O.1

0.1

1~7i一

1~7

1~2

1~3

1

1~4

3

4~5

15.O

52,5

33.8

40.6'

51.8

40.5

52.O

74.0

53.5

62.O

64.5

64.2

1-・1・

両 「

…L竺

・.1ji-・

0.1

O.1

0.1

0.1

1~2

1~2

1~ ・1一

1~21一

8 9→ 右側

8-9→ 左 側

4~61-i7一

・1

1~5

=「 ・-

67→

1~5

2~3

67-'

45→

56→

右 〃

左 〃

右 〃

4~5

3~5

4~5

3~5

3~5

3~5

3~6

3~5

左 〃

右 〃

左 〃

ヨ ・一 陸 〃・レ引 左〃

6

6→

6

7→

7→

6→

7

6~7

8→

右 〃

左 〃

右 〃

左 〃

右 〃

8→ 膀胱

尿 石 存 在 部

右 腎 孟

左 尿 管

37。0

40.O

28.5

2LO

52.0

67.2

3〕.5

21。5

・6。・t88・ ・

36・ ・i66・ ・

30.5

22.0

7.O

7。5

9.0

16.0

40.0

71.5

15.0

13.0

13.5

17.5

左 1署

右 尿 管

左 腎

右 腎(再 発)

左 腎

左 腎

O.11~2

O.111~2

0.1

0.1

0.1

O.1

0.2

0.2

1~3

1~3

1~3

1~2

1~2

1~3

・一・1一

3~5

0.1

O.1

4

1ヒ

1

4~5

4 5

4~718

3~516

3~5

5~7

6

8

2~41

2~34

右 尿 管

左 腎

・-1右 側

6→ 左側

右 腎,尿 管

O.1

0.1 1

6→

6→

膀胱

左側右 腎

9→ 右側

7→ 膀 胱

右 腎,尿 管

7-・ 右 側

9→ 左 〃

5→ 右 〃

5→ 左 〃

右 〃

一一 一.L

左 〃

左 腎,尿 管

左 腎(再 発)

左 腎

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546 杉 山一尿 膠 質 の 研 究(第 豆篇)

15滝 ○

13.0

30.0

160笠

25,0

16.00.1 1 2~4

34.00.1 1 3~5

48.00.1

34.00.1

56-1右 〃

67-1左 〃

左 腎

右 〃

左 ノ

右 腎

17 谷○

26.O 0.1 1 右 〃 右 腎 孟

左 腎13,024.5「

0.1「 左 〃

かった.以 上5例 に就いてボ蛋 白波 々高を健側尿 と患

側尿 とに就いて比較する と,症 例2,3,5に 於いては

患側が高値を示し,症 例1,4で は患側 の方が低値を

示 して居 る.而 しなが ら此 の患側値を正常尿値 と比 較

すると,症 例1,2,3,5の4例 は正常値 よ り高 い値

を示 して居 り,症 例4の みが正常値 より低い値を呈 し

て居 る.此 の高値を示す事は,後 に述べる健側値か ら

も考 え られ る如 く,尿 所.見としては結石 による影響 が

殆ん ど無 くなつた としても,尚 全身的に尿石症の,或

は手術 侵襲に よる為 の影響が残存して居て,そ の為 に

尿ム コ蛋 白の増 量 となって現れて来 て居 るのでは ない

だろ うか.此 の事は症例4に 於ては患側が著明に低下

して居 るが,本 例にては健側値が71mmと 高い値を

示 して居 り,患 腎の機能1荻復が完全でな く,そ の低下

があ る為に代 償的に健 腎よ りのム コ蛋 白の排 泄濃度が

高 まつて居 るのでは ないか と考 える.

次に患側 と健側 との増減傾 向を小川反応 と比較して

見る と,そ の増減方 向は症例1,4,5に 於 いては平行

して居 り,症 例2,3に ては小川反応 に両側差 を認め

得 ないが,症 例2で はポ蛋 白波も殆 ん ど差 が無 く,症

例3に 於い て約20mmの 差があ るのを認める.

叉 小川反応は患側,健 側共に,症 例4の 健側,症 例

5の 患側 の2例 がやや正 常入値 よ り高値 を示すが,他

は全べて正 常入値 の範 囲内であ る.

健側 のポ蛋 白波 々高を正 常人値 と比較す る と,全 症

例共に何れ も正 常入値 より高い値を呈 して居 るが,此

れは採尿時若干 の出血の影響は加わ るとして も,そ れ

よ りも先 に述べ た様な全身的 な病後 変動(恢 復期)の

為 の影響 か ら,ム コ蛋 白の排他増加 となつたのが主 原

因では ないか と考 え られ る.

術前,術 褒を比 鮫し得 るのは,症 例1,3の みであ

り,症 例1に 於 いては,術 後 は両側値共}こ術前に於 け

る膀胱尿値 よ りは低 下して居 る.叉 症例3で は患側 は

術前 よりも術後 の方が増加 して居 り,健 側では逆に術

前 よ り術 後の方が低下 して居 るのを認めた.

以上 よ り術前,術 優を通 じて全例を総括的に見た場

第VI表 尿 石 症 を 経 過 し た 分 離 尿 値

1

ポ 蛋 白 波 小 川 反 応姓

第1波 蘭 波1臨1・1YYRiyRIRRyl・ 繍

平○20.532.7

36.553.0

O.1

0.1

1~3

1~21

45→ 右 側

3~456→ 左 〃

過去に於ける尿石存在部

20栗

 3'・545・31・ ・111

26…7・ 。 ・・11・ ・一・

3 小○22.062.20.1 1卜

30.542.50.1 11一

右(表Wの9)

2~456一 レ 右 〃

3~456→ 左 〃左 尿 管

2~4 5→ 右 〃

2~4 5→ 左 〃

右 腎,尿 管(表Vの9)

40部6.010,00.11~2

11

3~4-5→ 右 ■■

33.071.00.11~3 4~6 7→ 左 〃右 尿 管

5 東○30.0 0.1 1~2 『 3~4 一 5→ 右 〃

左 尿 管24.0 5LO 0.1 1~2

一 3~6 一 7→ 左 〃1

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杉 山一隈 膠 質 の 研 究(第H篇)

・合,正 常値 よ りもムコ蛋白量は健側,慮 側の何れに も

増 量して居 る事は,先 瓢述べて来た如 く,局 所的な病

変,主 として炎症 存在 の影響嫁勿鍮必須条群 として考

沈 られ るが,そ れ と共 にその病変に よる全身的な代 謝

異常に よる所 の尿申ム 繋蛋 白俳泄量 の増加 とが,総 合

り的に加わつて増量 して来 るのであろ う.即 ち腸所的及

び 全身釣影響 の総合 として,既 の纏 の変動があるのか

と考えられる.此 の事 は次項 に述べ る悪性腫傷時の増

量 からも推察 され るので綜 なか ろ うか(簗 贋蓑)

5)泌 尿器系懸i生腫瘍に於け る尿ポ蛋白波の変化に

就いて

泌尿羅系悪蟹腫瘍患 者6例 に就 いて,そ の膀胱尿 ボ

蛋 白波を測定 し,併 せて前立 腺肥大症 憲者1例 をも測

定 した.そ の結果は第四表1こ示す如 くである.

郡ち6例 の平均 緯は約ll3mmで あ う,今 迄述べ

て来た駁石症,尿 路炎 窪の何れ よりも腐 い値を示して

居る.此 れは膀胱癌,前 立腺癌に於いては,搬 路に炎

症 が比鮫的高慶で あ り,そ の為の局所 的変化に よつて

竜,ム 鋸蛋 白の高濃変を来たすの嫁当然 と考 えられ る

闇が,而 し同程度 の膀胱炎 に於け る蛋 白波 々高 よりも更

に高い値を示して居 り,叉 睾丸腫瘍 にては尿路 の炎痙

臆 勿論無 く,尿 に も異常所見は認め られなかつ た.

鈍れらの事 漿 よう悪擁 瘍瓢ては,腫 瘍 による代謝

異常の為に ムex蛋 白が血中ld酋 加 する事 は既に知 られ

て農るが歩跳れが更{こ猷 中江撲羅されて来て蕎濃凌を

示すのであろ うと考 え られる.

本慶例中最 も濃度の蕩 い値な示した のは膀 胱癌及び

.膀胱季階 腫であって,後 者 の場 合も悪 性に変化 して居

た、既れ等 の場 会は尿中に壷蔽 の混在を 認め,更 に膀

胱炎症状 も加わって居る為に最高濃 度を呈 した のであ

ろ う.睾 丸腫瘍 の2例 平均は104.5mmで 第2位 を

占めるが,此 れは症例2が 除睾術後の後腹膜腔転移を

来たした,Embrlcnalcarzin◎maの 重症鯉であつ

た為に特 に高濃度を示し た も のであ つ た.撞 例1は

Seminomで あつ て,除 睾術前 の測定 値で88mmと

腫瘍中最低値を示 した.此 れ ら綜前述 せ る麹 く振 中に

病 的所見は殆ん ど認 めなかつた.

叉前立腺癌ほ2例 平均 工01mmで あ り,第3位 を

占める薪 になるが,睾 丸腫瘍 の症例2の 如 き特殊 な場

合 を除外すれば,当 然算2位 に上つて東るものであ ろ

う 叉此の2例 では尿中の病的所見は軽嘆の膀胱炎所

見を認めて居添.

即ち懸性腫膓に於けるポ蛋 霞波は尿 自体の病 的所見

に擦 うるに,そ の腫瘍 の悪雛縫,或 嫁その大 いさ等 に

よ り,腫 瘍 の活動性が高 く,全 身に及ぼす影響 の大 な

547

る もの程,ム コ蛋 白量が増加 して来 るのであ ろ う.

此れ らの事実は,悪 性掻瘍 別除術後1こ於て,そ の再

発.或 をま籔 移の残存等が,嚴 ぷ蛋 白渡に よつて,威 る

程度診断 し得 るのではないか と考え る.

最後に悪性踵蕩 では ないが,前 立膝肥大症 王例を検

索 したが,此 れ又悪性腫瘍の如 ぎ高濃度を示した.此

れは暴路 瓢蕩度 の炎症が欝職 こあっ た為に よるものと

考 えられ,片 村 の述べて履る血液に よるボ蛋 白波 の結

果 と総合す れば,i鍔 らかに良種か悪性iかの区携が鑓裏

得 るものである.又 良性鍾瘍 の一部 として前述 した嚢

腫 腎2例 も群せ て紀載したが,既 の場 合の蛋 白波は正

常 人値 よ り更に低 いものである(第 皿表)

第㎎表 腫 瘍 膀 胱 尿 値

1

2

3

4

5

6

7

8

9

猿C

○村

ポ 蛋 白 波

第1波醐 波1鑑温

78.O 88.0

疾 患 名

71.◎

吉040,0

○上

山○

○姫

86.0

55.Q

!21。 つ

135.O

坪○

○沢

二〇

ヱ3LO

98.0

53.0104,0

51.0

8.O

12.5

99,0

14,0

16.O

・・il

0.1

O.1

O.1

O.1

◎.孟

羅丸悪[生腫瘍

i鱗離鶴蹄胱乳騰腫様i癌

膀 胱 癌

}

O.1

O.1

0.1

葡 立 腺 癌

鶴 立 腺 癌

前立腺肥允症

嚢 腫 腎

嚢 腫 腎

考 按 並 び に 総 括

尿膠 質 の 成分 に 就 い ては既 に第1篇 に記 載 し

た が,そ の 申 で述 べ た様 にRelsner(1862年)

に よつ て ム コ蛋 白 が 尿 膠質 の 一 成分 と して報 告

され て居 る.而 して此 の ム コ蛋 白 の組 成 分 に就

い て は,赤 堀 に よれ ばi)ム チ ン,ii)ム コイ

Fの 二 種 に分 た れ,圭)は 擦 承分 解 に よ リグ ル

コサ ミンを 生 ず る ム コイ チ ン硫 酸 を 含 む も の

で,粘 性 の物 質 で あ つ て,唾 腺 及 び 消化 管 よ り

分 泌 せ られ,又 角膜 哨子 体 等 に 含 有 さ れ て居

り,蓋)は ガ ラ ク トサ ミン を 含む コン1ごロイチ

ン 硫 酸 を 含 む 物 質 で,体 中種 々 の部 分 に存 在 す

る が,特 に 腱,軟 骨,結 締纏 織,動 販 管等 に 多

く,主 と し て保 穫 作 用 を 営 む もの で あ る と され

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548 杉 山一尿 膠 質 の 研 究(第 皿篇)

て 居 る.叉KarlMeyer(1945年)は ヘ ク ソ

サ ミン を4%以 上 含 む 糖 蛋 白を ム コ蛋 白 と定 義

し,現 在 多 くの学 者 に よつ て認 め られ て居 る.

而 して此 の 成分 に就 い て は種 汝 の説 が あ り,一

定 して居 な いが,N一 ア セチ ール グ ル コサ ミン

を 含 む事 は確 実 の様 で あ る.

此 の ム コ蛋 白 を 含 有 す る物 質 とし て,唾 液 を

尿 中に 添 加 す る事 に よつ て,尿 中膠 質 の増 加 を

来 た す 事 は,坂 口(昭 和8年)が 金 ゾル 反応 を

利 用 し て述 べ て居 り,又 最 近 で は井上(昭 和30

年)が 金 ゾル 反 応 及 び赤 松 ・神 明法 に よつ て 明

らか に し て居 る.此 の膠 質 増 加 は共 に唾 液 中 の

ム コ蛋 白 に よる も ので あろ う と推 察 され る.

叉 ム コ蛋 白 そ の も の の研 究 に就 い て は,種 汝

あ り,血 液 ム コ蛋 白 の 分劃 に 就 い て もWinzler

(1949年)のMPI,2,3,の 分 劃等,種 汝 の研

究 が あ り,尿 ム コi蛋白 に 就 い て もBoyce(195

4年)が2分 劃 に分 ち,種 々 の 泌 尿 器疾 患 に就

い て も報 告 して居 り,叉Anderson(1955年)

はA1,2,3,の 分 劃 に分 け て居 るが,何 れ も そ

の構 成 汝分 が 複 雑 な為 に 各 人 各 様 で決 定 的 な説

は見 られ ない.又LTamm(1950年)はVirus

に よる赤 血 球 凝 集 反応 を抑 制 す る因子 と して,

入 尿 が 非 常 に強 力 で あ り,且 つ そ の本 態 は ム コ

蛋 白 で あ る と述 べ,上 月,宮 沢等 は昭 和33年 日

本泌 尿器 科 学 会 総 会 に て,ム コ蛋 白 は 腎結 石 で

は減 少 し,尿 管 結 石 で は 増 加 す る例 が 多 く.又

外 科 的侵 襲,発 熱,下 痢 等 に よつ て も増 加 し,

更 に ム コi蛋白 とヘキ ソサ ミン.ヘ キ ソー ス との

間 の関 係 は不 定 で あ る と報 告 して居 る.

ポ ー ラ ログ ラ フ応 用 に よる ム コ蛋 白 の研 究

は,血 液 中 に ズ ル フォサ ル チ ル酸 で落 ち な い一

種 の蛋 白体 が,悪 性 腫 瘍 の時 に増 強 す る 事 か

ら,血 液 を ポ蛋 白波 に よ り検 した場 合,悪 性 腫

瘍 患者 に特 異 な波 形,波 高 を 呈 し,更 に そ の血

液 の変 性 を行 つた 場 合 の ポ蛋 白 波 女高 との比 に

ょっ て,悪 性 腫 瘍 に特 有 な数 値 を 示す 事 か ら,

診 断 学 上 重 要 な発 見 と して 「プ ラー ク癌 反応 」

と して注 目 され て来 た(Bridicka1939年)

此 の蛋 白波 の本 体 をな す 物質 が ム コ蛋 白 で あ る

事 が大 体 確 実 とな つ て来 た(Willzler1948年)

而 して現 在 で は 此 の反 応 は癌 の み に特 有 な も の

でなく,他 の炎症性疾患,特 に結核等の慢性重二

症炎症に於いても同様に増加する事が判明し,

叉その酒液反応は血中ム コ蛋白の量的関係に比=

例する事が次第に明らかになつて来た.

更に笹井等(1952年)は 尿中ムコ蛋白をポ蛋

白波によつて測定を試み,尿 ポ蛋白波起成分質'

に就いて,か な り詳細な研究を報告 して居 り,

此の波高によつて大体確実にムコ蛋白の定量が

可能 となり,更 にその波形によつて他の尿膠賢

の多少を知 り得る迄になつた.又 内科的疾患に

就いての測定結果では結核性炎症,悪 性腫瘍,

慢性腎炎,溶 血性黄疽等にかなり高い値を示す'

事を報告 し,更 に血液ポ蛋白波 との関係に就い

て迄論及して居る.又Kalous(1955年)は ム.

コ蛋白の各分劃に就いて,ボ ーラログラフィー

を利用しての研究を報告 して居 り.Rossi(195・

4年)はX線,紫 外線,寒 冷,高 温等 の血清ボ

ーラログラフィーの波高に対する影響を論 じて

居る.

私は尿ムコ蛋白が尿膠質の一成分 をな し,そ'

の量的関係は尿膠質量に重要な関係があり,叉

更にムコ蛋白の変動は悪性腫瘍,炎 症等の個体.

の病的状態に於ける蛋白体の代謝上重要な要素ー

と考えられるので,尿 石症を主としてその夫汝

の病形に就き,叉 泌尿器系悪性腫瘍,炎 症等に

就いて,そ の各女の尿蛋白波を測定 し,そ の変

動 を追求して見た.尿 ムコ蛋 白は血清ムコ蛋白

に由来するもの,尿 路 の分泌物に由来するもの

が含まれる事は当然であり,そ の変動は血清に

於けるより更に複雑であると考えられる.

先ずムコ蛋白の構成k分 と考えられ るN-A--

cetylgrucosamin及 びコン ドロイチン硫酸に一

就いてポ蛋白波を検して見たが,そ の何れにも

特有な蛋白波の出現は全 く認 めなかつた.

今回検査 した主なる疾患別のポ蛋白波・セ高 の

平均値は第V皿表に示す如 くであつて,尿 石症患、

者に於いては,そ の平均値は明 らかに正常入尿

に於ける値 よりも増加 して居 り,小 川膠質反応,

では個六の症例は略女正常人範囲内にある事が・

多いが,ポ 蛋白波に於いては個 々の例に於いて=

も正常入尿より高い値を示すものが多かつた.

中でも特に高度に増加した症例は全て膀胱炎,.

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杉1山一眼 膠 質 の 研 究(第 皿篇)

叉は腎孟炎症状が強い症例であつた.即 ち尿ポ

蛋白波の増強は炎症の程憂に強 く左右される様

であり,炎 症の全 く認められない症例では正常

値以下を示した場 合もある,此 の事は尿石症に

於ける両側分離尿に就いても,そ の患側平均値

は44.5mmで あり,更 に両側結石症の分離尿

をも合せた平均値は46.2mmと なり,大 体膀

胱尿値 と同様であり,分 離尿に於いて個 汝の例

を検討 して見ても,そ の値が殆んど正常人値以

上であり,又 その高度の例程炎症 々状も高度と

云う様に,殆 んどの例に於いてポ蛋白波 と炎症

女状とは平行 して居 る.更 に低下を見た例では

尿石発生後 日時の経過の少ないと思われるもの

で,炎 症等の病的状態は全 くな く,単 に腎内に

小なる結石陰影を レン トゲン的に発見 しただけ

の例である.此 の様な場合は尿石発生前の状態

と老えられ,此 れから考えても第1篇 に記載 し

た如 く,尿 膠質と同様の経過を追い,初 めは正

常値以下のムコ蛋白量が結石発生,次 いで炎症

更に症状増悪 と云 う経過を経て強加 して来 るの

ではないだろうか.

第田表 疾患別ポ蛋白波平均値

疾 患 別 隊 数隅 轟 備 考

1

2

3

4

5

6

正 常 人 尿

膀 胱 炎

尿 石 症(膀 胱尿)

尿 石 症(患 側尿)

尿石症(両 側分尿)

尿 石 症(健 側尿)

尿石除去後(患 側)

尿石除去後(健 側)

悪 性 腫 瘍

嚢 腫 腎

6例

2〃

13〃

13〃

5側

12例

20.5

45。3

45.0

44.5

50.6

43.4

46.2

4-5の 平 均

感 度0.2の1側は除 く

症 例4を 除

くと43.2

症 例4を 除

くと42.7

549

7

8

9

10

5ノ

5〃

6〃

2〃

4Q.6

48.4

113.0

15.0

次に採尿側の健側を検討 して見ると,そ の平

均値は43.3mmと 尿石存在側よりはやや低下

を見 るが,小 川反応に於ける程著明な差は認め

られない.而 も採尿時出血等を見て,そ の為の

増加と考えられる症例は少な く,叉 少数例の正

常人尿値 と略々等 しい値を示す症例にては,そ

の患側に於ける変化も少なくなつて居 り,炎 症

汝状も少なかつた.此 れらから推定すると尿石

による影響,特 にその部分に於ける局所的炎症

(病的状態)か ら全身的に影響が及ぼされて,

その為に蛋白の代謝異常を来たして血液中のム

コ蛋白量が増加 し,此 れが健腎 よりも排泄され

る為 と考えられる.即 ち小川反応にては局所的

の影響が大いに考えられたが,ム コ蛋白に関 し

ては此の局所的な炎症性変化の患側尿に及ぼす

影響 と共に,全 身的に病変 の影響が波及して血

液中にムコ蛋白が増加 し,そ の為尿中に影響を

及ぼ して来ると云 う全身的な因子が,局 所的因

子 と同様に重要な要素を占めるのであろうと考

える.

今回は不幸にして尿石除去後年月を経た場合

は測定し得なかつたが,術 後1ケ 月以内の症例

に就いては,患 側平均40.6mm,健 側平均48・4

mmと な り,此 の場合は同項に述べた如 く特殊

な症例(第VI表 症例4)を 含む為で,此 れを除

外すればその平均値は患側48・2mm健 側42・7

mmと なり,や はり健側に軽度の低下を見るが

殆んど両者の差は認 め難 くなつて来る.而 も平

均値に於ては術前と術後の差も有意義なものは

認 められず,個 女の 症例の特異なものを除け

ば,全 症例の殆んどが此 の平均値の前後の値を

示す様であり,此 れは同項にも述べた様に術後

日数の経過が少なく,退 院前に採尿した例であ

る事 より考えても尿石存在,局 所炎症等の或は

又手術侵襲,恢 復期と云つた様な局所的,全 身

的な影響によつてムコ蛋白の排泄が増加して居

るのであろう.此 の事から正常人尿に比して小

川反応に余り変化がないにもかかわらず,ム コ

蛋白のみの増強が見られる事は,他 の尿膠質が

極度に正常人値より減少して居る事が考えられ

る.即 ちムコ蛋白が病的状態の消失と共に減少

した場合は,尿 石患者の尿膠質はその量だけ正

常入尿より低下するであろう事が推察され,此

の尿膠質の低下時が逆に尿石発生前の状態では

なかろうかと考えられ る.此 の事は第1篇 に述

べた如 く尿石症を経過 し,多 年月を経た患者尿

の小川反応が低下して居 る事からも考えられる

訳である.

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550 杉 山一尿 膠 質 の 研 究(第 ∬篇)

以上 より尿石発生前はムコ蛋白量,他 の尿膠

質量共に低下して居 り,此 れが尿石発生の原因

となり,更 に炎症発生 となつて初めて局所的な

炎症性物質,出 血等(尿 路に由来するもの)の

影響の為にムコ蛋白は患側に増加 し,そ の為膠

質反応も高まり,次 いでその病変が全身的に影

響を及ぼ して,発 熱その他腎機能の低下等によ

る全身的な病的状態を来 し,蛋 白代謝異常等が

起 り,血 中ムコ蛋白の増加を見て,更 に健側,

患側共に増加を見 る(血 清ムコ蛋白に由来する

もの)様 になるのであろう 次いで尿石除去 と

共に,先 ず局所的な患側の影響のみは除かれて

来 るが,全 身的な影響は此れ より更に遅れて発

現し,逆 に正常値以下の膠質量になるのであろ

う.即 ち局所変化があつても,全 身的の影響 の

少ない時には,患 側のみの増強に終 るのではな

いかと考えられる.上 月等が述べた如 く腎結石

に少なく,尿 管結石に多い事 も,腎 に結石存在

する時はその尿石が小さければ炎症 も比較的少

ない場合が多 く,尿 管 の場合は尿の通過障碍を

起 して炎症を来たし易い為に考え得られる結果

ではなかろうか.

次に尿路炎症に就いては少数例ではあるが,

膀胱炎にては尿石症 と同様の増加を 示 し て居

り,此 れから見てもムコ蛋白の増加は結石自体

によるものでなく.炎 症そのものに起因するも

のであろう.而 しながら全身的影響の比較的大

きな高度の腎結核症例では113mmを 記録 し

た.此 の場合の尿所見は前記の膀胱炎に於ける

ものと大差なく,結 核による全身的変調の影響

が尿路の局所的なものに更に加わつた為であろ

うと考える.

最後に全身的な影響によるムコ蛋 白 の増 加

は,ポ 蛋白波研究の初期 より注 目された悪性腫

瘍に特に変化が認められる様であり,第1篇 に

記載 した如 く小川反応に於いても特別の増強を

認めて居るが,そ のポ蛋白波の実測値は既に述

べた如 く,平 均値は113mmで あり,尿 路に

かなりの炎症の存在する膀胱癌に於いても,同

程度の膀胱炎のみの場合よりも遙かに高い値を

示 して居る.即 ち此の高値に就いては前述せる

様に,局 所的変化に加 うるに全身的な変化,特

に悪性腫瘍に於いては特異なi蛋白代謝が行われ

ると考えられる為に,此 れらの条件が加あうて

此の様な高値を示すのであろう.特 に高値を示

した一例 に於いては後腹膜腔の転移が高度で,

病変が特に進行 して居たものである.即 ち病変

が高度な程,転 移の広範な程,そ の程度は高ま

る様であり,術 前術後の計測によつて,そ の予

後の状態が幾分かでも知 り得 られる様である.

本論丈に於いては極 く少数例を以つて,そ の一

般的傾向を調べたが,悪 性腫瘍 とムコ蛋白は極

めて重要な因果関係があると思われる.そ の詳

細に就いては改めて別の機会に報告する.

又 ムコ蛋白は副腎皮質ホルモンと もか な り

の関係があるのではないかと思われ る.即 ち

Cushing氏 病に於いて,そ の副腎別除前後に

於ける尿ポ蛋白波汝高に有意義 の差を認め,尿

膠質の変動 も此れ と大体平行する様である.此

の詳細に関しては第W篇 に述べる.`

結 語

尿膠質の一成分たるムコ蛋白をポーラログラ

フ蛋白波により,尿 石症を主 として泌尿器系各

疾患に就いて検索したが,そ の結果は次の如 く

である.

1)尿 中に含まれる本物質は0.00625%の 濃

度にても,小 川膠質反応にて明らかに保護作用

の存在する事を認 める.

2)尿 石症に於いては,そ の尿中濃度は正常

人尿よりも明らかに高値を示す ものが大部分を

占めるが,そ の何れもが同時に存在する炎症の

程度に左右される様で,尿 石自体の影響は少な

い様に思われる.

3)上 部尿石症に於ける健側尿及び患側尿の

比較に於ては,後 者の方がやや高い値を示す も

のが多いが,此 れ又同時に存在する炎症の為 と

考えられ(尿 跨に起因するもの),叉 健側値を

正常尿に比較 した場合もかな りの増加を認める

所から,尿 石発生 よ り炎症 発生と なり,そ の

腎,尿 管病変による全身的影響から血液 中のム

コ蛋白の増加を来たし,そ の為に健側 よりもか

な り大量のムコ蛋白の排泄が行なわれる為に,

健側値 もかなりの増量を示すのであろうと考え

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杉 山一尿 膠 質 の 研 究(第 皿篇)

られる.更 にムコ蛋白の増量を認め る症 例 で

も,大 部分の尿小川反応が正常範囲内である所

から,此 の尿ムコ蛋白が尿石除去 と共に正常値

に帰つた時の膠質濃度は正常人値 より更に低い

値を示すであろうと推察し得る.

4)尿 石症 を経過せる場合に於いても,日 時

の経過の少ない場合は,尿 石による局所的変化

は消失しても,尚 全身的な状態が正常に復さな

い為に患側,健 側値共に増量して居 るのだと考

えられる.

5)逆 に尿石発生後間 もないと思われる症例

に於いては,ム コ蛋白量は正常人値 より更に低

下して居 り,此 の状態が尿石発生前の状態では

ないかと思推出来 る.

6)悪 性腫瘍に於いては同時に存在する炎症

の程度から推定 されるムコ蛋白量より,遙 かに

高濃度の尿中排泄を認 めるが,此 れは尿路の炎

症に加うるに,更 にそれ以上に全身的な,或 は

腫瘍自体 の蛋白代謝の変調により(血 清 ムコ蛋

白に由来するもの)増 加するものと考える.叉

551

重症腎結核の如 く患部のみならず,全 身的に多

大の影響を与える疾患では,同 様に局所炎症所

見から想像されるよりも大量のムコ蛋白の排泄

が行われて居る様である.

以上を総括するに尿中ムコ蛋白量の増減は2

つの要素が考えられる.1)局 所的病変に左右

される事は勿論であるが(尿 路 よりの分泌物に

起因するもの),更 に2)そ の病変により惹起

される全身的の変化の影響をも強 く受けて(血

清ムコ蛋白に起因するもの)増 減 す る様 であ

る.

(本論文の要旨は昭和31年日本泌尿器科学会中部地

方会,及 び昭和32年日本泌尿器科学会総会}こ於いて発

表した)

(本研究は交部省科学研究費に負う所赴なり記して

謝意を表する)

(最後に御指導並びに御校閲を賜った稲田教授に深

謝する)

文献 は最終篇に譲る.

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