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領域代表者からのメッセージ 研究概要紹介 ニュース ▲前野悦輝氏、仁科記念賞受賞▽トポロジカル絶縁体の新物質発見 トピックス ▼「トポロジカル絶縁体」って何がトポロジーなの?▼ S r T i O 3 電場誘起超伝導体 △トポロジカル超伝導体の物理 若手相互滞在プログラム報告 新メンバー紹介 2010 年研究会報告 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(平成 22 年度 -26 年度) 対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象 TOPOLOGICAL QUANTUM PHENOMENA IN CONDENSED MATTER WITH BROKEN SYMMETRIES February 2011 NEWSLETTER NEWSLETTER No. 1 ニュースレター / 第 1 号

TOPOLOGICAL QUANTUM PHENOMENA IN …ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/.../pdf/tqp_newsletter_no1.pdfNEWSLETTER No.1 3 巻頭言 領域代表者からのメッセージ 4 研究概要の紹介

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領域代表者からのメッセージ

研究概要紹介

ニュース

  ▲前野悦輝氏、仁科記念賞受賞▽トポロジカル絶縁体の新物質発見

トピックス

  ▼「トポロジカル絶縁体」って何がトポロジーなの?▼ SrTiO3 電場誘起超伝導体

  △トポロジカル超伝導体の物理

若手相互滞在プログラム報告

新メンバー紹介

2010 年研究会報告

文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究(平成 22 年度 -26 年度)

対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象TOPOLOGICAL QUANTUM PHENOMENA IN CONDENSED MATTER WITH BROKEN SYMMETRIES

February 2011

NEWSLETTER NEWSLETTER No. 1

ニュースレター / 第 1 号

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文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究

「対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象」

NEWSLETTER No.1

3 巻 頭 言

領域代表者からのメッセージ

4 研究概要の紹介

計画研究班 A01、B01、C01、D01

8 領域メンバー紹介

9 ニュース

前野悦輝氏仁科記念賞受賞!

トポロジカル絶縁体の新物質発見(安藤陽一)

11 トピックス

「トポロジカル絶縁体」って何がトポロジーなの?(安藤陽一)

SrTiO3 電場誘起超伝導体(上野和紀)

トポロジカル超伝導体の物理(佐藤昌利)

19 若手相互滞在プログラム報告

上野和紀(東北大学)

江口 学(京都大学)

21 新規採用研究者の紹介

俣野和明(岡山大学)

松尾繁政(広島大学)

23 2 0 1 0 年研究会報告

第1回~4回集中連携研究会、総括班会議、第1回領域研究会

29 今後の会議のお知らせ

編 集後記

contents

 

目 次

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トポロジーとは「連続的に変形することで互い

に共通とみなせるかどうかを分類する概念・

手法」です。このような数学的な概念を現代物理

学の新現象に広く導入することで、現象の理解と

整理を深めるだけでなく、異なる物質系での一見

全く異なる現象を結び付けて現代物理学のさらな

る展開を図るべく、本新学術領域研究が発足しま

した。この領域の研究では連続的に変形する形と

は、量子力学の波動関数のもつ対称性や位相など

に基づく「形」です。

 トポロジカルに特徴づけられる量子現象として

は、これまでに超伝導体・超流動体の渦量子化、

Aharonov-Bohm 効果に始まり、量子ホール効果、

分数量子ホール効果、スピンホール効果などがあ

げられます。このようにトポロジーが物理の理解

に根源的役割を果たす量子現象が、近年の物性物

理学におけるひとつのフロンティアを拓いてきま

した。この潮流が最近大きな展開を見せています。

半導体や常伝導金属に加えて、超伝導体・超流動体・

絶縁体の界面での現象にもトポロジカル量子現象

として、互いに相補的に分類付けられるものがあ

ると認識されるようになり、これらを実証しよう

とする機運が盛り上がっています。

超伝導は電子の超流動状態ですから、超流動ヘ

リウムや冷却原子気体と対応づけて研究する

ことの有効性は明らかです。しかしこれまで世界

的に見ても特に実験グループが同一組織で強く連

携して研究を進めることはまれでした。また電子

のスピンと軌道運動の結合の強い物質系で、なお

かつ空間反転の対称性の破れた舞台では、スピン

三重項超伝導体やトポロジカル絶縁体といった新

しい物質状態が注目されていますが、実はこれら

一見全く異なる現象の間にも対応関係が示唆され

ています。

 本領域メンバーが世界を先導して、これら物質

系の違いを超えた統合的な研究を推進するという

強い意気込みで、5 年後には「トポロジカル量子

物理学」という新たな認識が生まれ育っているこ

とを目指して研究を進めてまいります。

○●理念と目的●●

本新学術領域「対称性の破れた凝縮系における

トポロジカル量子現象」(H22-H26 年度)の

目的は、超ろ伝導体、超流動体、絶縁体などの量

子凝縮系において、様々な対称性の破れに基づく

トポロジカルに特徴付けられる新奇な現象を分野

横断的に研究することで、「トポロジカル量子現象」

としての普遍概念を創出し、「トポロジカル量子物

理学」という新たな学術領域の形成を目指すこと

にあります。

 その研究対象は、凝縮体のかたまり「バルク」

そのものの対称性破れに物理学の重要課題を含む

超伝導体や超流動体、そしてトポロジカルな新奇

現象が発現する舞台として「エッジ」と名付けら

れるそれらの表面・界面です。「バルク」で創発す

る対称性の破れた量子現象に対する徹底的な理解

は、「エッジ」での量子現象の本質をトポロジーの

観点から理解するための第一ステップといえます。

 本領域では当該の各分野で世界をリードする研

究者を結集し、異分野連携を格段と強化すること

でトポロジカル量子現象の新学術分野を一気に拡

大します。これらのトポロジカル量子現象の物理

は、純粋にアカデミックな研究対象としての価値

に留まらず、スピントロニクスや量子コンピュー

タなど、将来の高度な応用科学にとっても重要な

基礎となることが期待されます。

 本領域で対象にする主な物質系は、(A)時間反転

対称性の破れた超伝導体、(B)スピン三重項超流動

体、(C)空間反転対称性の破れた超伝導体・絶縁体

で、それらに太い横糸を通す形で (D)トポロジカ

ル凝縮体の量子現象の理論を展開します。このた

めに計画研究 A01,B01,C01,D01 の各班を設ける

とともに、公募研究によって研究の一層の進展を

目指します。

領域代表者からのメッセージ

「トポロジカル量子物理学」の理解に向かって

前野悦輝/京都大学大学院理学研究科

inauguration address

巻 頭 言

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 本研究計画「時間反転対称性を破る超伝導体の新奇界面現象」

の目的は、電子のスピンや軌道角運動量の活性によって時間反

転対称性が破れた超伝導体のバルク物性の理解を極め、その界

面や表面で顕在化する新奇な量子現象を開拓することである。

具体的には研究代表者らが発見し、スピン三重項超伝導体の実

験的証拠の揃ったルテニウム酸化物を舞台とする研究、また従

来型の超伝導体と強磁性体とのハイブリッド構造体を舞台とす

る研究を展開する。

 前者では Sr2RuO4 自体の時間反転対称性の破れた「カイラル

超伝導状態」を活用し、微細加工技術を駆使して、常伝導金属

や通常の超伝導体との接合界面、常磁性や強磁性金属との共晶

界面、微小結晶表面などに現れるスピン三重項超伝導特有の現

象を探求する。また後者では、強磁性半導体を用いて、微細加

工技術や強磁性の高制御性を生かし、強磁性体中に誘起される

超伝導位相の空間変調や、強磁性体の時間反転対称性の破れを

反映した超伝導状態を探索する。また、これらに共通するスピ

ン三重項電子対の界面現象を理論的に解析する。連携研究者は、

微細加工の技術、超伝導 / 強磁性接合の理論、核磁気共鳴(NMR)

による研究をとおして計画研究に寄与する。

 これらの新奇現象の多くは、トポロジカルに特徴づけられた

状態に起因し、本領域の研究者がその学理構築に寄与してきた、

スピン超流動、奇周波数ペアリング、カイラルエッジ流などの

新概念(D01)と深く関わっている。これらの概念は、多様な

系の多彩な現象にも共通するため、電荷をもたないスピン三重

項超流体(B01 班)、空間の反転対称性を破る系での超伝導(C01

班)との研究連携も密接に行ない、トポロジカル量子現象の新

学術領域構築に寄与する。

まえの・よしてる

1957 年京都市出身。79 年京都大学理学部卒業、84 年カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院博士課程修了。京都大学国際融合創造センター教授などを経て現職。88 年- 89年には、スイス連邦 IBM チューリッヒ研究所においてノーベル受賞者ベルノルド博士のもとで高温超伝導を研究。低温物理学を専門とし、ルテニウム酸化物における超伝導の発見とスピン三重項状態の研究など、新たな研究分野の発展に取り組む。

計画研究A01

時間反転対称性を破る超伝導体の新奇界面現象

前野悦輝/京都大学大学院理学研究科教授

research A01

研 究 概 要

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 本研究計画「スピン三重項超流動体の新奇界面現象」の目的

は、内部自由度の大きなスピン三重項p 波超流動 3He の表面や

界面における新奇量子現象の探求およびその実証にある。

 まず超流動 3He-A 相において、主に回転冷凍機中での NMR

により、細い円筒容器内の折り目構造(テクスチャ)の決定と

その応答から、長年の未解決課題である固有軌道角運動量有無

の決着を図る。同時にその理論的意義を考察し、トポロジカル

量子現象としての関連性を明らかにする。また、超流動 3He-B

相において、横波超音波分光法によって、マヨラナ型励起であ

ることを示した界面アンドレーエフ束縛状態の特異な物性を、

実験的及び理論的に明らかにする。さらに、狭い隙間を持つ平

行平板内部空間での磁気相図の決定とエッジ流の探索を行う。

 制限空間内での超流動 3He の表面状態は、A01 班のカイラル

超伝導のエッジ状態、C01 班の空間反転対称性の破れた超伝導

体やトポロジカル絶縁体の表面状態と類似した数理構造を持つ

ことが知られる。したがって、これらの班との連携およびトポ

ロジカル凝縮体としての理論展開を含めて研究を推進する。さ

らに D01 班で予言された半整数量子渦や、特異渦の芯に局在

すると予想されるマヨラナ型準粒子、またエアロジェル中での

奇周波数超流動状態を、相補的な実験方法である核磁気共鳴

(NMR)や音波を用いて検証する。

いしかわ・おさむ

1957 年山梨県生まれ。80 年京都大学理学部卒業、86 年京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了。86 年大阪市立大学理学部に助手として採用され、2009 年から現職。1996 年 ~1999 年にはアメリカ・カリフォルニア大学バークレー校でパッカード教授と回転する超流動 3He の共同研究を行う。超低温物理学を専門として主にヘリウム系の超流動などを研究してきたが、電子系(超伝導)との研究の携進を進め、トポロジカル凝縮現象の理解を深めたい。

計画研究B01

スピン三重項超流動体の新奇界面現象

石川修六 / 大阪市立大学大学院理学研究科教授

research B01研 究 概 要

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計画研究C01

空間反転対称性を破る電子流体の新奇現象

鄭 国慶/岡山大学大学院自然科学研究科教授

 本研究計画「空間反転対称性を破る電子流体の新奇現象」の

目的は、空間反転対称性の破れと強いスピン軌道相互作用(SOI)

が織り成す新奇なトポロジカル量子現象を、(1) 空間反転対称

性の破れた(Noncentrosymmetric,NCS)超伝導体、(2) 電場

誘起表面超伝導体、(3) トポロジカル絶縁体、において探究す

ることである。研究のアプローチとしては、連続的に SOI を制

御した NCS 超伝導体や、SOI の異なる電場誘起表面超伝導体、

及び高品質なトポロジカル絶縁体を作製し、基礎物性を明らか

にしながら新奇現象を開拓する。新規物質の詳細を明らかにす

るため、量子振動などの実験法にバンド計算を組み合わせて

フェルミ面を決定するなど、実験と理論が強い連携を図りなが

ら、3 つの物質系に共通する普遍的な概念の創出を目指す。

 さらに「界面」に注目し、A01班、B01班との連携を深めて、

スピン三重項超伝導体を含む接合における特異な量子状態の実

証や、トポロジカル絶縁体と強磁性体・超伝導体との接合で予

想されるマヨラナ型準粒子などエキゾチックな素励起の実証を

行う。

てい・こくけい

1962 年中国福建省生まれ。1985 年神戸大学理学部卒業、1990 年大阪大学基礎工学研究科博士課程修了。大阪大学助手、助教授をへて、2004年より岡山大学教授。核磁気共鳴(NMR)法を用いて、超伝導や磁性の研究を進めてきた。特に、低温、高圧、強磁場(パルス磁場を含む)などの極限環境下測定技術の開発に力を注ぎ、超伝導薄膜や多結晶バルク試料の作製も行ってきた。銅酸化物高温超伝導、鉄ヒ素系高温超伝導、巨大磁気抵抗効果、コバルト酸化物超伝導体、重い電子系超伝導体、空間反転対称性の破れた超伝導体などの研究を楽しんできた。

research C01

   

研 究 概 要

Li2Pt3B NCS 超伝導体

表面スピン流

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計画研究D01

トポロジカル凝縮系の理論

田仲由喜夫/名古屋大学大学院工学研究科准教授

 本計画研究「トポロジカル凝縮系の理論」の目的は、非自明な

エッジ(表面・界面)状態を持つ、超伝導・超流動系、ボーズ・

アインシュタイン凝縮体、トポロジカル絶縁体の研究を行うこと

である。さらに、これらの異なった物質系に共通した普遍的な物

理を探求し、トポロジカル量子現象に関する凝縮系物理学の新概

念の構築を目指すことである。本理論班の研究対象は、幅広い物

質群における多様なトポロジカル物理現象である。以下のような

テーマを計画している。

 • 時間反転(空間反転)対称性の破れた超伝導体のエッジ状態

 の研究・量子現象の解明

 • 新奇なクーパー対(奇周波数クーパー対)の理論

 • トポロジカル絶縁体の電子構造、エッジ ( 表面)状態の物性

 の解明

 • トポロジカル絶縁体接合系における新奇現象の探求

 • 内部(スピン)自由度を持ったボーズ・アインシュタイン凝

 縮体(BEC) におけるトポロジカル励起の研究

 •BEC における非可換量子渦のダイナミックスとその物性の研

 究

 • 超流動体における非自明な量子渦の研究

 • トポロジカル量子現象に内在する普遍的概念、数理構造の解

 明

 本理論班は、実験を主体とする他班との研究交流を密接に行い

ながら、新物理概念構築の中心を担うことにより本新学術領域の

飛躍的発展を目指す。

research D01

たなか・ゆきお

1962 年生まれ。1990 年東京大学大学院理学系研究科、物理学専攻博士課程修了、同年新潟大学理学部・助手、1996年新潟大学理学部・助教授、1998 年より名古屋大学大学院工学研究科・助(准)教授。専門は物性物理学理論、低温物理理論。これまで、超伝導の理論研究を中心に幅広く研究活動を行ってきた。超伝導現象の研究としては、トンネル効果、ジョセフソン効果、近接効果といった現象の解明を行い、特にアンドレーエフ束縛状態の研究で多くの成果を挙げた。また様々な強相関超伝導体の発現機構の理論の研究にも携わってきた。本新学術領域では、奇周波数電子対、マヨラナ型準粒子励起といった新奇な概念の確立を目指したいと考えている。

   

研 究 概 要

Topological Insulator

FerromagneticInsulator

 d wave superconductor

マヨラナ励起の創造

ノット構造をもつ励起

n=(1, 0, 0)T

n=(0, 0, -1)T

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領 域 メ ン バ ー

●○アドバイザリー

国内 安藤恒也 東京工業大学大学院理工学研究科 福山 寛 東京大学大学院理学系研究科 家 泰弘 東京大学物性研究所国際 JanAarts LeidenUniversity,KamerlinghOnnesLaboratory AnthonyJ.Leggett TheUniversityofIllinoisatUrbana-Champaign ShouchengZhang StanfordUniversity

○▼計画研究 メンバー

A01: 時間反転対称性を破る超伝導体の新奇界面現象

研究代表者 前野悦輝 京都大学大学院理学研究科研究分担者 柏谷 聡 産業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門 赤崎達志 NTT 物性科学基礎研究所量子電子物性研究部 浅野泰寛 北海道大学大学院工学研究院連携研究者 寺嶋孝仁 京都大学低温物質科学研究センター 米澤進吾 京都大学大学院理学研究科 石田憲二 京都大学大学院理学研究科 前川禎通 日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター

B01: スピン三重項超流動体の新奇界面現象 

研究代表者 石川修六 大阪市立大学大学院理学研究科研究分担者 野村竜司 東京工業大学大学院理工学研究科 東谷誠二 広島大学総合科学研究科 三宅和正 大阪大学大学院基礎工学研究科連携研究者 小原 顕 大阪市立大学大学院理学研究科 久保田実 東京大学物性研究所 中原幹夫 近畿大学理工学部

C01: 空間反転対称性を破る電子流体の新奇現象

研究代表者 鄭 国慶 岡山大学大学院自然科学研究科研究分担者 安藤陽一 大阪大学産業科学研究所 稲田佳彦 岡山大学大学院教育学研究科 野島 勉 東北大学金属材料研究所 上野和紀 東北大学原子分子材料科学高等研究機構 獅子堂達也 広島大学大学院先端物質科学研究科連携研究者 岩佐義宏 東京大学大学院工学系研究科 横谷尚睦 岡山大学大学院自然科学研究科 永長直人 東京大学大学院工学系研究科

D01: トポロジカル凝縮系の理論

研究代表者 田仲由喜夫 名古屋大学大学院工学研究科研究分担者 上田正仁 東京大学大学院理学系研究科 水島 健 岡山大学大学院自然科学研究科 佐藤昌利 東京大学物性研究所連携研究者 押川正毅 東京大学物性研究所 小口多美夫 大阪大学産業科学研究所 川口由紀 東京大学大学院理学系研究科 

新学術領域研究 

領域メンバー紹介

対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象

members

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本新領域研究代表の前野悦輝氏が、2010 年度

仁科記念賞を受賞しました。受賞対象業績は

「スピン三重項超伝導体、ルテニウム酸化物の発見」

です。前野氏は、1994 年、銅酸化物と同じ二次元

構造を持つ層状ルテニウム酸化物 Sr2RuO4 が超伝導

を示すことを発見しました。前野氏は、この物質の

研究を進める中で、従来の超伝導にはみられない強

い不純物依存性という特徴的な性質を明らかにし、

この物質がスピン三重項超伝導の可能性があること

を指摘しました。 一方、純良な単結晶の育成手法

を継続的に発展させ、高品質な結晶の低温比熱の測

定から超伝導ギャップの構造を明らかにし、さらに、

超伝導転移温度の同位体効果、上部臨界磁場の抑制

効果等を明らかにしました。

 前野氏は、共同研究者とともに多くの実験を行

い、この系が極めて珍しいスピン三重項超伝導であ

ることを直接的に示す多くの結果を得ました。例え

ば、時間反転対称性の破れをミュオンスピン緩和法

ならびに磁気光学カー効果で示し、さらにクーパー

対の奇パリティ性ならびに時間反転対称性の破れを

超伝導接合素子等を用いて示しました。これらはい

ずれもこの系がカイラル p 波対称性を有するスピン

三重項超伝導であるという大変興味深い性質を示し

てます。さらに混晶系 (Sr,Ca)2RuO4 の電子相図を

研究し、Sr2RuO4 がモット絶縁体に近い強相関物質

であることを実証し、モット絶縁体がバンド幅制御

による金属化によって超伝導を発現するという新し

いルートを実現しました。

 以上のように、Sr2RuO4 において三重項超伝導と

いう新しいタイプの超伝導を発見して、その現象と

前 野 悦 輝 氏

2010 年仁科記念賞を受賞!

物質の両面から電子状態の解明に尽力し、著しい成

果を積み重ねることによって、超伝導の研究の舞台

に新しい局面を開いてきました。

 本新学術領域研究では前野氏のこれまでの成果を

さらに発展させ、スピン三重項超伝導体のみならず、

強磁性 / 超伝導系、超流動ヘリウム、空間反転対称

性を破る超伝導体、トポロジカル絶縁体などに、ト

ポロジカル電子現象としての共通な側面への展開を

図ります。

 前野氏のこれらの研究は、超伝導の基本的な理解

に大きなインパクトを与え、国内外の多数の理論お

よび実験研究者に大きな影響を与えて続けており、

当該分野における前野氏の指導的立場を示していま

す。今後のより一層のご活躍を期待いたします。

(文責 柏谷聡)

仁科記念賞授賞式にて前野悦輝氏(左)と超伝導発見時の大

学院生だった橋本博明氏(現衆議院議員)

   

ニ ュ ー ス

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トポロジカル絶縁体とは本来、バルク絶

縁体の表面にトポロジカルな金属状態

が生じている物質のことです(本ニュースレ

ターの中の「トピックス」のページに簡単な

解説があります)。しかし現実には、バルク

が本当に絶縁体になっている(つまりバルク

には電気が流れない)ような材料はこれまで

に得られていません。このため、トポロジカ

ル絶縁体に特有の金属的表面に流れる電流の

特性を実際に調べることは非常に困難でした。

計画研究 C 班の分担者である大阪大学の安

藤グループでは最近、これまでに発見された

どのトポロジカル絶縁体物質よりも格段にバ

ルク絶縁性の高いトポロジカル絶縁体の新物

質を発見しました。さらにそのバルク絶縁性

の高さを利用して、トポロジカルな表面状態

の電気伝導率が強磁場中で量子振動現象を示

す様子を明確に観測することにも成功しまし

た。この成果は、物理学研究上の重要なトピッ

クスを伝える米国物理学会のオンライン雑誌

Physics で紹介されました。

ト ポ ロ ジ カ ル 絶 縁 体 の 新 物 質 発 見

安藤陽一/大阪大学産業科学研究所教授

   

news

米国物理学会 "Physics" 掲載ページより

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トポロジカル絶縁体とは、一言でいえば、バルク

にはエネルギーギャップを持つ絶縁体なのに、

その “ エッジ ”(2次元系なら端、3次元系なら表面)

にギャップレスの金属状態が生じている物質のことで

す。高移動度を持つ2次元半導体が強磁場中で量子

ホール効果を示すときの電子状態でも似たような状況

が生じていますが、トポロジカル絶縁体の場合は、磁

場などなくてもこのような特殊な状態が存在している

のです。つまり、金属でも絶縁体でもない「新しい種

類の固体物質」を実現しているのがトポロジカル絶縁

体、と言うことができます。

 トポロジカル絶縁体が持つこのような性質は、その

中の電子状態を記述する波動関数のパリティ、つまり、

空間反転操作に対して波動関数の符合が変わるか否

か(符合が変わればパリティは奇、変わらなければ偶)

に関係しています。位相幾何学で出てくるトポロジカ

ル不変量とは、ある空間上の「曲面」(いまの場合は

ヒルベルト空間上の波動関数)を連続的に変形しても

変化しない量のことですが、量子状態が持つパリティ

の偶奇性は、波動関数を連続変形しても保存されるの

で、これをトポロジカル不変量とみなすことができま

す。数学では整数群を Z で表し、それを偶数と奇数に

分けた商群を Z2 と表記するので、何らかの性質の偶奇

性にもとづく位相幾何学的分類を Z2 トポロジーと呼ん

でいます。普通の絶縁体(真空を含む)の量子状態は

偶パリティを持つので、その属する Z2 トポロジカルク

ラスは「偶」ですが、トポロジカル絶縁体では何らか

の理由で(たいていは強いスピン軌道相互作用に起因

するバンド反転のために)Z2 トポロジーに関して「奇」

である量子状態が実現しています。

 トポロジーの異なる絶縁体波動関数の間では、一方

から他方へ連続的に遷移することはできないので、普

通の絶縁体とトポロジカル絶縁体をくっつけるとその

界面で一度ギャップが閉じ、“ 絶縁体以外の状態 ”、つ

まり金属状態が現れることになります。これがトポロ

ジカル絶縁体のエッジに金属的な状態が現れる理由で

す。

 このような Z2 トポロジーの原理で生じるエッジ状

態の中では、右へ進む電子と左へ進む電子が時間反転

対称性の要請のためにそれぞれアップとダウンの異な

るスピン状態を取ります。このような、電子の運動方

向とスピンの向きが絡み合った状態は、「ヘリカルな

スピン偏極を持っている」といいます。

 このようなヘリカルにス

ピン偏極したエッジ状態

は、平衡状態において無散

逸の純スピン流を運んでい

ると考えることができま

す。その平衡を破って電流を流すと、無散逸スピン流

のバランスが崩れて電流と垂直な方向にスピン偏極が

現れ、これがスピンホール効果として観測されること

が期待されます。ヘリカルな1次元エッジ状態におい

ては、その中の電子は、スピンの向きが反転するよう

な散乱を受けない限り一方向にしか進めないので伝導

はバリスティック ( 弾道的)になり、スピンホール伝

導度は量子化されます。歴史的には、このような量子

スピンホール効果を示すバルク絶縁体として量子スピ

ンホール絶縁体がまず理論的に提案され、それが後に

トポロジカル絶縁体と呼ばれるようになった、という

経緯があります。

 ヘリカルなスピン偏極をしたエッジ状態において

は、一般の運動量k においてスピンの自由度に関する

縮退が解け、アップかダウンのいずれか一方のスピン

状態しか取れません。運動量 -k にはもう一方のスピン

状態が対応します。またk = 0 においては、クラマー

スの定理によって、アップとダウンのスピン状態が縮

退しています。これはつまり、+k と -k に分かれてい

たアップスピンとダウンスピンの 2 本の分散は、k =

0 では必ず交わる(次ページ図参照)ことを意味します。

k = 0 の十分近くではそれぞれの分散を直線で近似で

「トポロジカル絶縁体」って、何がトポロジーなの?

安藤陽一/大阪大学産業科学研究所教授

 

ト ピ ッ ク ス

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12

きるので、これはk = 0 に電荷中性点(ディラック点)

を持つディラック電子系と見ることができます。この

ように、トポロジカル絶縁体における時間反転対称性

は、ディラック電子系の出現を保証します。なおこの

ような原理によるディラック電子系の出現は、k = 0

の他にも、ブリルアン域の境界で +k と -k が等価にな

る点(このような点を時間反転不変運動量と呼びます)

を表面状態の分散が通るときにも起こります。従って、

ヘリカルにスピン偏極したディラック錐がブリルアン

域の中で時間反転不変運動量を囲むように存在するの

が、トポロジカル絶縁体の大きな特徴です。なお、昨

年のノーベル物理学賞の対象になったグラフェンにお

けるディラック電子系はスピン縮退していますが、ト

ポロジカル絶縁体のディラック電子系においてはスピ

ンの「自由度」はなくなっており、スピンの向きがk

によって自動的に決まってしまうところが重要な違い

です。

絶縁体波動関数の Z2 トポロジーと、それによって

出現するトポロジカル絶縁体は、まず2次元系

において量子スピンホール絶縁体として発見されまし

たが、その後、非自明な Z2 トポロジーは2次元系に限

らず3次元系でも考えられることが認識され、3次元

トポロジカル絶縁体の存在が予言・検証されるに至り

ました。3次元系の場合、その “ エッジ ” 状態である

金属的表面状態は、2次元の場合のエッジ状態と同様、

ヘリカルなスピン偏極をしたディラック電子系になっ

ており、そこには無散逸の純スピン流が存在していま

す。

 普通の金属や半導体でも、超高真空下の清浄表面に

ギャップレスの金属的表面状態が現れることがありま

す(例えば金やビスマスの表面に現れる Rashba 分裂

したスピン偏極表面状態が最近注目を集めています)

が、このような表面状態は、分子の吸着など周期ポテ

ンシャルを乱す要因があると容易に局在してしまいま

す。これに対してトポロジカル絶縁体の表面状態は、

上記のようなトポロジカルな原理によってその存在が

保証されているため、“ 連続変形 ” に対応するような摂

動によって消失または局在することはありません。そ

のためこれは「トポロジカルな表面状態」と呼ばれま

す。

 このトポロジカルな表面状態の中では、電子の散乱

は(k → -k の後方散乱以外は)禁止されないので、量

子スピンホール効果は起きません。その代わり3次元

トポロジカル絶縁体は、ヘリカル・ディラック電子性

という顕著な特徴に加えて、量子化された電気磁気効

果や、超伝導体との接合におけるマヨラナ粒子の出現

など、非常に興味深い物理を示すことが理論的に予想

されていて、いわば「新奇な量子現象の金鉱脈」として、

いま世界的に大きな研究ブームが起きています。本新

学術領域では、トポロジカル絶縁体におけるこのよう

な新奇なトポロジカル量子現象を検証・解明すること

を重要な目標の一つとしています。

    

トポロジカル絶縁体の " エッジ " に現れるディラック

電子系のエネルギー分散とスピン偏極

3 次元トポロジカル絶縁体における

ヘリカルにスピン偏極した表面状態

1964 年東京都出身、87 年

東 京 大 学 理 学 部 卒 業、89

年東京大学大学院理学系研

究 科 修 士 課 程 修 了、94 年

博士(理学)。( 財 ) 電力中

央研究所上席研究員などを

経て 2007 年から現職。物

性物理学(特に極低温実験)

と応用化学(特に単結晶育

成)が専門。

あんどう・よういち

   

TOPICS

著者 介著 紹

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1.はじめに

 銅酸化物超伝導体を始めとする多くの超伝導体が絶

縁体母材料への化学ドーピングによって開発されてき

た。化学ドーピングでは母材料の構成元素の一つを価

数の異なる不純物元素で置き換え、電気を流す電子や

ホールといったキャリアを材料へ供給する。図1に示

すように多くの半導体・絶縁体がキャリア濃度の上

昇とともに超伝導を示す。その中でも、SrTiO3は 1019

cm-3以下という最も低キャリア濃度で超伝導を示す材

料である [1]。

 さて、絶縁体 ( 半導体 ) にキャリア濃度を誘起する

もう一つの方法が電界効果を用いた電気的なキャリア

ドーピングである。シリコンなどの半導体の上に絶縁

体、金属膜を積層した構造を作成し、金属と半導体の

間に外部から電圧をかけると、この構造はコンデンサ

として働き、半導体表面には電荷が蓄積する。この原

理を応用した電界効果トランジスタ (FET) は低消費電

力のスイッチング素子として情報産業を支える基本素

子となっている。この FET を用いて超伝導材料の特性

を変調させようとする研究は 50 年にも及ぶ長い研究

の歴史がある [2,3]。しかし、絶縁体に電場誘起のみに

よってキャリアドーピングし、超伝導を作り出すこと

は今まで誰にもできなかった。FETで蓄積可能なキャ

リア濃度は絶縁層の絶縁破壊によって制限されるが、

超伝導を誘起するには図 1 にあるように1020cm-3程

度のキャリア濃度が必要である。これほど膨大な量の

キャリア蓄積に耐える絶縁膜は知られておらず、電場

誘起超伝導は不可能だと考えられてきた。10 年ほど前

に起きたBell研究所Schonによる研究捏造事件では特

殊なアルミナを絶縁膜とすることで高濃度のキャリア

蓄積が実現できると報告されたが、最終的には全ての

結果が捏造であったという結論となった [4]。

 私の電場誘起超伝導の研究は、実はそのBell研の報

告を受けて開始したものである。後追いで始めた有機

半導体にアルミナ絶縁膜で超伝導を目指す研究は当然

うまくいかなかった。そこで、新たにFET で蓄積可能

なキャリア濃度の範囲で超伝導が実現できる材料とし

て SrTiO3での FET 研究を開始した。

 私自身は室温でのデバイス動作までしか実現できな

かったが [5]、その後の東大高木研、リップマー研など

での研究によって低温でのデバイス動作が報告された

[6,7]。一方、私は電気二重層トランジスタという従来

のFETとは全く異なるコンセプトに基づくデバイスを

SrTiO3へ応用する研究を開始した。FET開発で培われ

た半導体デバイス作成技術を取り入れながらデバイス

開発を進めた結果、従来のFETでは到達不可能だった

シートキャリア濃度にして1014cm-2 ( 体積キャリア濃

度1021cm-3) もの高濃度キャリア蓄積を実現、完全な

絶縁体のSrTiO3表面で始めて電場誘起超伝導を実現し

た [8]。

SrT iO3 電場誘起超伝導

上野和紀/東北大学原子分子材料科学高等研究機構助教

図 1  化 学 ド ー ピ ン グ で 得 ら れ る 様 々 な 超 伝 導 体 とSrTiO3 での電場誘起超伝導。超伝導転移温度とキャリア濃度との関係を示す。

 

ト ピ ッ ク ス

電場誘起超伝導

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2.電場誘起超伝導

 電場誘起超伝導の実現の鍵となったのが、液体にイ

オンの溶けこんだ電解液を絶縁層として用いる電気二

重層トランジスタの酸化物への応用である。図 2(a),(b)

に示す半導体、電解液、金属がつながった構造を作り

電圧を印加することで、電解液と半導体、金属の界面

には正負のイオンが集まり、1nm程度の厚さを持つ

電気二重層を形成する。電解液はイオン伝導性の物質

であるため、電解液に電流が流れるためには電気二重

層で電気化学反応が起き、イオンと電極の間で電子を

授受する必要がある。そこで電解液として有機電解液

のような電気化学的に安定な材料を用いると、電気二

重層は固体絶縁層では不可能な50MV/cmを越える強

電界まで電気化学反応(絶縁破壊)を起こさない [9,10]。

その結果、半導体表面には FET と同様の原理で非常に

高キャリア濃度の二次元電子ガス (2DEG) が生じ、図

2(c) に示すように電圧印加とともに伝導度が上昇する

FET 動作が得られる。トポロジカル量子現象ではトポ

ロジカル性の異なる界面で興味深い現象がおきるが、

本研究はまず、電気二重層という古典的な固液界面に

隠れていた新しい物理の種を見つけ出し、応用したも

のである。

 SrTiO3単結晶はキャリアドーピングしない状態では

シート抵抗10G Ωを越える完全な絶縁体である。こ

の SrTiO3を半導体として電気二重層トランジスタを作

成すると、ゲート電圧によって表面に電荷が誘起され

る。図 3 に示すようにゲート電圧VG の小さい領域で

は抵抗が温度とともに上昇する絶縁体的な振る舞いだ

が、電圧を十分に上げると低温まで抵抗が減少する金

属的な振る舞いへと変化した。また、低温でホール係

数からキャリア濃度を見積もるとVG に対しほぼ線形に

キャリア蓄積がおき、VG=3.5Vで1 × 1014cm-2、と

一般的なSiMOSFETの10倍ものキャリア濃度が得ら

れた。

 このトランジスタをゲート電圧を印加した状態で希

釈冷凍機により0.02Kまで冷却することで、図3挿入

図に示すようにゼロ抵抗への超伝導転移を観測した。

さらに、磁場や電流の印加によりゼロ抵抗からノーマ

ル抵抗に戻ることも確認された。これらの挙動は超伝

導の特徴であり、SrTiO3表面が電場誘起キャリアによ

り超伝導状態になっていると考えられる。

図2 (a) 電気二重層の模式図

(b) バンドダイアグラム

(c) SrTiO3 電気二重層トランジスタの室温デバイス特性

図 3 電場誘起による絶縁体 ・ 金属転移。

挿入図:ゲート電圧 3 V での超伝導転移。

   

TOPICS

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3.電場誘起超伝導の二次元性評価

 二次元超伝導の研究はNbやBiなど金属薄膜で主に

行われてきた。一方、電場誘起超伝導は絶縁体表面に

電場によって閉じ込められた二次元電子ガスが超伝導

を示す。電場によって反転対称性を破ることで初めて

超伝導になるという点、二次元電子ガスが深さ方向に

濃度勾配を持つなどの点で金属薄膜の二次元超伝導と

は本質的に異なる。

 現在のところ、電場誘起超伝導は二次元超伝導体の理論

に非常によく一致した振る舞いを示す。一例として、二次

元超伝導に特有のBerezinskii-Kosterilitz-Thouless (BKT) 転

移の結果を示す。二次元超伝導体に電流を流すと、Tc直下

ではボルテックスフローフロー(磁束量子の渦系の流れ)

による有限の抵抗が生じる。その結果、Tc付近でI-V特性は

V~I αのような非線形の振る舞いを示し、BKT 転移温度で

α =3 となる。図4に示すようにVG=2.7VでのI-V特性か

らは温度を下げるとともに除々にαが増加していく様子が

観察され、0.37K でα =3 になった。従って、この系の超伝

導転移 0.37K の臨界温度を持つ BKT 転移であると言える。

 電場誘起超伝導の二次元性などの超伝導物性は本新学術

領域の重要な課題であり、すでに若手相互滞在プログラム

を利用して磁気輸送特性の詳細な評価を行っている。今後、

電場誘起超伝導に隠れている新しい超伝導の物理を本学術

領域の研究で見つけ出したいと考えている。

 本研究は青木晴善、岩佐義宏、大友明、中村慎太郎、川

崎雅司、木村憲彰、下谷秀和、野島勉、H.T.Yuan の各氏と

の共同研究である。

[1]J.F.Schooley,W.R.Hosler,E.Ambler,J.H.Becker,

M.L.CohenandC.S.Koonce,Phys.Rev.Lett. 14,

305(1965).

[2]R.E.Glover,IIIandM.D.Sherrill,Phys.Rev.Lett. 5,

248(1960).

[3]C.H.Ahn,J.-M.Triscone,J.Mannhart,Nature 424,

 1015(2003).

[4]G.Brumfiel,Nature 419,419(2002).村松秀「論文捏造」

中央新書ラクレ (2006) など。現在も読める当時の 

ニュースとして

http://wiredvision.jp/archives/200209/2002092702.html

(WiredVision日本語版 )

[5]K.Ueno,I.H.Inoue,H.Akoh,M.Kawasaki,Y.Tokura,

andH.Takagi,Appl.Phys.Lett.83,1755(2003).

[6]K.Shibuyaetal., Appl.Phys.Lett.88,212116(2006).

[7]H.Nakamuraetal.,Appl.Phys.Lett.89,133504

(2006).

[8]K.Ueno,S.Nakamura,H.Shimotani,A.Ohtomo,N.

Kimura,T.Nojima,H.Aoki,Y.IwasaandM.Kawasaki,

NatureMater. 7,855(2008).

[9]H.Shimotani,H.Asanuma,J.Takeya,andY.Iwasa, 

Appl.Phys.Lett.89,203501(2006).

[10]K.Ueno,H.Shimotani,Y.Iwasa,andM.Kawasaki, 

Appl.Phys.Lett.96,252107(2010).

1976 年千葉県出身。99 年

東京大学工学部卒業、2004

年東京大学新領域創成科学

研究科博士課程修了。東北

大学金属材料研究所博士研

究員を経て現職。酸化物の

薄膜作成、半導体デバイス

が専門。現在は新たな超伝

導体の発見を目指して研究

している。

うえの・かずのり

   

TOPICS

図4 電場誘起超伝導の BKT 転移。0.37K 付近で V ~ I 3

の臨界特性を示す。

者 介著 紹

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超伝導体において、本質的にトポロジーと関係し

ている物理現象としては、超伝導渦の磁束量子

化が古くから知られている。最近になり、異方的超伝

導の表面に現れるアンドレーエフ束縛状態も超伝導の

トポロジーが本質的に関係していると考えられるよう

になり、「トポロジカル超伝導体」の標語の下、活発

に研究されている。本記事では、「トポロジカル超伝

導体」とは何か、どのような事が話題になっているか、

私自身の仕事の中から紹介したい [1]。

 まず、アンドレーエフ束縛状態について、ごく簡単

に復習しておこう。アンドレーエフ束縛状態とは、異

方的超伝導体の表面に現れるギャップレス状態であ

る。田仲・柏谷両氏の研究により、高温超伝導体の [110]

面に現れるフラットな分散を持つゼロエネルギーアン

ドレーエフ束縛状態の存在は実験的にも理論的にも確

立しており [2]、また、3He-B 相の表面に現れる 2 次

元的な線形分散を持つアンドレーエフ束縛状態の存在

も、野村氏、東谷氏らの音響インピーダンスの測定の

理論・実験により検証されている [3]。Sr2RuO4 の端

に現れると考えられている 1 次元的な線形分散を持つ

アンドレーエフ束縛状態に関しては、実験的困難から

長い間その存在は明らかでなかったが、最近の柏谷氏

らの報告によると、その存在を示唆する実験結果が得

られるようになってきているようである [4]。これら、

アンドレーエフ束縛状態を研究することは、超伝導状

態の対称性を明らかにする上で重要なだけでなく、ア

ンドレーエフ束縛状態を利用した新しい超伝導体素子

を作成する上でも重要である。

 

最近の理論的進展の一つは、アンドレーエフ束縛

状態が、量子ホール状態特有のエッジ状態との

アナロジーを使って、見通し良く理解できるように

なったことである。超伝導現象はクーパー対の生成に

伴いゼロ抵抗が実現される現象であり、量子ホール効

果はホール伝導度が量子化される現象であるので、物

理現象としては、両者は全く別物である、しかし、表

1にまとめるように、これらの系の準粒子のエネル

ギースペクトルのみに着目すると、非常に似通って

いることがわかる。両者ともバルクにはエネルギー

ギャップがあるため、励起状態をつくるには、有限の

エネルギーが必要なのに対して、試料の境界(つまり

端)であるエッジにはギャップレスな状態が現れ、非

常に小さいエネルギーで準粒子を励起することが可能

となっている。この類似性に注目して、超伝導体の性

質、特にその表面に現れるアンドレーエフ束縛状態を

研究しようというのが、超伝導体を「トポロジカル超

伝導体」としてとらえる見方である。

 この様な見方が、何故「トポロジカル超伝導体」と

呼ばれるかを理解するために、量子ホール状態とトポ

ロジーの関係を整理しておこう。まず、端のない系を

考えると、そのホール係数は、準粒子の波動関数から

計算される整数値しか取れない量 -「トポロジカル不

変量」- であらわすことができ、ホール係数の量子化は、

トポロジカル不変量が整数値しか取れないという性質

から理解することができる。一方、端のある系では、

エッジにギャップレスモードができ、それがホール電

流を運ぶことにより、ホール効果は説明される。つま

り、この場合には、ギャップレスモードの個数が量子

化されていることがホール係数の量子化の起源となっ

ている。このように端のない系とある系とでは、ホー

ル係数の量子化の機構は、見かけ上異なっているが、

両者とも同じ量子ホール状態であるためには、トポロ

ジカル不変量とエッジ状態の数が同じでなければなら

ないことが要請される。この端のない系、つまりバル

クのトポロジカル不変量と、端のある系のエッジ状態

の個数の間の対応は、「バルク・エッジ対応」と呼ば

れている。

 

トポロジカル超伝導体の物理

佐藤昌利/東京大学物性研究所助教

超伝導状態量子ホール状態

ギャップ有(超伝導ギャップ)

ギャップ有(ランダウ準位)

バルク

アンドレーエフ束縛状態

エッジ状態エッジ

表1:量子ホール状態と超伝導状態の準粒子スペクトルの

類似性

 

ト ピ ッ ク ス

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この「バルク・エッジ対応」の示唆することは、

一般に、なんらかのトポロジカル不変量が計算

でき、それがゼロでない整数値をとる場合、その系に

端をつくると、ギャップレスのエッジ状態がトポロジ

カル不変量の数だけ現れるということである。特に、

最近、新しいトポロジカル不変量である Z2 トポロジ

カル不変量がゼロでない絶縁体、いわゆる「トポロジ

カル絶縁体」が提唱されるに至り、この「バルク・エッ

ジ対応」は、量子ホール系に限らず一般的に成り立つ

と考えられるようになった。量子ホール系と異なり、

トポロジカル絶縁体でホール係数に対応する観測量で

あるスピンホール係数は、一般には、整数値に量子化

されない。しかしながら、バルクのトポロジカル不変

量に対応するエッジ状態が存在することが理論・実験

の両面で明らかになったからである。現在では、「バ

ルク・エッジ対応」は、ギャップある系であれば、か

なり広く一般に成り立つと認識されている。

 ここで、超伝導状態と量子ホール状態のアナロジー

に戻って、この「バルク・エッジ対応」を考えてみよう。

すると、それは、超伝導状態のギャップレスアンドレー

エフ束縛状態にも、何らかの対応するトポロジカル不

変量が存在するということを意味している。実際、こ

の見方は正しく、現在では、様々なアンドレーエフ束

縛状態に、対応するトポロジカル不変量が存在すると

いうことが明らかになっている。この時、ギャップレ

スアンドレーエフ束縛状態を持つ超伝導体は、バルク

のトポロジカル不変量によって特徴づけられることに

なり、その意味で「トポロジカル超伝導体」と呼ばれ

ている。

 「トポロジカル超伝導体」の見方から、アンドレー

エフ束縛状態を研究するメリットの一つは、かなり複

雑な系であっても、アンドレーエフ束縛状態の有無を、

比較的簡単にしかも系統的に調べることが可能になる

ことである。伝統的な研究手法では、アンドレーエフ

束縛状態は、ボゴリューボフ・ドジャン方程式を適当

な境界条件の下で、実際に解くことにより調べられて

いる。複雑な系を調べるには、複雑な連立微分方程式

を解く必要があり、そのため、どうしても実際上は数

値的計算に頼らざるを得ず、系統的にアンドレーエフ

束縛状態を調べることはかなり繁雑である。一方、「ト

ポロジカル超伝導体」の見方でアンドレーエフ束縛状

態を研究する場合には、アンドレーエフ束縛状態の有

無は、トポロジカル不変量を調べるだけでわかってし

まう。トポロジカル不変量は、バルクのギャップが閉

じない限り値が変わらないので、いくつかの特別な場

合のトポロジカル不変量を計算するだけで、系統的に

アンドレーエフ束縛状態を調べることが可能になる。

このような系統的な研究により、新しく明らかに

なった結果の一例として、ここでは、スピン 3

重項超伝導体のアンドレーエフ束縛状態とフェルミ面

の関係を紹介する [5,6]。高温超伝導体の例からもわ

かるように、アンドレーエフ束縛状態は、超伝導ギャッ

プの対称性に関する重要な情報を与える。ここで明ら

かになったことは、超伝導状態がスピン 3 重項超伝導

状態、もっと正確にいうと、奇パリティ超伝導状態で

あれば、常伝導状態のフェルミ面の様子だけから、ア

ンドレーエフ束縛状態の有無が予言できるということ

である。とりわけ、スピン 3 重項超伝導体であれば、

フェルミ面の構造とアンドレーエフ束縛状態の分散関

係とが、一定の関係で結びついていなければならない

ことがわかる。一方、スピン 1 重項超伝導体であれば、

そのような関係はない。したがって、バンド理論や

dHvA 効果によって、フェルミ面の構造を明らかにし、

それをアンドレーエフ束縛状態と比較することによっ

て、スピン 3 重項超伝導体であるかを判別することが

可能である。残念ながら、現時点ではアンドレーエフ

束縛状態の分散関係を実験で調べることは容易でない

ようだが、将来的には、この原理に基づき、ギャップ

関数の具体形など特定の理論的仮定に依存しないで、

スピン 3 重項超伝導状態を同定することが可能となる

のではないかと期待している。

 「トポロジカル超伝導体」の別の興味深い応用とし

ては、新しい量子計算であるトポロジカル量子コン

ピュータがある。トポロジカル量子コンピュータとい

うのは、非可換統計に従う励起(非可換エニオン)を

使って、量子計算を行おうというものである。超伝導

図 : ノードのある超伝導体中のマヨラナ型エッジ状態

   

TOPICS

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体でいうと、カイラルp 波超伝導体に、そのような非可換エニオンが励起として存在することが知られてい

る。カイラルp 波超伝導体の渦には、マヨラナ型とよばれる実の演算子であらわされるゼロエネルギーアン

ドレーエフ束縛状態が存在し、そのため渦自体が非可

換エニオンとなるからである。非可換エニオンでは、

その交換操作によって、元の状態と全く異なる新しい

状態を作り出すことが可能であり、それを使って量子

計算を行うのがトポロジカル量子コンピュータであ

る。トポロジカル量子コンピュータでは、交換操作の

ような非局所的な操作によってのみ状態が変化するの

で、熱揺らぎなど通常の量子計算の障害となっている

局所的なデコヒーレンスに対しては、原理的に安定で

ある。

 このトポロジカル量子コンピュータの研究における

最近の重要な進展は、カイラルp 波超伝導体でなく、他の超伝導状態であっても、トポロジカル量子コン

ピュータが可能であることが明らかになったことであ

る。s 波超伝導状態でも、非可換エニオンが可能であることは、( 私の知る限り )[7] の論文で初めて議論さ

れた。この論文は、直接、物性物理を扱ったものでは

なかったが、最近、Fu-Kane によってトポロジカル絶

縁体とs 波超伝導体の接合系で、本質的に同じメカニズムによって非可換エニオンがあらわれることが、([7]

の論文とは独立に)示された [8]。また、トポロジカ

ル絶縁体とd 波超伝導体の接合系でも同様の非可換エニオンが可能であることが、田仲氏らによって示され

ている [9]。更に、我々の研究により、トポロジカル

絶縁体を用意しなくても、強いスピン軌道相互作用の

下では、s 波超伝導体、空間反転対称性の破れた超伝導体、高温超伝導体のようなノードのある超伝導体な

ど、従来トポロジカル量子コンピュータには使えない

と考えられていた超伝導体でも、非可換エニオンが可

能であることが明らかになり、非可換エニオンの登場

舞台は拡がってきている [10-13]。これらの研究にお

いても、「バルク・エッジ対応」は重要な役割を果た

している。超伝導体渦は、超伝導中の穴と考えること

ができ、そのため、渦に束縛されたアンドレーエフ束

縛状態を、穴の部分のエッジ状態とみなすことができ

るからである。

 現時点では、「トポロジカル超伝導体」の研究は、

理論研究が先行しており、実験的研究はこれからとい

う段階である。しかし、先ほど挙げた柏谷氏らの実験

や、また、前野氏らのグループにより非可換エニオン

と考えられている半量子渦が作成できたとの報告もあ

り [14]、今後は、「トポロジカル超伝導体」として非

常にエキサイティングな実験結果、知的刺激があるの

ではないかと考えている。今後、領域内の連携の深ま

りとともに、「トポロジカル超伝導体・超流動体」の

理解も深くなっていくと期待している。

[1]トポロジカル不変量とアンドレーエフ束縛状態の

 関係については、例えば、以下の記事を見てほしい。

「トポロジカル超伝導体入門」佐藤昌利、物性研究

94,311(2010).[2]S.KashiwayaandY.Tanaka,Rep.Prog.Phys.63,1641(2000).

[3]S.Murakawaetal. ,J.Phys.Soc.Jpn.80(2011)013692.

[4]柏谷聡 ,第 1 回領域研究会における講演 .

[5]M.Sato,Phys.Rev.B79,214526(2009).[6]M.Sato,Phys.Rev.B81,220504(R)(2010).[7]M.Sato,Phys.Lett.B575,126(2003).[8]L.FuandC.Kane,Phys.Rev.Lett.100,096407(2008).

[9]J.Lindneretal.,Phys.Rev.Lett.104,067001(2010).[10]M.SatoandS.Fujimoto,Phys.Rev.B79,094504(2009).

[11]M.Sato,Y.Takahashi,andS.Fujimoto,Phys.Rev.

Lett.103,020401(2009).

[12]M.Sato,Y.Takahashi,andS.Fujimoto,Phys.Rev.

B82,134521(2010).

[13]M.SatoandS.Fujimoto,Phys.Rev.Lett.105,

217001(2010).

[14]J.Jangetal .,Science331,186(2011).

1967 年島根県出身。91 年

京都大学理学部卒業、96

年京都大学大学院理学研究

科博士後期課程修了。京都

大学基礎物理学研究所湯川

奨学生、日本学術振興会特

別研究員等を経て現職。場

の理論の手法を使い、トポ

ロジカル相の研究をおこ

なっている。

さとう・まさとし

   

TOPICS

者 介著 紹

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19

我々は最近、電界効果により絶縁体に超伝導を誘

起することに成功した。本系は空間反転対称性

の破れにより界面に生成した二次元電子ガスが超伝導

を示すものであり、トポロジカル量子現象という観点

からも興味深い。またゲート電圧という外場により

キャリア濃度が制御できるという点でも、本系はユ

ニークなものである。そこで本研究では臨界磁場の方

位依存性評価を通して超伝導の二次元性を評価し、超

伝導層の厚さ評価を行った。京都大学で稼働中のベク

トル・マグネット回転装置と希釈冷凍機を用いて測

定を行うことで、わずか3週間という短い研究期間で

キャリア濃度を系統的に変化させながらの二次元性評

価、特性評価を実現した。

 東北大学で SrTiO3 (100)単結晶上に電気二重層トラ

ンジスタデバイスを作成 [1]、アルゴンガス中で試料

をパッキングした上で京都大学へ搬送した。京都大学

で試料を試料ホルダーへ配線、希釈冷凍機へ取り付け

た。測定は前野研のロックインアンプ (SR830) を用い

て行った。なお、キャリア濃度変化の際は希釈冷凍機

全体を 300Kまで上昇させ、ゲート電圧変化後に再冷

却を行った。まず、前半1週間半をかけてシートキャ

リア濃度1014cm-2 での超伝導評価を行った。温度下降

とともに0.4Kで急激な抵抗ドロップを示し、0.3K以

下でゼロ抵抗を示した。臨界磁場は垂直方位で約0.1

T、水平方位で約1.4Tと二次元系特有の大きな方位依

存性を示した。また、臨界磁場の温度依存性はゲート

電圧にかかわらずTcからT c/2の温度範囲で垂直方向

ではHc~(1-T /T c)、水平方向ではHc~(1-T /T c)0.5 と GL

理論に従い、精度良くHc(0)の決定ができた。さらに

磁場印加方向を試料面に水平方向から垂直方向へ変化

させたとき、Hcは極めて急激な落ちを示した。このHcの方位依存性を0.1度刻みで測定したところ、GL方程

式の二次元での解として導かれるTinkhamの関係式

に完全に一致しており、本系が理想的な二次元系とし

て振舞うことが確認された。

 続いてキャリア濃度を5 × 1013cm-2,3 × 1013cm-2

と順次下げながら超伝導特性の評価を行った。Hcの温

度依存性、方位依存性はやはりGL理論に非常によく

一致しており、キャリア濃度にかかわらず理想的な二

次元系としての振る舞いが確認された。一方、GL の

コヒーレンス長ξGLは50nm 程度、超伝導層厚さd

は10nm程度であり、ほとんどキャリア濃度に依存し

なかった。一般に半導体中の二次元電子ガスではキャ

リア濃度の減少とともに電子の閉じ込めポテンシャル

が減少、電子侵入深さが増加することが知られている。

したがってこの結果はノーマル状態と超伝導状態で電

子の侵入深さが変化していることを示唆しており、今

後の理論的な研究が期待される。

 なお、本研究は東北大学グループの野島准教授、京

大グループの前野教授、米澤助教との共同研究である。

8月半ばというお盆休みを挟んだ大変暑い期間にもか

かわらず、ほとんど休み無しに指導を賜り、また非常

に精力的かつ楽しく共同研究をさせていただいたこと

に感謝したい。

[1]K.Uenoetal .,NatureMaterials7, 855(2008).

上野 和紀

東北大学原子分子材料科学高等研究機構 助教

滞在先:京都大学大学院理学研究科(受入研究者:前野 悦輝)

前野研米澤助教(左)と筆者 (右 )。後ろは希釈冷凍機本体と

ベクトルマグネット

C01 → A01

  若手相互滞在  プ ロ グ ラ ム  報 告  

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20

空間反転対称性の破れた超

伝導体 Li2(Pd1-xPtx)3B は、

Pd-Pt 元素置換によりスピン一

重項から三重項状態へ変化する

ことが分かっており、スピン

軌道相互作用が超伝導状態へ及

ぼす影響を調べることは大変興

味深い。私は本プログラムによ

り、試料提供者である岡山大学

大学院鄭研究室に滞在し、比熱

測定に用いる試料の作製と評価

を行った。

 はじめに 4個の試料を作製し、

粉末 X 線回折により結晶の解析

を行ったところ、いずれも単相

の回折ピークのみを示した。と

ころが超伝導転移に伴う磁気遮

蔽は試料によって大きく異なっ

ていた。特に Pt の含有量が多

い試料でこの傾向が強く、超伝

導状態の不安定性を示唆する結

果である。この結果を踏まえ、

磁気遮蔽の大きい良質試料を作

ることを目指してさらに6個試

料作製を行った。これらの試料

については装置の都合で1日延

泊して試料評価を行った。続き

は私の所属研究機関で行う。

 既に十分良質な試料が幾つか

得られており、これによりかね

てから詳細な解析が必要と考え

ていた試料組成のうち、少なく

とも2種類を新たに加えること

に成功した。今後は詳細な解析

を行うと同時に試料の純良化を

進め、論文の執筆を目指す。

 この試料は扱いが難しいリチ

ウムを用いるのが特徴である。

本滞在での試料作製を通して、

申請者はリチウムの基本的な扱

い方及びホウ素含有金属合金の

作製法を習得し、さらにアーク

炉による試料作製技術の向上を

図ることが出来た。また滞在期

間中、試料の比熱の振舞に関す

る議論および純良試料育成に関

する議論を鄭、稲田両教授と行

い、また理論的、歴史的側面と

意義についてご教示を頂いた。

さらに学生同士での議論も大変

刺激になり、今後の研究方針を

考える上でも非常に有意義な滞

在であった。

江口 学  

京都大学大学院理学研究科 博士課程 1 年

滞在先:岡山大学大学院自然科学研究科(受入研究者:鄭 国慶)

鄭研究室D2の原田さん(右)と私。いい研究ができました。PEACe :-)

A01 → C01

   

yr Program

 本プログラムは、本領域に属する研究室の大学院生や

若手研究者が、領域に属する他機関の研究室に 2 週間程

度滞在し、その分野の研究の日常を体験することで、自

身の視野を広げると同時に、受入研究室の同世代の研究

者に刺激を与えることを目的とする制度です。

 若手研究者間の直接的な交流によって、異分野の研究

融合を触発し、領域に属する研究室の中に、トポロジカ

ル量子現象の追求という学際的視野を醸成する効果が期

待されています。

 若手相互滞在プログラム

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yr Program

     

 新規採用 研究者の紹介

研究計画 C01「空間反転対称性を破る電子流体

の新奇現象」において研究を担当することと

なり、2010 年 10 月より研究を開始しています。

 本学術領域より以前は、遷移金属化合物超伝導体

の物性について核磁気共鳴/核四重極共鳴(NMR/

NQR)法を用いて研究を進めてきました。コバル

ト酸化物超伝導体の研究では超伝導ギャップの対称

性及び磁気相関の詳細を世界に先駆けて解明しまし

た。鉄系超伝導では超伝導がスピン 1 重項の対称性

をもつこと明らかにし、多重ギャップをもつことを

見出しました。

 新学術領域では、空間反転対称性の破れた超伝導

体の物性を NMR/NQR 法を用いて解明していきま

す。超伝導の対称性及び常伝導状態の特性より、空

間反転対称性の破れやスピン軌道相互作用の効果に

ついて研究していきます。

 NQR/NMRを用いた超伝導体の研究と同時に、様々

な手法を用い新たな空間反転対称性破れた超伝導体

の探索も行います。

 これまで関わってきた研究とは内容が異なります

が大変面白そうな領域ですのでこれまでの経験・知

識を生かしつつ新しいことにも挑戦し、実りある研

究にしたいと思います。

 

俣野 和明

岡山大学大学院自然科学研究科

(受入研究者:C01鄭国慶)

またの・かずあき

核磁気共鳴分野では “ ベテラン “ の域に入りつつある研究者

で、本領域では研究及び運営の両面における活躍を期待して

います。

         受入研究者からひとこと

2007 年  日 本 学 術

振 興 会 特 別 研 究 員

(DC1)、2009 年 岡 山

大 学 大 学 院 自 然 科 学 研

究科修了博士(理学)、

2009 年 日 本 電 気 株 式

会 社 入 社、2010 年 

岡 山 大 学 大 学 院 自 然 科

学 研 究 科 助 教、 現 在 に

至る。

休 み の 日 は PC を い

じったりしています。

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まつお・しげまさ

1965 年生れ・岡山県出

身。1990 年山口大学卒、

1992 年岡山大学大学院

理学研究科修士課程修了、

1995 年広島大学大学院生

物圏科学研究科博士課程

後期修了。広島大学総合科学部非常勤講師、広

島大学総合科学部物質科学講座助手、広島大学

教育学部研究補助職員などを経て、2010 年より

現職の広島大学研究員。専門分野は低温物性理

論。趣味は金魚飼育・植物栽培と山中の散策で

す。それと、自作の和竿で瀬戸内の小魚を釣る

こと。魚が掛っても、折れない竿を目指してい

ます。

Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov (FFLO) 状 態 を

研究していた当時、恩師や諸先輩方が超流動3He

を研究している様子を傍らで見ておりました。私は

FFLO 状態の研究で単一の秩序パラメータ(右上図は

FFLO の秩序パラメータの場所依存性の図)を自己無

撞着に解きながら、諸先輩方が超流動3He の研究で複

数の秩序パラメータ解く様子を眺めて、私には超流動3He の研究は無理かなと思っていました。複数の秩序

パラメータと表面散乱の自己エネルギーを同時に自己

無撞着に決めることは、複雑で私の力では困難そうに

思っていました。

 この4・5年は他分野の研究に移っていましたが、

昨年秋に東谷先生から超流動3He の研究にお誘いを受

けて、この分野に挑戦することにしました。昨今のパ

ソコンの性能向上で、境界散乱効果を考慮した超流動3He の計算が私にも可能になりました。現在、ランダ

ム・S- マトリックス理論を使い、また、準古典的グリー

ン関数法で、B 相の表面付近に現れる偶周波数・奇周

波数共存状態の研究を進めています。4・5年のブラ

ンクがありましたが、右上図を実際に描いて観て、以

前の感覚が戻り、超流動3He の研究を進めることがで

きると安堵しています。(右下図は超流動3He の散乱

極限における秩序パラメータの場所依存性を示してい

ます。)面白い成果を皆様の前で報告できるように努

力して参ります。皆様からの暖かいご支援と厳しいご

助言に応えるように頑張って参ります。

松尾 繁政

広島大学大学院総合研究科

(受入研究者:B01東谷誠二)

本領域B01班の研究員として松尾さんがメンバーに加わって

下さいました。現在、超流動3He-B 相の表面付近に現れる偶

周波数・奇周波数共存状態の研究を松尾さんと進めています。

奇周波数状態の表面散乱効果や局所状態密度と奇周波数クー

パー対振幅との関係など、面白い結果が出てきています。

        受入研究者からひとこと

   

New members

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New members

●第 1 回集中連携研究会

2010 年7月 10 日(京都大学東京オフィス)A 班の参加メンバーを中心に、品川の京都大学東京オフィスに集合した。参加者は 12 名で、暑い夏に負けない熱い議論が交わされた。最初に前野代表から新領域研究の全体説明があり、その後 A班の趣旨説明が行われた。引き続き、各担当者による研究方針の説明と最新の成果報告がなされた。トピックは Sr2RuO4 の接合系(柏谷)、ヘリカルマヨラナ励起を介したトンネル現象(浅野)、Nb/p -InMnAs接合の輸送特性(赤崎)、強磁性ジョセフソン共鳴、超伝導へのスピン注入(前川)、Pb/Ru/Sr2RuO4 の量子干渉効果、半磁束量子の話題(前野)であった。初顔合わせではあったが、質問も多くあったため、各々の理解を深めるために非常に役に立った研究会であった。(文責 柏谷聡)

●第 2 回集中連携研究会2010 年 7 月 27 日(岡山大学)「スピン軌道相互作用」と題した計画研究班 C の第一回集中連携研究会が 2010 年 7 月 27 日 13:00 ~ 21:00 に岡山大学コラボレーション棟 403室にて行われた。計画班員およびその研究協力者、関係する大学院生ら計約 25 名の参加を得た。 研究会では、各テーマ間・異なる物質系に共通したキーワードである「スピン軌道相互作用」について活発に議論が交わされ、さっそく班員間でいくつかもの具体的な連携がその場で決定された。研究会の後半には、メンバー間の親睦を兼ねた討議が続けられ、研究に関する情報交換が盛んに行われた。一見ダイバースに見える C 班ですが、メンバー(その研究協力者を含めて)間に「隠れた」

共通ルーツがあることが指摘されたりして、熱い物理の議論に和やかさも加わった。この研究会を通じて、班員間で今後目指すべき物理や問題点を共有することができて、有意義なスタートアップの会議となった。(文責 鄭国慶)

●第 3 回集中連携研究会

2010 年 9 月 4 日(名古屋大学)2010 年 9 月 4 日名古屋大学において D 班の集中連携研究会を開催した。研究会では、本計画研究班の目的である「トポロジカル凝縮系の理論」の研究について討論を行った。最初に、代表者田仲が、領域全体の説明と D01 班の位置づけを話した。そのあと、代表者、分担者のグループでどのような研究計画を目指しているのかについての発表があった。さらに、連携研究者による研究発表が行われた。 発表は、時間反転(空間反転)対称性の破れた超伝導体、トポロジカル絶縁体、ボーズ・アインシュタイン凝縮体、超流動ヘリウム3にわたる多岐なものであった。中でも、空間反転対称性の破れた超伝導体エッジ状態のマヨラナフェルミオン、原子気体におけるスピン3状態のトポロジーに基づく分類、制限された空間における超流動ヘリウム3における非自明な量子渦とエッジ状態、半導体・超伝導体接合で期待されるマヨラナフェルミオン、スピン軌道相互作用とバンド構造、エンタングルメントスペクトルとトポロジカル秩序といった新規な問題が紹介された。 また、領域研究会、若手相互滞在、ニュースレター、情報交換について話し合いが行われた。短い時間ではあったが、熱心に討論が行われ、若手研究者からの発言もいくつかあり、極めて有意義であった。(写真は発表中の川口東京大助教と(左)と水島岡山大助教。)(文責 田仲由喜夫)

2010 年度開催▽研究会報告

● 集中連携研究会 ●若手国際会議 ●領域研究会・国際会議

 

研 究 会 報 告

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●第 4 回集中連携研究会

2010 年 9 月 13 日(大阪市立大学)

大阪市立大学文化交流センター(梅田)において B 班の

集中連携研究会を開催した。最初に計画班代表者の石川

が、本計画研究の概要、領域全体との関係などの説明を

した後で、代表者(石川)、分担者(野村、東谷、三宅(代

理:石川))が以下に示すように、それぞれの研究の現状、

今後の計画とについて報告した。

 石川は、超流動 3He-A相の固有軌道角運動量の検証、

平行平板中の超流動 3He-A 相のテクスチャーと質量流、

奇周波数スピン三重項s波超流動相の検証、について。野

村は、これまでの超流動ヘリウム 3 の表面束縛状態の磁

気効果について。東谷は、超流動 3He-B 相の表面帯磁率、

超流動 3He-B 相 / エアロジェル系の近接効果、超流動 3He

表面の質量流とスピン波、について。三宅(代理:石川)は、

カイラル超伝導状態での固有角運動量・固有磁気モーメン

トの大きさ、奇周波数超伝導状態の理論の展開、Sr3Ru2O7

のネマティック相の理論、について。後半では最近の話

題として、若手の研究者による発表があった。鶴田氏(大

阪大学助教)の「カイラル超伝導体における自発磁化の

理論」と加藤氏(大阪市立院生 D3)の「平行平板中の超

流動 3He」である。

 研究会を通して活発な議論があり、計画班としての取

り組みに対する意識の向上があったことは間違いない。

来年度の集中研究会への提案などもあり非常に有意義で

あった。(文責 石川 修六)

   

workshops and meetings

第 1 回総括班会議・研究会(大阪市立大学学術情報総合センター)

●第 1 回総括班会議・研究会 

2010 年 9 月 22 日(大阪市立大学)

総括班全体の会議として第1回の会議が大阪市大にて行

われた。参加者全員の顔合わせとしては最初の機会であ

り、領域研究の参加者 30 名弱が集合した。まず参加者全

員を前に、領域代表の前野氏から領域の全体の説明が行

われた。トポロジカルという言葉だけでは物性において

何をイメージするかの自由度が大きいため、本領域で意

図しているトポロジカル量子現象とは何かについての説

明が行われた。その後各班の代表者から説明が行われた。

A班前野氏は Sr2RuO4 および超伝導 / 強磁性体の物理、B

班石川氏は超流動ヘリウムから期待されるトポロジカル

量子現象、C 班鄭氏は中心対称性の破れた超伝導およびト

ポロジカル絶縁体に関する新展開、D班田仲氏は電子系

におけるマヨラナフェルミオン、奇周波数超伝導、冷却

原子基体の物理などを説明した。

 その後各班から具体的な研究に関する最新の成果発表

が行われた。A 班柏谷は Sr2RuO4 のエッジ状態、B 班野村

氏は超流動ヘリウムのエッジに形成される束縛状態およ

びマヨラナ準粒子について、C 班上野氏は電界誘起超伝導

について、C 班安藤氏はトポロジカル絶縁体の新物質合成

に関する最新の成果について、D 班水島氏はマヨラナフェ

ルミオンの新しい物理に関する発表を行った。若手から

の質問も多く出されて、非常に活発な討論が続き、質問

のために時間が足りなくなる発表が見受けられた。

(文責 柏谷聡)

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●第 1 回領域研究会 2010 年 12 月 18 日 -12 月 20 日 京都大学百周年時計台記念館

   

workshops and meetings

本領域研究は 7 月から活動が開始されたため、

領域会議として今回が第1回目の開催であ

り、冬としては穏やかに暖かい天気が続く古都にて、

3日間にわたって活発な議論が行われた。領域研究

の全メンバーおよび一般からの公募も含めて、参加

者は 149 名であり、そのうち若手が 87 名と過半数

を占め、この分野が新開拓分野であることと、今後

の大いなる発展を感じさせる雰囲気の中で始まっ

た。

 会議の開始冒頭では、領域アドバイザーである東

京大学福山寛教授より、領域研究への期待の言葉が

述べられた。その後本領域会議の設立の趣旨に関し

て前野領域代表からの領域全体の趣旨説明、続いて、

A班(前野氏)、B班(石川氏)C班(鄭氏)、D班(田

仲氏)により、各班の研究の趣旨に関する説明が行

われた。引き続き参加者による発表が行われ、1件

あたり 15 分から 30 分の口頭講演が 36 件(そのう

ち領域メンバー以外の招待講演が 15 件)、ポスター

発表 70件について活発な議論が行われた。ポスター

発表に関しては、短時間でポスター講演の全貌を把

握するために、1 人1分間のプレビュー講演が行わ

れた。実質活動期間が半年程度にもかかわらず、高

いアクティビティと質の高い口頭講演、ポスター講

演が多く、各発表に対する質疑応答にも力が入って

いた。

 議論されたテーマのキーワードのみ列挙すると、

時間反転対称性の破れた超伝導体、トポ

ロジカル絶縁体、中心対称性の破れた超

伝導、奇周波数電子対、超流動ヘリウム

3、マヨラナ準粒子、アンドレーエフ束

縛状態、冷却原子気体、非可換量子渦、

ラシュバ効果、超伝導/強磁性接合系、

電場誘起超伝導、量子エンタングルメン

トなど、極めて多岐にわたっている。そ

れにもかかわらず議論が発散してしまう

ことが無かったのは、凝縮系における

トポロジーに関わる類似の物理現象が、

様々な系に広く遍在することを示してい

る。たとえばエッジ状態、マヨラナ準粒

子、スピンカレント、固有角運動量など、

類似の起源を有する現象が多種の系にお

いて出現する。参加研究者の多くは、自分が専門と

する領域以外の発表にも、自分の分野と類似の問題

を見いだすことができる。これにより問題意識の共

有がなされ、各現象の共通性、個別性について、理

論、実験の両面から熱い議論が続いた。このような

分野横断的な議論は、トポロジカル量子現象という

新しい研究分野の発展を大いに期待させる。

 ポスター発表に引き続いて行われたバンケットで

は、領域アドバイザーの安藤恒也教授、家泰弘教授

より新しい学術領域への期待が述べられたのに加え

て、領域代表の前野悦輝氏の仁科記念賞受賞を記念

した花束贈呈が行われるなど、和やかな雰囲気で行

われた。会議を細やかな気遣いで円滑に運営してい

ただいた前野研究室関係者の皆様、プログラムの編

成の責任者である田仲氏に感謝いたします。

(文責 柏谷聡)

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workshops and meetings

●▼ 2010 年 12 月 18 日 ( 土 ) ●○

10:30 Opening

10:40 アドバイザー挨拶 福山寛

10:50 18AM-1 領域趣旨説明対称性の破れた凝縮系にお

けるトポロジカル量子現象前野 悦輝 (20分 )

11:10 18AM-2 A01 班研究計画 :時間反転対称性を破る

超伝導体の新奇界面現象 前野 悦輝 (20分 )

11:30 18AM-3 B01 班研究計画 :スピン三重項超流動体

の新奇界面現象 石川 修六 (20 分 )

11:50 18AM-4 C01 班研究計画 :空間反転対称性を破る

電子流体の新奇現象 鄭 国慶 (20 分 )

12:10 18AM-5 D01 班研究計画 :トポロジカル凝縮系の

理論 田仲 由喜夫 (20分 )

13:40 18PM-1 トンネル分光による Sr2RuO4 のエッジ状

態の検出 柏谷 聡 (30 分 )

14:10 18PM-2 スピン三重項超伝導体の最近の話題

石田 憲二 (20 分 )

14:30 18PM-3 トポロジカル絶縁体とトポロジカル超伝

導体の分類理論 古崎 昭 (30 分 )

15:30 18PM-4 Microscopicanalysisofthesurface

states in non-centrosymmetric

superconductors VEKHTER, Ilya(30 分 )

16:00 18PM-5 エキゾティック超伝導体の光電子分光

横谷 尚睦 (20 分 )

16:20 18PM-6 非アーベリアン・マヨラナ・フェルミオ

ンと渦の新しい非可換統計

新田 宗土 (15 分 )

16:35 18PM-7 MRIStudyofTopologicalObjectsin

Superfluid3He 佐々木 豊 (15 分 )

○● 2010 年 12 月 19 日 ( 日 ) △●

09:20 19AM-1 冷却原子気体における対称性の破れとト

ポロジカル励起 上田 正仁 (30 分 )

09:50 19AM-2 アルカリ金属原子の BEC における渦のト

ポロジカル生成 中原 幹夫 (30 分 )

10:20 19AM-3 スピン軌道相互作用を持つトポロジカル

超伝導体 佐藤 昌利 (20 分 )

11:10 19AM-4 トポロジカル絶縁体における完全伝導

チャネルと輸送現象 村上 修一 (30分 )

11:40 19AM-5 トポロジカル絶縁体とトポロジカル超伝

導体の実験研究 安藤 陽一 (30 分 )

12:10 19AM-6 STM/STS によるトポロジカル絶縁体の研

究 花栗 哲郎 (15 分 )

12:25 19AM-7 新型トポロジカル絶縁体 TlBiSe2 の角度

分解光電子分光 佐藤 宇史 (15 分 )

14:10 19PM-1 不均一空間内でのスピン三重項 s 波超流

動状態 石川 修六 (30 分 )

14:40 19PM-2 超流動ヘリウム 3の表面アンドレーエフ

束縛状態とマヨラナフェルミ粒子

野村 竜司 (20 分 )

15:00 19PM-3 Sr2RuO4におけるトポロジカル超伝導現象

前野 悦輝 (30 分 )

15:30 19PM-4 カイラル超流動・超伝導状態での固有角

運動量・固有磁気モーメント三宅 和正 (20分 )

△● 2010 年 12 月 20 日 ( 月 ) ●○

09:20 20AM-1 MajoranaFermionsinSpin-Triplet

Superfluids 水島 健 (20分 )

09:40 20AM-2 TunnelingbetweenTwoHelical

SuperconductorsviaMajoranaEdge

Channel 浅野 泰寛 (20 分 )

10:00 20AM-3 トポロジカル絶縁体表面における超伝導

とマヨラナフェルミオン横山 毅人 (20 分 )

10:50 20AM-4 SrTiO3電場誘起超伝導の二次元性評価

上野 和紀 (30 分 )

11:20 20AM-5 Li2Pt3Bと Li2Pd3Bの第一原理電子状態

計算 獅子堂 達也 (20 分 )

11:40 20AM-6 空間反転対称性の破れた超伝導体の NMR

による研究 鄭 国慶 (30 分 )

12:10 20AM-7 スピン軌道相互作用と表面ラシュバ効果

小口 多美夫 (20分 )

13:30 20PM-1 強磁性超伝導接合における強磁性ジョセ

フソン共鳴 高橋 三郎 (20 分 )

13:50 20PM-2 強磁性p-InMnAs上に形成した Nb/

n -InAs/Nb接合 赤崎 達志 (20 分 )

14:10 20PM-3 超伝導における奇周波数電子対

田仲 由喜夫 (30分 )

14:40 20PM-4 p 波超流動・超伝導状態の表面効果

東谷 誠二 (20 分 )

15:30 20PM-5 トポロジカル相と量子エンタングルメント

押川 正毅 (30 分 )

16:00 20PM-6 2 層系量子ホール効果におけるトポロジ

カル励起 福田 昭 (15 分 )

16:15 20PM-7 スピノルボース凝縮体を用いた新奇量子

渦生成へ向けて 東條 賢 (15 分 )

16:30 20PM-8 表面電荷を用いた超流動 3He 自由表面に

おける表面現象の研究 池上 弘樹 (15分 )

16:45 20PM-9 Controllingthetopologicalelectronic

statesofBi2Se3byguestatoms

intercalation 木村 昭夫 (15 分 )

17:00 20PM-10 空間反転対称性を欠く系 LaNiC2 の超伝導

片野 進 (15 分 )

17:15 20PM-11 カイラルp 波超伝導体での渦格子状態

市岡 優典 (15 分 )

17:30 Closing

第1回領域研究会 プログラム

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▼ポスター講演▲

全ポスター 3日間掲示。ポスタープレヴューは奇数講演番号

が 12 月 18 日、偶数講演番号が 12 月 19 日に行われた。

P1 Basiccharacterizationofnoncentrosymmetric

tetragonalsuperconductors 江口学

P2 トポロジカル絶縁体候補物質 Pb 系三元カルコゲナイ

ドの単結晶作製と輸送特性評価 江藤数馬

P3 MeissnereffectinthequantizedspinHallphase

ofcorrelatedelectrons 御領潤

P4 ValleyspinsumruleofDiracfermions:

Topologicalargument     御領潤

P5 Field-AngleDependenceoftheQuasi-particle

ScatteringinsideaVortexCorein

UnconventionalSuperconductors 東陽一

P6 単層カーボンナノチューブにおける 13CNMR測定

   井原慶彦

P7 トポロジカル超伝導体における状態密度の計算

伊井彰宏

P8 Fromtopologicalbandinsulatortotopological

Andersoninsulator 井村健一郎

P9 πjunctiontransitioninInAsself-assembled

quantumdotcoupledwithSQUID

   石黒亮輔

P10 Observationofmetal-insulatortransitionin

Ca2RuO4underin-planeuniaxialpressure 石川諒

P11 Sr2RuO4 マイクロブリッジのブレーク接合における局

所輸送特性 神原浩

P12 NovelJosephsoneffectingrapheneSFS

junctions    神田晶申

P13 平行平板に閉じ込めた超流動 3He 中の第4音波

共鳴 加藤千秋

P14 強磁性絶縁体 / 超伝導接合における原子スケール

0- π転移の理論    川畑史郎

P15 TexturesofSpin-OrbitCoupledSpin-2Bose

EinsteinCendensates 川上拓人

P16 Classificationoftopologicalexcitationunder

influenceofvortices    小林伸吾

P17 スピン渦誘起ループ電流    

小泉裕康

P18 SuperconductivityinCuxBi2Se3M. クリーナー

P19 GLtheoryforcoexistentstateof

superconductivityandmagnetism久保木一浩

P20 Pt 系ニクタイドの超伝導    

工藤一貴

P21 空間反転対称性が破れた系における電荷揺らぎによる

超伝導 栗原 駿

P22 Helicaledgemodesneartransitionto

topologicalinsulatorwithindirectgap

ShijunMAO

P23 空間反転対称性の破れた超伝導体 LaPtBi の NQR

   俣野和明

P24 マグノンの軌道角運動量と熱ホール効果

松本遼

P25 強いスピン・軌道相互作用を持つ Ir 酸化物薄膜

の物質開拓 松野丈夫

P26 超流動ヘリウム3の表面奇周波数状態

松尾繁政

P27 ナノ細孔が変える吸着 4He 超流動のトポロジカ

ル転移         松下琢

P28 トポロジカル絶縁体表面における電流誘起スピ

ン偏極        三澤哲郎

P29 NMRstudyattheboundarybetweenbulk3He

andAerogel       森亮彦

P30 p x+ip y 超流動における乱雑な境界効果

長登康

P31 モット絶縁体 Ca2RuO4 に圧力・電場で誘起され

る新奇量子現象     中村文彦

P32 p - 波超伝導体中の一対の渦糸と半整数量子磁束

周りの準粒子構造 丹羽祐平

P33 EdgeStatesofTopologicalPhasesforQuantum

WalksinRandomEnvironments小布施秀明

P34 Bi2Te3 の高圧結晶相における圧力誘起超伝導転移

大村彩子

P35 Pressure-inducedsuperconductivityinBi1-xSbx

         大村彩子

P36 half-quantumvorticesinachiralp-wave

superconductingstatebasedonalatticemodel

大山雄一

P37 Tunnelingconductanceinthechiral

superconductivitybasedonalatticemodel

大成誠一郎

38 Substitution-Dependenceofthe

NoncentrosymmetricSuperconductor

Li2(Pd1-xPtx)3B'sH --T PhaseDiagramD.C.Peets

P39 Competitionbetweensuperconductivityand

bondorderinginPt-dopedIrTe2卞 舜生

   

workshops and meetings

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28

P40 Surfacequantumoscillationsinthetopological

insulatorBi2Te2Se      ZhiRen

P41 DevelopmentofTunnelJunctionMicro-SQUID

MagnetometerforInvestigationofEdgeSpin

MagnetizationInducedbySpinHallEffect 斎藤政通

P42 Electric-fieldinducedMotttransitioninCa2RuO4

坂木麻里子

P43 トポロジカル絶縁体のデバイス研究

佐々木聡

P44 半導体 GaAs/Ga0.7Al0.3As へテロ界面における格子歪み

の直接観察     佐々木進

P45 TransportpropertiesinsinglecrystalsofTl-

basedternarychalcogenides 瀬川耕司

P46 PairingSymmetryintheSuperconductingState

CoexistingwithAntiferromagnetism重田啓介

P47 トポロジカル超伝導体界面における磁性不純物の物性

進藤龍一

P48 JosephsonEffectofNoncentrosymmetric

Superconductors:CePt3SiandLaPt3Si  住山昭彦

P49 Exoticstatesofsuperfluid3Heneartheboundary

高木丈夫

P50 ModulatedVorticesappearinginBose-Einstein

CondensateswithFinite-RangeInteractions

高橋雅裕

P51 トポロジカル絶縁体における電子干渉と屈折

高橋隆志

P52 冷却原子気体ボース・アインシュタイン凝縮における

タキオン凝縮 竹内宏光

P53 トポロジカル場の理論が予測する新規量子効果

田中秋広

P54 KondoeffectinedgestatesofquantumspinHall

systems 田中洋一

P55 SurfaceDiracFermionsinCd-dopedBi2Se3

AlexyTaskin

P56 Decayingprocessoflong-livedNMRsignalin

superfluid3He-Batultralow temperature

戸田亮

P57 VariationalstudyonMotttransitionandspin

correlationsinthetwo-dimensionalS=1Bose-

Hubbardmodel 栂裕太

P58 Theoreticalstudyofthespontaneousmagnetic

momentinthechiralsuperconductingstate

鶴田篤史

P59 非一様なスピン軌道結合によって生じる微視的なスピ

ンシンクおよびスピンソース筒井一尋

P60 EdgecurrentrelatedwithMajoranaFermions

forthesuperfluid3He 堤康雅

P61 BEC における擬 - 南部 - ゴールドストーンモードのト

ポロジー 内野瞬

P62 外部磁場下におけるトポロジカル絶縁体の表面状態

和田真樹

P63 SurfaceMajoranaConeoftheSuperfluid3HeB

Phase 和才将大

P64 空間反転対称性の破れた超伝導体におけるトポロジカ

ルなエッジ状態     矢田圭司

P65 Temperaturedependenceofthecriticalcurrent

ofPb/Ru/Sr2RuO4topologicaljunctions山岸達哉

P66 Magneticdomainwallpropagationina

giantmagnetoresistance-typewirewithspace

inversionsymmetry 山口明啓

P67 2次元の Z2 トポロジカル絶縁体における乱れの効果

山影相

P68 LeggettModesinMulti-ComponentSuperconductors

柳澤孝

P69 擬一次元有機超伝導体 (TMTSF)2ClO4 の比熱測定によ

る超伝導秩序変数の解明 米澤進吾

P70 Creationofgaugefieldsforultracoldytterbium

atomsinatwo-dimensionalopticallattice

吉川豊

P71 強磁性物質と超伝導物質との接合系における近接効

果の理論 吉崎大裕

P72 AMoreidealDiracconerealizedinternary

topologicalinsulatorTIBiSe2 木村昭夫

   

workshops and meetings

ポスター会場。70 組以上の展示があり、連日白熱の議論が展開された

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29

● International Workshop for Young Researchers on Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries

会場:ラフォーレ修善寺

日時:2011 年 11 月 1 日ー 11 月 5 日

連絡先:東工大 野村 竜司、岡山大 水島 健

● International Conference of Topological Quantum Phenomena

会場:名古屋大学 

日時:2012 年 5 月 18 日- 5 月 21 日(予定)

名古屋大学シンポジオン(予定)

連絡先:名古屋大学 田仲 由喜夫

 本学術領域がスタートしておよそ半年が経過

したが、その短い期間中に、本研究領域代表で

ある前野悦輝氏が仁科記念賞を受賞されたこと

はまことに喜ばしいことであり、また本領域研

究にとっても極めて理想的なスタートが切れた

ことを意味する。トポロジーという概念は物性

研究者にとっては少し敷居の高いイメージを持

つが、トポロジーを導入することで、異なる凝

   

お 知 ら せ

   

announcement

本領域の研究費によって得られた成果を出版される際には、以下の例文にありますような記載をお願いいたします。

(1) This work was supported by the "Topological Quantum Phenomena" Grant-in Aid for Scientific Research on

Innovative Areas from the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) of Japan.

(2) This work was supported by the "Topological Quantum Phenomena" Grant-in Aid for Scientific Research on

Innovative Areas from MEXT of Japan.

(3) This work was supported by the "Topological Quantum Phenomena" KAKENHI on Innovative Areas from MEXT.

●今後の領域研究会の予定

詳細は決定次第、ウェブサイト上で告知します。

 2011 年  12 月 岡 山 大 学

 2013 年  12 月 東 京 大 学

 2015 年   3 月 京 都 大 学

        今後の会議予定

        論文等での Acknowledgment について

縮系に共通の物理現象を見いだすことができた

り、本ニュースレターのトピックスの佐藤氏の

記事にも紹介されているとおり、従来の説明が

難しかった表面アンドレーエフ状態の起源が容

易に説明できるなど、極めて強力な手段となり

うる。今後4年間の研究期間内に、トポロジカ

ル量子現象の新概念の創出と、理解の深化に努

めて行きたい。       (柏谷 聡)

編 集

後 記

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3 巻 頭 言    領域代表者からのメッセージ

4 研究概要の紹介

   計画研究班 A01、B01、C01、D01

8 領域メンバー紹介

9 ニュース

  前野悦輝氏仁科記念賞受賞!

  トポロジカル絶縁体の新物質発見(安藤陽一)

11 トピックス

  「トポロジカル絶縁体」って何がトポロジーなの?(安藤 陽一)

SrTiO3 電場誘起超伝導体(上野和紀)

  トポロジカル超伝導体の物理(佐藤昌利)

19 若手相互滞在プログラム報告

  上野和紀(東北大学)

江口 学(京都大学)

21 新規採用研究者の紹介

  俣野和明(岡山大学)

    松尾繁政(広島大学)

23 2010 年研究会報告

第1回~4回集中連携研究会、総括班会議、第1回領域研究会

29 今後の会議のお知らせ/編集後記

NEWSLETTER No.1

新学術領域研究「対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象」

ニュースレター第 1 号

発行日:2011 年 2 月 25 日

発行:「対称性の破れた凝縮系におけるトポロジカル量子現象」総括班

領域事務局:〒 602-8502 京都市左京区北白川追分町 

京都大学 大学院理学研究科 物理学第一教室 固体量子物性研究室内

TEL/FAX: 075-753-3783

Email: [email protected]

領域ウェブサイト http://www.topological-qp.jp/

本 領 域 ウ ェ ブ サ イ ト で は 、 研 究の 詳 細 、 研 究 会 情 報 、 市 民 向 け科 学 講 座 ペ ー ジ な ど を 紹 介 し てい ま す 。 ぜ ひ ご 来 訪 く だ さ い 。

三つの輪はそれぞれ計画研究

A,B,C を表し、異なる物質系での

研究の連携を表現しています。こ

のボロメの輪(ボロメアの輪、

Borromean rings) を 貫 く 3 回

ひねりのメビウスの帯(Möbius

band)は計画研究 Dを表し、個々

の物質系を超えた概念の融合や普

遍法則の探求を表現しています。

領域ロゴの意味するもの